ブラームス(Brahms)/「春の慰め(Frühlingstrost, Op. 63, No. 1)」を聴く

Frühlingstrost, Op. 63, No. 1
 春の慰め

1.
Es weht um mich Narzissenduft
Es spricht zu mir die Frühlingsluft:
Geliebter,
Erwach im roten Morgenglanz,
Dein harrt ein blütenreicher Kranz,
Betrübter!
 私のまわりにスイセンの香りが吹き渡り、
 春の風は私にこう語りかけます、
 いとしい人よ、
 赤く輝く朝の光を浴びて目を覚ましなさい、
 たくさんの花で編んだ花輪があなたを待ちこがれています、
 悲しみに沈んだ方よ!

2.
Nur mußt du kämpfen drum und tun
Und länger nicht in Träumen ruhn;
Laß schwinden!
Komm, Lieber, komm aufs Feld hinaus,
Du wirst im grünen Blätterhaus
Ihn finden.
 憂さと闘って行動を起こさないといけません、
 もう夢の中で休んでいては駄目ですよ、
 消してしまいなさい!
 いらっしゃい、いとしい人、野原に出ておいで、
 あなたは緑の葉で覆われた家で
 花輪を見つけることでしょう。

3.
Wir sind dir alle wohlgesinnt,
Du armes, liebebanges Kind,
Wir Düfte;
Warst immer treu uns Spielgesell,
Drum dienen willig dir und schnell
Die Lüfte.
 私たちはみなあなたに好意を持っています、
 かわいそうな、愛に臆病な子よ、
 私たち 香りは。
 いつも私たち遊び仲間に誠実に接してくれたから
 あなたのために喜んで迅速にお役に立ちたいと思っています、
 私たち 風は。

4.
Zur Liebsten tragen wir dein Ach
Und kränzen ihr das Schlafgemach
Mit Blüten.
Wir wollen, wenn du von ihr gehst
Und einsam dann und traurig stehst,
Sie hüten.
 私たちはあなたの嘆き声を恋する娘に届けて、
 あの娘の寝室を花輪で飾りましょう、
 花で編んで。
 あなたがあの娘から離れ去り、
 ひとり悲しく立ち止まっているときには
 私たちがあの娘を見守っていてあげましょう。

5.
Erwach im morgenroten Glanz,
Schon harret dein der Myrtenkranz,
Geliebter!
Der Frühling kündet gute Mär',
Und nun kein Ach, kein Weinen mehr,
Betrübter!
 朝焼けの光を浴びて目を覚ましなさい、
 もうあなたのことをミルテの花輪が待ちこがれていますよ、
 いとしい人よ!
 春が素敵な話をお知らせします、
 もう嘆いたり泣いたりしないでね、
 悲しみに沈んだ方よ!

詩:(Gottlob Ferdinand) Max(imilian) Gottfried von Schenkendorf (1783-1817), from Gedichte, first published 1837
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Frühlingstrost", op. 63 (Neun Lieder und Gesänge) no. 1 (1874) [voice and piano], Leipzig, Peters

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歌曲をつくった作曲家たちが必ずといっていいほど扱うテーマの一つが「春」ではないかと思います。シューベルトにもシューマンにもヴォルフにもシュトラウスにも春の歌曲はありますし、特にメンデルスゾーンは「春」がタイトルに含まれている独唱曲を数えたところ7曲もありました。ブラームスにも春を扱う歌曲はいくつもあるのですが、やはりいかにもブラームスだなぁとうならされる作品ぞろいで、とりわけ今回扱う「春の慰め」はブラームスにしか書けない魅力的な作品だと思います。

この詩の主人公の男の子は彼女と喧嘩でもしたのでしょうか。悲しみに沈んでいるのですが、春の風や香りが慰めて、二人の間を取り持ちます。最終連でミルテの花輪があなたを待っているとか、素敵な話をあなたに伝えるなどの詩句があり、このカップルの結婚を示唆しているように思えます。人ではなく春の立場から歌った詩というのが面白いと思いました。

曲の形式はA-B-A-C-Aで、1、3、5連の共通の音楽の間に2、4連の異なる音楽をはさむ形になっています。

ピアノパートは片手が細かく三連符やトレモロを刻み、もう片方の手が歌の対旋律やバス音を奏でます。

ピアノ前奏の右手「ドラーソ」は、歌が始まってすぐ("um mich Nar-")の旋律に引き継がれますが、その1拍前からピアノ左手にもあらわれています(譜例1参照)。

【譜例1】
Fruhlingstrost_beispiel-1

奇数連(A)の最終行の歌のメリスマが効果的で、春の風にふわふわ身を任せているようなイメージを与えています(譜例2参照)。

【譜例2】
Fruhlingstrost_beispiel-21
Fruhlingstrost_beispiel-22

それから個人的には譜例2の赤枠で囲ったバス音の流れが大好きです。こういう畳みかけ方はブラームスの魅力の一つではないかと思っています。

調はところどころ近親調への転調をしつつも常に基本のイ長調に立ち戻ります。

偶数連で少し落ち着いた感じを醸し出しつつ、基本的に駆け抜けるような推進力で聴き手をぐっと引き込んでいくチャーミングな作品だと思います。

6/4拍子
イ長調(A-dur)
Lebhaft (生き生きと)

●レネケ・ライテン(S), ハンス・アドルフセン(P)
Lenneke Ruiten(S), Hans Adolfsen(P)

オランダのソプラノ、ライテンの透明で細やかな歌唱が春の香りや風を運んでくれます。アドルフセンのピアノはあまり明瞭に粒を響かせないことで風が静かに立っている様を想像させてくれます。

●ジュリー・カウフマン(S), ドナルド・サルゼン(P)
Julie Kaufmann(S), Donald Sulzen(P)

アメリカのソプラノ、カウフマンの抒情的な美声が心地よく、いつまでも聴いていたい気持ちにさせてくれます。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

1980年代前半の録音。フィッシャー=ディースカウは穏やかに主人公を慰撫するような歌唱を聞かせる一方、バレンボイムは切り込みの鋭いタッチで春の爆発するような喜びを見事に表現していました。

●マリア・ミュラー(S), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Maria Müller(S), Michael Raucheisen(P)

1944年Berlin録音。ミュラーの豊かな声は主人公を力強く励ましているように感じられます。

上記の他にLan Rao(S) & Micaela Gelius(P) (ARTE NOVA)、Deon van der Walt(T) & Charles Spencer(P) (ARS MUSICI)、Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Wolfgang Sawallisch(P) (EMI)、Olaf Bär(BR) & Helmut Deutsch(P) (EMI)、Andreas Schmidt(BR) & Helmut Deutsch(P) (cpo)の録音もあり、いずれも良かったですが、特にベーア&ドイチュの演奏は爽やかで春の息吹が感じられて引きこまれました。

Hyperionレーベルのブラームス歌曲全集では第7巻に収録されていて、演奏はBenjamin Appl(BR) & Graham Johnson(P)です。私はこのCDをiTunesにまだ入れていない為現物を探さないと聞けないのですが、こちら(14曲目の音符マークをクリック)で最初の1分強を試聴できました。

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(参考)

The LiederNet Archive

Max von Schenkendorf (Wikipedia)

Max von Schenkendorf: Frühlingstrost

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エリー・アーメリング他(Ameling, Watkinson, Meens, Holl, Jansen, Brautigam)/ブラームス:四重唱曲、二重唱曲他 初出音源(1983年1月14日, アムステルダム・コンセルトヘバウ(live)他)

●ブラームス/四重唱曲、二重唱曲
Elly Ameling; Brahms Quartets and Duets

00:00 Der Gang zum Liebchen (op 31/3)
02:59 Sehnsucht (op 112/1)
06:08 Abendlied (op 92/3)
09:39 Warum (op 92/4)
12:20 Der Abend (op 64/2)
16:56 Es rauschet das Wasser (op 28/3)(Watkinson, Holl, Jansen)
20:43 Vor der Tür (op 28/2)(Watkinson, Holl, Jansen)
22:48 Vergebliches Ständchen (op 84/4)(Ameling, Meens, Jansen)
24:37 Die Schwestern (op 61/1)(Ameling, Watkinson, Jansen)
27:12 Zigeunerlieder 5 "Brauner Bursche führt zum Tanze" (op 103/5)
30:29 Zigeunerlieder 7 "Kommt dir manchmal in den Sinn" (op 103/7)
31:09 Zigeunerlieder 6 "Röslein dreie in der Reihe blühn so rot" (op 103/6)
32:01 Wenn so lind dein Augen * (Liebesliederwalzer, op 52/8)
34:06 Ein kleiner. Hübscher Vogel * (Liebesliederwalzer, op 52/6)

Elly Ameling - Soprano
Carolyn Watkinson - Mezzo soprano
Hein Meens - Tenor
Robert Holl - Bass
Rudolf Jansen - Piano
Rudolf Jansen & Ronald Brautigam - Piano *

Live recording Concertgebouw, 14-01-1983

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のブラームス重唱曲の録音といえば、80歳を記念した放送録音集"80 jaar"に1曲だけ「夕暮れ(Der Abend, Op. 64/2)」が収録されていました。
今回アーメリングの公式チャンネルで、なんと同じ日のライヴ音源が初めて公開されました!!!
これはもうアーメリングからのサプライズプレゼントですね!
『ジプシーの歌』抜粋や『愛の歌』抜粋をアーメリングの歌で聴けるとは思ってもいなかったので狂喜乱舞しました(本当は全曲が良かったのですが贅沢は言わないことにします)。
共演者はメゾソプラノのキャロリン・ワトキンソン、テノールのヘイン・メーンス、バスのロベルト・ホル、ピアノはルドルフ・ヤンセン、『愛の歌』のピアノ連弾のみロナルト・ブラウティハムが参加しています。
ブラームスの重唱曲は『ジプシーの歌』『愛の歌』『新しい愛の歌』以外の単独の作品はこれまであまり馴染みがなかったのですが、こうして聞いてみるとどれもとても魅力的ですね。独唱曲として歌われることの多い「甲斐なきセレナーデ」をソプラノとテノールの掛け合いで聴くとより臨場感があって面白かったです。「憧れ(Sehnsucht)」という曲も趣があってとても魅力的な作品でした。
アーメリングはいつもながらの美声がなんとも心地よかったですが、コミカルな曲(「姉妹(Die Schwestern)」等)で会場をざわつかせるところは流石です!どんな表情で歌っていたのか想像しながら聴いてみるのも楽しいと思います。それからメゾのワトキンソンの歌声はとても温かみがあり惹きつけられました。

●ドビュッシー/『ステファヌ・マラルメの3つの詩』(ため息;ささやかな願い;扇)
Debussy Mallarme

Trois Poémes de Stéphane Mallarmé - Claude Debussy (1862-1918)

00:05 Soupir
03:02 Placet futile
05:06 Éventail

Elly Ameling - Soprano
Dalton Baldwin - Piano

もう1つアーメリング公式チャンネルからアップされていたのは、ドビュッシーの『ステファヌ・マラルメの3つの詩』です。これはおそらくEMIのドビュッシー歌曲全集からの音源と思われます。楽譜が表示されるので、歌を勉強されている方にもお勧めです。最初の2曲はラヴェルも作曲しているので、比較するのも興味深いと思います(こちらのリンク先でアーメリング&ヤンセン他によるラヴェルの演奏が聴けます)。

●サリエリ、モーツァルト・アリア集&R.シュトラウス:『4つの最後の歌』
ELLY AMELING: Mozart Concert Arias and Strauss Four Last Songs

Live broadcasts of Dutch soprano ELLY AMELING.

0:00- SALIERI: La fiera di Venezia: "Non temer che d'altri"
4:05- MOZART: "Voi avete un cor fedele" K.217

Elly Ameling(S)
Mostly Mozart Festival Orchestra
Gerard Schwarz(C)
(1985)

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12:18- STRAUSS: Four Last Songs
1. Frühling
2. September
3. Beim Schlafengehen
4. Im Abendrot

Rotterdam Philharmonic
Edo de Waart(C)
(1986)

上の2種類のライヴのうち、最初のサリエリとモーツァルトは以前別の方がアップした音源をご紹介したこちらの記事と同一音源ではないかと推測されます。

しかし!後半(12:18~)のエド・ドゥ・ヴァールト指揮ロッテルダム・フィルハーモニックとの『4つの最後の歌』は、ネット上で聴けるのは唯一の音源と思われます。
実はかなり昔にオランダのインターネットラジオ局Radio 4でアーメリングの特集が数回に分けて放送された際に、この音源の放送が予告されていたのですが、実際に放送されたのはサヴァリッシュ指揮コンセルトヘバウ管弦楽団との音源でした。
アップしていただいたこの音源、惜しむらくはおそらくテープの回転数が速くて、実際の音より高めなのが残念ですが、そこは想像力で補いながらこの貴重な音源を満喫したいと思います。

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ブラームス「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4)」を聴く

Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4
 恋人の誓い

Ei, schmollte mein Vater nicht wach und im Schlaf,
So sagt' ich ihm, wen ich im Gärtelein traf.
Und schmolle nur, Vater, und schmolle nur fort,
Ich traf den Geliebten im Gärtelein dort.
 ねえ、お父さんが起きているときも眠っているときもふてくされないのなら
 私はお父さんに言ったことでしょう、私が小さなお庭で誰と会っていたのかを。
 さあすねるがいいわ、さらにすねていなさい、
 私はあそこの小さなお庭で恋人と会っていたのよ。

Ei, zankte mein Vater nicht wieder sich ab,
So sagt' ich ihm, was der Geliebte mir gab.
Und zanke nur, Vater, mein Väterchen du,
Er gab mir ein Küßchen und eines dazu.
 ねえ、お父さんがもう言い争いをしないのなら
 私はお父さんに言ったことでしょう、恋人が何を私にくれたのかを。
 がみがみ言うがいいわ、お父さん、あたしのお父ちゃん、
 彼は私に一回キスしてくれて、さらにもう一回してくれたのよ。

Ei, klänge dem Vater nicht staunend das Ohr,
So sagt' ich ihm, was der Geliebte mir schwor.
Und staune nur, Vater, und staune noch mehr,
Du gibst mich doch einmal mit Freuden noch her.
 ねえ、お父さんが驚いてくしゃみをしたりしないのなら
 私はお父さんに言ったことでしょう、恋人が私に何を誓ったのかを。
 さあ驚くがいいわ、お父さん、さらに驚きなさいな、
 あなたは私を喜んで差し出すでしょう。

Mir schwor der Geliebte so fest und gewiß,
Bevor er aus meiner Umarmung sich riß:
Ich hätte am längsten zu Hause gesäumt,
Bis lustig im Felde die Weizensaat keimt.
 恋人は私に確かに誓ってくれたの、
 彼が私の抱擁から身をもぎ離す前に:
 私が家でぐずぐずできるのも長くて
 小麦の種が畑で元気に発芽するころまでだと。

詩:Josef Wenzig (1807-1876), "Des Liebsten Schwur", appears in Westslawischer Märchenschatz, Leipzig, first published 1857
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Des Liebsten Schwur", op. 69 (Neun Gesänge) no. 4 (1877), published 1877, first performed 1877 [voice and piano], Berlin, Simrock

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何故か分からないけれど大好きな曲というのがあります。
私は好きになる曲のパターンとして、第一印象ですぐに好きになる場合と何度も聴くうちにどんどんのめりこんでいく場合がありますが、このブラームスの「恋人の誓い」は前者だったと思います。
聴いてすぐに一耳惚れして以来、何度もリピートしてしまう曲の一つです。
快活な歌のメロディーも雄弁なピアノもわくわくしますが、歌とピアノの絡み方(特に最終節)がもう絶妙です!

この詩の主人公は思春期のうら若き女性と思われます。
父親と言い争っている時に、実は私には彼氏がいて結婚の約束までしているんだからとほくそ笑んでいるという感じでしょうか。

3/4拍子
ヘ長調(F-dur)
Sehr belebt und heimlich (非常に活気をもって、ひそやかに)

●ヘレン・ワッツ(CA) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Helen Watts(CA) & Geoffrey Parsons(P)

宗教曲などでお馴染みのヘレン・ワッツは歌曲もとてもいいです。声の表情の豊かさと細やかさがこの録音でも感じられると思います。パーソンズのしっかりとした骨格のピアノもいつもながら素晴らしいです。

●ジェシー・ノーマン(S) & ダニエル・バレンボイム(P)
Jessye Norman(S) & Daniel Barenboim(P)

ノーマンはステージでの神々しさを忘れさせるぐらいの愛らしい表情を聞かせてくれます。

●モリカ・グロープ(MS) & アレクセイ・リュビモフ(P)
Monica Groop(MS) & Alexei Lubimov(P)

グロープは落ち着いた美声で伸びやかさと強さがある魅力的な歌唱です。

●シュテファニー・イラーニ(MS) & ヘルムート・ドイチュ(P)
Stefanie Irányi(MS) & Helmut Deutsch(P)

イラーニの声はとても心地よく、生き生きとした歌唱がいいですね。ドイチュの堅実で安定したピアノも魅力的です。

●エリカ・ケート(S) & ペーター・バックハウス(P)
Erika Köth(S) & Peter Backhaus(P)

ケートの可愛らしい声はこの詩の女性を魅力的に想起させてくれます。

●ルネ・フレミング(S) & ハルトムート・ヘル(P)
Renée Fleming(S) & Hartmut Höll(P)

フレミングは詩から感じられる若い娘というよりは成熟した女性が過去を回想しているように感じました。

●エレナ・ゲアハルト(MS) & ジェラルド・ムーア(P)
Elena Gerhardt(MS) & Gerald Moore(P)

歴史的な録音です。往年の歌曲の名人ゲアハルトの伸縮自在でありながら客観的な視点も併せ持っている歌唱は古さを感じさせません。生き生きとした歌がなんとも魅力的です。

●テオドア・キルヒナー(Theodor Kirchner: 1823-1903)によるピアノ独奏用の編曲版
Uriel Tsachor(P)

ブラームスやクラーラ・シューマン等とも親交を結んだ作曲家・ピアニスト・編曲家のキルヒナーによるピアノ編曲版です。原曲を生かした楽しい編曲ですね。

(参考)

The LiederNet Archive

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エリー・アーメリングのブラームス歌曲集(Elly Ameling: Brahms Lieder)

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルで、今度はブラームス歌曲集がアップされました!アーメリングの歌うブラームスも最高なんです!!!

今回の録音はおそらく4種類のスタジオ録音(うち3種類はブラームス歌曲集として発売されたスタジオ録音)と1種類のライヴ音源と思われます。編集のThom Janssenは、歌詞のアルファベット順に配置したようです。おそらくアーメリング自身の書き込みの入った楽譜が表示されますので、ブラームス歌曲を勉強している方向けなのだと思いますが、私のような単なる音楽ファンにとっても嬉しいです。

全部が聴き所だと思いますが、個人的に好きなのは「湖上で」「黄昏は上方から降り来て」「リンデの木に霜がおり」「野の孤独」「別れはなければならないのか」「夢遊病者」「五月の夜」「使い」あたりでしょうか。もちろん他の録音も素晴らしいです。ヴィオラ助奏の「宗教的な子守歌」が彼女の歌で聴けるのは嬉しいですね。彼女のブラームスは、この作曲家の渋いイメージを払拭してくれるのではないでしょうか。いつも通りの細やかなアプローチが素晴らしいですが、ブラームスらしいメロディーラインもしっかり響かせています。そしてルドルフ・ヤンセン、ドルトン・ボールドウィン、ノーマン・シェトラーといった名手たちのピアノも素晴らしいです。ぜひお好きな曲だけでも楽しんでみて下さい。

1977年録音のボールドウィンとのLP録音は未だにB面の収録曲がほとんどCD化されていないので、今回期待したのですが、残念ながら収録されていませんでした。レコード会社に望むのは難しそうなので、こちらのチャンネルに期待したいです。

●1977年録音のDalton Baldwin共演盤の未CD化作品
Botschaft
Komm bald
Des Liebsten Schwur
Dein blaues Auge
Das Mädchen spricht
Von ewiger Liebe
Sandmännchen

特に「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur)」はライヴなどの他音源も今のところありませんので、この曲だけでも復活希望です!(他の曲は別の時期の録音で聴くことが出来ます)


Elly Ameling; Brahms Lieder

00:00:05 Ach, wende diesen Blick (op 57/4) ¹ (ああ、この視線をそらして)
00:01:55 Am Sonntag Morgen, zierlich angetan (op 49/1) ⁵ (日曜日の朝に)
00:03:17 Auf die Nacht in der Spinnstub’n (op 107/5 Mädchenlied) ⁵ (娘の歌 "夜に糸紡ぎの部屋で")
00:05:09 Blauer Himmel (op 59/2 Auf dem See) ³ (湖上で)
00:08:09 Da unten in Tale läuft Wasser so trüb (WoO 33/6) ⁴ (あの谷底で)
00:10:57 Dämmrung senkte sich von oben (op 59/1) ³ (黄昏は上方から降り来て)
00:15:00 Dein blaues Auge (op 59/8) ¹ (あなたの青い目)
00:17:28 Der Mond steht über dem Berge (op 106/1 Ständchen) ⁵ (セレナード)
00:19:06 Die Blümelein sie schlafen (WoO 31/4 Sandmännchen) ² (眠りの精)
00:22:56 Die ihr schwebet um diese Palmen (op 91/2 Geistliches Wiegenlied) ⁴* (宗教的な子守歌)
00:29:11 Du milchjunger Knabe (op 86/1 Therese) ³ (テレーゼ)
00:31:01 Dunkel, wie dunkel (op 43/1 Von ewiger Liebe) (永遠の愛について)
00:35:36 Es hing der Reif im Lindenbaum (op 106/3) ¹ (リンデの木に霜がおり)
00:39:00 Es lockt und säusselt (op 6/2 Der Frühling) ⁴ (春)
00:41:40 Es steht ein Lind in jenem Tal (WoO 33/41) ⁵ (リンデが立っている)
00:44:26 Es träumte mir, ich sei dir teuer (op 57/3) ¹ (私は夢を見た)
00:47:58 Feinsliebchen, du sollst mir nicht barfuß gehn (WoO 33/12) ⁵ (美しい恋人よ、裸足で来ては駄目だよ)
00:51:10 Geuss’ nicht so laut (op 46/4 An Die Nachtigall) ³ (サヨナキドリに寄せて)
00:54:02 Guten Abend, gut’ Nacht (op 49/4 Wiegenlied) ⁴ (子守歌)
00:56:11 Guten Abend, mein Schatz (op 84/4 Vergebliches Ständchen) ¹ (甲斐なきセレナード)
00:57:59 Ich ruhe still, im hohen grünen Gras (op 86/2 Feldeinsamkeit) ³ (野の孤独)
01:02:13 Immer leiser wird mein Schlummer (op 105/2) ¹ (わが眠りはますます浅くなり)
01:06:24 In dem Schatten meiner Locken (op 6/1 Spanisches Lied) ⁴ (スペインの歌)
01:08:44 In stiller Nacht, zur ersten Wacht (WoO 33/42) ⁵ (静かな夜に)
01:11:39 Mei Mueter mag mi net (op 7/5 Die Trauerende) ⁴ (悲しむ娘)
01:13:28 Mein Lieb ist ein Jäger (op 95/4 Der Jäger) ⁴ (狩人)
01:14:38 Mein wundes Herz verlangt nach milder ruh (op 59/7) ³ (私の傷ついた心)
01:16:20 Meine Liebe ist grün (op 63/5) ³ (わが恋は緑)
01:17:53 Muss es eine Trennung geben (op 33/12) ³ (別れはなければならないのか)
01:21:30 O Frühlingsabenddämmerung (op 71/3 Geheimnis) ³ (秘密)
01:23:28 O kühler Wald, wo rauschest du (op 72/3) ³ (おお涼しい森よ)
01:25:42 O Nachtigall, dein süsser Schall (op 97/1 Nachtigall) ³ (サヨナキドリ)
01:28:16 O versenk’ dein Leid (op 3/1 Liebestreu) ³ (愛の誠)
01:31:08 O wüsst ich doch den Weg zurück (op 63/8) ¹ (おお帰り道を知っていたならば)
01:35:07 Och Modr, ich well en Ding han (WoO 33/33) ⁵ (おお お母さん、ほしいものがあるの)
01:36:49 Rosenzeit, wie schnell vorbei (op 59/5 Agnes) ⁴ (アグネス)
01:40:00 Ruhe, Süssliebchen (op 33/9 Ruhe, Süssliebchen) ³ (憩え、かわいい恋人よ)
01:46:27 Schwalbe, sag’ mir an (op 107/3 Das Mädchen spricht) ⁵ (娘は語る)
01:47:48 Schwesterlein, wann gehn wir nach Haus (WoO 33/15) ⁵ (お姉ちゃん)
01:50:42 Singe Mädchen, hell und klar (op 84/3 In Den Beeren) ⁴ (いちご畑で)
01:52:16 Störe nicht den leisen Schlummer (op 86/3 Nachtwandler) ³ (夢遊病者)
01:56:28 Unbewegte laue Luft (op 57/8) ¹ (そよがぬ生ぬるい風)
02:00:21 Voller, dichter tropft ums Dach da (op 58/2 Während des Regens) ⁵ (雨の間)
02:01:37 Von waldbekränzter Höhe (op 57/1) ⁴ (森に覆われた丘から)
02:04:01 Wann der silberne Mond (op 43/2 Die Mainacht) ³ (五月の夜)
02:07:23 Warum den warten von Tag zu Tag (op 97/3 Komm bald) ¹ (早くおいで)
02:10:03 Wehe, Lüftchen, lind und lieblich (op 47/1 Botschaft) ¹ (使い)
02:12:10 Wenn du nur zuweilen lächelst (op 57/2) ¹ (あなたがほんの時折でも微笑んでくれたら)
02:13:53 Wie Melodien zieht es mir (op 105/1) ¹ (メロディのように)
02:16:08 Wir wandelten, wir zwei zusammen (op 96/2) ¹ (私たちは歩き回った)

Elly Ameling
Rudolf Jansen (1983) ¹→おそらく5枚組CDボックス"80 jaar"に収録された1983年1月14日Concertgebouwでのライヴ録音と思われる。ただし「わが眠りはますます浅くなり」と「便り」は"80 jaar"では1978年10月3日Concertgebouw録音と記載されている。
Rudolf Jansen (1988) ²→おそらくPhilipsレーベルに録音した「歌の翼に」と題されたオムニバス歌曲集と同一音源
Rudolf Jansen (1990) ³→おそらくHyperionレーベルに録音した「ブラームス歌曲集」と同一音源
Dalton Baldwin (1977) ⁴→おそらくPhilipsレーベルに録音した「ブラームス歌曲集」と同一音源
Norman Shetler (1967) ⁵→おそらくHarmonia Mundiレーベルに録音した「ブラームス歌曲集」と同一音源
George Szende - viola *

Editing: Thom Janssen

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ブラームス/若き歌Ⅰ「私の恋は緑」(Junge Lieder I "Meine Liebe ist grün", Op. 63, No. 5)を聴く

Junge Lieder I "Meine Liebe ist grün", Op. 63, No. 5
 若き歌Ⅰ「私の恋は緑」

Meine Liebe ist grün wie der Fliederbusch,
und mein Lieb ist schön wie die Sonne,
die glänzt wohl herab auf den Fliederbusch
und füllt ihn mit Duft und mit Wonne.
 私の恋はライラックの茂みのように緑で、
 私の恋人は太陽のように美しい、
 太陽はライラックの茂みに光を降り注ぎ、
 香りと喜びで茂みを満たすのだ。

Meine Seele hat Schwingen der Nachtigall,
und wiegt sich in blühendem Flieder,
und jauchzet und singet vom Duft berauscht
viel liebestrunkene Lieder.
 私の魂はサヨナキドリの翼をもっていて、
 花咲くライラックの中で揺れ動く。
 そして歓声をあげ、香りに酔いしれて
 多くの愛に陶酔した歌を歌うのだ。

詩:Felix Schumann (1854-1879)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

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緑映える時期にぴったりの歌曲をブラームスも作曲しています。「若き歌Ⅰ」という作品で、詩の冒頭から「私の恋は緑」という呼び名でも親しまれています。

詩の作者フェーリクス・シューマンは、あのローベルト&クラーラ・シューマンの末の息子です。肺結核にかかり、闘病生活を続けましたが、24歳の若さで亡くなりました。フェーリクスはいくつかの詩をしたため、彼の詩によってブラームスは3曲作曲しています(この曲の他には「若き歌Ⅱ:ニワトコのまわり(Junge Lieder II "Wenn um den Holunder", Op. 63, No. 6)」と「没頭(Versunken, Op. 86, No. 5)」)。

詩は、恋する主人公のわくわくする感情を、自然や鳥を織り交ぜながら描いています。
ちなみに1行目などに登場する"Flieder(ライラック、リラ)"の写真はこちらで見ることが出来ます。

ブラームスは1873年(当時フェーリクスは19歳!)に2節の有節形式として作曲しました。輝かしい歌声部は朗々と響き渡ります。ピアノは右手と左手のリズムがずれる形でほぼ一貫していて、歌と拮抗するかのように情熱的な音楽を奏でます。間奏や後奏で、fからクレッシェンドでぐいぐい畳みかけた後にpoco ten.(ポーコ・テヌート)で音を保持し、フェルマータで伸ばして一息ついてから、pで静かに続ける箇所はピアニストによって様々な表現が楽しめる箇所で、聴きどころの一つでもあると思います。ちなみにクレッシェンドで畳みかける箇所はアッチェレランドという指示は書かれていませんが、速度を速めていく演奏が多いです。それは演奏家による楽譜の解釈でしょうし、そうすることがむしろ自然に感じられます。

4/4拍子
Lebhaft (生き生きと)
嬰ヘ長調(Fis-dur)

●エディト・ヴィーンス(S) & ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Edith Wiens(S) & Roger Vignoles(P)

なんとみずみずしく芯のある美声と見事なディクション!春の喜びが素晴らしく表現されていると思います。

●アンネ・ソフィー・フォン・オッター(MS) & ベングト・フォーシュバリ(P)
Anne Sofie von Otter(MS) & Bengt Forsberg(P)

オッターの知性的な歌唱も気品があって良いです。

●ジェスィー・ノーマン(S) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Jessye Norman(S) & Geoffrey Parsons(P)

ノーマンの豊麗な声で聴くと、恋する者の溢れんばかりの思いが伝わってきます。パーソンズもとてもいいですね。

●エリーザベト・シュパイザー(S) & ジョン・バトリック(P)
Elisabeth Speiser(S) & John Buttrick(P)

シュパイザーは清楚で耳に心地よい美声で一瞬で惹き込まれました!

●シュザンヌ・ダンコ(S) & グイド・アゴスティ(P)
Suzanne Danco(S) & Guido Agosti(P)

フランス歌曲のイメージが強いダンコによるドイツ歌曲、素晴らしかったです。声がすぱっと響き渡る感じと素晴らしいドイツ語のディクション・表現をぜひ味わってみてください。アゴスティのピアノも見事です!

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & カール・エンゲル(P)
Dietrich Fischer Dieskau(BR) & Karl Engel(P)

メリハリの効いたF=ディースカウならではの歌唱ですね。

●エルンスト・ヘフリガー(T) & ヘルタ・クルスト(P)
Ernst Haefliger(T) & Hertha Klust(P)

ヘフリガーの真摯な歌は本当に胸に迫ってきます。クルストの畳みかけるような後奏も良かったです。

●ピアノパートのみ(Rau Neuman: piano)

全体の構築から細かな表現まで理想的なピアノ演奏で素晴らしかったです!ピアノだけでも楽しめました!ブラームスは右手と左手のリズムをずらすのが好きですね。

これらの他に、動画サイトにはアップされていませんでしたが、プライ&ドイチュ(Prey & Deutsch: SAPHIR)、アーメリング&ヤンセン(Ameling & Jansen: Hyperion)、ベーア&ドイチュ(Bär & Deutsch: EMI)、シュライアー&レーゼル(Schreier & Rösel: DENON)、バトル&レヴァイン(Battle & Levine: RCA)、ストゥッツマン&セーダーグレン(Stutzmann & Södergren: RCA VICTOR)、トレーケル&ポール(Trekel & Pohl: ARTE NOVA)等の録音も素晴らしいので機会があれば是非!
人気曲だけあって、動画サイトにはライヴ映像も山のようにアップされていました。それらの中にも素晴らしい演奏があることと思いますので興味のある方はいろいろ聴いてみるのもいいかもしれませんね。

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ブラームス(Brahms)「夏の夕べ(Sommerabend)」を聞く

Sommerabend, Op. 85 No. 1
 夏の夕べ

Dämmernd liegt der Sommerabend
Über Wald und grünen Wiesen;
Goldner Mond, im blauen Himmel,
Strahlt herunter, duftig labend.
 たそがれつつ、夏の夕べが
 森や緑の草地の上に横たわる。
 黄金の月は、青い空にかかり、
 輝き照らす、薄暗さに活力を取り戻して。

An dem Bache zirpt die Grille,
Und es regt sich in dem Wasser,
Und der Wandrer hört ein Plätschern,
Und ein Atmen in der Stille.
 小川のほとりでコオロギが鳴き、
 水中には動くものがある。
 旅人はぱちゃぱちゃいう水の音と、
 静寂の中の息遣いを聞く。

Dorten, an dem Bach alleine,
Badet sich die schöne Elfe;
Arm und Nacken, weiß und lieblich,
Schimmern in dem Mondenscheine.
 あそこの、小川のほとりで一人
 水浴びをしているのは美しい妖精だ。
 腕やうなじは、白く愛らしく、
 月光の中で光っている。

詩:Heinrich Heine (1797-1856)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

-------------

ハインリヒ・ハイネの詩集『歌の本(Buch der Lieder)』の中の「帰郷(Die Heimkehr)」から85番目の詩にブラームスが作曲した歌曲が「夏の夕べ(Sommerabend)」です。4行からなる節が3節で出来ています。各節1行目と4行目が脚韻を踏み、2行目と3行目は母音のみを合わせています(最終節には該当しませんが)。第1節では森、草地、空を眺め、第2節で小川に移り、視点がぐっとフォーカスされます。そしてここで視覚に加えて聴覚が描かれます。"Plätschern(ぱちゃぱちゃと立つ水音)"という単語の響きは本当に意味のとおりに音を模しているような単語ですね。最終節では水浴びをする白いうなじの妖精が登場し、幻想的な風景が描かれています。

ブラームスの音楽は、4/4拍子、変ロ長調、Langsam(ゆっくりと)。A-B-Aの形式。
第1節(A)の歌唱旋律は下降音型が基本で、黄昏の光が降り注ぎ、月があらわれて輝き照らす様を暗示しているかのような美しいメロディーラインです。
ピアノは左手が歌声に呼応した旋律を奏で、右手は後打ちでリズムを刻みます。
第2節の部分(B)でぐっと焦点が近くなり、旅人が聞き、感じたことが歌われます。
音楽もここで何かを予感するような不安な雰囲気になります。
最終節(A)で再び第1節と同じ歌唱旋律が戻ってきますが、ピアノパートには変化があります。
第1節の時と異なり、左手だけでなく、両手で分散和音(三連符も登場する)とメロディアスな進行を奏で、第1節におけるリズムの刻みはここにはありません。テキストに呼応して第1節の"静"から妖精の登場する第3節の"動"にピアノパートを変化させているといえるのではないでしょうか。

ちなみに、ハイネの「帰郷」の次に置かれた詩(86番)にもブラームスは作曲しており、作品番号も「夏の夕べ」の次に置いています。この次の歌曲「月光(Mondenschein, Op. 85 No. 2)」では「夏の夕べ」のAと同じメロディーを途中で再び使用しています。この2曲はブラームスにとっては切り離せないセットとして想定していたのではないかと思います。

Florian Friedrichの詩の朗読

Margaret Price(S), James Lockhart(P)

マーガレット・プライスの弧を描くようなレガートの美しさにうっとり聞き惚れてしまいます。

Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

この録音でこの曲をはじめて聞いただけに個人的に思い入れが深いです。ハンス・ホッターの深々とした歌声はすべてを包み込んでしまうような器の大きさを感じさせます。ムーアの演奏もホッターと共通する温かみがあります。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P) (Feb. 1957)

F=ディースカウはこのテキストの情景を目に見えるように鮮やかに描いています。デームスも歌に美しく呼応しています。

Deon van der Walt(T), Charles Spencer(P) (1995)

ファン・デア・ヴァルトの美声テノールで聞くと、爽やかな風が吹き渡るかのようです。スペンサーは後奏で思いのこもった演奏を聞かせています。

Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P) (2016)

マティアス・ゲルネがゆったりとしたテンポで抑制した声で歌います。

Sommerabend in B flat - piano accompaniment only

ピアノパートのみです(楽譜など映像はありません)。ちょうどいいテンポで美しい演奏です。

Mischa Maisky(VLC), Pavel Gililov(P)

マイスキーがテキストを語っているかのように美しくチェロで歌っています。

出版時に「夏の夕べ」の次に置かれた「月光(Mondenschein, Op. 85 No. 2)」(「夏の夕べ」と同じメロディーが出てきます)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

Mondenschein, Op. 85 No. 2
 月光

Nacht liegt auf den fremden Wegen,
Krankes Herz und müde Glieder; -
Ach, da fließt, wie stiller Segen,
Süßer Mond, dein Licht hernieder;
 夜が見知らぬ道々に横たわる、
 病んだ心、疲れた手足よ。
 ああ、そこに降り注ぐのは、静かな祝福のように、
 甘美な月よ、おまえの光だ。

Süßer Mond, mit deinen Strahlen
Scheuchest du das nächt'ge Grauen;
Es zerrinnen meine Qualen,
Und die Augen übertauen.
 甘美な月よ、おまえの光で
 夜の恐怖を追い払ってくれる。
 私の苦痛は溶けて消え、
 瞳から涙があふれるのだ。

詩:Heinrich Heine (1797-1856)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

スイスの作曲家シェック(Othmar Schoeck: 1886–1957)も「夏の夕べ」の詩に作曲しています。歌声部は比較的素朴ですが、ピアノパートがかなり描写的です。
Othmar Schoeck: Sommerabend, Op. 4-1
Juliane Banse(S), Wolfram Rieger(P)

Julius Burger(1897-1995)というヴィーン出身のアメリカの作曲家が同じテキストに作曲した珍しい歌曲です。第2節で突然激流が渦巻くかのような激しい表情に変化しますが、他は概して素朴なメロディです。
Julius Burger: Dämmernd liegt der Sommerabend
Ryan Hugh Ross(BR), Nicola Rose(P)

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マティス&シュライアー&エンゲル(Mathis, Schreier & Engel)/ブラームス「ドイツ民謡集」抜粋映像

ソプラノのエディト・マティス(Edith Mathis)、テノールのペーター・シュライアー(Peter Schreier)、そしてピアニストのカール・エンゲル(Karl Engel)によるブラームス(Brahms)「ドイツ民謡集(49 Deutsche Volkslieder, WoO 33)」からの抜粋映像がアップされていましたのでご紹介します。

 ソースはこちら(大画面はこちらのリンク先でご覧ください)

ブラームス(Brahms)「ドイツ民謡集(49 Deutsche Volkslieder, WoO 33)」からの抜粋

No. 4. Guten Abend, mein tausiger Schatz (Schreier, Mathis, Engel)

No. 5. Die Sonne scheint nicht mehr (Schreier, Engel)

No. 6. Da unten im Tale (Mathis, Engel)

No. 12. Feinsliebchen, du sollst mir nicht barfuss gehn (Schreier, Mathis, Engel)

No. 2. Erlaube mir, fein's Mädchen (Schreier, Engel)

No. 15. Schwesterlein (Schreier, Mathis, Engel)

No. 16. Wach' auf mein' Herzensschöne (Schreier, Engel)

No. 41. Es steht ein' Lind' (Mathis, Engel)

No. 30. All' mein' Gedanken (Schreier, Engel)

No. 42. In stiller Nacht (Mathis, Engel)

エディト・マティス(Edith Mathis)(S)
ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
カール・エンゲル(Karl Engel)(P)

可愛らしい容姿のマティスは鮮やかな青のドレスに身をまとい、明瞭なディクションで美しく歌っています。
シュライアーは本当に自然なドイツ語が美しく、表情も豊かです。
エンゲルの演奏している映像はそれほど多くないと思うので、貴重です。もちろんここでもしっかりと安定したピアノを聞かせています。

それにしてもブラームスの「ドイツ民謡集」は本当に素晴らしい!
素朴な歌の旋律に繊細な和音が織り込まれ、ブラームスならではの世界が立ち現れます。
名手3人の全盛期の素晴らしい記録です。ぜひお聞きください。

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ブラームス/「目隠し鬼ごっこ(Blinde Kuh, Op. 58-1)」を聴く

Blinde Kuh, Op. 58, No. 1
 目隠し鬼ごっこ

Im Finstern geh' ich suchen,
Mein Kind, wo steckst du wohl?
Ach, sie versteckt sich immer,
Daß ich verschmachten soll!
 暗闇の中、ぼくは探しに行こう、
 いとしい子よ、きみはどこに隠れているんだい?
 ああ、彼女はいつも隠れてしまうんだ、
 ぼくを苦しませようとしてね。

Im Finstern geh' ich suchen,
Mein Kind, wo steckst du wohl?
Ich, der den Ort nicht finde,
Ich irr' im Kreis umher!
 暗闇の中、ぼくは探しに行こう、
 いとしい子よ、きみはどこに隠れているんだい?
 ぼくは、居場所を見つけられずに、
 ぐるぐる回ってさまようのさ!

Wer um dich stirbt,
Der hat keine Ruh'!
Kindchen erbarm dich,
Und komm herzu!
Ja, komm herzu,
Herzu, herzu!
 きみを思って焦がれ死ぬ奴に
 安らぎはない!
 娘さん、憐れんでおくれ、
 こっちへ来てくれよ!
 そう、こっちへおいで、
 こっちへ、こっちへ!

詩:August Kopisch (1799-1853)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

-------------

ブラームスは謹厳実直なイメージが付いていますが、歌曲においてとても親しみやすい作品も書いています。その一つがこの「目隠し鬼ごっこ」です。このコーピッシュのテキストでは、主人公の男の子が暗闇に隠れている好きな女の子に向けて、「どこにいるんだい、ここにおいで」と語りかけるという内容になっています。ピアノパートのせわしなく動く様がその様をうまく描写して微笑ましいですね。

目隠し鬼ごっこのかわいらしい映像がありましたので貼っておきます。
Wir spielen blinde Kuh(ぼくらは目隠し鬼ごっこをしているよ)


エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Elisabeth Schwarzkopf(S) & Geoffrey Parsons(P)

シュヴァルツコプフがDECCAの為に録音した最後のスタジオ録音より。この録音で初めてこの曲を聴いたので、思い出深いです。シュヴァルツコプフの「Komm herzu(おいで)」という表情の巧みさ、パーソンズの見事なまでの盛り上げ方等、大好きな録音です。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Daniel Barenboim(P)

F=ディースカウはさすがにうまいですね。巧者バレンボイムはノリノリですが、ブラームスなのでもう少しスタイリッシュな方が個人的には好みです。

レベッカ・シュテーア(S) & トビアス・ハルトリープ(P)
Rebekka Stöhr(S) & Tobias Hartlieb(P)

シュテーアの素直な歌いぶりは好感がもてます。ピアノのハルトリープはノンレガートで見事に描写しています。

ヘルムート・クレープス(T) & ジェルジ・シェベーク(P)
Helmut Krebs(T) & György Sebők(P)

クレープスの爽やかなテノールで聞くのもいいですね。シュタルケルやグリュミオーといった著名な弦楽器奏者の共演者として知られているシェベークが歌曲を演奏している貴重な録音で、とてもいい演奏です。

エリーザベト・シューマン(S) & レオ・ローゼネク(P)
Elisabeth Schumann(S) & Leo Rosenek(P)

往年の名ソプラノ、E.シューマンのチャーミングな語り口も魅力的です。

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マティス、ファスベンダーらによる重唱曲集発売(ORFEOレーベル: 1974年8月25日ザルツブルク音楽祭ライヴ)

Mathis_fassbaender_schreier_berry_w


超豪華なリート演奏家たちによるザルツブルク・ライヴ音源がORFEOレーベルから発売されるそうです(amazonでは発売日は2018/10/12となっています)。
録音は1974年で、マティス、ファスベンダー、シュライアー、ベリーがヴェルバ、シルハウスキーのピアノで、シューマンとブラームスの重唱曲を歌っています。
これは楽しみです。
全員集合したジャケット写真を見るだけでもわくわくしますね!
興味のある方はぜひ入手を検討されてみてはいかがでしょうか。

 こちら

シューマン(Schumann)/スペインの歌芝居 (Spanisches Liederspiel, Op. 74)

ブラームス(Brahms)/愛の歌-ワルツ(Liebeslieder-Walzer, Op. 57)

録音:1974年8月25日, Großes Festspielhaus, Salzburg (live)

エディト・マティス(Edith Mathis)(S)
ブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender)(A)
ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
ヴァルター・ベリー(Walter Berry)(BS)
エリク・ヴェルバ(Erik Werba)(P)
パウル・シルハウスキー(Paul Schilhawsky)(P) (ブラームスのみ)

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ブラームス「ひばりの歌(Lerchengesang, Op. 70-2)」を聴く

Lerchengesang, Op. 70-2
 ひばりの歌

Ätherische ferne Stimmen,
Der Lerchen himmlische Grüße,
Wie regt ihr mir so süße
Die Brust, ihr lieblichen Stimmen!
 天空のはるかな声、
 ひばりの空からの挨拶、
 お前たちはなんと甘美に私の胸を動かすのか、
 愛らしい声よ!

Ich schließe leis mein Auge,
Da ziehn Erinnerungen
In sanften Dämmerungen
Durchweht vom Frühlingshauche.
 私は静かに目をつむると
 想い出が通り過ぎる、
 やわらかなたそがれの中で
 春の息吹に吹かれながら。

詩:Karl August Candidus (1817-1872)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

※上記の訳は、いつもお世話になっています「詩と音楽」さんのサイトに以前投稿したものを転載しています。
 こちら

----------

ブラームスが繰り返した箇所を[ ]で囲って補ったテキストを以下に記しておきます。

Ätherische ferne Stimmen,
Der Lerchen himmlische Grüße,
Wie regt ihr mir so süße
Die Brust, ihr lieblichen Stimmen!
[Die Brust, ihr lieblichen Stimmen!]

Ich schließe leis mein Auge,
Da ziehn Erinnerungen
In sanften Dämmerungen
[Da ziehn Erinnerungen]
[In sanften Dämmerungen]
Durchweht vom Frühlingshauche.

----------

ブラームスの歌曲の中で最も澄み切った美しさと余韻の味わいを感じさせてくれる名作の一つです。
私がこの曲をはじめて聞いたのがいつだったのか定かではないのですが、エディット・マティスのライヴ録音をFMラジオで聞いた時かもしれません。
少なくともレコードやCDではじめて聞いたというのではなかったような気がします。
しかし、後に白井光子&ヘルのCDを聞き、この曲の最高の名演に出会えた喜びを味わったことはおぼろげなから覚えています。

歌とピアノが交互にメロディーを引き継ぎながら一つにまとまっていく形で作られていて、ブラームスらしいリズムのずれもあり、とても味わい深い作品になっています。
ピアノの下降する2つの高音が頻繁に現れますが、おそらくひばりの鳴き声を暗示しているのでしょう。

Lerche(ひばり)の鳴き声

Mitsuko Shirai(MS) & Hartmut Höll(P)
白井光子(MS) & ハルトムート・ヘル(P)

1987年録音。この曲の余白を感じさせる作風は、日本人の歌手にとって共感しやすかったのでしょうか。白井の浮遊するような歌声は聞き手の胸にしっとりと染み込みます。ヘルが細心のデリカシーをもって表現しているのも聴きどころです。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Daniel Barenboim(P)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ダニエル・バレンボイム(P)

F=ディースカウが声の起伏をいつも以上に抑えつつ、静かに美しいフレーズを響かせていて素晴らしいです。バレンボイムもコントロールを利かせつつ、きれいに歌っていました。

Stefanie Irányi(MS) & Helmut Deutsch(P)
シュテファニー・イラーニ(MS) & ヘルムート・ドイチュ(P)

楽譜付き。イラーニの歌唱は、素直で爽やかで、しかも味わいもあって、とても気に入りました。ドイチュも美しいです。

Simon Keenlyside(BR) & Malcom Martineau(P)
サイモン・キーンリサイド(BR) & マルコム・マーティノー(P)

2009年録音。キーンリサイドの抑えた歌唱が優しい癒しを与えてくれます。マーティノーは安定した演奏です。

Domenico Ricciによるピアノ伴奏のみ(変イ長調):第1節のみ

ピアノ伴奏だけでも美しい無言歌として成立していますね。

Mischa Maisky(Violoncello) & Pavel Gililov(P)
ミーシャ・マイスキー(Violoncello) & パーヴェル・ギリロフ(P)

マイスキーは歌曲をチェロで演奏することが好きなようで、CD録音もしています。ここでは止まりそうなほどゆったりとしたギリロフのピアノを受けて、感情豊かにチェロで歌ってみせています。

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