甲斐さん訳の「冬の旅」リリース
弊ブログと相互リンクさせていただいている歌曲投稿サイト「詩と音楽」の管理人としてお世話になっております甲斐貴也氏が訳された新訳が掲載された、シューベルトの「冬の旅」のCDが、「OPUS蔵」レーベルからリリースされました。
演奏は名演の誉れ高いゲルハルト・ヒュッシュ&ハンス・ウード・ミュラーによるもので、演奏自体は以前の記事で私も触れたことがありました。
スタイリッシュな求道者のようなヒュッシュが、それでも時にポルタメントを使用して、当時の潮流と全く無縁ではなかったことを確認できるのも興味深いですが、それ以上にヒュッシュの声が詩の一言一言を実に敏感に表現し尽くしているのが分かり、あらためて突出したリート歌手であったことがはっきり伝わってきます。
ミュラーのピアノもよりくっきりとした音で再現され、このピアニストの感受性の豊かさと作品への共感の強さがあらためて感じられました。
今回のCD復刻ではSP盤のノイズをあえて残すことによって、声とピアノのオリジナルの響きを出来る限り再現しようと試みているようです。
確かに最初のうち、サーッという音が気になりますが、慣れてしまうと、ヒュッシュ&ミュラーの生々しい新鮮な音に惹きこまれていきます。
ブックレットで小林利之氏がヒュッシュ氏の言葉を引用しています。
「古いレコード原盤の針音を除去するために、声の質が変わってしまうよりは、むしろ針音があったも声がそのままのほうがよい」とヒュッシュ自身が考えていたそうで、その考えがほぼ実現された見事な復刻と言えるのではないでしょうか。
甲斐さんは独自の見解に基づき、1曲1曲に深い考察を反映した訳をご自身のサイト上で発表されていますが、それがこのCDのブックレットに掲載されたことにより、広くリート・ファンの目にとまることになり、新たな視点を提供することになるのは何とも喜ばしいことです。
ブックレットの歌詞の文字が小さくて読みにくい点だけは改善を求めたいですが、このCDの価値を減ずるものではありません。
ぜひ、対訳を追いながら、往年の名演奏をお聞きになってみてください。
ちなみにジャケットには珍しくヒュッシュだけでなく、ミュラーも一緒に写っている貴重な写真が使用されています。
CDの詳細については、甲斐さんご自身の以下のページをご覧ください。
| 固定リンク | 0
| コメント (4)
| トラックバック (0)
最近のコメント