アーメリングの「死と乙女(Der Tod und das Mädchen, D 531)」がドイツのラジオ局で放送されていた!

先日ドイツのラジオ局WDR3でエリー・アーメリング(Elly Ameling)とイェルク・デームス(Jörg Demus)によるシューベルト「死と乙女(Der Tod und das Mädchen, D 531)」が放送されたようです。

 こちら

上記サイトのシューベルトの肖像が掲載されている左横に情報が掲載されています。

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Rätselauflösung(謎解き)

Franz Schubert
Der Tod und das Mädchen
op. 7,3
D 531
Elly Ameling, Sopran
Jörg Demus, Klavier
(2'40'')

Lösung(答え):
Franz Schubert
Quartett d-moll
D 810
Melos-Quartett
(39'47'')

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放送されたのはなぞなぞのコーナーらしく、おそらくアーメリング&デームスの「死と乙女」が放送で流されて、この曲をテーマにした弦楽四重奏曲は何でしょうか?というような問題だったのではないかと推測されます。

私の知る限り、アーメリングはこの曲を商業録音していませんし、Sandmanさんのアーメリング・ディスコグラフィーのサイトではオランダのBeeld en Geluidに保存されているおそらく放送音源が掲載されており、ピアニストはルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)でした(Nov.25, 1981)。

WDR3で放送された録音がドイツでのライヴなのか、それとも放送用の録音なのかは分かりませんが、未知の音源がまだまだあることが分かり、ファンとしては嬉しくなりました。

アーメリングが死神を怖がる乙女と、乙女を宥める死神をどのように表現したのか聴いてみたいものです。

ちなみにアーメリングは「死と乙女」のパロディ版とも言える「若者と死(Der Jüngling und der Tod, D 545)」をEMIレーベルにアーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)と録音しており、iconシリーズの組み物CDで復活しています。

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イェルク・デームス(Jörg Demus)を偲んで:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウとの1980年アムステルダム・シューベルト・リサイタル

オランダのインターネットラジオ局Radio4が、イェルク・デームスを偲んだ記事を書いています。
 こちら

 Google翻訳による和訳はこちら

彼の追悼記事には、殆ど歌手の伴奏者としてのキャリアが記されています。
それほど彼を語るうえで歌曲ピアニストとしての側面が大きかったのだと思います。
この記事の後半でF=ディースカウとの1980年アムステルダム・ライヴ録音が聞けるようになっています。
オール・シューベルトで、いずれもF=ディースカウお得意の選曲です。

ちなみにこの録音は、2014年にネットに期間限定で掲載された時に私も記事にしていました。
 こちら

この機会に、伴奏者としてのデームスをあらためて味わってみたいと思います。

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ライヴ録音:1980年12月9日, Concertgebouw Grote Zaal Amsterdam(アムステルダム・コンセルトヘバウ大ホール)

Dietrich Fischer-Dieskau(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ) (bariton)
Jörg Demus(イェルク・デームス) (piano)

1.Prometheus(プロメテウス) D.674
2.Meeresstille(海の静けさ) D.216
3.An die Leier(竪琴に寄せて) D.737
4.Memnon(メムノン) D.541
5.Freiwilliges Versinken(自ら沈み行く) D.700
6.Der Tod und das Mädchen(死と乙女) D.531
7.Gruppe aus dem Tartarus(タルタロスの群れ) D.583
8.Nachtstück(夜曲) D.672
9.Totengräbers Heimweh(墓掘人の郷愁) D.842

10.Der Wanderer an den Mond(さすらい人が月に寄せて) D.870
11.Abendstern(夕星) D.806
12.Selige Welt(幸福の世界) D.743
13.Auf der Donau(ドナウ川の上で) D.553
14.Über Wildemann(ヴィルデマンの丘を越えて) D.884
15.Wanderers Nachtlied(さすらい人の夜の歌Ⅱ) D.768
16.Des Fischers Liebesglück(漁師の恋の幸福) D.933
17.An die Laute(リュートに寄せて) D.905
18.Der Musensohn(ムーサの息子) D.764

19.Nachtviolen(はなだいこん) D.752
20.Geheimes(秘めごと) D.719
21.An Sylvia(シルヴィアに) D.891
22.Abschied(別れ) D.957 nr.7

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シューベルトの「ただ憧れを知る人だけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)」の6種類の曲を聞く

Nur wer die Sehnsucht kennt
Weiß, was ich leide!
Allein und abgetrennt
Von aller Freude
Seh ich an's Firmament
Nach jener Seite.
Ach, der mich liebt und kennt,
Ist in der Weite.
Es schwindelt mir, es brennt
Mein Eingeweide.
Nur wer die Sehnsucht kennt
Weiß, was ich leide!
 ただ憧れを知る人だけが
 私が何に苦しんでいるのか分かるのです!
 ひとり
 あらゆる喜びから引き離されて
 私は天空の
 あちら側に目をやります。
 ああ、私を愛し、知る方は
 遠方にいるのです。
 私は眩暈がして、
 はらわたがちくちく痛みます。
 ただ憧れを知る人だけが
 私が何に苦しんでいるのか分かるのです!

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), "Mignon", written 1785, appears in Wilhelm Meisters Lehrjahre, first published 1795
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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シューベルトは、ゲーテの詩による有名なミニョン(Mignon)の「ただ憧れを知る人だけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)」に6回作曲しました(1回目のD 310は2つの稿があります)。
D 310の第1稿のみネット動画で見つけられませんでしたが、あのアーメリング(Elly Ameling)がグレアム・ジョンソン(Graham Johnson)とHyperionに2つの稿をまとめて録音していますので、ご興味のある方はそちらをお聞きください。
また、Naxosレーベルにはルート・ツィーザク(S)とウルリヒ・アイゼンローア(P)が、ミニョン関係のシューベルトの歌曲を1枚にまとめて録音していますので、そちらもシューベルトファンには興味深いと思います。
第1作~第3作、第6作は独唱とピアノ、第4作は無伴奏男声五部合唱、第5作はミニョン(女声)と竪琴弾き(男声)の二重唱とピアノという編成です。
最も有名なのは第6作ですが、ここに至るまでこれだけシューベルトが試行錯誤を繰り返してきたかが分かるとまた感慨深いものがあります。
もちろんさすがシューベルトだけあって、初期の作品からすでに非凡さが感じられ、聞く人によっては好みが分かれるかもしれませんね。

●第1作(第1稿、第2稿):「憧れ」D 310a, D 310b
Sehnsucht, D 310 (1815), published 1895 [voice, piano], first setting (2 versions)
Erste Fassung(第1稿) : 18 Oct. 1815, Sehr langsam, mit Ausdruck, 2/2, As-dur
Zweite Fassung(第2稿) : 18 Oct. 1815, Sehr langsam, mit höchstem Affekt, 2/2, F-dur, 第2稿の最後の行の追加 "der nur weiß, was ich leide!"

D 310b(第2稿) : Dorothee Jansen(S) & Francis Grier(P)

●第2作:「憧れ」D 359
Sehnsucht, D 359 (1816), published 1872 [voice, piano], second setting
1816, Mässig, 6/8, d-moll

Ruth Ziesak(S) & Ulrich Eisenlohr(P)

●第3作:「憧れ」D 481
Sehnsucht, D 481 (1816), published 1895 [voice, piano], third setting
Sep. 1816, Langsam, 2/4, a-moll

Arleen Auger(S) & Walter Olbertz(P)

●第4作:「憧れ」D 656
Sehnsucht, D 656 (1819), published 1867, first performed 1868 [vocal quintet for male voices], fourth setting
T I, T II, BS I, BS II, BS III, Apr. 1819, Langsam, 2/2, E-dur

Robert Shaw Chamber Singers & Robert Shaw(C)

●第5作:「ミニョンと竪琴弾き」D 877-1 (『ヴィルヘルム・マイスターからの歌曲』より)
Mignon und der Harfner, D 877 no. 1 (aus "Gesänge aus Wilhelm Meister, op. 62") (1826), published 1827 [vocal duet with piano], from Gesänge aus Wilhelm Meister, no. 1, fifth setting
Jan. 1826, Langsam, 4/4, h-moll

Victoria de los Angeles(S) & Dietrich Ficher-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

●第6作:「ミニョンの歌」D 877-4 (『ヴィルヘルム・マイスターからの歌曲』より)
Lied der Mignon, D 877 no. 4 (aus "Gesänge aus Wilhelm Meister, op. 62") (1826), published 1827 [voice, piano], from Gesänge aus Wilhelm Meister, no. 4, sixth setting
Jan. 1826, Langsam, 6/8, a-moll

Barbara Bonney(S) & Geoffrey Parsons(P)

◎おまけ:第6作(「ミニョンの歌」D 877-4)のピアノパート演奏
Lied der Mignon - KARAOKE / PIANO ACCOMPANIMENT - op.62 n.4 - Schubert

Héctor Valls(P)

◎朗読
Johann Wolfgang Goethe „Nur wer die Sehnsucht kennt" (1795)

Fritz Stavenhagen(Rezitation)

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シューベルト「さすらい(Das Wandern)」(「美しい水車屋の娘」より)を聴く

Das Wandern, D 795-1 (aus "Die schöne Müllerin")
 さすらい(「美しい水車屋の娘」D795~第1曲)

Das Wandern ist des Müllers Lust,
Das Wandern!
[Das Wandern ist des Müllers Lust,]
[Das Wandern!]
Das muß ein schlechter Müller sein,
Dem niemals fiel das Wandern ein,
Das Wandern.
[Das Wandern.]
[Das Wandern.]
[Das Wandern.]
 さすらいは粉ひき職人の喜びだ、
 さすらいは!
 さすらいを思いつきもしないやつなんて
 駄目な粉ひき職人にちがいない、
 さすらいを。

Vom Wasser haben wir's gelernt,
Vom Wasser!
[Vom Wasser haben wir's gelernt,]
[Vom Wasser!]
Das hat nicht Rast bei Tag und Nacht,
Ist stets auf Wanderschaft bedacht,
Das Wasser.
[Das Wasser.]
[Das Wasser.]
[Das Wasser.]
 水からぼくらはそれを学んだんだ、
 水から!
 水は昼も夜も休むことなく、
 いつも旅することを考えている、
 水は。

Das sehn wir auch den Rädern ab,
Den Rädern!
[Das sehn wir auch den Rädern ab,]
[Den Rädern!]
Die gar nicht gerne stille stehn,
Die sich mein Tag nicht müde drehn,
Die Räder.
[Die Räder.]
[Die Räder.]
[Die Räder.]
 ぼくらは水車からも見習っている、
 水車からも!
 水車は全く止まろうとしないで、
 疲れることなく毎日回っているんだ、
 水車は。

Die Steine selbst, so schwer sie sind,
Die Steine!
[Die Steine selbst, so schwer sie sind,]
[Die Steine!]
Sie tanzen mit den muntern Reihn
Und wollen gar noch schneller sein,
Die Steine.
[Die Steine.]
[Die Steine.]
[Die Steine.]
 石臼からさえも見習うんだ、あんなに重いのに、
 石臼からも!
 石臼は元気に輪舞を踊り、
 徐々に速く進もうとさえする、
 石臼は。

O Wandern, Wandern, meine Lust,
O Wandern!
[O Wandern, Wandern, meine Lust,]
[O Wandern!]
Herr Meister und Frau Meisterin,
Laßt mich in Frieden weiterziehn
Und wandern.
[Und wandern.]
[Und wandern.]
[Und wandern.]
 おお、さすらい、さすらい、ぼくの喜び、
 おお、さすらいよ!
 親方様、奥様、
 安心してぼくを行かせてください、
 さすらいの旅に。

詩:Wilhelm Müller (1794-1827)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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シューベルトの20曲からなる歌曲集「美しい水車屋の娘」D795の冒頭の曲を聴き比べようと思います。
水車屋の修行の旅に出かけた青年が、ある水車屋で美しい娘に出会い、デートまでこぎつけるのですが、恋敵の狩人に奪われ、失意のうちに入水自殺するという切ない内容になっています。
オリジナルにはプロローグとエピローグがあり、さらにシューベルトが作曲しなかったテキストもいくつかあります。
それらを完全収録したのが、Hyperionのシューベルト歌曲全集のボストリッジ&グレアム・ジョンソンのCDで、作曲されなかった詩の朗読をあのフィッシャー=ディースカウが担当しています。
興味のある方はそちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

この第1曲「さすらい」の詩人ミュラーによる原題は"Wanderschaft(さすらい、旅などの意味)"だそうです。
全5節からなる有節歌曲で、民謡調の響きがテキストの趣を反映していると思います。
ジェラルド・ムーアが各節を描き分けることを提唱して以来、ピアノパートはムーアの演奏が手本になっている感があります。
下記のいくつかの録音でそれを確認できますが、一方で独自の解釈を聞かせるピアニストもいます。しかし、もちろんムーアを意識していることは確かと思われます。
この曲は高声によって魅力を放つと言われ、かのハンス・ホッターも全曲歌おうかと思ったが諦めたと語っています(「どこへ」など単独ではホッターも録音しています)。
女声ではロッテ・レーマンやブリギッテ・ファスベンダーなどの例はありますが、ほとんど歌われません。
「冬の旅」を多くの女声が挑戦するのとはやはり違うのでしょうね。

詩の朗読(Johannes Held)

フリッツ・ヴンダーリヒ(T) & フーベルト・ギーセン(P)
Fritz Wunderlich(T) & Hubert Giesen(P)

ヴンダーリヒのみずみずしい美声は比類ない独自のものでした。この歌曲集の持ち味とこれほどぴったりはまる歌い手もそうは多くないでしょう。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

1961年12月のEMI録音。速めのテンポで快適に進むディースカウとムーアの爽快な演奏が素晴らしいです。私はこのコンビの3種の中ではこの録音が一番好きです。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

1971年のDG録音。2人とも円熟期の余裕があり、かなり節ごとに表情を変えているのが興味深いです。

ヘルマン・プライ(BR) & レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR) & Leonard Hokanson(P)

1980年代初頭の映像作品。プライはドイツ語のごつごつした響きをリズミカルに表現する一方で、各節の締めは柔らかい表情を聞かせて、まさに1曲で多彩な表現を聞かせています。ホカンソンも温かみのある演奏です。

オーラフ・ベーア(BR) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Olaf Bär(BR) & Geoffrey Parsons(P)

ベーアが彗星のごとく現れて知られるようになった録音です。若々しくみずみずしいハイバリトンがなんとも魅力的です。そしてパーソンズのかっちりした見事なピアノにいつもながら聞きほれてしまいます。

ピーター・ピアーズ(T) & ベンジャミン・ブリテン(P)
Peter Pears(T) & Benjamin Britten(P)

演奏の映像です。公私ともに良きパートナーだったピアーズ&ブリテンの貴重な記録です。ピアーズは生き生きと明瞭に歌い、ブリテンはノンレガートを貫きながらもペダルを時に使って表情を描き分けています。

クリスティアン・ゲルハーエル(BR) & ゲロルト・フーバー(P)
Christian Gerhaher(BR) & Gerold Huber(P)

2003年録音。まだ彼らが無名に近かった頃の録音。ゲルハーエルのハイバリトンの美声は魅力的で将来の大成を予感させます。フーバーも細かく表情を描いています。

フローリアン・ベッシュ(BR) & マルコム・マーティノー(P)
Florian Boesch(BR) & Malcom Martineau(P)

2013年録音。ベッシュの声は柔らかくて、押しつけがましくないです。マーティノーも控えめですが、ノンレガート主体で演奏し表情はこまやかです。

ヨナス・カウフマン(T) & ヘルムート・ドイチュ(P)
Jonas Kaufmann(T) & Helmut Deutsch(P)

2018年1月20日, Carnegie Hall録音。演奏の映像を見ることが出来ます。暗めの声質をもったテノールのカウフマンですが、歌声の表情は明朗そのものです。ドイチュもノンレガート主体で、第4節も特に石臼の重みを強調していないところに彼の主張が感じられます。

イアン・ボストリッジ(T) & 内田光子(P)
Ian Bostridge(T) & Mitsuko Uchida(P)

2004年3月サントリーホールでの映像。全曲の録画なので、第1曲のみを聴く場合は3:00あたりで動画を止めてください。ボストリッジの美声とシューベルティアン、内田の絶妙な演奏。魅力的です。

フランシスコ・アライサ(T) & アーウィン・ゲイジ(P)
Francisco Araiza(T) & Irwin Gage(P)

1980年代はFMラジオでアライサのライヴが沢山放送されました。アライサはドイツ人のようには演奏しないと言い切っていました。確かにラテンの熱い美声なのですが、土台がしっかりしているせいか違和感はありません。ゲイジはとてもゆっくりめのテンポですが、丁寧な演奏です。

クリストフ・プレガルディアン(T) & ミヒャエル・ゲース(P)
Christoph Prégardien(T) & Michael Gees(P)

演奏の映像です。プレガルディアンは歌声部に時折装飾を加えているのが興味深いです。ゲースのペダリングとタッチは個性的ながら魅了されます。

ペーター・シュライアー(T) & コンラート・ラゴスニク(Guitar)
Peter Schreier(T) & Konrad Ragossnig(Guitar)

シュライアーは1980年にハンマークラヴィーア版、ギター版、シューベルトの親友フォーグルによる変更を反映した楽譜によるピアノ版、といった3種類の水車屋を録音しました。このギターとの共演では、起伏を抑えて、しっとりと美しいメロディーを歌っています。

フランツ・リストによるピアノ独奏編曲版の演奏(Franz Liszt - Müllerlieder von Franz Schubert, G 350/1, S. 565 (1846))
セルゲイ・ラフマニノフ(P)
Sergei Rachmaninoff(P)

1925年4月14日録音。リスト編曲の独奏版を、あの大作曲家で大ピアニストのラフマニノフが演奏しています。ラフマニノフは美しい歌曲を多く作曲していることでも知られていますね。

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シューベルト「愛のことづて(Liebesbotschaft, D 957-1)」を聴く

Liebesbotschaft, D 957-1
 愛のことづて

Rauschendes Bächlein,
So silbern und hell,
Eilst zur Geliebten
So munter und schnell?
Ach, trautes Bächlein,
Mein Bote sei Du;
Bringe die Grüße
Des Fernen ihr zu.
 さらさら流れる
 銀色の明るい小川よ、
 恋人のもとに急いでいるのか、
 そんなに元気よく速く流れて?
 ああ、いとしい小川よ、
 ぼくの使者になって、
 はるか離れた者からの挨拶を
 彼女に届けておくれ。

All' ihre Blumen
Im Garten gepflegt,
Die sie so lieblich
Am Busen trägt,
Und ihre Rosen
In purpurner Glut,
Bächlein, erquicke
Mit kühlender Flut.
 庭で手入れをしていた
 彼女の花々をみな
 こんなにも愛らしく彼女は
 胸に飾っている、
 そして彼女の薔薇は
 深紅に燃えている。
 小川よ、
 冷たい水で爽快にさせてあげておくれ。

Wenn sie am Ufer,
In Träume versenkt,
Meiner gedenkend
Das Köpfchen hängt;
Tröste die Süße
Mit freundlichem Blick,
Denn der Geliebte
Kehrt bald zurück.
 彼女が岸辺で
 夢に沈みこみ
 ぼくのことを思って
 ふさぎこんでいたら
 このかわいい子を
 やさしい眼差しで慰めておくれ。
 なぜならあの子の好きな人は
 もうすぐ帰ってくるのだから。

Neigt sich die Sonne
Mit rötlichem Schein,
Wiege das Liebchen
In Schlummer ein.
Rausche sie murmelnd
In süße Ruh,
Flüstre ihr Träume
Der Liebe zu.
 太陽が
 赤く輝きながら傾いていくとき、
 恋人を
 ゆすって眠らせておくれ。
 せせらぎの音で
 甘い憩いにつかせておくれ。
 彼女に
 愛の夢をささやいておくれ。

詩:Ludwig Rellstab (1799-1860)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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歌曲集「白鳥の歌」の第1番目に置かれた歌曲が「愛のことづて(愛の便り)」です。
この歌曲集は最初の7曲がレルシュタープの詩、次の6曲がハイネの詩、そして最後の1曲がザイドルに詩による歌曲集です。
これらを「白鳥の歌」としてまとめたのは、シューベルトの意思ではなく、出版者ハスリンガーによるものです。
シューベルトの亡くなる年である1828年に作られました。

さらさら流れる小川に遠く離れた恋人への言伝を頼むというなんともロマンティックな内容のテキストに、シューベルトらしい爽やかな音楽が付けられています。亡くなる年の作品とは思えないほど明るく若々しい息吹に満ちた美しい作品です。

最初の節と最終節は詩行とピアノのみの箇所が交互に現れ、詩人と小川が対話をしているような効果をあげています。

詩の朗読(Susanna Proskura)

詩の朗読を聞くと、脚韻なども音として感じることが出来るのではないでしょうか。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

F=ディースカウのテノラールな美声とムーアの安心感のあるピアノで、大好きな録音です。

ハンス・ホッター(BSBR) & ジェラルド・ムーア(P)
Hans Hotter(BSBR) & Gerald Moore(P)

1954年5月28-30日, London録音。ホッターの深く温かい声がとても魅力的です。低く移調してもせせらぎを見事に表現したムーアが素晴らしいです。

ヘルマン・プライ(BR) & レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR) & Leonard Hokanson(P)

1980年代の円熟期の含蓄に富んだプライの映像を味わえます。ホカンソンも温かい演奏です。

ナタリー・ストゥッツマン(CA), インゲル・セーデルグレン(P)
Nathalie Stutzmann(CA), Inger Södergren(P)

2006年東京録画。落ち着いたストゥッツマンのコントラルトの声が心地よい響きを聞かせています。

マティアス・ゲルネ(BR) & クリストフ・エッシェンバハ(P)
Matthias Goerne(BR) & Christoph Eschenbach(P)

2012年録音。落ち着いたふかふかのカーペットのようなゲルネの声に包まれるのもいいです。

松原友(T) & 小林道夫(P)
Tomo Matsubara(T) & Michio Kobayashi(P)

日本の歌曲伴奏の巨匠といってもいい小林道夫氏が演奏している姿を見られます。無駄のないスタイリッシュな演奏が相変わらず素晴らしいです。松原さんの歌もさわやかです。

ピアノパートのみ(Anna Cardona(P))

ピアノ伴奏のみです(良い演奏です)。楽譜が一緒に流れるので、動画を見ながら歌えます。

リスト編曲のピアノ独奏版(ヴラジーミル・ホロヴィッツ(Vladimir Horowitz)(P))

1929年録音。あのホロヴィッツが、リストの歌曲編曲版を弾いています。

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シューベルト「収穫の歌(Erntelied, D434)」を聴く

Erntelied, D434
 収穫の歌

Sicheln schallen,
Ähren fallen
Unter Sichelschall;
Auf den Mädchenhüten
Zittern blaue Blüten,
Freud' ist überall.
[Freud' ist überall.]
 鎌で刈る音が鳴り、
 穂が落ちる、
 鎌の音とともに。
 娘たちの帽子の
 青い花飾りは震え、
 喜びはいたるところにある。

Sicheln klingen,
Mädchen singen
Unter Sichelklang,
Bis, vom Mond beschimmert,
Rings die Stoppel flimmert,
Tönt der Erntesang.
[Tönt der Erntesang.]
 鎌で刈る音が響き、
 娘たちは歌う、
 鎌の響きとともに。
 月に照らされて、
 周囲に切り株がきらめくまで、
 収穫の歌は響き続ける。

Alles springet,
Alles singet,
Was nur lallen kann.
Bei dem Erntemahle
Ißt aus einer Schale
Knecht und Bauersmann.
[Knecht und Bauersmann.]
 皆飛び跳ね、
 皆歌う、
 ろれつの回らぬまま話せることを。
 収穫時の食事では、
 一枚の深皿から食べるのだ、
 使用人も農夫も。

Jeder scherzet,
Jeder herzet
Dann sein Liebelein.
Nach geleerten Kannen
Gehen sie von dannen,
Singen und juchhei'n!
[Singen und juchhei'n!]
 それから誰もがふざけ、
 誰もが抱き合う、
 それぞれの恋人と。
 ジョッキを飲み干すと
 彼らはそこから帰り、
 歌ったり、歓声を挙げたりするのだ!

詩:Ludwig Heinrich Christoph Hölty (1748.12.21, Mariensee - 1776.9.1, Mariensee)
曲:Franz Peter Schubert (1797.1.31, Himmelpfortgrund - 1828.11.19, Wien)

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以前にこの曲について投稿した記事がありますので、よろしければ以下のリンク先からご覧ください。
 こちら

秋といえば収穫の季節です。
そんなわけで、今回聞き比べるのは、シューベルトの「収穫の歌」です。
ヘルティの4つの節からなる有節歌曲です。
スタッカートのピアノパートがうきうきした気分や無骨なダンスを想起させます。
歌は各節の最終行を繰り返します。

この曲は、私がクラシック音楽を聴き始めてまだ間もない頃に、シュヴァルツコプフがEMIに録音したシューベルト歌曲を2枚組にまとめたLPを買って、その中に収録されていたのがはじめての出会いです。
ピアノはG.パーソンズで、他の歌曲と若干毛色の違う親しみやすい曲だったので、すぐに気に入ったのを覚えています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

1970年録音。1,2,4節歌唱。歯切れのよいF=ディースカウの歌唱と、温かみのあるタッチのムーアの演奏がとてもチャーミングです。

●アンネ・ソフィー・フォン・オッター(MS) & ベングト・フォシュベリ(P)
Anne Sofie von Otter(MS) & Bengt Forsberg(P)

1996年録音。全4節歌唱。オッターの歌は威勢よく、明るく、理想的な歌唱と言えるでしょう。フォシュベリも雄弁です。

●マティアス・ゲルネ(BR) & アレクサンダー・シュマルツ(P)
Matthias Goerne(BR) & Alexander Schmalcz(P)

2009年録音。全4節歌唱。ゲルネは快活な歌を歌っている時でも真面目な感じが残っているのが面白いです。シュマルツは美しいタッチで演奏しています。

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シューベルト「秋(Herbst)」D945を聴く

Herbst, D945
 秋

Es rauschen die Winde
So herbstlich und kalt;
Verödet die Fluren,
Entblättert der Wald.
 風がざわめく、
 これほど秋めいて、冷たく。
 野は荒れ果て、
 森は葉を落とす。

Ihr blumigen Auen!
Du sonniges Grün!
So welken die Blüten
Des Lebens dahin.
[So welken die Blüten]
[Des Lebens dahin.]
 おまえたち、花咲いていた野よ!
 おまえ、日の光の照っていた緑よ!
 こうして人生の花々は
 枯れ果てるのだ。

Es ziehen die Wolken
So finster und grau;
Verschwunden die Sterne
Am himmlischen Blau!
 雲が流れる、
 これほど暗く灰色になって。
 星々は
 天上の青で消え去った!

Ach wie die Gestirne
Am Himmel entflieh'n,
So sinket die Hoffnung
Des Lebens dahin!
[So sinket die Hoffnung]
[Des Lebens dahin!]
 ああ、天の星が
 逃げるように、
 人生の希望は
 沈み去るのだ!

Ihr Tage des Lenzes
Mit Rosen geschmückt,
Wo ich die Geliebte
Ans Herze gedrückt!
 おまえたち、春の日々は
 バラに飾られ、
 私は恋人を
 胸に押し付けたものだった!

Kalt über den Hügel
Rauscht, Winde, dahin!
So sterben die Rosen
Der Liebe dahin!
[So sterben die Rosen]
[Der Liebe dahin!]
 丘の上を冷たく
 ざわめき去れ、風よ!
 こうして愛のバラは
 死に去るのだ!

詩:レルシュタープ(Heinrich Friedrich Ludwig Rellstab: 1799.4.13, Berlin - 1860.11.27, Berlin)
曲:シューベルト(Franz Peter Schubert: 1797.1.31, Himmelpfortgrund - 1828.11.19, Wien)

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暦の上では「秋」ですが、もうしばらくは「夏」の名残を感じながら過ごすことになるのでしょう。
せめて気分だけでも「秋」を味わうために、シューベルトのこの曲を聴き比べしたいと思います。

このシューベルトの歌曲「秋」については、以前投稿した記事で触れていますので、よろしければリンク先をご覧ください。
 こちら

私がはじめてシューベルトの「秋」という歌曲を聴いたのは、おそらく1980年代前半にF=ディースカウがブレンデルとPHILIPSレーベルに録音したシューベルト歌曲集のLPだったと思います。
そこで聴いたシューベルトの音楽は、ちょうど歌手人生の秋の時期を歩んでいた(ように感じられた)F=ディースカウの寂れたような声質も相俟って、印象に残りました。

この6節からなるレルシュタープの詩の2節ずつをまとめて1つにして、全部で3節からなる有節歌曲として作曲されました。
最後の2行を繰り返すのですが、繰り返された時の1行目最後の2音節が急激に上昇する箇所はぐっと引き寄せられます(Blüten, Hoffnung, Rosen)。

ピアノパートの絶え間ないトレモロが寂寥感を強調し、聞き手を秋の風吹くうら寂しい情景に連れて行きます。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

これは名演です!F=ディースカウもムーアも気持ちの入った演奏で、惹きつけられます。

●ヘルマン・プライ(BR) & フィリップ・ビアンコニ(P)
Hermann Prey(BR) & Philippe Bianconi(P)
 こちら(これは埋め込み出来ない動画なので、リンクを貼っておきます。)
80年代に「白鳥の歌」の一環として録音された音源。速めのテンポで円熟期のプライが諦観よりもむしろ生の感情を素直に歌っていて、胸に染みます。ビアンコニも見事な描写力です。

●マティアス・ゲルネ(BR) & クリストフ・エッシェンバッハ(P)
Matthias Goerne(BR) & Christoph Eschenbach(P)

楽譜が演奏と共に映されています。ゲルネの深みのある弾力のある声が秋のもの悲しさを見事に表現しています。エッシェンバッハもさすがのうまさです。

●クリスティアン・ゲルハーエル(BR) & ゲロルト・フーバー(P)
Christian Gerhaher(BR) & Gerold Huber(P)

2014年録音。ゲルハーエルの明晰なディクションがここでも生きています。フーバーは抑揚の付け方が細やかでいい演奏です。

●クリスティアーネ・カルク(S) & ブルクハルト・ケーリング(P)
Christiane Karg(S) & Burkhard Kehring(P)

2009年録音。女声が歌うとまた違った雰囲気になります。彼女はかなりドラマティックな起伏を盛り込んで歌っていますね。ケーリングも歌に合わせた協調ぶりです。

●クリストフ・プレガルディアン(T) & アンドレアス・シュタイアー(P)
Christoph Prégardien(T) & Andreas Staier(P)

2008年録音。ここで注目すべきなのは、プレガルディアンが装飾を付けて歌っていることです。当時、シューベルトと共に彼のリートを歌ったフォーグルはかなり装飾を付けて歌ったらしく、それを意識した試みだと思われます。

●ピアノ伴奏のみ(Hye-Kyung Chung)(P)

トレモロを聴いているだけで肌寒い情景が目に浮かびます。速めのテンポで演奏されています。

【参考】管弦楽編曲版(ケヴィン・ハルピン編曲)
Orchestral arrangement by Kevin Halpin - strings, woodwinds and timpani.

様々な音色で、秋をドラマティックに描いています。面白い試みだと思います。

【参考】フランツ・リストによる同じテキストによる歌曲(グンドゥラ・ヤノヴィツ(S) & アーウィン・ゲイジ(P))
Liszt: Es rauschen die Winde (Gundula Janowitz(S) & Irwin Gage(P))

1977年ライヴ録音。同じ詩とは思えないほど、リストの音楽は濃厚で劇的です。

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シューベルト「あなたは安らぎ(Du bist die Ruh) D 776」を聴く

Du bist die Ruh, D 776
 あなたは安らぎ

Du bist die Ruh,
Der Friede mild,
Die Sehnsucht du,
Und was sie stillt.
 あなたは安らぎ、
 穏やかな平安、
 あなたは憧れ、
 そして憧れを鎮めるもの。

Ich weihe dir
Voll Lust und Schmerz
Zur Wohnung hier
Mein Aug' und Herz.
 私はあなたに、
 喜びと苦しみでいっぱいにして、
 この住まいに
 わが瞳と心を捧げよう。

Kehr' ein bei mir,
Und schließe du
Still hinter dir
Die Pforten zu.
 私のもとを訪ねておくれ、
 そして
 そっとあなたの後ろの
 戸を閉めておくれ。

Treib andern Schmerz
Aus dieser Brust.
Voll sei dies Herz
Von deiner Lust.
 他の苦しみを
 この胸から追い出しておくれ。
 この心を
 あなたの喜びでいっぱいにしておくれ。

Dies Augenzelt
Von deinem Glanz
Allein erhellt,
O füll' es ganz.
 この瞳の天幕は
 あなたの輝きだけに
 照らされている。
 おお、その輝きで瞳を満たしておくれ。

詩:Friedrich Rückert (1788-1866)
曲:Franz Schubert (1797-1828)

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※シューベルトによる詩句の繰り返し箇所に[ ]を付与しています。最終節はまるまる繰り返しています。

Du bist die Ruh,
Der Friede mild,
Die Sehnsucht du,
Und was sie stillt.

Ich weihe dir
Voll Lust und Schmerz
Zur Wohnung hier
Mein Aug' und Herz.
[Mein Aug' und Herz.]

Kehr' ein bei mir,
Und schließe du
Still hinter dir
Die Pforten zu.

Treib andern Schmerz
Aus dieser Brust.
Voll sei dies Herz
Von deiner Lust.
[Von deiner Lust.]

Dies Augenzelt
Von deinem Glanz
Allein erhellt,
O füll' es ganz.
[O füll' es ganz.]

[Dies Augenzelt]
[Von deinem Glanz]
[Allein erhellt,]
[O füll' es ganz.]
[O füll' es ganz.]

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シューベルトはリュッケルトの詩による独唱歌曲を5曲つくりました。
その中でもとりわけ美しい「あなたは安らぎ(「君はわが憩い」などの訳でも知られています)」はよく歌われ、録音も多い名曲です。
テキストは「弱強弱強」のリズムで統一され、奇数行同士、偶数行同士で例外なく脚韻を踏んでいます。
簡潔で短い言葉を選んだリュッケルトの詩に、シューベルトは基本的に2行ずつを1つのフレーズにまとめ、時に詩行を繰り返すのですが、最終節はまるまる繰り返し、強調しています。
この最終節の繰り返し(メロディーは基本的に一緒ながら部分的に絶妙に変化させています)をどのように歌い、弾くのか、演奏家によって解釈の違いが出やすいところで、聞きどころの一つとも言えると思います。
テンポ設定も演奏家の個性が出やすいでしょう。

詩の朗読(Susanna Proskura)

リュッケルトの詩はあっという間に終わってしまいますが、シューベルトは彼の楽想を完成させる為に多くの詩行を繰り返しました。オリジナルの詩の朗読をお聞きください。

Hermann Prey(BR) & Leonard Hokanson(P)
ヘルマン・プライ(BR) & レナード・ホカンソン(P)

ここでのプライは神がかっていると思います。まさに"Ruh(安らぎ)"を感じさせる美声であり、彼の最高の名唱のひとつではないでしょうか。ホカンソンも温かい演奏です。

Matthias Goerne(BR) & Helmut Deutsch(P)
マティアス・ゲルネ(BR) & ヘルムート・ドイチュ(P)

2008年録音。たっぷりしたテンポで完璧なメロディーの弧を描くゲルネの歌唱に聞きほれてしまいます。ドイチュの磨きぬかれたピアノの美音も最高です。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)

1965年録音。F=ディースカウの歌唱は心がこもっていて、どこをとっても完璧な素晴らしさです。ムーアも歌の意図を汲んだ名演奏です。

Elly Ameling(S) & Dalton Baldwin(P)
エリー・アーメリング(S) & ドルトン・ボールドウィン(P)

絶妙なコントロールを貫きながら、自然さを失わないアーメリングの凄さをあらためて感じさせられました。ただ、最終節の2回目の繰り返しでの"deinem"を1回目と同じメロディーで歌っているのは彼女には珍しいミスでしょう。

Barbara Bonney(S) & Geoffrey Parsons(P)
バーバラ・ボニー(S) & ジェフリー・パーソンズ(P)

1994年録音。最後の節の2回目の繰り返しで"erhellt"を絞り込む箇所のボニー、素晴らしいです!

Christian Gerhaher(BR) & Gerold Huber(P)
クリスティアン・ゲアハーエル(BR) & ゲロルト・フーバー(P)

2005年録音。ディクションの明晰さとレガートの美しさを両立しているゲアハーエルに脱帽です。フーバーも静謐さの中に彼らしいドラマを盛り込んでいます。

ピアノ伴奏のみ(John Sheaによる演奏)

音楽的なとても優れた演奏だと思います。演奏が動画で見られるのはいいですね。ぜひ演奏に合わせて歌ってみて下さい。

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オランダの放送局録音の「冬の旅(Winterreise) D 911」5種

オランダの放送局"Radio 4"は過去から最近にいたるまでの膨大な録音コレクションの一部を聞けるようにしていて、大変有難いのですが、シューベルトの「冬の旅」全24曲を様々な演奏家の録音で聞けるようにしてありましたので、それぞれのサイトのリンクを貼っておきます(リンク先の上方左側の紫の三角をクリックすると再生されます)。
皆さんはどの「冬の旅」を聞きますか?

●ヴォルフガング・ホルツマイア(BR) & イモジェン・クーパー(P)
Wolfgang Holzmair(BR) & Imogen Cooper(P)
録音:13 November 2001, Concertgebouw (コンセルトヘバウ)
時間:1:08:36
 こちら

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & アルフレット・ブレンデル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Alfred Brendel(P)
録音:29 June 1984, Concertgebouw (コンセルトヘバウ)
時間:1:19:08
 こちら

●ロベルト・ホル(BSBR) & コンラート・リヒター(P)
Robert Holl(BSBR) & Konrad Richter(P)
録音:19 January 1981, Concertgebouw, kleine zaal (コンセルトヘバウ, 小ホール)
時間:43:23 + 36:35
 こちら

●ベルナルト・クライセン(BR) & ノエル・リー(P)
Bernard Kruysen(BR) & Noël Lee(P)
録音:22 February 1978, Concertgebouw (コンセルトヘバウ)
時間:39:05 + 30:49
 こちら

●ヘルマン・シャイ(BSBR) & フェーリクス・ドゥ・ノーブル(P)
Hermann Schey(BSBR) & Felix de Nobel(P)
録音:16 February 1966, Studio
時間:1:13:08
 こちら

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シューベルト「秘めごと(Geheimes) D 719」を聴く

Geheimes, D 719
 秘めごと

Über meines Liebchens Äugeln
Stehn verwundert alle Leute;
Ich, der Wissende, dagegen
Weiß recht gut was das bedeute.
 ぼくの恋人の眼差しについて
 人々はみな首をかしげている。
 その一方で、訳知りのぼくは
 どういう意味なのかよく分かっているのだ。

Denn es heißt: ich liebe diesen,
Und nicht etwa den und jenen.
Lasset nur ihr guten Leute
Euer Wundern, euer Sehnen!
 というのも、その眼差しは「私が愛しているのはこの人で、
 こちらさんでもあちらさんでもないのよ」ということなのだ。
 善良なきみたちよ、
 いぶかしがったり、憧れたりするのをやめるがいい!

Ja, mit ungeheuren Mächten
Blicket sie wohl in die Runde;
Doch sie sucht nur zu verkünden
Ihm die nächste süße Stunde.
 そう、とてつもない引力で
 彼女はあたりを見回している。
 だが、彼女が告げようとしているのはただ
 この後のぼくとの甘い時間のことなのだ。

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832)
曲:Franz Schubert (1797-1828)

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ゲーテの詩による有名なシューベルトの歌曲です。
詩の主人公の男性は、周囲の男たちを魅了している女性が実は自分の恋人であることに優越感を感じているのでしょうか。
二人の間だけの秘め事として、他の男性たちには分からないサインを恋人の女性が主人公に送っているようです。
シューベルトの音楽は、ピアノパートが一貫して2つの和音によるリズムを繰り返します。
恋人が目配せする様を模しているかのように感じられます。

詩の朗読(Susanna Proskura)

シューベルトのテキストと多少違うところがあるので、ゲーテの原詩によるのかもしれません。0:45頃に朗読が終わりますが、その後1:04まで止まりませんので、お手数ですが終わったら止めて下さい。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)

1959年録音。2人の大家の演奏している動画が残っているだけでも有難いことです。演奏は言うまでもなく隅々まで行き届いた素晴らしさです!

Hermann Prey(BR) & Gerald Moore(P)
ヘルマン・プライ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)

1960年録音。プライは声も表現も見事に脂が乗っていて、聞いていて楽しい気分にさせてくれます。ムーアの明晰なタッチも魅力的です。

Hans Hotter(BSBR) & Gerald Moore(P)
ハンス・ホッター(BSBR) & ジェラルド・ムーア(P)

1957年録音。ホッターの温かみのある深い声はただただ聞きほれてしまいます。細やかな表情もさすがです!

Anne Sofie von Otter(MS) & Bengt Forsberg(P)
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(MS) & ベングト・フォシュベリ(P)

オッターのディクションの美しさと知的なアプローチが印象的です。フォシュベリもオッターの解釈を把握した演奏です。

Matthias Goerne(BR) & Eric Schneider(P)
マティアス・ゲルネ(BR) & エリク・シュナイダー(P)

2014年録音。ゲルネはディースカウの弟子ですが、師匠よりももっと自然な表現で、柔らかい感触が素晴らしいです。シュナイダーは特定の音を若干強調することで歌とデュエットしているような効果をあげています。

Elisabeth Schumann(S) & Elizabeth Colemann(P)
エリーザベト・シューマン(S) & エリザベス・コールマン(P)

1936年録音。往年の名歌手シューマンの表情の豊かさといったら!

Bruno Laplante(BR) & John Newmark(P)
ブリュノ・ラプラント(BR) & ジョン・ニューマーク(P)

1973年2月録音。ドイツリートの商業用録音を(おそらく)残さなかったラプラントの珍しいドイツリート歌唱です。

Ileana Cotrubas(S) & Erik Werba(P)
イレアナ・コトルバシュ(S) & エリク・ヴェルバ(P)

1978年録音。コトルバシュはあまりリートの印象がないですが、こうして聞いてみると、彼女特有の甘い美声に魅了されますね。

伴奏パートのみ(演奏者不明)

この一見簡素な伴奏を聴くと、いかにシューベルトが選ばれた音で感情の機微をあらわす天才だったかをあらためて感じさせてくれます。

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