ヘルマン・プライ(Hermann Prey)の1963年の映像

2019年7月11日が生誕90年にあたるドイツの名バリトン、ヘルマン・プライ(Hermann Prey: 1929-1998)を祝して、ドイツのサイトで彼の記事がいくつか書かれていますが、そうした中、1分強ですが、1963年のプライの映像がアップされていました(映像の右下にマウスポインターを持っていくとスピーカーのマークが表示されますので、それをクリックすると音が出ます)。

 こちら

BR_KLASSIKのツイッターに掲載された映像で、たった1分7秒だけですが、若かりしプライが導入の挨拶(19世紀のロマン派の作曲家といえば多くの人はシューマンを思い浮かべます・・・といった話)に続いてシューマン(Schumann)のケルナーの詩による「旅の喜び(Wanderlust), Op. 35/3」の一部を歌っています。
右下の記載を見ると1963年の映像のようです。
こんなに若いプライの映像はなかなか見る機会がなかったので貴重です。

なんともみずみずしく、繊細ですらあるプライの美声です!

少しだけ映るピアニストはおそらくギュンター・ヴァイセンボルン(Günther Weissenborn)と思われます。

こういう映像をどんどんアップしてくれると有難いのですが、権利の問題などで難しいのでしょうか・・・。
いずれにせよ、この短い映像は、プライファンの渇望を少しでも癒してくれるものではないでしょうか。

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ヘルマン・プライ(Hermann Prey)生誕90周年記念ネットラジオ番組(独"rbb Kultur")

7月11日は名バリトン歌手ヘルマン・プライ(Hermann Prey, 1929年7月11日-1998年7月22日)の生誕90年記念日です。

"rbb Kultur"というドイツのラジオ局で月曜日の20:04-21:00(日本時間翌日AM3:04-4:00)に"Schöne Stimmen(美しい声)"という番組が放送されています。

先週はブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender)の80歳誕生日祝いの放送があり、放送後もネットで聴くことが出来ます。
 こちら

そして7月8日に、ヘルマン・プライの生誕90周年を記念した番組が放送されるそうです。
日本時間の7月9日AM3時04分から放送されますが、真夜中ですので、後日サイトにアップされてから聴かれるのがいいかと思います。

おそらく下記のリンク先に放送終了後に聞けるようになると思います。
 こちら

プライの90歳の誕生日におそらくドイツを中心に記事がアップされることと思われます。何か音源も発掘されるといいのですが・・・。

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ヘルマン・プライ&ジェラルド・ムーア/シューベルト「冬の旅」(1959年ケルン録音)配信限定リリース

いつもコメントを下さるプライファンの真子さんからの情報で、ヘルマン・プライ(Hermann Prey)&ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)の「冬の旅」初出音源が発売されたことが分かりましたので、ご紹介します。

プライとムーアのコンビはシューベルトのゲーテ&シラー歌曲集、「白鳥の歌」、ブラームス、ヴォルフ、プフィッツナー、R.シュトラウス歌曲集など数多くの名盤を残してきましたが、「冬の旅」の録音はありませんでした。

今回、1959年ケルン録音ということまではジャケット写真の記載で分かっているのですが、パッケージではなく、配信のみの販売とのことで、詳細ないきさつなどは不明です。

音源を聞いた限りでは、ライヴ録音ではなさそうです。
放送録音か、あるいは商業用に録音してお蔵入りになった録音なのでしょうか。
音は悪くないです。

 amazonはこちら

Singers of the Century - Hermann Prey: Winterreise

Prey_moore_winterreise_1959


プライは伸びやかな美声で丁寧に歌を紡いでいきます。
ムーアは安定したテンポで、歌に満ちた演奏を聞かせています。

興味のある方はまずは上記のサイトから試聴してみることをお勧めします。

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もう一つ、動画サイトにプライとホカンソンによるシューベルトの1984年ヴィーン・ライヴ録音がアップされていました。

録音: Nov. 1984, Brahms-Saal, Musikverein, Wien (live)

Hermann Prey(BR)
Leonard Hokanson(P)

Franz Schubert:
I. Sehnsucht(憧れ), D 123 0:00-
II. Am See(湖上で), D 124 4:05-
III. Der Taucher(水中を潜る男), D 111 10:14-
IV. Geistes-Gruß(幽霊の挨拶), D 142 34:39-
V. Genügsamkeit(満足), D 143 36:41-
VI. Der Sänger(歌びと), D 149 38:34-
VII. Alles um Liebe(愛のすべて), D 241 46:25-

長大な「水中を潜る男(潜水者), D 111」が聞きものですが、他に「満足」や「愛のすべて」のような珍しい作品も歌われていて貴重な音源だと思います。

プライ生誕90年にあたり、あらためて彼の録音を一つ一つ聞いてみるのもいいかもしれませんね。

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ゾッフェル&プライによるクリスマスソング(Joseph, lieber Joseph mein & Tochter Zion, freue dich) (1990)

今日はクリスマス・イブですね。
昨日の記事のお口直しではないですが、ゾッフェルとプライ、それにテルツ少年合唱団による素敵な映像を見つけました。

1. Joseph, lieber Joseph mein(ヨセフ、わがいとしきヨセフ)

2. Händel: Tochter Zion, freue dich(シオンの娘よ、喜べ)(よろこべや、たたえよや)

Doris Soffel(MS)(1)
Hermann Prey(BR)(1,2)
Tölzer Knabenchor(2)
Staatskapelle Dresden
Ferdinand Leitner(C)

1曲目を聞いて歌曲好きな私はあっと思いました。
ブラームス(Brahms)の「聖なる子守歌(Geistliches Wiegenlied, Op. 91-2)」の前奏、間奏、後奏にあらわれるあのメロディーと一緒なのです。
そういえば、ブラームスのこの曲の楽譜の冒頭に"Joseph, lieber Joseph mein"と書いてあったような気がします。

興味のある方は、オッターの歌でお聞きください(スパルフのヴィオラ、フォシュベリのピアノ)。
Anne Sofie von Otter(MS), Erik Sparf(Viola), Bengt Forsberg(P)

そして、2曲目は世界中いたる所で(主に表彰式で)耳にするあの曲です。
ヘンデルの「マカベウスのユダ」の有名な一節に新たな歌詞を付けて讃美歌として親しまれているそうです。

Handel: Judas Maccabaeus, HWV 63 - See, the conqu'ring hero comes!

Fröhliche Weihnachten!

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ヘルマン・プライ(Hermann Prey)&ポール・ウラノウスキー(Paul Ulanowsky)/1963年リサイタル(University of California, Berkeley)

名バリトン、ヘルマン・プライの往年の貴重なライヴ音源がアップされていました。
私もこのライヴは初めて聞きます。
1963年1月ということは、プライ33歳の若さ!
彼の初来日の2年後という時期で、その来日公演を聴かれた方にはそのころを彷彿とさせるものなのでしょう。
実際に聞いてみても、とにかく声がみずみずしい!
雫がしたたり落ちるような生きの良さが声にみなぎっています。
音質もおそらく放送録音でしょうか、それほど悪くはないと思います。

共演のピアニストが、ロッテ・レーマンの伴奏者としても著名なウラノウスキーというのも興味深いところです。
ここでも、1曲1曲思いを込めたかなり雄弁な演奏を聞かせてくれます。

シューベルトの多彩な選曲、そしてシューマンの「詩人の恋」が楽しめます。

アップして下さった方に感謝です!

皆さんもじっくり楽しんで下さいね。

録音:1963年1月25日, Hertz Hall, University of California, Berkeley

Hermann Prey(ヘルマン・プライ)(BR)
Paul Ulanowsky(ポール・ウラノウスキー)(P)

Franz Schubert(シューベルト):
I. "Sehnsucht(憧れ)", D. 636, 0:00
II. "Der Pilgrim(巡礼者)", D. 794, 4:44
III. "Hoffnung(希望)", D. 251, 10:18
IV. "An den Mond(月に寄せて)", D. 259, 14:09
V. "Ganymed(ガニュメデス)", D. 544, 16:54
VI. "Der Musensohn(ムーサの息子)", D. 764, 21:46
VII. "Im Frühling(春に)", D. 882, 24:44
VIII. "Der Blumenbrief(花の手紙)", D. 622, 29:31
IX. "Der Wanderer an den Mond(さすらい人が月に寄せて)", D. 870, 32:29

Robert Schumann(シューマン):
X. "Dichterliebe(歌曲集「詩人の恋」全16曲)", op. 48, 35:39

Encores(アンコール):
Robert Schumann(シューマン):
XI. "Stille Thränen(静かな涙)", op. 35, no. 10, 1:09:24
Franz Schubert(シューベルト):
XII. "An die Musik(音楽に寄せて)", D. 547, 1:13:22

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エルナ・ベルガー&ヘルマン・プライ&ヴァイセンボルン(Berger, Prey & Weissenborn): ヴォルフ「イタリア歌曲集」(Wolf: Italienisches Liederbuch)全曲CD復活!

ヘルマン・プライの没後20年の今年(2018年)に記念盤が出ないのではと半ば諦めていたところに朗報です!
ソプラノのエルナ・ベルガーとピアニストのギュンター・ヴァイセンボルンと組んで1959年に録音されたヴォルフ「イタリア歌曲集」がCDでとうとう復活します。
ドイツのamazonではすでに購入できるようですが、日本のamazonのサイトには2018年8月24日現在まだ掲載されておらず、もうしばらく待たされそうです。
すぐに欲しい方は下記のドイツのamazonから購入可能ですし(ドイツからの送料はかかりますが)、待てるという方は日本のamazonのサイトに掲載されるのを待ってみてはいかがでしょうか。
 こちら

CDは2枚組で、CD1はヴォルフ「イタリア歌曲集」全46曲、CD2はシューマン「女の愛と生涯」、メンデルスゾーン2曲、レーヴェ2曲、ヴォルフ2曲、シューベルト3曲、グリーグ2曲、ブラームス「4つの厳粛な歌」が収録されているそうです。
CD2はシューマンとメンデルスゾーンがベルガーの歌唱で、他はプライの歌唱です(共演ピアニストはラウハイゼン、メルツァー等、曲により様々です)。
もちろん目玉はCD1のヴォルフ「イタリア歌曲集」全46曲です。
とびきりの名演にもかかわらず、今まで復活しなかったのは不思議です。
ソプラノのエルナ・ベルガーはもちろんチャーミングな歌唱を聞かせてくれますが、プライと組むと若干年齢差を感じさせる感はあります(プライより29歳年上です)。
ここでは若かりしヘルマン・プライの歌唱が本当に素晴らしいです。
かつて「詩と音楽 梅丘歌曲会館」さんのサイトにヴォルフ「イタリア歌曲集」全曲の記事を投稿した際に、様々な演奏家の録音を聞き比べたのですが、プライは他のどの男声歌手にも増して、この歌曲集のキャラクターにぴったりマッチしていました。
しかし、CD化されていなかった為、中古屋さんで購入したLPを毎回再生する手間がかかったのですが、その手間が報われるようなプライの溌剌とした名唱でした。
今回ようやくCD化されてこの名演がより広く知られることになればとても嬉しいことです。

上記のドイツのサイトで少しずつ試聴できるようになっているので、よろしければぜひサンプルを聴いてみてください。

Berger_prey_weissenborn_wolf


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(2018.12.2追記)

日本のamazonに上記のCDが掲載されていました。
 こちら


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ヘルマン・プライ(Hermann Prey)没後20年(2018年)に寄せて(名唱10選)

一時代を築いた名バリトン歌手、ヘルマン・プライ(Hermann Prey: 1929.7.11-1998.7.22)が亡くなって今日(2018年7月22日)でちょうど20年が経ちました。
1980~90年代に実演で繰り返し聴くことが出来たのが今となってはとてもよい思い出として残っています。
あの頃は夢中になって来日するリート歌手を聞きまくっていたなぁと懐かしく感じます。
はじめてプライを生で聴いたのは五反田のゆうぽうと簡易保険ホールで、ピアニスト、ヘルムート・ドイチュとのシューベルト、ゲーテ歌曲集でした。
あの時のプライは全体的にゆっくり目のテンポで噛み締めるような含蓄のある歌い方をしていました。
「御者クロノスに」はプライ&ドイチュの演奏をはじめて聴いて知った為、後に別のアーティスト、あるいはプライのずっと若い頃の録音を聴いて、あまりのテンポの違いに驚いたことを覚えています。
60年代のドラマティックな艶々した声のプライ、70年代の客観性が加わり、声と表現のバランスが素晴らしかったプライ、そして80年代以降の言葉への含蓄のある深みを追求した表現をするプライと大雑把に形容するとこんな感じでしょうか。
どの時期にもプライの魅力はあって、それぞれの時期を聞き比べるのも一興かと思います。
特にシューベルトの3大歌曲集は複数回ずつ録音しているので、時期の違いを味わうのに適していると思います。
ちなみにその詳細は過去の記事(以下のリンク先)をご覧ください。

 こちら

さて、プライ没後20年とはいっても、レコード会社は今のところ特別なリリースを考えていないようなので、私が動画サイトに掲載されていた中から「プライの歌うドイツリート10選」をしてみました。

●シューベルト: 魔王 D 328 (おそらくカール・エンゲル(P)?)
Schubert: Erlkönig, D 328 (probably Karl Engel(P)?)

おそらくPHILIPS録音の1970年代の録音と思われますが、DECCA時代の旧録音よりもさらにディクションが明晰でめりはりがきき、ドラマティックになっています。エンゲルも素晴らしい!

●R.シュトラウス: 献身 Op. 10/1 (ジェラルド・ムーア(P))
Richard Strauss: Zueignung, Op. 10/1 (Gerald Moore(P))

1965年録音。私が思うにプライはR.シュトラウスとの相性が抜群だと思うのですが、特にこの曲のようなパッションを感じさせる歌は絶品です!

●シューマン: こよなく麗しい月、五月に Op. 48/1 (「詩人の恋」より第1曲) (カール・エンゲル(P))
Schumann: Im wunderschönen Monat Mai, Op. 48/1 (Karl Engel(P))

EMIレーベルへの録音。「詩人の恋」の理想的な歌い手の一人がプライだと思います。彼の甘美な声はハイネの詩の繊細な若者像にぴったりです。

●レーヴェ: 甘美な埋葬 Op. 62/4 (カール・エンゲル(P))
Loewe: Süsses Begräbnis, Op. 62/4 (Karl Engel(P))

レーヴェのバラードの魅力を一般に伝えたのもプライの大きな功績の一つです。この曲はバラードではなくリートですが、プライの甘く美しい声の魅力が最大限に生かされていますね。この動画、一箇所音飛びしていますが、ご了承ください。

●ブラームス: 日曜日 Op. 47/3 (カール・エンゲル(P))
Brahms: Sonntag, Op. 47/3 (Karl Engel(P))

1962年録音。プライはドイツ民謡も沢山歌ってきましたが、ブラームスの民謡調の作品もとても良いですね。この作品などプライの為の曲と思えてしまいます。

●ヴォルフ: 春だ(彼だ) (メーリケ歌曲集より) (ジェラルド・ムーア(P))
Wolf: Er ist's (Gerald Moore(P))

1965年録音。ヴォルフの歌曲は一般にとっつきにくく捉えられがちですが、プライが歌うとなんと親密で聞きやすくなることでしょう!

●ベートーヴェン: きみを愛している WoO. 123 (レナード・ホカンソン(P))
Beethoven: Ich liebe dich, WoO. 123 (Leonard Hokanson(P))

1974年録音。愛の言葉をこれほど優しくささやかれたら、女性は受け入れるしかないでしょう。

●プフィッツナー: 5つの歌曲 Op. 9 (1. 庭師, 2. 孤独な女, 3. 秋に, 4. 勇敢な男, 5. 別れ) (ジェラルド・ムーア(P))
Pfitzner: Fünf Lieder, Op. 9 (1. Der Gärtner, 2. Die Einsame, 3. Im Herbst, 4. Der Kühne, 5. Abschied) (Gerald Moore(P))

1965年録音。重々しさと寂寥感のあるプフィッツナーのアイヒェンドルフの詩による歌曲集をプライは5曲まとめて歌っています。明るいだけではないプライの暗めな響きの魅力にどっぷり浸かれる録音です。

●メンデルスゾーン: 歌の翼に Op. 34/2 (レナード・ホカンソン(P))
Mendelssohn: Auf Flügeln des Gesanges, Op. 34/2 (Leonard Hokanson(P))

1974年録音。メロディーラインを美しいレガートで歌うプライをたっぷり堪能できます。

●マーラー: 「さすらう若者の歌(遍歴職人の歌)」(全4曲) (ベルナルト・ハイティンク(C))
Mahler: Lieder eines fahrenden Gesellen (Bernard Haitink(C))

おそらくPHILIPS録音と思われます。感情に溺れずコントロールをきかせながらも青年らしさもしっかり感じさせるプライの名唱です。「冬の旅」を得意とした彼にとってマーラーのこの歌曲集も共感していたのではないでしょうか。

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プライ生誕88周年を祝って

名バリトン、ヘルマン・プライが亡くなって来年で早くも20年となります。
来年にはきっとなんらかの記念の音源が発掘されるのではないかと期待していますが、今日(2017年7月11日)はプライの88回目の誕生日です。
プライやF=ディースカウの来日公演を楽しんでいた時期がますます遠くなっていきますが、実演に接する機会を得られたことはとても幸せなことだと思っています。

今日はプライの大きな録音プロジェクトだった「旧フィリップスレーベルのリート・エディション」の曲目などのデータをエクセルにまとめてみました。
よろしければご自由にお使い下さい(日本語曲名は空欄の箇所もあります)。

 「hermann_prey_liededition_20170711.xlsx」をダウンロード


かつて海外でCD化されるにあたって4巻のボックスで発売されましたが、国内盤としてはやはり有名曲の抜粋のみの発売でした。
それらのパッケージ商品は入手しにくくなっていると思いますが、現在のところDeutsche Grammophonが配信の形で全曲販売しています。

 http://www.deutschegrammophon.com/jp/cat/4766867?

ミンネゼンガーから20世紀の作曲家まで独唱歌曲のエキスを網羅したプライの素晴らしい業績を再び聞き直してみるのもいいのではないでしょうか。
ちなみに上記のDeutsche Grammophonのサイトでは全曲少しづつ試聴が出来るようになっているので、興味のある方はぜひ聞いてみて下さい。
1970年代の脂の乗り切ったプライの歌唱が楽しめると思います。

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最近購入したCD(プライ&ドイチュ「冬の旅」、ボストリッジ&ドレイク「シューベルト・ライヴ2」ほか)

ここのところ、CDショップで実際に現物を手にとってCDを購入するということからめっきり遠ざかっていたのですが、つい最近久しぶりにCDショップを訪れ、気になる5枚を購入しました。

Prey_bostridge_goerne

Schock_vickers

1)シューベルト/「冬の旅」 ヘルマン・プライ(Br)ヘルムート・ドイチュ(P) (1987年5月17日, Schwetzingen, Schloss, Rokokotheater)
2)シューベルト/歌曲集2 イアン・ボストリッジ(T)ジュリアス・ドレイク(P) (2014年5月22日, Wigmore Hall, London)
3)ブラームス/歌曲集 マティアス・ゲルネ(Br)クリストフ・エッシェンバッハ(P) (2013年4月、2015年12月, Teldex Studio Berlin)
4)シューベルト/「美しい水車屋の娘」 ルドルフ・ショック(T)ジェラルド・ムーア(P) (1958年11月, Gemeindehaus Berlin-Zehlendorf)他3曲(アドルフ・シュタウホのピアノ:1959年6月10日, Gemeindehaus Berlin-Zehlendorf)
5)シューベルト/「冬の旅」 ジョン。・ヴィッカーズ(T)ジェフリー・パーソンズ(P) (1983年7月9-13日, Salle Wagram, Paris)他インタビュー付き

現在のところ、5のみ未聴ですが、他の4枚は程度の差はあれど、聴いてみました。

2のボストリッジとドレイクのシューベルトはウィグモア・ホールでのシューベルト・ライヴの第2集で珍しいレパートリー満載で、シューベルト・ファン必聴の録音です。

3のゲルネとエッシェンバッハのブラームスですが、実は以前ゲルネがインタビューで「ブラームスはあまり好きではないので録音もしないかもしれない」というようなことを読んだことがあったので、今回興味をもって聞いてみました。
Op.32全9曲と、ハイネの詩による5曲、そして「4つの厳粛な歌」全4曲という内容です。
まだ聞きこんでいない為、はっきりと断言はしませんが、ゲルネのアプローチは若干ブラームスの歌曲とは相性がよくないのかもしれないと感じました。
もちろんいつものふくよかで包み込むような声はブラームス歌曲の温かみをしっかり感じさせてくれますし、ゲルネに合ったレパートリーを選んでいるとは思います。
ただ、彼の表現がドラマティックになる際に、ブラームス特有の器楽的なバランスが崩れがちに感じられ、同じことがピアノのエッシェンバッハにも感じられました。

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今回、この記事ではプライとドイチュの「冬の旅」について、感想を記したいと思います。

この日のプライは声の調子もすこぶる良く、音程がぴたっとはまっています。

比較的軽快なリズムで第1曲「おやすみ」が始められ、悲壮感よりもわき目もふらずに前進していく感じが出ています。
1987年といえば、当時の彼の録音ではすでに第三者的な諦観をすら漂わせていたプライですが、ここではライヴゆえか、かなり振幅の大きいドラマティックな表現も聞かせ、若かりし頃のプライを彷彿とさせる「なりきり」感が嬉しく感じられました。
声はあくまで自然に語るように、しかしメロディーラインは壊さずにという姿勢が感じられるのは、いつものプライですが、一言一言への軽重の比重の付け方が細やかで、言葉へのプライの寄り添い方は傾聴に値します。
例えば、「風見」の中の"reiche Braut(金持ちの嫁)"という言葉にアクセントを付けているのを聞くと、プライなりの強烈な皮肉を込めているように感じられます。
その他にも聞くべき箇所は多々あります。
例えば、

・「休息」での単語による"r"の巻き舌の付け方の軽重や、めりはりのきいた語り口。
・「春の夢」での甘美さな夢と冷たい現実の対比、そして最後の恋人をいつになったら抱けるのだろうというわずかに盛り上がって沈み込む箇所。
・「道しるべ」の最後の"zurück"に込められた思いの深さ!
・「宿」で墓地にも眠りを拒否されて、ただ進むのだと歌う箇所の決然とした歌いぶり!

「ライアー弾き」ではプライの歌う主人公は絶望しているようには聞こえません。
力強く自分の分身のようなライアー弾きに言葉をかけます。
プライはそこを大きなクレッシェンドの後に軽いデクレッシェンドで若干のアーチを作りますが、基本はよく響く声で、前を向いて歩きだす様を想像させる終わり方でした。

これより前に映像収録してDVDでも発売されている、同じくドイチュとの共演による演奏では、室内での演奏ということもあるのでしょうが、もっと振幅を抑えた、内向きの演奏だったように感じられます。

このライヴ、プライの甘美な美声がまだまだ健在だったことにまず喜びを感じますが、さらに言葉の語り方の軽重の付け方が微に入り細を穿つのは、歌いこんできた年輪のなせる業なのかもしれません。

そして、忘れてならないのがヘルムート・ドイチュのピアノです!
安定したテクニックに裏付けられたピアノは、粒立ちが明瞭で、クリアな響きが冬の凍てつく雰囲気をあらわす一方、「ボダイジュ」などでは包み込むような温かい響きも聞かせています。
その演奏はテキストとぴったり一致し、まさに変幻自在と言ってよいでしょう。
レガートとノンレガートの使い分けが絶妙にうまいのもドイチュの美点だと思います(ペダリングのうまさも)。
「からす」でのつきまとうような右手の響きのなんといううまさ!
リズムにのったテンポ感がプライの歌をどれほど助けていることでしょう。

まさにプライとドイチュが二人三脚で作り上げた、深遠だけれども、達観していない、最後に希望が見える世界を描き出してくれたように思います。

興味のある方はぜひお聞きになってみて下さい!

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/「冬の旅」(1987年シュヴェツィンゲン音楽祭初出ライヴCD)

ヘルマン・プライの初出音源による「冬の旅」が発売されることを、コメント欄より真子さんに教えていただいたので、ご紹介します。
すでに日本のamazonでも購入出来るようです(2016/6/29発売予定)。

シューベルト(Schubert)/「冬の旅(Winterreise)」
録音:1987年5月17日、シュヴェツィンゲン・シュロス、ロココ劇場
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(Br)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

詳細は以下のサイトをご覧下さい。
 こちら

プライは複数回「冬の旅」の録音を残していますが、名手ヘルムート・ドイチュとのこのライヴ録音は初出で、ファン待望のものでしょう(スタジオでの映像収録でも共演しているので、そのDVDとの比較も興味深いところです)。

1987年といえば、そろそろ渋みを増してきたプライの表現の深みが注目されるところです。
どんな演奏をドイチュと共に作り上げているのか、発売を楽しみに待つことにしましょう。

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