ブラームス/「目隠し鬼ごっこ(Blinde Kuh, Op. 58-1)」を聴く

Blinde Kuh, Op. 58, No. 1
 目隠し鬼ごっこ

Im Finstern geh' ich suchen,
Mein Kind, wo steckst du wohl?
Ach, sie versteckt sich immer,
Daß ich verschmachten soll!
 暗闇の中、ぼくは探しに行こう、
 いとしい子よ、きみはどこに隠れているんだい?
 ああ、彼女はいつも隠れてしまうんだ、
 ぼくを苦しませようとしてね。

Im Finstern geh' ich suchen,
Mein Kind, wo steckst du wohl?
Ich, der den Ort nicht finde,
Ich irr' im Kreis umher!
 暗闇の中、ぼくは探しに行こう、
 いとしい子よ、きみはどこに隠れているんだい?
 ぼくは、居場所を見つけられずに、
 ぐるぐる回ってさまようのさ!

Wer um dich stirbt,
Der hat keine Ruh'!
Kindchen erbarm dich,
Und komm herzu!
Ja, komm herzu,
Herzu, herzu!
 きみを思って焦がれ死ぬ奴に
 安らぎはない!
 娘さん、憐れんでおくれ、
 こっちへ来てくれよ!
 そう、こっちへおいで、
 こっちへ、こっちへ!

詩:August Kopisch (1799-1853)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

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ブラームスは謹厳実直なイメージが付いていますが、歌曲においてとても親しみやすい作品も書いています。その一つがこの「目隠し鬼ごっこ」です。このコーピッシュのテキストでは、主人公の男の子が暗闇に隠れている好きな女の子に向けて、「どこにいるんだい、ここにおいで」と語りかけるという内容になっています。ピアノパートのせわしなく動く様がその様をうまく描写して微笑ましいですね。

目隠し鬼ごっこのかわいらしい映像がありましたので貼っておきます。
Wir spielen blinde Kuh(ぼくらは目隠し鬼ごっこをしているよ)


エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Elisabeth Schwarzkopf(S) & Geoffrey Parsons(P)

シュヴァルツコプフがDECCAの為に録音した最後のスタジオ録音より。この録音で初めてこの曲を聴いたので、思い出深いです。シュヴァルツコプフの「Komm herzu(おいで)」という表情の巧みさ、パーソンズの見事なまでの盛り上げ方等、大好きな録音です。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Daniel Barenboim(P)

F=ディースカウはさすがにうまいですね。巧者バレンボイムはノリノリですが、ブラームスなのでもう少しスタイリッシュな方が個人的には好みです。

レベッカ・シュテーア(S) & トビアス・ハルトリープ(P)
Rebekka Stöhr(S) & Tobias Hartlieb(P)

シュテーアの素直な歌いぶりは好感がもてます。ピアノのハルトリープはノンレガートで見事に描写しています。

ヘルムート・クレープス(T) & ジェルジ・シェベーク(P)
Helmut Krebs(T) & György Sebők(P)

クレープスの爽やかなテノールで聞くのもいいですね。シュタルケルやグリュミオーといった著名な弦楽器奏者の共演者として知られているシェベークが歌曲を演奏している貴重な録音で、とてもいい演奏です。

エリーザベト・シューマン(S) & レオ・ローゼネク(P)
Elisabeth Schumann(S) & Leo Rosenek(P)

往年の名ソプラノ、E.シューマンのチャーミングな語り口も魅力的です。

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マティス、ファスベンダーらによる重唱曲集発売(ORFEOレーベル: 1974年8月25日ザルツブルク音楽祭ライヴ)

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超豪華なリート演奏家たちによるザルツブルク・ライヴ音源がORFEOレーベルから発売されるそうです(amazonでは発売日は2018/10/12となっています)。
録音は1974年で、マティス、ファスベンダー、シュライアー、ベリーがヴェルバ、シルハウスキーのピアノで、シューマンとブラームスの重唱曲を歌っています。
これは楽しみです。
全員集合したジャケット写真を見るだけでもわくわくしますね!
興味のある方はぜひ入手を検討されてみてはいかがでしょうか。

 こちら

シューマン(Schumann)/スペインの歌芝居 (Spanisches Liederspiel, Op. 74)

ブラームス(Brahms)/愛の歌-ワルツ(Liebeslieder-Walzer, Op. 57)

録音:1974年8月25日, Großes Festspielhaus, Salzburg (live)

エディト・マティス(Edith Mathis)(S)
ブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender)(A)
ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
ヴァルター・ベリー(Walter Berry)(BS)
エリク・ヴェルバ(Erik Werba)(P)
パウル・シルハウスキー(Paul Schilhawsky)(P) (ブラームスのみ)

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ブラームス「ひばりの歌(Lerchengesang, Op. 70-2)」を聴く

Lerchengesang, Op. 70-2
 ひばりの歌

Ätherische ferne Stimmen,
Der Lerchen himmlische Grüße,
Wie regt ihr mir so süße
Die Brust, ihr lieblichen Stimmen!
 天空のはるかな声、
 ひばりの空からの挨拶、
 お前たちはなんと甘美に私の胸を動かすのか、
 愛らしい声よ!

Ich schließe leis mein Auge,
Da ziehn Erinnerungen
In sanften Dämmerungen
Durchweht vom Frühlingshauche.
 私は静かに目をつむると
 想い出が通り過ぎる、
 やわらかなたそがれの中で
 春の息吹に吹かれながら。

詩:Karl August Candidus (1817-1872)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

※上記の訳は、いつもお世話になっています「詩と音楽」さんのサイトに以前投稿したものを転載しています。
 こちら

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ブラームスが繰り返した箇所を[ ]で囲って補ったテキストを以下に記しておきます。

Ätherische ferne Stimmen,
Der Lerchen himmlische Grüße,
Wie regt ihr mir so süße
Die Brust, ihr lieblichen Stimmen!
[Die Brust, ihr lieblichen Stimmen!]

Ich schließe leis mein Auge,
Da ziehn Erinnerungen
In sanften Dämmerungen
[Da ziehn Erinnerungen]
[In sanften Dämmerungen]
Durchweht vom Frühlingshauche.

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ブラームスの歌曲の中で最も澄み切った美しさと余韻の味わいを感じさせてくれる名作の一つです。
私がこの曲をはじめて聞いたのがいつだったのか定かではないのですが、エディット・マティスのライヴ録音をFMラジオで聞いた時かもしれません。
少なくともレコードやCDではじめて聞いたというのではなかったような気がします。
しかし、後に白井光子&ヘルのCDを聞き、この曲の最高の名演に出会えた喜びを味わったことはおぼろげなから覚えています。

歌とピアノが交互にメロディーを引き継ぎながら一つにまとまっていく形で作られていて、ブラームスらしいリズムのずれもあり、とても味わい深い作品になっています。
ピアノの下降する2つの高音が頻繁に現れますが、おそらくひばりの鳴き声を暗示しているのでしょう。

Lerche(ひばり)の鳴き声

Mitsuko Shirai(MS) & Hartmut Höll(P)
白井光子(MS) & ハルトムート・ヘル(P)

1987年録音。この曲の余白を感じさせる作風は、日本人の歌手にとって共感しやすかったのでしょうか。白井の浮遊するような歌声は聞き手の胸にしっとりと染み込みます。ヘルが細心のデリカシーをもって表現しているのも聴きどころです。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Daniel Barenboim(P)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ダニエル・バレンボイム(P)

F=ディースカウが声の起伏をいつも以上に抑えつつ、静かに美しいフレーズを響かせていて素晴らしいです。バレンボイムもコントロールを利かせつつ、きれいに歌っていました。

Stefanie Irányi(MS) & Helmut Deutsch(P)
シュテファニー・イラーニ(MS) & ヘルムート・ドイチュ(P)

楽譜付き。イラーニの歌唱は、素直で爽やかで、しかも味わいもあって、とても気に入りました。ドイチュも美しいです。

Simon Keenlyside(BR) & Malcom Martineau(P)
サイモン・キーンリサイド(BR) & マルコム・マーティノー(P)

2009年録音。キーンリサイドの抑えた歌唱が優しい癒しを与えてくれます。マーティノーは安定した演奏です。

Domenico Ricciによるピアノ伴奏のみ(変イ長調):第1節のみ

ピアノ伴奏だけでも美しい無言歌として成立していますね。

Mischa Maisky(Violoncello) & Pavel Gililov(P)
ミーシャ・マイスキー(Violoncello) & パーヴェル・ギリロフ(P)

マイスキーは歌曲をチェロで演奏することが好きなようで、CD録音もしています。ここでは止まりそうなほどゆったりとしたギリロフのピアノを受けて、感情豊かにチェロで歌ってみせています。

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ブラームス「なんと私は夜中に飛び起きた(Wie rafft' ich mich auf in der Nacht, Op. 32-1)」を聴く

Wie rafft' ich mich auf in der Nacht, Op. 32-1
 なんと私は夜中に飛び起きた

Wie rafft' ich mich auf in der Nacht, in der Nacht,
Und fühlte mich fürder gezogen,
Die Gassen verließ ich vom Wächter bewacht,
Durchwandelte sacht
In der Nacht, in der Nacht,
Das Tor mit dem gotischen Bogen.
 なんと私は飛び起きた、夜中に、夜中に、
 そしてどうしようもなく先に引かれるものを感じた。
 夜番の見張る路地を過ぎ、
 そっと通り抜けていった、
 夜中に、夜中に、
 ゴチック風アーチの門を。

Der Mühlbach rauschte durch felsigen Schacht,
Ich lehnte mich über die Brücke,
Tief unter mir nahm ich der Wogen in Acht,
Die wallten so sacht,
In der Nacht, in der Nacht,
Doch wallte nicht eine zurücke.
 水車用の小川が岩穴の中をざわめき流れていた。
 橋から身を乗り出した私は、
 下方に深く沸き起こる波に目をこらすと、
 それは、あまりにもかすかに波立った、
 夜中に、夜中に、
 だが打ち返すことはなかった。

Es drehte sich oben, unzählig entfacht,
Melodischer Wandel der Sterne,
Mit ihnen der Mond in beruhigter Pracht,
Sie funkelten sacht
In der Nacht, in der Nacht,
Durch täuschend entlegene Ferne.
 上方には無数にきらめきながら
 メロディーを奏でる星の運行が円を描いていた。
 星々とともに、月はなだめるような壮麗な光を放っていた、
 それらは穏やかに輝いていた、
 夜中に、夜中に、
 見まがうほどに遥か遠くから。

Ich blickte hinauf in der Nacht, in der Nacht,
Und blickte hinunter aufs neue:
O wehe, wie hast du die Tage verbracht,
Nun stille du sacht
In der Nacht, in der Nacht,
Im pochenden Herzen die Reue!
 私は天空を仰ぎ見た、夜中に、夜中に、
 そしてあらためて視線を下ろした。
 ああ、お前はなんという日々を過ごしてきたのだ、
 さあ、そっと静めるがいい、
 夜中に、夜中に、
 脈打つ心の中にひそむ悔悟の念を!

詩:August von Platen-Hallermünde (1796-1835)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

※上記の訳は、いつもお世話になっています「詩と音楽」さんのサイトに以前投稿した訳に手を加えたものです。
 こちら

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ブラームスが繰り返した箇所を[ ]で囲ったテキストを以下に記しておきます。
ブラームスがどの詩句に重きを置いているかを知ることが出来ますね。

Wie rafft' ich mich auf in der Nacht, in der Nacht,
Und fühlte mich fürder [mich fürder] gezogen,
[fühlte mich fürder gezogen,]
Die Gassen verließ ich vom Wächter bewacht,
Durchwandelte sacht
In der Nacht, in der Nacht,
Das Tor mit dem gotischen Bogen.

Der Mühlbach rauschte durch felsigen Schacht,
Ich lehnte mich über die Brücke,
Tief unter mir nahm ich der Wogen in Acht,
Die wallten so sacht,
In der Nacht, in der Nacht,
Doch wallte nicht eine zurücke.
[Doch wallte nicht eine zurücke.]

Es drehte sich oben, unzählig entfacht,
Melodischer Wandel der Sterne,
Mit ihnen der Mond in beruhigter Pracht,
Sie funkelten sacht
In der Nacht, in der Nacht,
Durch täuschend entlegene Ferne.
[Durch täuschend entlegene Ferne.]

Ich blickte hinauf in der Nacht, in der Nacht,
Und blickte hinunter [hinunter] aufs neue:
[Und blickte hinunter aufs neue:]
O wehe, wie hast du die Tage verbracht,
[O wehe, wie hast du die Tage verbracht,]
Nun stille du sacht
In der Nacht, in der Nacht,
Im pochenden Herzen die Reue!

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私がはじめてこの曲を聴いたのは、FMラジオから流れてきたF=ディースカウ&ヘルのザルツブルク音楽祭ライヴ放送でした。
ブラームスには他により有名な歌曲がいくつもありますが、それらよりもこの作品をたまたま先に聞くことになった当時の私にとって、ブラームスの歌曲はドラマティックでカッコいいという印象を植え付けられました。
よくブラームスの歌曲は渋くてとっつきにくい、という感想を持たれる方が多いのですが、そういう方にはぜひ、この「なんと私は夜中に飛び起きた」を聞いていただきたいです。
詩の展開によって歌もピアノも魅力的に移り変わっていき、数回にわたってドラマティックに盛り上がりを見せます。
F=ディースカウ&ヘルのコンビでスタジオ録音(Bayerレーベル)もされていますが、ザルツブルクライヴ音源がいつか商品化されないかなぁと期待しています。

プラーテンの詩は、主人公が突如夜中に突き動かされるような衝動を感じて外に出かけるところから始まります。
門番の見張る中通りを渡り、橋の上に出ます。
川はかすかに波打つのですが、返す波はありません。
次に上を見上げると、星や月が気の遠くなるほどはるか彼方から美しく輝いています。
そこであらためて視線を下すと、主人公は我に返り、嘆きます。
「自分はなんと無為な日々を送っているのだろうか」
そして、もうこの心を鎮めようと思い直すのです。
彼の心にあったのは「悔い(die Reue)」の念であり、その為に胸が脈打ってじっとしていられなかったということでしょうか。
その「悔い」がなんだったのかはこの詩からは明かされません。

ブラームスは、この主人公の暗い衝動をかなりドラマティックに解釈したようです。
どの程度振幅を大きくするかによって、演奏の印象も変わってくるでしょう。
以下の演奏の中では唯一の女声オッターが振幅を抑えて、しっとりとした表情を伝えてきます。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Hertha Klust(P)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ヘルタ・クルスト(P)

1952年6月13日Berlin放送録音。F=ディースカウの声が若々しく魅力的です。クルスト女史もしっかりとした演奏を聞かせてくれます。

Thomas Quasthoff(BR) & Justus Zeyen(P)
トーマス・クヴァストフ(BR) & ユストゥス・ツァイエン(P)

2000年録音。クヴァストフの響きの深さが感銘を与えてくれます。ツァイエンも細やかに行き届いた演奏です。

Meinard Kraak(BR) & Irwin Gage(P)
メイナルト・クラーク(BR) & アーウィン・ゲイジ(P)

1968年録音。オランダのハイバリトン、クラークが丁寧に明晰な歌を聞かせています。当時29歳(!)の若かりしアーウィン・ゲイジが聞けるのも貴重でしょう。

Anne Sofie von Otter(MS) & Bengt Forsberg(P)
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(MS) & ベングト・フォシュベリ(P)

1989年録音。オッターは遅めのテンポで丁寧に抑制した表現をしています。フォシュベリも抑えながら時々前面に出る感じです。

【VOCALOID】Sung by KAITO (Vocaloid), Piano: Prova (free sound source)
ヴォーカロイド(男声)による演奏

ヴォーカロイドを侮るなかれ!この演奏、なかなか癒されます。電子音からも温かみを感じることが出来るのですね。

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マティス、シュライアーらの歌うブラームス「愛の歌・ワルツ」の映像

エディト・マティスやファスベンダー、シュライアーらによるブラームスの四重唱曲「愛の歌・ワルツ」Op.52がアップされていたのでご紹介します。
これはピアノ連弾を伴った短い18曲からなる作品で、ブラームスの指示に従い時に歌なしで演奏されることもありますが、やはり歌がある方が面白いと思います。
この動画で、私が注目したいのはカール・エンゲルの姿を見ることが出来る点です。
彼の膨大な録音は常々聴いているものの、実演に接する機会もなく、一度NHKでモーツァルトの室内楽を演奏する姿を見たぐらいだったので、こうして彼の演奏する姿が見られるのはとてもうれしいです。
もちろん名歌手たちのアンサンブルも聴きもので、ブラームスの小曲の連続をわくわくしながら楽しむことが出来ます。
ちなみにピアノのセコンド(低音パート)を担当しているメジモレツはマティスのリサイタルなどでしばしば歌曲を演奏している名手です。

ブラームス/「愛の歌・ワルツ(Liebeslieder Walzer)」Op.52

製作:1983年

エディト・マティス(Edith Mathis)(S)
ブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender)(MS)
ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
バリー・マクダニエル(Barry McDaniel)(BS)
カール・エンゲル(Karl Engel)(P:primo)
ハインツ・メジモレツ(Heinz Medjimorec)(P:secondo)

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ブラームス/めんどり(Die Henne)

今年の干支は酉(とり)。
ということで、かなり強引にドイツ歌曲に結び付けて、こんな珍しい曲をご紹介したいと思います。

ブラームスには「14の子供のための民謡集(14 Volks-Kinderlieder)」という作品集があり、中でも「眠りの精(砂男)」はよく知られていますし、シューベルトでお馴染みの「野ばら」のテキストによる歌まであります。
その中から「めんどり」という歌です。

Die Henne
 めんどり

Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Meld du di!
Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Saht ihr nit mein Hennlein laufen?
Möcht mir gleich die Haar ausraufen!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 教えて!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 きみたち、私のめんどりちゃんが駆け回っているのを見なかった?
 私、すぐにでも髪をかきむしりたいほどよ!

Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Meld du di!
Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Als i bei dem Bub gesessen,
hat sie noch ihr Futter gfressen!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 教えて!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 私があの子のそばに座っていたときには
 まだえさを食べていたのに!

Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Meld du di!
Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Was wird da die Mutter sagen?
Sie wird mich zum Tor 'naus jagen!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 教えて!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 お母さんはなんて言うかしら?
 私を門の外に追い出そうとするわね。

Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Meld du di!
Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Muß geschwind zur Stadt hinlaufen,
muß ein ander Hennlein kaufen!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 教えて!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 急いで町へ走って行って
 別のめんどりを買わなきゃならないわ!

Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Meld du di!
Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Geh die Gasse auf und nieder,
finde grad mein Hennlein wieder!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 教えて!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 通りを行き来して
 私のめんどりちゃんをまた見つけてきなさい。

Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Hab i di!
Ach, mein Hennlein, bi bi bi!
Meine Mutter gib mir Brocken,
soll damit mein Hennlein locken.
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 つかまえた!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 お母さんが私にパンくずを渡すの
 それで私のめんどりちゃんをおびき寄せなさいって。

Ach, mein Hennlein, bi bi bi! bi bi bi,
und das Bröckli, das schluck i!
 ああ、私のめんどりちゃん、ビー・ビー・ビー!
 そしてこのパンくずは、私がいただくわ!

作曲:Johannes Brahms (1833-1897)
from Volks-Kinderlieder(子供のための民謡集、第5曲)

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訳は渡辺護氏の先訳やインターネット上の英訳なども参考にさせていただきました。
方言を使っているので、大体こんな感じだろうという訳です。
正確ではないことを最初にお詫びいたします。

めんどりを呼び出すのに"bi bi bi"という言葉が繰り返し使われ、
それがユーモラスな雰囲気を醸し出しています。
ブラームスの優しさが垣間見えるような曲ではないかと思います。

ぜひお聞きください。

Júlia Pászty (S) & László Baranyai (P)
ユーリア・パースティ(S) & ラースロー・バラニャイ(P)

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ブラームス「知らせ(Botschaft)」を聴く

ご無沙汰しております。
すっかり投稿をさぼってしまい、すみませんでした。
気付いたら11月はまだ一度も記事を掲載しておりませんでした。
久しぶりに聴き比べをしたいと思います。

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Botschaft, Op. 47 no. 1
 知らせ

Wehe, Lüftchen, lind und lieblich
Um die Wange der Geliebten,
Spiele zart in ihrer Locke,
Eile nicht hinwegzufliehn!
Tut sie dann vielleicht die Frage,
Wie es um mich Armen stehe;
Sprich: »Unendlich war sein Wehe,
Höchst bedenklich seine Lage;
Aber jetzo kann er hoffen,
Wieder herrlich aufzuleben,
Denn du, Holde, denkst an ihn.«
 そよ吹け、風よ、優しく、心地よく
 あの女性(ひと)の頬をかすめて。
 彼女の巻き毛にそっと戯れておくれ、
 急いで逃げ去ってしまっては駄目だよ!
 すると彼女はもしかしたら尋ねるかもしれない、
 かわいそうな僕がどうしているかと。
 そうしたら言っておくれ、「彼の悲しみは果てしなく続いていました。
 状況はきわめて重大です。
 でも今彼は
 再びすっかり元気を取り戻すことが期待できます。
 なぜならいとしいあなたが彼のことを気にかけてくれるからです」と。

詩:Georg Friedrich Daumer (1800-1875)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

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私の大好きなブラームスの歌曲のひとつを取り上げることにしました。
一般的には「使い」「ことづて」「便り」などと訳されるこの曲ですが、ダウマーのテキストは、恋する女性へのメッセージをそよ風(Lüftchen)に言付けるという内容です。
この曲のピアノパートは右手で複数の音を同時に弾きながら、素早くレガートにそよ吹く風を表現しなければなりませんが、ジェラルド・ムーアが著書の中で、この曲を低く移調するととても弾きにくくなると書いていました。
そんなムーアが低く移調したホッターとの録音を残しているので、下の音源を聴いてみて下さい。
歌は愛らしく楽しげに進みますが、テキストの展開に応じて途中から深刻な表現も聴かせ、詩を生かしたなかなか良く出来た作品だと思います。
最後にピアノパートのリズムを変えて、盛り上げるところなども素晴らしいです。
あっという間に終わる短い作品ですが、誰もが微笑みたくなるような作品だと思います。
ぜひお聞きください!

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ハンス・ホッター(BSBR)&ジェラルド・ムーア(P) (1957)

ホッターの包み込むような温かい声と、その味わいを自身の音に反映させるムーアによって、胸に響く演奏になりました。

ジェシー・ノーマン(S)&ジェフリー・パーソンズ(P) (1980)

1:36~です。ノーマンの歌唱は恰幅がよく、力強さがある一方、繊細さも兼ね備えています。パーソンズがいつもながら上手いです。

ロッテ・レーマン(S)&エルヌー・バロック(P)

レーマンの歌は喜びにあふれ、つやつやして、表情豊かで今でも色あせない素晴らしさです。バロックの粒立ちのよいピアノも良かったです。

カスリーン・フェリア(A)&フィリス・スパー(P)

持ち前の温かみのある声が素晴らしいだけでなく、テキストの表情に対して丁寧に細やかに歌っているのが感じられて感銘を受けます。

ハインリヒ・シュルスヌス(BR)&ゼパスティアン・ペシュコ(P) (1937)

シュルスヌスの甘美で渋い美声に酔いしれることが出来ます。途中、ちょっとブラームスのメロディーとは違う歌い方をしているのも当時のおおらかさを感じさせます。

トマス・アレン(BR)&マルコム・マーティノー(P) (2001)

5:51~です。ライヴ映像。アレンの渋みのある声と、マーティノーのそよ風を模したさらさらとしたタッチが大人の趣を醸し出していると思います。

ペーター・アンダース(T)&ミヒャエル・ラウハイゼン(P) (1943)

オペラのヒーローが歌っているような趣ですが、輝かしい声は魅力的です。

ピアノ伴奏のみ

演奏が終わらないうちに次の楽譜に移ってしまいますが、ピアノパートだけでこの曲を聴くのも新鮮です。カラオケとしても使えます!

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ブラームス「五月の夜Op.43-2」を聴く

シューベルト・シリーズの番外編として、たまには別の作曲家の名曲を聴いてみるのも息抜きになることでしょう。
私はブラームスの歌曲も大好きなのですが、その中でも最も著名で美しい曲の一つがヘルティの詩による「五月の夜」でしょう。
ヘルティの原詩は全部で4つの節からなりますが、第2節はブラームスによって省かれました。
詩は周りの動物たちがパートナーと共に幸せな鳴き声を聞かせる中、恋人のいない孤独な主人公は涙を流すという内容で、静かな箇所から徐々にドラマチックに盛り上がり、最後にまた落ち着くという構成は、ブラームスがこの詩をどのように解釈したかという答えになっているようです。
ピアノパートの左手はバス音が中心で、右手に動きが集中していますが、そのリズムの変化の仕方などは器楽曲的発想にも感じられます。
ブラームスにとっては、歌も楽器の一パートなのかもしれず、歌とピアノの二重奏のように作曲されている印象を受けます。
また、最後のひとふしが長調で終わるのが、涙を流してすっきりしたかのようにも受け取れると感じました。
同じ詩にシューベルトが付けた曲もあるので、最後に載せておきます。
ブラームスとは随分違った解釈をしているようです。

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Die Mainacht
 五月の夜

Wann der silberne Mond durch die Gesträuche blinkt,
Und sein schlummerndes Licht über den Rasen streut,
Und die Nachtigall flötet,
Wandl' ich traurig von Busch zu Busch.
 銀の月が潅木に光注ぎ、
 そのまどろむ光の残照が芝に散りわたり、
 ナイティンゲールが笛のような歌を響かせる時、
 私は藪から藪へと悲しくふらつき回る。

Überhüllet von Laub girret ein Taubenpaar
Sein Entzücken mir vor; aber ich wende mich,
Suche dunklere Schatten,
Und die einsame Träne rinnt.
 葉に覆われて鳩のつがいが
 私に陶酔の歌を鳴いて聞かせる。だが私は踵を返して
 より暗い影を探し求め、
 そして孤独な涙にくれるのだ。

Wann, o lächelndes Bild, welches wie Morgenrot
Durch die Seele mir strahlt, find ich auf Erden dich?
Und die einsame Träne
Bebt mir heißer die Wang herab!
 いつになったら、おお微笑む姿よ、朝焼けのように
 私の魂に輝きわたる姿よ、この世であなたを見出せるのだろうか。
 すると孤独な涙が
 私の頬を伝ってさらに熱く震え落ちた。

詩:Ludwig Heinrich Christoph Hölty (1748.12.21,Mariensee - 1776.9.1,Hannover)
曲:Johannes Brahms (1833.5.7,Hamburg - 1897.4.3,Wien)

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クリスタ・ルートヴィヒ(MS)&レナード・バーンスタイン(P)

5曲目(13:14~)から聴けます。ふくよかなルートヴィヒの美声が詩と音楽の世界と見事に同化して素晴らしいです。バーンスタインは前へ前へという主張の強さが目立ちますが、ドラマチックな表現に成功していると思います。

小川明子(A)&山田啓明(P)

丁寧で深みのある小川の歌唱は胸に響きます。山田のピアノは推進力があり、歌をうまく導いています。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ヴォルフガング・サヴァリッシュ(P)

F=ディースカウはブラームスのリサイタルではあまりこの曲を歌わなかったようですが、音楽の流れだけでなく言葉の表情により焦点を当てたという点で他の演奏とは違ったユニークな存在意義があると思います。サヴァリッシュは相変わらずうまいです。

フランシスコ・アライサ(T)& Rogelio Riojas-Nolasco(P)

久しぶりにアライサの演奏を聴き、ただただ懐かしいです!(2012年の録音)。かつてのスターも年をとりましたが、歌唱には風格も出てきて良かったです。ピアニストはテンポの流動が大胆です。

アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)&ジェラルド・ムーア(P)

可憐なソプラノのローテンベルガーによるストレートな歌唱も、ブラームスのフレーズの流れによく合っていて魅力的です。ムーアはよく歌い美しい響きです。

ロッテ・レーマン(S)&ピアノ伴奏(演奏者名は不明)

身を焦がすような情熱的な歌唱を聴かせる往年のレーマンの歌唱もリート史に欠かせない存在でしょう。表情の濃密さが特徴的です。

ピアノ伴奏のみ(演奏者名は不明)

ブラームス歌曲のピアノパートがどうなっているのか聴いてみてください。他の作曲家の場合よりも器楽曲的な発想に感じられましたし、それがまた魅力的です。演奏も素晴らしいです。

[参考] シューベルトによる同じ詩による歌曲D194(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P))

シューベルトは有節形式で作曲しています。ブラームスよりも素朴な感じはしますね。黄金コンビは共感を寄せて演奏しています。

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F=ディースカウのブラームス・ライヴを聴く(デームスとの1983年アムステルダム・ライヴ:Radio4 Concerthuis)

オランダのRadio4の音源配信サイトConcerthuisで今、フィッシャー=ディースカウがアムステルダムで歌ったブラームス歌曲が聴けます。
共演のピアニストはイェルク・デームスで、1983年6月9日のライヴ録音です。
この当時F=ディースカウが好んで歌っていたブラームス・プログラムで、私もこの時と同じようなプログラムを学生の時にFMで聴いて、ブラームス歌曲に開眼したという思い出があります。

なお期間限定なのでお聴きになる方はお気をつけください(残りの日数は写真下の"Dit concert is nog * dagen te beluisteren ..."の * の数字です)。

こちら

録音:1983年6月9日、アムステルダム・コンセルトヘボウ(Concertgebouw Amsterdam)(ライヴ)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)(bariton)
イェルク・デームス(Jörg Demus)(piano)

ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)作曲

1.エオリアン・ハープに寄せて(An eine Aeolsharfe)Op.19-5
2.なんと私は夜中に飛び起きて(Wie rafft ich mich auf in der Nacht)Op.32-1
3.もうあなたの許へ行くまいと(Nicht mehr zu dir zu gehen)Op.32-2
4.私のかたわらを流れていった小川(Der Strom, der neben mir verrauschte)Op.32-4
5.辛いこと、こうしてあなたは私を再び(Wehe, so willst du mich wieder)Op.32-5
6.黄昏(Abenddämmerung)Op.49-5
7.恋人への通い路(Der Gang zum Liebchen)Op.48-1
8.湖上にて(Auf dem See)Op.59-2
9.太鼓の歌(Tambourliedchen)Op.69-5
10.セレナーデ(Serenade)Op.70-3
11.夕べの雨(Abendregen)Op.70-4
12.春にはこんなにいとしく愛し合うもの(Es liebt sich so lieblich im Lenze)Op.71-1
13.秘密(Geheimnis)Op.71-3
14.打ち勝ちがたい(Unüberwindlich)Op.72-5
15.テレーゼ(Therese)Op.86-1
16.君のもとにあるのはわが思い(Bei dir sind meine Gedanken)Op.95-2
17.花々は見ている(Es schauen die Blumen)Op.96-3
18.航海(Meerfahrt)Op.96-4
19.墓地にて(Auf dem Kirchhofe)Op.105-4
20.ネコヤナギ(Maienkätzchen)Op.107-4
21.なんとあなたは、我が女王よ(Wie bist du, meine Königin)Op.32-9
22.ぼくらは歩き回った(wir wandelten)Op.96-2
23.セレナーデ(Ständchen)Op.106-1

私の個人的な好みでは昔から2が大好きです(取り返しのつかない過去を悔いて夜中に外に飛び出して嘆くというテキストに雄弁なピアノと真摯な歌が絡んで魅力的です)。
その他、1、3、7~9、13~15、18、19、21~23などもとても惹き付けられる作品です。
よろしければフィッシャー=ディースカウを偲んでお好きな曲だけでも聴いてみてください。

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マルクス・ヴェルバ&ガリー・マシューマン/シューベルト&ブラームスの歌曲(Radio4 Concerthuis)

オランダのインターネット・ラジオ局Radio4が無料で音源を一定期間配信するConcerthuis、以前はオランダ国内での配信に限定されていたが、いつからか日本でも聴けるようになっていた。
そうした中、モーツァルトのオペラ公演などで来日経験のあるオーストリアのバリトン、マルクス・ヴェルバのリサイタルを見つけたのでご紹介したい。

 こちら

録音:2010年10月25日, Wigmore Hall, London (live)

マルクス・ヴェルバ(Markus Werba)(BR)
ガリー・マシューマン(Gary Matthewman)(P)

1.シューベルト(1) 計16分02秒
1)アリンデ(Alinde, D904)
2)ヴィルデマンの丘で(Über Wildemann, D884)
3)夕映えの中で(Im Abendrot, D799)
4)ノルマン人の歌(Normans Gesang, D846)
5)タルタロスの群れ(Gruppe aus dem Tartarus, D583)

2.シューベルト(2) 計14分50秒
6)漁師の調べ(Fischerweise, D881)
7)歌びとの持物(Der Sängers Habe, D832)
8)孤独な男(Der Einsame, D800)
9)プロメテウス(Prometheus, D674)

3.ブラームス 計15分08秒
10)窓の前で(Vor dem Fenster, op.14-1)
11)ソネット(Ein Sonett, op.14-4)
12)恋人への通い道(Der Gang zum Liebchen, op.48-1)
13)マリーの殺害(Murrays Ermordung, op.14-3)
14)昔の恋(Alte Liebe, op.72-1)
15)おお涼しい森よ(O kühler Wald, op.72-3)
16)打ち勝ちがたい(Unüberwindlich, op.72-5)

マルクス・ヴェルバという名前を聞いて、リートファンならばその姓に反応すると思うが、往年の名伴奏者エリック・ヴェルバ(Erik Werba: 1918-1992)はマルクスの大叔父にあたるそうだ。
若く張りのある声と男性的な力強さをもった声質は将来を期待させる逸材だろう。
日本でもリートリサイタルを開いたはずだが、確か新人としてはかなり高価だった為チケットを買うのを見送ってしまった。
今回のウィグモア・ホール・ライヴのプログラムを見ると、決してポピュラーな曲の寄せ集めにはなっていない。
歌曲を深く味わう者だけが組めるような意欲的な選曲である。
そして、実際の歌唱も期待を裏切らぬ声の魅力と言葉さばきの美しさ、そしてテキストを重視しながらもメロディーラインを美しく際立たせる才能を感じた。
シューベルトも素晴らしいが、特にブラームスはヴェルバの良さがひときわ生きる素晴らしい歌唱である。
「マリーの殺害」のドラマをぜひ聴いていただきたい。

ピアノのガリー・マシューマンはイギリス出身の歌曲ピアニスト。
イギリスは昔から歌曲伴奏の名手を数多く輩出してきた。
ハロルド・クラクストン、アイヴァー・ニュートン、ジョージ・リーヴズ、ジェラルド・ムーア、アーネスト・ラッシュ、ジェフリー・パーソンズ、ジョン・コンスタブル、ロジャー・ヴィニョールズ、グレアム・ジョンソン、チャールズ・スペンサー、ジュリアス・ドレイク、マルコム・マーティノー等々。
上記のピアニストの中にはイギリス生まれではない人も含まれているが、みな活動の拠点をイギリスに置いた人たちばかりだ。
こうしたイギリスの伝統の一つを脈々と受け継ぐ人材が現れてくるのは頼もしい限りである。
ここでのマシューマンの演奏は、堅実だが雄弁で、細やかな表情をつけて実に気持ちよいピアノを聴かせている。
「夕映えの中で」の内声の響かせ方や「恋人への通い道」での歌わせ方など思わず惹き付けられる。

いつまで聴けるか分からないので、興味のある方はお早めに!

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