アンネ・ソフィー・フォン・オッター&カミラ・ティリング&ジュリアス・ドレイク/リサイタル(2015年9月25日 東京オペラシティ コンサートホール)
アンネ・ソフィー・フォン・オッター and カミラ・ティリング in リサイタル
2015年9月25日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(Anne Sofie von Otter)(メゾソプラノ)
カミラ・ティリング(Camilla Tilling)(ソプラノ)
ジュリアス・ドレイク(Julius Drake)(ピアノ)
メンデルスゾーン(Mendelssohn)
挨拶Op. 63-3 (デュエット)
リンドブラード(Lindblad: 1801-1878)
夏の日(ティリング)
警告(フォン・オッター)
少女の朝の瞑想(デュエット)
グリーク(Grieg)
「6つの歌」Op.48 (ティリング)
挨拶
いつの日か、わが想いよ
世のならい
秘密を守るナイチンゲール
薔薇の季節に
夢
シューベルト(Schubert)
ますD550(フォン・オッター)
夕映えの中でD799(フォン・オッター)
シルヴィアにD891(フォン・オッター)
若き修道女D828(フォン・オッター)
メンデルスゾーン
渡り鳥の別れの歌Op.63-2 (デュエット)
すずらんと花々Op.63-6 (デュエット)
~休憩~
マイアベーア(Meyerbeer)
シシリエンヌ(ティリング)
来たれ、愛する人よ(フォン・オッター)
美しい漁師の娘(フォン・オッター)
マスネ(Massenet)
喜び!(デュエット)
フォーレ(Fauré)
黄金の涙Op.72(デュエット)
シュトラウス(Richard Strauss)
憩え、わが魂よOp.27-1(フォン・ オッター)
たそがれの夢Op.29-1(ティリング)
どうして秘密にしておけようかOp.19-4(フォン・オッター)
ひそやかな誘いOp.27-3(ティリング)
明日!Op.27-4(フォン・オッター)
ツェツィーリエOp.27-2(ティリング)
~アンコール~
オッフェンバック/「ホフマン物語」より「舟歌」
ブラームス/姉妹
フンパーディンク/「ヘンゼルとグレーテル」より「夜には、私は眠りに行きたい」
ベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァース/ミュージカル「クリスティーナ」より「The Wonders」
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アンネ・ソフィー・フォン・オッターを初台で聴いた。
オッターは9年ぶりの来日とのこと。
私は今回はじめて彼女の実演に接して、リート歌手としての言葉さばきの細やかさが強く印象に残った。
そしてメゾとはいえ、重い声というわけではなく、ソプラノのような軽やかさが持ち味の彼女の美声はまだまだ魅力的に感じられた。
私の席はステージ真横の2階、ピアニストの背中が真正面に来る位置なので、二人の女声歌手は右後方から見る形となる。
ドレイクの鍵盤の指さばきははっきり見られて面白かったし、二人の歌手の横顔の表情の変化なども楽しめたが、やはり音のバランス的には最良とはいかない席だった。
しかし、これだけ視覚的に楽しませてもらえれば贅沢だろう。
従って、彼女たちの声量については確かなことは言えないのだが、60歳を迎えたオッターのヴォリュームはおそらく圧倒するほどではなかったのではないか。
彼女の声質はもともと北欧的な要素の薄い、すっきりしたものなので、かえって国際的な活動にはそれが効を奏したという面もあるだろう。
今回のプログラミングも北欧の曲を取り入れつつも、ドイツ語、フランス語の歌曲が中心に選ばれていた。
ティリングはまだ40代半ばの若いソプラノ。
ちょっとボニーを思わせるリリカルな声の持ち主で、ショートカットなところも似ている。
だが、彼女には北欧歌手らしい細かいヴィブラートと押し出しの強さがあり、北欧の伝統の中から生まれた歌手という印象である。
オッターと比較するのは酷だが、まだ色合いの持ち駒は豊富とは言えないようで、これからさらに進化していくのだろう。
ただ、声の美しさと言葉さばきの巧みさなど、なかなか良いものをもった歌手という印象は感じられ、今後活躍していくのではないだろうか。
オッターはもう貫禄の歌唱。
決して声で圧するタイプではないようだが、伸ばすところではホールに美声が響き渡る。
すっきりした声で知的に描かれるそれぞれの歌は、オッターの顔の表情やちょっとしたお茶目な仕草なども加わって、一つの情景が浮かぶようだった。
また、デュエットの数々では、オッターが頻繁にティリングに顔を向けて、アイコンタクトをとろうとしていたのに対して、ティリングは真正面を向き、オッターに比べると若干硬い感もなきにしもあらずだった。
しかし、二人の声は、声種の違いがほとんど感じられず、絶妙に溶け合って、美しいハーモニーが会場を包み込んだ。
この2人のデュエットはちょっと類のないぐらいの緊密な響きで、ソロも良かったけれど、それ以上にデュエットが楽しかったというのが正直なところだ。
ドレイクのピアノはまさに歌に寄り添ったものだった。
恵まれた大きな手はしかし、必要以上に派手に動かすことはなく、鍵盤上をすっきりと這い回っていた。
手首をやや上げ気味にして、レガートの箇所はまさに歌っているかのように指を這わせていて、主に高音部を強調し、バス音は重要な場面のみ響かせ、後は歌手に配慮した音量だった。
「夕映えの中で」など、広い音域をアルペッジョにせずに弾けるのは恵まれた手をしている証だろう。
「明日!」でののめりこむことなく旋律を美しく歌わせるところなど、さすが一流の伴奏ピアニストだと思わされた。
ドレイクのような超一流のピアニストとの共演を聴けたのはもちろん嬉しいことだが、せっかくオッターの来日公演なのだから、彼女のいつものパートナーのベンクト・フォシュベリも聴いてみたかった気がする。
都合が合わなかったのだろうか。
なお、ステージにカメラが設置されていたので、おそらくそのうちBSで放映されるのではないか。
そちらも楽しみに待ちたい。
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