最近購入したCD(プライ&ドイチュ「冬の旅」、ボストリッジ&ドレイク「シューベルト・ライヴ2」ほか)

ここのところ、CDショップで実際に現物を手にとってCDを購入するということからめっきり遠ざかっていたのですが、つい最近久しぶりにCDショップを訪れ、気になる5枚を購入しました。

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1)シューベルト/「冬の旅」 ヘルマン・プライ(Br)ヘルムート・ドイチュ(P) (1987年5月17日, Schwetzingen, Schloss, Rokokotheater)
2)シューベルト/歌曲集2 イアン・ボストリッジ(T)ジュリアス・ドレイク(P) (2014年5月22日, Wigmore Hall, London)
3)ブラームス/歌曲集 マティアス・ゲルネ(Br)クリストフ・エッシェンバッハ(P) (2013年4月、2015年12月, Teldex Studio Berlin)
4)シューベルト/「美しい水車屋の娘」 ルドルフ・ショック(T)ジェラルド・ムーア(P) (1958年11月, Gemeindehaus Berlin-Zehlendorf)他3曲(アドルフ・シュタウホのピアノ:1959年6月10日, Gemeindehaus Berlin-Zehlendorf)
5)シューベルト/「冬の旅」 ジョン。・ヴィッカーズ(T)ジェフリー・パーソンズ(P) (1983年7月9-13日, Salle Wagram, Paris)他インタビュー付き

現在のところ、5のみ未聴ですが、他の4枚は程度の差はあれど、聴いてみました。

2のボストリッジとドレイクのシューベルトはウィグモア・ホールでのシューベルト・ライヴの第2集で珍しいレパートリー満載で、シューベルト・ファン必聴の録音です。

3のゲルネとエッシェンバッハのブラームスですが、実は以前ゲルネがインタビューで「ブラームスはあまり好きではないので録音もしないかもしれない」というようなことを読んだことがあったので、今回興味をもって聞いてみました。
Op.32全9曲と、ハイネの詩による5曲、そして「4つの厳粛な歌」全4曲という内容です。
まだ聞きこんでいない為、はっきりと断言はしませんが、ゲルネのアプローチは若干ブラームスの歌曲とは相性がよくないのかもしれないと感じました。
もちろんいつものふくよかで包み込むような声はブラームス歌曲の温かみをしっかり感じさせてくれますし、ゲルネに合ったレパートリーを選んでいるとは思います。
ただ、彼の表現がドラマティックになる際に、ブラームス特有の器楽的なバランスが崩れがちに感じられ、同じことがピアノのエッシェンバッハにも感じられました。

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今回、この記事ではプライとドイチュの「冬の旅」について、感想を記したいと思います。

この日のプライは声の調子もすこぶる良く、音程がぴたっとはまっています。

比較的軽快なリズムで第1曲「おやすみ」が始められ、悲壮感よりもわき目もふらずに前進していく感じが出ています。
1987年といえば、当時の彼の録音ではすでに第三者的な諦観をすら漂わせていたプライですが、ここではライヴゆえか、かなり振幅の大きいドラマティックな表現も聞かせ、若かりし頃のプライを彷彿とさせる「なりきり」感が嬉しく感じられました。
声はあくまで自然に語るように、しかしメロディーラインは壊さずにという姿勢が感じられるのは、いつものプライですが、一言一言への軽重の比重の付け方が細やかで、言葉へのプライの寄り添い方は傾聴に値します。
例えば、「風見」の中の"reiche Braut(金持ちの嫁)"という言葉にアクセントを付けているのを聞くと、プライなりの強烈な皮肉を込めているように感じられます。
その他にも聞くべき箇所は多々あります。
例えば、

・「休息」での単語による"r"の巻き舌の付け方の軽重や、めりはりのきいた語り口。
・「春の夢」での甘美さな夢と冷たい現実の対比、そして最後の恋人をいつになったら抱けるのだろうというわずかに盛り上がって沈み込む箇所。
・「道しるべ」の最後の"zurück"に込められた思いの深さ!
・「宿」で墓地にも眠りを拒否されて、ただ進むのだと歌う箇所の決然とした歌いぶり!

「ライアー弾き」ではプライの歌う主人公は絶望しているようには聞こえません。
力強く自分の分身のようなライアー弾きに言葉をかけます。
プライはそこを大きなクレッシェンドの後に軽いデクレッシェンドで若干のアーチを作りますが、基本はよく響く声で、前を向いて歩きだす様を想像させる終わり方でした。

これより前に映像収録してDVDでも発売されている、同じくドイチュとの共演による演奏では、室内での演奏ということもあるのでしょうが、もっと振幅を抑えた、内向きの演奏だったように感じられます。

このライヴ、プライの甘美な美声がまだまだ健在だったことにまず喜びを感じますが、さらに言葉の語り方の軽重の付け方が微に入り細を穿つのは、歌いこんできた年輪のなせる業なのかもしれません。

そして、忘れてならないのがヘルムート・ドイチュのピアノです!
安定したテクニックに裏付けられたピアノは、粒立ちが明瞭で、クリアな響きが冬の凍てつく雰囲気をあらわす一方、「ボダイジュ」などでは包み込むような温かい響きも聞かせています。
その演奏はテキストとぴったり一致し、まさに変幻自在と言ってよいでしょう。
レガートとノンレガートの使い分けが絶妙にうまいのもドイチュの美点だと思います(ペダリングのうまさも)。
「からす」でのつきまとうような右手の響きのなんといううまさ!
リズムにのったテンポ感がプライの歌をどれほど助けていることでしょう。

まさにプライとドイチュが二人三脚で作り上げた、深遠だけれども、達観していない、最後に希望が見える世界を描き出してくれたように思います。

興味のある方はぜひお聞きになってみて下さい!

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/「冬の旅」(1987年シュヴェツィンゲン音楽祭初出ライヴCD)

ヘルマン・プライの初出音源による「冬の旅」が発売されることを、コメント欄より真子さんに教えていただいたので、ご紹介します。
すでに日本のamazonでも購入出来るようです(2016/6/29発売予定)。

シューベルト(Schubert)/「冬の旅(Winterreise)」
録音:1987年5月17日、シュヴェツィンゲン・シュロス、ロココ劇場
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(Br)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

詳細は以下のサイトをご覧下さい。
 こちら

プライは複数回「冬の旅」の録音を残していますが、名手ヘルムート・ドイチュとのこのライヴ録音は初出で、ファン待望のものでしょう(スタジオでの映像収録でも共演しているので、そのDVDとの比較も興味深いところです)。

1987年といえば、そろそろ渋みを増してきたプライの表現の深みが注目されるところです。
どんな演奏をドイチュと共に作り上げているのか、発売を楽しみに待つことにしましょう。

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/シューベルト:シラーの詩による歌曲リサイタル映像(1990年 バート・ウーラハ、フェストハレ)

バリトンのヘルマン・プライがピアニストのヘルムート・ドイチュと共演したライヴ映像がアップされていましたので、ご紹介します。
1990年のバート・ウーラハ秋の音楽祭のコンサートからで、すべてシューベルトのシラーの詩による歌曲が並んでいます。
プライのシューベルト、シラー歌曲集といえば、PHILIPSへの全集からの分売として出されたLPレコード(カール・エンゲルのピアノ)が大変高く評価されているとおり、プライお得意のレパートリーです。
東京でも、シューベルト生誕200年を記念して1997年初頭に催された一連のシューベルト・シリーズの一環としてシラー歌曲集が歌われたのが懐かしく思い出されます(ミヒャエル・エンドレスのピアノ)。
下記の8曲中、最初の3曲は非常に長い曲ですので、ご覧になる前に用事をお済ませになった方がいいかもしれませんね(笑)。
「人質」は太宰治の「走れメロス」の原型となったシラーの詩によるもので、テキストの2行目に「メロス」という言葉も出てきます(下記の歌詞リンクではダモン(Damon)となっていますが、シラーの変更により、歌われる歌詞も演奏者にゆだねられるようです)。
いずれも必ずしも知られているとは言えない作品ばかりですが、もし時間がない方は最初に「タルタロスの群れ」を、そして時間に余裕の出来た方は歌詞を追いながら「海に潜る男」をご覧になるといいのではないでしょうか。
プライの噛みしめるような一言一言の重みは、バラード歌いとしての彼の良さが最大限に発揮されていますし、シューベルトのメロディーの素晴らしさに寄り添っていて見事です。
若かりしドイチュが、プライという巨匠を前にして、あくまでプライの音楽性を優先して、かっちりとした骨組みを作っているのを聴くのも楽しみの一つです。
どうぞゆっくり楽しんで下さい!

※なお、下記で歌詞対訳をリンクさせていただいた藤井さんのサイト「梅丘歌曲会館 詩と音楽」は、2016年9月29日まで現在のリンク先で閲覧可能で、それ以降は別の場所に移転予定とのことです。

バート・ウーラハ秋の音楽祭1990年
バート・ウーラハ、、フェストハレ(フェスティヴァルホール)にて
(Herbstliche Musiktage Bad Urach 1990
aus der Festhalle in Bad Urach)

ヘルマン・プライ(Hermann Prey) (Baritone)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch) (Piano)

シューベルト/屍の幻想(Eine Leichenphantasie) D7 (21:46)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/海に潜る男(Der Taucher) D111 (23:58)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/人質(Die Bürgschaft) D246 (15:40)

 歌詞対訳(甲斐貴也訳)

シューベルト/タルタロスの群れ(Gruppe aus dem Tartarus) D583 (3:05)

シューベルト/アルプスの狩人(Der Alpenjäger) D588 (6:28)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/希望(Hoffnung) D637 (3:36)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

憧れ(Sehnsucht) D636 (4:12)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

巡礼者(Der Pilgrim) D794 (7:33)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

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ディアナ・ダムラウ&ヘルムート・ドイチュ/シュヴァルツェンベルク・シューベルト・ライヴRadio4配信中(期間限定)

毎年オーストリアの閑静な場所で開かれているシューベルティアーデから、ソプラノのディアナ・ダムラウと、ピアニストのヘルムート・ドイチュによる今年行われたばかりのライヴがオランダのRadio4で期間限定配信されています。

 こちら

上記のサイトの「Luister concert」をクリックすると全曲続けて流れます。
ブロックごとに聞きたい時は、その下の4つの再生ボタンのうち、お好きなボタンをクリックしてお聞き下さい。

曲目などデータは以下のとおりです。

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ライヴ録音:2015年6月21日, Angelika Kauffmann Hall, Schwarzenberg

ディアナ・ダムラウ(Diana Damrau) (sopraan)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch) (piano)
ポール・メイエ(Paul Meyer) (klarinet)(D.965)

フランツ・シューベルト(Franz Schubert):

大都会から遠く(Ferne von der großen Stadt) D.483
春の歌(Frühlingslied) D.398
春の信仰(Frühlingsglaube) D.686
春の歌(Frühlingslied) D.919
大地(Die Erde) D.579B
緑野の歌(Das Lied im Grünen) D.917

岩の上の羊飼い(Der Hirt auf dem Felsen) D.965

愛はいたる道に漂う(Liebe schwärmt auf allen Wegen) D.239/6
愛(Die Liebe) D.522
あちらこちらに矢が飛び交う(Hin und wieder fliegen Pfeile) D.239/3
アノット・ライルの歌(Lied der Anne Lyle) D.830

エレンの歌Ⅰ(憩え、兵士よ)、Ⅱ(狩人よ、狩をやめよ)、Ⅲ(アヴェ・マリア)(Ellens Gesänge aus Walter Scotts "The Lady of the Lake") D.837-839
マリア像(Das Marienbild) D.623
ひめやかな恋(Heimliches Lieben) D.922
デルフィーネ(Delphine) D.857/1

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ダムラウの伸縮自在で細やかな表現はリートそのものの魅力を伝えてくれますし、ベテラン、ドイチュのピアノは余裕すら感じられる変幻自在のタッチで堅実に演奏しています。

期間限定配信ですので、興味のある方はくれぐれもお早めに!

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ヴォルフ「イタリア歌曲集」全曲の映像

パメラ・コバーン(ソプラノ)とヘルマン・プライ(バリトン)がそれぞれヘルムート・ドイチュとトーマス・レアンダーのピアノで、ヴォルフの「イタリア歌曲集」を男女の対話が続くような配列に並べ替えて全曲演奏したライヴ映像を見つけました。

いつもはプライと共演しているドイチュが、ここではコバーンの共演者となり、プライの共演者はレアンダーという人。
ピアニストが異なると、曲と曲の合間をほとんどおかずに畳み掛けるように曲をつなげることが出来るのが効果的です。

アップしてくれた方に感謝!
素晴らしい演奏なので、ぜひご覧ください。

Recorded at Festhalle Bad Urach, 1989

(1/6)
Auch kleine Dinge können uns entzücken(小さくてもうっとりとさせられるものはある) (S)
Nicht länger kann ich singen, denn der Wind(ぼくはもう歌えないよ、だって風が) (BR)
Schweig einmal still, du garst'ger Schwätzer dort(ちょっと黙ってよ、そこの不愉快なおしゃべり男) (S)
O wüßtest du, wie viel ich deinetwegen(おお、お前は分かっているのだろうか、どれほど俺がお前を思って) (BR)
Wer rief dich denn?(一体誰があんたを呼んだのよ) (S)
Hoffärtig seid Ihr, schönes Kind(ふんぞり返っておいでだな、麗しき娘よ) (BR)
Was soll der Zorn, mein Schatz, der dich erhitzt(なにを怒っているの、大切な方、そんなに熱くなって) (S)
Geselle, woll'n wir uns in Kutten hüllen(相棒よ、おれたちゃ修道服でもまとって) (BR)
Verschling der Abgrund meines Liebsten Hütte(深淵が恋人の小屋を飲み込んでしまえ) (S)
Nun laß uns Frieden schließen(さあ、仲直りしよう) (BR)

(2/6)
Wohl kenn' ich Euren Stand, der nicht gering(賤しからぬあなた様の御身分は重々承知しておりますわ) (S)
Wenn du mich mit den Augen streifst und lachst(君が僕をちら見して笑い出し) (BR)
Wenn du, mein Liebster, steigst zum Himmel auf(あなたが、愛する方、天国に昇る時がきたら) (S)
Gesegnet sei, durch den die Welt entstund(この世界の生みの親に祝福あれ) (BR)
Mir ward gesagt, du reisest in die Ferne(遠いところに旅立つそうね) (S)
Selig ihr Blinden(見えない人たちは幸いだ) (BR)
Man sagt mir, deine Mutter woll es nicht(あなたのお母さんがお望みでないらしいわね) (S)
Heut Nacht erhob ich mich um Mitternacht(昨夜、真夜中に私が起き上がると) (BR)
O wär dein Haus durchsichtig wie ein Glas(ああ、あなたのお家がガラスみたいに透き通っていたらいいのに) (S)

(3/6)
Schon streckt' ich aus im Bett die müden Glieder(ベッドの中でへとへとの体を大きく伸ばしているというのに) (BR)
Heb' auf dein blondes Haupt und schlafe nicht(ブロンドの頭をあげておくれ、眠るんじゃないぞ) (BR)
Mein Liebster singt am Haus im Mondenscheine(あたしの恋人が月明りの注ぐ家の前で歌っているわ) (S)
Ein Ständchen Euch zu bringen kam ich her(セレナードを捧げにわたくし参りました) (BR)
Wir haben beide lange Zeit geschwiegen(私たちは二人とも、長いこと押し黙っていました) (S)
Was für ein Lied soll dir gesungen werden(君にはどんな歌を歌ってあげたらいいのかな) (BR)
Ich esse nun mein Brot nicht trocken mehr(私はもう乾いたパンを食べることはありません) (S)

(4/6)
Benedeit die sel'ge Mutter(今は亡き君の母上に祝福あれ) (BR)
Ihr jungen Leute, die ihr zieht ins Feld(戦場に向かわれるお若い方々) (S)
Sterb' ich, so hüllt in Blumen meine Glieder(僕が死んだら、この体を花で包みこんでおくれ) (BR)
Wie soll ich fröhlich sein und lachen gar(どうして陽気でいられるもんか、まして笑うことなんて) (S)
Der Mond hat eine schwere Klag' erhoben(月がひどい不満をぶちまけ) (BR)
Gesegnet sei das Grün und wer es trägt(緑色と、緑を身にまとう人に幸ありますように) (S)
Und willst du deinen Liebsten sterben sehen(君の彼氏が死ぬところを見たいのなら) (BR)

(5/6)
Mein Liebster hat zu Tische mich geladen(彼氏があたしを食事に招いてくれたの) (S)
Ich ließ mir sagen und mir ward erzählt(私がしょっちゅう聞かされた噂では) (BR)
Wie lange schon war immer mein Verlangen(もうどれほどずっと待ち焦がれてきたことでしょう) (S)
Und steht Ihr früh am Morgen auf vom Bette(それから、あなたが朝早くベッドから起き上がり) (BR)
Mein Liebster ist so klein(私の恋人はとってもちっちゃいの) (S)
Daß doch gemalt all deine Reize wären(君の魅力がすべて描かれて) (BR)
Du denkst mit einem Fädchen mich zu fangen(あなたは細い糸たった一本で私を捕まえて) (S)
Ihr seid die Allerschönste weit und breit(あなたはこの世で最高に美しい方) (BR)
Nein, junger Herr, so treibt man's nicht, fürwahr(駄目よ、お若い方、そんな事しちゃ嫌) (S)

(6/6)
Wie viele Zeit verlor ich, dich zu lieben(君を愛することで、どれほどの時間を無駄使いしてきたことか) (BR)
Du sagst mir, daß ich keine Fürstin sei(侯爵夫人様じゃないんだからって、あたしに言うけど) (S)
Laß sie nur gehn, die so die Stolze spielt(放っておけばいいさ、あんな高慢ちきを演じる女なんか) (BR)
Ich hab in Penna einen Liebsten wohnen(あたし、ペンナに住んでる恋人がいるの) (S)

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キルヒシュラーガー&ドイチュ/ヴォルフ歌曲集

ヴォルフ歌曲集(HUGO WOLF / SONGS)
Kirchschlager_deutsch_wolfSONY CLASSICAL: 88697391892
録音:2003年8月26-29日, Casino Baumgartner, Vienna

アンゲーリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Kirchschlager)(MS)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

ヴォルフ(1860-1903)作曲
1.アナクレオンの墓(ゲーテ歌曲集)
2.娘の初恋の歌(メーリケ歌曲集)
3.少年とみつばち(メーリケ歌曲集)
4.夜明け前のひととき(メーリケ歌曲集)
5.飽くことのない愛(メーリケ歌曲集)
6.捨てられた娘(メーリケ歌曲集)
7.出会い(メーリケ歌曲集)
8.ミニョンⅠ(ゲーテ歌曲集)
9.ミニョンⅡ(ゲーテ歌曲集)
10.ミニョンⅢ(ゲーテ歌曲集)
11.ミニョンの歌(ゲーテ歌曲集)
12.ジプシー娘(アイヒェンドルフ歌曲集)
13.災難(アイヒェンドルフ歌曲集)
14.夜の魔力(アイヒェンドルフ歌曲集)
15.眠られぬ者の太陽(「ハイネ、シェイクスピア、バイロン歌曲集」よりバイロン歌曲)
16.あらゆる美女もかなわない(「ハイネ、シェイクスピア、バイロン歌曲集」よりバイロン歌曲)
17.隠遁(メーリケ歌曲集)
18.春に(メーリケ歌曲集)
19.さようなら(メーリケ歌曲集)
20.考えてもみよ、おお心よ(メーリケ歌曲集)
21.旅路で(メーリケ歌曲集)
22.お入り、立派な兵隊さん(ケラーによる「昔の調べ」No.1)
23.愛する人がアトリのように歌うというのなら(ケラーによる「昔の調べ」No.2)
24.ねえ、青っぽい坊や(ケラーによる「昔の調べ」No.3)
25.朝露の中、歩いていると(ケラーによる「昔の調べ」No.4)
26.炭焼き女が酔っ払って(ケラーによる「昔の調べ」No.5)
27.明るい月が、なんと冷たく遠くに輝いていることか(ケラーによる「昔の調べ」No.6)

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以前に書籍にCDが付いた形でフランスで出版されたものと同一音源が最近純粋なCDパッケージで再発売された。
書籍の時は若干値段が高めだったこともあり、購入を見合わせていたのだが、今回通常の価格で再発されたことを喜びたい。
録音も今から6年も前に録音されたものだが、その分歌手の若々しい美声を堪能でき、今や重鎮のドイチュの名人芸も味わえる。

オーストリアのサルツブルク出身のメゾソプラノ歌手、キルヒシュラーガーの声は明るくて美しい。
ソプラノと間違えそうな透き通った清澄な美声で、作為もなく素直に明晰に歌を紡いでいく。
低声よりもむしろ高声が魅力的だ。
ヴォルフの歌曲に難解さを感じる向きには格好の入門となるのでないか。
ドイツ語は舞台発音と日常発音の折衷のように聞こえる。
"r"もあまり巻き舌を強調することはなく、母音化することが多い印象だ。
一方、声が軽めで、あまり声色に深さを加えようともしないため、「ミニョン」歌曲群や「捨てられた娘」などの深刻な表情が求められる作品では、聴き手の心を動かすまでには至らない感も残る。
とはいえ、訓練され、コントロールの行き届いた声と音楽はやはり素晴らしく、ヴォルフの曲を楽しく聴くには問題ない。
「ジプシー娘」や「眠られぬ者の太陽」など、往年のシュヴァルツコプフのような濃密な表情を期待してしまうと肩すかしをくらうほどあっさりしているが、これはこれで現代風の解釈として新鮮であり、そろそろシュヴァルツコプフの呪縛から聴き手も解き放たれるべきなのかもしれない。
「隠遁」のような旋律美がまさった素直な作品ではキルヒシュラーガーの美質が発揮されて素晴らしい。
今ならおそらくもっと成熟を求められるかもしれないが、6年前の30代後半の美声と若々しい表現は確かに貴重な記録である。

ドイチュは持てる音色、テクニック、音楽性、テンポ感覚、バランス感覚、詩の読解力の限りを尽くして、個々の全く異なる作品から見事なまでに魅力を惹き出す。
このピアノの多彩さと豊かでデリケートな響きは時に歌声以上に耳をそばだたせる。
ただただ素晴らしいの一言に尽きる。

選曲もさまざまな歌曲集から満遍なく名曲が集められており、珍しいケラーの詩による「昔の調べ」が全曲聴けるのも貴重である。
昨日3月13日はヴォルフの149回目の誕生日であった。
キルヒシュラーガーのストレートな美声と、ドイチュの練達の至芸で、ヴォルフの多彩な作品を聴くのも楽しいのではないか。

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プライ日本公演曲目1988年(第8回来日)

第8回来日:1988年11月

Prey_deutsch_1988_pamphletヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
ヘルムート・ドイッチェ(Helmut Deutsch)(P)
バイエルン国立歌劇場(Bayerische Staatsoper)
ウォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)(C)

11月13日(日)15:00 NHKホール:バイエルン国立歌劇場
11月18日(金)17:00 NHKホール:バイエルン国立歌劇場
11月22日(水)18:30 宇都宮市文化会館:リサイタル
11月24日(金)18:30 群馬音楽センター:リサイタル
11月26日(日)19:00 サントリーホール:リサイタル
11月28日(火)19:00 茨城県立県民文化センター:リサイタル
(?12月3日(土)15:00 神奈川県民ホール:バイエルン国立歌劇場)(12月3日はプライとネッカーのどちらがベックメッサーとして出演したか不明)

●バイエルン国立歌劇場公演

ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(Die Meistersinger von Nürnberg)(プライはベックメッサー役)

 ハンス・ザックス:ベルント・ヴァイクル(Bernd Weikl)/テオ・アダム(Theo Adam)
 ポーグナー:クルト・モル(Kurt Moll)/ヤン=ヘンドリック・ローターリング(Jan-Hendrik Rootering)
 ワルター:ルネ・コロ(René Kollo)/ヨーゼフ・ホプファーヴィーザー(Josef Hopferwieser)
 ダーヴィット:ペーター・シュライヤー(Peter Schreier)
 エヴァ:ルチア・ポップ(Lucia Popp)
 マグダレーナ:コルネリア・ヴルコップフ(Cornelia Wulkopf)
 ベックメッサー:ヘルマン・プライ(Hermann Prey)/ハンス=ギュンター・ネッカー(Hans Günter Nöcker)
 コートナー:アルフレート・クーン(Alfred Kuhn)
 フォーゲルゲザング:ケネス・ガリソン(Kenneth Garrison)
 ナハティガル:マルコ・シンデルマン(Marco Schindelmann)
 ツォルン:ウルリヒ・レス(Ulrich Reß)
 アイスリンガー:ヘルマン・サペル(Hermann Sapell)
 モーザー:クラース・アーカン・アーンシェ(Claes H. Ahnsjö)
 オルテル:ウォルフガング・ラオホ(Wolfgang Rauch)
 シュヴァルツ:クリスチャン・ベッシュ(Christian Boesch)
 フォルツ:ハンス・ヴィルブリンク(Hans Wilbrink)
 夜警:ヤン=ヘンドリック・ローターリング(Jan-Hendrik Rootering)/クルト・モル(Kurt Moll)/ヘルマン・サペル(Hermann Sapell)
 バイエルン国立歌劇場合唱団(Der Chor der Bayerischen Staatsoper)
 バイエルン国立管弦楽団(Das Bayerische Staatsorchester)
 指揮:ウォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)

 演出:アウグスト・エヴァディング(August Everding)
 装置・衣装:ユルゲン・ローゼ(Jürgen Rose)
 合唱指揮:ウド・メアポール(Udo Mehrpohl)

●リサイタル 共演:ヘルムート・ドイッチェ(P)

シューベルト/歌曲集「冬の旅」(Winterreise)D911
(おやすみ/風見の旗/凍った涙/かじかみ/菩提樹/あふれる涙/川の上で/回想/鬼火/休息/春の夢/孤独/郵便馬車/白くなった頭/からす/最後の希望/村にて/嵐の朝/まぼろし/道しるべ/宿/勇気/まぼろしの太陽/辻音楽師)

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ヘルマン・プライ8回目の来日は、前回から4年後の1988年。
今回はバイエルン国立歌劇場の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」公演でベックメッサーを歌うための来日で、同時に「冬の旅」のリサイタルを4箇所で歌った。
前回来日時のオペラ・アリア・プログラムでもハンス・ザックスの“にわとこ”のモノローグは歌っていたが、ベックメッサー役、しかも全曲を披露したのはこの時が最初で最後であった。
バイエルン国立歌劇場は「マイスタージンガー」を11月13日、18日、23日(以上NHKホール)、12月3日(神奈川県民ホール)の4回公演しているが、ベックメッサー役はプライとハンス=ギュンター・ネッカーのダブルキャストになっている。
そのうち、13日と18日はプライ、23日はネッカーが歌ったことが、たかさんのブログ他で分かったが、12月3日はどちらが歌ったのか分からなかった。
プライは「冬の旅」を連続して歌った後なので、ネッカーが歌った可能性の方が高いかもしれない。
「冬の旅」のピアニストは前回に続き、ヘルムート・ドイチュとの2度目の共演である。
「冬の旅」は1980年のフィガロ出演時を除いて、連続披露の記録を続けている。
私は26日のサントリーホールでの「冬の旅」を安価なP席で聴いたのだが、当時つけていた自分のメモを読むと、この時のプライの「豊麗な声」に感激している。
プライの声は録音で聴くと、その温かみのある声の印象が強いが、体の奥から湧き出てくるような豊かな声のボリュームは実演に接してはじめて感じたものだった。
この時はP席(ステージの後ろ)だったため、プライの声が反対側に響いていくのを惜しく思いつつも、かなり近くから彼の歌う姿を見ることが出来た貴重な体験だった。
この時も音程が上がりきらない箇所はあったが、80年代にDENONレーベルに録音したビアンコーニとの録音と基本的には近い解釈だったようだ。
「かじかみ」「回想」のような早目の曲をあえてゆっくり歌うのもこの当時のプライの特徴だが、全体的に自然でおおらかな歌唱だったとメモに書いている。
当時の私はこの演奏から絶望よりも希望を感じ取ったようだ。

ちなみにバイエルン国立歌劇場の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」以外の公演は、「アラベラ」「コシ・ファン・トゥッテ」「ドン・ジョヴァンニ」で、「ミサ・ソレムニス」「第九交響曲」「ワーグナーのガラ・コンサート」も披露されているが、プライはそれらには出演していないようだ。

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プライ日本公演曲目1984年(第6回&第7回来日)

第6回来日:1984年2~3月

Prey_deutsch_1984_pamphletヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
ヘルムート・ドイッチェ(Helmut Deutsch)(P)
読売日本交響楽団
ブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)(C)

Prey_deutsch_1984_chirashi2月22日(水)19:00 ゆうぽうと簡易保険ホール:プログラムA
2月24日(金)18:30 福岡郵便貯金ホール:プログラムA
2月26日(日)15:00 名古屋市民会館大ホール:プログラムB
2月28日(火)19:00 大阪フェスティバルホール:プログラムA
3月1日(木)19:00 ゆうぽうと簡易保険ホール:プログラムB
3月3日(土)19:00 ゆうぽうと簡易保険ホール:プログラムC

●プログラムA 共演:ヘルムート・ドイッチェ(P)

シューベルト/歌曲集「冬の旅」(Winterreise)D911

●プログラムB「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ、フランツ・シューベルトによる歌曲とバラード」 共演:ヘルムート・ドイッチェ(P)

シューベルト作曲
第1部(1814~1816)
 歌びと(Der Sänger)D149
 あこがれ(Sehnsucht)D123
 憩いなき恋(Rastlose Liebe)D138
 海の静けさ(Meeres Stille)D216
 漁師(Der Fischer)D225
 トゥーレの王(Der König in Thule)D367
 宝掘り(Der Schatzgräber)D256
 魔王(Erlkönig)D328

 ~休憩~

シューベルト作曲
第2部(1816~1822)
 プロメテウス(Prometheus)D674
 人間の限界(Grenzen der Menschheit)D716
 ガニュメート(Ganymed)D544
 御者クロノスに(An Schwager Kronos)D369
 耽溺(Versunken)D715
 秘めごと(Geheimes)D719
 遠く離れたひとに(An die Entfernte)D765
 逢う瀬と別れ(Willkommen und Abschied)D767

●プログラムC「オペラ・アリアの夕べ」 共演:読売日本交響楽団;ブルーノ・ヴァイル(C)

モーツァルト作曲
歌劇<ドン・ジョヴァンニ>序曲(Overture Don Giovanni)
ドン・ジョヴァンニのアリア:
 “みんな楽しくお酒をのんで”(酒の歌)(Fin ch'han dal vino calda la testa)
 “窓辺においで”(セレナード)(Deh! vieni alla finestra, o mio tesoro)

歌劇<フィガロの結婚>序曲(Overture Le Nozze di Figaro)
フィガロのアリア:
 “もう飛ぶまいぞ、この蝶々”(Non più andrai, farfallone amoroso)
伯爵のレチタティーヴォとアリア:
 “もうあんたの勝ちだといったな~溜息をついている間に”(Hai già vinto la causa! - Vedrò, mentr'io sospiro)

歌劇<魔笛>序曲(Overture Die Zauberflöte)
パパゲーノのアリア:
 “おいらは鳥さし”(Der Vogelfänger bin ich ja)
 “かわいい娘か女房が”(Ein Mädchen oder Weibchen wünscht Papageno sich!)

 ~休憩~

ワーグナー作曲
歌劇<ニュルンベルグのマイスタージンガー>前奏曲(Vorspiel Die Meistersinger von Nürnberg)
ハンス・ザックスの“にわとこ”のモノローグ(Fliedermonolog of Hans Sachs "Wie duftet doch der Flieder")

歌劇<タンホイザー>序曲より(Overture Tannhäuser)
ヴォルフラムのアリア:
 “この高貴なるつどいを見渡すと”(Blick's ich umher in diesem edlen Kreise)
 “夕星の歌”(An den Abendstern "O du, mein holder Abendstern")

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ヘルマン・プライ6回目の来日は、前回から4年後の1984年。
前回はオペラ公演のみだったので、歌曲演奏会は6年ぶりということになる。
また、これまではオケとの共演は歌曲のみが歌われていたのに対し、今回ははじめてオペラアリア集が歌われている。
ピアニストのヘルムート・ドイチュ(1945年Wien生まれ)とも日本初共演である。
オーケストラは第3回来日時にも共演した読売日本交響楽団が務めている(今回も主催は読売新聞社)が、ブルーノ・ヴァイル(1949年Hahnstätten生まれ)とは初共演である。

曲目については、再び「冬の旅」が3公演で歌われ、前回のオペラ公演を除いてすべての来日公演で歌われたことになる。
さらにBプログラムとしてゲーテの詩によるシューベルトの歌曲集16曲が初期と後期作品に分けて歌われたが、1982年3月にIntercordレーベル(国内盤はテイチク発売)に録音された24曲のシューベルトのLP録音とほぼ同じ選曲と順序となっている
(LPに含まれていないのは「人間の限界」のみで、他はすべてLPの最初の15曲がそのままの順序で歌われた)。
実は私がはじめてプライの実演に接したのは、3月1日の五反田で行われたこのBプロで、音楽の授業でインパクトを受けた「魔王」が著名な歌手の歌で聴けるとあってかなり興奮して聴きに行ったものだった。
プライはどの曲も遅めのテンポで噛みしめるように歌っていた。
ドイチュも硬質のタッチでリズミカルな「御者クロノスに」や「逢う瀬と別れ」など、これ以上はないぐらい遅めのテンポ設定を貫く(プライの指示であろうことは確かである)。
だが、その遅めのどっしりしたテンポでしっかりと歌われるプライの語りはきっと当時の私の心を打ったことだろう。
当時のメモによると、「プライはいつもの暖かい歌を聴かせていたし、ドイッチュのピアノも深い解釈によってていねいに演奏していた」とある。
歌曲を聴き始めて間もない頃の私でもプライの声に温かさを感じていたということになる。
その声の魅力は熱烈なマニアだけでなく初心者にも訴えるものがあったということなのだろう。

3月1日のアンコールはメモによるとシューベルトの「ムーサの息子」「川辺にて」「野ばら」「あらゆる姿の恋する男」「さすらい人の夜の歌Ⅱ」(順不同)の5曲だったようだ。

プログラム冊子にはピアニストのドイチュの初来日は1980年と書かれているが、音楽年鑑などを見ているとすでに70年代後半に膨大な数の日本人歌手と共演していることが分かった。
どういうきっかけで日本での活動をはじめたのか興味がもたれるところだ。
鮫島有美子さんのご主人であることは言うまでもないが(この当時はまだ鮫島さん曰く「友だち」だったようだ)、ゼーフリート、シュトライヒ、コトルバシュといった往年のプリマ・ドンナたちとの共演で相当鍛えられたようだ。
プライとのリハーサルも時にはかなり辛い思いをしたそうだが、そういう経験を経て、現在の第一人者の位置を築いてきたというのは感慨深い。

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第7回来日:1984年4月

アンネ・ゾフィー・ムター(Anne-Sophie Mutter)(VLN)
ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
小林一男(T)
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
東京芸術大学音楽学部(合唱)
東京放送児童合唱団
NHK交響楽団
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)(C)

4月29日(日) 19:15 NHKホール

●日独交歓・NHK交響楽団特別演奏会
プフィッツナー/「ハイルブロンのケートヒェン」序曲
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調Op. 26
オルフ/「カルミナ・ブラーナ」

プライは上述のように1984年2~3月に来日してリート公演を行っているが、同じ年の4月下旬に「日独交歓・NHK交響楽団特別演奏会」に出演するため再来日している。

当日の公演はテレビ放映時に見た記憶がある。
オルフという作曲家も「カルミナ・ブラーナ」という作品もこの時初耳だった。
ルチア・ポップの美しい舞台姿と声、プライのリートとは違ったワイルドな歌唱が印象に残っている。特にプライのファルセットをはじめて聴いて、面白い作品だなと思ったのを覚えている。
まだサヴァリッシュも若々しかった。

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ベーア&ドイチュ/シューマン歌曲集

シューマン/リート、ロマンツェ、バラーデ集(Lieder, Romanzen & Balladen)
Baer_deutsch_schumannEMI CLASSICS: 7243 5 56199 2 1
録音:1996年2月, No. 1 Studio, Abbey Road, London
オーラフ・ベーア(Olaf Bär)(BR)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

シューマン/「E.ガイベルによる3つの詩」Op. 30(魔法の角笛をもった少年/小姓/イダルゴ(スペイン貴族))
「ある画家の歌集からの6つの詩」Op. 36(日曜日にライン川で/セレナーデ/無上のこと/日光に寄せて/詩人の癒し/愛の使い)[詩:ライニク]
「ロマンツェとバラーデ、第1集」Op. 45(宝を掘る男/春の旅/夕べ浜辺で)[詩:アイヒェンドルフ;アイヒェンドルフ;ハイネ]
「ロマンツェとバラーデ、第2集」Op. 49(二人のてき弾兵/敵対し合う兄弟/尼僧)[詩:ハイネ;ハイネ;フレーリヒ]
手袋Op. 87[詩:シラー]
「ロマンツェとバラーデ、第3集」Op. 53(ブロンデルの歌/ローレライ/哀れなペーター)[詩:ザイドル;ローレンツ;ハイネ]
ベルシャザルOp. 57[詩:ハイネ]
「デンマークと北ギリシャの5つのリート」Op. 40(においすみれ/母の夢/兵隊/楽師/漏らされた恋)[訳詩:シャミッソー]

オーラフ・ベーアは1957年ドレースデン生まれのバリトン歌手で、1985年にデビューアルバムの「詩人の恋」、「リーダークライス」Op. 39をジェフリー・パーソンズの共演でリリースした時、F=ディースカウの後継者という扱いでかなり騒がれたのが懐かしく思い出される。初来日した際には声の不調で本来の良さが堪能出来なかったが、その後再来日して爽やかな歌を聴かせてくれたものだった。最近は来日もなく、リートの録音も2000年を過ぎてからはリリースされていないのが寂しい(オペラの録音はあるようだが)。

ベーアのシューマンは前述した1985年7月録音の「詩人の恋」、「リーダークライス」Op. 39に次いで、1989年9月録音の「リーダークライス」Op. 25、「ケルナーの詩による12の歌曲集」Op. 35がリリースされ、3枚目のアルバムがここで扱う1996年2月録音のCDである。最初の2枚はジェフリー・パーソンズの共演だったが、パーソンズは残念ながら1995年に亡くなり、3枚目のアルバムは現在の歌曲界の第一人者ヘルムート・ドイチュが共演している。

このCDの特徴はその選曲にあるといえるだろう。シラーの詩による「手袋」以外はすべて“歌の年”1840年に作曲された作品を出版された形のまままとめて演奏している。こういう形の選曲によるシューマン歌曲集は非常に珍しいので、レパートリー的にも貴重な録音といえるのではないか。ハイネの歌曲やOp, 40のシャミッソー訳の歌曲集は比較的演奏されることが多いが、ガイベルによるOp. 30やライニクによるOp. 36はかなり聴く機会が少ないレパートリーである。

ベーアの声はデビュー録音から約10年後の録音にもかかわらず、爽やかで柔らかい美声は健在である。彼は豊かな声量で聴かせるタイプではないので、巨大なコンサートホールで聴くよりも録音でその良さを発揮するように思える。デビュー録音からすでに際立っていたドイツ語の発音の美しさも相変わらずで、言葉の比重の大きいシューマンを歌う時にこの特質が大きな強みになっている。「二人のてき弾兵」などハイネの詩が生き生きと語られているのを感じずにいられない。彼は声を張る時によく専門家から力みを指摘されていたが、録音では無理をする必要もないせいかあまり気にならない。「魔法の角笛をもった少年」のような明るく希望に満ち溢れた曲はベーアの歌が最も生き生きと輝く。一方「イダルゴ」のリズムにのった歌や「セレナーデ」のような甘い誘惑、さらに「宝を掘る男」でのドラマティックな表現なども彼の持ち味にさらに一味加わった役者ぶりを披露している。ガイベルの詩による「ある画家の歌集からの6つの詩」Op. 36のようなドラマよりも抒情を優先した作品群は彼の清涼感をまさに求めていたのではないか。簡素な抒情から劇的なバラードまで特有の気品で聴く者に違和感を抱かせずに聴かせてしまう技量はやはり彼が非凡な逸材である証ではないだろうか。個人的にはF=ディースカウよりもベーアの方がシューマンのロマンティックな世界を見事に描き出しているように思える。

ヴィーン出身のヘルムート・ドイチュの演奏はシューマンの描いた世界を最大限に読み解いて余すところなく表現した素晴らしいものだ。彼の美質の一つにそのタッチの素晴らしさがあると思う。作品によって、なめらかなレガートや、重厚な表現、軽快なリズムなど、あらゆるパレットを自在に駆使している。それに加え常に引き締まったテンポ設定は作品に推進力を与え、決してだれることがない。スマートだがすべきことはすべて表現し尽す彼の演奏から作品の魅力を教えてもらえるのは贅沢な喜びである。

最初に演奏される「E.ガイベルによる3つの詩」Op. 30と「ある画家の歌集からの6つの詩」Op. 36について簡単にご紹介しておきたい。

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「E.ガイベルによる3つの詩」Op. 30(希望に満ちた若者、けなげな小姓、自信みなぎるプレイボーイといった異なるタイプの男を歌った興味深い曲集)

1 「魔法の角笛をもった少年」陽気な若者が馬にまたがり広大な世界に繰り出し、各地で人々との交流をもちながら旅を続けるという内容で、生き生きとした勇壮な曲。希望に満ちた気持ちを反映したかのようなtraraの繰り返しが印象的。ベーアの爽やかな語り口がとても魅力的である。

2 「小姓」小姓としてお仕えさせてもらえるならば、恋人との逢瀬の見張り役でも何でもしますという健気な男の気持ちを歌った内容。詩に影響されてか、慎ましやかな曲調で貫かれている。地味だが詩の内容には一致しているように思える。丁寧なベーアの歌がこのつつましい曲にはよく合っていた。

3 「イダルゴ」2曲目とは一転してドン・ジョヴァンニのような放蕩男が女性とのアバンチュールやライバルとの決闘に繰り出すという内容。ツィターのつまびきを思わせるリズムに乗って、世慣れた男のセリフが堂々と歌われる。女性を誘惑するのにうってつけのベーアの声の魅力が感じられ、ドイチュの曲の性格に応じたタッチの巧みさも素晴らしい。

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「ある画家の歌集からの6つの詩」Op. 36(詩人のライニクは画家としても活動していた)

1 「日曜日にライン川で」日曜日にライン川のほとりを散歩する楽しさを歌い、最後にはドイツを賛美して終わる。和音の連打にのって穏やかに歌われる。素直な中にシューマンらしい才気もあり、なかなか魅力的な曲だ。

2 「セレナーデ」ギターをつまびくピアノパートの上で恋する女性を外に誘い出そうとする男の甘い恋歌が披露される。ベーアの甘い声はこの種の曲にぴったりだ。

3 「無上のこと」恋人の美しい瞳を見つめることやキスをすること以上に素敵なことがあるとはまさか想像もしていなかったという内容。これも和音連打のピアノの上で穏やかだがリズミカルに進む曲。

4 「日光に寄せて」明るい日の光に誘われて外に出るが、愛する相手のいない自分はそれゆえに苦しむという内容。付点のリズムが特徴的な曲。

5 「詩人の癒し」夢でみた美しい女性にある晩谷間で実際に会ったが彼女は妖精の女王だった。ぼくは別の女性をさがすことにしようという内容。和音の連打にのってはじまるが、詩の内容に従って通作的に展開していく。ただ基本的なテーマは繰り返され、統一感も配慮されている。かなりドラマティックな展開の曲で、曲集中のアクセントになっているように思う。ベーアも見事だが、ドイチュの雄弁な演奏は聴き応え充分である。

6 「愛の使い」東へと急ぐ雲に、恋人への言伝を頼むという内容。ゆったりとした曲想が4節続くので若干冗長さは免れないが、その甘美な抒情はシューマンらしいと言えるかもしれない。

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