ベートーヴェン「気高き人は援助を惜しまず善良であれ(Der edle Mensch sei hülfreich und gut, WoO. 151)」

Der edle Mensch sei hülfreich und gut, WoO. 151
 気高き人は援助を惜しまず善良であれ

(※ベートーヴェンはゲーテの詩「神性(Das Göttliche)」の第10連の最初の2行のみに作曲しました。)
Der edle Mensch
Sei hülfreich und gut!
 気高き人は
 援助を惜しまず善良であれ!

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), "Das Göttliche"
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Der edle Mensch sei hülfreich und gut", WoO. 151 (1823), last stanza

------------

ゲーテの原詩は「Das Göttliche(神性)」というタイトルのもと10連からなり、ベートーヴェンはその最後の第10連の冒頭2行のみに作曲しました。「神性」の詩全体の日本語訳はネットでも読むことが出来ました。「ゲーテ 神性」で検索すると出てくると思います。

村田千尋氏の解説によると、「1823年1月20日、ベートーヴェンがウィーンの著名な銀行家エスケレス男爵の妻チェチーリエのために友情の記念帖に書き込んだものであり、歌曲の作曲としては最後のものと考えられる」(『ベートーヴェン全集 第6巻』講談社)そうです。
この特殊な事情ゆえか生前には出版されず、1843年にヴィーンの"Allgemeine Wiener Musik-Zeitung"に自筆譜のファクシミリが掲載されました。

ベートーヴェンの曲は11小節の短い作品の為、繰り返して演奏されることもあります。

アラ・ブレーヴェ(2/2拍子)
ト長調(G-dur)
Etwas langsam (いくぶんゆっくりと)

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

プライは詩の格言的な意味合いを生かしたかのような威厳のある歌を聞かせています。

●フローリアン・プライ(BR), ノルベルト・グロー(P)
Florian Prey(BR), Norbert Groh(P)

父親の威厳に対して息子フローリアンは軽やかな爽やかさで聴かせてくれます。

●ハイディ・ペルゾン(S), ハンス・ヒルスドルフ(P)
Heidi Person(S), Hans Hilsdorf(P)

繰り返して演奏されています。ペルゾンの温かみのある声が心地よいですね。

●ナタリー・ペレス(MS), ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Natalie Pérez(MS), Jean-Pierre Armengaud(P)

繰り返して演奏されています。ペレスの歌は力強さを感じさせます。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

『ベートーヴェン全集 第6巻』:1999年3月20日第1刷 講談社(「Der edle Mensch sei hülfreich und gut」の解説:村田千尋)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

RISM(国際音楽資料目録)

| | | コメント (0)

ベートーヴェン「キス(Der Kuß, Op. 128)」

Der Kuß (Ariette), Op. 128
 キス (アリエッタ) (※初版ではOp. 121として出版され、後にOp. 128に変更された)

1.
Ich war bei Chloen ganz allein,
Und küssen wollt' ich sie.
Jedoch sie sprach, sie würde schrein,
Es sei vergebne Müh!
 僕はクローエと二人きりだった、
 そして彼女にキスしようとした。
 だが彼女は言い放った、そんなことしたら叫ぶからね、
 しようとしても無駄よ!

2.
Ich wagt' es doch und küßte sie,
Trotz ihrer Gegenwehr.
Und schrie sie nicht? Jawohl, sie schrie --
Doch lange hinterher.
 でも僕は思い切って彼女にキスした、
 彼女が抵抗するのをものともせず。
 それで彼女は叫ばなかったのかって?そのとおり、彼女は叫んださ、
 でもずっと後になってからだけどね。

詩:Christian Felix Weisse (1726-1804), "Der Kuss", written 1758, appears in Scherzhafte Lieder, Leipzig
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

クリスティアン・フェリクス・ヴァイセの詩による「キス(Der Kuß, Op. 128)」は1798年終わりに着手、旋律の草稿は完成。1822年秋にスケッチが書かれ、1822年11月か12月までに作曲されました(Beethoven-Haus Bonn)。

詩は説明するまでもなく、女性と二人きりの男性が無理やりキスした顛末が歌われています。キスしたら声出すわよと言った彼女が実際に声を出したのはずっと後だったというちょっと官能的な情景がさらりとユーモラスに描かれています。

私の個人的なイメージですが、田園的な情景が浮かんできました(例えば、こちらの絵画:東京富士美術館Webサイトより)。

ピアノ前奏は歌いだしの2行の歌声部を先取りしていますが、歌が始まるとピアノはほぼ和音に終始します。しかし、歌を展開させる為に重要な立場を与えられているのは言うまでもありません。

ベートーヴェンは例によってこの曲でも詩句の繰り返しを多用しています。
繰り返し詩句を[ ]に入れて全体を記してみます(日本語訳も繰り返しに合わせてみました)。

1.
Ich war bei Chloen ganz allein,
Und küssen wollt' ich sie,
 [Und küssen, küssen, küssen wollt' ich sie:]
Jedoch sie sprach, sie würde schrein,
 [sie würde schrein, sie würde schrein, sie würde schrein,]
Es sei vergebne Müh,
 [vergebne Müh, Es sei vergebne, vergebne Müh.]
 僕はクローエと二人きりだった、
 そして彼女にキスしようとした、
 [キスを、キスを、キスをしようとした。]
 だが彼女は言い放った、そんなことしたら叫ぶからね、
 [叫ぶからね、叫ぶからね、叫ぶからね。]
 しようとしても無駄よ、
 [無駄よ、しようとしても無駄、無駄よ。]

2.
Ich wagt' es doch, und küßte sie,
 [und küßte sie,]
Trotz ihrer Gegenwehr,
 [Trotz ihrer Gegenwehr.]
Und schrie sie nicht? Jawohl, sie schrie,
 [sie schrie;...]
Doch [, doch, doch] lange hinterher,
 [doch, ja doch! doch lange hinterher,]
 [sie schrie, doch lange, lange, lange, lange, lange, lange, lange, lange, lange hinterher,]
 [hinterher, ja lange, lange hinterher.]
 でも僕は思い切って、彼女にキスした、
 [彼女にキスした、]
 彼女が抵抗するのをものともせず、
 [彼女が抵抗するのをものともせず。]
 それで彼女は叫ばなかったのかって?そのとおり、彼女は叫んださ、
 [彼女は叫んださ、]
 でも[でも、でも、]ずっと後になってからだけどね、
 [でも、そう でも!でもずっと後になってからね、]
 [彼女は叫んださ、でもずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと後になってからね、]
 [後になってから、そう ずっと、ずっと後になってからね。]

詩の最終行"lange(ずっと)"を何度も何度も繰り返しています。これによってキスから随分時間が経ってからようやく彼女が声を出したということをベートーヴェンが表現しているのは明らかですね。どうしてずっと後になって声を出したのかを解説するのは野暮というものですね。ネイティブの聴衆を前にしたライヴではここの箇所で笑いが起きることがあります。

蛇足ですが、この最終行の繰り返しの中にもベートーヴェンはお得意の"ja"を2回追加しています。この2箇所の"ja"は歌のメロディーに1音節の音をどうしても置きたかったので穴埋めに使用したように思えます。ただ無くても成立するとは思うので、もしかしたらベートーヴェンの口癖なのかもしれませんね。

若いカップルの「僕たちこんなふうにいちゃついています」という告白にベートーヴェンのお茶目な遊び心が存分に発揮されたユーモラスな名作で人気の高い作品です。最初に着手したのが28歳頃でメロディーはこの時に出来ていたそうですが、最終的な形に完成したのが52歳頃とは随分寝かせていたものですね。どういう経緯で若い頃のスケッチを完成させようと思ったのでしょう。ベートーヴェンのお堅いイメージを覆すにはうってつけの作品ですね。

3/4拍子
イ長調(A-dur)
Mit Lebhaftigkeit jedoch nicht in zu geschwindem Zeitmassee, und scherzend vorgetragen (活気をもって、しかし速すぎないテンポで諧謔的に演奏する)

●ヘルマン・プライ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Hermann Prey(BR), Gerald Moore(P)

こういうユーモラスなタイプの曲を歌うプライの素晴らしさについて言葉で形容してもしきれない気がします。間合いといい、声の表情といい、聞けば分かる最高の歌唱です。湧き出るような声の充実感もいいですね。曲を締めくくるムーアのコミカルな表現もさすがです!

●オーラフ・ベーア(BR), ジェフリー・パーソンズ(P)
Olaf Bär(BR), Geoffrey Parsons(P)

ベーアは今ではあまり目立たなくなってしまいましたが、この録音を聞くと、ディクションの美しさ、声に喜怒哀楽をのせる上手さなど際立った才能の持ち主であることが分かります。

●アン・ソフィー・フォン・オッター(MS), メルヴィン・タン(Fortepiano)
Anne Sofie von Otter(MS), Melvyn Tan(Fortepiano)

オッターのあまりのうまさに舌を巻きます!生き生きとした思春期の少年のように聞こえます。彼女がズボン役を得意としていたこともプラスに働いているのでしょう。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーは誠実な青年像が浮かんできますね。相変わらずディクションが素晴らしいです。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヘルタ・クルスト(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hertha Klust(P)

若かりしF=ディースカウの甘い声で巧みに歌っています。

●フリッツ・ヴンダーリヒ(T), フーベルト・ギーゼン(P)
Fritz Wunderlich(T), Hubert Giesen(P)

ヴンダーリヒは輝かしい美声に魅了されてしまいます。あえて表情をつけすぎずにメロディーラインを美しく響かせていました。

●ダニエル・ベーレ(T), ヤン・シュルツ(Fortepiano)
Daniel Behle(T), Jan Schultsz(Fortepiano)

2020年8月14日,Church of Saanenでのライヴ映像。こうして映像で見ると臨場感があってより身近に感じられますよね。リートにも力を入れているベーレの見事な歌唱と、シュルツの美しいフォルテピアノの響きが堪能できます。

●ピアノパートのみ
Der Kuss(L.v. Beethoven) 성악반주 Piano accompaniment

チャンネル名:My Pianist
楽譜が映るので、ピアノに合わせて歌えますね。ピアノパートがどうなっているのかを知るうえでも興味深かったです。そして演奏もとても良かったです。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

アリエッテ「くちづけ」——少年の楽しい自慢話(平野昭)

『ベートーヴェン全集 第6巻』:1999年3月20日第1刷 講談社(「Der Kuß」の解説:村田千尋)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

RISM(国際音楽資料目録)

| | | コメント (6)

ベートーヴェン「兵士の別れ(Des Kriegers Abschied, WoO 143)」

Des Kriegers Abschied, WoO 143
 兵士の別れ

1:
Ich zieh' in's Feld, von Lieb' entbrannt,
Doch scheid' ich ohne Tränen;
Mein Arm gehört dem Vaterland,
Mein Herz der holden Schönen;
Denn zärtlich muß der wahre Held
Stets für ein Liebchen brennen,
Und doch für's Vaterland im Feld
Entschlossen sterben können.
 俺は戦地に赴く、愛に燃えて、
 だが涙を流さず別れよう。
 俺の腕は祖国のもの、
 俺の心はいとしい美女のもの。
 なぜなら真の英雄は愛をこめて
 常に恋人のために燃えるべきだから、
 だが祖国のためには戦地で
 決然と死ぬことが出来るのだ。

2:
Ich kämpfte nie, ein Ordensband
Zum Preise zu erlangen,
O Liebe, nur von deiner Hand
Wünscht' ich ihn zu empfangen;
Laß' eines deutschen Mädchens Hand
Mein Siegerleben krönen,
Mein Arm gehört dem Vaterland,
Mein Herz der holden Schönen!
 俺は、勲章をさげる大綬(だいじゅ)を
 得るために戦うのではない、
 おお愛する人、おまえの手からのみ
 勲章を受け取りたい。
 ドイツ娘の手で
 俺の勝者の生きざまに冠を授けておくれ、
 俺の腕は祖国のもの、
 俺の心はいとしい美女のもの!

3:
Denk' ich im Kampfe liebewarm
Daheim an meine Holde,
Dann möcht ich seh'n, wer diesem Arm
Sich widersetzen wollte;
Denn welch ein Lohn! wird Liebchens Hand
Mein Siegerleben krönen,
Mein Arm gehört dem Vaterland,
Mein Herz der holden Schönen!
 戦のさなかに愛をこめて
 故郷のいとしい人を思うと
 この腕に
 抗おうとした人を見たいと思う。
 というのも、なんというご褒美!恋人の手で
 俺の勝者の生きざまに冠を授けてくれるのだから。
 俺の腕は祖国のもの、
 俺の心はいとしい美女のもの!

4:
Leb' wohl, mein Liebchen, Ehr und Pflicht
Ruft jetzt die deutschen Krieger,
Leb' wohl, leb' wohl und weine nicht,
Ich kehre heim als Sieger;
Und fall' ich durch des Gegners Hand,
Dann soll mein Ruf noch tönen:
Mein Arm gehört dem Vaterland,
Mein Herz der holden Schönen!
 さらば、恋人よ、栄誉と義務が
 今ドイツの兵士たちを呼んでいる。
 さらば、さらば、泣かないでくれ、
 俺は勝者として帰還する。
 そして敵の手にかかり死ぬときには
 叫び声を響かせよう、
 俺の腕は祖国のもの、
 俺の心はいとしい美女のもの!

詩:Christian Ludwig Reissig (1784-1847)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

クリスティアン・ルートヴィヒ・ライスィヒ(Christian Ludwig Reissig: 1784-1847)の詩による「兵士の別れ(Des Kriegers Abschied, WoO 143)」は1814年終わりに作曲されました。

戦争の歌は気分を高揚させるような勇ましい作品が多く、ベートーヴェンのこの「兵士の別れ」もまたしかりですが、ただ勇ましいだけでなく、別れの辛さとそれを吹っ切るような強がりも詩には表現されているように思われます。そこを演奏者がどのように歌い、演奏するかも聞き所の一つかと思います。

ピアノは各節5行目~6行目が左右交互のリズム打ちになる以外は右手高音が歌のメロディーをなぞります。軍歌でよく見られる手法ですが、起承転結の転にあたる5行目~6行目で突然歌のメロディーから離れるのは、詩の展開を意識した結果であるのと同時に聞き手に趣の変化を感じさせる効果もあるように思います。

C(4/4拍子)
変ホ長調(Es-dur)
Entschlossen(決然と)

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

1,2,3,4節。厚みのあるプライの声で威勢よく歌われていて、別れの感傷を振り払おうとしているかのようです。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

1,3節。シュライアーは速めのテンポでめりはりのきいた歌い方をいていますが、そこはかとない淋しさも滲ませているように感じました。

●ハンス・ホッター(BSBR), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Hans Hotter(BSBR), Michael Raucheisen(P)

1,4節。ホッターの包容力のある声による歌唱は、恋人に安心させようと歌っているように感じました。

●ヴァンサン・リエーヴル=ピカール(T), ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Vincent Lièvre-Picard(T), Jean-Pierre Armengaud(P)

1,2,3,4節。リエーヴル=ピカールの丁寧な歌いぶりは誠実な兵士像が感じられました。

●コンスタンティン・グラーフ・フォン・ヴァルダードルフ(BR), クリスティン・オーカーランド(P)
Constantin Graf von Walderdorff(BR), Kristin Okerlund(P)

1,2,3,4節。ヴァルダードルフはここでも朴訥とした味が出ていました。オーカーランドのピアノが威勢よく盛り上げていてとても良かったです。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「兵士の別れ」 ——出征する兵士の熱い思いを歌いあげる(平野昭)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

| | | コメント (4)

ベートーヴェン「私のことを覚えていて!(Gedenke mein!, WoO. 130)」

Gedenke mein!, WoO. 130
 私のことを覚えていて!

Gedenke mein! Ich denke dein!
Ach, der Trennung Schmerzen
Versüsst mir die Hoffnung.
 私のことを覚えていてね!私もきみを忘れないよ!
 ああ、別れる辛さを
 希望が和らげてくれるでしょう。

詩:Anonymous
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

作者不詳の詩による「私のことを覚えていて!(Gedenke mein!, WoO. 130)」にベートーヴェンは1804-5年頃に着手し、約15年後の1820年3月に改訂しました。平野昭氏によると、この詩の作者は「ほぼ確実にベートーヴェン自身と思われる」とのことです。

前半は"Gedenke mein! Ich denke dein!"と静かに始まり、マイナーな響きで少し高揚した後に落ち着きを取り戻します。ここまでで最初のリピート記号が付いています。後半は"Ach, der Trennung Schmerzen / Versüsst mir die Hoffnung."と歌われ、徐々に高揚して"Trennung(別れ)"という単語でクライマックスを迎え、徐々に落ち着きを取り戻します。この後半箇所も最後にリピート記号が付いていて、忠実に再現するか否かは演奏者の解釈次第でしょう。そして最後に"Ach(ああ)"とため息を2回繰り返し、主音にならないため息(変ホ長調のミ)で静かに終わります。

コラールのような書法を用いて、おそらく世俗的な別れを表現しているベートーヴェンの音楽からは、作曲家の実生活における何らかの感情が吐露されているように想像させられます。短い曲ですが、胸が締め付けられるような名作だと思います。

Gedenke-mein

3/4拍子
変ホ長調(Es-dur)
Andante con moto

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

リピート記号をすべて忠実に再現した演奏です。シュライアーの歌唱は平然と希望への期待を響かせながらも、そこはかとない辛さもにじませていたように感じました。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

リピート記号は前半は繰り返し、後半は繰り返しませんでした。プライの含蓄のある声の響きは、決然としつつも本心は別れるのが辛いという心情がにじみ出ているようで、この時期ならではの感動的な歌唱だったと思います。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ハルトムート・ヘル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hartmut Höll(P)

リピート記号は前半後半ともに繰り返しを省略しています。晩年のF=ディースカウの声でこの寂しげな内容を巧まずに自然に表現していたと思います。ちなみにデームスとの全集ではこの曲は録音していませんでした。

●コンスタンティン・グラーフ・フォン・ヴァルダードルフ(BR), クリスティン・オーカーランド(P)
Constantin Graf von Walderdorff(BR), Gustav Mahler Chor Wien, Kristin Okerlund(P)

ヴァルダードルフの完全全集なので、リピート記号はもちろんすべて忠実に再現しています。ヴァルダードルフの抑制した歌が耳をそばだたせてくれます。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「僕のことを想っていて」——作詞もベートーヴェン? 切ない気持ちが伝わる歌曲(平野昭)

『ベートーヴェン全集 第6巻』:1999年3月20日第1刷 講談社(「Gedenke mein!」の解説:村田千尋)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

| | | コメント (5)

ベートーヴェン「星空の下の夕暮れの歌(Abendlied unterm gestirnten Himmel, WoO 150)」

Abendlied unterm gestirnten Himmel, WoO 150
 星空の下の夕暮れの歌

1.
Wenn die Sonne niedersinket,
Und der Tag zur Ruh sich neigt,
Luna freundlich leise winket,
Und die Nacht herniedersteigt;
Wenn die Sterne prächtig schimmern,
Tausend Sonnenstrassen flimmern:
Fühlt die Seele sich so groß,
Windet sich vom Staube los.
 日が沈み
 一日が休息しようとしているとき、
 月の女神が親しげにかすかな合図をして
 夜の帳が下りる。
 星々が壮麗にちらつき
 千もの太陽の軌道がきらめくとき
 魂は自身が大きくなったことを感じ
 塵から解き放たれようと身をよじる。

2.
Schaut so gern nach jenen Sternen,
Wie zurück ins Vaterland,
Hin nach jenen lichten Fernen,
Und vergißt der Erde Tand;
Will nur ringen, will nur streben,
Ihre Hülle zu entschweben:
Erde ist ihr eng und klein,
Auf den Sternen möcht sie sein.
 あの星々を、
 祖国に帰るように、
 あの明るい遠方を喜んで見つめて、
 地上のつまらなさを忘れる。
 ひたすら奮闘し、努める、
 魂を覆っているものから離れようと。
 地上は魂にとって窮屈で小さい、
 星々にいたいのだ。

3.
Ob der Erde Stürme toben,
Falsches Glück den Bösen lohnt:
Hoffend blicket sie nach oben,
Wo der Sternenrichter thront.
Keine Furcht kann sie mehr quälen,
Keine Macht kann ihr befehlen;
Mit verklärtem Angesicht,
Schwingt sie sich zum Himmelslicht.
 地上の嵐が荒れ狂い
 偽りの幸せが悪人に報いようが、
 希望を持って魂は上方を見つめる、
 星々の審判者が君臨している所を。
 もはや恐怖が魂を苦しめることは出来ず
 権力が魂に命じることも出来ない。
 浄化した顔で
 天の光へと弧を描いて行く。

4.
Eine leise Ahnung schauert
Mich aus jenen Welten an;
Lange nicht mehr dauert
Meine Erdenpilgerbahn,
Bald hab ich das Ziel errungen,
Bald zu euch mich aufgeschwungen,
Ernte bald an Gottes Thron
Meiner Leiden schönen Lohn.
 あの世からのかすかな予感に
 私は震える。
 もはや
 私の地上での巡礼の道は長くないだろう。
 じきに私は目的地に達して
 きみたちのもとへ飛び立っていく、
 間もなく神の玉座で
 私の苦しみは素晴らしい報いを得るだろう。

詩:(Ferdinand August) Otto Heinrich, Graf von Loeben (1786-1825), as Heinrich Goeble
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

「星空の下の夕暮れの歌」の詩の作者はハインリヒ・ゲーブレ(Heinrich Goeble)という人で、これまで生没年も含めて詳細が知られていませんでしたが、Wikipediaの英語版では、ハインリヒ・ゲーブレは、オットー・ハインリヒ・フォン・レーベンの2番目の筆名であり、ベートーヴェンのこの歌曲の詩の作者であると明言しています。その根拠として"Theodore Albrecht, "Otto Heinrich Graf von Loeben (1786-1825) and the Poetic Source of Beethoven's Abendlied unterm gestirnten Himmel, WoO 150," in Bonner Beethoven-Studien, Band 10 (Bonn: Verlag Beethoven-Haus, 2012), pp. 7–32"という文献を挙げていますので、この論文の中で同一人物である旨考察がされているものと思われます。

詩は、窮屈な地上にいる主人公の魂が、やがてまとっている肉体から解き放たれてはるか星のもとに帰り、これまでの苦悩が報われることを予感するという内容です。

ベートーヴェンはこの詩に1820年3月4日に作曲し、同月出版されました。初版の出版譜にメトロノームの速度指示が記載されています。

歌は4節からなる変形有節形式で、基本は同じ音楽ですが、節によって多少の旋律の変化があります。歌声部の最終節の最終行はコーダのように繰り返されますが、その際にベートーヴェンお得意の"ja"を追加し、さらに"bald(間もなく)"を2回繰り返してから最終行を繰り返します。その際"Leiden(苦悩)"の下行する半音進行も印象的です。ピアノパートは各節異なっており、詩に応じた描写をしているように感じられます。特に高音域で締めくくるピアノ後奏の響きの美しさは印象的です。荘厳で透徹した神々しい音楽は、すでに主人公が天空に到達しているかのように感じられます。

各節の歌声部を掲載しておきます。

第1節
Abendlied-unterm-gestirnten-himmel_1

第2節
Abendlied-unterm-gestirnten-himmel_2

第3節
Abendlied-unterm-gestirnten-himmel_3

第4節
Abendlied-unterm-gestirnten-himmel_4

C (4/4拍子)
ホ長調(E-dur)
Ziemlich anhaltend (かなり音を保持して)
♩=76. Mälzels Metronom

●ハンス・ホッター(BSBR), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Hans Hotter(BSBR), Michael Raucheisen(P)

ホッターのもつ温かみのある声は、魂への限りない共感に満ちていました。

●ジョン・マーク・エインスリー(T), イアン・バーンサイド(P)
John Mark Ainsley(T), Iain Burnside(P)

高音歌手にとって決して歌いやすい音域ではないと思いますが、エインスリーは丁寧に心情を描き出していて感動しました!バーンサイドの音色も美しいです。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

プライは主に各節前半を柔らかく、後半を重厚に力強く歌い、この曲から威厳を引き出していました。ホカンソンも雄弁な演奏でした。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ハルトムート・ヘル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hartmut Höll(P)

いい意味で枯れた雰囲気のある後期のF=ディースカウの声によって、老境の悟りきった趣がよく出ていました。

●ジャン・デガエタニ(MS), ギルバート・カリッシュ(P)
Jan DeGaetani(MS), Gilbert Kalish(P)

慈しむように歌うデガエタニの歌唱に魅了されました。カリッシュのピアノはかなりドラマティックでした。

●ペーター・シュライアー(T), アンドラーシュ・シフ(P)
Peter Schreier(T), András Schiff(P)

シュライアーは必要以上に起伏を強調せず、自然に歌っていました。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「星空の下の夕べの歌」——ベートーヴェンの力作! 来る死を想う歌曲(平野昭)

『ベートーヴェン全集 第6巻』:1999年3月20日第1刷 講談社(「Abendlied unterm gestirnten Himmel」の解説:村田千尋)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

RISM(国際音楽資料目録)

Otto von Loeben (Wikipedia: 独語)

Otto Heinrich von Loeben (Wikipedia: 英語)

| | | コメント (6)

ベートーヴェン「諦め(Resignation, WoO. 149)」

Resignation, WoO. 149
 諦め

1.
Lisch aus, mein Licht!
Was dir gebricht,
Das ist nun fort,
an diesem Ort
Kannst du's nicht wieder finden!
Du mußt nun los dich binden.
 消えよ、わが光!
 あなたに不足しているもの、
 それは今や無くなってしまった、
 この場所で
 あなたは再び見つけることは出来ない!
 あなたはもう失ったままいなければならない。

2.
Sonst hast du lustig aufgebrannt,
Nun hat man dir die Luft entwandt;
Wenn diese fort gewehet,
die Flamme irregehet,
Sucht, findet nicht;
lisch aus, mein Licht!
 かつてあなたは楽しげに燃え盛っていたが、
 今やあなたから空気が奪われてしまった。
 空気が去ってしまうと
 炎は迷子になり
 探しても、見つからない。
 消えよ、わが光!

詩:Paul, Graf von Haugwitz (1791-1856)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Resignation", WoO. 149, G. 252, published 1829 [voice and piano], Leipzig, Probst

------------

パウル・フォン・ハウクヴィツ伯爵の詩による歌曲「諦め(Resignation, WoO. 149)」は、Beethoven-Haus Bonnの記載によると、1814年から1815年の変わり目から1817年終わり、もしくは1818年始めまでに作曲されています(Jahreswende 1814 / 1815 bis Ende 1817 / Anfang 1818)。

光というのは生きる希望でしょうか、それとも愛する存在でしょうか。
輝く為に必要な空気がなくなり、探すが見つからないので、もはや消えてしまうように願います。

ハウクヴィツ伯爵の原詩は2連からなりますが、ベートーヴェンは1連(A)-2連(B)-1連(A')という形で作曲しています。
最初の1連の最終行を繰り返す際に十八番の"ja"が追加されているのはいつもながら微笑ましいです。1連は穏やかでメロディアスですが、2連は細かい音価の変化や休符の付与、メロディアスではない旋律など、語りの要素が勝っているように思います。最後に1連が回帰することで、主人公が諦観を受け入れたかのようです。

ちなみに初版楽譜にはメトロノームの速度指定も書かれています(後の旧全集には記載されていません。新全集は未確認です)。

3/8拍子
ニ長調(D-dur)
Mälzels Metronom76=♪
Mit Empfindung, jedoch entschlossen, wohl accentui[e]rt und sprechend vorgetragen (感情をこめて、しかし決然として、充分に抑揚をつけて表情豊かに演奏する)

●フリッツ・ヴンダーリヒ(T), フーベルト・ギーゼン(P)
Fritz Wunderlich(T), Hubert Giesen(P)

このような内省的な歌でもヴンダーリヒが歌うとその美声に酔いしれることが出来るというのは私にとって発見でした。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

言葉への反応が鋭敏で、第2節1行目で盛り上がったかと思うと、2行目で抑えるところなどF=ディースカウならではの表現力でした。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーはここでは重めのテンポで内省的な歌を聞かせています。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

1970年代のPhilipsの録音ではまだ希望の灯を宿しているような勢いのあるプライの歌唱が印象的でした。

●ジョン・マーク・エインスリー(T), イアン・バーンサイド(P)
John Mark Ainsley(T), Iain Burnside(P)

エインスリーのみずみずしい美声による丁寧な歌唱とバーンサイドの雄弁なピアノが素晴らしかったです。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

ゲルネの慰撫するような優しい語り掛けに惹かれます。

●マーク・パドモア(T), クリスティアン・ベザイデンハウト(Fortepiano)
Mark Padmore(T), Kristian Bezuidenhout(Fortepiano)

パドモアは歌うというよりも語りかけを重視したような繊細なアプローチに感じました。

●イアン・ボストリッジ(T), アントニオ・パッパーノ(P)
Ian Bostridge(T), Antonio Pappano(P)

ボストリッジはここでかなり厳格にベートーヴェンの書いた強弱記号を生かした歌い方をしていて、ベートーヴェンの意図が伝わってきます。

●イリス・フェアミリオン(MS), ペーター・シュタム(P)
Iris Vermillion(MS), Peter Stamm(P)

メゾで聞くと温かい雰囲気が加味される気がしました。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

歌曲《あきらめ》——行進曲調の律動感にのせて切ない気持ちを歌う(平野昭)

『ベートーヴェン全集 第6巻』:1999年3月20日第1刷 講談社(「Resignation」の解説:村田千尋)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

RISM(国際音楽資料目録)

Paul von Haugwitz (Wikipedia)

| | | コメント (2)

ベートーヴェン「あれかそれか(So oder so, WoO. 148)」

So oder so, WoO. 148
 あれかそれか

1.
Nord oder Süd! Wenn nur im warmen Busen
Ein Heiligtum der Schönheit und der Musen,
Ein götterreicher Himmel blüht!
Nur Geistes Armut kann der Winter morden,
Kraft fügt zu Kraft, und Glanz zu Glanz der Norden.
Nord oder Süd! Wenn nur die Seele glüht!
 北か南か!温かい胸の中で
 美や芸術(ムーサ)の神聖さ、
 多くの神々がいる天空が花開いていさえすればいい!
 冬はただ精神の欠如を殺せるぐらいだ、
 北は力には力を、輝きには輝きを継ぎ合わせる。
 北だろうが南だろうが魂が燃えていさえすればいい!

2.
Stadt oder Land! Nur nicht zu eng die Räume,
Ein wenig Himmel, etwas grün der Bäume
Zum Schatten vor dem Sonnenbrand!
Nicht an das Wo ward Seligkeit gebunden;
Wer hat das Glück schon außer sich gefunden?
Stadt oder Land! Die Außenwelt ist Tand!
 都会か田舎か!場所が狭すぎず、
 空がわずかでも見えて、木々がいくらか緑に茂って
 日焼けしないための日陰となってくれさえすればいい。
 幸せは場所と結びつけられるものではない。
 誰が外の世界に幸福を見つけられただろうか?
 都会か田舎か!外の世界に出てもつまらないものだ!

3.(この連にはベートーヴェンは作曲していない)
Knecht oder Herr! Auch Könige sind Knechte.
Wir dienen gern der Wahrheit und dem Rechte.
Gebeut uns nur, bist du verständiger.
Doch soll kein Hochmut unsern Dienst verhöhnen.
Nur Sklavensinn kann fremder Laune fröhnen.
Knecht oder Herr! Nur keines Menschen Narr!
 しもべか主人か!王もしもべなのだ。
 我らは真理と法には喜んで仕える。
 我らに命じたまえ、あなたはより思慮深い。
 だが高慢に我々の奉仕をあざけるべきではない、
 ただ奴隷の感覚は他人の気分にふけることが出来る。
 しもべか主人か!だが愚かな人間などいないのだ!

4.
Arm oder reich! Sei's Pfirsich oder Pflaume!
Wir pflücken ungleich von des Lebensbaume,
Dir zollt der Ast, mir nur der Zweig.
Mein leichtes Mahl wiegt darum nicht geringe.
Lust am Genuß bestimmt den Wert der Dinge.
Arm oder reich! Die Glücklichen sind [gleich (reich)]!
 貧しいか豊かか!桃あるいはスモモであれ!
 我々は生命の木から不平等に摘み取る。
 あなたには大枝が、私にはほんの小枝が与えられる。
 私の軽い食事はとても大切だ。
 楽しむ気持ちが物事の価値を決める。
 貧しいか豊かか!幸せな者にとってはどちらも同じなのだ(幸せな者こそ豊かといえるのだ)!

5.
Blaß oder rot! Nur auf den bleichen Wangen
Sehnsucht und Liebe, Zürnen und Erbangen,
Gefühl und Trost für fremde Not!
Es strahlt der Geist nicht aus des Blutes Welle.
Ein andrer Spiegel brennt in Sonnenhelle.
Blaß oder rot! Nur nicht das Auge tot!
 青ざめるか紅潮するか!頬が青ざめるのはただ
 愛や憧れ、怒りや心配、
 馴染みのない苦悩に対する感情や慰めの為!
 精神は血流の波によって輝くのではない。
 別の鏡が太陽の明るさで燃えるのだ。
 青ざめるか紅潮するか!目だけは生気を失わない!

6.
Jung oder alt! Was kümmern uns die Jahre!
Der Geist ist frisch, doch Schelme sind die Haare.
Auch mir ergraut das Haar zu bald.
Doch eilt nur, Locken, glänzend euch zu färben,
Es ist nicht Schade, Silber zu erwerben.
Jung oder alt! Doch erst im Grabe kalt!
 若さか老いか!年月の経過を気にかけてもどうしようもない!
 心は若いのだが、厄介なのは髪の毛だ。
 私の髪もじきに白くなる。
 だが巻き毛よ、急いで染めてつやを出せばよい。
 銀髪になるのは損ではない。
 若さか老いか!だが墓に入ればようやく冷たくなるのだ!

7.
Schlaf oder Tod! Willkommen, Zwillingsbrüder!
Der Tag ist hin; ihr zieht die Wimper nieder.
Traum ist der Erde Glück und Not.
Zu kurzer Tag! zu schnell [verrauschtes Leben (verrauscht das Leben)]!
Warum so schön und doch so rasch verschweben?
Schlaf oder Tod! Hell strahlt das Morgenrot!
 眠りか死か!ようこそ、双子の兄弟よ!
 昼は去り、きみたちはまつ毛を下ろそうとする。
 夢は地上の喜びと苦しみだ。
 あまりにも日は短い!あまりにも速く人生は過ぎ去る!
 なぜこれほど美しく、だが素早く消え去るのか?
 眠りか死か!夜明けは明るく輝くのだ!

L. Beethoven sets stanzas 1-2, 4-7
R. Schumann sets stanzas 1-3, 6-7

詩:Karl Gottlieb Lappe (1773-1843), So oder so
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "So oder so", WoO. 148

------------

カール・ゴットリープ・ラッペの詩による「あれかそれか(So oder so, WoO. 148)」は1817年初頭に作曲されました。
ちなみにラッペは後にシューベルトが作曲した「夕映えの中で(Im Abendrot, D 799)」や「孤独な男(Der Einsame, D 800)」の詩も書いています。

詩は「北と南」「都会と田舎」のように対照的な要素を比較して、どちらがいいとも言えないという哲学的な内容になっています。
ベートーヴェンの曲は、1817年に"Wiener Zeitschrift für Kunst, Literatur, Theater und Mode(ヴィーン芸術・文学・演劇・流行雑誌)"の中に掲載されたものが初版ですが、何故か原詩の3連のみ印刷されておらず、ベートーヴェンの指示なのか、出版社の判断なのかは分かりませんでした。

テキストの教訓くさい内容にしてはベートーヴェンの音楽は随分軽快でコミカルに感じられます。各連冒頭行と最終行の「~ oder ~」を「ソミレド」と下行させていて、基本的に上行のフレーズで作られている他の箇所との違いを際だたせています。

同じ詩にシューマンが無伴奏混声合唱曲として作曲しています(Nord oder Süd, Op. 59-1)が、こちらは原詩の4,5連を省略し、6連までは有節形式(若干の細かい違いはあります)で、最終連だけ別の音楽になっています。

6/8拍子
ヘ長調(F-dur)
Ziemlich lebhaft und entschlossen (かなり生き生きと、決然として)

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

1,6,7節。プライはこの詩の説教臭さをあまり全面に出さず、ユーモラスにくつろいで歌っているように感じました。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

1,4,7節。シュライアーの説得力のある語り掛けに引き込まれました。

●ヴァンサン・リエーヴル=ピカール(T), ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Vincent Lièvre-Picard(T), Jean-Pierre Armengaud(P)

1,2,6,7節。リエーヴル=ピカールは丁寧な歌い方で好感がもてました。

●コンスタンティン・グラーフ・フォン・ヴァルダードルフ(BR), クリスティン・オーカーランド(P)
Constantin Graf von Walderdorff(BR), Kristin Okerlund(P)

1,2,3,4,5,6,7節。ヴァルダードルフが意外と軽妙な歌いぶりを聞かせていて良かったです。例によってすべての節(3節も含めて)を歌っているので、資料としても貴重です。

●シューマンが同じ詩に作曲した無伴奏混声合唱曲「北か南か, Op. 59-1」
Robert Schumann: Nord oder Süd, Op. 59-1
Renner Ensemble, Bernd Engelbrecht

シューマンは原詩の4,5連を省略しており、ここではシューマンの指示通りに歌われています。最終連だけ音楽が異なるのが印象的です。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

歌曲「いずれにしても」——人生を達観したような詩をベートーヴェンが見事に表現(平野昭)

『ベートーヴェン全集 第6巻』:1999年3月20日第1刷 講談社(「So oder so」の解説:村田千尋)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

RISM(国際音楽資料目録)

| | | コメント (3)

ベートーヴェン「山からの呼び声(Ruf vom Berge, WoO. 147)」

Ruf vom Berge, WoO. 147
 山からの呼び声

1.
Wenn ich ein Vöglein wär'
Und auch zwei Flüglein hätt',
Flög ich zu dir!
Weils aber nicht kann sein,
Bleib ich allhier.
 もし僕が小鳥で
 二つの羽があれば
 君のもとへ飛んで行くのに!
 だがそれは出来ないので
 ここにいるのだ。

2.
Wenn ich ein Sternlein wär'
Und auch viel Strahlen hätt',
Strahlt' ich dich an.
Und du säh'st freundlich auf,
Grüßtest hinan.
 もし僕が星で
 多くの光があったら
 君を照らすだろうに。
 すると君はやさしく見上げて
 挨拶してくれるだろう。

3.
Wenn ich ein Bächlein wär'
Und auch viel Wellen hätt',
Rauscht' ich durch's Grün.
Nahte dem kleinen Fuß,
Küßte wohl ihn.
 もし僕が小川で
 多くの波があったら
 緑野を通りさらさらと進み、
 あの小さな足に近づいて
 口づけするだろう。

4.
Würd' ich zur Abendluft,
Nähm' ich mir Blütenduft,
Hauchte dir zu.
Weilend auf Brust und Mund,
Fänd' ich dort Ruh'.
 僕が夕風になったら
 花の香りを奪って
 君に吐きかけるだろう、
 胸と口にとどまり
 そこで僕は憩いを見出すだろう。

5.
Geht doch kein' Stund der Nacht,
Ohn' daß mein Herz erwacht
Und an dich denkt.
Wie du mir tausendmal
Dein Herz geschenkt.
 夜の時が進むことはない、
 僕の心が目覚めて
 君のことを思うことなしには。
 なんと君は僕に千回も
 君の心を贈ってくれたのだ。

6.
Wohl dringen Bach und Stern,
Lüftlein und Vöglein fern,
Kommen zu dir.
Ich nur bin festgebannt,
Weine allhier.
 小川や星、
 そよ風や鳥がはるばる突き進み
 君のもとへとやってくる。
 僕はただ動くことも出来ず
 ここで泣くのみ。

詩:Georg Friedrich Treitschke (1776-1842), "Ruf vom Berge"
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

ゲオルク・フリードリヒ・トライチュケの詩による「山からの呼び声」は、1816年に作曲されました。

詩は、もし僕が小鳥なら彼女のもとに飛んでいくのに、もし星なら彼女を照らすのにという具合に、はるか遠くにいる恋人のもとに飛んでいきたいのに行けない気持ちを妄想をまじえて描いています。歌曲集『遥かな恋人に寄せて』を思い出しますね。

ベートーヴェンの音楽も民謡調のテキストの持ち味を生かした素朴な有節形式で作曲しています。ピアノパートの右手最高音がほぼ歌の旋律をなぞっていることも、素朴でのどかな印象を強めています。最終節で主人公は彼女のもとに行けないことに対して涙を流すのですが、そこはベートーヴェンによって特に変化がつけられることはなく、歌手の表現力にかかっていると言えそうです。

一番最後のピアノの後奏にかっこうの鳴き声を思わせる音型があらわれ、主人公が自然に囲まれている様がイメージされます。素朴ですがなかなか魅力的な作品で、もっと演奏されるようになるといいなと思います。

3/8拍子
イ長調(A-dur)
Etwas lebhaft (いくぶん生き生きと)

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

1-6節。シュライアーはすべての節を歌っています。各節前半はかなり威勢よく元気に歌い、後半の抑えた感情表現との対比が見事でした!

●ジョン・マーク・エインスリー(T), イアン・バーンサイド(P)
John Mark Ainsley(T), Iain Burnside(P)

1-6節。エインスリーは第3連の小川のくだりで装飾を加えていました。清々しく爽やかな歌とピアノでした。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

1,2,3,5,6節。ここでは第4節以外は歌われています。さすが軽やかな歌唱ですね。F=ディースカウは後年ヘルともこの曲を録音していますが、そちらも同じく第4節を除いて歌っていました。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

1,2,3,5,6節。プライは柔らかい声で慈しむように歌っていました。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

歌曲「山からの呼び声」——《フィデリオ》決定稿の台本作家による詩に作曲(平野昭)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

Georg Friedrich Treitschke (Wikipedia)

| | | コメント (0)

ベートーヴェン「約束を守る男(Der Mann von Wort, Op. 99)」

Der Mann von Wort, Op. 99
 約束を守る男

1.
Du sagtest, Freund, an diesen Ort
komm ich zurück, das war dein Wort.
Du kamest nicht; ist das ein Mann,
auf dessen Wort man trauen kann?
 きみは言ったよな、友よ、この場所に
 俺は帰ってくると、これはきみが言ったのだ。
 きみは来なかった、
 これでも、言ったことを信頼できる男だというのか?

2.
Fast größer bild' ich mir nichts ein,
als seines Wortes Mann zu sein;
wer Worte, gleich den Weibern, bricht,
verdient des Mannes Namen nicht.
 俺は約束を守る男ほど偉大なものは
 ほとんどないと思っている。
 女のように約束を破る者は
 男の名に値しない。

3.
Ein Wort, ein Mann, war deutscher Klang,
der von dem Mund zum Herzen drang,
und das der Schlag von deutscher Hand,
gleich heil'gen Eiden, fest verband.
 男は約束を守る、これはドイツの言い回しであり、
 口で語り、心へとしみ入ったものだった。
 その約束にはドイツ人の手による一撃が
 聖なる誓いのように、固く結びついていた。

4.
Und dieses Wort, das er dir gab,
brach nicht die Furcht am nahen Grab,
nicht Weibergunst, noch Menschenzwang,
nicht Gold, nicht Gut, noch Fürstenrang.
 そして彼がきみにしたこの約束を
 破ったのは、近くの墓での恐怖心からでも、
 女性の好意でも、人の強要でも
 金でも、財産でも、侯爵の身分でもなかった。

5.
Wenn so dein deutscher Ahne sprach,
dann folg', als Sohn, dem Vater nach,
der seinen Eid: Ein Wort, ein Mann,
als Mann von Wort verbürgen kann.
 そのようにきみのドイツの先祖が語ったら
 息子として父親に従うがいい、
 男は約束を守ると誓ったならば
 約束を守る男として保証できる。

6.
Nun sind wir auch der Deutschen wert,
des Volkes, das die Welt verehrt.
Hier meine Hand; wir schlagen ein,
und wollen deutsche Männer sein.
 今や俺たちもドイツ人にふさわしい、
 世界が敬う民族であるドイツ人に。
 この俺の手をとって。握手しよう、
 ドイツの男でありたいものだ。

詩:Friedrich August Kleinschmidt (1749-1838)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

フリードリヒ・アウグスト・クラインシュミットの詩による「約束を守る男」Op.99は1816年初夏に作曲されました。自筆譜は詩の1節のみが記されていましたが、初版以降の出版楽譜では6つの詩節すべてがリピート記号を使わずに記されています。

"ein Mann, ein Wort"(男子の一言)というのは、「男は約束を守る」という決まった言い方らしいです。詩は、約束を守る真のドイツの男になりたいという内容です。

ベートーヴェンの曲はどことなく酒宴歌や軍歌の趣が感じられます。仲間うちで語る内容の時はこのようながっしりした音楽を付けることが多いようですね。曲の冒頭に"Gemäss dem verschiedenen Ausdruck in den Versen piano und forte (詩行の強弱の様々な表情に従って)"という指示が記されているのは、有節形式であっても節ごとに表情を変えて演奏してほしいというベートーヴェンの希望なのでしょう。

3/4拍子
ト長調(G-dur)
Gemäss dem verschiedenen Ausdruck in den Versen piano und forte (詩行の強弱の様々な表情に従って)

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

1,2,3,4,5,6節。プライは全節を歌っています。プライの円熟期の含蓄のある響きがこの曲のテキストによくマッチしていました。

●フローリアン・プライ(BR), ノルベルト・グロー(P)
Florian Prey(BR), Norbert Groh(P)

1,2,3,4,5,6節。父親と同じくすべての節を歌っています。速めのテンポで威勢よく歌っています。

●ロデリック・ウィリアムズ(BR), イアン・バーンサイド(P)
Roderick Williams(BR), Iain Burnside(P)

1,3,6節。丁寧なウィリアムズの歌はこの歌曲を親しみやすいものにしていました。

●ヴァンサン・リエーヴル=ピカール(T), ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Vincent Lièvre-Picard(T), Jean-Pierre Armengaud(P)

1,3,5節。リエーヴル=ピカールは優しい響きですね。

●ギュンター・ライプ(BR), ヴァルター・オルベルツ(P)
Günther Leib(BR), Walter Olbertz(P)

1節。1節だけでなくもっと聞いていたい歌唱ですね。オルベルツのがっちりしたピアノも充実していました。

-----------

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

歌曲《約束を守る男》——楽譜上で歌唱指導?(平野昭)

『ベートーヴェン事典』:1999年初版 東京書籍株式会社(歌曲の解説:藤本一子)

IMSLP (楽譜のダウンロード)

RISM(国際音楽資料目録)

Friedrich August Kleinschmidt (Österreichisches Biographisches Lexikon)

| | | コメント (2)

ベートーヴェン/歌曲集『遥かな恋人に寄せて("An die ferne Geliebte", Op. 98)』総括

1816年4月に作曲され、同年10月にヴィーンのTobias Haslinger社から出版された6曲からなるベートーヴェンの連作歌曲集『遥かな恋人に寄せて(An die ferne Geliebte, Op. 98)』は、当時ヴィーンの医学生だったアロイス・イズィドア・ヤイテレス(Alois Isidor Jeitteles: 20 June 1794 - 16 April 1858)のテキストによるものでしたが、ヤイテレスの詩がどうやってベートーヴェンの目にとまったのか諸説あるようで、確実には分かっていないようです。恋多きベートーヴェンが1812年に「わが不滅の恋人(Meine Unsterbliche Geliebte)」にあてて書き、引き出しにしまったままにしていた手紙とこの歌曲集のテーマとの関連が指摘されることもあり、それももちろん無縁ではなかったでしょうが、生涯恋をし続けて成就しなかったベートーヴェンの少年のように純粋で真っすぐな心情がこの歌曲集に集約されて、そのあまりにもピュアな響きに後世の我々は深く感銘を受けるのだと思います。

歌詞対訳を一つにまとめてPDF化したものをシェアします。翻訳の精度については保証できかねますので、ご自身の判断でお使いいただければと思います。

PDFダウンロード (Beethoven - An die ferne Geliebte対訳)

第1曲
1_20220709155101

第2曲
21_20220709155101
22_20220709155201

第3曲
31_20220709155201
32_20220709155201

第4曲
4_20220709155301

第5曲
51_20220709155301
52_20220709155301

第6曲
61_20220709155401
62_20220709160401
63_20220709155901

●加耒 徹(BR), 松岡あさひ(P)
Toru Kaku(BR), Asahi Matsuoka(P)
[@CIMF2020 Archives] Toru Kaku Online Baritone Recital

調布国際音楽祭2020の一環として公式から配信された演奏のアーカイブです。『遙かなる恋人に寄す』は冒頭に歌われています。明瞭なディクションとむらのない声の響きで聴きごたえあります。もし余裕があれば続けて『詩人の恋』も聞かれることをお勧めします。加耒さんは今最も脂ののっているバリトン歌手で、オペラ、バッハなどの宗教曲、コンサートに引っ張りだこですが、歌曲もしっかり歌ってくれているのが嬉しいです。そして松岡さんのピアノも自然な音楽の運び方が素晴らしいです。最近出たアルバムではシューベルト、マーラー、フィンズィ、日本歌曲など多彩さを一望できる充実した内容になっていました。
0:25- ベートーヴェン:遙かなる恋人に寄す Op. 98
13:45- シューマン:詩人の恋 Op. 48
44:24- シューマン:献呈 Op. 25-1

●タイラー・ダンカン(BR), エリカ・スウィッツァー(P)
Tyler Duncan(BR), Erika Switzer(P)

概要欄(音が出ます)
2020年8月10日録画。カナダ出身のバリトン、ダンカンは最初聴いた時、テノールかと思ったほど声が若々しく感じられました。また名前からドイツ語圏の出身ではないことは想像できたのですが、ディクションの美しさに驚かされました。まだまだ知らない才能は沢山いるのだなぁと思い知りました。スウィッツァーは実に生き生きと心象風景を描いていました。

●サーシャ・クック(MS), マイラ・ホアン(P)
Sasha Cooke(MS), Myra Huang(P)

この歌曲集を映像化した作品で、心温まります。著名なアメリカ人歌手クックが公園にいたりボートを漕いだり、最後は部屋でいとしい俳優に向けて手紙を書いたり茶目っ気のあるクックの表情に魅了されます。水の音なども入っているので、リモートのピアノに合わせてその場で録音しているように思います。クックの温かみのあるメゾの声は聴く者を癒してくれますね。

●フランツ・リスト編曲:『遥かな恋人に寄せて』(福間洸太朗(P))
Beethoven - Liszt : An die ferne Geliebte / Kotaro Fukuma

リストの歌曲編曲は超絶技巧を盛り込むことが多いのですが、この曲に関しては全く技巧の見せ場を入れず、一貫して原曲に忠実です。ベートーヴェンへの敬意ゆえでしょうか。ここ数年レアなピアノ曲を様々なピアニストに演奏してもらうシリーズを企画する等意欲的に活動されている福間さんがこの曲をレパートリーに選んだきっかけが気になります。原曲を彷彿とさせるいい演奏だったと思います。

---------

(参考)

国立音楽大学『音楽研究所年報』第15集(2001年度)
青木やよひ「ベートーヴェン《不滅の恋人》研究の現在」(こちらのサイトからPDFがダウンロード出来ます)

ベートーヴェンと不滅の恋人 前編:初恋~28歳 (平野昭)

ベートーヴェンと不滅の恋人 後編:30歳から晩年まで (平野昭)

Kunitachi College of Music Library: A Catalogue of Early Printed Editions of the Works of L.v.Beethoven
(国立音楽大学附属図書館所蔵 ベートーヴェン初期印刷楽譜目録)

| | | コメント (8)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

CD DVD J-Pop LP 【ライラックさんの部屋】 おすすめサイト アイヒェンドルフ アンゲーリカ・キルヒシュラーガー アンティ・シーララ アーウィン・ゲイジ アーリーン・オジェー イアン・ボストリッジ イェルク・デームス イタリア歌曲 イモジェン・クーパー イングリート・ヘブラー ウェブログ・ココログ関連 エディタ・グルベロヴァ エディト・マティス エリック・ヴェルバ エリーザベト・シュヴァルツコプフ エリー・アーメリング エルンスト・ヘフリガー オペラ オルガン オーラフ・ベーア カウンターテナー カール・エンゲル ギュンター・ヴァイセンボルン クラーラ・シューマン クリスタ・ルートヴィヒ クリスティアン・ゲアハーアー クリスティーネ・シェーファー クリスマス グリンカ グリーグ グレアム・ジョンソン ゲアハルト・オピッツ ゲアハルト・ヒュッシュ ゲロルト・フーバー ゲーテ コンサート コントラルト歌手 シェック シベリウス シュテファン・ゲンツ シューベルト シューマン ショスタコーヴィチ ショパン ジェシー・ノーマン ジェフリー・パーソンズ ジェラルド・ムーア ジェラール・スゼー ジュリアス・ドレイク ジョン・ワストマン ソプラノ歌手 テノール歌手 テレサ・ベルガンサ ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ ディートリヒ・ヘンシェル トマス・ハンプソン トーマス・E.バウアー ドビュッシー ドルトン・ボールドウィン ナタリー・シュトゥッツマン ノーマン・シェトラー ハイドン ハイネ ハルトムート・ヘル ハンス・ホッター バス歌手 バッハ バリトン歌手 バレエ・ダンス バーバラ・ヘンドリックス バーバラ・ボニー パーセル ピアニスト ピーター・ピアーズ ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル フェリシティ・ロット フランス歌曲 フリッツ・ヴンダーリヒ ブラームス ブリテン ブログ プフィッツナー ヘルマン・プライ ヘルムート・ドイチュ ベルク ベートーヴェン ペーター・シュライアー ペーター・レーゼル ボドレール マティアス・ゲルネ マルコム・マーティノー マーク・パドモア マーティン・カッツ マーラー メシアン メゾソプラノ歌手 メンデルスゾーン メーリケ モーツァルト ヤナーチェク ヨーハン・ゼン ルチア・ポップ ルドルフ・ヤンセン ルードルフ・ドゥンケル レナード・ホカンソン レルシュタープ レーナウ レーヴェ ロシア歌曲 ロジャー・ヴィニョールズ ロッテ・レーマン ロバート・ホル ローベルト・フランツ ヴァルター・オルベルツ ヴァーグナー ヴェルディ ヴォルフ ヴォルフガング・ホルツマイア 作曲家 作詞家 内藤明美 北欧歌曲 合唱曲 小林道夫 岡原慎也 岡田博美 平島誠也 指揮者 日記・コラム・つぶやき 映画・テレビ 書籍・雑誌 歌曲投稿サイト「詩と音楽」 演奏家 白井光子 目次 研究者・評論家 藤村実穂子 音楽 R.シュトラウス