ペーター・レーゼルのバッハ、そしてモーツァルト(2016年5月11日 紀尾井ホール)

ペーター・レーゼルのバッハ、そしてモーツァルト
Peter Rösel plays J.S.Bach and Mozart

2016年5月11日(水)19:00 紀尾井ホール

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(P)

J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach)/イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971 (Italian Concerto in F major, BWV971)
 I. -
 II. Andante
 III. Presto

J.S.バッハ/パルティータ第4番 ニ長調 BWV828 (Partita No.4 in D major, BWV 828)
 1. Overture
 2. Allemande
 3. Courante
 4. Aria
 5. Sarabande
 6. Menuet
 7. Gigue

~休憩~

モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)/ソナタ ニ長調 KV576(Sonata in D major, BWV576)
 I. Allegro
 II. Adagio
 III. Allegretto

モーツァルト/幻想曲とソナタ ハ短調 KV475/KV457(Fantasie in C minor, KV475; Sonata in C minor, KV457)
 I. Molto allegro
 II. Adagio
 III. Allegro assai

~アンコール~
J.S.バッハ/フランス組曲第5番ト長調BWV816より 第4曲ガヴォット
J.S.バッハ;レーゼル編/主よ人の望みの喜びよBWV147-6

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ペーター・レーゼルのリサイタルを2年ぶりに聴いた。
彼とゆかりの深い紀尾井ホールの客席はほぼ満席に近い状態で、いかに彼の演奏が日本の聴衆に受け入れられているかをうかがわせる。

1945年2月生まれのレーゼルはすでに71歳。
しかし舞台に登場した彼はこれまでとなんら変わることのない早めの足取りでピアノの前に進んだ。
お元気そうである。
私が生で彼のバッハやモーツァルトを聴くのは今回がはじめて。
これまでベートーヴェンのソナタやロマン派の多くの名作を通じて、レーゼルの高い技巧に裏打ちされた安定した演奏は知ってはいたが、今回あらためてレーゼルのもつ温かみあふれる音楽に魅了された。

バッハもモーツァルトも練習曲のように、あるいは機械のように演奏されかねない作品ではあるが、レーゼルのタッチは一瞬たりともそのような方向に陥ることはなかった。
決して思い入れたっぷりの演奏というわけでもないのに、紡ぎだされる音に常に血が通っているのである。
技術的にも最後のモーツァルトのソナタハ短調の最終楽章でやや疲れが感じられた他はほぼ完璧であった。

バッハの音楽がこれほど人間味にあふれて聞こえることはそうそうあることではない。
レーゼルはテンポやダイナミクスを決して派手に対比させる人ではないのだが、どのフレーズをとっても血が通っていて、それゆえにバッハのポリフォニーが生き生きと輝くのだ。

モーツァルトのソナタ ニ長調も奇をてらわず、あくまで正攻法なのだが、響き出す音の一音一音がとにかく温かいのである。
一方、幻想曲 ハ短調KV475とソナタ ハ短調KV457は、連続して演奏されることが多く、今回も続けて演奏されたのだが、悲劇の中にほのかな光を灯すのがレーゼルの魅力と感じた。
実は「幻想曲ハ短調KV475」は私が遠い昔、下手なピアノをかじっていた頃、先生から教材として与えられた作品だった。
当時私はその先生から楽譜を与えられるまで、この作品を一度も聴いたことがなかった。
まだ少ない小遣いをやりくりしていた学生時代なので、レコードも持っておらず、楽譜を前に格闘していたことを今でもよく覚えている。
従って、この曲に関しては、ピアニストの誰かの演奏を知る前に、自分で音を出して初めて知るという難しさと楽しさを与えてくれた思い出深い作品だった。
この作品、10分強ある様々な部分からなる曲で、とても初心者の手に負えない技術的な難所もあるのだが、それ以前に異なる音楽の羅列から一つの流れを作るのがとても難しかったのを覚えている。
そんな個人的な思い入れのある作品である為、実演でこの曲を聴く時は、純粋に作品として楽しめない嫌いがあったのだ。
だが、今回のレーゼルの演奏は、久しぶりにこの曲に接したということもあるのだろうが、モーツァルトの作品として冷静に聴くことが出来た方だと思う。
それにしてもうまい人が弾くと、こんなに違うものかと思い知らされた、この日のレーゼルの演奏だった。

アンコールはバッハを2曲。
「主よ人の望みの喜びよ」はマイラ・ヘスの編曲版が著名だが、今回聴きながらヘス版にちょっと手を加えているのかと思っていたら、レーゼル自身の編曲とのこと。
マイラ・ヘスも往年のピアニストであり、同じピアニストとしてレーゼルも自分なりのアレンジを加えたくなったのかもしれない。
心に染みる名演だった。

まだまだ現役ばりばりのテクニックと、ますます魅力を増す音楽性をもった彼のさらなる活動を楽しみにしたいと思う。

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ペーター・レーゼルほか/紀尾井シンフォニエッタ東京 第97回定期演奏会(2014年11月15日 紀尾井ホール)

紀尾井シンフォニエッタ東京 第97回定期演奏会

2014年11月15日(土)14:00 紀尾井ホール

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(piano)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Kioi Sinfonietta Tokyo)
オラフ・ヘンツォルト(Olaf Henzold)(指揮)

ブラームス(Brahms)/ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
 Chorale St. Antoni: Andante
 Variation 1: Poco più animato
 Variation 2: Più vivace
 Variation 3: Con moto
 Variation 4: Andante con moto
 Variation 5: Vivace
 Variation 6: Vivace
 Variation 7: Grazioso
 Variation 8: Presto non troppo
 Finale: Andante

ブラームス/セレナード第2番イ長調 Op.16
 I. Allegro moderato
 II. Scherzo: Vivace - Trio
 III. Adagio non troppo
 IV. Quasi menuetto - Trio
 V. Rondo: Allegro

~休憩~

ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
 I. Maestoso
 II. Adagio
 III. Rondo: Allegro non troppo

~アンコール~
モーツァルト(Mozart)/ピアノ協奏曲第27番K.595より第2楽章

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ペーター・レーゼルと紀尾井シンフォニエッタ東京の共演は、2005年ドレスデンで始まった。
それがこうして日本での共演につながり、ベートーヴェンの全ピアノ協奏曲演奏、そして3年に渡るロマン派のピアノ協奏曲の演奏と続き、今年最後の年となった。
今年の演目はブラームスのピアノ協奏曲第1番。
言わずとしれた名曲である。
ブラームスのピアノソロ曲を全曲録音したレーゼルだが、この協奏曲第1番に関しては正規の録音が存在せず、海外でCD-Rでライヴ収録されたものが販売されているのみである。
そういう意味でも注目の公演であり、チケットは完売したようだ(空席もあったが)。

レーゼルは室内楽やソロで聴かせてくれたよりも明らかに重厚感やキレの良さを前面に出して、この大作のオケの響きと立派に対峙していた。
紀尾井シンフォニエッタ東京の響きが力のこもったもので素晴らしく、レーゼルもオケのどっしりとした演奏に触発されたかのようながっちりした力強さを感じさせてくれた。
このピアノ協奏曲の特殊性を感じさせてくれた演奏とも言えるだろう。
レーゼルは全力でこの大作を表現し尽くし、しかし彼特有の味わい深い響きも感じさせてくれた。
素晴らしい演奏であり、いつか正規の録音を残してほしいと思わずにはいられない。

そしてアンコールでのモーツァルトが絶品!
この透徹した響きの素晴らしさは、私にとって彼からの最高のプレゼントになった。
これぞ天上の音楽!

思えばレーゼルを最初に生で聴いた2007年のリサイタルから、彼は2014年まで8年連続で(2011年も含めて)来日してくれたのだ。
毎年秋にレーゼルを聴くのが恒例になっていたので、来年以降聴けないのは寂しい。
また、しばらくしたら日本に戻ってきてほしいものである。
ありがとう、レーゼルさん!

なお、前半の2曲もブラームス。
なかなか聴けないセレナード第2番も含めて、ヘンツォルトの誠実な指揮がいい演奏を導き出していた。

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ペーター・レーゼル/ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2014(2014年11月6日&8日 紀尾井ホール)

ペーター・レーゼル
ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2014

【室内楽3】
ブラームスのピアノ五重奏曲

2014年11月6日(木)19:00 紀尾井ホール

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(piano)*
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(Gewandhaus Quartett)
 フランク=ミヒャエル・エルベン(Frank-Michael Erben)(1st Violin)
 コンラート・ズスケ(Conrad Suske)(2nd Violin)
 オラフ・ハルマン(Olaf Hallmann)(Viola)
 ユルンヤーコブ・ティム(Jürnjakob Timm)(Cello)

メンデルスゾーン(Mendelssohn)/弦楽四重奏曲第6番ヘ短調Op.80
 I. Allegro vivace assai
 II. Allegro assai
 III. Adagio
 IV. Finale: Allegro molto

シューベルト(Schubert)/弦楽四重奏曲第12番ハ短調「四重奏断章」D703
 Allego assai

~休憩~

ブラームス(Brahms)/ピアノ五重奏曲ヘ短調Op.34*
 I. Allegro non troppo
 II. Andante, un poco adagio
 III. Scherzo: Allegro
 IV. Finale: Poco sostenuto — Allegro non troppo

~アンコール~
ブラームス/ピアノ五重奏曲ヘ短調Op.34より 第3楽章*

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【リサイタル3】
涙の微笑み

2014年11月8日(土)15:00 紀尾井ホール

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(piano)

ブラームス(Brahms)/3つの間奏曲Op.117
 No. 1 in E-flat major
 No. 2 in B-flat minor
 No. 3 in C-sharp minor

シューマン(Schumann)/フモレスケ変ロ長調Op.20
 I. Einfach - Sehr rasch und leicht
 II. Hastig
 III. Einfach und zart - Intermezzo
 IV. Innig
 V. Sehr lebhaft - Mit einigem Pomp - Zum Beschluss - Allegro

~休憩~

シューベルト(Schubert)/ピアノ・ソナタ第20番イ長調D959
 I. Allegro
 II. Andantino
 III. Scherzo: Allegro vivace
 IV. Rondo: Allegretto

~アンコール~
シューベルト/即興曲Op.90, D899より 第3番 変ト長調
ブラームス/ワルツ イ長調Op.39-15
シューマン/トロイメライOp.15-7

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ドイツのピアニスト、ペーター・レーゼルによる3年にわたる「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2014」シリーズもいよいよ最終回を迎えた。
このシリーズは室内楽とリサイタルの2回がセットになっていたのだが、実は室内楽は去年、一昨年と聴くことが出来ず、最終年の今年になってようやく聴くことが出来たのである。
しかも伝統あるゲヴァントハウス弦楽四重奏団との共演なので、いやがうえでも期待は高まる。
レーゼルが登場したのは後半のブラームスのピアノ五重奏曲。
今回私の席は結構かぶりつきの良席で、ゲヴァントハウスの面々の表情は楽しめたのだが、肝心のレーゼルの姿はコンラート・ズスケさん(カールさんの御子息とのこと)の体と譜面台とピアノの蓋で完全に隠れてしまった。
つまり、レーゼルの姿が全く見えない中、音だけが響いてくるというある意味貴重な体験だった。
レーゼルは今年69歳とのこと。
若かりし頃のようなキレの良さやスマートさとは異なる、味のある温かい響きが会場を包む。
それは楽譜を誠実に再現するという段階を超えた、血肉となって初めて可能な境地に達したのではないかという印象を受けたのだ。
カルテットと意識的に一体になろうという肩肘張ったものではなく、もっと自然に寄り添いつつも、自分の見せ場では血の通った音楽を堂々と披露する。
そうした円熟の境地に達したレーゼルの演奏を聴けて、室内楽もいいものだなぁとあらためて思った。
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団も各メンバーの掛け合いのやりとりが間近で見られて、聴けて、室内楽の醍醐味を味あわせてくれた。
前半のメンデルスゾーンもシューベルトも4つの弦楽器の対話が味わい深く、聴き入ってしまった。
アンコールではブラームスの五重奏曲の第3楽章をもう一度演奏してくれた。
温かい気持ちに包まれた一夜だった。

その2日後にはレーゼルのピアノ・リサイタル。
ブラームス、シューマン、シューベルトといった垂涎もののプログラミング!
特にブラームスは彼の若かりし頃の録音を愛聴していたので楽しみだったが、ここでもかつてよりも味わいの増したブラームスの心の独白が語られたかのようだった。
レーゼルは基本的に比較的テンポを早めに設定することが多いようだが、それが機械的にならず、人間的な血の通った響きが終始感じられたのが素晴らしかった。
シューマンの「フモレスケ」も殊更にシューマネスクな響きを強調しない自然体な演奏がレーゼルらしくて心地よかった。
そして後半のシューベルトのソナタイ長調D959。
多分レーゼルはこの曲を録音していないのではないか。
ここでもシューベルトの移ろいゆく感情の機微をレーゼルらしい自然さの中で、さりげなく響かせていた。
だが、第1楽章や最終楽章のダイナミズムにも欠けず、出るべきところでは、どっしりした重厚さも響かせる。
第2楽章もエキセントリックな慟哭を強調するというよりは自然に感情の起伏を追いながら、いつしか曲の中に聴き手を惹き込んでしまうような魅力があった。

アンコールは正規のプログラムの3人の作曲家の作品から1曲づつ。
この辺にもレーゼルのさりげないこだわりが感じられる。
いずれも歌にあふれた感動的な演奏だったが、私はブラームスのワルツが胸に迫ってきた。
こういう小品で一瞬のうちに聴き手を惹き込むレーゼルの凄さをあらためて感じることが出来た。

残りは次週のブラームスのピアノ協奏曲第1番のみである。

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ペーター・レーゼル/シューマンの詩情を弾く(2013年11月16日 紀尾井ホール)

ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013<協奏曲>
レーゼル シューマンの詩情を弾く
紀尾井シンフォニエッタ東京 第92回定期演奏会
2013年11月16日(土)14:00 紀尾井ホール

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(Piano)(シューマン)

紀尾井シンフォニエッタ東京(Kioi Sinfonietta Tokyo)
アントン・バラホフスキー(Anton Barakhovsky)(Guest Concertmaster)

イェルク=ペーター・ヴァイグレ(Jörg-Peter Weigle)(Conductor)

メンデルスゾーン(Mendelssohn-Bartholdy)/弦楽のためのシンフォニア第7番ニ短調
 I. Allegro
 II. Andante
 III. Menuetto
 IV. Allegro molto

シューマン(Schumann)/ピアノ協奏曲イ短調Op.54
 I. Allegro affettuoso
 II. Intermezzo: Andantino grazioso
 III. Allegro vivace

~アンコール~
シューマン/「子供の情景」より~「トロイメライ」op.15-7(レーゼル独奏)

~休憩~

シューベルト(Schubert)/交響曲第5番変ロ長調D485
 I. Allegro
 II. Andante con molto
 III. Menuetto: Allegro molto
 IV. Allegro vivace

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ペーター・レーゼルの「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013」シリーズの一環として行われた、紀尾井シンフォニエッタ東京 第92回定期演奏会(2日目)を聴いた。
満席の会場で、今回レーゼルが演奏したのがシューマンのピアノ協奏曲。

レーゼルは同曲を録音しているが、日本でこの曲を演奏するのはおそらく今回がはじめて。
そういう意味でもとても楽しみにしていたが、相変わらずの安定した味わいと作品への敬意を感じさせる真摯な表現で、シューマンの魅力を楽しませてくれた。

レーゼルは決してピアノの独り舞台にしない。
オケとの協調によってひとつのまとまった響きを作り上げていく。
ピアノのパートが休みの時はほぼ例外なく、オケの方を向いて、その響きにじっと耳を傾ける。
決して華美ではない作品だが、硬質なタッチによる美しい響きで、聴き手をうっとりとさせた。
自分ひとりが駆け抜けたり、スタンドプレーに陥ることが一切ないから、良質の室内楽を聴くような一体感が生まれる。
そういう温かさとドイツ人らしいがっちりした感覚が相俟って、得も言えぬ満ち足りた時間をつくりあげていた。

コンチェルトの演奏後に何度もカーテンコールに呼び出された後、レーゼルのみによるアンコールとして「トロイメライ」が弾かれた。
その響きは決して甘美なものではなく、彼がドイツ人であることを思い出させる硬質な響きに満ちたものだったが、その孤高の響きがなんと胸に迫ってくることか。
この「トロイメライ」の演奏は決して忘れられないだろう。

レーゼル登場前には紀尾井シンフォニエッタ東京によってメンデルスゾーンのシンフォニア第7番が演奏されたが、作曲家12~13歳の時の作品とのこと。
メンデルスゾーンの早熟ぶりにあらためて驚かされる。
作品として立派なものであったし、弦のみによる響きが新鮮に感じられる曲だった。

そして後半はシューベルトの交響曲第5番。
モーツァルトのような簡素で軽快な曲調で、私のようなオケ曲に疎い者でも結構とっつきやすく感じる作品である。
生で聴いたのはおそらくはじめてだと思うが、各楽章がそれぞれの良さをもっていて聴きやすかった。

ヴァイグレ指揮の紀尾井シンフォニエッタ東京は非常に自発的で雄弁な演奏が素晴らしかった。

なお、紀尾井シンフォニエッタ東京のヴァイオリンにN響で見た顔があるなと思い、プログラムを見たらやはりそうで、大宮臨太郎さんという人だそうだ。

それにしてもこの紀尾井ホールはあらためて響きの素晴らしいホールだなぁと感じた。
真ん中より若干後ろよりの列の左端の席だったが、ピアノとオケが極めて美しく響いてきた。

来年でレーゼルの「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013」シリーズは最終回。
来年こそはソロとコンチェルトだけでなく、室内楽(ブラームスのピアノ五重奏曲)も聴こうと思うが、財布が大丈夫か?

Rosel_20131116

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ペーター・レーゼル/リサイタル 情熱と憧憬(2013年11月9日 紀尾井ホール)

ペーター・レーゼル
ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013
リサイタル2 情熱と憧憬
2013年11月9日(土)15:00 紀尾井ホール

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(piano)

シューベルト(Schubert)/楽興の時 Op.94, D780
 1.モデラート ハ長調
 2.アンダンティーノ 変イ長調
 3.アレグロ・モデラート ヘ短調
 4.モデラート 嬰ハ短調
 5.アレグロ・ヴィヴァーチェ ヘ短調
 6.アレグレット 変イ長調

ブラームス(Brahms)/2つのラプソディー Op.79
 第1番 激情的に ロ短調
 第2番 非常に情熱的に、しかし快活すぎずに ト短調

~休憩~

ウェーバー(Weber)/舞踏への勧誘 変ニ長調 Op.65

シューマン(Schumann)/ピアノ・ソナタ第1番 嬰ヘ短調 Op.11
 1.Introduzione:Un poco Adagio - Allegro vivace
 2.Aria:senza passione, ma espressivo
 3.Scherzo e intermezzo:Allegrissimo - lento - Allegrissimo
 4.Finale:Allegro un poco maestoso

~アンコール~

ブラームス/幻想曲集 Op.116より 第1曲 奇想曲ニ短調
シューベルト/即興曲集 D935より 第2番 変イ長調
ブラームス/ワルツ イ長調 Op.39-15

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ここ数年、毎年秋に来日してくれるドイツのペーター・レーゼルのリサイタルを今年も聴いた。
昨年よりスタートさせた「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相」シリーズの2回目にあたる。
今回はシューベルト、ブラームス、ヴェーバー、シューマンとまさにロマン派の王道プログラムである。

最初のシューベルト「楽興の時」から何のてらいもなく、早めのテンポで一見淡々と弾いているように見せながら、実は極めて磨かれたタッチと高度なテクニックに裏打ちされた安定した指回りで、聴き手を安心して作品の世界に引き入れる。
激しい箇所でもこれでもかと強引に荒々しく演奏することはないが、かといって決してドラマに不足するわけではなく、音楽的な音でドラマを演出してみせる。
その技は彼の演奏するどの作品にも一貫して感じられることだった。
彼は第2番の装飾音をゆっくり目に弾くことで、はっとする魅力を付与してくれたりする。
また有名な第3番でも必要以上に民俗色を打ち出したりせず、精巧な工芸品のような緻密さと温かさを兼ね備えていた。

ブラームスの作品はレーゼルが若い頃に全集を録音しているだけあって、楽しみにしていた。
今回の「2つのラプソディー」はエネルギッシュで情熱的な箇所と暗く沈んだ箇所を併せ持った名曲だが、レーゼルは若い頃の録音のようにバリバリと歯切れよさを聴かせるよりは、むしろ円熟したタッチによってさらに昇華された演奏になっていた。
パッションに圧倒させられるというよりも、作品の表情の変化を極めて自然につないだ演奏だったと感じた(もちろんテクニックは万全である)。
そして今でこそ聴ける彼のブラームスの演奏に心から満足したのだった。

休憩後は、有名だがあまり取り上げられないヴェーバーの「舞踏への勧誘」が演奏されたが、ここでもレーゼルは必要なだけのドラマは盛り込みつつも、決して派手なスタンドプレーには陥らず、好感のもてる演奏だった。
私は「舞踏への勧誘」を実演でははじめて聴いたのだが、噂に聞く舞踏会のシーンの後のフライング拍手をはじめて体験することとなった。
しかし、ここでレーゼルは想定内でもあったかのように慌てず、右手を振って、まだ終わりではない旨を伝える。
そして、最後の静かな箇所が終わり、曲が本当に終了した時に、レーゼルはまた右手を振って、今度は拍手していいよと茶目っけのある身振りをする。
謹厳な印象のあるレーゼルのユーモアに会場がどっと沸いた瞬間であった。

プログラム最後はシューマンのピアノ・ソナタ第1番。
シューマンらしい内向性と外向性の交錯する作品で、レーゼルの安定した技術と美しいタッチ、さらに見事な構築感で、このソナタ全曲を素晴らしく演奏した。

そして熱烈な拍手にこたえてアンコールは3曲。
ここでも弾かないふりをして、ちゃっかり椅子に座って弾いたりと、レーゼルの茶目っけが会場を沸かす。
最後に弾いたブラームスのワルツの穏やかな優美さに今のレーゼルの芸術のエッセンスがこめられていたように感じた。

来週はシューマンのコンチェルトが聴けるので楽しみである。

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ペーター・レーゼル/ベートーヴェンの真影【第7回&第8回】(2011年10月1日&12日 紀尾井ホール)

ドイツ・ピアニズムの威光
ペーター・レーゼル
ベートーヴェンの真影
ピアノ・ソナタ全曲演奏会【第4期2011年/2公演】全4期
(The Beethoven Piano Sonata Cycle)

【第7回】2010年10月1日(土)15:00 紀尾井ホール(1階4列13番)
【第8回】2010年10月12日(水)19:00 紀尾井ホール(1階3列15番)

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(Piano)

【第7回】2010年10月1日(土)

ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)作曲

ピアノ・ソナタ第24番嬰へ長調 Op.78
 Adagio cantabile - Allegro ma non troppo
 Allegro vivace

ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79「かっこう」
 Presto alla tedesca
 Andante
 Vivace

ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調 Op.22
 Allegro con brio
 Adagio con molt' espressione
 Menuetto
 Rondo: Allegretto

~休憩~

ピアノ・ソナタ第7番ニ長調 Op.10-3
 Presto
 Largo e mesto
 Menuetto: Allegro
 Rondo: Allegro

ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 Op.27-1
 Andante - Allegro - Andante
 Allegro molto e vivace
 Adagio con espressione
 Allegro vivace

~アンコール~
バガテルOp.126-3

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【第8回】2010年10月12日(水)

ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)作曲

ピアノ・ソナタ第2番イ長調 Op. 2-2
 Allegro vivace
 Largo appassionato
 Scherzo: Allegretto
 Rondo: Grazioso

ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 Op.110
 Moderato cantabile molto espressivo
 Allegro molto
 Adagio, ma non troppo - Fuga: Allegro, ma non troppo

~休憩~

ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調 Op.2-1
 Allegro
 Adagio
 Menuetto: Allegretto
 Prestissimo

ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 Op.111
 Maestoso - Allegro con brio ed appassionato
 Arietta: Adagio molto semplice e cantabile

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2008年から毎年秋に2回ずつ行われてきたペーター・レーゼルのベートーヴェンソナタ全曲シリーズも今年で最後。
レーゼルというピアニストの真価をじっくり堪能できた好企画だった。

第7回は中期のソナタを中心に、そして最終回の第8回は最初と最後のソナタを2曲づつ組み合わせた興味深いプログラミングである。

第7回の前半は2つの楽章しかない第24番、「かっこう」というモティーフが頻繁に登場する第25番、そして4楽章からなる第11番を前半に置いた。
前半だけで1時間近くのボリュームだったが、その時間の長さを感じさせない魅力的な瞬間の連続であった。
後半は第7番と第13番だが、後者は楽章の間をあけずに続けて演奏し、しかも全体において特定のモティーフを出現させて統一をはかるという当時の新境地を感じさせる意欲作である。

そして最終回の第8回はベートーヴェンの最初と最後のソナタ2つずつを組み合わせた斬新で非常に興味深い配列にレーゼルの意欲がうかがえる。
ベートーヴェンは最初からベートーヴェンであったということをこのプログラミングから印象づけられた。
もちろん最初は先人たちからの影響もあったであろうし、学びの成果を作曲するうえでどれほど発揮するかという側面もあったに違いない。
しかし、第1番の最終楽章で聞かれる怒涛のように押し寄せるドラマは後のベートーヴェンの片鱗がはっきりと刻まれているように感じられるし、第2番最終楽章の細やかな分散和音を幅広い音域で響かせる華麗さは、ベートーヴェンの楽器への可能性の追求にも感じられた。

ベートーヴェン最後のピアノソナタ第32番は、第1楽章でごつごつしたドラマをレーゼルにしてはかなり大胆な表現で聞かせた後に演奏された第2楽章アリエッタは、これまでに聴いたレーゼルの演奏の集大成と行って良かったのではないか。
ここに到るまでの31ものソナタの響きは、すべてこの第32番第2楽章に向かうための序曲だったのだと言ったら言い過ぎだろうか(←それはやはり言い過ぎですね)。
しかし、この長大な変奏曲がこれほど美しく地上から足が浮いているかのような天上的な響きで私を魅了したことはかつてなかった。
このままもっとずっと聴いていたい、終わって欲しくないという神々しいまでの響きが私の心をとらえて離さなかった。
はじめて第32番の素晴らしさが分かったような気がした。
そんな感動的な演奏に酔い痴れながら、ベートーヴェンの闘争を経て勝ち取った至福をたっぷり味わったひとときであった。

第7回の前半で、ピアノの最後の音がまだ消えないうちに拍手する人がいて、それが休憩時間に問題になっていたようだ(ロビーでやりあっている怒号が聞こえたが、あまり気持ちのいいものではない。もっと冷静な対応が望まれる)。
結局休憩時間の終わり頃に「拍手は最後の音が消えてから」というアナウンスが入り、後半はフライングもほぼなくなった。
その余波は最終回にも持ち越され、配布されたプログラム冊子に、同様の注意事項が印刷された紙が挟まれ、「ご一緒に優しい静寂をつくりあげましょう」と聴衆の気遣いを促していた。

レーゼルのピアノは確かなテクニックに裏付けられた自在さをさらに増したのではと思わせる安定感に貫かれ、作品と聴衆との誠実な媒介者たらんとしているかのようだった。
その音はいつもながらきわめてまろやかで、決してとげとげしくはならない。
しかし、激しい箇所ではわめかなくとも充分に劇的な表現が出来るのだよと言っているかのような徹底したコントロールが見事だった。
彼の演奏から感じられる温かさは他のピアニストとは異なるレーゼルだからこそ醸し出されるものと思われた。
それでいながらただ温和なだけではない、ドイツ人らしいごつごつした感触も感じられる。
非常にいい音楽を聴いたと感じさせてくれる稀有のピアニストであることをあらためて感じた。

毎回アンコールで弾かれるバガテルは、ソナタで集中した気持ちをほぐしてくれるような癒しのひとときを与えてくれた。
CD化する際にこれらのバガテルもまとめて余白におさめてはどうだろうか。
最終回のみはアンコールを弾かずに自らピアノの蓋を閉じたが、最後のソナタの後にもはや音楽は不要であるというように受け取られた。
お疲れ様でした & Vielen Dank, Herr Rösel!

来年からは3年にわたる新プロジェクト「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相(仮題)」が始まる。
リサイタル、協奏曲、室内楽の各ジャンルにおいて、ドイツ・ロマン派の音楽の様々な作品を聴かせてくれるらしい。
来年は10月下旬から11月にかけてメンデルスゾーンの無言歌、ブラームス&シューベルトのソナタ、ブラームスの協奏曲第2番、シューマンのピアノ五重奏曲が予定されており、今から楽しみである。

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ペーター・レーゼル&S.ザンデルリング/ベートーヴェン ピアノ協奏曲 全曲ツィクルス II(2011年10月8日 紀尾井ホール)

ペーター・レーゼル
シュテファン・ザンデルリング&紀尾井シンフォニエッタ東京
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 全曲ツィクルス II

2011年10月8日(土)14:00 紀尾井ホール(1階12列4番)

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(ピアノ)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Kioi Sinfonietta Tokyo)
(Guest Concertmaster: José Maria Blumenschein)
シュテファン・ザンデルリング(Stefan Sanderling)(指揮)

ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)

ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op. 15
 Allegro con brio
 Largo
 Rondo: Allegro scherzando

~休憩~

ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op. 73「皇帝」
 Allegro
 Adagio un poco mosso
 Rondo: Allegro, ma non troppo

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昨年から始まったペーター・レーゼルのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲シリーズの2日目を聴いた。
昨年の第2~4番に続き、今年は第1番と第5番「皇帝」。
つまり今年でレーゼルのベートーヴェンのソナタシリーズと協奏曲シリーズが同時完結となるわけであり、感慨深いものがある。

指揮のシュテファン・ザンデルリングは先日惜しくも亡くなったクルト・ザンデルリングの息子である。
レーゼルはザンデルリング親子二代にわたって共演したことになり、思いもひとしおではないだろうか。

さて、今回はベートーヴェンの両端の番号が演奏されたわけだが、第1番は、第2番より後に作曲されたそうなので(改訂などの都合で出版の順序が逆になったようだ)、内容はかなり充実している。
3つの楽章とも中身の濃い作品だったが、レーゼルはいつもの熟練したテクニックのもと、決して荒れないまろやかな美音で作品そのものを描き出していた。
特に第3楽章の途中に出てくる場末の酒場で演奏されるようなフレーズは印象的だが、その箇所も含めて、余裕をもって味のある演奏をしていて素晴らしかった。
その意味では後半の「皇帝」は人によってはよりドラマティックな演奏の方がいいと思われたかもしれない。
しかし、あたかもオーケストラの一部となったかのように「対決」よりは「協調」したピアノの音は、上質な室内楽のような趣で、もちろん作品のもつがっしりした壮大さも彼なりに表現されていた。
私にとっては紀尾井ホールで聴くピアノ協奏曲としてまさに理想的な響きと感じた。
また「皇帝」の第2楽章は、両端楽章とは対照的な天上の音楽のような美しさ。
そちらでのレーゼルの一見淡々としているようでありながらしっとりと沁みてくる演奏は絶妙だった。

紀尾井シンフォニエッタ東京はさすがに紀尾井ホールの響きを知り尽くしているかのように積極的で色どり豊かな演奏をしていて素晴らしかったし、指揮のシュテファン・ザンデルリングは拍手にこたえる時に常に笑顔でレーゼルとオケに敬意を表していたのが印象的だった。

レーゼルの2年にわたるピアノ協奏曲プロジェクトの完結に客席からは割れんばかりの拍手が長く続いた。
数日後のピアノ・ソナタ・シリーズ最終日がますます楽しみになってきた。

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レーゼル&アルミンク指揮新日本フィル/ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」ほか(2010年10月23日 すみだトリフォニーホール)

新日本フィルハーモニー交響楽団
第468回定期演奏会『恍惚のベートーヴェン・ナイト』
2010年10月23日(土)18:00 すみだトリフォニーホール(3階LB列7番)

ペーター・レーゼル(Peter Rõsel)(ピアノ:op.58)
新日本フィルハーモニー交響楽団(New Japan Philharmonic)
クリスティアン・アルミンク(Christian Arming)(指揮)

リーム(Wolfgang Rihm:1952-)/変化2(Verwandlung 2)(2005)(日本初演)

ベートーヴェン(Beethoven)/ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58
 Allegro moderato
 Andante con moto
 Rondo: Vivace

~レーゼルのアンコール~
ベートーヴェン/ピアノソナタ第18番op.31-3~第2楽章

~休憩~

ベートーヴェン/交響曲第8番ヘ長調op.93
 Allegro vivace e con brio
 Allegretto scherzando
 Tempo di menuetto
 Allegro vivace

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今回ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番をラドゥ・ルプーが弾くはずだったのだが、ルプーは急病で帰国してしまった為、代役として先日紀尾井シンフォニエッタと素晴らしい演奏を披露したペーター・レーゼルが登場することになった。
ルプーだとしても当日券で聴こうと思っていたのだが、レーゼルに変更と聞き、喜んで出かけてきた。
結果は先日を上回る最高の名演で、この場に立ち会えた幸運に感謝したい気持ちである。
レーゼルの演奏はマイルドなタッチが温かく、しかも余裕で鍵盤を縦横無尽に駆け抜けるが、それが単なるスケールにならず、しっかりとした音楽が存在するのが素晴らしい。
第2楽章のなんと美しかったこと!
ベートーヴェンの音楽を魂のこもった演奏で聴くとこれほど聴き手を感銘させることが出来るのだとあらためて感じられた。
聴き終えてしばらくは久しぶりの心の底から揺さぶられる感動で興奮冷めやらぬ状態となった。
実は前日の演奏の感想をインターネットで事前にチェックしたところ、指揮者との息が合っていないという意見がいくつか見られたのが心配だったのだが、2日目のこの日は慣れてきたためだろうか、アルミンクとの呼吸に一切のズレがなく、ぴったり調和していたのが素晴らしかった。
そしてアンコールとしてソナタ第18番「狩」の第2楽章を演奏したが、先日のソナタシリーズで聴いた時よりも軽快で音楽に乗った積極的な演奏だったように感じられた。
休憩時間は私にとってちょうどよいクールダウンとなった。

後半の交響曲第8番はほとんど陰りない明朗快活な作品で、オケも気持ちよく演奏していた。
私の席からだと第1楽章の管楽器が次々とパッセージを引き継ぐ箇所などもよく見られて楽しかった。
クラシックを聴き始めた頃に駅のワゴンセールで購入したCDでこの曲をよく聴いていたことを懐かしく思い出した。

なお、最初に演奏されたリームの「変化2」は20分ほどの作品だが、私にとってもそれほど聴きにくいという感じはしなかった。

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アルミンクは今回正面からよく見ることが出来たが、指揮する姿はエネルギッシュながら、決して洗練されているという感じではなく、彼独自の振り方をしているという印象をもった。

ちなみにアルミンクによるプレトークではリームの作品解説が中心だった。
この日のコンサートマスターは豊嶋泰嗣。

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レーゼル/ベートーヴェンの真影【第5回&第6回】(2010年10月2日&14日 紀尾井ホール)

Roesel_pamphlet_201010

紀尾井の室内楽vol.26
ドイツ・ピアニズムの威光
ペーター・レーゼル
ベートーヴェンの真影
ピアノ・ソナタ全曲演奏会【第3期2010年/2公演】全4期

【第5回】2010年10月2日(土)15:00 紀尾井ホール(1階4列3番)
【第6回】2010年10月14日(木)19:00 紀尾井ホール(1階4列3番)

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(ピアノ)

【第5回】2010年10月2日(土)

ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)作曲

ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
 In Tempo d'un Menuetto
 Allegretto

ピアノ・ソナタ第3番ハ長調 Op.2-3
 Allegro con brio
 Adagio
 Scherzo: Allegro
 Allegro assai

~休憩~

ピアノ・ソナタ第15番ニ長調 Op.28「田園」
 Allegro
 Andante
 Scherzo: Allegro vivace
 Rondo: Allegro ma non troppo

ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 Op.81a「告別」
 Das Lebewohl
 Abwesenheit
 Das Wiedersehn

~アンコール~
バガテルOp.126-5
バガテルOp.33-4

【第6回】2010年10月14日(木)

ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)作曲

ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 Op.13「悲愴」
 Grave - Allegro di molto e con brio
 Adagio cantabile
 Rondo: Allegro

ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 Op.31-3「狩」
 Allegro
 Scherzo: Allegretto vivace
 Menuetto: Moderato e grazioso
 Presto con fuoco

~休憩~

ピアノ・ソナタ第27番ホ短調 Op.90
 Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und Ausdruck
 Nicht zu geschwind und sehr singbar vorgetragen

ピアノ・ソナタ第28番イ長調 Op.101
 Etwas lebhaft und mit der innigsten Empfindung
 Lebhaft. Marschmäßig
 Langsam und sehnsuchtsvoll
 Geschwinde, doch nicht zu sehr, und mit Entschlossenheit

~アンコール~
バガテルOp.33-4
バガテルOp.126-5

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ペーター・レーゼルが4年がかりで続けているベートーヴェン・ソナタ全曲シリーズの3年目を聴いてきた。

Roesel_autograph_20101002

10月2日(土)は燕尾服ではなく、黒のシャツを来てレーゼルは登場したが、まさにドイツの構築感にレーゼルならではのマイルドさも加わって各ソナタの核心があらわになったような素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
ますます高みにのぼっていくレーゼルの至芸にはどんな形容をしてもむなしく響くほど。
アンコール(バガテル2曲)も含めて、これほどしっとりと心にしみるベートーヴェンを聴けた喜びにただただ感謝あるのみである。

最初のソナタ第22番は2つの楽章のみからなる小さな作品だが愛らしい魅力が感じられ、レーゼルの包み込むような音色が素晴らしかった。
せわしない動きが途絶えることのない第2楽章でも余裕のある演奏だったのはさすがだと思わされた。

ごく初期のソナタ第3番の第1楽章は規模の大きな壮大なスケールの楽章で、様々な楽想が次々あらわれつつも有機的な構成は保たれ、若かりし作曲家の意欲の強さがうかがえる。
他楽章でも硬軟入り乱れての多彩な表現が若々しく感じられ、それをレーゼルが温かい視点で再現していくのは素敵だった。

後半最初は第15番で一般に「田園」と呼ばれている作品である。
その名のとおり牧歌的なのどかな楽想が展開されていく。
第2楽章などシューベルトのソナタのモノローグをさえ先取りしているかのような響きすら感じられた。
息の長い美しいメロディーへの傾斜が感じられ、ベートーヴェンにしては意外な曲調である。
どうでもいい話だが、このソナタの第3楽章スケルツォの急速に下降する3つの音の連続が私には「誰だ?」と連呼しているように聞こえてしまう。
第4楽章で再びのどかな世界が広がるが、ベートーヴェンらしくドラマティックに盛り上がっていき終わる。

最後に演奏された有名な「告別」ソナタも、レーゼルらしい正攻法の姿勢で人生が反映されているかのような深い音の響きに酔いしれた。

レーゼルのピアノの音はどうしてこうも優しく心にしみてくるのだろう。
ベートーヴェンを聴く時の身構えた緊張感が、終演後にはすっかり溶けてしまっている。
ダイナミックスに不足するわけではなく、緊張と弛緩をバランスよく表現しているはずなのに、聴き終わった後に気持ちいい音楽を聴いたという満足感で満たされるのである。
やはり凄いピアニストである。

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10月14日(木)の公演の前に協奏曲の演奏を聴いたが、そちらはタキシードだった。
そして14日のソナタ公演では、2日同様の黒のシャツを着ていた。
こちらも基本的には2日同様に穏やかな人間味あふれるベートーヴェンだった。

最初に弾かれたのは有名な「悲愴」ソナタ。
ベートーヴェン自身が命名したことで知られる「悲愴(Pathetique)」ソナタだが、レーゼルの演奏は決して怒号も号泣もせず、ひっそりと頬を涙が伝っていくような感じだった。

続く第18番「狩」は、おそらく第4楽章からそのタイトルが付けられたのだろうが、これはベートーヴェンの命名ではない。
緩徐楽章が含まれないが、各楽章が異なるキャラクターを持ち、基本的に明朗な作品でリラックスして聴くことが出来る。

後半は第27番と第28番が演奏されたが、真嶋雄大氏のプログラムノートにもあるようにどちらもロマン派を先取りしたかのような当時のベートーヴェンの新境地とも言える内容を備えている。
私には前者はシューベルト、後者はシューマンの作品を予感させるように感じられた。
カンタービレが要求されるこれらの作品において、レーゼルの歌うようなタッチと音色がどれほど素晴らしかったかを言葉で表現し尽くすのは難しい。
例えば「悲愴」ソナタでの演奏によりドラマティックな緊迫感を求める人であっても、後半2作品の演奏における美しさに異論を唱える人はそれほどいないのではないか。
第28番ではカンタービレと同様に最終楽章での対位法も特徴的だが、これらも作曲上のテクニックうんぬんを忘れさせるような自然な美しさを感じさせられた。

昨年のソナタ公演では2回の演奏会で異なるアンコールをそれぞれ1曲ずつ披露したが、今回はさらに熱狂した反応ゆえだろうか、アンコールを各公演で2曲披露してくれた。
曲目はどちらも同じ内容だったが、演奏されるバガテルの順序が逆だったのは、本来1曲だけ演奏するつもりで、聴衆の反応に応じて2曲演奏したということではないかと想像される。
今回こうしてバガテルの中の同じ曲を日にちをあけて2回も聴くことが出来て感じたのは、これらの作品は決して「つまらないもの(Bagatelle)」ではなく、「小さな宝石(Schätzchen)」であったということである。
技術的には子供でも弾けるだろうが、レーゼルの円熟味が遺憾なく発揮されたこれほどの境地で弾くのは決して容易ではないにちがいない。

来年で完結するこのシリーズを今から楽しみにしている。

Roesel_chirashi_201010

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レーゼル&S.ザンデルリング/ベートーヴェン ピアノ協奏曲 全曲ツィクルス I(2010年10月9日 紀尾井ホール)

ペーター・レーゼル

Roesel_concerto_pamphlet_201010

シュテファン・ザンデルリング&紀尾井シンフォニエッタ東京
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 全曲ツィクルス I

2010年10月9日(土)14:00 紀尾井ホール(1階4列2番)

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(ピアノ)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Kioi Sinfonietta Tokyo)
シュテファン・ザンデルリング(Stefan Sanderling)(指揮)

ベートーヴェン(Beethoven: 1770-1827)

ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op. 19
 Allegro con brio
 Adagio
 Rondo: Allegro molto

ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op. 37
 Allegro con brio
 Largo
 Rondo: Allegro

~休憩~

ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op. 58
 Allegro moderato
 Andante con moto
 Rondo: Vivace

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現在ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲シリーズを4年がかりで継続中のペーター・レーゼルが今年から同時進行でピアノ協奏曲の全曲シリーズも始めた。
今年は第2~4番まで。
そして来年は第1番と第5番「皇帝」が予定されている。
つまり来年でベートーヴェンのソナタシリーズと協奏曲シリーズが同時完結することになるのである。

雨の中、四谷の紀尾井ホールに出かけてきたが、セディナ誕生一周年記念という冠が付けられ、関係者らしき人たちの姿がロビーに見られ、開演前のロビーやホール内を撮影している人もいた(スポンサー関係者だったのだろう)。

最初に演奏されたのは第2番。
第1番より出版されたのが後になったため2番と付けられているが、作曲はこちらが先とのこと(プログラム解説:原口啓太氏)。
どの楽章も軽快な明るさが聴く者を楽しい気分にさせる。
ベートーヴェンの優しい一面があらわれた作品と感じられた。

続いて演奏された第3番は第2番とは対照的に重厚でドラマティックな短調の作品(緩徐楽章は穏やかな長調だが)。
こうした悲壮な曲調であってもレーゼルの演奏はやり過ぎることがなく、節度が感じられるのが私には好ましい(より激しいほうが好みの方もおられるかもしれない)。

休憩後の第4番は冒頭からいきなりピアノソロで始まるのが特徴的な作品。
こちらはまた優美な曲調になり、気品すら感じられる。
しかし、ただ穏やかなだけではなく、ドラマティックな感情の起伏も表現されていて、精神的な味わい深さも感じさせてくれる名作といえるだろう。
第2楽章では激しく力強いオケと静かで穏やかなピアノソロが交代して、対比の妙が興味深い。

こうして立て続けに聴いてみると、やはりベートーヴェンというのはケタ違いに偉大な作曲家なのだなと感じずにはいられなかった。
貪欲に新しい技法を取り入れながら、決してルーティンに流されずに細やかにモティーフを展開させていく様は、単なる一愛好家の私ですら眩しいほどの格の違いを見せ付けられたような気がした。
何度も校正の手を入れて妥協せずに作品をつくりあげていくこの作曲家にあらためて畏敬の念を感じた時間だった。

レーゼルの演奏はソロの時と本質的には同様である。
がっちりとした構築感を土台にして、そこで作品とまっすぐに向き合うのだが、高度なテクニックを誇示することは決してなく、どれほど激しい箇所でもがんがん叩きつけることなく、コントロールの行き届いたタッチがマイルドな温かさを醸し出す。
ソリストと伴奏者という関係ではなく、アンサンブルの一員として互いの音を聴き合った良質な室内楽のようなやりとりが素晴らしかった。
右手だけで弾く時には左手を指揮をするかのようにひらりとさせるなど、ソロの時には見られなかった演奏する楽しみを自然に表にあらわすような場面も見られた。
またオケだけで演奏される箇所ではオケの演奏する方を向いてじっと音楽に耳を傾ける場面も多く、お互いの信頼関係がうかがえた。
また、作品それぞれの性格の違いを鮮やかに描き分けていたのは熟練のなせる技なのだろう。
とにかくレーゼルの奏でる極上の音の連なりに気持ちよく身を預けて聴いていた。

指揮はシュテファン・ザンデルリング。
往年の名指揮者クルト・ザンデルリングの息子である(レーゼルは親子2代と共演したことになる)。
女性の多い弦楽器群と男性の多い管楽器群からみずみずしく積極的な音楽を引き出していたように感じた。
紀尾井シンフォニエッタ東京のゲスト・コンサートマスターはスラヴァ・シェスティグラーゾフ(Slava Chestiglazov)。

Roesel_concerto_chirashi_201010

レーゼルは何度も飛んだブラヴォーの掛け声と拍手喝采に幾度となくステージに呼び戻されていた。

なお、今日のコンサートはマイクが立てられ、ピアノソナタシリーズ同様CD化されるそうなので楽しみである。

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