【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」&第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の考察
エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルで、先日アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」に関する考察がアップされましたが、続いて、第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」と第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の動画がアップされました!今回も楽しみながらアーメリングの見解を知ることが出来ます。ぜひご覧ください。
●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 8)
Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)
●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, Waldesgespräch (Liederkreis op. 39 no. 3)
Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)
※以下、ネタばれ注意!!
【第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」について】
※この動画の一番最後に、ここで流された演奏のピアニストについて触れられています。彼女らしく感傷とは無縁ですが、その口調にこのピアニストへの深い思いが伝わってきました。
「先日扱った第1曲と同じタイトルの第8曲「異郷にて」について扱いたいと思います。」
演奏が通して流される
アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳
「シューマンの曲も詩も第1曲と非常に違います。第1曲は常にゆっくりのテンポだったが、この曲は動きに満ちています」
第1曲冒頭と第8曲の冒頭の演奏を聴く
「第8曲は、小川のささやきとナイチンゲールの歌声、月光の輝きがこの速いテンポの音楽で表されています。オクターブで弾かれる両手はmfからすぐにデクレッシェンドとなり、自然界すべてが活気のある感動の中にいます」
第8曲の冒頭の演奏が流れる
「第1曲の詩では父母がずっと前に亡くなっているのに対して、この第8曲では、最愛の人が亡くなってから長く経っています」
「この詩の第2連後半では「古き麗しき時代」を思い返しています」
「興奮したテンポは2回中断されます」
該当箇所の演奏が流れる(リタルダンドされる)
"Von der alten,schönen Zeit(古き麗しき時代)"
"Und ist doch so lange tot(そして亡くなってとても長く経った)"
「"Und ist doch so lange tot"は3回繰り返され、歌手はこの悲しい詩句をそれぞれ異なる歌い方で表現しなければならないのです」
「この第8曲の音楽と詩は、ドイツロマン派の頂点とみなしうるかもしれません」
「人の愛は自然の中に飛び立つ。同じことが第1曲にも言えます。でもお互いを比較して、かなりのわくわくする効果の違いを体験してきました」
「1979年(*)に私はルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)とこの歌を録音しました。彼はこの動画を撮影する2週間前の2024年2月に旅立ちました。」
*注:アーメリングの思いのこもった言葉に水を差すようで甚だ恐縮ですが、ルドルフ・ヤンセンと録音したのはおそらく1980年5月2日の放送録音と思われます(5枚組CDボックス"80 jaar"に収録されています)。ちなみに1979年にはイェルク・デームスとPhilipsにスタジオ録音しています。
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【第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」について】
「演奏者については耳と心に先入観を持たないでもらう為、動画の最後に明かします」
「前奏は森の猟師の吹く角笛の響きを表しています」
「日が落ちる頃の話で、詩は男性と美しい女性のロマンティックな出会いについてです。男性はライン川の近くを馬に乗っています。男性は一緒に来て花嫁になるように彼女を誘います。何が起こるか聞いてみましょう」
男声歌手の演奏が通して流れる
アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳(※アーメリングの迫真の朗読を聞いてみてください!)
「前回までに扱った第1曲、第8曲は男性の歌でしたが、今回の第3曲は男性と女性の両方が出てきます。しかしこの曲は一人の歌手(女声もしくは男声歌手)によって歌われます」
男声歌手のローレライが語る箇所の演奏が流れる
女声歌手の演奏が通して流れる
「(女声歌手の演奏を聴いて)本当にドラマですね!話者を示す引用符のないテキストを見てみてください」
「このアイヒェンドルフの詩をシューマンは小説「予感と現代(Ahnung und Gegenwart)」から採りました。」
「この女声の演奏は、さきほどの男声の演奏よりゆっくりでした。テンポは"Ziemlich rasch(かなり速く)"と書かれています。」
「美しい花嫁のあなた!私があなたを家に送ろう(Du schöne Braut! Ich führ dich heim!)」
「heimは英語のhomeで家に連れ帰ろうとしています。これは貪欲に聞こえます。」
女声歌手の演奏の冒頭が流れる
「連れ帰ろうという男の声とローレライの声はとても対照的です。彼女は男の欺瞞と狡猾(Trug und List)に傷つけられたことによって悲しんでいます。
女性が悲しんでいる時の旋律線を描くとき、声色は暗いです。
この録音の女声歌手は男性の語る箇所では暗い音色のままではありません。」
女声歌手の途中の演奏(O flieh! Du weißt nicht,wer ich bin.まで)が流れる
「"あなたは私が誰だか知らない(Du weißt nicht,wer ich bin.)"-ここでは男性に対する怒りもこれから彼にふりかかることへの警告もありません。すると男性は彼女を褒め続けます」
「"あなたが誰か今分かったぞ(Jetzt kenn ich dich)"の前でリタルダンドになります。ここで楽譜には大きな効果が出るようになっています。歌手とピアニストはF(フォルテ)で演奏します」
女声歌手の途中の演奏(Du bist die Hexe Lorelei. まで)が流れる
「この女声歌手はローレライとばれた後の最終連でも比較的ゆっくりのままでまだ友好的に思えます」
「最後の数小節にいたってようやく鋭い子音を伴って復讐の厳しい音色になります」
女声歌手の途中の演奏(ローレライと悟ってから最後まで)が流れる
「こうして角笛の信号は遠くに消えていきます」
別の女声歌手の演奏が通して流れる
「1800年頃以降クレメンス・ブレンターノは中世の物語(Saga)を用いて魔女ローレライの話を書きました。
私もこの有名な伝説の場所のそばを列車や車やボートで通りましたが、私はラッキーでした(※伝説にあるようなことは何も起こらなかったということ)。」
動画内で流された音源の種明かし(流れた順番による)
1.
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)
2.
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S)&ジェフリー・パーソンズ(P)
3.
エリー・アーメリング(S)&ルドルフ・ヤンセン(P)
最後に合唱によるジルヒャーの「ローレライ」の音源が流れる
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(参考)
The LiederNet Archive (In der Fremde, Op. 39, No. 8)
The LiederNet Archive (Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)
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