F=ディースカウ&サヴァリッシュ/1992年東京公演ライヴCD化!!!

バリトンのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが引退を表明したのは1993年の年明けごろだったと思います。
1992年の大晦日のコンサートが私の歌手活動最後のステージだったという発表を聞いて驚いたことを思い出します。
つまり、引退の1カ月ちょっと前に来日して2晩にわたるシューベルトの夕べを催してくれたのは、彼の長いコンサート・キャリアの殆どピリオドを打とうとしていた時期だったのです。
私は11月16日の個々の歌曲アンソロジーのコンサートを聴いたのですが、池袋の東京芸術劇場ということもあって、遠くてあまりよく見えなかったという印象があります。
しかし、F=ディースカウお得意の歌がずらりと並んだ演奏はやはり私にとっていい思い出になっています。
「水車屋の娘」の日(11月24日)は、アーメリングの府中公演と重なっていた為、迷った挙句、アーメリングの方に行ってしまいました。
そういうわけで、今回、この2夜のシューベルト・リサイタルがCD化されるというのは大歓迎なわけです(CD化されるとは全く想像もしていませんでした)。
この時期は、ディースカウ、アーメリング、ポップ、テオ・アダム、ミュンヒェン歌劇場のガラコンサートなど、毎日異なる公演を連続して聴いたのを懐かしく思い出します。

曲目などの詳細は以下のページをご覧ください。
 こちら

ここのところ、ニコライ・ゲッダやクルト・モルの逝去など、歌曲ファンにとって悲しいニュースが続いたので、久しぶりに嬉しいニュースとなりました。

購入してじっくり聴いてみようと思います。

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ロベルト・ホル&みどり・オルトナー/ロベルト・ホル バス・バリトンリサイタル(2016年11月27日 川口リリア・音楽ホール)

ロベルト・ホル バス・バリトンリサイタル
シューベルト! ~自然を描く幻想画家

2016年11月27日(日)14:00 川口リリア・音楽ホール

ロベルト・ホル(Robert Holl)(バス・バリトン)
みどり・オルトナー(Midori Ortner)(ピアノ)

シューベルト(Schubert)作曲

戸外にて D880
花の便り D622
春に D882

愛らしい星 D861
星々 D939
夜のすみれ D752
しおれた花 D795-18(「美しき水車小屋の娘」より)

野ばら D257
羊飼いの嘆きの歌 D121
月に寄せて D296
魔王 D328

~休憩~

丘の上の少年 D702
秋 D945
夕べの画像 D650

菩提樹 D911-5(「冬の旅」より)

夕映え D690
月に寄せて D193
夜と夢 D827

冬の夕べ D938

~アンコール~

音楽に寄せて D547

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1年ぶりにロベルト・ホルとみどり・オルトナーが川口リリアに帰ってきてくれた。
彼らの川口でのリーダーアーベントを昨年聴いた時はオルトナーさんの解説が非常に分かりやすく、気さくなお人柄も感じられて、もちろん演奏も素晴らしく、このコンビのコンサートが再び聴けることを心待ちにしていたのである。

今回も客席はかなりの盛況で、熱心な歌曲ファンが集まった。
この日はオール・シューベルト・プログラムで、どうやら選曲はオルトナーさんがしたようだ。
四季の移り変わりや、夜、月、星、夢、花など、歌曲の重要なテーマを盛り込んだ選曲のようだ。

「羊飼いの嘆きの歌」はオルトナーさん自身の解説にもあったように、珍しい前奏付きの版で演奏された。

ホルは今回はトークに加わらず、オルトナーさんの解説の間は横の椅子に腰掛けていた。
オルトナーさんはご自分のことを「とても真面目なディスクジョッキー」というような言い方をしていたが、その解説は各曲に対する造詣の深さと愛着が強く感じられて、それぞれの曲を聴くうえでの大きな道しるべとなった。
いっそオルトナーさんによるシューベルト歌曲全曲の解説本を出してほしいほどだ。

ホルの声は相変わらず、地の底から響き渡るような朗々とした低音が素晴らしく、声の艶は見事に保たれていた。
各曲に対する表情の細やかさも素晴らしく、どの曲も血肉となった表現で聴かせてくれた。
歌曲に対する真摯な姿勢がどの作品からも感じられ、とても充実した音楽を聴いたという気持ちにさせてくれた。
右手を動かす癖も健在だったが、それが鑑賞を妨げるほどではない。
彼の「魔王」を聴いたのはおそらくはじめてだったが、4つの役を違和感なく聴かせる術はさすがベテランの貫禄であった。
ちなみに「魔王」についてオルトナーさんは「ピアニストにとって地獄の曲」と語って笑いを誘っていた。
オルトナーさんの「魔王」の演奏は左手を効果的に使って右手の連打を助けていたが、それが実に自然で、全く見事な「魔王」だった。

オルトナーさんのピアノは、蓋を全開にしていて、バランスはもちろん見事にコントロールされていたが、あたかもシューベルトの即興曲を聴いているかのようなコードの美しさ、内声の浮き上げ方、明瞭なタッチによる立体感、ホルを導くリズム感の見事さ、そしてよく歌うメロディなど、その美質を挙げだしたらきりがない。
オルトナーさんはホルのことを「巨匠」と呼んでいたが、オルトナーさんもすでに「巨匠」のような素晴らしい演奏を聞かせてくれた。
ホルが日本に他のピアニストを連れてこないのも納得である。

なお、事前にピアニストが立ち上がるまでは拍手をしないようにアナウンスがあったが、曲のつながりが重要な歌曲のコンサートでは、拍手のタイミングをあらかじめ指示してくれるのは有難い。

アンコールの「音楽に寄せて」は胸にしみた。

なお、このコンサートの後に、昨年同様公開レッスンが催されたが、私は都合により、そちらは聞けなかった。
きっと受講生にとっても聴衆にとってもためになるレッスンが繰り広げられたのではないだろうか。

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バーバラ・ボニー&デイヴィッド・シフリン&アンドレ・ワッツ/シューベルト「岩の上の羊飼い」動画(米・アリス・タリー・ホール)

シューベルト(Schubert)/岩の上の羊飼い(Der Hirt auf dem Felsen) D965

録画:Alice Tully Hall

バーバラ・ボニー(Barbara Bonney)(S)
デイヴィッド・シフリン(David Shifrin)(CL)
アンドレ・ワッツ(André Watts)(P)

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ソプラノのバーバラ・ボニーがシューベルトの「岩の上の羊飼い」を歌っている動画を見つけました。
アメリカのリンカーン・センター内アリス・タリー・ホールでのライヴ映像のようです。
インターネットに記載されている1998年10月14日に演奏された時の録画である可能性があります(断定は出来ませんが)。
ボニーの伸びやかで透き通った声は歌う姿の可憐さと共に楽しませてくれます。
クラリネットはアメリカ人のデイヴィッド・シフリンで、ボニーと絶妙なデュエットを奏でます。
そして、一見地味なピアノパートを担当するのが、日本でもお馴染みのアンドレ・ワッツです。
歌うべきところでは歌い、支えるべきところでは支える、いいピアノ演奏だと思います。

ぜひお楽しみ下さい!

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/「冬の旅」(1987年シュヴェツィンゲン音楽祭初出ライヴCD)

ヘルマン・プライの初出音源による「冬の旅」が発売されることを、コメント欄より真子さんに教えていただいたので、ご紹介します。
すでに日本のamazonでも購入出来るようです(2016/6/29発売予定)。

シューベルト(Schubert)/「冬の旅(Winterreise)」
録音:1987年5月17日、シュヴェツィンゲン・シュロス、ロココ劇場
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(Br)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

詳細は以下のサイトをご覧下さい。
 こちら

プライは複数回「冬の旅」の録音を残していますが、名手ヘルムート・ドイチュとのこのライヴ録音は初出で、ファン待望のものでしょう(スタジオでの映像収録でも共演しているので、そのDVDとの比較も興味深いところです)。

1987年といえば、そろそろ渋みを増してきたプライの表現の深みが注目されるところです。
どんな演奏をドイチュと共に作り上げているのか、発売を楽しみに待つことにしましょう。

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ヘルマン・プライ&ヘルムート・ドイチュ/シューベルト:シラーの詩による歌曲リサイタル映像(1990年 バート・ウーラハ、フェストハレ)

バリトンのヘルマン・プライがピアニストのヘルムート・ドイチュと共演したライヴ映像がアップされていましたので、ご紹介します。
1990年のバート・ウーラハ秋の音楽祭のコンサートからで、すべてシューベルトのシラーの詩による歌曲が並んでいます。
プライのシューベルト、シラー歌曲集といえば、PHILIPSへの全集からの分売として出されたLPレコード(カール・エンゲルのピアノ)が大変高く評価されているとおり、プライお得意のレパートリーです。
東京でも、シューベルト生誕200年を記念して1997年初頭に催された一連のシューベルト・シリーズの一環としてシラー歌曲集が歌われたのが懐かしく思い出されます(ミヒャエル・エンドレスのピアノ)。
下記の8曲中、最初の3曲は非常に長い曲ですので、ご覧になる前に用事をお済ませになった方がいいかもしれませんね(笑)。
「人質」は太宰治の「走れメロス」の原型となったシラーの詩によるもので、テキストの2行目に「メロス」という言葉も出てきます(下記の歌詞リンクではダモン(Damon)となっていますが、シラーの変更により、歌われる歌詞も演奏者にゆだねられるようです)。
いずれも必ずしも知られているとは言えない作品ばかりですが、もし時間がない方は最初に「タルタロスの群れ」を、そして時間に余裕の出来た方は歌詞を追いながら「海に潜る男」をご覧になるといいのではないでしょうか。
プライの噛みしめるような一言一言の重みは、バラード歌いとしての彼の良さが最大限に発揮されていますし、シューベルトのメロディーの素晴らしさに寄り添っていて見事です。
若かりしドイチュが、プライという巨匠を前にして、あくまでプライの音楽性を優先して、かっちりとした骨組みを作っているのを聴くのも楽しみの一つです。
どうぞゆっくり楽しんで下さい!

※なお、下記で歌詞対訳をリンクさせていただいた藤井さんのサイト「梅丘歌曲会館 詩と音楽」は、2016年9月29日まで現在のリンク先で閲覧可能で、それ以降は別の場所に移転予定とのことです。

バート・ウーラハ秋の音楽祭1990年
バート・ウーラハ、、フェストハレ(フェスティヴァルホール)にて
(Herbstliche Musiktage Bad Urach 1990
aus der Festhalle in Bad Urach)

ヘルマン・プライ(Hermann Prey) (Baritone)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch) (Piano)

シューベルト/屍の幻想(Eine Leichenphantasie) D7 (21:46)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/海に潜る男(Der Taucher) D111 (23:58)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/人質(Die Bürgschaft) D246 (15:40)

 歌詞対訳(甲斐貴也訳)

シューベルト/タルタロスの群れ(Gruppe aus dem Tartarus) D583 (3:05)

シューベルト/アルプスの狩人(Der Alpenjäger) D588 (6:28)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

シューベルト/希望(Hoffnung) D637 (3:36)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

憧れ(Sehnsucht) D636 (4:12)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

巡礼者(Der Pilgrim) D794 (7:33)

 歌詞対訳(藤井宏行訳)

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アーメリング83歳誕生記念 私的お勧めシューベルト音源10選+2(動画サイト掲載の中より)

ソプラノのエリー・アーメリング(Elly Ameling)が2月8日に83回目の誕生日を迎えました。
おめでとうございます!

ファンの端くれとして、今回は動画サイトにアップされているシューベルトの歌曲の中から、お勧めしたい音源を選んでみました。
アーメリングを知らない世代の方にもこの機会に知ってもらえたら嬉しいです。

●音楽に寄せて(An die Musik)D547(ピアノ:ドルトン・ボールドウィン)

噛みしめるように歌うアーメリングの語り口が、まさに音楽への愛情を感じさせて感銘を受けました。

●トゥーレの王(Der König in Thule)D367(ピアノ:D.ボールドウィン)

グレートヒェンが口ずさむ古い歌が彼女の声によって丁寧に語られて、個人的にはこの曲のベストの一つだと思います。

●アヴェ・マリア(Ave Maria)D839(ピアノ:D.ボールドウィン)

けなげな祈りが心にしみわたります。いつ聴いてもいいですね!

●「ロザムンデ」~ロマンツェ(Romanze aus Rosamunde)D797-3b(ピアノ:D.ボールドウィン)

本来メッゾソプラノの為の作品ですが、アーメリングの美声にただただひたっていたくなる名唱です。

●至福(Seligkeit)D433(ピアノ:D.ボールドウィン)

この曲はアーメリングの十八番といって良いでしょう。こんなに生き生きと楽しげに歌われてシューベルトも幸せでしょう。

●夜と夢(Nacht und Träume)D827(ピアノ:D.ボールドウィン)

大きく弧を描く美しいレガートに酔いしれてしまいます。

●夕映えの中で(Im Abendrot)D799(ピアノ:D.ボールドウィン)

アーメリングの広がりのある美声は神々しく胸を打ちます。

●糸を紡ぐグレートヒェン(Gretchen am Spinnrade)D118(ピアノ:D.ボールドウィン)

抑制された中に熱い気持ちが感じられる歌唱です。年代ごとに彼女の歌唱にも変化があるのが興味深いです。

●愛の歌(Minnelied)D429(ピアノ:D.ボールドウィン)

同じテキストによるブラームスの歌曲ほど知られていませんが、可憐でけなげでアーメリングの為にあるような曲です。

●緑野の歌(Das Lied im Grünen)D917(ピアノ:D.ボールドウィン)

爽やかな曲調にアーメリングの魅力いっぱいの歌唱が見事に合っています。長さを感じさせません。

[番外編1]
●踊り(Der Tanz)D826(J.ベイカー、P.シュライアー、D.F=ディースカウ、G.ムーア)

この豪華メンバーで録音が残されたことはなんとも嬉しいことです。生き生きとして楽しげで大好きな作品です。

[番外編2]
●結婚式の焼き肉(Der Hochzeitsbraten)D930(P.シュライアー、D.F=ディースカウ、G.ムーア)

翌日の結婚式の料理に出そうと禁猟区でうさぎ狩りをする若いカップルと見張りとの対話による三重唱です。アーメリングのコミカルなお芝居が聞き物です。

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アーメリング&ヤンセンの「糸を紡ぐグレートヒェン」動画(1987年ミュンヒェン・ライヴ)

エリー・アーメリング(Elly Ameling)の動画が「401DutchDivas」というオランダの女声歌手に関するサイトに最近大量にアップされました。

 「401DutchDivas」のアーメリングの記事

その殆どは最近のインタビューに録音を挿入したもので、そちらも彼女の語る姿や内容が大変興味深いのですが、やはり一際嬉しいのは彼女の歌唱動画が久しぶりにアップされたことです。

シューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン(Gretchen am Spinnrade)」を彼女がルドルフ・ヤンセンのピアノで歌う動画で、1987年ミュンヒェンでのライヴです。
この動画はアーメリング自身が保有していたものだそうです。

上記のサイトに掲載されていますが、一応こちらにも掲載しておきますね。

彼女はオペラのステージにはごくわずかしか立ちませんでしたが、この曲を歌う彼女を見ていると、オペラの登場人物としても通用するのではと思うほど、表情が素晴らしくグレートヒェンになりきっています。
己の持てるすべて作品の為に使うという彼女の姿勢に感銘を受ける動画です。
そして、歌唱の方では「Und ach, sein Kuss!(それから、ああ、あの人の口づけ!)」という彼女を是非聴いてみて下さい(1:46-)。
アーメリングならではの解釈が聴けると思います。
そして、もちろんその時の顔の表情も必見です。

ヤンセンのピアノもアーメリングの心理描写を粒立ちのはっきりしたタッチで盛り上げています。

ぜひご覧ください!!

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シューベルト/「狩人の合唱」 D797-8(『ロザムンデ』より)を聴く

Jägerchor
 狩人の合唱

Wie lebt sich's so fröhlich im Grünen,
im Grünen bei fröhlicher Jagd,
von sonnigen Strahlen durchschienen,
wo reizend die Beute uns lacht.
 緑の中ではいかに陽気に過ごせることか、
 緑の中で、陽気な狩りをする時は。
 太陽の光に当たって
 獲物が我らに魅力的に笑いかけるところでは。

Wir lauschen, und nicht ist's vergebens,
wir lauschen im duftenden Klee.
O sehet das Ziel unsres Strebens:
ein schlankes, ein flüchtiges Reh.
 我らは耳を澄ます、すると徒労に終わることはない、
 我らは香るクローバーの中で耳を澄ます。
 おお、我らの狙っている標的を見よ、
 すらりとした逃げ足の速いノロジカだ。

Getroffen bald sinkt es vom Pfeile,
doch Liebe verletzt, dass sie heile,
nicht bebe, du schüchternes Reh,
die Liebe gibt Wonne für Weh.
 すぐに獲物は矢に当たり倒れこむ、
 だが、愛は治すために傷つけるのだ。
 震えることはない、臆病なノロジカよ、
 愛は痛みと引き換えに喜びを与えるのだ。

詩:Wilhelmina Christiane von Chézy, née Klencke (1783-1856)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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この曲もZu-simolinさんのリクエストです。
「ロザムンデ」は声楽曲が多く含まれているのですが、いずれも名作ですね。
単独で演奏されてもいい曲ばかりです。
狩人の歌なのでホルンが活躍するのは定番ですね。
「美しい水車屋の娘」の狩人とは違って、こちらは気楽に聴けます(獲物の立場になれば、単純に気楽にとは言えないかもしれないですが)。

演奏者不明

生き生きと歯切れのいい歌声と、オケのつやつやした感じが素晴らしかったです。

演奏者不明

速めのテンポで軽快に進んでいきます。

ホルン八重奏のための編曲版

狩りの歌なのでホルンだけで聴くのも違和感がないです。演奏はちょっと荒っぽいかな?

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ヘルマン・プライ&ジェフリー・パーソンズ/シューベルト「美しい水車屋の娘」(1976年)(Radio4 期間限定配信)

オランダのインターネットラジオ局Radio4が、ヘルマン・プライとジェフリー・パーソンズの「美しい水車屋の娘」を配信していることを某SNSでお世話になっている方の情報で知りました。
著名な歌曲ピアニストだったジェフリー・パーソンズの没後20年を記念しての配信と思われます(説明がパーソンズについて書かれているので)。

 こちら

ジェフリー・パーソンズは1929年6月15日オーストラリア、シドニー生まれで、若い頃はブラームスのピアノ協奏曲第2番などもステージで弾いていたのですが、ロンドンに渡り、ヒュッシュやシュヴァルツコプフ、ホッターなどの歌曲の伴奏者として、ムーアの後継者として位置づけられるほどにまでなりました。
そして、ニルソン、シュトライヒ、ボニー、ベイカー、ルートヴィヒ、オッター、アレン、ハンプソンなどの多くの声楽家だけでなく、イダ・ヘンデル、ミルシテイン、トルトゥリエなど楽器奏者とも共演を重ねて、この世代の最高の伴奏ピアニストの地位を確立したのです。
残念ながら1995年1月26日に癌の為に亡くなってしまうのですが、オーラフ・ベーアやジェシー・ノーマンとの来日公演で彼の至芸を何度か実際に聴けたことがいい思い出です。
1994年には本来ロス・アンヘレスの共演者として来日する予定だったので、楽しみにして会場に行ったら、ピアニスト変更の張り紙が貼ってあり、何故か嫌な予感がしたと思っていたら、翌年の新聞に訃報記事を見つけて力が抜けたことを思い出します。
ムーアの実演に接することが出来なかった私にとって、パーソンズのソリスト顔負けのテクニックに支えられた美しいタッチを生で聴くことはリートを聴き始めてからの念願で、ベーアとの来日公演でそれが実現した時は今後何度もベーアと共にパーソンズの至芸を味わえると喜んだものでした(茅ヶ崎公演の時、楽屋でサインの列に並んだのですが、ベーアとパーソンズが何かを言い合って楽しそうに笑っていたのが今でも印象に残っています)。
しかし、再度ベーアが来日した際と、ノーマンのコンサートを聴くだけで、パーソンズの実演を聴く機会は失われてしまったのです。
幸いなことにパーソンズには多くの録音が残されています。
それこそ、彼の基礎をつくったと言えるだろうシュヴァルツコプフとその夫のウォルター・レッグとの薫陶を得て作られた多くの録音はパーソンズの非凡さを示していると思います。
シュヴァルツコプフは実はムーア引退後、コンサートではパーソンズと共にブライアン・ランポートともかなりの頻度共演しているのですが、録音ではもっぱらパーソンズと共演しているのが興味深いところです。

プライとは、スタジオ録音はCapriccioレーベルのブラームス「ドイツ民謡集」1枚しか残していないのですが、ザルツブルク音楽祭では4回(1977,1978,1981,1988年)共演しており、今回のオランダでのライヴは1976年の共演です。
プライの自伝『ヘルマン・プライ自伝:喝采の時』(原田茂生、林捷訳:1993年 メタモル出版)でパーソンズについて「ジェラルド・ムーアの正統な後継者と呼ぶにふさわしいピアニストだ」と書いています。

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シューベルト(Schubert)/「美しい水車屋の娘」D795 全20曲 (Die schöne Müllerin)
シューベルト/はじめての喪失D226 (Erster Verlust)
シューベルト/ムーサ(ミューズ)の息子D764 (Der Musensohn)

録音:1976年10月20日, Sonesta Koepelkerk Amsterdam

ヘルマン・プライ(Hermann Prey) (bariton)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons) (piano)

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プライは厚みのある朗々とした美声はそのままに、弱声でも魅力を聴かせています。
熱っぽさよりはコントロールの利いた歌唱で、「好きな色」での消え入りそうな声が特に印象的でした。
パーソンズは粒立ちの良い明晰なタッチが特徴的で、リズムがかっちりしているので、いつものホカンソンとは違った演奏になっていると思います。
アンコールの「ミューズの子」はパーソンズのがっちりしたリズムに乗って、プライ本来の明るさが全開で、とても楽しい演奏でした。

Wigmore HallのライヴCDシリーズでもパーソンズの没後20年を記念して、ヴォルフガング・ホルツマイアとの「美しい水車屋の娘」がリリースされています。
私も近く入手して聴いてみたいと思っています。

ヴォルフガング・ホルツマイア&ジェフリー・パーソンズ「さすらい」

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シューベルト「アトラス」D957-8を聴く

Der Atlas
 アトラス

Ich unglücksel'ger Atlas! Eine Welt,
Die ganze Welt der Schmerzen muß ich tragen,
Ich trage Unerträgliches, und brechen
Will mir das Herz im Leibe.
 俺は世にも不幸なアトラス!ひとつの世界、
 苦悩の全世界を俺は支えねばならぬ。
 俺は耐えがたきを背負い、
 心は体内で破裂すればいいさ。

Du stolzes Herz, du hast es ja gewollt!
Du wolltest glücklich sein, unendlich glücklich,
Oder unendlich elend, stolzes Herz,
Und jetzo bist du elend.
 誇り高き心よ、おまえは望んでいたはずだ!
 幸せでありたい、限りなく幸せでありたい、
 さもなければ限りなく惨めでありたいと、誇り高き心よ、
 いまやおまえは惨めそのものだ。

詩:Heinrich Heine (1797 - 1856)
曲:Franz Peter Schubert (1797 - 1828)

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シューベルトが最晩年になってはじめて手がけたハイネの詩による作品群は、後に出版社によってレルシュタープやザイドルの詩による歌曲と合わせて「白鳥の歌」としてまとめられました。
そのハイネの詩による6曲はどれも最晩年の新しい境地を垣間見せていて、その深淵に戦慄を覚えるものばかりですが、ギリシャ神話に題材をとった「アトラス」は歌曲の限界に挑戦するかのような激しい怒りの表現が聴き手に強い印象を与えます。

音楽は重々しい左手のバスを伴った右手のトレモロのピアノ前奏で始まり、世界を背負った重みと、心の中の自暴自棄を激しく吐露するさまがイメージされます。
A-B-A’の構成をとった歌は高低の音域の広さが際立っていて、落ち着かず苦しむ様が旋律で見事に描かれているように感じられます。
Bの部分で歌もピアノも突然雰囲気を変えるところと、最後に元の音楽に回帰するところが非常に印象的です。

詩の朗読(Susanna Proskura)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ピアニスト(おそらくジェラルド・ムーアとの1970年代の録音)

ディースカウの余裕をもった歌唱はほれぼれするほどうまいです。ムーアもただ激しいだけでない音楽としてのゆとりが感じられます。

ハンス・ホッター(BSBR)&ジェラルド・ムーア

ホッターの低音はこの曲と相性ぴったりで、いつもより速めでリズムを強調しながら歯切れよく歌うのが素晴らしいです。ムーアも硬質の歯切れ良いタッチが効果的で見事です。

ヘルマン・プライ&レナード・ホカンソン

5:11-が「アトラス」です。1980年代のプライがまるでもっと若返ったかのようなドラマティックな響きで全身全霊の歌唱を聴かせてくれます。ホカンソンはさすがにプライと息がぴったりです。

ペーター・シュライアー(T)&アンドラーシュ・シフ(1989年録音)

47:39-が「アトラス」です。シュライアーがまだ美声を保っていた頃の貫録の名唱です。シフもよいコンビネーションを聴かせています。

ナタリー・シュトゥッツマン(CA)&インゲル・セーデルグレン

シュトゥッツマンほどこの曲を違和感なくしっかり歌い上げる女声は他になかなかいないのではないでしょうか。セーデルグレンもさりげない巧さが感じられます。

トーマス・E.バウアー(BR)&ヨス・ファン・インマーセール(2013年録画)

期待のリート歌手バウアーも丁寧に歌っていて好感が持てます。重鎮インマーセールのフォルテピアノもこの曲の激しさを十分に表現しています。

Ayhan Baran (BS)&ジェラルド・ムーア

トルコのバス歌手は地の底から響くような狂気を感じてユニークです。ここでもムーアが好サポートしています。

ヴェルナー・ギューラ(T)&クリストフ・ベルナー

ギューラは非常にうまい歌手なので、テノールでも激しい感情の吐露が伝わってきて素晴らしいです。ベルナーも上手い演奏です。

リスト編曲のピアノ独奏版:Valentina Lisitsa(P)

最初のピアノのトレモロが分散和音に変わっていたり、終盤あたりの音楽など、リストの歌曲編曲の中ではアレンジの要素がかなり強い方だと思います。演奏は見事です。

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