プフィッツナー「秋に」(詩:アイヒェンドルフ)

Im Herbst, Op. 9-3
 秋に

Der Wald wird falb, die Blätter fallen,
Wie öd und still der Raum!
Die Bächlein nur gehn durch die Buchenhallen
Lind rauschend wie im Traum,
Und Abendglocken schallen
Fern von des Waldes Saum.
 森は黄に色あせ、葉は落ちる、
 あたりのなんと荒涼として静かなことか!
 小川はひたすらぶなの広場を通り流れるのみ、
 夢の中のように穏やかにさざめきながら。
 そして夕べの鐘が鳴り渡る、
 森のはずれの遠くで。

Was wollt ihr mich so wild verlocken
Hier in der Einsamkeit?
Wie in der Heimat klingen diese Glocken
Aus stiller Kinderzeit-
Ich wende mich erschrocken,
Ach, was mich liebt, ist weit!
 おまえたちは何故私をこんなに乱暴にここへ誘おうとするのか、
 孤独の中で。
 故郷にいるようにこの鐘は響く、
 静かな子供時代を過ごした故郷にいるように。
 私は驚いて振り返る、
 ああ、私を愛したものははるか彼方!

So brecht hervor nur, alte Lieder,
Und brecht das Herz mir ab!
Noch einmal grüß' ich aus der Ferne wieder,
Was ich nur Liebes hab'.
Mich aber zieht es nieder
Vor Wehmut wie ins Grab.
 さあ響き始めるのだ、古い歌よ、
 そして私の心を砕いてくれ!
 もう一度遠くから挨拶を送ろう、
 私がただ愛したものへ向けて。
 だが私は沈み込む、
 悲しみのあまり、墓の中にいるように。

詩:Josef Karl Benedikt von Eichendorff (1788.3.10, Schloß Lubowitz bei Ratibor - 1857.11.26, Neiße)
曲:Hans Erich Pfitzner (1869.5.5, Moscow - 1949.5.22, Salzburg)

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プフィッツナーの歌曲は秋がよく似合う。
歌曲の王道ではない人の中では私の最も好きな作曲家の一人である。
彼の歌曲の中でもとりわけ気に入っているのは、アイヒェンドルフの詩による5曲からなる作品9の歌曲集である。
いわゆる連作歌曲集ではないのだが、まとめて歌われることも多く、心にしみる雰囲気で貫かれているように思う。
プライ&ムーアのColumbiaへのLP録音でこれらをはじめて知り、その後、EMIのF=ディースカウ&エンゲル盤や、cpoのプフィッツナー全集でのA.シュミット&ヤンセン(1998年)の録音などを聴いたが、いずれも素晴らしかった。

「秋に」は吹き渡る寂しげな秋の風のような幅広いアルペッジョを奏でるピアノの上を深刻にかみしめるような歌が歌われる。
A-B-A’の素朴な構成だが、分かりやすい旋律なのに胸をしめつけられる思いがする。
保守的と評されるプフィッツナーだが、彼の作品は魅力にあふれている。
もっと聴かれても(あるいは演奏されても)いいのではないだろうか。

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