エリサベト・セーデルストレム逝去

スウェーデンの名ソプラノ、エリサベト・セーデルストレム(Elisabeth Söderström)が11月20日、82歳で亡くなったそうだ。
日本のマスメディアではとりあげられていないようだが、やはり北欧の歌手は馴染みが薄いのだろうか。

1927年5月7日、ストックホルム(Stockholm)に生まれ、数々のオペラの舞台にたった。
正式名はAnna Elisabeth Söderström-Olowというらしい。
歌曲歌手としても、DECCAへのトム・クラウセと分け合ったシベリウス歌曲全集(トム・クラウセの担当していない曲の穴埋め的な録音で、彼女の担当曲数は12曲のみ)や、ラフマニノフ歌曲集、チャイコフスキー歌曲集、それにショパン歌曲全集など、多くの録音を残した。
シューベルトなどのドイツリートも歌っており、バドゥラ=スコダと共に録音もしていた。
また、数年前にBBCの放送音源がCD化されて、幅広いレパートリーを披露していた(下記参照)。

セーデルストレムは、ソプラノながら北欧の歌手らしいほの暗い響きも持ち、細かいヴィブラートを伴った突き抜ける強靭な声で、ドラマティックな表現とリリカルな表現のどちらも得意とした。
また華やかな容姿にも恵まれ、舞台姿も様になっていたことだろう(一度も実演を聴くことが出来なかったのは残念)。

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シベリウス歌曲全集でセーデルストレム(ユニバーサルミュージックの表記ではドイツ語式に「ゼーダーシュトレーム」となっている)が担当した曲は以下のとおり。

Soderstrom_sibelius_deccaジャン・シベリウス/歌曲全集
ユニバーサルミュージック: DECCA: UCCD-3815/8
録音:1978年12月-1981年11月、ロンドン、キングズウェイ・ホール

エリーザベト・ゼーダーシュトレーム(Elisabeth Söderström)(S)
ヴラディーミル・アシュケナージ(Vladimir Ashkenazy)(P)

(ほかの歌曲はバリトンのトム・クラウセとピアノのアーウィン・ゲイジ、ギターのカルロス・ボネルが演奏している)

もはやわたしは問わなかった(Se'n har jag ej frågat rnera) Op.17-1
とんぼ(En slända) Op.17-5
ユバル(Jubal) Op.35-1
しかしわたしの鳥は帰って来ない(Men min fågel märks dock icke) Op.36-2
トリアノンでのテニス(Bollspelet vid Trianon) Op.36-3
薔薇の歌(Rosenlied) Op.50-6
五月(Maj) Op.57-4
春にとらわれて(Vårtagen) Op.61-8
私の思いには百もの道がある(Hundra vägar har min tanke) Op.72-6
あなた達姉妹よ 兄弟よ 愛し合う者達よ(I systrar, I bröder, I älskande par!) Op.86-6
誰がお前の道をここへ?(Vem styrde hit din väg?) Op.90-6
可愛い娘たち(Små flickorna)

この時、セーデルストレムは声の美しさという観点からのみ言えば最盛期は過ぎていただろうが、そのこなれた繊細な表現力は円熟期ならではの素晴らしさと言えるのではないだろうか。
「トリアノンでのテニス」ではお高くとまった貴婦人たちをからかった詩に楽しい音楽がつけられ、セーデルストレムの語り口の見事さを堪能できる。
なお、この国内盤CD、現在は廃盤のようだが、どの曲を誰が演奏しているかの表示に誤りが多かったので、次回再発する際には正してほしい。

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イギリスでの若い頃と円熟期の2種類のライヴ録音をまとめたものがBBC Legendsからリリースされている。
共演はオーストリア人のイセップと、英国人のヴィニョールズである。

Soderstrom_bbc_recitalsSöderström / Liszt, Schubert, Tchaikovsky, Rachmaninov, Grieg, Strauss
BBC Legends: BBCL-4132-2

録音:1971年8月14日, Queen Elizabeth Hall, London (1-11),
1984年4月30日, St John's Smith Square, London (12-25)

Elisabeth Söderström(エリサベト・セーデルストレム)(S)
Martin Isepp(マーティン・イセップ)(P: 1-11)
Roger Vignoles(ロジャー・ヴィニョールズ)(P: 12-25)

R.シュトラウス(1864-1949)
1.したわしき幻(Freundliche Vision) Op.48-1
2.雨風をしのぐ仮の宿を(Ein Obdach gegen Sturm und Regen) Op.46-1

グリーグ(1843-1907)
3.早咲きの桜草を手に(Med en primulaveris) Op.26-4
4.睡蓮に寄せて(Med en vandlilje) Op.25-4

ニールセン(1865-1931)
5.リンゴの花(Æbleblomst) FS18-1 (Op.10-1)

リスト(1811-1886)
6.もし美しい芝生があるなら(S'il est un charmant gazon) S284
7.おお!私が眠るとき(Oh! quand je dors) S282
8.わが子よ、もし私が王だったら(Enfant, si j'étais roi) S283
9.どうやってと彼らは言った(Comment, disaient-ils) S276

シューベルト(1797-1828)
10.至福(Seligkeit) D433

ヴォルフ(1860-1903)
11.口さがない人たちはみな(Mögen alle bösen Zungen)

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リスト(1811-1886)
12.ミニョンの歌(あの国をご存知ですか)(Mignons Lied: Kennst du das Land) S275

シューベルト(1797-1828)
13.糸を紡ぐグレートヒェン(Gretchen am Spinnrade) D118
14.愛(喜びにあふれ悲しみに満ち)(Die Liebe: Freudvoll und leidvoll) D210
15.魔王(Erlkönig) D328

チャイコフスキー(1840-1893)
16.なぜ(Otchevo?) Op.28-3
17.ただあこがれを知る者だけが(Net, tolko tot, kto znal) Op.6-6
18.かっこう(Kukushka) Op.54-8

ラフマニノフ(1873-1943)
19.美しい人よ、私のために歌わないで(Ne poy, krasavica, pri mne) Op.4-4
20.A.ミュッセからの断片(Otryvok iz A. Myusse) Op.21-6
21.ねずみ捕りの男(Krysolov) Op.38-4

22.エリサベト・セーデルストレムが最初のアンコールを紹介する

グリーグ(1843-1907)
23.君を愛す(Jeg elsker dig) Op.5-3

24.エリサベト・セーデルストレムが2曲目のアンコールを紹介する

シベリウス(1865-1957)
25.少女(Små flickorna)

シューベルトの「魔王」まで歌っているのは意外だったが、彼女の声の特性をよくよく考えてみればあながち不思議でもない(各登場人物のキャラクターをかなり大胆に歌い分けている)。
上記の中ではチャイコフスキーの「かっこう」という曲が面白い。
後半はほとんどかっこうの鳴き声ばかりが連呼され、聴く分には非常に楽しい作品だ。
だが、詩はかなりシニカルで、夜鶯や雲雀やつぐみの鳴き声は町で話題にのぼっているのに、かっこうのことは誰も気にとめないと知らされ、自分でアピールしようとするという内容である。
また、いくつかの作品では彼女の抑制された弱声の魅力も味わうことが出来る。
決して機械のような正確なコントロールを操る人ではないが、人間味に満ちた味わいは、他の技巧に長けた歌手とは異なる親しみやすい魅力を感じさせる。
悲痛な心情からユーモラスな表現まで幅の広い彼女の至芸を堪能できるアルバムだと思う。
あらためてこの録音に耳を傾けながら彼女のご冥福をお祈りします。

最後に動画サイトにアップされていた彼女の歌うシューベルトの「トゥーレの王」をリンクしておきます(パウル・バドゥラ=スコダのピアノ)。
 こちら

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Every Little Thingベストアルバムの詳細発表

ELTが年末(12月23日)にリリースする3形態でのシングル・ベスト盤の詳細が公式HPで発表された。
ジャケット写真のために明治製菓とコラボを組み、懐かしいチェルシーのデザインが実現したのは面白いアイディアだ。

1.初回限定盤
CD4枚+DVD2枚
【CD内容】両A面シングル全49曲 + Dragon Ashのkjによる「Time goes by」のリメイク(「Time goes by ~as time goes by」)
【DVD内容】シングルの全プロモーションビデオ38曲 + ツアー「MEET」のオフショット

2.通常盤
CD4枚
【CD内容】両A面シングル全49曲 + Dragon Ashのkjによる「Time goes by」のリメイク(「Time goes by ~as time goes by」)

3.リクエスト盤
CD2枚
【CD内容】両A面シングル全49曲からファン投票で選ばれた上位30曲(リリース順)

1さえあればELTの過去の全シングルの音楽と映像(PV)が網羅されることになる。
特にフルではPVが作られなかった「FOREVER YOURS」のショートバージョンが初めて収録されるのは貴重である(出来れば「Face the change」のショートバージョンも収録してほしかったが)。

3のファン投票によるリクエスト結果も発表されたが、一般的な人気曲の最大公約数30曲が選ばれたということになる。
なるほどなぁというほぼ予想通りの結果だったが、「一日の始まりに...」のような複数曲入りのシングルの目玉曲以外が選ばれるという意外性もあって興味深かった(この曲、私個人も目玉曲の「またあした」以上に好きである)。
以下、発表された結果による曲目と、私自身だったらという30曲を勝手に選んでみた。

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Every Best Single ~COMPLETE~

★リクエスト盤
AVCD-38008~9
【CD2枚組】

Disc 1
01 Dear My Friend
02 For the moment
03 出逢った頃のように*
04 Shapes Of Love
05 Face the change
06 Time goes by
07 FOREVER YOURS
08 Over and Over
09 Rescue me
10 愛のカケラ*
11 fragile
12 Graceful World*
13 jump
14 キヲク
15 ささやかな祈り

Disc 2
01 UNSPEAKABLE
02 愛の謳*
03 nostalgia*
04 Grip!
05 また あした*
06 一日の始まりに...*
07 ソラアイ
08 恋文*
09 good night*
10 きみの て
11 スイミー
12 恋をしている
13 サクラビト
14 あたらしい日々*
15 DREAM GOES ON

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私がシングル曲から30曲選ぶとしたら・・・

Feel My Heart*
Future World*
Dear My Friend
For the moment
Shapes Of Love
Face the change
Time goes by
FOREVER YOURS
NECESSARY*
Over and Over
Someday, Someplace* 
Pray*
Get Into A Groove*
Rescue me
fragile
jump
キヲク
ささやかな祈り
UNSPEAKABLE
ルーム*
Grip!
ファンダメンタル・ラブ*
ソラアイ
きみの て
ハイファイ メッセージ*
スイミー
恋をしている
サクラビト
DREAM GOES ON
冷たい雨*
 
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上記の*印はリクエスト結果と私の選曲が異なる曲を示している。
こうしてリストアップしてみると、私はやはり五十嵐さんの作った曲への思い入れが強い。
「Feel My Heart」「Face the change」「Someday, Someplace」「Get Into A Groove」「Rescue me」などは今後もずっと聴き続けたい曲である。
五十嵐さんの曲以外では「ルーム」「ソラアイ」「ハイファイ メッセージ」「スイミー」などが特に気に入っている。

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プライ&マイセンベルクの初出ライヴCD/シューベルト・ゲーテ歌曲集

Willkommen und Abschied: Lieder und Balladen von Franz Schubert nach Texten von Johann Wolfgang von Goethe
Prey_maisenberg_1993(歓迎と別れ:ゲーテのテキストによるシューベルト・リート&バラーデ集)

orplid: 12
ライヴ録音:1993年7月19日, Nationaltheater zu München

Hermann Prey(ヘルマン・プライ)(BR)
Oleg Maisenberg(オレク・マイセンベルク)(P)

Schubert(シューベルト:1797-1828)作曲

1.Der Sänger, D149(歌びと)
2.Sehnsucht, D123(憧れ)
3.Rastlose Liebe, D138(憩いなき愛)
4.Der Fischer, D225(釣り人)
5.Der König in Thule, D367(トゥーレの王)
6.Der Schatzgräber, D256(宝を掘る男)
7.Erlkönig, D328(魔王)

Pause(休憩)

8.Prometheus, D674(プロメテウス)
9.Grenzen der Menschheit, D716(人間の限界)
10.Ganymed, D544(ガニュメデス)
11.Versunken, D715(耽溺)
12.Geheimes, D719(秘めごと)
13.An die Entfernte, D765(はるかな女性に)
14.Willkommen und Abschied, D767(歓迎と別れ)

Zugaben(アンコール)

15.An den Mond, D259(月に寄せて)
16.Liebhaber in allen Gestalten, D558(あらゆる姿をとる恋人)
17.Erster Verlust, D226(はじめての喪失)
18.Tischlied, D234(食卓の歌)
19.Heidenröslein, D257(野ばら)
20.Wanderers Nachtlied, D768(さすらい人の夜の歌)

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名バリトン、ヘルマン・プライ(1929-1998)の生誕80年を記念して初出のライヴ録音がリリースされた。
ヘルマンの息子のバリトン、フローリアン・プライのレーベルorpridからのリリースである(ちなみに、オルプリートとはメーリケの小説「画家ノルテン」に出てくる架空の島の名前)。
ピアニストのオレク・マイセンベルク(1945-)はロベルト・ホルとの共演でも知られるが、プライとはザルツブルク音楽祭で数回共演している。
しかし、私の知る限りこのコンビはスタジオ録音を残さなかったと思うので、このライヴ録音で初めて2人の共演を聴くことが出来るのは貴重である。
また、「人間の限界」はプライがライヴで何度も歌っていながらおそらくスタジオ録音していない曲なので、こうして録音が残されたことは有難い。

私がはじめてプライの生演奏に接したのは1984年2月の五反田で、その時のプログラムがこのCDとほぼ同じなので、懐かしく聴いた。
前半がシューベルト初期のゲーテ歌曲、後半が後期のゲーテ歌曲というように、ほぼ時系列で配置されたプログラミングは見事だと思う。
1984年の日本公演では「憩いなき愛」の後に「海の静けさ(Meeres Stille)D216」が、また「ガニュメデス」の後に「御者クロノスに(An Schwager Kronos)D369」が歌われたのだが、このCDの実際の公演でもおそらく歌われて、CD化に際して何らかの事情(時間の制約?)でカットされたのではないだろうか。

1993年というとプライ64歳の時の歌唱で、まさに円熟期の記録ということになる。
彼は1982年3月にヘルムート・ドイチュとこれらのゲーテ歌曲集をスタジオ録音(Intercord)していたが、その時の抑制された几帳面な歌唱に比べて、今回はより自由さを増している印象を受けた。
何度も歌いこみ、血肉となった表現といえようか。
歌と語りのどちらかに偏りすぎない曲の特性に合わせた表現が聴けて素晴らしかった。
声の調子もこの日は特に良かったのではないか。
音程もかなりしっかりしていると感じた。
プライ特有の前のめり気味のリズムもしばしば聞かれるが、それも含めてプライ特有の表現に消化して一つの芸として聴かせていた。

マイセンベルクはロシア系ピアニスト特有の強靭なタッチを持っており、フォルテになると時に荒さが感じられるのが惜しいところだが、概してよく歌う演奏を聴かせてくれ、特に弱音での美しさは魅力的だった(「ガニュメデス」の後奏の美しさ!)。
ライヴ録音の宿命で、若干ミスも聞かれたが、曲に対する積極的なアプローチは高く買いたい。
聴きなれたものとスラーとタイが異なる箇所もあったが、ひょっとしたら楽譜の版が違うのかもしれない。
「魔王」の最後の方(最後に魔王が子供を脅かすセリフの前)で1回だけ左手のパッセージをオクターブの音を足して弾いていたのは興味深かった(フランツ・リストによるピアノソロ編曲版が思い出される)。

アンコールでは聴衆の笑い声や拍手喝采が収められており、そうした臨場感を味わえるのもうれしかった。
ゲーテの詩による「月に寄せて」という歌曲は2作あるが、より著名な渋みあふれる第2作ではなく、甘美な旋律美が際立つ第1作を歌っているのもいかにもプライらしい。

息子のフローリアン・プライが父親の記念に、若かりし頃の名演ではなく、晩年のこのライヴを復刻したのも納得できる素晴らしい名人芸の記録であった。

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甲斐さん訳の「冬の旅」リリース

弊ブログと相互リンクさせていただいている歌曲投稿サイト「詩と音楽」の管理人としてお世話になっております甲斐貴也氏が訳された新訳が掲載された、シューベルトの「冬の旅」のCDが、「OPUS蔵」レーベルからリリースされました。

演奏は名演の誉れ高いゲルハルト・ヒュッシュ&ハンス・ウード・ミュラーによるもので、演奏自体は以前の記事で私も触れたことがありました。

スタイリッシュな求道者のようなヒュッシュが、それでも時にポルタメントを使用して、当時の潮流と全く無縁ではなかったことを確認できるのも興味深いですが、それ以上にヒュッシュの声が詩の一言一言を実に敏感に表現し尽くしているのが分かり、あらためて突出したリート歌手であったことがはっきり伝わってきます。
ミュラーのピアノもよりくっきりとした音で再現され、このピアニストの感受性の豊かさと作品への共感の強さがあらためて感じられました。

今回のCD復刻ではSP盤のノイズをあえて残すことによって、声とピアノのオリジナルの響きを出来る限り再現しようと試みているようです。
確かに最初のうち、サーッという音が気になりますが、慣れてしまうと、ヒュッシュ&ミュラーの生々しい新鮮な音に惹きこまれていきます。

ブックレットで小林利之氏がヒュッシュ氏の言葉を引用しています。
「古いレコード原盤の針音を除去するために、声の質が変わってしまうよりは、むしろ針音があったも声がそのままのほうがよい」とヒュッシュ自身が考えていたそうで、その考えがほぼ実現された見事な復刻と言えるのではないでしょうか。

甲斐さんは独自の見解に基づき、1曲1曲に深い考察を反映した訳をご自身のサイト上で発表されていますが、それがこのCDのブックレットに掲載されたことにより、広くリート・ファンの目にとまることになり、新たな視点を提供することになるのは何とも喜ばしいことです。
ブックレットの歌詞の文字が小さくて読みにくい点だけは改善を求めたいですが、このCDの価値を減ずるものではありません。
ぜひ、対訳を追いながら、往年の名演奏をお聞きになってみてください。

ちなみにジャケットには珍しくヒュッシュだけでなく、ミュラーも一緒に写っている貴重な写真が使用されています。

CDの詳細については、甲斐さんご自身の以下のページをご覧ください。

http://umekakyoku.at.webry.info/200908/article_4.html

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持田さん、伊藤さんのソロアルバム、そしてELT

Every Little Thingの持田香織(V)と伊藤一朗(GT)が今年に入り、ソロ活動をはじめたが、先週の7月29日から3週連続で持田さんと伊藤さんのソロ作品が交互にリリースされる。

7月29日(水) 持田香織のソロ第2弾シングル「静かな夜/weather」
8月5日(水) 伊藤一朗のソロ初アルバム「DIVERSITY」
8月12日(水) 持田香織のソロ初アルバム「moka」

先日発売されたばかりの持田さんのシングルは、大橋トリオ・プロデュースの「静かな夜」と、
ELTの「Jump」や「愛の謳」などのアレンジャーとしてお馴染みの村田昭が編曲した「weather」、
そして、ギタリストの今剛とセッションしたマンシーニの名曲「MOON RIVER」の3曲入りであった。
8月12日発売の彼女のアルバムの先行シングルという位置づけのせいか、ほとんどプロモーションも行われていないようで、売り上げはあまりよくなさそうだが、アルバム未収録の「MOON RIVER」のために購入する価値はあると思う。
「静かな夜」も「weather」も前作同様持田さんの作詞作曲で、彼女ならではの断片的な言葉に込められた優しさ、切なさが胸を打つ。
特に「静かな夜」は詩、音楽とも秀逸で、大橋トリオ氏(トリオという名前ですがお一人です)の力も大きいだろうが、制作者としての持田さんの良さが最高に発揮されていると思う。
歌声も3曲中、「静かな夜」での凛とした静謐な力強さに私は最も感激した。
「MOON RIVER」のカバーは最近の彼女特有のまったりした歌い方で好き嫌いが分かれるかもしれない。
だが、こういう歌い方は彼女にしかないアプローチであり、聴き馴染んだ「MOON RIVER」に新鮮さを与えていることは誰もが認めるだろう。

8月5日発売の伊藤さんのアルバムは、河口恭吾やAYUSE KOZUEなどのヴォーカリストを迎えた歌もの5曲に、彼のギターソロ曲1曲というミニアルバムで、じきに聴けるのが楽しみである。
今回のアルバムのためにニコニコ動画でオーディションを開き、その優勝者をヴォーカリストに迎えた曲もあるそうで、統一感よりは、アルバムタイトルにもある多様性を目指したのだろう。

8月12日発売の持田さんのアルバムはボサノバの小野リサや、ショーン・レノンらとのコラボ曲も含まれた12曲入りとのこと。
先日TSUTAYAに行った時に偶然見つけたフリーペーパー「SQUARE ENIX MAGAZINE Vol.11」に彼女のインタビューが掲載されていて、ソロ・プロジェクトについてゴールを決めているんですかという質問に対して、「もし何か決めてしまうことで、無くしてしまう可能性があるのだとしたら、それはすごくもったいない」と答え、決めつけないで、今後も彼女らしいスタンスでやっていくことを示唆していた。

以上のソロプロジェクトもファンとしては楽しみなのだが、それ以上に胸ときめくニュースが先日流れた。
2000年3月までELTの数々のヒット曲の作詞作曲、プロデュースなどをほとんど一人で担ってきた五十嵐充氏が、フロントメンバー脱退後、はじめてELTのために作曲、アレンジを担当した新曲「DREAM GOES ON」が9月23日にリリースされるそうだ。
彼はメンバー脱退直前に、今後もELTの裏方として応援していきたいということを言っていたのだが、諸事情があったのだろうか、それ以降彼の関わった作品はなかった。
私もひそかに五十嵐さんの新曲をたまには聴きたいと思い続けてきたが、9年も待たされると、この日が来ることはほとんどあきらめかけていた。

ソロ活動を経て、ヒットメーカーだった元メンバーのプロデュースを再び受け入れて、ELTが新たな局面に入りつつあるのをわくわくしながら応援していきたい。

今Yahoo動画で、持田香織の特集をしていて、シングル「静かな夜」やアルバム収録曲「タオ」のPVを見ることが出来ます。
特に「静かな夜」はお勧めですので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。

http://streaming.yahoo.co.jp/p/t/00071/v06053/

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F=ディースカウのブラームス「マゲローネのロマンス」

最近、バリトン歌手ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau: 1925-)がオールドバラ音楽祭で歌ったブラームス作曲「マゲローネのロマンス」のライヴがBBC LEGENDSから発売された。
以前、小さなレーベルから一時出ていた記憶があるのだが、その時は購入しそびれたので、今回のリリースを待ちわびていた。

F=ディースカウはスタジオ録音、ライヴ録音を合わせてすでに何種類もの同曲録音を残しているので、この機会に整理してみたい。

1)audite: audite 95.581
録音:1952年11月23日, WDR Köln Saal 1 & 3
ヘルマン・ロイター(Hermann Reutter)(P)
13曲目省略

2)ARCHIPEL DESERT ISLAND COLLECTION: ARPCD 0296
録音:1953年(4月10日, Berlin?)
ウルズラ・ハウシュテット(Ursula Haustädt)(Narrator)
ヘルタ・クルスト(Hertha Klust)(P)
11&13曲目省略

3)Deutsche Grammophon: 00289 477 5270
国内盤LP: 2700 102
録音:1957年4月23-27日, Studio Lankwitz, Berlin
Dietrich Fischer-Dieskau(BR, Narrator)
イェルク・デームス(Jörg Demus)(P)
オリジナルLPには収められていた歌手自身による朗読がCD化に際して残念ながら省略されている。

4)EMI: CMS 7 63167 2
ORFEO D'OR: C 339 050 T
録音:1964年8月17日, Mozarteum, Salzburg (live)
ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)(P)

5)BBC LEGENDS: BBCL 4255-2
録音:1965年6月20日, Aldeburgh Parish Church (live)
スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)(P)

6)EMI CLASSICS: 0777 7 64820 2 6
録音:1970年7月24-25日, Bürgerbräu, München
スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)(P)
このリヒテルとのオリジナルLPはレコード・アカデミー賞を受賞している。

7)ORFEO: C 490 981 B
録音:1970年7月30日, Mozarteum, Salzburg (live)
スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)(P)

8)Deutsche Grammophon: 449 633-2
録音:1981年5月, Studio Lankwitz, Berlin
ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)(P)
DGがブラームスの記念年に合わせて企画したブラームス作品全集の一環として、ジェシー・ノーマンとともにブラームス全歌曲を録音した際のもの。

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今回発売されたのは5番目の録音にあたる。
リヒテルとは数年間にわたる共演関係を続けたが、その出発点となった貴重な記録である。

また、1番目のロイターとの録音と、2番目のクルストとの録音も比較的最近にリリースされた放送録音だが、実はこの歌曲集の11曲目と13曲目はそれぞれマゲローネ、スリマという女性が歌う歌という設定になっている為、潔癖なF=ディースカウはその初期の録音で、それらを省略して歌っていたわけである。
1957年の彼にとって初のスタジオ録音ではその女声用の2曲も含めた全15曲を録音して、歌曲集としてのつながりを優先させる決意をしたことをうかがわせる。

ジェラルド・ムーアは、私の知る限り、この歌曲集の全曲をほかの歌手との共演も含めて録音していないと思うので(プライとの抜粋はあるが)、ザルツブルク音楽祭でのこのライヴ録音は貴重である。
最初にリリースされたEMI盤はすでに入手困難だと思われるが、ORFEO D'ORで再発売されたものは現在も入手できるだろう。

ブラームスの歌曲としてはかなり大規模で感情の振幅が大きな作品群であるため、F=ディースカウのドラマティックな歌唱は、これらの作品を実に魅力的に響かせている。
いつか1957年盤をF=ディースカウの朗読も含めた形で再度リリースしてほしいものである。

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アーメリングのメンデルスゾーン・ディスコグラフィー

ソプラノのエリー・アーメリング(Elly Ameling: 1933-)は、今年生誕200年を迎えたメンデルスゾーンの歌曲も当然ながらレパートリーに加えているが、録音されたものはそれほど多くはなく、以下のとおりである。

1)アメリンク~歌の翼に

Ameling_baldwin_1972_emi_2東芝EMI: SERAPHIM: TOCE-8956 (CD)
録音:1972年9月6-11日, Gemeindehaus Studio, Zehlendorf, Berlin
Elly Ameling(S)
Dalton Baldwin(P)

歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op. 34-2

ボールドウィンと共演した全18曲からなるEMIへの初オムニバス盤の7曲目に「歌の翼に」が収録されている(当時39歳)。
英独仏伊の各言語を駆使した彼女らしい名録音で、「歌の翼に」も伸びやかに歌われている。

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2)くるみの木~アーメリング/ドイツ・ロマン派歌曲集
Ameling_baldwin_german_romantic_son(German Romantic Songs)

日本フォノグラム: PHILIPS: X-7806 (LP)
録音:1976年9月10-14日, Kleine zaal, Concertgebouw, Amsterdam
Elly Ameling(S)
Dalton Baldwin(P)

恋する女の手紙(Die Liebende schreibt) Op. 86-3

ボールドウィンと共演した11人のロマン派の作曲家による計18曲のプログラム(当時43歳)。
メンデルスゾーンの歌曲からは「恋する女の手紙」が歌われ、7曲目に置かれている。
彼女の多くの未CD化の録音の中でもとりわけCD化が待ち望まれる名盤の1つである。

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3)“歌の翼に”~アメリング・メンデルスゾーン歌曲集(全17曲)
Ameling_jansen_mendelssohn(Mendelssohn: Lieder)

CBS: 28AC1407 (国内盤LP)
録音:1979年12月4日, 30th Street Studio, New York
Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)

第1面
歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op. 34-2 (')
挨拶(Gruss) Op. 19-5
新しい愛(Neue Liebe) Op. 19-4
ロマンス(Romanze) Op. 8-10
ゆりかごのそばで(Bei der Wiege) Op. 47-6
慰さめ(Tröstung) Op. 71-1
秋に(Im Herbst) Op. 9-5
春の歌(Frühlingslied) Op. 47-3
月(Der Mond) Op. 86-5

第2面
恋する女の手紙(Der Liebende schreibt) Op. 86-3
ズライカ(Suleika) Op. 34-4 (「ああ、湿り気をおびてそよいでくるおまえ」"Ach, um deine feuchten Schwingen")
ズライカ(Suleika) Op. 57-3 (「心をかきたてるこのそよぎは何なのでしょう」"Was bedeutet die Bewegung?")
お気に入りの場所(Lieblingsplätzchen) Op. 99-3
最初のすみれ(Das erste Veilchen) Op. 19-2
乙女のなげき(Des Mädchens Klage)
夜の歌(Nachtlied) Op. 71-6
魔女の歌(Hexenlied) Op. 8-8

(上述の歌曲の日本語表記は国内盤LPの表記によった)

アーメリング唯一のメンデルスゾーンのみによる歌曲集であり、同じオランダ出身のルドルフ・ヤンセンとの初共演録音でもあった(当時46歳)。
「歌の翼に」「恋する女の手紙」以外は当然ながら彼女にとって初録音であり、メンデルスゾーンの著名な歌曲と無名な歌曲がバランス良く選曲されている。
アーメリングの円熟に向かいつつある声はまだまだ充分にチャーミングで、語り口の巧みさはますます磨きがかかっている。
このLPレコードも未だCD化されていないが、復活は望み薄だろうか。

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4)「歌の翼に」

Ameling_jansen_1988日本フォノグラム: PHILIPS: 28CD-896 (422 333-2)
録音:1988年2月22~25日, La Chaux-de-Fonds, Switzerland
Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)

歌の翼に(Auf Flügeln des Gesanges) Op. 34-2

アーメリングがPHILIPSレーベルに最後に録音したのは、「歌の翼に」と題された19曲からなるアンコール・ピース集だった(当時55歳)。
その冒頭に「歌の翼に」が置かれており、彼女にとって3回目にして最後の同曲の録音となった。
声は濃密さを増したが、弱声の魅力がさらに増していることに驚かされる。

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アーメリングの録音したメンデルスゾーン歌曲のレパートリーは結局17曲にとどまったが、ほぼ有名な作品は網羅しており、その点では満足できるだろう(出来れば「葦の歌」や「ヴェネツィアのゴンドラの歌」も彼女の歌で聴いてみたかったが)。
やはり「歌の翼に」を3度も録音しているのが目を引く。
それはレコード会社の意向もあったのだろうが、アーメリングの日本での引退コンサートのアンコールでもこの曲が歌われており、彼女が「歌の翼に」を好んで歌っていたということは間違いないだろう。

ちなみに歌曲ではないが、若かりし頃(1968年6月)にサヴァリシュ指揮、シュライアー、アーダムら共演でオラトリオ「エリア」Op. 70全曲録音(PHILIPS)に参加していることも忘れてはならないだろう。

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ゲルネのシューベルト・エディション

バリトンのマティアス・ゲルネ(Matthias Goerne)が仏harmonia mundiに10枚以上のシューベルト歌曲シリーズを録音中であることは以前の記事でも触れた。
自身でharmonia mundiにこの企画を持ち込んだらしい。
共演のピアニストは様々な人を起用している。

第1巻はエリザベト・レオンスカヤとの15曲、
第2巻はヘルムート・ドイチュとの20曲とエリック・シュナイダーとの23曲の2枚組、
そして最近リリースされた第3巻はクリストフ・エッシェンバハとの「美しい水車屋の娘」全20曲である。

このシリーズが始まった当初は、もっぱら著名なソロピアニストたちと組ませて売り上げを伸ばそうという安易な商業主義を危惧していたのだが、第2巻でお馴染みの歌曲ピアニスト2人が登場して安心したものだった(もちろんソリストのレオンスカヤが素晴らしい演奏を聴かせてくれたのは特記しておきたい)。

そして第3巻ではいよいよ「美しい水車屋の娘」が演奏された。
ゲルネは以前にエリック・シュナイダーとDECCAにこの歌曲集を録音しており、2度目の挑戦ということになる。
今回のピアニストはF=ディースカウやマティス、シュライアーなどとも共演してきた名手エッシェンバハである。
HMVの評でも指摘されているが、とにかく今回の演奏、一部の曲を除いてゆっくりしたテンポで貫かれている。
噛んでふくめるような丁寧な歌い方を徹底したため、自然とテンポ設定が遅めになる。
もちろんゲルネのことだから弛緩とは全く無縁で、どの瞬間も美しいドイツ語と豊かな表情で音楽的な歌唱を聞かせてくれてはいる。
それに包み込むような深々とした美声は相変わらず健在である。
だが、聴き終わって、この演奏が好きかと自問した時、素直に頷けないのも正直な気持ちである。
低声歌手でも例えばF=ディースカウのように実に魅力的な歌を聴かせる例もある。
ゲルネの「水車屋」はまだこれから、より良くなる余地を残しているような気がしてならない。
一方エッシェンバハは低く移調されて重くなりそうなところ、実にめりはりの効いたタッチで軽やかに響かせてみせる。
様々な声部を浮き上がらせて、彼ならではの新鮮で気持ちのいい演奏を聴かせてくれた。

これまでのゲルネ・エディションをドイチュ番号順にまとめたリストを作ってみたので、興味のある方はご覧ください。

ゲルネ・シューベルト・エディション・リスト(Excel)

通常女声しか歌わないミニョン歌曲をすでにシュナイダーと2曲ほど録音しているのが興味深い。
シューマンの「女の愛と生涯」にまで進出している彼は、男性の視点で女声歌曲に新たな息吹を吹き込もうとしているのかもしれない。
このリストに今後どのような曲が加わるのか、さらにどのようなピアニストが登場するのか楽しみである。

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ヴィンガー&ハルトマン/ヴォルフ歌曲集

ヴォルフ/ケラー、ゲーテ、メーリケ他の詩による歌曲集
(Hugo Wolf / Lieder nach Texten von Keller, Goethe, Mörike und anderen)
Winger_hartmann_wolfTACET: TACET 162
録音:2007年, Hannover Congress Centrum

マレット・ヴィンガー(Marret Winger)(S)
シュテフェン・ハルトマン(Steffen Hartmann)(P)

ヴォルフ(1860-1903)作曲
1.お入り、立派な兵隊さん(Tretet ein, hoher Krieger)(ケラーによる「昔の調べ」No.1)
2.愛する人がアトリのように歌うというのなら(Singt mein Schatz wie ein Fink)(ケラーによる「昔の調べ」No.2)
3.ねえ、青っぽい坊や(Du milchjunger Knabe)(ケラーによる「昔の調べ」No.3)
4.朝露の中、歩いていると(Wandl' ich in dem Morgentau)(ケラーによる「昔の調べ」No.4)
5.炭焼き女が酔っ払って(Das Köhlerweib ist trunken)(ケラーによる「昔の調べ」No.5)
6.明るい月が、なんと冷たく遠くに輝いていることか(Wie glanzt der helle Mond)(ケラーによる「昔の調べ」No.6)
7.ミニョンⅠ(Mignon I)(ゲーテ歌曲集)
8.ミニョンⅡ(Mignon II)(ゲーテ歌曲集)
9.ミニョンⅢ(Mignon III)(ゲーテ歌曲集)
10.ミニョン「あの国をご存知ですか」(Mignon (Kennst du das Land))(ゲーテ歌曲集)
11.フィリーネ(Philine)(ゲーテ歌曲集)
12.心変わりした娘(Die Bekehrte)(ゲーテ歌曲集)
13.つれない娘(Die Spröde)(ゲーテ歌曲集)
14.アナクレオンの墓(Anakreons Grab)(ゲーテ歌曲集)
15.響け、響け、私のパンデーロ(Klinge, klinge mein Pandero)(スペイン歌曲集)
16.私の巻き髪の陰で(In dem Schatten meiner Locken)(スペイン歌曲集)
17.あなたは一本の糸で(Du denkst mit einem Fädchen)(イタリア歌曲集)
18.もうどんなに長いこと待ち焦がれていたことでしょう(Wie lange schon)(イタリア歌曲集)
19.妖精の歌(Elfenlied)(メーリケ歌曲集)
20.捨てられた娘(Das verlassene Mägdelein)(メーリケ歌曲集)
21.あの季節だ(Er ist's)(メーリケ歌曲集)

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全く名前も演奏も知らない演奏家との出会いは不安と期待が入り混じる。
意欲的なヴォルフ歌曲の選曲を見て、とにかく聴いてみようと購入したところ、大正解だった!
この若手歌手の歌唱は、シュヴァルツコプフや白井光子の方向を引き継いでいるかのようだ。
声も魅力的なら技術も確か、そして深みのある表現力、これは大物の予感だ。
ブックレットの解説によれば、マレット・ヴィンガーはマティスやシュヴァルツコプフに師事し、F=ディースカウ、アーメリング、ギーベルのマスタークラスに参加したとある。
それを裏付けるような稀に見るほどの安定感である。
ケラー歌曲の諧謔も、ゲーテ歌曲の深刻さも、スペイン&イタリア歌曲での庶民の直接的な感情も、メーリケ歌曲の多様性も、全く見事に対応して歌っている。

先日聴いたキルヒシュラーガーの録音が素直に旋律美を聴かせていたのに対して、このヴィンガーはテキストと音楽にぐっと踏み込んでエキスを抽出したかのような歌唱である。「ミニョン」歌曲群を聴けば、両者の資質の違いは明らかである。

ピアニストのシュテフェン・ハルトマンも実に積極的な踏み込みで歌と拮抗している。
時に若さが顔をのぞかせることはあっても、決して作品を逸脱せずに果敢に立ち向かう姿勢は頼もしい。
テクニックも確かで、音色のパレットも豊かなので、ヴォルフの多彩な色合いを表現するのに不足しない。
今後が楽しみなピアニストである。

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キルヒシュラーガー&ドイチュ/ヴォルフ歌曲集

ヴォルフ歌曲集(HUGO WOLF / SONGS)
Kirchschlager_deutsch_wolfSONY CLASSICAL: 88697391892
録音:2003年8月26-29日, Casino Baumgartner, Vienna

アンゲーリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Kirchschlager)(MS)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

ヴォルフ(1860-1903)作曲
1.アナクレオンの墓(ゲーテ歌曲集)
2.娘の初恋の歌(メーリケ歌曲集)
3.少年とみつばち(メーリケ歌曲集)
4.夜明け前のひととき(メーリケ歌曲集)
5.飽くことのない愛(メーリケ歌曲集)
6.捨てられた娘(メーリケ歌曲集)
7.出会い(メーリケ歌曲集)
8.ミニョンⅠ(ゲーテ歌曲集)
9.ミニョンⅡ(ゲーテ歌曲集)
10.ミニョンⅢ(ゲーテ歌曲集)
11.ミニョンの歌(ゲーテ歌曲集)
12.ジプシー娘(アイヒェンドルフ歌曲集)
13.災難(アイヒェンドルフ歌曲集)
14.夜の魔力(アイヒェンドルフ歌曲集)
15.眠られぬ者の太陽(「ハイネ、シェイクスピア、バイロン歌曲集」よりバイロン歌曲)
16.あらゆる美女もかなわない(「ハイネ、シェイクスピア、バイロン歌曲集」よりバイロン歌曲)
17.隠遁(メーリケ歌曲集)
18.春に(メーリケ歌曲集)
19.さようなら(メーリケ歌曲集)
20.考えてもみよ、おお心よ(メーリケ歌曲集)
21.旅路で(メーリケ歌曲集)
22.お入り、立派な兵隊さん(ケラーによる「昔の調べ」No.1)
23.愛する人がアトリのように歌うというのなら(ケラーによる「昔の調べ」No.2)
24.ねえ、青っぽい坊や(ケラーによる「昔の調べ」No.3)
25.朝露の中、歩いていると(ケラーによる「昔の調べ」No.4)
26.炭焼き女が酔っ払って(ケラーによる「昔の調べ」No.5)
27.明るい月が、なんと冷たく遠くに輝いていることか(ケラーによる「昔の調べ」No.6)

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以前に書籍にCDが付いた形でフランスで出版されたものと同一音源が最近純粋なCDパッケージで再発売された。
書籍の時は若干値段が高めだったこともあり、購入を見合わせていたのだが、今回通常の価格で再発されたことを喜びたい。
録音も今から6年も前に録音されたものだが、その分歌手の若々しい美声を堪能でき、今や重鎮のドイチュの名人芸も味わえる。

オーストリアのサルツブルク出身のメゾソプラノ歌手、キルヒシュラーガーの声は明るくて美しい。
ソプラノと間違えそうな透き通った清澄な美声で、作為もなく素直に明晰に歌を紡いでいく。
低声よりもむしろ高声が魅力的だ。
ヴォルフの歌曲に難解さを感じる向きには格好の入門となるのでないか。
ドイツ語は舞台発音と日常発音の折衷のように聞こえる。
"r"もあまり巻き舌を強調することはなく、母音化することが多い印象だ。
一方、声が軽めで、あまり声色に深さを加えようともしないため、「ミニョン」歌曲群や「捨てられた娘」などの深刻な表情が求められる作品では、聴き手の心を動かすまでには至らない感も残る。
とはいえ、訓練され、コントロールの行き届いた声と音楽はやはり素晴らしく、ヴォルフの曲を楽しく聴くには問題ない。
「ジプシー娘」や「眠られぬ者の太陽」など、往年のシュヴァルツコプフのような濃密な表情を期待してしまうと肩すかしをくらうほどあっさりしているが、これはこれで現代風の解釈として新鮮であり、そろそろシュヴァルツコプフの呪縛から聴き手も解き放たれるべきなのかもしれない。
「隠遁」のような旋律美がまさった素直な作品ではキルヒシュラーガーの美質が発揮されて素晴らしい。
今ならおそらくもっと成熟を求められるかもしれないが、6年前の30代後半の美声と若々しい表現は確かに貴重な記録である。

ドイチュは持てる音色、テクニック、音楽性、テンポ感覚、バランス感覚、詩の読解力の限りを尽くして、個々の全く異なる作品から見事なまでに魅力を惹き出す。
このピアノの多彩さと豊かでデリケートな響きは時に歌声以上に耳をそばだたせる。
ただただ素晴らしいの一言に尽きる。

選曲もさまざまな歌曲集から満遍なく名曲が集められており、珍しいケラーの詩による「昔の調べ」が全曲聴けるのも貴重である。
昨日3月13日はヴォルフの149回目の誕生日であった。
キルヒシュラーガーのストレートな美声と、ドイチュの練達の至芸で、ヴォルフの多彩な作品を聴くのも楽しいのではないか。

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