エディト・マティス&ペーター・シュライアー&エリク・ヴェルバ(Mathis, Schreier & Werba)/ヴォルフ『イタリア歌曲集』ザルツブルク音楽祭ライヴ1976年
ソプラノのエディト・マティスとテノールのペーター・シュライアーがエリク・ヴェルバのピアノでザルツブルク音楽祭で歌ったヴォルフ『イタリア歌曲集』全曲の録音がアップされていました。
曲順はヴォルフの出版時のものとは異なり、入れ替えられているので、おそらくヴォルフ研究者でもあるヴェルバが順番を考えたのではないかと想像されます。
関連のあるストーリーを並べると同時に、各まとまりにおいても統一感を考慮しているようです。
例えば最初のグループは「小さなものでも私たちをうっとりとさせることは出来るの」で始まり、「私の恋人はとってもちっちゃいの」で終わるという流れによって、小さなもの(歌曲というジャンルへの意味合いも込められているのでしょう)への賛美を描こうとしているのではないかと思います。
マティスはみずみずしい美声による真摯な表現が素晴らしく、シュライアーはディクションの美しさが際立ち、セリフが生き生きとしています。
そしてヴェルバは楽譜の音価通りではなく、曲調によって自在に変化させているのはいつも通りですが、それがごく自然になされているという点で見事だと思います。
ただし、終曲「あたし、ペンナに住んでる恋人がいるの」の華麗なピアノ後奏はしっかり楽譜通りに弾いてほしかったですが...。
マティスとシュライアーはDeutsche Grammophonレーベルにエンゲルのピアノと共にこの歌曲集全曲を録音していますが、未だに全曲のCD化がされていません(最近マティスの組み物アンソロジーに一部復活しましたが)。
そういう意味で、このライヴの音源は貴重で意義深いと思います。
ぜひお時間のある時に少しずつでも聞いてみて下さい。
ライヴ録音:12 Augst 1976, Kleines Festspielhaus, Salzburg
Edith Mathis, Sopran エディト・マティス(S)
Peter Schreier, Tenor ペーター・シュライアー(T)
Erik Werba, Klavier エリク・ヴェルバ(P)
Hugo Wolf: Italienisches Liederbuch ヴォルフ:『イタリア歌曲集』
1(S) Auch kleine Dinge können uns entzücken 小さなものでも私たちをうっとりとさせることは出来るの
18(T) Heb' auf dein blondes Haupt und schlafe nicht ブロンドの頭をあげておくれ、眠るんじゃないよ
19(S) Wir haben beide lange Zeit geschwiegen 私たちは二人とも、長いこと押し黙っていました
4(T) Gesegnet sei,durch den die Welt entstund この世界の生みの親に祝福あれ
10(S) Du denkst mit einem Fädchen mich zu fangen あなたは細い糸たった一本で私を捕まえて
3(T) Ihr seid die Allerschönste weit und breit あなたは世界で一番美しい
2(S) Mir ward gesagt,du reisest in die Ferne 遠いところに旅立つそうね
9(T) Daß doch gemalt all deine Reize wären 君の魅力がすべて描かれて
15(S) Mein Liebster ist so klein,daß ohne Bücken 私の恋人はとってもちっちゃいの
17:30-
14(T) Geselle,woll'n wir uns in Kutten hüllen 相棒よ、おれたちゃ修道服でもまとって
11(S) Wie lange schon war immer mein Verlangen もうどれほどずっと待ち焦がれてきたことでしょう
22(T) Ein Ständchen Euch zu bringen kam ich her セレナードを捧げにわたくし参りました
12(S) Nein,junger Herr,so treibt man's nicht,fürwahr 駄目、お若い方、そんな事しちゃ嫌
5(T) Selig ihr Blinden,die ihr nicht zu schauen 目の見えない人は幸いだ
16(S) Ihr jungen Leute,die ihr zieht ins Feld 戦場に向かわれるお若い方々
7(T) Der Mond hat eine schwere Klag' erhoben 月がひどい不満をぶちまけ
6(S) Wer rief dich denn? 一体誰があんたを呼んだのよ
13(T) Hoffärtig seid Ihr,schönes Kind ふんぞり返っておいでだな、麗しき娘よ
21(S) Man sagt mir,deine Mutter woll es nicht あなたのお母さんがお望みでないらしいわね
8(T) Nun laß uns Frieden schließen,liebstes Leben もう仲直りしようよ、いとしい人
20(S) Mein Liebster singt am Haus im Mondenscheine あたしの恋人が月明りの注ぐ家の前で歌っているわ
17(T) Und willst du deinen Liebsten sterben sehen 君の彼氏が死ぬところを見たいのなら
40:27-
41(S) Heut' Nacht erhob ich mich um Mitternacht 昨夜、真夜中に私が起き上がると
34(T) Und steht Ihr früh am Morgen auf vom Bette それから、あなたが朝早くベッドから起き上がり
29(S) Wohl kenn' ich Euren Stand,der nicht gering 賤しからぬあなた様の御身分は重々承知しておりますわ
35(T) Benedeit die sel'ge Mutter 今は亡き君の母上に祝福あれ
39(S) Gesegnet sei das Grün und wer es trägt! 緑色と、緑を身にまとう人に幸ありますように
38(T) Wenn du mich mit den Augen streifst und lachst 君が僕をちら見して笑い出し
40(S) O wär' dein Haus durchsichtig wie ein Glas ああ、あなたのお家がガラスみたいに透き通っていたらいいのに
23(T) Was für ein Lied soll dir gesungen werden 君にはどんな歌を歌ってあげたらいいのかな
36(S) Wenn du,mein Liebster,steigst zum Himmel auf あなたが、愛する方よ、天国に昇る時がきたら
33(T) Sterb' ich,so hüllt in Blumen meine Glieder 僕が死んだら、この体を花で包みこんでおくれ
1:02:52-
26(T) Ich ließ mir sagen und mir ward erzählt 私がしょっちゅう聞かされた噂では
24(S) Ich esse nun mein Brot nicht trocken mehr 私はもう濡れていないパンを食べることはありません
42(T) Nicht länger kann ich singen,denn der Wind ぼくはもう歌えないよ、だって風が
43(S) Schweig einmal still,du garst'ger Schwätzer dort ちょっと黙ってよ、そこの不愉快なおしゃべり男
31(T) Wie soll ich fröhlich sein und lachen gar どうして陽気でいられるもんか、まして笑うことなんて
28(S) Du sagst mir,daß ich keine Fürstin sei 侯爵夫人様じゃないんだからって、あたしに言うけど
27(T) Schon streckt' ich aus im Bett die müden Glieder ベッドの中でへとへとの体を大きく伸ばしているというのに
25(S) Mein Liebster hat zu Tische mich geladen 彼氏があたしを食事に招いてくれたの
44(T) O wüßtest du,wie viel ich deinetwegen おお、お前は分かっているのだろうか、どれほど俺がお前を思って
32(S) Was soll der Zorn,mein Schatz,der dich erhitzt? なにを怒っているの、大切な方、そんなに熱くなって
37(T) Wie viele Zeit verlor ich,dich zu lieben 君を愛することで、どれほどの時間を無駄使いしてきたことか
45(S) Verschling' der Abgrund meines Liebsten Hütte 深淵が恋人の小屋を飲み込んでしまえ
30(T) Laß sie nur gehn,die so die Stolze spielt 放っておけばいいさ、あんな高慢ちきを演じる女なんか
46(S) Ich hab' in Penna einen Liebsten wohnen あたし、ペンナに住んでる恋人がいるの
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