ポップ&ゲイジ/1984年ミュンヒェン・ライヴ(ORFEO: C 789 101 B)

Popp_gage_1984_live

Schubert, Schonberg, Strauss Lieder(シューベルト、シェーンベルク、シュトラウス歌曲集)
ORFEO: C 789 101 B
録音:1984年7月25日, Cuvilliés-Theater

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(soprano)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(piano)

Schubert(シューベルト)作曲

Der Knabe(少年), D692
Die Gebüsche(茂み), D646
Der Fluss(流れ), D693
Der Schmetterling(蝶), D633
Die Rose(ばら), D745
Fülle der Liebe(愛の充溢), D854

An mein Herz(わが心に), D860
Der Jüngling an der Quelle(泉のほとりの若者), D300
Die Liebende schreibt(恋する女が手紙を書く), D673
Der Einsame(孤独な男), D800

Schönberg(シェーンベルク)作曲

"Vier Lieder(四つの歌)", Op.2
 Erwartung(期待)
 Schenk mir deinen goldenen Kamm(私にあなたの金の櫛をください)
 Erhebung(高揚)
 Waldsonne(森の太陽)

R.Strauss(シュトラウス)作曲

"Drei Lieder der Ophelia (aus Hamlet)(ハムレットのオフィーリアの三つの歌)", Op. 67
 Wie erkenn ich mein Treulieb(まことの恋人をどうして見分けよう)
 Guten Morgen, 's ist Sankt Valentinstag(おはよう、今日は聖ヴァレンタインの日)
 Sie trugen ihn auf der Bahre bloß(彼女はあらわに棺にのせられ)

Mein Auge(私の目), Op.37/4
Meinem Kinde(わが子に), Op.37/3
Die Zeitlose(さふらん), Op.10/7
Die Verschwiegenen(もの言わぬものたち), Op.10/6
Hat gesagt - bleibt's nicht dabei(言いました、それだけでは済みません), Op.36/3

Zugaben(アンコール)

R.Strauss / Allerseelen(万霊節), Op.10/8
Schubert / An Silvia(シルヴィアに), D891
Schubert / Seligkeit(幸福), D433

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ルチア・ポップの透明で張りのある美声を録音で聴くと、なんとなく未だに現役で活動しているような錯覚に陥ってしまう。
彼女は東京でリサイタルを開いた翌年に病気でこの世を去ってしまったのだが、そのリサイタルでピアノを弾いていた井上直幸氏も亡くなり、無常を感じずにはいられない。

今回バイエルン・シュターツオーパーでの彼女の1984年のライヴが発売されたが、これなども過去の人の記録というよりは、同時代人の歌唱を楽しむような気持ちで聴いた。
彼女はパーソンズ、サヴァリッシュ、ゲオルク・フィッシャーなどのピアニストと共演してきたが、今回の新譜で共演しているアーウィン・ゲイジも最も緊密なパートナー関係を築いた一人であろう。

このCDではポップの声とゲイジのピアノがほぼ対等に入っており、そのため、ピアノの音の粒だちまでかなり明瞭に聴き取れる。
だが、そういう録音においてもゲイジの音がポップを妨げることは決してなく、「対等」であることと「対決」することは全く別物であることが感じられる。
ゲイジは一貫して作品の核心をついた演奏をする名手ぶりをここでも発揮していた。

ポップが録音した歌曲レパートリーはそれほど多くはなかったが、じっくりと一つの作品を熟成させていくタイプだったのかもしれない。
ここで最初に演奏されるシューベルトの歌曲は「恋する女が手紙を書く」を除き、ゲイジとEMIにスタジオ録音した曲ばかりが集められ、当時の彼女が力を入れていたレパートリーといえるだろう。
これらの歌曲は可憐で茶目っ気があったり、軽快に飛翔するかと思えば、内面を激しく吐露したりする。
そういう様々なタイプの作品を並べて、リートのもつ多彩な感情を魅力的に伝達することを、当時のポップは見事に実現していた。
「少年」では違和感なく子供の無邪気さを表現し、ガラス細工のように繊細な「ばら」では温かい包容力でばらを見守るように歌う。
歌もピアノも大きな孤を描く「流れ」では、シューベルト特有の伸びやかなメロディーの美しさを気品に満ちて表現し、「わが心に」では焦燥感をあふれさせる。
なかでも「泉のほとりの若者」での抑制された魔法のような美しさに引き込まれた。

シェーンベルクの「4つの歌曲」は、東京でのリサイタルでも披露されたのが思い出される。
スタジオ録音もゲイジとしており、彼女の核となるレパートリーの一つだろう。
シェーンベルクの妖しい官能性に、ポップの涼やかな声が新たな魅力を加えていたように感じた。

R.シュトラウスの歌曲もポップ十八番の作品。
ハムレットからの「オフィーリアの三つの歌」も各曲の心理の変化を鮮やかに表現していたし、「わが子に」などを含む個々の歌曲でも伸びやかに開放された声が心地よい。

アンコールでは馴染み深い三曲が、会場の聴衆を喜ばせたことだろう。
最後の曲の後にわきおこった拍手がその雰囲気を伝えている。

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ルチア・ポップ没後15年に寄せて:歌曲ディスコグラフィ

ソプラノ歌手のルチア・ポップ(Lucia Popp: 1939.11.12, Uhorška Veš (Bratislava) - 1993.11.16, München)が1993年に亡くなったことを記した新聞記事を読んだ時はまさに青天の霹靂だった。
というのもその前年に彼女の東京初の歌曲リサイタルを聴いたばかりだったから。
井上直幸(彼も故人となってしまった!)との初共演はR.シュトラウスやマーラー、それにシューマン「女の愛と生涯」などポップの十八番ばかりだった。
サントリーホールに響き渡った美しい声とチャーミングな笑顔からはその翌年の早逝を予感させるものは全くなかった。
F=ディースカウとともにサヴァリシュ指揮でブラームス「ドイツ・レクイエム」も歌ったが、あまりにもリートのコンサートのラッシュ時期だったため聴かなかったのが惜しまれる。
1993年はアーリーン・オジェーとルチア・ポップ、2人の偉大なリート歌手を失った年だった。
奇しくも2人ともグレアム・ジョンソンがハイペリオン・レーベルで進めていたシューベルト歌曲全集でそれぞれ1枚ずつ担当して素敵な録音を残してくれた。
あれから15年も経ってしまったが、彼女の歌唱の魅力は全く色あせることがない。

ルチア・ポップの没後15年を記念して彼女の歌曲を歌った録音をまとめてみた。
彼女の歌はきめの細かいヴィブラートを伴った細身の搾り出すような声が浮世離れした透明感をもっていて、澄んで美しく、しかし理知的で誇張のない表現力は聴き手の心にそっと忍び込む。
女優出身であることが頷けるほどの愛らしい美貌も含めて魅力的な歌手だった。
リートではブラームスやマーラー、シュトラウスあたりが彼女のお気に入りのようだが、お国物のドヴォジャークの歌曲も多くの機会に歌っているのが目を惹く。
ピアニストはオーストラリア出身でイギリスを本拠に活動したジェフリー・パーソンズ(1929-1995)と、スラヴ系米国人のアーウィン・ゲイジ(1939-)と共演する機会が多かったようだ。
日本では関西で初のリサイタルをサヴァリシュと行い、後に東京初のリサイタル(同時に最後にもなってしまった)を井上直幸と行った。
ここで作成したディスコグラフィはピアノ共演による録音に絞ったが、オケ共演のシュトラウス「4つの最後の歌」(テンシュテットとティルソン・トマス指揮の2種類)やマーラー「少年の魔法の角笛」なども彼女の代表作として忘れてはならないだろう。
また、N響と日本でも披露したオルフ「カルミナ・ブラーナ」も録音を残しており、彼女の美声が堪能出来る(PAL方式ならDVDで音に合わせた映像を見ることが出来る。YouTubeにもアップされているので興味のある方はご覧になってください)。

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●Recital Covent Garden 1975
Popp_fischer_1975Gala: GL 336
録音:1975年4月13日, Covent Garden

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Georg Fischer(ゲオルク・フィッシャー)(P)

Dvořák(ドヴォジャーク)

Five Evening Songs, Op.31(5つの夕べの歌)
1. No.1:Visions of heaven I fondly paint(私が空を見たら)
2. No.2:This I would ask each tiny bird(小さなお前たち、小鳥よ)
3. No.3:Like a limetree am I(私は茂った菩提樹のように)
4. No.4:All ye that labour, come to me(お前たち悩める者は私のもとに来なさい)
5. No.5:All through the night a bird will sing(鳥は夜を通して歌いつづける)

Wolf(ヴォルフ)

Mörike-Lieder(メーリケの詩による歌曲) 
6. Nimmersatte Liebe(飽くことのない愛) 
7. Bei einer Trauung(ある結婚式で)
8. Verborgenheit(世を逃れて)
9. Im Frühling(春に)
10. Agnes(アグネス)
11. Mausfallensprüchlein(ねずみ捕りのおまじない)

Schubert(シューベルト)
 
12. Non t'accostar all'urna, D688-1(骨壷に近よるな)
13. Mio ben ricordati, D688-4(愛しき者よ、思い出して)
14. Da quel sembiante apprèsi, D688-3(顔でわかった)
15. Der Alpenjäger, D524b(アルプスの狩人)
16. Der blinde Knabe, D833(盲目の少年)
17. Lachen und Weinen, D777(笑ったり泣いたり)
18. Die junge Nonne, D828(若い尼僧)
19. Klage an der Mond, D436(月に寄せる嘆き)
20. Lied der Anne Lyle, D830(アン・ライルの歌)
21. Ganymed, D544(ガニュメデス)

22. An die Musik, D547(音楽に寄せて)

スタジオ録音で聴けないような珍しいレパートリーを多数聴ける貴重なライヴ音源。
若きポップの素直な表現もみずみずしく、彼女には珍しいヴォルフのメーリケ歌曲が聴けるのがうれしい。
「春に」でのファンタジーは素晴らしかった。
またお国もののドヴォジャークは作品の魅力を彼女の真に迫った名唱で堪能できる。
フィッシャーもポップと一体となった演奏を聴かせている。

●スラヴ歌曲集
Popp_parsons_dvorakクラウンレコード: PALETTE/ACANTA: PAL-1092
録音:1979年8月24-26日, Bavaria Studio, München

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

ドヴォルザーク(Dvořák)作曲

“民謡の調べで”作品73(Im Volkston) 
1. No.2:娘が草を刈っていた(Žalo dievča, žalo trávu)
2. No.3:ああ、ここにはないの(Ach, není tu)
3. No.4:エイ、俺の馬は天下一(Ej, mám já koňa faku)
4. No.1:おやすみ(Dobrú noc)

プロコフィエフ(Prokofieff)作曲

“ロシア民謡(独唱用編曲)”作品104より(Aus "Russische Volkslieder")
5. No.10:茶色の瞳(Кари глазки)
6. No.2:緑の木立(Зелёная рощица)
7. No.12:修道僧(Чернец)
8. No.5:白い小雪(Снежки булыу)

コダーイ(Kodály)作曲

“ピアノと声楽のためのハンガリー民俗音楽”より(Aus "Ungarische Volksmusik")
9. 森は緑の時がきれい(Akkor szép az erdö mikor zöld)
10. 若さはあの鷹のよう(Ifjúság mint sólyom madár)
11. 馬車、荷車、馬車、橇(Kocsi szekér, kosci szán)
12. 恋人を呼ぶ(Elkiáltom magamat)

ヤナーチェク(Janáček)作曲

“モラヴィアの民俗詩による歌曲”より(Aus "Mährische Volkspoesie in Liedern")
13. 恋(Łáska)
14. 分からないの(Nejistota)
15. 歌う娘(Zpĕvulenka)
16. あの人の馬(Koníčky milého)
17. ムギナデシコ(Koukol)
18. ハシバミの実(Oříšek léskový)
19. 花の魔力(Kvítí milodĕjné)
20. 手紙(Psaníčko)
21. 慰めの涙(Slzy útěchou)

パーソンズの絶妙な演奏と共に知られざるスラヴ系歌曲の魅力を教えてくれた名盤。
プロコフィエフの「修道僧」はそのコミカルで早口な表現が印象的だが、ドヴォルザークのほの暗い「おやすみ」は胸に迫ってくる。
過去にこの盤を扱った記事を書いているので興味のある方はそちらもどうぞ。

●シューマン歌曲集
Popp_parsons_schumann日本コロムビア: DENON: CO-1866
録音:1980年5月20,22日, バイエルン放送第3スタジオ

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

シューマン(Schumann)作曲

「女の愛と生涯」作品42(Frauenliebe und -leben)
1. No.1:あの方にはじめてお会いして以来(Seit ich ihn gesehen, glaub ich blind zu sein) 
2. No.2:だれよりもすばらしいお方!(Er, der Herrlichste von allen) 
3. No.3:なにがどうなっているのやらわかりません(Ich kann's nicht fassen, nicht glauben) 
4. No.4:わたしの指にはまっている指環よ(Du Ring an meinem Finger) 
5. No.5:手伝ってちょうだい、妹たち(Helft mir, ihr Schwestern) 
6. No.6:親しい友、あなたは(Süßer Freund, du blickest mich verwundert an) 
7. No.7:わたしの心に、わたしの胸に(An meinem Herzen, an meiner Brust) 
8. No.8:あなたはわたしにはじめて苦しみをお与えになりました(Nun hast du mir den ersten Schmerz getan) 

9. もう春だ 作品79の24(Er ist's) 
10. 春のよろこび 作品125の5(Frühlingslust) 
11. 春の挨拶 作品79の4(Frühlingsgruß) 
12. ゆきのはな 作品79の27(Schneeglöckchen) 
13. はじめての緑 作品35の4(Erstes Grün) 
14. わたしの庭 作品77の2(Mein Garten) 
15. ばらよ、かわいいばらよ! 作品89の6(Röselein, Röselein!) 
16. 愛らしく、やさしいばらやミルテで 作品24の9(Mit Myrten und Rosen) 
17. ミニョン 作品79の29(Mignon "Kennst du das Land") 
18. わたしの手をのばして、ああ雲よ 作品104の5(Reich mir die Hand, o Wolke)

ポップの録音した唯一の「女の愛と生涯」が聴けるが、それ以外のレパートリーの選曲もよく考えられている。
「わたしの手をのばして、ああ雲よ」での壮大な歌いぶりは印象的である。

●Popp: Schubert, Schoenberg, Strauss, Dvořák, Brahms
Popp_bbc_1983_1980BBC LEGENDS: BBCL 4148-2
録音:1983年8月30日, Queen's Hall, Edinburgh(1-16)
1980年8月13日, Queen Elizabeth Hall, Edinburgh(17-29)

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(P)(1-16)
Geoffrey Parsons(ジェフリー・パーソンズ)(P)(17-29)

Schubert(シューベルト)

1. An mein Herz, D860(わが心に)
2. Der Jüngling an der Quelle, D300(泉のほとりの若者)
3. Jägers Abendlied, 368(狩人の夕べの歌)
4. Der Einsame, D800(独りずまい)

Schoenberg(シェーンベルク)

Vier Lieder, Op.2(4つの歌)
5. No.1: Erwartung(期待)
6. No.2: Schenk mir deinen goldenen Kamm(あなたの金の櫛を私にください)
7. No.3: Erhebung(高揚)
8. No.4: Waldsonne(森の日射し)

Strauss(シュトラウス)

Drei Lieder der Ophelia, Op.67/1(オフィーリアの3つの歌)
9. No.1: Wie erkenn' ich mein Treulieb vor andern nun?(私の恋人を見分けるしるしはなんでしょう)
10. No.2: Guten Morgen, 's ist Sankt Valentinstag(おはよう、今日は聖ヴァレンタインさまの日)
11. No.3: Sie trugen ihn auf der Bahre bloß(あのひとはむき出しの顔のまま棺にいれられた)

12. Mein Auge, Op.37 No.4(私の目)
13. Meinem Kinde, Op.37 No.3(わが子に)
14. Die Zeitlose, Op.10 No.7(いぬさふらん)
15. Hat gesagt - bleibt's nicht dabei, Op.36 No.3(言いました-それだけでは済みません)
16. Allerseelen, Op.10 No.8(万霊節)

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Dvořák(ドヴォジャーク)

V národním tónu, Op.73(「民謡の調べで」)
17. No.1: Dobrú noc, má mila(おやすみ)
18. No.2: Žalo dievča, žalo trávu(娘が草を刈っていた)
19. No.3: Ach, niní, niní tu, co by mě těšilo(ああ、ここにはないの)
20. No.4: Ej, mám já koňa faku(エイ、俺の馬は天下一)

Mahler(マーラー)

Aus "Lieder und Gesänge"(「歌曲集」より)
21. Starke Einbildungskraft(たくましい想像力)
22. Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald(私は喜んで緑の森を歩いた)
23. Ablösung im Sommer(夏の交代)
24. Um schlimme Kinder artig zu machen(いたずらっ子をしつけるために)

Brahms(ブラームス)

25. Es steht ein Lind, Wo033 No.41(菩提樹が立っている)
26. Sehnsucht, Op.49 No.3(あこがれ)
27. We kumm ich dann de Pooz erenn?, Wo033 No.34(どうやってドアを入ったらいい)
28. Die Trauernde, Op.7 No.5(なげく娘)
29. In stiller Nacht, Wo033 No.42(静かな夜に)

来日公演でも披露したシェーンベルクの「4つの歌」が聴けるのが貴重。
お馴染みのレパートリーに加えて、シューベルトの「狩人の夕べの歌」のような珍しい作品も混ざっているのがうれしい。

●PROKOFJEW, KODÁLY, DVOŘÁK, MAHLER, BRAHMS
Popp_parsons_salzburgORFEO: C 363 941 B
録音:1981年8月18日, Mozarteum Großer Saal, Salzburg (live)

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Geoffrey Parsons(ジェフリー・パーソンズ)(P)

Prokofjew(プロコフィエフ)

Aus "Russkie narodnye pesni, Op. 104" (「ロシア民謡」より)
1. Zelënaâ roŝica(緑の木立)
2. Snežki belya(白い小雪)
3. Černec(修道僧)

Kodály(コダーイ)

Aus "Magyar népzene"(「ハンガリー民俗音楽」より)
4. Akkor szép az erdö(森は緑の時がきれい)
5. Kocsi szekér(馬車、荷車、馬車、橇)
6. Ifjúság mint sólyommadár(若さはあの鷹のよう)

Dvořák(ドヴォジャーク)

"V národním tónu, Op. 73"(「民謡の調べで」) 
7. No.1:Dobrú noc(おやすみ)
8. No.2:Žalo dievča(娘が草を刈っていた)
9. No.3:Ach není, není tu(ああ、ここにはないの)
10. No.4:Ej, mám já koňa faku(エイ、俺の馬は天下一)

Mahler(マーラー)

Aus "Des Knaben Wunderhorn"(「少年の魔法の角笛」より)
11. Starke Einbildungskraft(たくましい想像力)
12. Ich ging mit Lust(私は喜んで緑の森を歩いた)
13. Ablösung im Sommer(夏の交代)
14. Nicht Wiedersehen(二度と会えない)
15. Um schlimme Kinder artig zu machen(いたずらっ子をしつけるために)

Brahms(ブラームス)

Aus "Deutsche Volkslieder"(ドイツ民謡より)
16. Es steht ein Lind [Wo033 No.41](菩提樹が立っている)
17. Sehnsucht [Op.49 No.3](あこがれ)
18. We komm ich denn zur Tr herein? [Wo033 No.34](どうやってドアを入ったらいい)
19. Die Trauernde [Op.7 No.5](なげく娘)
20. In stiller Nacht [Wo033 No.42](静かな夜に)

Mozart(モーツァルト)

21. Oiseaux, si tous les ans, KV284d(鳥よ、年ごとに)

Rachmaninov(ラフマニノフ)

22. Siren', Op. 21-5(ライラック)

Puccini(プッチーニ)

23. O mio babbino caro (aus "Gianni Schicci")(私のお父さん:「ジャンニ・スキッキ」より)

Dvořák(ドヴォジャーク)

24. Lied an den Mond (aus "Rusalka")(月に寄せる歌:「ルサルカ」より)

Lehár(レハール)

25. Vilja-Lied (aus "Die lustige Witwe")(ヴィリヤの歌:「メリー・ ウィドウ」より)

ライヴならではの熱気の感じられる録音である。
プロコフィエフのリズミカルな「修道僧」ではポップ、パーソンズともども気迫のこもった演奏を聴かせている。
それにしてもドヴォジャークの「おやすみ」の何と美しいこと!

●Popp: Schubert, Mozart, Dvořák, Mahler, R.Strauss
Popp_bbc_1982_1991BBC LEGENDS: BBCL 4025-2
録音:1982年3月1日, St. John's Smith Square, London(1-10)
1991年7月8日, St. John's Smth Square, London(11-22)

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Geoffrey Parsons(ジェフリー・パーソンズ)(P)(1-10)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(P)(11-22)

Mozart(モーツァルト)

1. Ridente la calma, K.152(K210a)(静けさがほほえみながら)
2. Als Luise die Briefe ihres ungetreuen Liebhabers verbrannte, K. 520(ルイーゼがつれない恋人の手紙を焼いたとき)
3. An Chloe, K. 524(クローエに)

Schubert(シューベルト)

4 Canzonen, D688(4つのカンツォーネ)
4. No.1: Non t'accostar all'urna(骨壷に近よるな)
5. No.2: Guarda, che bianca luna(見よ、白き月)
6. No.3: Da quel sembiante appresi(顔でわかった)
7. No.4: Mioben ricordati, se avvien, ch'io mora(愛しき者よ、思い出して)

8. Daß sie hier gewesen, D775(ここにいたこと)
9. Wonne der Wehmut, D260(悲しみの喜び)
10. An Silvia, D891(シルヴィアに)

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Dvořák(ドヴォジャーク)

11. V tak mnohém srdci mrtvo jest, Op.83 No.2(死は多くの人の心を占める:「愛の歌」より)
12. Mé srdce často v bolesti (from "Cypřiše")(私の心は悲しみに沈む:「糸杉」より)
13. Ó byl to krásný zlatý sen (from "Cypřiše")(それは何とすばらしい夢だったことか:「糸杉」より)

Mahler(マーラー)

14. Rheinlegendchen(ラインの伝説)
15. Ablösung im Sommer(夏の交代)
16. Wo die schönen Trompeten blasen(美しいトランペットの鳴り響くところ)
17. Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald(私は喜んで緑の森を歩いた)
18. Wer hat dies Liedlein erdacht?(誰がこの歌をつくったの?)

Strauss(シュトラウス)

19. Himmelsboten zu Liebchens Himmelbett, Op.32 No.5(恋人への天の使者)
20. Ein Obdach gegen Sturm und Regen, Op.46 No.1(風雨をしのぐ宿)
21. Morgen! Op.27 No.4(明日!)
22. Wiegenliedchen, Op.49 No.3(子守歌)

パーソンズ、ゲイジといった頻繁に共演していた名パートナーたちとの実演の記録が聴けるのが貴重である。
彼女の歌うモーツァルトの歌曲というのは意外と珍しいのではないか。

●マーラー、ブラームス歌曲集
Popp_parsons_brahms_mahler日本フォノグラム: PHILIPS: 35CD-3138
録音:1983年1月, München

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

ブラームス(Brahms)作曲

1. 娘の呪い 作品69の3(Mädchenfluch) 
2. 早まった誓い 作品95の5(Vorschneller Schwur) 
3. 娘の歌 作品107の5(Mädchenlied "Auf die Nacht in der Spinnstub'n") 
4. 娘の歌 作品95の6(Mädchenlied "Am jüngsten Tag ich aufersteh'") 
5. 娘の歌 作品85の3(Mädchenlied "Ach, und du mein kühles Wasser!") 
6. 娘は語る 作品107の3(Das Mädchen spricht) 
7. なげく娘 作品7の5(Die Trauernde) 
8. あこがれ 作品14の8(Sehnsucht "Mein Schatz ist nit da") 
9. どうやってドアを入ったらいい(Wie komm' ich denn zur Tür herein) 
10. 静かな夜に(In stiller Nacht) 
11. 菩提樹が立っている(Es steht ein Lind') 
12. 雨の歌(Regenlied "Regentropfen aus den Bäumen")

マーラー(Mahler)作曲

13. 春の朝(Frühlingsmorgen) 
14. 森の小鳥(Waldvögel "Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald") 
15. 二度と会えない(Nicht Wiedersehen!) 
16. 別離(Scheiden und Meiden) 
17. いたずらっ子をしつけるために(Um schlimme Kinder artig zu machen) 
18. ハンスとグレーテ(Hans und Grete) 
19. たくましい想像力(Starke Einbildungskraft) 
20. 夏の交代(Ablösung im Sommer) 
21. つらなる想い(Erinnerung)

ブラームスが「娘」を歌った作品をずらっと並べたプログラミングは新鮮であり、ブラームスの多様性を楽しめる。
とりわけ「早まった誓い」の美しい歌いぶりは印象深い。
マーラーは彼女がしばしばリサイタルでも歌っていた十八番をスタジオ録音したものとして貴重である。

●幸福:シューベルト歌曲を歌う
Popp_gage_schubert_2東芝EMI: EMI Angel: EAC-90240 (LP)
録音:1983年11月1-6日, Abbey Road Studios

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
アーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)(P)

シューベルト(Schubert)作曲

1. わが心にD.860(An mein Herz) 
2. 流れD.693(Der Fluss) 
3. 少年D.692(Der Knabe) 
4. ばらD.745(Die Rose) 
5. 蝶D.633(Der Schmetterling) 
6. ますD.550(Die Forelle) 
7. さすらい人が月に寄せてD.870(Der Wanderer an den Mond) 
8. 独りずまいD.800(Der Einsame) 
9. あふれる愛D.854(Fülle der Liebe) 
10. 若い尼僧D.828(Die junge Nonne) 
11. 水の上で歌うD.774(Auf dem Wasser zu singen) 
12. 糸を紡ぐグレートヒェンD.118(Gretchen am Spinnrade) 
13. 漁師のくらしD.881(Fischerweise) 
14. 泉のほとりの若者D.300(Der Jüngling an der Quelle) 
15. シルヴィアにD.891(An Sylvia) 
16. 幸福D.433(Seligkeit)

私がはじめて買ったポップのLPレコード。
そのジャケット写真の美しさにも惹かれたものだった。
F.シュレーゲルの詩による「流れ」という曲のこのうえない美しさを知ったのもこのレコードが最初だった(ゲイジの演奏もきわめて美しい)。
解説の原田茂生氏曰く「上品でありながら適度の甘さがあり、声のまろやかさと歌いくちの切れの良さとが両立しているところは、例えばアメリングの成熟とマティスの清雅を加え合わせたようなともいえよう。」

●R.シュトラウス:歌曲集
Popp_sawallisch_straussEMIミュージックジャパン: EMI CLASSICS: TOCE-14189
録音:1984年9月10-13日 Kloster Seeon, West Germany

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)(P)

R.シュトラウス(Strauss)作曲

8つの歌 作品10(Acht Lieder)
1. No.1:献呈(Zueignung)
2. No.2:なにも(Nichts)
3. No.3:夜(Die Nacht)
4. No.4:ダリア(Die Georgine)
5. No.5:忍耐(Geduld)
6. No.6:もの言わぬものたち(Die Verschwiegenen)
7. No.7:いぬさふらん(Die Zeitlose)
8. No.8:万霊節(Allerseelen)
   
3つの愛の歌(Drei Liebeslieder)
9. 赤いばら(Rote Rosen)   
10. 目ざめたばら(Die erwachte Rose)   
11. 出会い(Begegnung)
   
12. 高鳴る胸 作品29-2(Schlagende Herzen)
13. 帰郷 作品15-5(Heimkehr)
14. 白いジャスミン 作品31-3(Weisser Jasmin)
15. 子守歌 作品41-1(Wiegenlied)
16. わが子に 作品37-3(Meinem Kinde)
17. ひそやかな歌 作品41-5(Leise Lieder)
18. ひそかな歌 作品39-1(Leises Lied)
19. 悪いお天気 作品69-5(Schlechtes Wetter)
20. 15ペニヒで 作品36-2(Für fünfzehn Pfennige)
21. 父が言いました 作品36-3(Hat gesagt - bleibt's nicht dabei)

R.シュトラウスの歌曲はやはり女声で聴くと一層映える。
古今のシュトラウス歌曲集の中で最も魅力的な1つだと思う。
ポップの聴き手の心をくすぐるような魅力と、サヴァリッシュの冴え渡った響きの相乗効果で最後まで一気に聴きとおしてしまう。
最近再発売されたのは有難いが、歌詞対訳が一切ついていないのは残念(最初にLP発売された時にはついていた筈だが)。

●ユーゲントシュティール時代の歌曲集(Jugendstil-Lieder)
BMGビクター: RCA Red Seal: BVCC-123
録音:1991年5月3-6日, Schloßpavillon Ismaning

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(P)

ベルク(Berg)作曲

1. 7つの初期の歌(7 frühe Lieder)

シェーンベルク(Schönberg)作曲

2. 4つのリートop.2(4 Lieder)

プフィッツナー(Pfitzner)作曲

3. だから春の空はそんなに青いの?op.2-2(Ist der Himmel darum im Lenz so blau?)
4. 孤独な女op.9-2(Die Einsame)
5. 母なるヴィーナスop.11-4(Venus mater)
6. 捨てられた娘op.30-2(Das verlassene Mägdlein)
7. わたしのまどろみはしだいに浅くなりop.2-6(Immer leiser wird mein Schlummer)

シュレーカー(Schreker)作曲

8. ばらの死op.7-5(Rosentod)
9. 遊糸op.2-1(Sommerfäden)
10. おまえたちはかくも美しい(Sie sind so schön, die milden, sonnenreichen, certräumten Tage)
11. 無限の愛op.4-2(Unendliche Liebe)

R.シュトラウス(Strauss)作曲

12. オフィーリアの3つの歌op.67-1~3(3 Lieder der Ophelia)
13. 風雨をしのぐ宿op.46-1(Ein Obdach gegen Sturm und Regen)
14. 青い夏op.31-1(Blauer Sommer)
15. 子守歌op.49-3(Wiegenliedchen)
16. わたしはただようop.48-2(Ich schwebe)

爛熟した時代の歌の数々はレパートリー的にも貴重な録音であった。

●Schubert: The Complete Songs, Vol. 17
Popp_johnson_schubertHyperion: CDJ33017
録音:1992年4月7-9日, Rosslyn Hill Unitarian Chapel, Hampstead, London

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Graham Johnson(グレアム・ジョンソン)(P)

Schubert(シューベルト)

1. Lied (Mutter geht durch ihre Kammern), D373(歌:母は部屋を通る) 
2. Lodas Gespenst, D150(ローダの亡霊)
3. Klage, D371(嘆き)
4. Lorma, D376(ロルマ)
5. Der Herbstabend, D405(秋の夕べ)
6. Die Einsiedlei, D393(隠棲)
7. Die Herbstnacht (Wehmut), D404(秋の夜:悲しみ)
8. Lied in der Abwesenheit, D416(不在の歌)
9. Frühlingslied, D398(春の歌)
10. Winterlied, D401(冬の歌)
11. Minnelied, D429(愛の歌)
12. Aus 'Diego Manzanares', Ilmerine, D458(「ディエゴ・マンツァナレス」より、イルメリーネ)
13. Pflicht und Liebe, D467(義務と愛)
14. An den Mond, D468(月に寄せて)
15. Am Tage aller Seelen (Litanei), D343(連祷)
16. Geheimnis (An Franz Schubert), D491(秘密:フランツ・シューベルトに)
17. Am Grabe Anselmo's, D504(アンゼルモの墓で)
18. An die Nachtigall, D497(ナイチンゲールに)
19. Klage um Ali Bey, D496a(アリ・ベイの嘆き)
20. Phidile, D500(フィディレ)
21. Herbstlied, D502(秋の歌)
22. Lebenslied, D508(人生の歌)
23. Leiden der Trennung, D509(別れのつらさ)
24. An mein Klavier, D342(私のピアノに寄せて)

亡くなる前年の録音。
そう思うと感慨深いが、彼女の歌唱はいつも通り緻密で美しい。
シューベルト全集の一環だからこその珍しい選曲も楽しめる。

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YouTubeでのルチア・ポップの映像
R.シュトラウス「4つの最後の歌」~夕映えの中で
http://jp.youtube.com/watch?v=Ur-Is-04SxU
(ショルティ指揮のオケが明るく元気すぎて、死を目前にした心境を綴ったこの曲とそぐわない感はあるものの、1977年の若く美しいポップの澄んだ表現を楽しめます。)

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ルチア・ポップ/スラヴ歌曲集

ソプラノ歌手のルチア・ポップ(Lucia Popp: 1939.11.12, Uhorška Veš (Bratislava) - 1993.11.16, München)は、歌曲の歌い手として私の好きな一人である。
細く、メタリックな光沢をもった透明な美声はそれだけでも十分魅力的だが、細かいヴィブラートを付けて歌われるその歌は知性的で、詩のメッセージを優しく的確に伝えてくれる。コロラトゥーラ出身ながらリリックで繊細な表現を聴かせる。故井上直幸さんのピアノ共演で東京で開いたリサイタルの翌年に亡くなってから、もう14年が経ってしまった。そんな彼女の演奏の中で特に素敵な録音「スラヴ歌曲集」について記してみたい。

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Popp_parsons_dvorakルチア・ポップ/スラヴ歌曲集

クラウンレコード: PALETTE/ACANTA: PAL-1092
ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)
録音:1979年8月24~26日、Bavaria Studio, München

ドヴォルザーク(Dvořák)/“民謡の調べで”作品73 
1)娘が草を刈っていた (Žalo dievča, žalo trávu) (no.2)
2)ああ、ここにはないの (Ach, není tu) (no.3)
3)エイ、俺の馬は天下一 (Ej, mám já koňa faku) (no.4)
4)おやすみ (Dobrú noc) (no.1)

プロコフィエフ(Prokofieff)/“ロシア民謡(独唱用編曲)”作品104より
5)茶色の瞳 (Кари глазки) (no.10)
6)緑の木立 (Зелёная рощица) (no.2)
7)修道僧 (Чернец) (no.12)
8)白い小雪 (Снежки булыу) (no.5)

コダーイ(Kodály)/“ピアノと声楽のためのハンガリー民俗音楽”より
9)森は緑の時がきれい (Akkor szép az erdö mikor zöld)
10)若さはあの鷹のよう (Ifjúság mint sólyom madár)
11)馬車、荷車、馬車、橇 (Kocsi szekér, kosci szán)
12)恋人を呼ぶ (Elkiáltom magamat)

ヤナーチェク(Janáček)/“モラヴィアの民俗詩による歌曲”より
13)恋 (Łáska)
14)分からないの (Nejistota)
15)歌う娘 (Zpĕvulenka)
16)あの人の馬 (Koníčky milého)
17)ムギナデシコ (Koukol)
18)ハシバミの実 (Oříšek léskový)
19)花の魔力 (Kvítí milodĕjné)
20)手紙 (Psaníčko)
21)慰めの涙 (Slzy útěchou)

(上記の日本語表記はすべてCD記載の通り)

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ドヴォジャーク

1)「娘が草を刈っていた」
娘が草運びを若者に頼むと、俺との結婚に反対したご両親に頼むがいいと断り、未練の気持ちを訴えるという内容。活気のある曲。

2)「ああ、ここにはないの」
ここには私を喜ばせるものは無い。私の貰うものは欲しくないものばかり。心のない男を押し付けないでほしいという内容。前曲とこの曲をつなげて配置しているのはなかなかよく考えられていると思う。ゆったりとした優しいピアノの響きの上で心に響く印象的な旋律が歌われる。

3)「エイ、俺の馬は天下一」
天下一の馬を持っていた。シジュウカラを飼っていた。火花のような恋人もいたが、俺を裏切りほかの男に心変わりしたと歌われる。各節とも最初のうちは冷静に事情を報告しているが、最後の行で雰囲気が一転し、切々と歌われる。ここでも前の曲の次にこの曲が配置されたのはドヴォジャークの意図を感じる。

4)「おやすみ」
本来はこの“民謡の調べで”の第1曲に配置されているもの。詩は穏やかで、ありがちな子守歌だが、その哀しげなメロディーは心を揺さぶられるほど美しい!全2節の有節形式。

プロコフィエフ

5)「茶色の瞳」
茶色の瞳の恋人と離れ、会えない気持ちを嘆き、獣に私の体を引き裂かせて心臓を恋人に届けさせたいと歌う。細かい音型のピアノに乗って、深刻な歌を響かせる。右手の三連符(おそらく)と左手の低音の旋律の動きや、後奏の感じなど、どことなくブラームスを思わせる。

6)「緑の木立」
緑の木立はどうして花を咲かさず、ナイティンゲールはどうして歌わないのかという問いに対して、あの人が来ないから、振り向いてくれないからと答える歌。ぽつぽつと刻むピアノの上で問いが低い音で歌われ、答える箇所は一転して流れるような響きになり、最後に元の調子に戻る。

7)「修道僧」
修道僧が散歩をしていると、向こうからお婆さんの群れ、若い女性の群れ、年頃の娘の群れが次々とやってくる。最初は修行の身であるから惑わされないように自分に言い聞かせていたが、最後には祈りはもう十分、結婚したっていいじゃないかと開き直るという内容。早口な歌は終始コミカルで、韻を踏んだ言葉の羅列が楽しい。ピアノはリズミックな箇所と旋律的な箇所が交代したり交差したりして縦横無尽に活躍する。一見メカニックで情を排したようなピアノの書法がかえってユーモラスな味を出している。プロコフィエフの面目躍如たる作品。

8)「白い小雪」
雪は野原を覆うが、私の悲しみは覆い隠せない。だが、私の涙が尽きるころには雪も溶けて緑が生い茂るだろうという内容。ゆったりとした息の長い旋律が歌われ、最後には気持ちが浄化されたかのように希望を感じさせて終わる。

コダーイの4曲はいずれもハンガリー情緒豊かで耳に残る作品ばかりである。とりわけ「若さはあの鷹のよう」は、鷹のような自由さに憧れながらもそれが出来ない者の苦悩と祈りが歌われるが、1曲の芸術歌曲として通用する内容の充実と訴求力の強さを感じる。
「馬車、荷車、馬車、橇」は(おそらく)意味のないリフレイン"libilibi lim, lom,..."がコミカルで、ピアノの洒落た響きも楽しい。

ヤナーチェクの9曲は作風の異なる様々な曲が選ばれて、ポップの選曲眼のうまさを感じさせられた。
中でも私が一番印象に残ったのは「あの人の馬」という曲。「馬の駆け足を思わせる音画的手法」(解説の佐川吉男氏の表現)として、ピアノの片手は早いスピードでスケールを繰り返し、もう片方の手による後打ちのリズムも加わり、軽快で実に楽しい作品になっている。
「歌う娘」はピアノの独特なユニゾンの響きの上で民族色の濃いメロディが印象的である。
あなたを愛しているのか私には分からないけれど、今晩家に来れば母が教えてくれると歌う「分からないの」や、林の小枝で庭を作り、そこにムギナデシコの種を蒔くのはあなたのためと歌う「ムギナデシコ」では、細かい同音(あるいはオクターヴ)反復がピアノに聴かれ、佐川氏曰くツィンバロンに影響を受けた書法とのこと。
個性の強い曲の中で、素朴な民謡風の「ハシバミの実」はほっと一息つける小品である。
私が鳥ならあの人の庭の上から見てみたい、すると恋人は私に手紙を書いていると歌われる「手紙」は、流れるピアノの分散和音の上で懐かしいような優しい歌が歌われ、民族色の強い他の曲とは違った普遍的な魅力が感じられた。
アルバム最後を締めくくる「慰めの涙」は、まるでシュヴァルツコプフが好んで歌ったスイス民謡のような簡素で気楽な3拍子の曲で、「歌うのが好きな人もいれば涙に慰められる人もいる、だから私が泣いていても放っておいて」という詩の内容と一見合わないようにも感じられる。だが、悲しみを明るく歌い飛ばすのも民謡の魅力の一つなのかもしれない。

解説によるとポップはこの録音で、チェコ語、スロヴァキア語、ロシア語、ハンガリー語をすべて原語で歌っているという。その発音がどうこうということは私には分からないが、明瞭な言葉の響きはとても心地よい。その音楽への姿勢は、いつも通り誇張を排し、作品に誠実に向き合っているのが感じられる。美しい高音は繊細であると同時に華やかで、一時も飽きることなく、一気にこれらの小さな民謡たちを最後まで魅力的に聴かせてくれる。

ヤナーチェクの「あの人の馬」はコジェナー&G.ジョンソンの録音(DG)もあるが、あちらが競争しているような早いテンポで若干あわただしい感があるのに比べ、ポップたちのテンポはちょうどいい感じで、印象的なメロディが楽しげに歌われ、パーソンズの弾く馬の表現と後打ちのリズムも素晴らしい。また、プロコフィエフ「修道僧」での二人の絶妙な表現と、ドヴォジャーク「おやすみ」でのこの上なく美しい子守歌の演奏もとりわけ印象的だった。

ジェフリー・パーソンズの数多い録音の中でもこのCDはベストの一つだと思う。「節度がある」という評は共演ピアニストにとってはあまり有難くない言葉だろうが、良い意味で彼の演奏には考え抜かれたコントロールの妙味があり、行き過ぎない範囲でそれぞれの音に最大の息吹を吹き込んでいるとでも言ったらいいだろうか。確かに彼の演奏に民謡のもつ粗野なエネルギーはあまり求められないだろうが、落ち着いた響きの中から作曲家の意図したであろう響きが見事なまでに浮かび上がってくる。卓越したリズム感覚と素晴らしく美しい音色で貫かれ、そのテクニックの巧みさは「修道僧」などに遺憾なく発揮されていた。

上記のCDはすでに廃盤になっているかもしれませんが、手にする機会がありましたらぜひ聴いてみていただけたらと思います。

(佐川吉男氏によるCD解説と、橋本ダナ氏(プロコフィエフ以外)、一柳富美子氏(プロコフィエフ)による訳詩を参照させていただきました。)

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