最近購入したCD(プライ&ドイチュ「冬の旅」、ボストリッジ&ドレイク「シューベルト・ライヴ2」ほか)

ここのところ、CDショップで実際に現物を手にとってCDを購入するということからめっきり遠ざかっていたのですが、つい最近久しぶりにCDショップを訪れ、気になる5枚を購入しました。

Prey_bostridge_goerne

Schock_vickers

1)シューベルト/「冬の旅」 ヘルマン・プライ(Br)ヘルムート・ドイチュ(P) (1987年5月17日, Schwetzingen, Schloss, Rokokotheater)
2)シューベルト/歌曲集2 イアン・ボストリッジ(T)ジュリアス・ドレイク(P) (2014年5月22日, Wigmore Hall, London)
3)ブラームス/歌曲集 マティアス・ゲルネ(Br)クリストフ・エッシェンバッハ(P) (2013年4月、2015年12月, Teldex Studio Berlin)
4)シューベルト/「美しい水車屋の娘」 ルドルフ・ショック(T)ジェラルド・ムーア(P) (1958年11月, Gemeindehaus Berlin-Zehlendorf)他3曲(アドルフ・シュタウホのピアノ:1959年6月10日, Gemeindehaus Berlin-Zehlendorf)
5)シューベルト/「冬の旅」 ジョン。・ヴィッカーズ(T)ジェフリー・パーソンズ(P) (1983年7月9-13日, Salle Wagram, Paris)他インタビュー付き

現在のところ、5のみ未聴ですが、他の4枚は程度の差はあれど、聴いてみました。

2のボストリッジとドレイクのシューベルトはウィグモア・ホールでのシューベルト・ライヴの第2集で珍しいレパートリー満載で、シューベルト・ファン必聴の録音です。

3のゲルネとエッシェンバッハのブラームスですが、実は以前ゲルネがインタビューで「ブラームスはあまり好きではないので録音もしないかもしれない」というようなことを読んだことがあったので、今回興味をもって聞いてみました。
Op.32全9曲と、ハイネの詩による5曲、そして「4つの厳粛な歌」全4曲という内容です。
まだ聞きこんでいない為、はっきりと断言はしませんが、ゲルネのアプローチは若干ブラームスの歌曲とは相性がよくないのかもしれないと感じました。
もちろんいつものふくよかで包み込むような声はブラームス歌曲の温かみをしっかり感じさせてくれますし、ゲルネに合ったレパートリーを選んでいるとは思います。
ただ、彼の表現がドラマティックになる際に、ブラームス特有の器楽的なバランスが崩れがちに感じられ、同じことがピアノのエッシェンバッハにも感じられました。

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今回、この記事ではプライとドイチュの「冬の旅」について、感想を記したいと思います。

この日のプライは声の調子もすこぶる良く、音程がぴたっとはまっています。

比較的軽快なリズムで第1曲「おやすみ」が始められ、悲壮感よりもわき目もふらずに前進していく感じが出ています。
1987年といえば、当時の彼の録音ではすでに第三者的な諦観をすら漂わせていたプライですが、ここではライヴゆえか、かなり振幅の大きいドラマティックな表現も聞かせ、若かりし頃のプライを彷彿とさせる「なりきり」感が嬉しく感じられました。
声はあくまで自然に語るように、しかしメロディーラインは壊さずにという姿勢が感じられるのは、いつものプライですが、一言一言への軽重の比重の付け方が細やかで、言葉へのプライの寄り添い方は傾聴に値します。
例えば、「風見」の中の"reiche Braut(金持ちの嫁)"という言葉にアクセントを付けているのを聞くと、プライなりの強烈な皮肉を込めているように感じられます。
その他にも聞くべき箇所は多々あります。
例えば、

・「休息」での単語による"r"の巻き舌の付け方の軽重や、めりはりのきいた語り口。
・「春の夢」での甘美さな夢と冷たい現実の対比、そして最後の恋人をいつになったら抱けるのだろうというわずかに盛り上がって沈み込む箇所。
・「道しるべ」の最後の"zurück"に込められた思いの深さ!
・「宿」で墓地にも眠りを拒否されて、ただ進むのだと歌う箇所の決然とした歌いぶり!

「ライアー弾き」ではプライの歌う主人公は絶望しているようには聞こえません。
力強く自分の分身のようなライアー弾きに言葉をかけます。
プライはそこを大きなクレッシェンドの後に軽いデクレッシェンドで若干のアーチを作りますが、基本はよく響く声で、前を向いて歩きだす様を想像させる終わり方でした。

これより前に映像収録してDVDでも発売されている、同じくドイチュとの共演による演奏では、室内での演奏ということもあるのでしょうが、もっと振幅を抑えた、内向きの演奏だったように感じられます。

このライヴ、プライの甘美な美声がまだまだ健在だったことにまず喜びを感じますが、さらに言葉の語り方の軽重の付け方が微に入り細を穿つのは、歌いこんできた年輪のなせる業なのかもしれません。

そして、忘れてならないのがヘルムート・ドイチュのピアノです!
安定したテクニックに裏付けられたピアノは、粒立ちが明瞭で、クリアな響きが冬の凍てつく雰囲気をあらわす一方、「ボダイジュ」などでは包み込むような温かい響きも聞かせています。
その演奏はテキストとぴったり一致し、まさに変幻自在と言ってよいでしょう。
レガートとノンレガートの使い分けが絶妙にうまいのもドイチュの美点だと思います(ペダリングのうまさも)。
「からす」でのつきまとうような右手の響きのなんといううまさ!
リズムにのったテンポ感がプライの歌をどれほど助けていることでしょう。

まさにプライとドイチュが二人三脚で作り上げた、深遠だけれども、達観していない、最後に希望が見える世界を描き出してくれたように思います。

興味のある方はぜひお聞きになってみて下さい!

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/「冬の旅」(1987年シュヴェツィンゲン音楽祭初出ライヴCD)

ヘルマン・プライの初出音源による「冬の旅」が発売されることを、コメント欄より真子さんに教えていただいたので、ご紹介します。
すでに日本のamazonでも購入出来るようです(2016/6/29発売予定)。

シューベルト(Schubert)/「冬の旅(Winterreise)」
録音:1987年5月17日、シュヴェツィンゲン・シュロス、ロココ劇場
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(Br)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

詳細は以下のサイトをご覧下さい。
 こちら

プライは複数回「冬の旅」の録音を残していますが、名手ヘルムート・ドイチュとのこのライヴ録音は初出で、ファン待望のものでしょう(スタジオでの映像収録でも共演しているので、そのDVDとの比較も興味深いところです)。

1987年といえば、そろそろ渋みを増してきたプライの表現の深みが注目されるところです。
どんな演奏をドイチュと共に作り上げているのか、発売を楽しみに待つことにしましょう。

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/シューベルト:シラーの詩による歌曲リサイタル映像(1990年 バート・ウーラハ、フェストハレ)

バリトンのヘルマン・プライがピアニストのヘルムート・ドイチュと共演したライヴ映像がアップされていましたので、ご紹介します。
1990年のバート・ウーラハ秋の音楽祭のコンサートからで、すべてシューベルトのシラーの詩による歌曲が並んでいます。
プライのシューベルト、シラー歌曲集といえば、PHILIPSへの全集からの分売として出されたLPレコード(カール・エンゲルのピアノ)が大変高く評価されているとおり、プライお得意のレパートリーです。
東京でも、シューベルト生誕200年を記念して1997年初頭に催された一連のシューベルト・シリーズの一環としてシラー歌曲集が歌われたのが懐かしく思い出されます(ミヒャエル・エンドレスのピアノ)。
下記の8曲中、最初の3曲は非常に長い曲ですので、ご覧になる前に用事をお済ませになった方がいいかもしれませんね(笑)。
「人質」は太宰治の「走れメロス」の原型となったシラーの詩によるもので、テキストの2行目に「メロス」という言葉も出てきます(下記の歌詞リンクではダモン(Damon)となっていますが、シラーの変更により、歌われる歌詞も演奏者にゆだねられるようです)。
いずれも必ずしも知られているとは言えない作品ばかりですが、もし時間がない方は最初に「タルタロスの群れ」を、そして時間に余裕の出来た方は歌詞を追いながら「海に潜る男」をご覧になるといいのではないでしょうか。
プライの噛みしめるような一言一言の重みは、バラード歌いとしての彼の良さが最大限に発揮されていますし、シューベルトのメロディーの素晴らしさに寄り添っていて見事です。
若かりしドイチュが、プライという巨匠を前にして、あくまでプライの音楽性を優先して、かっちりとした骨組みを作っているのを聴くのも楽しみの一つです。
どうぞゆっくり楽しんで下さい!

※なお、下記で歌詞対訳をリンクさせていただいた藤井さんのサイト「梅丘歌曲会館 詩と音楽」は、2016年9月29日まで現在のリンク先で閲覧可能で、それ以降は別の場所に移転予定とのことです。

バート・ウーラハ秋の音楽祭1990年
バート・ウーラハ、、フェストハレ(フェスティヴァルホール)にて
(Herbstliche Musiktage Bad Urach 1990
aus der Festhalle in Bad Urach)

ヘルマン・プライ(Hermann Prey) (Baritone)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch) (Piano)

シューベルト/屍の幻想(Eine Leichenphantasie) D7 (21:46)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/海に潜る男(Der Taucher) D111 (23:58)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/人質(Die Bürgschaft) D246 (15:40)

 歌詞対訳(甲斐貴也訳)

シューベルト/タルタロスの群れ(Gruppe aus dem Tartarus) D583 (3:05)

シューベルト/アルプスの狩人(Der Alpenjäger) D588 (6:28)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/希望(Hoffnung) D637 (3:36)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

憧れ(Sehnsucht) D636 (4:12)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

巡礼者(Der Pilgrim) D794 (7:33)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

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ヘルマン・プライ/ドイツ歌曲ドキュメンタリー映像「ミンネザングから現代まで」(約100分)

今年最後の記事はヘルマン・プライのドキュメンタリー映像です。
1970年代にプライがPHILIPSレーベルに録音したドイツ歌曲集大成について録音を聴きながら語る場面、あるいはザルツブルク音楽祭のリハーサルの一場面などが出てきます。
プライがくつろいで、相手役のクルト・パーレンとドイツ歌曲について語る場面は、彼の音楽への情熱が強く感じられて微笑ましいです。
この時期のプライの映像は貴重と思われます。
ぜひお楽しみ下さい!

piano: Leonard Hokanson, Kurt Pahlen

04:27- シューベルト/憩いなき愛(Rastlose Liebe)D138(ピアノ:レナード・ホカンソン)

06:11- シューベルト/羊飼いの嘆きの歌(Schäfers Klagelied)D121(ピアノ前奏付、冒頭部分のみ)(ピアノ:レナード・ホカンソン)

26:32- レーヴェ/エーバーシュタイン伯爵(Graf Eberstein)Op.9-6-5(ピアノ:レナード・ホカンソン)

33:47- シューベルト/夕映えの中で(Im Abendrot)D799(ピアノ:クルト・パーレン)

40:06- シューベルト/ミューズの息子(Der Musensohn)D764(ピアノ:レナード・ホカンソン)

48:54- シューマン/献呈(Widmung)Op.25-1(ピアノ:レナード・ホカンソン)

59:39- ブラームス/教会墓地にて(Auf dem Kirchhofe)Op.105-4(ピアノ:レナード・ホカンソン)

1:04:42- ヴォルフ/お別れ(Abschied)(ピアノ:レナード・ホカンソン)

1:17:57- プフィッツナー/沈む太陽は美しく輝く(Es glänzt so schön die sinkende Sonne)Op.4-1(ピアノ:レナード・ホカンソン)

1:25:08- フォルトナー/「ヘルダーリンの4つの歌曲」~II.ヒュペーリオンの運命の歌(Hyperions Schicksalslied)

1:35:57- シューベルト/音楽に寄せて(An die Musik)D547(ピアノ:クルト・パーレン)

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ヘルマン・プライのマスタークラス映像(1997年)

Meisterkurs für Gesang mit Hermann Prey
Richard-Strauss-Tage
Garmisch-Patenkirchen 1997

動画サイトにヘルマン・プライ(Hermann Prey)のマスタークラスがありました。
「Habe Dank(感謝します)」と題されたドキュメンタリーで、最初にプライが歌曲「献呈(Zueignung)」を歌詞を替えて歌い、「Habe Dank」の箇所だけ生徒たちが歌うという形で始まります。

プライが生徒に教えている場面は珍しいのではないでしょうか。
私ははじめて見ました。
お客さんが入っているので、公開講座のようです。

今回はR.シュトラウスの歌曲ばかりを6人の歌手が2曲ずつ披露しています(ピアノはすべてヘンシェルの共演者として著名なフリッツ・シュヴィングハンマー)。
前半はプライのマスタークラスで、後半は成果を発表する修了コンサートのような感じです。

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Meisterkurs für Gesang mit Hermann Prey
Richard-Strauss-Tage
Garmisch-Patenkirchen 1997

1:58 Susanne Kelling/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Heimkehr Op.15, 5

8:59 Jörg Hempel/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Nachtgang Op. 29, 3

15:39 Jeanne Roth/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Ich sehe wie in einem Spiegel Op. 46, 5

19:07 Thomas Kuckler/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Schlechtes Wetter Op. 69, 5

22:14 Daniela Wiche/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Cäcilie Op. 27, 2 (画面上は誤ってMeinem Kindeと表示されている)

29:00 David Molnar/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Herr Lenz springt heute durch die Stadt Op. 37, 5

Abschlussmatinee
Richard-Strauss-Tage
15. Juni 1997

32:32 Susanne Kelling/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Winternacht Op. 15, 2

35:02 Jörg Hempel/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Schön sind, doch kalt die Himmelssterne Op. 19, 3

36:03 Jeanne Roth/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Die sieben Siegel Op. 46, 3

37:45 David Molnar/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Leise Lieder Op. 41, 5

39:07 Daniela Wiche/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Meinem Kinde Op. 37, 3 (画面上は誤ってCäcilieと表示されている)

41:21 Thomas Kuckler/Fritz Schwinghammer
Richard Strauss - Heimliche Aufforderung Op. 27, 3

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このマスターコースは若い歌手の卵たちを相手にしており、しかも公開方式ということもあってか、非常にプライの明朗快活でユーモラスな側面がうかがわれて、気持ちよく楽しむことが出来ます。
この動画の最後に修了コンサートを終えて、プライと生徒たちが再び替え歌版の「献呈」を歌う場面があるのですが、プライの人間性が滲み出ていて、温かい雰囲気に包まれた会だったことが感じられます。
最晩年のプライの表情を見られるのもとても貴重だと思います。
ぜひご覧下さい。

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ヘルマン・プライ&ジェフリー・パーソンズ/シューベルト「美しい水車屋の娘」(1976年)(Radio4 期間限定配信)

オランダのインターネットラジオ局Radio4が、ヘルマン・プライとジェフリー・パーソンズの「美しい水車屋の娘」を配信していることを某SNSでお世話になっている方の情報で知りました。
著名な歌曲ピアニストだったジェフリー・パーソンズの没後20年を記念しての配信と思われます(説明がパーソンズについて書かれているので)。

 こちら

ジェフリー・パーソンズは1929年6月15日オーストラリア、シドニー生まれで、若い頃はブラームスのピアノ協奏曲第2番などもステージで弾いていたのですが、ロンドンに渡り、ヒュッシュやシュヴァルツコプフ、ホッターなどの歌曲の伴奏者として、ムーアの後継者として位置づけられるほどにまでなりました。
そして、ニルソン、シュトライヒ、ボニー、ベイカー、ルートヴィヒ、オッター、アレン、ハンプソンなどの多くの声楽家だけでなく、イダ・ヘンデル、ミルシテイン、トルトゥリエなど楽器奏者とも共演を重ねて、この世代の最高の伴奏ピアニストの地位を確立したのです。
残念ながら1995年1月26日に癌の為に亡くなってしまうのですが、オーラフ・ベーアやジェシー・ノーマンとの来日公演で彼の至芸を何度か実際に聴けたことがいい思い出です。
1994年には本来ロス・アンヘレスの共演者として来日する予定だったので、楽しみにして会場に行ったら、ピアニスト変更の張り紙が貼ってあり、何故か嫌な予感がしたと思っていたら、翌年の新聞に訃報記事を見つけて力が抜けたことを思い出します。
ムーアの実演に接することが出来なかった私にとって、パーソンズのソリスト顔負けのテクニックに支えられた美しいタッチを生で聴くことはリートを聴き始めてからの念願で、ベーアとの来日公演でそれが実現した時は今後何度もベーアと共にパーソンズの至芸を味わえると喜んだものでした(茅ヶ崎公演の時、楽屋でサインの列に並んだのですが、ベーアとパーソンズが何かを言い合って楽しそうに笑っていたのが今でも印象に残っています)。
しかし、再度ベーアが来日した際と、ノーマンのコンサートを聴くだけで、パーソンズの実演を聴く機会は失われてしまったのです。
幸いなことにパーソンズには多くの録音が残されています。
それこそ、彼の基礎をつくったと言えるだろうシュヴァルツコプフとその夫のウォルター・レッグとの薫陶を得て作られた多くの録音はパーソンズの非凡さを示していると思います。
シュヴァルツコプフは実はムーア引退後、コンサートではパーソンズと共にブライアン・ランポートともかなりの頻度共演しているのですが、録音ではもっぱらパーソンズと共演しているのが興味深いところです。

プライとは、スタジオ録音はCapriccioレーベルのブラームス「ドイツ民謡集」1枚しか残していないのですが、ザルツブルク音楽祭では4回(1977,1978,1981,1988年)共演しており、今回のオランダでのライヴは1976年の共演です。
プライの自伝『ヘルマン・プライ自伝:喝采の時』(原田茂生、林捷訳:1993年 メタモル出版)でパーソンズについて「ジェラルド・ムーアの正統な後継者と呼ぶにふさわしいピアニストだ」と書いています。

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シューベルト(Schubert)/「美しい水車屋の娘」D795 全20曲 (Die schöne Müllerin)
シューベルト/はじめての喪失D226 (Erster Verlust)
シューベルト/ムーサ(ミューズ)の息子D764 (Der Musensohn)

録音:1976年10月20日, Sonesta Koepelkerk Amsterdam

ヘルマン・プライ(Hermann Prey) (bariton)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons) (piano)

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プライは厚みのある朗々とした美声はそのままに、弱声でも魅力を聴かせています。
熱っぽさよりはコントロールの利いた歌唱で、「好きな色」での消え入りそうな声が特に印象的でした。
パーソンズは粒立ちの良い明晰なタッチが特徴的で、リズムがかっちりしているので、いつものホカンソンとは違った演奏になっていると思います。
アンコールの「ミューズの子」はパーソンズのがっちりしたリズムに乗って、プライ本来の明るさが全開で、とても楽しい演奏でした。

Wigmore HallのライヴCDシリーズでもパーソンズの没後20年を記念して、ヴォルフガング・ホルツマイアとの「美しい水車屋の娘」がリリースされています。
私も近く入手して聴いてみたいと思っています。

ヴォルフガング・ホルツマイア&ジェフリー・パーソンズ「さすらい」

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ヘルマン・プライ&ジェラルド・ムーア/「白鳥の歌」他(ザルツブルク・ライヴ1964)リリース

プライとムーアによる1964年ザルツブルク音楽祭の歌曲の夕べがCD化されたようです。
シューベルトの「白鳥の歌」全曲とその他の歌曲です。
この両者はフィリップスレーベルにも「白鳥の歌」のスタジオ録音を残していますが、1964年のライヴはその曲順の解体で語り草になっていた演奏でした。
私は現在まだ入手できていないのですが、こうして正規盤として聴ける日が来るとは思っていなかっただけに、とても嬉しく歓迎すべきリリースだと思います。

詳細はHMVのサイトをどうぞ。
 こちら

当時は「白鳥の歌」を出版された通りの順序で演奏するのが通例だったと思われるので、どういう経緯でプライが曲順を変えたのか興味深いところです。
往年の記録の復活を喜びたいのと同時に、まだまだプライのザルツブルク・ライヴは沢山お宝が眠っているはずなので、そろそろまとめて歌曲だけでもリリースしてほしいところです。

ちなみに「歌びと」「夕映えの中で」「シルヴィアに」はプライは別のピアニストとスタジオ録音しているので、ムーアとの組み合わせで聴けるのも有難いことです。

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(2015.11.6追記)

CD、入手しました!
プライはもちろんライヴならではの熱唱を聴かせているのですが、ヴァルター・クリーンとの熱いスタジオ録音とは違って、全体にコントロールが感じられるのが興味深かったです。
クリーンとのスタジオ録音が勢いに任せた若い時期ならではの情熱だったのに比べて、こちらは熱さと冷静さのバランスがよく、激しい「アトラス」でさえ、どこか冷静な目が感じられるほどでした。
だからといって決して冷たい演奏ということではなく、プライの歌唱にさらに彫りの深さが加わったということなのでしょう。声を前面に出したものではなく、声を歌唱の手段として使っているのが感じられて素晴らしい演奏でした。
ムーアはピアノでとても美しく歌い、プライの音楽性を完全に把握しているのはいつもながらさすがです!

「白鳥の歌」が目玉であることは間違いないのですが、ぜひとも「竪琴弾きの歌」や「ミューズの子」なども聴いてみて下さい。会場で聴いているような臨場感がなんとも言えず素晴らしいです。

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ヘルマン・プライ&フェーリクス・ドゥ・ノーブル/1961年オランダ・ライヴからシューベルト2曲

ドイツの名バリトン、ヘルマン・プライ(Hermann Prey)と、オランダの名伴奏者フェーリクス・ドゥ・ノーブル(Felix de Nobel)が組んだシューベルトのライヴ録音から2曲がアップされていたのでご紹介します。
オランダフェスティヴァルの一環として演奏されたものらしく、コンセルトヘボウでのライヴ録音です。

1.「美しい水車屋の娘」から「仕事を終えて」D795-5 (1961.7.5, Concertgebouw)
2.「冬の旅」から「おやすみ」D911-1 (1961.7.9, Concertgebouw)

プライが初来日したのと同じ1961年の録音とのことで、初来日当時の声を想像しながら聴くのもいいのではないでしょうか。
みずみずしい美声を丁寧にコントロールしながらも若々しい意気の良さが感じられました。
「仕事を終えて」の情熱的な歌いぶりと、「おやすみ」での抑制した表情の違いが感じられて、興味深い歌唱でした。

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ヘルマン・プライのレーヴェ「時計」

昨日7月11日はヘルマン・プライ(Hermann Prey)の生誕85周年にあたる日でした。
それを記念してレーヴェの「時計(Die Uhr)」を聴きたいと思います。
1996年2月10日放送とのことですが、声のみずみずしさを失っていないのが素晴らしいです。
ピアノはミヒャエル・エンドレス(Michael Endres)です。

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ヘルマン・プライ&ジェラルド・ムーア/ヴォルフ&プフィッツナー、シュトラウス歌曲集 初CD化(DECCA)

DECCAレーベルの"MOST WANTED RECITALS"でプライ&クリーンの「白鳥の歌」ほか数々の名盤がCD化されたことは既述のとおりですが、このシリーズ中、日本でなぜか今のところ流通していない複数のCDの中にヘルマン・プライ&ジェラルド・ムーアの「ヴォルフ&プフィッツナー歌曲集」があります。
しかもボーナストラックとして同じコンビによるR.シュトラウス歌曲集も含まれているというお得な盤です。
amazonなどでいずれ扱うのかどうか不明ですが、メキシコのDECCAの企画とのことで、どうしてもすぐに欲しい方はPresto Classicalというイギリスのサイトからお求めになるのがいいかと思います。

私はこのプライ&ムーアの「ヴォルフ&プフィッツナー歌曲集」と「ホッター&パーソンズ/リサイタルVol.2」を注文しましたが、1週間も経たないうちに届きました。
さらに「スゼー&ボールドウィン/フランス歌曲集(これも初CD化)」も追加で注文しているので届くのが楽しみです。

このCDの購入については下の記事の追記をご覧ください。
 こちら

ではこのCDの中身をご紹介します。

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DECCA: 480 8172
MOST WANTED RECITALS 35

ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(Baritone)
ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)(Piano)

録音:1965年4月2-5日, Decca Studios, West Hampstead, London (1-19)
1963年6月4-7日, Decca Studios, West Hampstead, London (20-33)

ヴォルフ(Wolf)作曲/「メーリケ歌曲集」より
1.庭師
2.依頼
3.飽くことのない愛
4.出会い
5.狩人の歌
6.春だ!
7.散歩
8.旅路で
9.郷愁
10.祈り
11.隠棲
12.ヴァイラの歌
13.告白
14.鼓手

プフィッツナー(Pfitzner)作曲/「5つの歌曲」Op.9
15.庭師
16.孤独な娘
17.秋に
18.勇敢な男
19.別れ

R.シュトラウス(R.Strauss)作曲
20.献呈Op.10-1
21.何もOp.10-2
22.夜Op.10-3
23.ぼくの頭上に広げておくれOp.19-2
24.ぼくたち、隠しておいていいものだろうかOp.19-4
25.わが思いのすべてOp.21-1
26.あなた、わが心の冠よOp.21-2
27.ああ、恋人よ、もう別れなければならないOp.21-3
28.ああ辛い、俺はなんて不幸な男なんだOp.21-4
29.憩え、わが魂Op.27-1
30.明日Op.27-4
31.夜の散歩Op.29-3
32.親しげな幻影Op.48-1
33.あなたの青い瞳でOp.56-4

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すべて初CD化です。
録音年月日も今回明記されているのが有難いです。
1965年録音の「ヴォルフ&プフィッツナー歌曲集」全曲と、1963年録音の「R.シュトラウス歌曲集」(「白鳥の歌」のCDに含まれる3曲以外全曲)で構成されていますが、どちらも30代のプライの声の美しさ、張り、表現力、語り口は絶好調です!

ヴォルフの「メーリケ歌曲集」は全53曲からなるのですが、その中からプライの声やキャラクターに合った作品が慎重に選ばれているのが感じられます。
「庭師」では通りかかった王女様へのひそやかな愛の告白を実直なまでにストレートに歌い上げ、聴き手の気持ちを心地よく明るくしてくれます。
「依頼」では友人に好きな人の返事を代わりに聞いてもらう切迫した感じが"Warum schreibt Er aber nicht?(なぜ手紙をくれないのですか)"の歌いぶりによく表れていて、オペラの一場面のように楽しいです。
「飽くことのない愛」では"Je weher, desto besser!(痛ければ痛いほど気持ちがいいの)"の"besser"におけるプライのなんともいえないニュアンスが聴きどころです。
「春だ(あの季節だ)!」では春の到来の喜びを前半は抑制を利かせ、後半に爆発するその配分が素敵です。
「祈り」の厳かな歌唱や有名な「隠棲」での真摯で力強い歌いぶりも素晴らしいのですが、最後の「告白」「鼓手」のユーモアはまさにプライの独壇場でしょう。
「告白」では兄弟がいない為に母親から一心に期待を寄せられて重いよぉと嘆くさまが実にユーモラスに語られ、声のちょっとしたニュアンス付けなど芸達者なプライを満喫できます。
一方「鼓手」では、お母さんが魔法が使えたら酒保で働いてご馳走が食べられるのにと、「告白」とは逆の母親好きな少年を描いていて、そのプログラミングも絶妙と言えましょう。

プフィッツナーは作品番号9のアイヒェンドルフの詩による全5曲が演奏されていますが、第1曲のタイトルが「庭師」で、メーリケ歌曲集のプログラミングに合わせたとも考えられますね。
最後は「別れ」というタイトルですし、プライならではの凝った選曲&曲順ということがいえそうです。
哀愁漂う歌曲集で、プライの甘美な声が一層切なさを際立たせているように感じられます。

シュトラウスの歌曲集は作品番号順に並べられているのはプライの考えなのでしょうか。
有名で親しみやすい作品が選ばれていて魅力的な選曲です。
「献呈」での全霊を傾けた歌唱はプライの良さ全開です。
「憩え、わが魂」のような重めの作品でもプライが歌うとほのかな光が射すのがまた魅力です。
「あなたの青い瞳で」での素朴でストレートで甘美な歌はまさにプライの良さが集約されていますね。
こぼれおちそうなほど熟れたプライの美声が存分に味わえる素敵な歌曲集でした。

ムーアは60代半ばの脂の乗り切った円熟味がそのまろやかなタッチから感じられ、これまた耳を惹きつけて離しません。
「明日」など絶品です。
そしてディースカウと共演した時とは違ったプライ仕様の演奏になっているのが興味深いです。
例えばヴォルフの「出会い」をディースカウとは猛スピードで駆け抜ける風のように演奏していましたが、プライとは最初のうちややテンポをゆるやかにとり、恋人との逢瀬を歌う直前の間奏で恋の嵐を吹き荒れさせます。
そして、そのどちらにもムーアの個性が刻印されているのが素晴らしいところです。
ヴォルフの「春だ!」はF=ディースカウとのメーリケ歌曲(男声用)全集録音時に省かれてしまった為、ムーアファンにとっては、プライが録音してくれて感謝です!
ムーアの軽やかで味のあるタッチが魅力的です。

Prey_moore_wolf_lieder

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(2014年8月9日追記)

HMVでとうとう扱うようです。9月10日発売とのことです。
 こちら

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