マティス&シュライアー&エンゲル(Mathis, Schreier & Engel)/ブラームス「ドイツ民謡集」抜粋映像

ソプラノのエディト・マティス(Edith Mathis)、テノールのペーター・シュライアー(Peter Schreier)、そしてピアニストのカール・エンゲル(Karl Engel)によるブラームス(Brahms)「ドイツ民謡集(49 Deutsche Volkslieder, WoO 33)」からの抜粋映像がアップされていましたのでご紹介します。

 ソースはこちら(大画面はこちらのリンク先でご覧ください)

ブラームス(Brahms)「ドイツ民謡集(49 Deutsche Volkslieder, WoO 33)」からの抜粋

No. 4. Guten Abend, mein tausiger Schatz (Schreier, Mathis, Engel)

No. 5. Die Sonne scheint nicht mehr (Schreier, Engel)

No. 6. Da unten im Tale (Mathis, Engel)

No. 12. Feinsliebchen, du sollst mir nicht barfuss gehn (Schreier, Mathis, Engel)

No. 2. Erlaube mir, fein's Mädchen (Schreier, Engel)

No. 15. Schwesterlein (Schreier, Mathis, Engel)

No. 16. Wach' auf mein' Herzensschöne (Schreier, Engel)

No. 41. Es steht ein' Lind' (Mathis, Engel)

No. 30. All' mein' Gedanken (Schreier, Engel)

No. 42. In stiller Nacht (Mathis, Engel)

エディト・マティス(Edith Mathis)(S)
ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
カール・エンゲル(Karl Engel)(P)

可愛らしい容姿のマティスは鮮やかな青のドレスに身をまとい、明瞭なディクションで美しく歌っています。
シュライアーは本当に自然なドイツ語が美しく、表情も豊かです。
エンゲルの演奏している映像はそれほど多くないと思うので、貴重です。もちろんここでもしっかりと安定したピアノを聞かせています。

それにしてもブラームスの「ドイツ民謡集」は本当に素晴らしい!
素朴な歌の旋律に繊細な和音が織り込まれ、ブラームスならではの世界が立ち現れます。
名手3人の全盛期の素晴らしい記録です。ぜひお聞きください。

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シュライアーの2種のメンデルスゾーン歌曲集(オルベルツ/エンゲル)

今年が生誕200年のフェーリクス・メンデルスゾーン=バルトルディ(Felix Mendelssohn-Bartholdy: 1809-1847)は、ヴァイオリン協奏曲や「フィンガルの洞窟」序曲、「夏の夜の夢」などでよく知られている作曲家である。
短命だが裕福な家系に生まれ、その明朗、優美な作風は幅広く愛されている。
大規模な作品だけでなく、ピアノ・ソロのための小品集「無言歌」も有名で、特に「春の歌」や「ヴェネツィアの舟歌」などは実際に弾いたことのある方も多いのではないか。
それとは別にチェロとピアノのための「無言歌」という作品もあり、ジャクリーン・デュ・プレがジェラルド・ムーアと録音しており、包み込むような美しい作品で印象に残っている。

メンデルスゾーンは独唱歌曲も多く作曲しているが、その中で飛び抜けて有名な「歌の翼に」を除くと残念ながらそれほど知られているとは言えない。
しかし、歌曲においても優美で耳あたりのよい作風は貫かれ、一度聴くとその魅力にとりつかれてしまう。

ドイツ、マイセン出身のテノール、ペーター・シュライアー(1935年生まれ)はオペラ、宗教曲だけでなく、歌曲の歌い手としてもコンサートや録音で活躍してきたが、1971年と1993年という20年もの間隔をあけてメンデルスゾーン歌曲集の録音を2回行っている。
1971年の録音(BERLIN Classics / DG)はドイツ、アーヘン出身のヴァルター・オルベルツ(1931年生まれ)と共演して22曲、そして1993年の録音(BERLIN Classics)はスイス、バーゼル出身のカール・エンゲル(1923-2006)と共演して24曲歌っている。

●1度目の録音

Schreier_olbertz_mendelssohnユニバーサルミュージック: DG: UCCG-4337
BERLIN Classics: 0092182BC
録音:1971年9月27~30日、Lukaskirche, Dresden

ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
ヴァルター・オルベルツ(Walter Olbertz)(P)

メンデルスゾーン作曲
1.春の歌Op. 47-3(2'17)*
2.挨拶Op. 19-5(1'47)*
3.春の歌Op. 34-3(2'50)
4.春の歌Op. 19-1(1'45)*
5.旅の歌Op. 57-6(1'50)
6.問いOp. 9-1(1'12)
7.新しい愛Op. 19-4(1'52)*
8.月Op. 86-5(2'00)*
9.もうひとつの五月の歌(魔女の歌)Op. 8-8(2'05)*
10.恋の歌Op. 34-1(1'42)*
11.狩の歌Op. 84-3(2'27)
12.ゆりかごのそばでOp. 47-6(3'25)
13.歌の翼にOp. 34-2(3'22)*
14.古いドイツの春の歌Op. 86-6(2'10)
15.葦(あし)の歌Op. 71-4(3'25)*
16.ヴェネツィアのゴンドラの唄Op. 57-5(2'05)*
17.旅の歌Op. 34-6(2'30)*
18.はじめての失恋Op. 99-1(3'15)
19.秋にOp. 9-5(2'00)
20.羊飼の歌Op. 57-2(2'55)*
21.冬の歌Op. 19-3(2'30)*
22.小姓の歌(1'45)*

(上記の日本語表記は原則として国内盤CD(UCCG-4337)に従いましたが、Op. 8-8はCDの記載「魔女の春の歌」から、Op. 71-4は「あしの歌」から上記に変えました)
HMVのサイトで上記の録音全曲が試聴できます)

●2度目の録音

Schreier_engel_mendelssohnBERLIN Classics: BC 1107-2
録音:1993年10月、Westdeutscher Rundfunk, Köln. Funkhaus Wallrafplatz, Großer Sendesaal

ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
カール・エンゲル(Karl Engel)(P)

メンデルスゾーン作曲
1.歌の翼にOp. 34-2(2'54)*
2.葦(あし)の歌Op. 71-4(3'00)*
3.月Op. 86-5(1'47)*
4.小姓の歌(1'49)*
5.春の歌Op. 9-4(2'53)
6.旅の歌Op. 34-6(2'47)*
7.夜ごとの夢にOp. 86-4(1'42)
8.ヴェネツィアのゴンドラの唄Op. 57-5(1'42)*
9.はるかな女性にOp. 71-3(1'26)
10.春の歌Op. 19-1(1'30)*
11.恋の歌Op. 34-1(1'46)*
12.お気に入りの場所Op. 99-3(2'35)
13.冬の歌Op. 19-3(2'35)*
14.挨拶Op. 19-5(1'40)*
15.初すみれOp. 19-2(2'11)
16.そのとき僕は木陰で横になっているOp. 84-1(3'45)
17.恋の歌Op. 47-1(1'56)
18.朝の挨拶Op. 47-2(1'53)
19.旅路でOp. 71-5(2'01)
20.夜の歌Op. 71-6(2'42)
21.羊飼の歌Op. 57-2(4'05)*
22.春の歌Op. 47-3(2'36)*
23.新しい愛Op. 19-4(1'56)*
24.もうひとつの五月の歌(魔女の歌)Op. 8-8(2'06)*

1度目の録音は最近ユニバーサルミュージックからDGレーベルの音源としてCD復活(UCCG-4337)を遂げたが、「世界初CD化」という触れ込みは誤りで、すでにBERLIN ClassicsがCD化していたので、「国内初CD化」と言うべきだろう。
2度目の録音もBERLIN Classicsから発売された後、国内盤としても発売されていた。

上記の曲目の後に*印を付けたものは1度目と2度目で重複して歌っている曲を示している。
つまり、2度目の再録音では全24曲中、半数以上の14曲も重複して歌っているのである。
1度目でのみ歌っている曲は8曲、2度目でのみ歌っている作品は10曲であり、シュライアーの録音におけるメンデルスゾーン歌曲のレパートリーは計32曲ということになる。
名歌手たちが「冬の旅」を何度も再録音するように、シュライアーが十八番のメンデルスゾーン歌曲を再び録音したくなったとしても不思議はない。
2度目の録音では8曲もの新レパートリーを聴くことが出来ること、さらに14曲の共通するレパートリーの聴き比べ(ピアニストも含めて)が出来ることを喜びたい。

ペーター・シュライアーは70歳を機に歌手活動から引退してしまったが、最後まで清冽で爽快な声を維持していたのは高音歌手としてはすごいことではないか。
この2種の録音でも36歳と58歳という20年以上の歳月の流れがあるにもかかわらず、それを感じさせない声と表現には驚かされる。
彼は旧東ドイツの聖歌隊出身ということで小さい頃から歌唱の基本を叩き込まれてきたのだろう、どのタイプの曲を歌っても安定した音楽と美しい言葉さばきを聞かせてくれる。
ドイツ語のほれぼれするほどの美しい発音は彼の魅力の一つだが、それ以上に過剰さのない表現の節度が素晴らしかった。
1980年代に入り、多少濃淡を大きくとる傾向が見られたが、それでも作品を逸脱しない範囲内であったと思う。
このメンデルスゾーンの録音でも、1971年の録音が清流のような清清しさで貫かれていたのに対し、1993年盤では若干高音が苦しい箇所もあるものの殆ど問題なく、危なげのない安定した歌唱はそのままで、さらに言葉の一言一言への重みが加わって味わい深くなっている。
このような変化を聞くのも特定のリート歌手を追い続けていく楽しみの一つである。

1971年盤の共演者ヴァルター・オルベルツは、ハンス・アイスラーのピアノ曲の初演や、ハイドンのピアノソナタ全集の録音、さらにシュライアー、オージェー、ヴァイオリニストのズスケなどとの共演者としても知られている。
この録音でも一貫して作品に同化した歌心を感じさせて、ただただ素晴らしい。
こういうピアノで歌えるシュライアーは恵まれているといえるだろう。
もともと美しくしっかりとした音色を聞かせるピアニストではあるが、その長所がこの録音では際立っていてすべてがプラスに働いている。
「歌の翼に」の分散和音がこれほど美しく響くのも珍しく、一方「もうひとつの五月の歌(魔女の歌)」でのあらん限りのテクニックでリズミカルに盛り立てるその手腕には驚き、この作品演奏でのベストのピアニストの一人と感じた。

1993年盤の共演者カール・エンゲルはオールマイティのピアニストであるが、もともと歌曲の演奏には定評があり、F=ディースカウやプライなどとの名演はよく知られている。
シュライアーとも何度も共演して気心の知れた間柄であるだけにここでも堅実、かつテクニシャンぶりを存分に発揮している。

メンデルスゾーンの歌曲は上述の曲目を見ても分かるとおり季節をテーマにした曲が多いが、とりわけ「春の歌」が多い。
このテーマで以前に記事を書いているので興味のある方はご覧ください。
http://franzpeter.cocolog-nifty.com/taubenpost/2007/04/post_5dcd.html

個人的に好きなメンデルスゾーンの歌曲は沢山あるが、特に「もうひとつの五月の歌(魔女の歌)」「ヴェネツィアのゴンドラの唄」「葦(あし)の歌」「夜の歌」「新しい愛」などは奇跡のような素晴らしい作品である。
複雑さはなく、素直に聴き手の心に入ってくるのがメンデルスゾーンの音楽の魅力である。

曲のタイプを大雑把に分類すると次のような感じだろうか。

・憂いを帯びた曲:「葦(あし)の歌」「ヴェネツィアのゴンドラの唄」
・ピアノが技巧的な曲:「もうひとつの五月の歌(魔女の歌)」
・静謐さで訴えてくる曲:「夜の歌」
・穏やかな曲:「挨拶」
・リズミカルな曲:「新しい愛」「小姓の歌」
・歌声部に半音進行を取り入れた曲:「月」
・ドラマティックな展開のある曲:「旅の歌」Op. 34-6

最後にシュライアーの歌ったメンデルスゾーンの映像が動画サイトにあったのでご紹介したい。
珍しく管弦楽に編曲されたもので3曲歌っている(「歌の翼に」「新しい愛」「挨拶」)。
多少映像と音がずれているのでその点はご了承ください。
1989年ベルリン録音、クラウス・ペーター・フロール(C)

http://www.youtube.com/watch?v=Z-M16Ao3NmU

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カール・エンゲル・ディスコグラフィー抜粋

先日亡くなったカール・エンゲルの録音を振り返ってみたいと思う。

その前に彼の経歴について。カール・エンゲル(Karl Engel)は、1923年6月1日にスイスのバーゼル近郊にあるビルスフェルデン(Birsfelden)に生まれる。ギュムナージウム修了後、バーゼルのコンセルヴァトーリウムでパウル・バウムガルトナー(Paul Baumgartner)に1942~1945年までピアノを学び、さらにパリのEcole Normale de Musiqueでアルフレッド・コルトー(Alfred Cortot)に師事する。1951年にボルツァーノのブゾーニ国際ピアノ・コンクール(Concours International de Piano Ferruccio Busoni)で1、2位なしの3位となる(同じくヴァルター・クリーンも3位)。1952年にはブリュッセルのエリザベート王妃国際音楽コンクール(Concours musical international Reine Elisabeth de Belgique)で2位となる(1位はレオン・フライシャー)。ハノーファー音楽演劇高等学校(Hochschule für Musik und Theater in Hannover)で1986年まで教え、1980年以降は国内外でマスタークラスを開いてきた。独奏者としてはモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ドビュッシーなどの作品のほかに、同時代のスイスの作曲家ペーター・ミーク(Peter Mieg)、アルベルト・メッシンガー(Albert Moeschinger)などもレパートリーとしていた。パブロ・カザルスやポール・トルトゥリエ、シャーンドル・ヴェーグ、イェフディ・メニューヒン、クラウス・シュトルク、オレル・ニコレのような楽器奏者や、マリーア・シュターダー、エーリカ・ケート、マティス、ファスベンダー、エルンスト・ヘフリガー、シュライアー、F=ディースカウ、プライのような声楽家とも頻繁に共演を重ねる。そして2006年9月2日(または3日)にスイス、Chernexの自宅で83年の生涯を閉じた。

カール・エンゲル独奏

Engel_schumann_carnaval ●L'OEUVRE DE PIANO 1 / Schumann
AUVIDIS-VALOIS: V 4451
Karl Engel(P)
録音:1972年9月(Op.1, 2, 9)&12月(Op.4), Beethovensaal, Hannover
シューマン/アベック変奏曲Op.1;蝶々Op.2;謝肉祭Op.9;間奏曲Op.4

いわゆるスタンダードなシューマンの名盤というものではないと思うが、エンゲルの丁寧な表現は、巷にあふれている演奏者の個性を前面に打ち出した多くの演奏の中でかえって新鮮に響くのではないか。カール・エンゲルはシューマンのピアノ作品の全集を録音しており、第2巻以降もかつてCD化されていたが、現在は入手困難のようである。

●シューベルト/舞曲集(Schubert / Tänze für Klavier)
pan CLASSICS: 510 060
Karl Engel(P)
録音:1993年2月, Konservatorium Zürich, Grosser Saal
シューベルト作曲
12の高貴なワルツ集D969
36のオリジナル舞曲集D365
11のエコセーズ集D781
4つのトリオ付きの2つのメヌエット集D91
9つのエコセーズ集D145
メヌエットD334
16のドイツ舞曲集と2つのエコセーズ集D783
メヌエットD600

●楽興の時D780
ORBIS: 23522 (LP)
Karl Engel(P)
録音:不明
シューベルト/楽興の時D780

●ブラームス
EMI: E 80495 (LP)
Karl Engel(P)
録音:不明
ブラームス/ヘンデルの主題による変奏曲とフーガOp.24;シューマンの主題による変奏曲Op.9;ラプソディー ト短調Op.79-2

●ライヴ
SÜDWESTFUNK: SWF 143 (LP)
Karl Engel(P)
録音:不明
D.スカルラッティ、モーツァルト、シューベルト、ラヴェルの作品(詳細不明)

ほかにモーツァルトのピアノ独奏曲、ピアノ協奏曲(レオポルト・ハーガー指揮)の全集を録音している(現在でも入手可能のようだ)。

アンサンブルでのカール・エンゲル

Brahms_vokal_ensembles●ブラームス/重唱曲集
ポリドール:DG: POCG-9245/9249
Edith Mathis(S) Brigitte Fassbaender(MS) Peter Schreier(T) Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P)
Wolfgang Sawallisch(P: Op. 52 & 65)
録音:1974~1982年、Studio Lankwitz, Berlin(「49のドイツ民謡集」以外)、Lukas Kirche, Dresden(「49のドイツ民謡集」)
ブラームス/「三つの二重唱曲」Op.20(愛の道(第1部);愛の道(第2部);海)[Mathis; Fassbaender](1982年6月5~6日);
「四つの二重唱曲」Op.28(尼僧と騎士;戸口の前で;波はざわめく;狩人とその恋人)[Fassbaender; F-Dieskau](1982年9月15~17&27日);
「三つの四重唱曲」Op.31(踊りと恋と;からかい合い;愛するひとのもとへ)[全員](1982年9月15~17&27日);
「愛の歌」Op.52(全18曲)[全員; Sawallisch](1981年9月15&18日);
「四つの二重唱曲」Op.61(姉妹;修道女;自然の現象;愛の使い)[Mathis; Fassbaender](1982年6月5~6日);
「三つの四重唱曲」Op.64(故郷に;夕べ;問い)[全員](1981年9月15&18日);
「新・愛の歌」Op.65(全15曲)[全員; Sawallisch](1981年9月15&18日);
「五つの二重唱曲」Op.66(ひびきⅠ;ひびきⅡ;岸辺で;狩りの歌;気をつけるのだ)[Mathis; Fassbaender](1982年6月5~6日);
「四つのバラードとロマンス」Op.75(エトヴァルト;よい忠告;ともに旅に出よう;ヴァルプルギスの夜)[Mathis(2-4); Fassbaender(1,2,4); Schreier(1, 3)](1982年9月15~17&27日(1,3),1982年6月5~6日(2,4));
「四つの四重唱曲」Op.92(ああ美しい夜;晩秋;夕べの歌;なぜ?)[全員](1981年9月15&18日);
「ジプシーの歌」Op.103から:三つの四重唱曲(ほら、風が枝を悲しげに吹きぬけて行く;どこへ行っても、だれもわたしには知らんぷり;月がその顔を覆う)[全員](1982年9月15~17&27日);
「六つの四重唱曲」Op.112(憧れ;夜;天は明るく澄みわたっている;ばらの赤いつぼみが;いらくさが道端に生えている;かわいいつばめ、小さなつばめ)[全員](1982年9月15~17&27日);
「14の子供のための民謡集」(いばら姫;夜鶯;男;眠りの精;めんどり;野ばら;なまけ者の理想郷;膝の上のお馬乗り;森のかりうど;子守歌;娘とはしばみ;クリスマス;てんとう虫;守護天使)[Mathis](録音年不詳);
「49のドイツ民謡集」から(独唱曲全42曲)[Mathis; Schreier](1974年9月&1975年2月)

ブラームスの重唱曲をまとめて一人で演奏している。エンゲルの代表作の1つであろう。「愛の歌」「新・愛の歌」の連弾パートナーはサヴァリシュ。

●ヴォルフ/歌曲集
ポリドール(LP):DG: 2707 096
Edith Mathis(S) Peter Schreier(T) Karl Engel(P)
録音:1976年6月19~24日、Dresden
ヴォルフ/「イタリア歌曲集」(全46曲)

残念ながらまだCD化されていないが、エンゲルの躍動感の横溢したキレのある最高の演奏が堪能できる。

エーディト・マティス(S)

Mathis_engel_mo●モーツァルト/歌曲集
日本クラウン:Novalis: CRCB-1501
Edith Mathis(S) Karl Engel(P)
録音:1986年8月ドイツ、バンベルク、ツェントラルザール
モーツァルト/喜びに寄せてK.53;なんと私は不幸なことかK.147;鳥たちよ、おまえたちは毎年K.307;淋しい暗い森の中をK.308;満足K.349;私は私の道をK.390;私の慰めであって下さいK.391;魔法使いK.472;満足K.473;すみれK.476;老婆K.517;内緒ごとK.518;ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時K.520;ラウラに寄せる夕べの想いK.523;クローエにK.524;小さなフリードリヒの誕生日K.529;小さな紡ぎ娘K.531;春への憧れK.596;春K.597;子供の遊びK.598

Mathis_engel_schubert ●シューベルト/歌曲集
クラウンレコード:Novalis: NOV-26
Edith Mathis(S) Karl Engel(P) Kurt Weber(CL: D. 965)
録音:1988年6月14~16日 西ドイツ、ノイマークト、ライトシュターデル
シューベルト/春の信仰D.686;沈み行く太陽にD.457;ばらD.745;ズライカⅠD.720;ズライカⅡD.717;悲しみのよろこびD.260;春の神D.448;ナイチンゲールにD.497;笑ったり泣いたりD.777;鱒D.550;岩の上の羊飼いD.965;アンゼルモの墓にD.504;ただあこがれを知るひとだけがD.877;もうしばらくこのままの姿にD.877;はじめての失恋D.226;憩ない愛D.138;糸を紡ぐグレートヒェンD.118;乙女D.652;子守歌D.498

マティスもエンゲル同様スイス出身。そんなこともあって気が合うのだろうか。二人とも丁寧で透明な響きが共通しているように思う。特に「モーツァルト歌曲集」は二人の過不足のない表現がとても心地よい。

ブリギッテ・ファスベンダー(MS)

Fassbaender_lieder_vol_1_1 ●BRIGITTE FASSBAENDER Lieder Vol. 1
EMI CLASSICS:7243 5 85303 2 2
Brigitte Fassbaender(MS) Karl Engel(P)
録音:1973年9月18~20日、Studio Zehlendorf
シューマン/ジプシーの歌ⅠOp. 79-7;ジプシーの歌ⅡOp. 79-8
リスト(ダルベール編)/3人のジプシーS. 320
チャイコフスキー/ジプシーの歌Op. 60-7
ドヴォジャーク/「ジプシーのメロディー」Op. 55(全7曲)
ブラームス/「ジプシーの歌」Op. 103(全8曲)

この演奏については過去の記事(こちら)をご覧ください。

ペーター・シュライアー(T)

Schreier_engel_mendelssohn ●メンデルスゾーン/歌曲集
BERLIN Classics: BC 1107-2
Peter Schreier(T) Karl Engel(P)
録音:1993年10月、Großer Sendesaal, Funkhaus Wallrafplatz, Westdeutscher Rundfunk, Köln
メンデルスゾーン/歌の翼にOp.34-2;葦の歌Op.71-4;月Op.86-5;小姓の歌;春にOp.9-4;旅の歌Op.34-6;夜ごとの夢にOp.86-4;ヴェネツィアのゴンドラの歌Op.57-5;はるかな女(ひと)にOp.71-3;春の歌("In dem Walde...")Op.19-1;愛の歌("Leucht't heller...")Op.34-1;お気に入りの場所Op.99-3;冬の歌Op.19-3;挨拶Op.19-5;最初のすみれOp.19-2;木々の下に横たわりOp.84-1;愛の歌("Wie der Quelle...")Op.47-1;朝の挨拶Op.47-2;旅路でOp.71-5;夜の歌Op.71-6;羊飼いの歌Op.57-2;春の歌("Durch den Wald...")Op.47-3;新しい愛Op.19-4;魔女の歌Op.8-8

Schreier_engel_wolf ●ヴォルフ/メーリケ歌曲集
ORFEO: C 142 981 A
Peter Schreier(T) Karl Engel(P)
録音:1996年5月21~23日、場所は不明
ヴォルフ/春に;明け方に;問いと答え;夜明け前のひととき;さようなら;飽くことのない愛;散歩;郷愁;庭師;旅路で;狩人;癒えた者が希望に寄せて;隠遁;慰めはどこに見つかるのか;祈り;新しい愛;考えよ、おお心よ;鼓手;こうのとりの使い;告白;ある結婚式で;別れ

70台のエンゲルは、その透き通った美しい音の魅力や見事なテクニックは健在だが、かつてのような演出巧みな演奏ではなく、スマートでさりげない表現の中にちょっとした味わいを織り込むという演奏。「こうのとりの使い」後奏の演出もさりげなく、しかし聴き手に印象づける名演。それにしても女声用の「夜明け前のひととき」を歌ったり、多くの低音が要求される「癒えた者が希望に寄せて」をあえて選曲しているシュライアーはなかなかのチャレンジャーである。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)

Fdieskau_engel_schubert●シューベルト/歌曲集
EMI CLASSICS: 7243 5 65670 2 3
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P)
録音:1959年1月9日&6月12~13日、Gemeindehaus, Zehlendorf
シューベルト/タルタルスの群れD.583;ギリシアの神々D.677;期待D.159;あこがれD.636;潜水者D.77;人質D.246;歌手D.149;漁夫D.225;孤独D.620;流れによせてD.539;アルプスの狩人D.524;エルラフ湖D.586;ウルフルーが漁をする時D.525;なぐさめD.671;風にD.669;ドナウにてD.553;夕星D.806;歌の終わりD.473;あこがれD.516;ヘリオポリス第2曲D.754;ポンスにD.492;勝利D.805;友にD.654

Fdieskau_engel_ravel●ドビュッシー、ラヴェル/歌曲集
DG: 463 514-2
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P) Aurèle Nicolet(FL: *) Irmgard Poppen(VLC: *)
録音:1959年10月9、10、12日、Studio Lankwitz, Berlin
ドビュッシー/「フランソワ・ヴィヨンの3つのバラード」(全3曲)
ラヴェル/「マダガスカル島民の歌」(全3曲: *);「5つのギリシャ民謡集」(全5曲);「ドゥルシネア姫に思いを寄せるドン・キホーテ」(全3曲)

エンゲルのフランス歌曲の録音は珍しい。「ヴィヨン歌曲集」の終曲「パリ女のバラード」は世界中でパリの女性ほどおしゃべり好きな人たちはほかにいないと早口言葉のように歌われるが、曲の最後のグリッサンドをペダルなし(ひょっとしたら薄く使っているかもしれないが)でこれほど効果的に弾けるのはさすがである。F=ディースカウは最初の奥様ポッペンとの仲睦まじい共演である(「マダガスカル島民の歌」のみ)。

Fdieskau_engel_pfitzner ●プフィッツナー/歌曲集
EMI: CDM 7 63569 2
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P)
録音:1969年9月17~20日、Gemeindehaus, Berlin
プフィッツナー/夜にOp.26-2;学生の旅Op.11-3;新しい愛Op.26-3;ダンツィヒにてOp.22-1;ナイティンゲールOp.21-2;怒りOp.15-2;かつてOp.15-4;「五つの歌曲」Op.9(庭師;孤独な女;秋に;勇敢な男;別れ);誘惑Op.7-4;夜のさすらい人Op.7-2;わが娘の別れにOp.10-3;遅れたさすらい人Op.41-2;老年Op.41-3

Fdieskau_engel_goethe●ゲーテの詩による歌曲集
ORFEO: C 389 951 B
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P)
ライヴ録音:1970年、Stockholm
アンナ・アマーリア・フォン・ザクセン=ヴァイマル/田舎や町で
ライヒャルト/銘記(勇気)
ツェルター/似たもの同士
ベートーヴェン/五月の歌Op.52-4;新しい愛、新しい生Op.75-2
シューベルト/月に寄せてD259;御者クロノスにD369;海の静寂D216;魔王D328
シューマン/自由な心Op.25-2;一人で座っているとOp.25-5;そんな乱暴に甕を置くなOp.25-6
ブラームス/セレナーデOp.70-3;打ち勝ちがたいOp.72-5
R.シュトラウス/見つけたOp.56-1
シェック/黄昏は上方から降り来てOp.19a-2
レーガー/孤独Op.75-18
ブゾーニ/魔女の歌
ヴォルフ/さすらい人の夜の歌;一年中春;アナクレオンの墓;コフタの歌Ⅱ;ねずみ捕り
(以下アンコール)
ベートーヴェン/のみの歌
シューベルト/秘めごとD719;ムーサの息子D764
ヴォルフ/現象;天才の行為;コーランは永遠か否か

Fdieskau_engel_meyerbeer●マイアーベーア/歌曲集
DG(オリジナルはARCHIV): 00289 477 5270
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P)
録音:1974年12月6~7日、Studio Lankwitz, Berlin
マイアーベーア/人間嫌い;あの歌の響きを聞くと;薔薇、百合、鳩;おいで;心の庭;瀕死の詩人;セレナーデ;薔薇の葉;日曜日の歌;彼女と私;シシリエンヌ;トラピスト修道士の頌歌;シロッコ;ミーナ

Fdieskau_engel_schoeck ●シェック/ヘッセの詩による歌曲集
DG: 463 513-2
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) Karl Engel(P)
録音:1977年3月19~21日、Studio Lankwitz, Berlin
シェック/情報Op.8-3;2つの谷からOp.8-2;きみはそれも知っているのかOp.24b-4;ラヴェンナⅠOp.24b-9;目的地Op.24b-8;休みなくOp.24b-7;幼年時代Op.31-2;聖ステファノの回廊でOp.31-3;「リーダーツュークルス」Op.44(夜の感覚;色の魔力;しおれる薔薇;夕べに;九月の昼;青い蝶;笛;夏の夜;ニノンのために;無常)

スイスの作曲家シェックがヘッセの詩に付けた歌曲ばかりを集めている。渋みを増したF=ディースカウの歌にエンゲルは透明な響きで誠実に支えている。

ヘルマン・プライ(BR)

Prey_engel_winterreise ●冬の旅
EMI CLASSICS: 7243 5 68432 2 6
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1961年10月、Evangelisches Gemeindehaus, Zehlendorf
シューベルト/「冬の旅」D.911(全24曲)

Prey_engel_schumann ●シューマン/歌曲集
EMI CLASSICS: 7243 5 68436 2 2
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1962年5月(Op.48&35)、4~5月(Op.39)、Gemeindehaus, Zehlendorf
シューマン/「詩人の恋」Op.48(全16曲);「ユスティーヌス・ケルナーの詩による歌曲集」Op.35(全12曲);「リーダークライス」Op.39(全12曲)

Prey_engel_decca_1●シューベルト、シューマン、ブラームス、シュトラウス歌曲集
DECCA: 467 901-2
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1962年10月、Decca Studios No. 3, West Hampstead
シューベルト/シルヴィアにD891;夕映えの中でD799;さすらい人が月に寄せてD870;魔王D328
シューマン/イダルゴ(スペイン貴族)Op.30-3;私の薔薇Op.90-2;楽師Op.40-4
ブラームス/子守歌Op.49-4;五月の夜Op.43-2;日曜日Op.47-3;きみの青い瞳Op.59-8;セレナーデOp.106-1
R.シュトラウス/ひそやかな誘いOp.27-3;帰郷Op.15-5;万霊節Op.10-8;セレナーデOp.17-2

Prey_engel_muellerin_1●美しい水車屋の娘
キングレコード:TELDEC: K26Y 9107
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1971年5月25~27日、Brienner Str. Theater, München
シューベルト/「美しい水車屋の娘」D.795(全20曲)

これは数ある「水車屋」の録音の中でもとりわけ優れた演奏の一つだと思う。ピアノがバランス的に歌と対等にくっきりと録音されていることもあって、エンゲルの表現が細かいところまで聞き取れる。若者の生き生きとした表情や小川の描写などを表現するエンゲルの冴えたタッチとリズムが、プライの絶好調の歌唱と相俟って、気持ちよい。

ヘルマン・プライ(BR)、PHILIPS歌曲エディション

Prey_engel_loewe●HERMANN PREY - LIED-EDITION VOL. 1 -
PHILIPS: 442 687-2
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1972年、München
レーヴェ/魔王Op.1-3;結婚の歌Op.20-1;歩き回る鐘Op.20-3;忠実なエッカルトOp.44-2;オールフ氏Op.2-2;エーバーシュタイン伯爵Op.9-6-5;アーチボルド・ダグラスOp.128;詩人トムOp.135;オーディンの海の騎行Op.118;オイゲーン王子Op.92

●HERMANN PREY - LIED-EDITION VOL. 2 -
PHILIPS: 442 692-2
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1971~1973年
シューベルト/ライアーに寄せてD.737;夕映えの中でD.799;ヴィルデマンの丘でD.884;春にD.882;夜と夢D.827;花の手紙D.622;孤独な男D.800b;漁師の歌D.881b;春の想いD.686b;アリンデD.904;全能D.852;星D.939;万霊節D.343
(以上1973年7月、München)
シューベルト/魔王D.328d;野ばらD.257;憩いなき愛D.138;ガニュメーデースD.544;ムーサの息子D.764b;釣り人D.225;駆者クロノスに寄せてD.369;月に寄せてD.259;歌びとD.149a;竪琴弾きの歌D.478-1~3;歓迎と別れD.767b;ねずみ捕りD.255;あらゆる姿をとる恋人D.558
(以上1971年3月、München)
シューベルト/水中を潜る男D.77
(1972年4月、München)
シューベルト/巡礼者D.794;アルプスの狩人D.588b;タルタロスの群れD.583;春に寄せてD.245;憧れD.636;希望D.637
(以上1971年10月&1973年3月、München)

エンゲルの名前をはじめて知ったのが、プライとのシューベルト「ゲーテ歌曲集」のLPだった。当時、プライはドイチュとゲーテ歌曲集を再録音していたが、例えば「駆者クロノスに寄せて」での両録音のテンポがあまりに違うので驚いたものだった。ドイチュ盤でのテンポ設定が(当時のプライの意図なのだろうが)かなり遅かったのに比べて、エンゲルの演奏を聴いた時になんて爽快なピアノなのだろうと思ったのを覚えている。

●HERMANN PREY - LIED-EDITION VOL. 3 -
PHILIPS: 442 699-2
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1972年11月&1973年7月、München
シューマン/「リーダークライス」Op.39(全12曲);献呈Op.25-1;あなたの顔DOp.127-2;セレナーデOp.36-2;「哀れなペーター」Op.53-3(全3曲);陽気なさすらい人Op.77-1;二人のてき弾兵Op.49-1;はすの花Op.25-7;春の旅Op.45-2;プロヴァンスの歌Op.139-4

●HERMANN PREY - LIED-EDITION VOL. 4 -
PHILIPS: 442 706-2
Hermann Prey(BR) Karl Engel(P)
録音:1975年2月、München
プフィッツナー/夜のさすらい人Op.7-2;誘惑Op.7-4;庭師Op.9-1;孤独な男Op.9-2;秋にOp.9-3;勇敢な男Op.9-4;別れOp.9-5;ダンツィヒにてOp.22-1;空はだから春にこんなに青いのかOp.2-2;深い森にひっそりとOp.2-4;沈み行く太陽はこんなに美しく輝くOp.4-1;今夜パーティーがあるOp.4-2;星が落ちてくるOp.4-3;昔の勇気が再び私をとらえるOp.4-4;漁師の子供たちの古いメルヒェンを知っていますかOp.7-1;僕ときみ;不誠実と慰め

ウルフ・ヘルシャー(VLN)

Hoelscher_engel_schubert●Complete works for violin and piano / Schubert
EMI CLASSICS: 7243 5 85529 2 8
Ulf Hoelscher(VLN) Karl Engel(P)
録音:1978年3月、Gemeindehaus, Berlin
シューベルト/幻想曲ハ長調D.934;華麗なロンド ロ短調D.895;ソナティナ ニ長調D.384;ソナティナ イ短調D.385;ソナティナ ト短調D.408;ソナタ イ長調D.574

楽器奏者と共演するエンゲルは実に雄弁だ。むしろソロ演奏よりも開放感にあふれているようにすら感じられる。歌曲「私からの挨拶を(Sei mir gegrüßt)」の美しい一節が引用されている「幻想曲ハ長調」では歌曲演奏家としての資質が大いに物を言っていた。

ヤン・ウク・キム(VLN)

●Violin sonatas / Brahms
DG: 2530298 (LP)
Yong Uck Kim(VLN) Karl Engel(P)
録音:不明
ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調Op.78「雨の歌」;
ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調Op.108

ミシェル・シュヴァルベ(VLN)

●ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン~シュヴァルベ名演集
EMI; Tower Records: QIAG-50081
録音:1970年4月9-15日 Berlin, Zehlendorf-Studio
ミシェル・シュヴァルベ(Michel Schwalbe)(VLN)
カール・エンゲル(Karl Engel)(P)
バルトーク(セーケイ編)/ルーマニア民俗舞曲
アルベニス/マラゲーニャ
ドビュッシー/ミンストレル
ラヴェル/ツィガーヌ
クライスラー/前奏曲とアレグロ
サラサーテ/スペイン舞曲集 作品22 第1番 「アンダルシアのロマンス」
サラサーテ/スペイン舞曲集 作品23 第2番 「サパテアード」
ストラヴィンスキー/ロシアの歌
ヴィエニアフスキ/スケルツォ・タランテラ

クラウス・シュトルク(VLC)

●Complete works for cello and piano / Dvořák; Janâcěk
Telefunken: 642038 (LP)
Klaus Storck(VLC) Karl Engel(P)
録音:不明
ドヴォジャーク/チェロとピアノのための作品全曲
ヤナーチェク/チェロとピアノのための作品全曲

ほかにカザルスやトルトゥリエなどとの共演やシューベルトの「ます」の録音もある。

最近、フランスのレーベルからシューマンのピアノ協奏曲やベートーヴェンのピアノソナタなどの録音が復刻された。これらについてもいずれ追加する予定です。

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[10月9日(月)追記]

つい最近、ACCORDレーベルからCOLLECTION FESTIVALというシリーズで往年の演奏が廉価で復刻されたが、その中にカール・エンゲルの演奏した3枚が含まれているので、興味のある方は聴いてみてください。

Engel_beethoven_sonatas●Sonates pour piano / Beethoven
ACCORD: 476 8965
Karl Engel(P)
録音:1958年、Schola Cantorum, Paris
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」Op.13;
ピアノ・ソナタ第14番「月光」Op.27-2;
ピアノ・ソナタ第23番「熱情」Op.57

●Fantaisie "Wanderer" / Schubert
ACCORD: 476 9002
Karl Engel(P)
録音:1958年1月9日、Schola Cantorum, Paris
シューベルト/幻想曲ハ長調「さすらい人」D.760

●Concerto pour piano / Schumann
ACCORD: 476 8958
Karl Engel(P) Orchestre des Cento Soli; Daniel Chabrun(C)
録音:1958年1月15~17日、Salle Wagram, Paris
シューマン/ピアノ協奏曲イ短調Op.54

3枚とも選曲された作品は超有名曲だが、30台半ばの若きエンゲルの演奏を聴くことが出来る(3枚ともほかの演奏家の演奏とカップリングされている)。3枚の中ではとりわけベートーヴェンが素晴らしかった。若い頃から楷書風の丁寧な演奏をしているエンゲルにとってベートーヴェンのかっちりしたスタイルが予想以上にしっくり合っていた。「月光」1楽章の右手高音の響かせ方、「悲愴」2楽章のあたたかい歌など、エンゲルの歌心がすでに聴き取れる。「月光」3楽章の奔流も粒立ちがよく痛快な演奏である。シューマンの協奏曲も若きエンゲルの覇気が感じられるなかなかいい演奏だった。シューベルトの「さすらい人幻想曲」ではもう少し味わいが欲しかった感もあるが、テクニシャンの一面を知るには適した録音だろう。

最近知ったのだが、マリア・ジョアン・ピレシュもハノーファーでエンゲルの弟子だったそうだ。評論家の伊熊さんの文章によると、ピレシュは子供の頃から周りにちやほやされていた自分に音楽家としての生き方をエンゲルに教えてもらったと感謝しているそうである。

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カール・エンゲル逝去

ソリスト、室内楽奏者、そして歌曲の演奏者として素晴らしい演奏を聴かせてくれたピアニストのカール・エンゲル(Karl Engel: 1923年6月1日、スイスのBirsfelden生まれ)が9月3日(2日説もある)、スイスのChernexで亡くなったそうだ。享年83歳。1990年代にもシュライアーとメンデルスゾーンやヴォルフを録音して、まだまだ現役だと思い込んでいたのだが、時は確実に流れていた。カザルスのような巨匠や、マティス、ファスベンダー、シュライアー、F=ディースカウ、プライといった声楽家たちからしばしば共演の依頼があったという事実だけでも彼のすごさはうかがえるだろう。残念ながら実演に接することはなかったが、一度ロス・アンヘレスのリサイタルに出かけた際、同時期に来日していたエンゲルらしき人が会場の前にいたのを見たことがある。NHKの録画放送でも、モーツァルトのピアノ四重奏曲を弾く姿を見た記憶があるが、この人は万能な音楽家だったと思う。それにもかかわらず(それゆえにか)、スポットライトを浴びるタイプではなかった。一般には地味なピアニストという印象なのかもしれないが、彼の演奏は決して地味ではなかった。テクニックの面ではとても高いものを持っていたように思う。彼の演奏する技巧的な歌曲は、かゆい所に手が届く痛快な弾きっぷりを聴かせてくれる(例えば、シュライアーとのメンデルスゾーン「魔女の歌」など)。エディト・マティス、シュライアーと共演したヴォルフ「イタリア歌曲集」(DG)でのエンゲルの千変万化の演奏は万華鏡のように多彩で、ほかのピアニストたちを寄せ付けない名人芸であった(未だにCD化されないのが不思議なほど)。シューベルトの30分近くかかる壮大なバラード「水中に潜る男(潜水者)」のプライ、F=ディースカウとの録音、とりわけ前者との緻密な構成感で引き締まった演奏は名演の誉れ高い。F=ディースカウとは、エンゲル同様スイス出身のオットマル・シェックの歌曲集などでも共演している。F=ディースカウが自伝の中で、プライが自分の真似をして困惑していた時期があると言い、プライが何々をしたのも自分の4年後と列挙する中に、カール・エンゲルを共演者に迎えたのも自分の4年後と言っていたのが思い出される(その後、F=ディースカウとプライは和解したそうだ)。

エンゲルの弾くモーツァルトのソナタや協奏曲の全集は国内外でCD化されているようだ。私は協奏曲20番と21番のLPを持っているが、きわめてオーソドックスだが、どこにも綻びがない。ある意味優等生的かもしれない。個性で勝負する演奏ではないと思うが、作品への誠実な姿勢は好感をもって聴くことの出来るものである。

エンゲルはシューマンのピアノ曲も全集を録音しているようだが、私はそのうちの1枚のCDを持っている。「謝肉祭」(普段演奏されることのあまり無い「スフィンクス」も演奏している)や「蝶々」「アベック変奏曲」などが、彼らしい、きれいな音で丁寧に演奏されている。シューマネスクなもつれた絡み合いよりも、健全でさわやかなシューマンだった(ルバートを最低限に抑え、屈折したところの少ない清潔な演奏は人によっては物足りないと思うかもしれないが、こういうシューマンも悪くないと思う)。

例えば、バレンボイムやリヒテルが歌曲のピアノを弾くと特別な企画との印象を受けるが、同じソリストでもエンゲルの場合はごく普通の仕事という印象がある。彼の名前はブレンデルよりもジェラルド・ムーアと並んで論じられる方が違和感がない。バレンボイムが歌曲を弾く時、聴き手はピアニストがどれだけ歌とぶつかり、スリリングにやり合うかに注目する。だが、エンゲルに対して聴き手は丁々発止のやり取りを求めない。彼の演奏は完全に熟達した歌曲ピアニストの風格である。それでいながら高度なヴィルトゥオジティーが備わっているのだから、歌手にとっても聴き手にとってもこれほど理想的な演奏者はなかなかいない。独奏もコンチェルトも室内楽も演奏するが、とりわけ歌曲ピアニストとして最高の一人であったということに異論のある人は殆どいないのではないか。

まだまだ弾き続けているという印象があり、亡くなったという実感がない。膨大な数の素晴らしい録音を残してくれたことに感謝!ご冥福を心よりお祈りいたします。

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