ヴォルフ/秘めた愛(Verschwiegene Liebe)

Verschwiegene Liebe
 秘めた愛

Über Wipfel und Saaten
In den Glanz hinein -
Wer mag sie erraten,
Wer holte sie ein?
Gedanken sich wiegen,
Die Nacht ist verschwiegen,
Gedanken sind frei.
 梢と苗を越えて
 輝きの中へと。
 誰にそれを言い当てられようか。
 誰がそれに追いついたのか。
 思いは揺れ動き、
 夜は口をつぐむ、
 思いは自由だ。

Errät es nur eine,
Wer an sie gedacht
Beim Rauschen der Haine,
Wenn niemand mehr wacht
Als die Wolken, die fliegen -
Mein Lieb ist verschwiegen
Und schön wie die Nacht.
 言い当てられるのはただ一人の女性のみ、
 誰が彼女のことを思っていたのかを、
 森のざわめく頃に、
 もはや誰も目覚めていない時分、
 飛び行く雲のほかには。
 私の愛は口をつぐみ、
 そして夜のごとく美しい。

詩:Joseph Karl Benedikt Freiherr von Eichendorff (1788-1857)
曲:Hugo Wolf (1860-1903)

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ヴォルフの20曲(後にヴォルフ自身により3曲省かれた)からなる歌曲集「アイヒェンドルフの詩(Gedichte von Eichendorff)」の第3曲。
1888年8月31日ヴィーン作曲。

ヴォルフ歌曲の中でもとりわけ繊細さの際立った美しい作品で人気が高い。
2節の有節形式で、詩の言葉への密着度よりは全体の雰囲気を優先させた音楽といえるだろう。
ピアノ後奏のロマンティックな響きにはうっとりさせられる。

Dietrich Fischer-Dieskau(Baritone) Gerald Moore(Piano)
これ以上望むもののない最高に美しい演奏の一つ。
詩の内容を反映したイメージ映像も投稿者のセンスの良さを感じる。

Barbra Streisand
ポピュラー歌手のバーブラ・ストライザンドはクラシック歌曲のアルバムもつくっているようだ。
クラシック歌手にはないハスキーな味のある歌は非常に魅惑的で、何度もリピートして聴きたくなる。

Heinrich Schlusnus(Baritone) Franz Rupp(piano)
甘美な美声で知られた往年のバリトン、シュルスヌスと、M.アンダーソンやクライスラーの共演者としても知られたルップの共演。
歌手の自在な表現が主流だった時期の貴重な記録であり、声の魅力に身を委ねて聴く演奏だろう。

ピアノパートのみ
歌なしで聴くと、ピアノパートにどのような音楽が付けられているかよく分かり興味深い。

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ホルツマイア&クーパー/アイヒェンドルフ歌曲集

アイヒェンドルフ歌曲集(EICHENDORFF LIEDER)
Holzmair_cooper_eichendorffPHILIPS: 464 991-2
録音:1999年10月13-17日、Haydnsaal, Schloss Esterházy, Eisenstadt
ヴォルフガング・ホルツマイア(Wolfgang Holzmair)(BR)
イモジェン・クーパー(Imogen Cooper)(P)

メンデルスゾーン(Mendelssohn: 1809-1847)
1.森の城(Das Waldschloß)
2.小姓の歌(Pagenlied)

フランツ(Franz: 1815-1892)
3.おやすみ(Gute Nacht)Op. 5-7
4.狩の歌(Jagdlied)Op. 1-9

メンデルスゾーン
5.夜の歌(Nachtlied)Op. 71-6
6.さすらいの歌(Wanderlied)Op. 57-6

シューマン(Schumann: 1810-1856)
歌曲集「リーダークライス(Liederkreis)」Op. 39
7.異国にて(In der Fremde)
8.間奏曲(Intermezzo)
9.森の会話(Waldesgespräch)
10.静けさ(Die Stille)
11.月夜(Mondnacht)
12.美しい異国(Schöne Fremde)
13.城の上で(Auf einer Burg)
14.異国にて(In der Fremde)
15.悲しみ(Wehmut)
16.たそがれ(Zwielicht)
17.森にて(Im Walde)
18.春の夜(Frühlingsnacht)

アリベルト・ライマン(Aribert Reimann: 1936-)
歌曲集「夜曲(Nachtstück)」
19.私たちは誠実に見張っている(Wir ziehen treulich auf die Wacht)
20.とても陽気に歌っていた鳥たち(Die Vöglein, die so fröhlich sangen)
21.城の前で木々の中を(Vor dem Schloß in den Bäumen)
22.谷底が呼んでいるのが聞こえるかい(Hörst du die Gründe rufen)
23.ここで私は誠実な見張りのように立っている(Hier steh ich wie auf treuer Wacht)

ヴォルフ(Wolf: 1860-1903)
24.楽師(Der Musikant)
25.セレナーデ(Das Ständchen)
26.なによりいいのは(Lieber alles)
27.夜(Die Nacht)
28.郷愁(Heimweh)
29.愛の幸せ(Liebesglück)
30.やけっぱちの恋人(Der verzweifelte Liebhaber)
31.ひめやかな愛(Verschwiegene Liebe)
32.船乗りの別れ(Seemanns Abschied)

ツェムリンスキー(Zemlinsky: 1871-1942)
33.町の前で(Vor der Stadt)

コルンゴルト(Korngold: 1897-1957)
34.夜にさすらう人(Nachtwanderer)Op. 9-2

プフィッツナー(Pfitzner: 1869-1949)
35.秋に(Im Herbst)Op. 9-3
36.誘い(Lockung)Op. 7-4
37.わが娘との別れに(Zum Abschied meiner Tochter)

シェック(Schoeck: 1886-1957)
38.追悼(Nachruf)

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「のらくら者の日記」などで知られるヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ(Joseph Karl Benedikt Freiherr von Eichendorff: 1788.3.10, Schloss Lubowitz bei Ratibor - 1857.11.26, Neisse)はドイツ・ロマン派の代表的詩人の一人であり、自然の中に身をおいた詩人の心のうちを吐露した詩は多くの作曲家の作曲意欲をかき立てた。
最も有名なのはシューマンの歌曲集「リーダークライス」Op. 39だろうが、ヴォルフは20曲(後に3曲削除)からなる「アイヒェンドルフの詩(Gedichte von Eichendorff)」を作曲し、ほかにもフランツ、ブラームス、メンデルスゾーン、プフィッツナー、シェックなども作曲している。
シューベルトがもっと長生きしていたらおそらく彼の詩に作曲していただろう。
森、山、雲、海、小川、夜、月、星、風、ナイチンゲール、バラ、等々ドイツ・ロマン派のキーワードに事欠かない彼の詩は、読み手や聴き手のイメージを充分にふくらませる。
一方、ヴォルフの「アイヒェンドルフ歌曲集」が、上述の要素に限らず、勇壮な人物像を数多くとりあげているのは、この詩人に対するありきたりのイメージを払拭するのに役立っているかもしれない。

これはアイヒェンドルフの詩による歌曲を38曲集めたCDだが、シューマンやヴォルフのみによるアイヒェンドルフ歌曲集はこれまでにも出ているが、9人の作曲家による集成というのは意外とありそうでなかった企画ではないだろうか。
思い出す限りではF=ディースカウ&サヴァリシュのザルツブルク・ライヴがあったぐらいだろうか。

ここで演奏しているのは、朴訥とした表情がなんとも魅力的なハイバリトンの美声歌手ヴォルフガング・ホルツマイアと、歌曲ピアニストとしても最高の一人と思うイモジェン・クーパーである。
ホルツマイアは今年のラ・フォル・ジュルネで久しぶりに来日する筈だったのだが、何故かキャンセルとなったのが残念である(来日していてもチケットは取れなかったので聴けなかったのだが)。

メンデルスゾーンやフランツの歌曲は確かにシューベルトやシューマンのような斬新さを歌曲史にもたらさなかったが、無視するにはあまりにも惜しい美しい小品を沢山残してくれた。
その一端をこのアルバムで聴けるのがなんともうれしい。

シューマンの「リーダークライス」はこのアルバムの目玉といっていいだろう。
メランコリックな「異国にて」(1曲目)や繊細な美しさが比類ない「月夜」など名曲の宝庫だが、なかでも9曲目の「悲しみ」という曲が個人的には気に入っている。
長調の穏やかな響きの中でひっそりと語られる心の底の悲しみがなんとも切なく、後奏の響きがまた慰撫するような優しさにあふれていて、私にとって癒しの1曲である。

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Wehmut, Op. 39-9
 悲しみ

Ich kann wohl manchmal singen,
Als ob ich fröhlich sei,
Doch heimlich Tränen dringen,
Da wird das Herz mir frei.
 私は時に歌うことができる、
 あたかも陽気であるかのように。
 だがひそかに涙があふれ出る、
 それで私の心は解き放たれるのだ。

Es lassen Nachtigallen,
Spielt draußen Frühlingsluft,
Der Sehnsucht Lied erschallen
Aus ihres Kerkers Gruft.
 ナイチンゲールは、
 外で春風が戯れると、
 憧れの歌を響かせる、
 牢獄の墓場から。

Da lauschen alle Herzen,
Und alles ist erfreut,
Doch keiner fühlt die Schmerzen,
Im Lied das tiefe Leid.
 あらゆる心が耳をそばたてて
 なにもかもが喜ぶ。
 だが、誰も苦痛を感じないのだ、
 歌にひそむ深い悲しみを。

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アリベルト・ライマンはF=ディースカウやファスベンダーのピアノ共演者としても有名な作曲家で、オペラ「リア王」などの作品がよく知られている。
この5つの歌曲は、あたかも筆跡の濃淡や、絵と余白がお互いを引き立てている水墨画のような趣を感じた。
余韻に多くを語らせるという特徴はわれわれ日本人には馴染みやすいかもしれない。

ヴォルフの「アイヒェンドルフ歌曲集」は、彼の作品としては例外的に親しみやすく楽しい。
ヘルマン・プライが得意としていたのもうなずける。
ここでホルツマイアが歌った9曲は、この歌曲集の様々な側面を満遍なくとりあげていて良い選曲だと思う。
「船乗りの別れ」の前奏の和音は当時ブルックナーを驚かせたほど斬新だったようだ。
「ひめやかな愛」はヴォルフらしくない素直に美しい旋律が紡がれる名作でしばしば歌われる。
私は「夜」という作品の神秘的な響きがとりわけ気に入っているが、あまりにも伝統にのっとっていると感じたのだろうか、ヴォルフは「アイヒェンドルフ歌曲集」の改訂版出版の際にこの曲を外してしまうのである。

ツェムリンスキーの「町の前で」は楽師の奏でる音楽がピアノパートで表現されるが、ヴォルフなどと比べるとすでに後期ロマン派の響きが感じとれる。

コルンゴルトの「夜にさすらう人」はなまめかしいピアノの響きが耳が残る(似たような日本歌曲があったような)。

プフィッツナーは「ダンツィヒにて」のような優れたアイヒェンドルフ歌曲を多く残しているが、ここでは3曲が選ばれている。
Op. 9は5曲からなる小さなアイヒェンドルフ歌曲集でいずれも大変魅力的だが、ここで歌われている「秋に」はアルペッジョの響きにのって秋のぞくっとするような寂寥感がなんとも心に迫ってくる作品である。
「わが娘との別れに」はF=ディースカウも好んで歌っていたが、後半に向けて高揚していく真に感動的な作品である。

スイス人、オットマル・シェックは20世紀の作曲家の中で最もロマンティックな歌曲に力を注いだ作曲家だろう。
アイヒェンドルフの詩による膨大な数の歌曲を作っているが、この「追悼」は素直で親しみやすい歌の旋律と、リュートを模した際立って美しいピアノの響きで、アルバムの最後をしめくくるにふさわしい素敵な作品である。

ホルツマイアはオーストリア出身の貴重なバリトン歌手として数々の歌曲を歌ってきたが、純粋で素直な彼持ち前の魅力はそのままに、さらに安定した歌唱技術と細やかな表現力が加わり、ますます熟した歌を聴かせてくれた。
彼のシューベルトを聴くといつも、ヴィーンなまりのSの響きがところどころ顔を出すのが微笑ましく、洗練された標準ドイツ語からは得られない地方特有の温もりを感じたものだが、今回の歌曲集でもそれが聴かれたのが懐かしく感じられた。

イモジェン・クーパーは、例えばメンデルスゾーンやフランツの一見素朴なピアノパートから驚くほどの奥行きと躍動感を表現し、本来の魅力を最大限に引き出していた。
バルカローレのようなリズムの「おやすみ」での寂寥感、あるいは「狩人の歌」でひたすら元気な響きの中で見せる細やかな表情の変化など、これらの作品がロマン派の歌曲史の中で確かに重要な存在意義を持っていることを実感させてくれるような素晴らしい演奏であった。
「リーダークライス」ではシューマン特有の線の絡み合いがなんとも味わい深く、一つ一つの音がしっかり呼吸していて、ただただ聴きほれていた。
最終曲「春の夜」での1箇所のミスタッチだけが惜しい。
録り直しできなかったのだろうか。
ヴォルフの「船乗りの別れ」での雄弁な表現にはブラヴォーである。

これはあまり知られていないCDだと思うが、1人の詩人からいかに多くの解釈の可能性が生まれるかを知ることの出来る貴重な録音だと思う。
おそらくまだ廃盤にはなっていないと思うので興味のある方は聴いてみてください(HMVでは扱っていないかもしれません。amazonで入手可能です)。

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プフィッツナー「秋に」(詩:アイヒェンドルフ)

Im Herbst, Op. 9-3
 秋に

Der Wald wird falb, die Blätter fallen,
Wie öd und still der Raum!
Die Bächlein nur gehn durch die Buchenhallen
Lind rauschend wie im Traum,
Und Abendglocken schallen
Fern von des Waldes Saum.
 森は黄に色あせ、葉は落ちる、
 あたりのなんと荒涼として静かなことか!
 小川はひたすらぶなの広場を通り流れるのみ、
 夢の中のように穏やかにさざめきながら。
 そして夕べの鐘が鳴り渡る、
 森のはずれの遠くで。

Was wollt ihr mich so wild verlocken
Hier in der Einsamkeit?
Wie in der Heimat klingen diese Glocken
Aus stiller Kinderzeit-
Ich wende mich erschrocken,
Ach, was mich liebt, ist weit!
 おまえたちは何故私をこんなに乱暴にここへ誘おうとするのか、
 孤独の中で。
 故郷にいるようにこの鐘は響く、
 静かな子供時代を過ごした故郷にいるように。
 私は驚いて振り返る、
 ああ、私を愛したものははるか彼方!

So brecht hervor nur, alte Lieder,
Und brecht das Herz mir ab!
Noch einmal grüß' ich aus der Ferne wieder,
Was ich nur Liebes hab'.
Mich aber zieht es nieder
Vor Wehmut wie ins Grab.
 さあ響き始めるのだ、古い歌よ、
 そして私の心を砕いてくれ!
 もう一度遠くから挨拶を送ろう、
 私がただ愛したものへ向けて。
 だが私は沈み込む、
 悲しみのあまり、墓の中にいるように。

詩:Josef Karl Benedikt von Eichendorff (1788.3.10, Schloß Lubowitz bei Ratibor - 1857.11.26, Neiße)
曲:Hans Erich Pfitzner (1869.5.5, Moscow - 1949.5.22, Salzburg)

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プフィッツナーの歌曲は秋がよく似合う。
歌曲の王道ではない人の中では私の最も好きな作曲家の一人である。
彼の歌曲の中でもとりわけ気に入っているのは、アイヒェンドルフの詩による5曲からなる作品9の歌曲集である。
いわゆる連作歌曲集ではないのだが、まとめて歌われることも多く、心にしみる雰囲気で貫かれているように思う。
プライ&ムーアのColumbiaへのLP録音でこれらをはじめて知り、その後、EMIのF=ディースカウ&エンゲル盤や、cpoのプフィッツナー全集でのA.シュミット&ヤンセン(1998年)の録音などを聴いたが、いずれも素晴らしかった。

「秋に」は吹き渡る寂しげな秋の風のような幅広いアルペッジョを奏でるピアノの上を深刻にかみしめるような歌が歌われる。
A-B-A’の素朴な構成だが、分かりやすい旋律なのに胸をしめつけられる思いがする。
保守的と評されるプフィッツナーだが、彼の作品は魅力にあふれている。
もっと聴かれても(あるいは演奏されても)いいのではないだろうか。

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