ヴォルフ:ある墓(Wolf: Ein Grab)
Ein Grab
ある墓
Wenn des Mondes bleiches Licht
Auf das dunkle Grab hier fällt,
Dann aus meinem Auge bricht
Die Trän', die keine Macht mehr hält.
月の青白い光が
この暗い墓に落ちるとき
私の眼から
堪えきれずに涙があふれる。
Keine Blum am Grabe blüht,
Keine Seele denkt daran;
Kalter Wind vorüberzieht -
Was deckt das kühle Grab, sag an?
墓に花は咲いておらず
誰もそれを気にとめる者はいない。
冷たい風が吹き渡る。
涼しい墓は何を覆っているのか、言っておくれ。
Was des Grabes Hülle deckt,
Kannst du dann nur ahnen,
Wenn dich gleicher Schmerz bewegt,
Der mag dich daran mahnen.
墓の覆いが包んでいるものを
君が気づくことが出来るのは
同じ苦しみが君の心を揺り動かすときのみ、
その苦しみによって君はそれを思い出すかもしれない。
詩:Paul Peitl (1853-1902?(1922?)), as Paul Günther
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Ein Grab", 1876
作曲:1876年12月8/10日, Wien
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ヴォルフの友人でパウル・ギュンター(Paul Günther)、パウル・マンスベルク(Paul Mannsberg)という筆名で文筆活動をしていたパウル・パイトル(Paul Peitl: 1853.8.2, Wien生まれ。没年不詳)の詩による「ある墓」にヴォルフは1876年12月8~10日にかけて作曲しました。
ヴォルフの現存する最も初期の作品は「夜と墓(Nacht und Grab)」(ハインリヒ・チョッケの詩)であることを思うと、夜・墓といった暗く重いテーマは若かりしヴォルフにとって魅力的であったに違いありません(シューベルトの初期歌曲も同様でした)。
ピアノパートはトレモロや分散和音、オクターブのバス音などを使いながら、全体的に統一感のある作り方をしていると思います。歌声部については、3つの連で共通する素材も用いながら、通作的に展開させていき、最後にクライマックスを置いています。
「mit Dämpfer(弱音ペダルを使って)」「ausdrucksvoll(表情豊かに)」といった指示もあり、強弱記号もppからfffまで用いて、曲の表情を細かく描き出そうという意思も感じられます。
この頃になるとかなり手慣れた感じもして、ロマンティックな趣の作品として優れた出来栄えではないかと思います。
C (4/4拍子)
ト短調(g-moll)
Ziemlich langsam (かなりゆっくりと)
●曲の冒頭部分
Nachgelassene Werke, Erste Folge (Lieder mit Klavierbegleitung): Heft 1: Leipzig: Musikwissenschaftlicher Verlag, 1936.
●Wolf: Ein Grab
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)
Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
●[Hugo Wolf:] Ein Grab
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)
Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.
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(参考)
Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag


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