シューベルト「酒神賛歌(Dithyrambe, D 801)」を聴く

Dithyrambe, D 801(Op. 60 No. 2)
 酒神賛歌

Nimmer, das glaubt mir,
Erscheinen die Götter,
Nimmer allein.
Kaum daß ich Bacchus den lustigen habe,
Kommt auch schon Amor, der lächelnde Knabe,
Phöbus der Herrliche findet sich ein.
      Sie nahen, sie kommen
      Die Himmlischen alle,
      Mit Göttern erfüllt sich
      Die irdische Halle.
 私を信じなさい、決して
 神々は
 一人では現れないだろう。
 陽気なバッコスがいると思ったら
 微笑む子供アモル(*恋愛の神。ギリシャ神話のEros)もすでに来ていて、
 立派なポイボス(*Apolloの呼び名の一つ)も姿を現す。
  彼らは近づき、やって来る、
  天上の神々はみな。
  神々で
  この世の会堂はいっぱいになる。

Sagt, wie bewirth' ich,
Der Erdegeborne,
Himmlischen Chor?
Schenket mir euer unsterbliches Leben,
Götter! Was kann euch der Sterbliche geben?
Hebet zu eurem Olymp mich empor!
      Die Freude, sie wohnt nur
      In Jupiters Saale,
      O füllet mit Nektar,
      O reicht mir die Schale!
 教えてくれ、
 地上に生まれた私はいかにもてなせばよいのか、
 天の合唱団を?
 あなたがたの不死の生命を私に贈ってくれ、
 神々よ!死すべき者はあなたがたに何を与えられよう?
 オリンポス山に私を引き上げておくれ!
  喜び、それはただ
  ユピテル(*ギリシャ神話のZeusと同一視される)の広間に住む。
  おお、ネクタル(*不老長寿の美酒)で満たせ、
  おお、私に杯を手渡してくれ!

Reich ihm die Schale!
O schenke dem Dichter,
Hebe, nur ein, schenke nur ein!
Netz' ihm die Augen mit himmlischem Thaue,
Daß er den Styx, den verhaßten, nicht schaue,
Einer der Unsern sich dünke zu sein.
      Sie rauschet, sie perlet,
      Die himmlische Quelle,
      Der Busen wird ruhig,
      Das Auge wird helle.
 彼に杯を手渡してくれ!
 おお、その詩人に酒をついで、
 ヘーベ(*青春の美の女神)よ、さあついで、ついでおくれ。
 天上の露で彼の両目を濡らせ、
 忌むべきステュクス(*ギリシャ神話で「冥界の川」)を彼が見ることがないように、
 私たちのうちの一人だと思いこむように。
  さざめき、したたり落ちるのは
  天上の泉だ。
  胸は安らぎ、
  目は明るくなる。

詩:Friedrich von Schiller (1759 - 1805), "Dithyrambe", written 1796, first published 1797
曲:Franz Peter Schubert (1797 - 1828), "Dithyrambe", op. 60 (Zwei Lieder) no. 2, D 801 (1826), published 1826, first performed 1828

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タイトルのDithyrambe(ディテュランベ)というのは、グレアム・ジョンソンの解説によれば、紀元前7世紀のギリシャで生まれた酒の神ディオニュソス(ローマ神話のバッコス)への賛歌とのことです。詩の中に神様の名前が沢山出てきますね。

シューベルトはシラーのこのテキストに2回作曲しました。
1回目は1813年頃にテノール、バスと四部合唱、ピアノという編成の未完の作品(D 47)で、2回目が今回取り上げる1826年作曲・出版の独唱曲(D 801, Op. 60/2)です。

はじめてこの曲を聴いたのはF=ディースカウ&ムーアの全集の録音でしたが、聴いてすぐに魅了されたのを覚えています。
躍動的かつ情熱的で聴いていて楽しいです。祝祭的な華やかさに聴く者も興奮させられます。
歌声部がヘ音譜表で書かれている為、低声歌手によって歌われることが多いですが、高声歌手でも聴いてみたいものです(低いイ音(A)を出さなければなりませんが)。
なお、この曲の一番最後に弾かれるピアノ後奏ですが、初版は前奏と同じ形ですが、旧シューベルト全集では前奏よりも短く上昇していく形に変更されています(下記に引用した録音では、モル&ガルベンが旧シューベルト全集版で演奏しています)。どのタイミングで誰が変更したのか、おそらく新シューベルト全集の校訂記録を見れば何か載っているのではないかと思います。いつになるか分かりませんが、後日何か分かりましたら追記します。

6/8拍子
Geschwind und feurig (速く、燃えるように激しく)
イ長調(A-dur)

●詩の朗読(Susanna Proskura (speaker))

ソプラノ歌手ズザンナ・プロスクラが朗読しています。

●クルト・モル(BSBR), コルト・ガルベン(P)
Kurt Moll(BSBR), Cord Garben(P)

モルの深々としていながら重くなり過ぎない声がとても生きた歌唱だと思います。ガルベンのパリパリしたタッチがここで効果的だと思います。一番最後のピアノ後奏は旧シューベルト全集版で演奏されています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

F=ディースカウの雄弁な語り口が素晴らしく、聴いていて体が自然に動いてしまうほどです。ムーアの安定した演奏も非常に魅力的です。

●ロベルト・ホル(BSBR), デイヴィッド・ラッツ(P)
Robert Holl(BSBR), David Lutz(P)

バスバリトンのホルの響きがこの歌によく合っているように思います。

●ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)
Gérard Souzay(BR), Dalton Baldwin(P)

スゼーの気品のある歌唱がこの曲の新たな魅力を引き出しているように思います。スゼーのドイツリートは本当に魅力的で大好きです!ボールドウィンの弾むリズムが印象的です。

●クリスタ・ルートヴィヒ(MS), ジェラルド・ムーア(P)
Christa Ludwig(MS), Gerald Moore(P)

これまでお蔵入りのままで最近日の目を見た音源のようです。ルートヴィヒの強靭さも兼ね備えた歌唱はとても魅力的でした。

●自動ピアノの演奏(歌声部も含み、MIDI音源と思われます)

歌声部の正確な音程を知るのにうってつけだと思います。

他にエレナ・ゲルハルト(Elena Gerhardt)(MS) & ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)(P)、ゲオルク・ハン(Georg Hann)(BS) & ミヒャエル・ラウハイゼン(Michael Raucheisen)(P)、ヴォルフガング・ホルツマイア(Wolfgang Holzmair)(BR) & ジェラール・ヴィス(Gérard Wyss)(P)、マルティン・ブルンス(Martin Bruns)(BR) & ウルリヒ・アイゼンローア(Ulrich Eisenlohr)(P)、トマス・メリオランザ(Thomas Meglioranza)(BR) & 内田怜子(Reiko Uchida)(P)、ティロ・ダールマン(Thilo Dahlmann)(BR) & チャールズ・スペンサー(Charles Spencer)(P)の録音を動画サイトで聴くことが出来ます。

ちなみにHyperionのシューベルト・エディションではブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender)(MS)&グレアム・ジョンソン(Graham Johnson)(P)が録音しています。
https://www.hyperion-records.co.uk/dw.asp?dc=W2209_GBAJY9101118

未完の第1作(D 47)については、Hyperionの歌曲全集で補筆版が録音されており、下記リンク先で少しだけ試聴できます。
https://www.hyperion-records.co.uk/tw.asp?w=W1792

[参照]
The LiederNet Archive: Dithyrambe

Schubertlied.de

Wikipedia: ディテュランボス

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シューベルト「緑野の歌(Das Lied im Grünen, D 917)」を聴く

Das Lied im Grünen, D 917, Op. posth. 115 no. 1
 緑野の歌

1:
Ins Grüne, ins Grüne!
Da lockt uns der Frühling der liebliche Knabe,
Und führt uns am blumenumwundenen Stabe,
Hinaus, wo die Lerchen und Amseln so wach,
In Wälder, auf Felder, auf Hügel, zum Bach,
Ins Grüne, ins Grüne.
 緑野へ、緑野へ!
 春という愛らしい少年がわれわれをそこへ誘い、
 花を巻き付けたステッキでわれわれを導く。
 出かけよう、ひばりやつぐみがとても元気な場所へ、
 森へ、野原へ、丘へ、小川へ、
 緑野へ、緑野へ。

2:
Im Grünen, im Grünen!
Da lebt es sich wonnig, da wandeln wir gerne,
Und heften die Augen dahin schon von ferne;
Und wie wir so wandeln mit heiterer Brust,
Umwallet uns immer die kindliche Lust,
Im Grünen, im Grünen.
 緑野で、緑野で!
 そこでは楽しく暮らしたり、喜んで歩き回ったりする。
 そしてすでに遠くからそちらへと見やる。
 そして陽気な気分でわれわれは歩き回ると、
 子供のような喜びがいつもわれわれを包む。
 緑野で、緑野で。

3:
Im Grünen, im Grünen,
Da ruht man so wohl, empfindet so schönes,
Und denket behaglich an Dieses und Jenes,
Und zaubert von hinnen, ach! was uns bedrückt,
Und alles herbey, was den Busen entzückt,
Im Grünen, im Grünen.
 緑野で、緑野で、
 ここでくつろぎ、こんなに素晴らしいものを感じ、
 のんびりとあれこれ考える。
 ここから魔法をかける、ああ!われわれの気分を滅入らせるものに。
 この胸を魅了するものはすべて集まれ、
 緑野で、緑野で。

4:
Im Grünen, im Grünen, [im Grünen,]
Da werden die Sterne so klar, die die Weisen
Der Vorwelt zur Leitung des Lebens uns preisen.
Da streichen die Wölkchen so zart uns dahin,
Da heitern die Herzen, da klärt sich der Sinn,
Im Grünen, im Grünen.
 緑野で、緑野で、
 そこでは星々はとても澄んでいて、
 太古の世界の歌がわれわれの人生を統率するものとして星を讃える。
 小さな雲の数々はやさしくあちらへと動き、
 心は明るくなり、感覚は澄みわたる、
 緑野で、緑野で。

5:
Im Grünen, im Grünen,
Da wurde manch Plänchen auf Flügeln getragen,
Die Zukunft der grämlichen [Ansicht (NGA: Aussicht)] entschlagen.
Da stärkt sich das Auge, da labt sich der Blick,
[Sanft wiegen die Wünsche sich hin und zurück,
(NGA: Leicht tändelt die Sehnsucht dahin und zurück,)]
Im Grünen, im Grünen.
 緑野で、緑野で、
 多くの計画が翼に乗って運ばれた、
 不愉快な[光景(※NGAの歌詞も同じような意味)]の未来は捨て去り
 そこで目は強くなり、まなざしによって元気になる。
 [望みはやさしく揺れて行き来する、
 (NGA: 憧れは行き来しながらすぐにたわむれる)]
 緑野で、緑野で。

6:
Im Grünen, im Grünen,
Am Morgen, am Abend, in traulicher Stille,
[Entkeimet (NGA: Da wurde)] manch Liedchen und manche Idylle,
[Und Hymen oft kränzt den poetischen Scherz,
(NGA: Gedichtet, gespielt, mit Vergnügen und Schmerz,)]
Denn leicht ist die Lockung, empfänglich das Herz
Im Grünen, im Grünen.
 緑野で、緑野で、
 朝に、夕方に、心地よい静けさの中、
 かなり多くの歌や牧歌[が生まれ(NGA: となり)]、
 [そして婚礼の歌はしばしば詩的な冗談に花冠をかぶせる。
 (NGA: 喜びや苦しみを伴って詩作したり、遊んだりした。)]
 というのも、誘惑はたやすく、心は感じやすいから、
 緑野で、緑野で。

7:
O gerne im Grünen
Bin ich schon als Knabe und Jüngling gewesen,
Und habe gelernt, und geschrieben, gelesen,
Im Horaz und Plato, dann Wieland und Kant,
Und glühenden Herzens mich selig genannt,
Im Grünen, im Grünen.
 おお、緑野にいるのが
 すでに青少年の時に好きだった、
 私は学んだり、手紙を書いたり、本を読んだりしたものだ、
 ホラティウスやプラトン、それからヴィーラントやカントを。
 そして燃え上がる心の私を幸せだと言った。
 緑野で、緑野で。

8:
Ins Grüne, ins Grüne!
Laßt heiter uns folgen dem freundlichen Knaben!
Grünt einst uns das Leben nicht fürder, so haben
Wir klüglich die grünende Zeit nicht versäumt,
Und, wann es gegolten, doch glücklich geträumt,
Im Grünen, im Grünen.
 緑野へ、緑野へ!
 親切な少年のあとを陽気について行こう!
 われわれの人生が今後いつか若返ることはないとしても、
 賢明にも若い時期をなおざりにはしなかった。
 そして若さの効力があった時には、幸せを夢見ていたものだった。
 緑野で、緑野で。

※(NGA: )内は、新シューベルト全集(Neue Gesamtausgabe)で採用されている歌詞

詩:Johann Anton Friedrich Reil (1773-1843), "Das Lied im Grünen", written 1827, first published 1827
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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ライルの詩は何度かの改変があり、この曲の出版物にもそれが反映されているとのことで、新シューベルト全集(Neue Gesamtausgabe)で採用されている歌詞は上記では(NGA: )として区別しました(現在聴ける録音のほとんどが旧全集の歌詞で歌われています)。また、第7節はシューベルト自身のあずかり知らない詩節とのことです。

曲は変形有節形式といってよいでしょう。基本的にはほぼ同じ楽想ながら、時に変化が加わります。例えば第3-4節や第6-7節は少し変化させていますし、最後の第8節を繰り返す箇所はコーダのように終結に向かっていく感じがします。しかし、それらが天衣無縫の自然さでつながっていて、シューベルトの器楽曲などに見られる息の長いメロディーが微妙な光加減を変えながら続いていく感覚に近いと思います。
亡くなる前年に書かれた作品だけあって無垢でありながらも素晴らしい輝きを放っていると思います。
最後の節を繰り返すところで"Grünt einst uns das Leben nicht fürder"の詩行に陰りを見せるところとその後すぐに元の明るさに戻っていくところは胸をつかまれますね。こういうところ本当に最高です!最後の方の"golten"の"gol-"では歌手は2点イ音(A)を出さなければならず、歌手たちもここは気合いを入れて歌っている気がします。歌声部は基本的に長-短-短のリズムなのが特徴的で、例えば同じ晩年の歌曲「星(Die Sterne, D 939)」でも同様のリズムがあらわれます。

第1節(音部記号と調号はすべての節で共通です)

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第2節

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第3節

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第4節

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第5節

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第6、7節

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第8節

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●エリー・アーメリング(S) & ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S) & Dalton Baldwin(P)

1-8節。旧全集の歌詞で歌っています。アーメリングの情緒豊かで細やかな歌を聴いていると5分が一瞬に感じられるほどです。ボールドウィンも見事に一体となっています。

●マーガレット・プライス(S) & ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Margaret Price(S) & Wolfgang Sawallisch(P)

1-8節。旧全集の歌詞で歌っています。涼やかな風のようなプライスの美声が春の心地よさを感じさせてくれる名唱でした。サヴァリシュのくっきりとした枠組みのピアノが雄弁に語っていて素晴らしかったです。

●エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S) & エトヴィン・フィッシャー(P)
Elisabeth Schwarzkopf(S) & Edwin Fischer(P)

1-5,8節。旧全集の歌詞で歌っています。シュヴァルツコプフが歌うと奥行きのある気品が感じられますね。最終節の陰りの表現が秀逸でした!

●マティアス・ゲルネ(BR) & ヘルムート・ドイチュ(P)
Matthias Goerne(BR) & Helmut Deutsch(P)

1-8節。旧全集の歌詞で歌っています。ゲルネの声で聴くと大地に包まれているような安心感があります。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

1-8節。旧全集の歌詞で歌っています。軽快で語るように歌うF=ディースカウの歌唱も素敵です。

●ダニエラ・ズィントラム(MS) & ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Daniela Sindram(MS) & Ulrich Eisenlohr(P)

1-6,8節。新全集で採用された歌詞で歌っています(私がこの機会にまとめて聴いた様々な音源の中で、唯一新全集の歌詞で歌っていました)。ズィントラムは深みのある強めの声をコントロールしながら歌っています。影のある詩行を歌う時に特に効果的に感じました。

●ピアノパートのみ(Giorgia Turchi, pianist)

ピアノパートだけで聴いてもこのまま即興曲の中の1曲と錯覚しそうです。

他にベンヤミン・アップル(Benjamin Appl)(BR) & グレアム・ジョンソン(Graham Johnson)(P)のウィグモア・ライヴ(1-8節)は、この勢いに乗ったバリトンの清々しい歌唱と、様々なフレーズを引き立たせるジョンソンの老練なピアノがとても良かったです。グンドゥラ・ヤノヴィツ(Gundula Janowitz)(S) & チャールズ・スペンサー(Charles Spencer)(P)の録音(1-6,8節)も軽快なテンポで、円熟期らしい余裕とつやつやした美声を味わえます。シェリル・ステューダー(Cheryl Studer)(S) & アーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)(P)(1-8節)やエディト・ヴィーンス(Edith Wiens)(S) & ルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)(P)(1-4,8節)の録音もあります。

往年の演奏でいえば、エリーザベト・シューマン(Elisabeth Schumann)(S) & カール・アルヴィン(Karl Alwin)(P)(1,3,5,8節)、エレナ・ゲルハルト(Elena Gerhardt)(MS) & ハロルド・クラクストン(Harold Craxton)(P) (1,3,5,8節)、イルムガルト・ゼーフリート(Irmgard Seefried)(S) & エリク・ヴェルバ(Erik Werba)(P)(1,3,5,8節)やリタ・シュトライヒ(Rita Streich)(S) & エリク・ヴェルバ(P)(1,3,5,8節)の録音もありますので、機会がありましたら是非聴いてみて下さい。

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シューベルト「ヒッポリュトスの歌(Hippolits Lied, D890)」を聴く

Hippolits Lied, D890
 ヒッポリュトスの歌

Laßt mich, ob ich auch still verglüh',
Laßt mich nur stille gehn;
Sie seh' ich spät, Sie seh' ich früh
Und ewig vor mir stehn.
 放っておいて、私が静かに燃え尽きようとも。
 ただ静かに行かせてほしい。
 遅かろうが早かろうが彼女に会い、
 永遠に私の前に立つのだ。

Was ladet ihr zur Ruh' mich ein?
Sie nahm die Ruh' mir fort;
Und wo Sie ist, da muß ich seyn,
Hier sey es oder dort.
 何できみたちは私を憩いに誘うのか?
 彼女は憩いを私から奪ってしまった。
 そして彼女のいるところに私は行かねばならぬ、
 ここだろうが、あちらだろうが。

Zürnt diesem armen Herzen nicht,
Es hat nur einen Fehl:
Treu muß es schlagen bis es bricht,
Und hat deß nimmer Hehl.
 この哀れな心を恨むな、
 それはただ一つの欠点がある。
 破れるまで忠実に打ち続けなければならない、
 決して隠すことなく。

Laßt mich, ich denke doch nur Sie;
In Ihr nur denke ich;
Ja! ohne Sie wär' ich einst nie
Bei Engeln ewiglich.
 放っておいて、私はただ彼女のことを思っている、
 彼女の中でだけ私は思う。
 そう!彼女がいなければいつの日か
 天使のそばに永遠にいることは出来ないだろう。

Im Leben denn und auch im Tod',
Im Himmel, so wie hier,
Im Glück und in der Trennung Noth
Gehör' ich einzig Ihr.
 生きていようが、死んでいようが、
 天国にいようが、ここと同じだ。
 幸せの中だろうが、別れの苦しみの中だろうが、
 私はただ彼女のもの。

詩:Georg Friedrich Conrad Ludwig Müller von Gerstenbergk (1778-1838)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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有名な哲学者アルトゥア・ショーペンハウアーの母ヨハンナ・ショーペンハウアー(Johanna Schopenhauer)の小説にこの詩が登場する為、ヨハンナの作と思われることが多かったようですし、グレアム・ジョンソンによればシューベルト自身もそう信じていた可能性があるようです。
ヨハンナはこの「ヒッポリュトスの歌」が含まれる『ガブリエーレ(Gabriele)』の序文に「この本に含まれる詩は私の作ではありません(daß daher die in diesem Buche enthaltnen Gedichte nicht von mir sind.)」と明記しています。
実際の作者はゲオルク・フリードリヒ・コンラート・ルートヴィヒ・ミュラー・フォン・ゲルステンベルクという人です。
父の姓がミュラー、母の姓がフォン・ゲルステンベルクだそうです。

ヒッポリュトスというのはギリシャ神話の登場人物で、テーセウスとアンティオペー(またはヒッポリュテーかメラニッペー)の子です。狩猟・貞潔の女神アルテミスと森に住んでいました。アプロディーテーの策略により継母パイドラーから求愛されますが、断ったことでパイドラーは遺書を残して自殺し、その為にテーセウスの呪いを受け、ヒッポリュトスは戦車を曳いていた馬に轢かれて亡くなります。

 (参考:Wikipedia)

このゲルステンベルクの詩でヒッポリュトスが愛した女性は誰のことなのでしょう。アルテミスはヒッポリュトスにとって恋愛の対象ではなく崇拝の対象のようです。
グレアム・ジョンソン(Graham Johnson)によると、ヒッポリュトスを題材にしたジャン・ラシーヌ(Jean Racine)の作品『フェードル(Phèdre)』にアリシー(Aricie)というキャラクターが登場しており、そこではアリシーへの愛をヒッポリュトスが父親に打ち明けているそうです。

 (参考:グレアム・ジョンソンの解説)

このシューベルトの作品をはじめて聴いたのはF=ディースカウが1980年代にブレンデルと録音したCDでした。ピアノの弱拍に絶えずあらわれるプラルトリラー(元の音から2度上の音に行き、また元の音に戻る装飾音)が特徴的で一瞬のうちに魅了されたことを思い出します。

曲はA-B-A-B-A'のほぼ有節形式といってよいでしょう。最後のA'は最後の2行を繰り返すのですが、"Gehör'"の"hör"の音がこれまでの2点ホ音(E)より1音高い2点ヘ音(F)になって締めくくるところがなんとも心憎いと思います。私はここでぐっときてしまいます。

1826年7月作曲
2/2拍子
イ短調(a-moll)
Etwas langsam

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & アルフレート・ブレンデル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Alfred Brendel(P)

いい具合に枯れた当時のF=ディースカウの声が、この作品の雰囲気にぴったりはまっています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

ここでF=ディースカウはAの4行目の前打音付きの音(例えば第1節の"ewig")を「ホ-ニ」と八分音符で分けずに「ホ」の四分音符のみで歌っています(ブレンデルと共演の盤では「ホ-ニ」で歌っています)が、シューベルトの記譜ではこの歌い方も正しいようです(「音楽に寄せて」D547の"entzunden"も同様の例です)。最後の節の"Gehör'"の"hör"は装飾音ではなく、八分音符2つで記されているので、ここだけは八分音符2つがシューベルトの意図に沿うことになり、F=ディースカウもそのように歌っています。

●ズィークフリート・ローレンツ(BR) & ノーマン・シェトラー(P)
Siegfried Lorenz(BR) & Norman Shetler(P)

F=ディースカウやプライの次の世代のリート歌手として名前の挙がっていたローレンツの歌唱です。ディクションも歌唱も美しく素晴らしいと思います!

●マルクス・シェーファー(T) & ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Markus Schäfer(T) & Ulrich Eisenlohr(P)

シェーファーの真摯な歌いぶりもいいですね。アイゼンローアはプラルトリラーの弾きはじめを左手の音の前に出さず、同時に弾いていますが、また違った趣があります。

●イアン・ボストリッジ(T) & ジュリアス・ドレイク(P)
Ian Bostridge(T) & Julius Drake(P)

ウィグモア・ホールでのライヴ録音。曲に合わせたのかボストリッジの声がやや重めに感じられます。ドレイクがプラルトリラーを強調して弾いているのも印象的です。

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シューベルト「マリアの憐憫について(Vom Mitleiden Mariä, D 632)」を聴く

Vom Mitleiden Mariä, D 632
 マリアの憐憫について

Als bei dem Kreuz Maria stand,
Weh über Weh ihr Herz empfand,
Und Schmerzen über Schmerzen:
Das ganze Leiden Christi stand
Gedruckt in ihrem Herzen.
 マリアが十字架の前に立ったとき
 彼女の心が感じたのは、悲しみにつぐ悲しみ、
 苦痛につぐ苦痛。
 キリストのあらゆる苦悩が
 彼女の心を押しつぶした。

Sie ihren Sohn muß bleich und todt,
Und überall von Wunden roth,
Am Kreuze leiden sehen.
Gedenk, wie dieser bittre Tod
Zu Herzen ihr mußt' gehen!
 彼女は息子が青ざめて生気を失い、
 いたるところが傷で真っ赤になり
 十字架で苦しんだのを見なければならない。
 思い馳せよ、いかにこの辛い死が
 彼女の心へ向かわざるをえなかったか。

In Christi Haupt durch Bein und Hirn,
Durch Augen, Ohren, durch die Stirn
Viel scharfe Dornen stachen;
Dem Sohn die Dornen Haupt und Hirn
Das Herz der Mutter brachen.
 キリストの頭に、脚や脳を通じて、
 目、耳を通じて、額を通じて、
 多くの鋭いとげが刺さった。
 とげは息子の頭や脳を、
 そして母の心を砕いた。

詩:Friedrich von Schlegel (1772-1829)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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フリードリヒ・フォン・シュレーゲルの詩は、十字架上で息絶えた息子イエスキリストの姿を見た母マリアの悲痛な心情を描いています。

シューベルトの曲は有節形式で3節からなります。
歌声部、ピアノの右手、左手といった三つの声部がコラール風に進行していきます。
歌の音域は1オクターヴ内にすっぽり収まってしまいます。
グレアム・ジョンソンはC.P.E.バッハのゲレルト(Gellert: Geistliche Oden und Lieder, Wq. 194, H. 686)とクラーマー(Cramer: 42 Psalmen mit Melodien, Wq. 196, H. 733)の詩による歌曲をシューベルトが思い浮かべていたのではと指摘しています。

この曲の厳かで神々しい雰囲気は、静かにじわじわと訴えかけてきます。

2/2拍子
Langsam(ゆっくりと)
ト短調(g-moll)
28小節(1節分の小節数。全3節の有節形式)

歌声部の最高音:2点ト音(G)
歌声部の最低音:1点ト音(G)

作曲:1818年12月

●クリスティーネ・シェーファー(S) & アーウィン・ゲイジ(P)
Christine Schäfer(S) & Irwin Gage(P)

シェーファーの凛とした歌声が情景をくっきりと描き出していて素晴らしいです。ゲイジのピアノはヤノヴィツと共演の時もそうですが、第3節でタッチを強めて演奏し、彼の主張をそこに聴くことが出来ます。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

ここでは第3節は残念ながら省略されています。F=ディースカウのむらのない響きが静かな感銘を与えてくれます。ムーアが来日した際、畑中良輔氏が彼から「毎日バッハのコラールをさらう」という話を聞いてそれがムーアのレガートの秘訣なのではないかと思ったという記述をこの演奏を聴きながら思いました。

●ジビュラ・ルーベンス(S) & ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Sibylla Rubens(S) & Ulrich Eisenlohr(P)

細身のリリックなルーベンスの歌唱は、けなげなマリア様を想起させてくれます。

●ヴェルナー・クレン(T) & ジェラルド・ムーア(P)
Werner Krenn(T) & Gerald Moore(P)

第3節のとげの描写でクレンの悲痛な表現が迫ってきます。

●グンドゥラ・ヤノヴィツ(S) & アーウィン・ゲイジ(P)
Gundula Janowitz(S) & Irwin Gage(P)

ゆっくり目のテンポで一見クールで泰然としたヤノヴィツの歌唱はそれゆえにマリアの哀しみを自然に浮き立たせているようにも感じられます。

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シューベルトの誕生日に寄せて「ダンス(Der Tanz, D 826)」

Der Tanz, D 826
 ダンス

Es redet und träumet die Jugend so viel,
Von Tanzen, Galoppen, Gelagen,
Auf einmal erreicht sie ein trügliches Ziel,
Da hört man sie seufzen und klagen.
Bald schmerzet der Hals, und bald schmerzet die Brust,
Verschwunden ist alle die himmlische Lust,
"Nur diesmal noch kehr' mir Gesundheit zurück!"
So flehet vom Himmel der hoffende Blick!
 若者たちは多く語ったり夢見たりするものだ、
 ダンスやギャロップや酒盛りを。
 突然目標を達成したかのように錯覚したかと思えば
 溜息をついたり嘆いたりするのが聞こえる。
 首を痛めるかと思えば胸を痛め、
 天上の喜びはみな消え去った。
 「今度だけは健康が私に戻ってきますように!」
 このように天に希望の眼差しで懇願する!

Jüngst wähnt' auch ein Fräulein mit trübem Gefühl,
Schon hätte ihr Stündlein geschlagen.
Doch stand noch das Rädchen der Parze nicht still,
Nun schöner die Freuden ihr tagen
Drum Freunde, erhebet den frohen Gesang,
Es lebe die teure Irene noch lang!
Sie denke zwar oft an das falsche Geschick,
Doch trübe sich nimmer ihr heiterer Blick.
 最近気分が塞いだ女性に
 すでに最期の時が到来したのかと思い込んでいた。
 だが、運命の女神パルカの歯車は止まっていなかった、
 より素晴らしい喜びが彼女を照らした、
 だから友人たちよ、陽気な歌を歌おう、
 いとしいイレーネが長生きしますように!
 彼女は確かにしばしば誤った運命を考えてしまうが
 彼女の明るい眼差しが決して曇りませんように。

詩:Karl Kolumban Schnitzer von Meerau (1795-1854)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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今日はシューベルトの誕生日です!短いけれど印象的な「ダンス」という作品をご紹介したいと思います。

シューベルトの最期の年1828年に作曲されたソプラノ、アルト、テノール、バス、ピアノの編成による歌曲。重唱でも合唱でも演奏可能です。

Breitkopf & Härtel版のシューベルト全集の楽譜では歌詞が1節しか掲載されていませんので、1節のみ歌ったり、1節を2回繰り返す録音もありましたが、最近は2節まで歌う録音も出てきました。(新シューベルト全集の楽譜に第2節が掲載されているのかもしれませんね。こちらは未確認です。)

6/8拍子
ハ長調 (C-dur) 
Allegro giusto

●エリー・アーメリング(S), ジャネット・ベイカー(MS), ペーター・シュライアー(T), ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Elly Ameling(S), Janet Baker(MS), Peter Schreier(T), Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

1972年録音。第1節のみ。この豪華な顔ぶれ!生き生きとした演奏!この録音(Deutsche Grammophon)の存在を初めて知った時に狂喜したことを今でも覚えています。シューベルティアン5人の贅沢な録音です。

●ジビュラ・ルベンス(S), インゲボルク・ダンツ(A), マルクス・ウルマン(T), マルクス・シュミードル(BS), ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Sibylla Rubens(S), Ingeborg Danz(A), Marcus Ullmann(T), Marcus Schmidl(BS), Ulrich Eisenlohr(P)

全2節。2008年8月録音。NAXOSシューベルト歌曲全集の32巻収録。第2節の歌が終わった後に再度前奏を繰り返して終わっています。丁寧かつ新鮮で良かったです。

●ヨハネッテ・ゾーマー(S), エヒディユス四重唱団, アルテュール・スホーンデルヴルト(Fortepiano)
Johannette Zomer(S), Egidius Kwartet, Arthur Schoonderwoerd(Fortepiano)

全2節。フォルテピアノの味のある音色と、見事に溶け合った四重唱が非常に美しいです。

●アクサンテュス, エドゥアール・ギャルサン(P), ロランス・エキルベ(C)
Accentus, Edouard Garcin(P), Laurence Equilbey(C)

全2節。混声合唱団による演奏。1節と2節の間に間奏を入れないで演奏しています。合唱だとより奥行きが出ますね。とてもいいです。

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シューベルト「孤独な男(Der Einsame, D 800)」を聴く

Der Einsame, D 800, Op. 41
 孤独な男

Wann meine Grillen schwirren,
Bei Nacht, am spät erwärmten Herd,
Dann sitz' ich, mit vergnügtem Sinn,
Vertraulich zu der Flamme hin,
 [Dann sitz' ich, mit vergnügtem Sinn,
 Vertraulich zu der Flamme hin,]
So leicht, so unbeschwert.
 [So leicht, so unbeschwert.]
 我がこおろぎたちが
 夜、遅い時間に温まった暖炉のそばで鳴くとき、
 私は楽しい気持ちで
 炎に体を向けて打ち解けて座っている、
 こんなにも気楽に、これほど屈託なく。

Ein trautes, stilles Stündchen
Bleibt man noch gern am Feuer wach.
Man schürt, wann sich die Lohe senkt,
Die Funken auf, und sinnt und denkt:
Nun abermal ein Tag!
 [Nun abermal ein Tag!]
 くつろいだ静かな時間に
 火のそばで目を覚ましているのが好きなのだ、
 炎が小さくなると
 火を燃え上がらせて、思いにくれては、考える。
 こうしてまた一日が過ぎる!

Was Liebes oder Leides
Sein Lauf für uns daher gebracht,
 [Was Liebes oder Leides
 Sein Lauf für uns daher gebracht,]
Es geht noch einmal durch den Sinn;
Allein das Böse wirft man hin.
Es störe nicht die Nacht.
 [Es störe nicht die Nacht.]
 好ましいことだろうが残念なことだろうが
 我々に向けてやって来る、
 それはもう一度頭に浮かんでくるのだが
 悪い事だけは投げ捨ててしまう。
 そうすれば夜を邪魔されずにすむだろう。

Zu einem frohen Traume
Bereitet man gemach sich zu.
Wann sorgelos ein holdes Bild
Mit sanfter Lust die Seele füllt,
Ergiebt man sich der Ruh.
 [Ergiebt man sich der Ruh.]
 楽しい夢を見るために
 くつろいで準備をする。
 心配事もなく、いとしい姿が
 穏やかな喜びで魂を満たすとき、
 みな休息に身を委ねる。

O wie ich mir gefalle
In meiner stillen Ländlichkeit!
Was in dem Schwarm der lauten Welt
Das irre Herz gefesselt hält,
Giebt nicht Zufriedenheit.
 [Giebt nicht Zufriedenheit.]
 おお、なんと私は
 我が静かな田園生活を気に入っていることだろう!
 騒々しい世間の群れの中で
 迷った心を拘束するものは
 平穏を与えることがない。

Zirpt immer, liebe Heimchen,
In meiner Klause eng und klein.
 [Zirpt immer, liebe Heimchen,
 In meiner Klause eng und klein.]
Ich duld' euch gern: ihr stört mich nicht.
Wann euer Lied das Schweigen bricht,
Bin ich nicht ganz allein.
 [Bin ich nicht ganz allein.]
 [Wann euer Lied das Schweigen bricht,
 Bin ich nicht ganz allein.
 Bin ich nicht ganz allein.
 Bin ich nicht ganz allein.]
 ずっと鳴き続けるがいい、いとしいこおろぎたちよ、
 狭くて小さい我が庵で。
 私は大目に見よう、きみたちは私の邪魔ではない。
 きみたちの歌が沈黙を破るとき
 私は全く一人ぼっちではないのだ。

※赤字はシューベルトによる繰り返し

詩:Karl Gottlieb Lappe (1773-1843), "Der Einsame", first published 1801 
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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冬の夜にぴったりの作品をご紹介しましょう。暖炉を前に、こおろぎの鳴き声が聞こえる中、一人気楽な時間を楽しむ男性の様子がぱっと浮かんでくるようなシューベルトの名作「孤独な男」です。「独りずまい」とも訳されることがあります。詩人ラッペの最初に出版された詩集におけるタイトルは「隠者の夕べの歌(Des Klausners Abendlied)」だったそうです。ピアノの左手に曲の間中現れる細かい音型は、こおろぎの鳴き声かもしれませんし、暖炉の火がパチパチ鳴っている音かもしれません。左手の八分音符の上下がジグザグになっていてユーモラスな雰囲気を醸し出しています。シューベルトは2つの稿を作っているのですが、例えば第1節最終行"So leicht, so unbeschwert."の繰り返しの歌の旋律が異なっていますし、歌の一番最後の"Bin ich nicht ganz allein."の締めくくり方も異なっています。ただ、私の知る限り第1稿は今のところ誰も録音していないようです。

歌は基本的に1つのテーマと間のエピソードが交互に現れる形をとっています。第1節の最終行が後のいくつかの節にも現れますが、リズムや音程が微妙に変化しているのがシューベルト円熟の技と言えるのではないでしょうか。

最終節の後半で「きみたちの歌が沈黙を破るとき」と歌われた後にピアノの間奏が演奏されるのですが、その弱拍に付けられたアクセント(譜例の赤丸)が沈黙を唐突に破ったコオロギの音を暗示しているように思えてなりません。そして「私は全く一人ぼっちではないのだ(Bin ich nicht ganz allein)」の歌声のジグザグの旋律(譜例の赤い四角)は、一人の時間を気楽に過ごしている主人公のわくわく感がなんと効果的に表現されていることでしょう。

Der-einsame

なお、この曲の詩や楽譜のコピーなどは下記のサイトで見ることが出来ます。

https://schubertlied.de/en/the-lied/der-einsame-ii

ラッペの詩の"wann"を"wenn"と歌っている演奏が圧倒的に多いですが、"wann"はMandyczewski編纂のBreitkopf & Härtel版、"wenn"はFriedlaender編纂のPeters版の表記です。
ベーレンライターの新シューベルト全集の楽譜がどちらを採用しているかは未確認です。
F=ディースカウはムーアとの1960年代後半のシューベルト歌曲全集では"wann"、その他の録音ではすべて"wenn"で歌っていました。
アーメリングは動画にあがっているスタジオ録音の他にライヴ録音3種類を聴きましたが、すべてラッペの原詩通りの"wann"で歌っていました。また、プレガルディアン&ゲースの録音も"wann"で歌っていましたが、その他の人の演奏は私の聴いた限りほぼ"wenn"で歌っていました。

1825年作曲
Mässig, ruhig(中ぐらいのテンポで、穏やかに)
4/4拍子
ト長調
全79小節
歌声部の最高音:2点ト音(G)
歌声部の最低音:1点ニ音(D)

●コオロギの鳴き声(動画最後に比較対象としてスズムシの鳴き声も聞けます)

●【詩の朗読】Susanna Proskura(Speaker)

ラッペのオリジナルのテキストを朗読しています。

●バリー・マクダニエル(BR) & ヘルタ・クルスト(P)
Barry McDaniel(BR) & Hertha Klust(P)

1964年録音。年老いた男性が暖炉に向かって至福のひとときを過ごす雰囲気がアメリカのバリトン、マクダニエルの深みのある声で伝わってきてとても魅力的です。F=ディースカウ等との共演で知られるクルストのピアノも明瞭なタッチで楽しげに弾いています。

●ヘルマン・プライ(BR) & カール・エンゲル(P)
Hermann Prey(BR) & Karl Engel(P)

最初の"Wenn"の重厚な響きからプライならではの魅力全開ですね。彼の歌の明るさがこの曲の特性とぴったり合致していると思います。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & アルフレート・ブレンデル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Alfred Brendel(P)

老境に差し掛かり重みを増したF=ディースカウの声がこの曲に妙にマッチしているように感じます。もちろん若かりし頃の録音も素晴らしいのですが。ブレンデルのピアノもくっきりとした表現が魅力的です。

●フリッツ・ヴンダーリヒ(T) & フーベルト・ギーゼン(P)
Fritz Wunderlich(T) & Hubert Giesen(P)

「この曲は低声歌手のもの」というイメージを覆す素晴らしい演奏です。ヴンダーリヒの輝かしい声でこの曲の録音が残されたことに感謝です!ギーゼンの味のあるピアノも良いです。

●エリー・アーメリング(S) & ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S) & Dalton Baldwin(P)

1972年。某声楽家の方がこの曲は内容的に男声が歌うのがふさわしいと書いておられて、その意味するところは分かるのですが、こういうチャーミングな歌唱を聴くと限定する必要はないのではと思ってしまいます。

●イルカー・アルカユレク(T) & サイモン・レッパー(P)
Ilker Arcayürek(T) & Simon Lepper(P)

トルコ出身の若いテノールのみずみずしい声もまた魅力的です。

●その他の録音の例(下記はすべてwann→wennに変更した版で歌っています。YouTubeで聴くことが出来ます。)
シュヴァルツコプフ&ムーア、F=ディースカウ&ムーアのEMI盤、F=ディースカウ&ブレンデル、F=ディースカウ&ヘル、ラプラント&ラシャンス、ポップ&ゲイジ、キーンリーサイド&マーティノー、ヘンドリックス&ルプー、ヴィーンス&ヤンセン、ゲルネ&シュナイダー、ギューラ&ベルナー、ボストリッジ&ドレイク、アップル&ベイリュー

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シューベルト「風吹くとき(Beim Winde, D 669)」を聴く

Beim Winde, D 669
 風吹くとき

【A】
Es träumen die Wolken,
Die Sterne, der Mond,
 [Es träumen die Wolken,
 Die Sterne, der Mond,]
Die Bäume, die Vögel,
Die Blumen, der Strom.
Sie wiegen,
Und schmiegen
Sich tiefer zurück,
Zur ruhigen Stätte,
Zum thauigen Bette,
Zum heimlichen Glück.
 [Sie wiegen,
 Und schmiegen
 Sich tiefer zurück,
 Zum thauigen Bette,
 Zur ruhigen Stätte,
 Zum heimlichen Glück.
 Zum heimlichen Glück.]
 みな夢の中だ、雲も、
 星々も、月も、
 木々も、鳥たちも、
 花々も、川も。
 みな揺れては
 戻り、より深く
 かがみ込む、
 静かな場所へ、
 露に濡れたベッドへ、
 ひそかな幸せへ。

【B】
Doch Blättergesäusel
Und Wellengekräusel
Verkünden Erwachen.
Denn ewig geschwinde,
Unruhige Winde,
Sie stören, sie fachen.
 だが葉がさらさらと鳴り
 波が立ち
 目覚めよと告げる。
 なぜなら絶えずすばやく
 騒々しい風が
 邪魔して、煽るのだ。

【C】
Erst schmeichelnde Regung,
Dann wilde Bewegung;
 [Dann wilde Bewegung;]
Und dehnende Räume
Verschlingen die Träume.
 [Verschlingen die Träume.]
 まずは心地よく感じる動きで、
 続いて荒々しい動きで。
 するとますます広がっていく空間で
 夢が飲みこまれていくのだ。

【D】
Im Busen, im reinen,
Bewahre die deinen;
 [Im Busen, im reinen,
 Bewahre die deinen;]
Es ströme dein Blut:
Vor rasenden Stürmen
Besonnen zu schirmen
Die heilige Gluth.
 [zu schirmen
 Die heilige Gluth.]
 胸の中で、純粋な胸の中で
 あなたの夢を守りなさい。
 あなたの血潮よどっとほとばしれ、
 荒れ狂う嵐から
 落ち着いて
 聖なる熱を守るために。

 [【A】を繰り返す]

詩:Johann Baptist Mayrhofer (1787-1836)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

※[ ]内(赤字)はシューベルトによる繰り返し。

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マイアホーファーの詩にシューベルトは50曲近く作曲しました。一時シューベルトは彼と一緒に住んでいたことがあり、気心の知れた仲間だったのでしょう。「風吹くとき」の詩は万物が眠りにつき夢見ているときに風が起こり、目覚めさせようとするが、夢を守りなさいという内容です。シューベルトはLieblich(愛らしく)という指示を冒頭に掲げています。【A】の箇所はほの暗い響きながら夢見るように美しく、メロディーメイカー、シューベルトの面目躍如といったところです。【B】では葉のそよぎや波立つテキストを描写するようにピアノパートの音型が細かくなり動きが出てきます。【D】でEtwas langsamer(前よりいくぶんゆっくりと)と少し落ち着きを取り戻します。血潮よほとばしれ、嵐が荒れ狂うと歌うところで、歌とピアノの両手がユニゾンを奏でるのは、後の『冬の旅』の「嵐の朝」に受け継がれている手法と言えるかもしれません。詩行が終わると、音楽は再び冒頭に戻り、【A】が再現されて終わります。シューベルトは、風に夢が妨げられることがなく、再び夢の世界の描写に戻って平穏に終わるという形にしようとしたのでしょう。

2/4拍子。ト短調。1819年10月作曲。歌声部最高音:2点ト音。歌声部最低音:1点変ホ音。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

フィッシャー=ディースカウはさらりとした語り口で、情景の展開を見事にイメージさせてくれます。ムーアも場面展開を鮮やかに描いています。

●クリスティーネ・シェーファー(S) & アーウィン・ゲイジ(P)
Christine Schäfer(S) & Irwin Gage(P)
録音:1997年

シェーファーの芯のある細めの声質が冷たい夜の情景にぴったりです。それぞれの場面のテンポ設計(ゲイジの好サポート!)が細やかで素晴らしかったです。

●ロベルト・ホル(BSBR) & ルドルフ・ヤンセン(P)
Robert Holl(BSBR) & Rudolf Jansen(P)
録画:1995年5月14日

ホルはいつものようにメロディーをゆったりと歌い上げています。ヤンセンの立体的な演奏も素晴らしいです。

●ヴィオレタ・ウルマナ(MS) & ヘルムート・ドイチュ(P)
Violeta Urmana(MS) & Helmut Deutsch(P)

シューベルティアーデでのライヴ(2017年8月29日, Schubertiade Schwarzenberg)。リトアニア出身のウルマナの歌唱は繊細さと力強さの両方を持っていて良いですね。

●フローリアン・プライ(BR) & ビルギッタ・アイラ(P)
Florian Prey(BR) & Birgitta Eila(P)

ヘルマン・プライの息子のフローリアンの歌唱です。声を伸ばすところなどで父親の響きとの近さが感じられます。父ヘルマンはおそらくこの曲を録音していないと思います。

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シューベルト「リンツの試補ヨーゼフ・シュパウン氏に(Herrn Josef Spaun, Assessor in Linz) D 749」を聴く

Herrn Josef Spaun, Assessor in Linz, D 749
 リンツの試補ヨーゼフ・シュパウン氏に

(Recitativo)
Und nimmer schreibst du?
Bleibest uns verloren,
Ein starr Verstummter, nun für ew'ge Zeit?
Vielleicht, weil neue Freunde du erkoren?
Wardst du Assessor denn am Tisch so breit,
Woran beim Aktenstoß seufzt Langeweile,
Um abzusterben aller Freudigkeit?
Doch nein, nur wir sind's, nur uns ward zu Teile
Dies Schweigen, dies Verstummen und Vergessen.
Armut und Not selbst an der kleinsten Zeile!
Für jeden bist du schriftkarg nicht gesessen;
Für manchen kamen Briefe angeflogen,
Und nach der Elle hast du sie gemessen;
Doch uns, Barbar, hast du dein Herz entzogen!
 (レチタティーヴォ)
 それではどうして君は手紙を書いてくれないんだ?
 僕らの前から永遠に消えてしまったというのか、
 かたくなに黙り込んだ君よ?
 ひょっとして、新しい友人を選んだのか?
 君は広い机で働く試補になり、
 書類の山を前に退屈な溜息を吐き
 あらゆる喜びがなくなってしまったとでもいうのか?
 いや違う、僕らだけだ、僕らに対してだけなのだ、
 このように口をつぐみ、押し黙り、忘れてしまったのは。
 わずか数行でさえ話題に事欠き困り果てるとは!
 誰に対しても君は手紙を出し渋ってじっと座っていたりなどしなかったし、
 君からの手紙が飛ぶような速さで届いた人もいた。
 君はエレの単位でその手紙を測ったものだった。
 なのに僕らからは、野蛮人よ、君の心を取り上げてしまったのだ!

(Aria)
Schwingt euch kühn, zu bange Klagen,
Aus empörter Brust hervor,
Und von Melodien getragen,
Wagt euch an des Fernen Ohr!
Was er immer mag erwidern,
Dieses hier saget doch;
»Zwar vergessen, jenes Biedern
Denken wir in Liebe noch.«
 (アリア)
 思い切って飛んでこい、不安な嘆きに向けて
 憤った胸からこちらへと。
 そしてメロディーに乗って
 遠くの男の耳に思い切って運ぶのだ!
 彼がどう答えようとも
 ここでこう言うのだ、
 「たとえ忘れられたとしても、あの実直な男のことを
 僕らは愛情をもって思っているからな。」

詩:Matthäus Kasimir von Collin (1779-1824)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

名歌曲「夜と夢」の詩人として知られるコリンが、いとこのシュパウンにあてたユーモアあふれる苦情の手紙をテキストにした歌曲です。
仲間内ならではの愛情のこもった詩に、シューベルトもレチタティーヴォとアリアという形式を使ってあえて大げさな音楽を付けました。
歌手はレチタティーヴォ最後の行の"Barbar"で3点ハ音を出し、さらにポルタメントで1オクターヴ下降するという技巧を求められます。さらに終わり近くの"Aus empörter Brust, ja, aus empörter Brust hervor"の"aus"でも3点ハ音が登場して下降します。ひたすら真剣に怒りの感情を歌に乗せたシューベルトは作曲しながらほくそえんでいたに違いありません。

Herrn-joseph-spaun_1

Herrn-joseph-spaun_2

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

フィッシャー=ディースカウの語り口の巧さが生きています。味のあるムーアと共に凄い演奏です!

ジャネット・ベイカー(MS) & ジェラルド・ムーア(P)
Janet Baker(MS) & Gerald Moore(P)

ベイカーのきっちりとした歌も魅力的です。彼女はレッパードとも録音を残しているのでお気に入りの曲なのでしょう。

ライナー・トロスト(T) & ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Rainer Trost(T) & Ulrich Eisenlohr(P)

美声トロストの歌、後半不意をつかれます。種明かしはしないでおきますので聴いてみて下さい。

ヴェルナー・クレン(T) & ジェラルド・ムーア(P)
Werner Krenn(T) & Gerald Moore(P)

前半の3点ハ音はしっかり出していますが、最後の方の高音は出さずに低い旋律を歌っています。テノールであっても無理してまで高音を出さないというクレンの選択も尊重すべきでしょう。

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ヘレン&クラウス・ドーナト&プライ&ホカンソン/1978年シューベルトの夕べ(ホーエネムス・ライヴ音源)

1978年6月26日にホーエネムスのリッターザール(騎士の間)でシューベルティアーデのコンサートが催されました。
その時のライヴ音源がアップされていたので、シェアしたいと思います。

女声歌曲をヘレン・ドーナト(S)&クラウス・ドーナト(P)夫妻、
男声歌曲をヘルマン・プライ(BR)&レナード・ホカンソン(P)が演奏しています。
二重唱のミニョンと竪琴弾き「ただ憧れを知る者だけが」D 877/1はどちらのピアニストが演奏したのかは分かりません。
さらに「岩の上の羊飼い」ではクラリネットのウルフ・ローデンホイザーが共演しました。

最後に置かれた「岩の上の羊飼い」以外はすべてゲーテの詩による歌曲がプログラミングされ、
前半は『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代(Wilhelm Meisters Lehrjahre)』からの詩が集められています。
男女の歌手が揃ったステージならではの選曲が興味深いです。

26 Juni 1978, 20:00 Uhr, Rittersaal im Palast Hohenems

ヘレン・ドーナト(Helen Donath)(S)
クラウス・ドーナト(Klaus Donath)(P)

ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
レナード・ホカンソン(Leonard Hokanson)(P)

ウルフ・ローデンホイザー(Ulf Rodenhäuser)(CL)

シューベルト(Schubert)作曲:

0:00 歌手(Der Sänger) D 149 (BR)

7:35 竪琴弾きIII「涙と共にパンを食べたことのない者」(Harfenspieler) D 480 (BR)

12:52 竪琴弾きI「孤独に浸り込む者」(Harfenspieler) D 478 (BR)

17:24 ミニョンの歌「あの国をご存知ですか」(Mignon) D 321 (S)

22:21 ミニョンと竪琴弾き「ただ憧れを知る者だけが」(Mignon und der Harfner) D 877/1 (S, BR)

26:25 竪琴弾きII「戸口に忍び寄り」(Harfenspieler) D 479 (BR)

29:27 ミニョンの歌「話せと言わないで下さい」(Mignon) D 877/2 (S)

33:02 ミニョンの歌「私をこのままにしておいて下さい」(Mignon) D 877/3 (S)

〜休憩(Pause)〜

35:52 悲しみの喜び(Wonne der Wehmut) D 260 (S)

36:56 愛「喜びに満ち、悲しみに満ち」(Die Liebe) D 210 (S)

38:33 恋する娘が手紙を書く(Die Liebende schreibt) D 673 (S)

41:36 ミニョンの歌「ただ憧れを知る者だけが」(Mignon) D 877/4 (S)

44:58 ミニョンに(An Mignon) D 161 (BR)

48:24 遥かな女性に(An die Entfernte) D 765 (BR)

52:10 川辺にて(Am Flusse) D 766 (途中雑音あり) (BR)

54:44 歓迎と別れ(Willkommen und Abschied) D 767 (BR)

58:41 岩の上の羊飼い(Der Hirt auf dem Felsen) D 965 (S, CL)

Schubertiadeのアーカイヴページはこちら

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グルック、シューベルト、ファニー・ヘンゼルの「夏の夜(Die Sommernacht)」を聴く

Die Sommernacht, D.289
 夏の夜

Wenn der Schimmer von dem Monde nun herab
[In]1 die Wälder sich ergießt, und Gerüche
Mit den Düften von der Linde
In den Kühlungen wehn;
 微光が月から今
 森に降り注ぎ、
 ボダイジュの香りの混ざったにおいが
 涼しさの中 吹くときに

So umschatten mich Gedanken an das Grab
[Der]2 Geliebten, und ich seh' [in dem]3 Walde
Nur es dämmern, und es weht mir
Von der Blüthe nicht her.
 恋人の墓に向ける思いが私を影で覆う、
 そして私は森の中で
 ただあたりがたそがれるのを見る、そして私に向けて
 花々から風が吹き寄せることはない。

[Ich genoß einst, o ihr Todten, es mit euch!]4
Wie umwehten uns der Duft und die Kühlung,
Wie verschönt warst von dem Monde,
Du, o schöne Natur!
 私はかつて楽しんだものだった、おお死者たちよ、君たちと共に!
 いかに香りや涼しさが私たちの周りを吹いたことか、
 いかに月に美しく照らされたことか、
 おまえ、おお美しい自然よ!

詩:Friedrich Gottlieb Klopstock (1724-1803)

1 Schubert (first version): "Auf"
2 Schubert: "Meiner"
3 Schubert: "im"
4 Schubert: "Ich genoß einst, o ihr Todten, ich genoß es einst mit euch!"

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クロップシュトックの詩による「夏の夜(Die Sommernacht)」のテクストに何人もの作曲家が曲をつけていますが、
ここではグルック、シューベルト、ファニー・ヘンゼルによる作品を聴き比べてみたいと思います。

グルックの作品は、3節の有節形式で作曲されています。
歌声部は3節とも完全に一致しています。
殆どの小節が同じリズムで進行するのは、詩の韻律に忠実である為でしょうが、それでも最後にクライマックスを持ってくるメロディは見事という他ないです。
寂しげで耳に残る美しいメロディは詩全体を覆う雰囲気と合致しているように感じます。
4分の4拍子。ハ短調。Moderato e legato (C.F.Peters版)

シューベルトの作品は、通作形式で、レチタティーヴォ風に始まり、過去の日々を回想する最後の3行で美しいメロディーが聞かれます。
1815年9月14日作曲。
第1稿:4分の4拍子。ハ長調。Nicht zu langsam (ゆっくり過ぎず)
第2稿:4分の4拍子。ハ長調。Langsam, feierlich (ゆっくりと、荘厳に)
2つの稿は基本的には同じですが、繰り返しの有無やリズムの違いなど細かい所に相違があります。

フェーリックス・メンデルスゾーンの姉ファニー・ヘンゼルの作品は、A-B-A'の形式です。
爽やかで親しみやすい作品なので、個人的には結構気に入っていますが、商業録音は少なくともCDでは今のところ皆無かもしれません。
ピアノパートの分散和音も美しいです。
8分の9拍子。変ホ長調(ネットで見つけた楽譜がLow Voice用の楽譜なので原調ではないと思われる)。Largo maestoso。1827年9月12日作曲。(Alfred Music)

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●グルック:夏の夜 Wq.49, No. 5
Christoph Willibald von Gluck (1714-1787): Die Sommernacht (7 Oden und Lieder, Wq.49: No. 5)

ヘルマン・プライ(BR) & レナード・ホカンソン(Harpsichord)
Hermann Prey(BR) & Leonard Hokanson(Harpsichord)
プライは暗さの中に甘美さも加わり、彼独自の味わいが感じられます。

ロリ・ライル(MS) & ミリセント・シルヴァー(Harpsichord)
Lorri Lail(MS) & Millicent Silver(Harpsichord)
ノルウェーのメゾ、ライルが包容力のある声で語りかけています。チェンバロの響きも美しいです。

ドミニク・ボワシー(Tenor Recorder) & Guitar
[Arr: Ralf Behrens] Tenor Recorder: Dominique Boissy & Play-along guitar
リコーダーの響きが得も言われぬ味わいを出しています。歌の息継ぎ箇所とは異なりますが、編曲なのですから問題ないでしょう。

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●シューベルト:夏の夜 D 289
Franz Peter Schubert (1797-1828): Die Sommernacht, D 289

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P) (第2稿)
ディースカウの歯切れの良さとムーアのレガートの美しさが印象的です。ディースカウはレチタティーヴォも楽譜に書かれてある音(本来装飾音が付いていると想定される箇所でも)で歌っていますが、後に録音するシュパイザーやゲルネは装飾音と解釈して歌っています(出版楽譜の違いかもしれませんが)。

エリーザベト・シュパイザー(S) & アーウィン・ゲイジ(P)
Elisabeth Speiser(S) & Irwin Gage(P) (第2稿)
シュパイザーの芯のある響きもまた魅力的です。ゲイジはシュパイザーの伸縮を把握した見事な演奏です。

マティアス・ゲルネ(BR) & アレクサンダー・シュマルツ(P)
Matthias Goerne(BR) & Alexander Schmalcz(P) (第1稿)
ゲルネはいつもながら包み込むような深々とした声で歌っています。

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●ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:夏の夜
Fanny Mendelssohn-Hensel (1805-1847): Die Sommernacht

アシュリー・ロング(MS) & ピアニスト
Ashley Long(MS) & unknown pianist

ダニエル・フィドラー(Voice) & クリストファー・タング(P)
Daniel Fidler(Voice) & Christopher Tang(P)

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