シューベルト/「春の憧れ」(Schubert: Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3)を聞く

Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3
 春の憧れ

1.
Säuselnde Lüfte
Wehend so mild,
Blumiger Düfte
Athmend erfüllt!
Wie haucht Ihr mich wonnig begrüßend an!
Wie habt Ihr dem pochenden Herzen gethan?
Es möchte Euch folgen auf luftiger Bahn!
Wohin?
 ざわめく風が
 穏やかに吹き
 花の香りが
 放たれ いっぱいになる!
 きみは僕に喜んで挨拶をし、息を吐きかける!
 きみはこのどきどきする心に何をしたんだい?
 風の道を通ってきみに付いて行きたい!
 でもどこへ?

2.
Bächlein, so munter
Rauschend zumal,
[Wollen]1 hinunter
Silbern in's Thal.
Die schwebende Welle, dort eilt sie dahin!
Tief spiegeln sich Fluren und Himmel darin.
Was ziehst Du mich, sehnend verlangender Sinn,
Hinab?
 小川は、こんなに元気に
 いっせいに音を立てながら
 谷へと
 銀色に輝き下ろうとする。
 漂う波、それはあちらへと急いで行きたいのだ!
 野原や空が水底深くに映っている。
 どうやってきみは僕を引っ張っていくのか、切望して、欲しがる気持ちよ、
 向こうへ下りながら?

3.
Grüßender Sonne
Spielendes Gold,
Hoffende Wonne
Bringest Du hold.
Wie labt mich Dein selig begrüßendes Bild!
Es lächelt am tiefblauen Himmel so mild,
Und hat mir das Auge mit Thränen gefüllt! -
Warum?
 挨拶する太陽が
 金色にゆらめく、
 望みをもつことの喜びを
 きみは優しくもたらしてくれる。
 きみが幸せに満ちて迎えてくれる姿がどれほど僕を元気づけることか!
 藍色の空はとても穏やかに微笑み、
 僕の目は涙でいっぱいになった!
 でもどうして?

4.
Grünend umkränzet
Wälder und Höh'!
Schimmernd erglänzet
Blüthenschnee!
So dränget sich Alles zum bräutlichen Licht;
Es schwellen die Keime, die Knospe bricht;
Sie haben gefunden was ihnen gebricht:
Und Du?
 周囲を緑に飾るのは
 森や丘!
 きらきら輝くのは
 雪のように舞う花々!
 あらゆるものが花嫁の放つ光へと突き進む、
 芽はふくらみ、蕾は開き、
 彼らに足りなかったものを見つけたのだ、
 ではきみはどうなんだ?

5.
Rastloses Sehnen!
Wünschendes Herz,
Immer nur Thränen,
Klage und Schmerz?
Auch ich bin mir schwellender Triebe bewußt!
Wer stillet mir endlich die drängende Lust?
Nur Du [befreist]2 den Lenz in der Brust,
Nur Du!
 絶え間ない憧れ!
 欲する心、
 常に涙、
 嘆き、苦しみばかりなのか?
 僕だって衝動が膨らんでくるのを自覚している!
 僕の急き立てられた欲望をようやく鎮めてくれるのは誰なのか?
 きみだけが胸の中に春を解き放ってくれる、
 きみだけなのだ!

1 Rellstab: "Wallen"
2 Rellstab: "befreiest"

詩:Ludwig Rellstab (1799-1860), "Frühlings-Sehnsucht"
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Frühlingssehnsucht", D 957 no. 3 (1828), published 1829 [voice and piano], from Schwanengesang, no. 3, Tobias Haslinger, VN 5370, Wien

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シューベルトの死後『白鳥の歌 D957』として出版された歌曲集の第3曲に置かれた「春の憧れ」は、その名の通り、春がやってくる期待感、いてもたってもいられない焦燥感をこれ以上ないぐらい見事に描いた作品です。
シューベルトは亡くなる直前にルートヴィヒ・レルシュタープの詩にまとめて作曲しています。それらは兵士の孤独感、甘美な恋の歌、疎外感でいっぱいの心情、慣れ親しんだものからの別れ等多岐にわたり、それぞれが晩年(というにはあまりにも若すぎますが)のシューベルトの熟した技法で作曲されています。

この第3曲の詩を見ると春の到来と同時に、第4連にあるように「足りなかったもの(was ihnen gebricht)」つまり伴侶を見つけるということが主人公にとっての春であることが分かります。風や花や小川や太陽が主人公の心の中の衝動を引き起こそうとします。最終連で主人公は僕にも衝動が膨らんできて、それを鎮めてくれるのは「きみだけ(nur du)」なんだと気づきます。春が恋する気持ちを呼び覚ます、なんともロマンティックな詩ですね。

シューベルトはこの春に「突き動かされる」心情に焦点を当てて速いスピードで表現しています。歌声部は、詩のリズムに合わせた「♩♪♪」のリズムが印象的です。ちなみに第1連から第4連は有節形式で、詩句の音節の数に応じた多少の音価の違いがあるのみです(ちなみに旧全集の楽譜ではリピート記号で第1~4連を繰り返していますが、初版ではすべての節を記載していました)。最終連(第5連)でこれまでの変ロ長調(B-dur)から変ロ短調(b-moll)に転調して、主人公が憧れて満たされないあまりに、泣いたり嘆いたり苦しんだりするだけなのかとこぼす箇所の辛さを表現します。その後、もう一度同じ個所を繰り返す時には変ニ長調(Des-dur)に転調して、主人公の一瞬の気持ちの陰りも衝動の力によってポジティブに変わっていくことを示しているように思います。その後、もとの変ロ長調に戻りますが、歌の最後"Nur Du!"の"Du"をソの音で終わらせて、「きみ」に呼びかけているような効果を感じさせます。ピアノ後奏も変ロ長調のまま進みますが、最後の主和音の一つ前のIVの和音の第3音をフラットで半音下げてちょっとした陰りを加えるところなど「きみ」への一抹の不安が表現されていて、心憎い締めくくりとなっています。

●冒頭部分:初版(Vienna: Tobias Haslinger, n.d.[1829])
Fruhlingssehnsucht-first-edition 

2/4拍子
変ロ長調 (B-dur)
Geschwind (速く)

●ヘルマン・プライ(BR), ヴァルター・クリーン(P)
Hermann Prey(BR), Walter Klein(P)

「春の憧れ」は7:26からです。プライは数回『白鳥の歌』を録音していますが、第1回目のこの録音は忘れられない名盤です。若かりしプライは勢いをつけて威勢よく歌っています。他の時期にはない全霊を込めた熱唱でただただその熱気に引き込まれます。クリーンもプライの熱気を生かした雄弁な演奏です。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), アルフレート・ブレンデル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Alfred Brendel(P)

年を重ねた人にももちろん平等に春はやってきます。円熟期のディースカウが若い頃に劣らず春への期待感をめりはりつけて歌っているところに感銘を受けます。ブレンデルの雄弁なリズム感も素晴らしいです。

●ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

温かみのある歌とピアノのコンビです。最後の「きみだけなのだ!(Nur du!)」に込められた寂寥感が印象的です。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーの爽やかな美声と、涼風が吹き渡るような軽快なオルベルツのピアノが素晴らしいです!

●マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)
Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P)

ゲルネはこういう軽快な曲にも違和感なく対応できるのが凄いです。

●ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)
Gérard Souzay(BR), Dalton Baldwin(P)

スゼーの歌は気品のある優しい響きがこの曲のもつ爽やかさとぴったり合致していて魅力的でした。ボールドウィンのピアノが押し寄せる焦燥感を素晴らしく表現していました。3,4節を省略していたのがもったいないぐらい、もっと聞いていたい演奏でした。

●クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)
Christoh Prégardien(T), Andreas Staier(Fortepiano)

さすがプレガルディアン!第2節以降、かなり装飾・変更をしています。もちろんシュタイアーも第3節以降、同様に変更を加えています。ぼーっと聞いていても、急に聞きなれない音が聞こえるので、一瞬で目が覚めます。最初の4節は完全な有節形式なので、こういう変更は他のアーティストもやりやすいのでは。

●アンドレ・シュエン(BR), ダニエル・ハイデ(P)
Andrè Schuen(BR), Daniel Heide(P)

新世代のリート歌手シュエンが力強さと丁寧さを両立させた歌を聞かせています。ハイデも丁寧な演奏でした。

●エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P)

アーメリングは各節最終行の2音節(Wohin?など)の陰りを帯びた表情が絶妙です。

●ヤン・コボウ(T), クリスティアン・ベザイデンホウト(Fortepiano)
Jan Kobow(T), Kristian Bezuidenhout(Fortepiano)

古楽を得意とするコボウらしく新鮮な歌唱でした。ベザイデンホウトのフォルテピアノはいろいろ仕掛けていて新しい側面を引き出していたように感じました。

※有名な「白鳥の歌」の中の1曲なので、他にも沢山の録音があります。皆さんのお気に入りを探してみるのもいいかもしれません。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de (Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3)

Wikipedia - ルートヴィヒ・レルシュタープ

Wikipedia - Ludwig Rellstab (Dichter) (ドイツ語)

Wikipedia - Ludwig Rellstab (英語)

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(CD)

ヘルマン・プライ(BR), ヴァルター・クリーン(P)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), アルフレート・ブレンデル(P)

ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)

ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)

マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)

クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)

アンドレ・シュエン(BR), ダニエル・ハイデ(P)

エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)

ヤン・コボウ(T), クリスティアン・ベザイデンホウト(Fortepiano)

ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)

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ヘイン・メーンス&トニー・エレン/ゲーテ、ヴェルレーヌ等の同じテキストに作曲した歌曲によるリサイタル(1990年)

オランダのテノール、ヘイン・メーンス(Hein Meens: 1949-2012)と、同じくオランダのピアニスト、トニー・エレン(Tonie Ehlen: 1946)によるリサイタルがアップされていて、興味深いプログラムでしたのでご紹介します。kadoguy様に感謝です!「旅人の夜の歌」は「すべての山頂に憩いあり(Über allen Gipfeln ist Ruh)」もあるかと思ったら、すべて「汝天より来りて(Der du von dem Himmel bist)」による歌曲でした。お好きな詩から聞き比べてみるのはいかがでしょうか。

・0:00- ゲーテの詩による「釣り人」:シューベルト、クルシュマン、レーヴェ
・11:15- ゲーテの『ファウスト』の詩による「のみの歌」:ベートーヴェン、ブゾーニ、ムソルクスキー
・18:17- ピエトロ・メタスタージオの詩による「別れ」:ベートーヴェン(原詩の1節に作曲)、ロッスィーニ(原詩の1,2(5-8行)節に作曲)
・24:12- テオフィル・ゴティエの詩による「嘆き」:ベルリオーズ、デュパルク(原詩の1,3,6節に作曲)
・34:16- ヴェルレーヌの詩による「ひそやかに」:フォレ、ドビュッシー、ディーペンブロック
・45:14- ヴェルレーヌの詩による「わが心に涙降る」:ドビュッシー、スミュルダース
・51:23- ゲーテの詩による「似た者同士」:ヴォルフ、ヴェーベルン
・53:32- ゲーテの詩による「旅人の夜の歌(汝天より来りて)」:ツェルター、ライヒャルト、シューベルト、リスト(1稿と3稿)、プフィッツナー、ペッピング

A Hein Meens Recital (1990)
Hein Meens (1949-2012) with pianist Tonie Ehlen

Channel名:kadoguy(オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出るので注意!)

録音: 1990年4月22日, Maastricht Academy of Music

ヘイン・メーンス (テノール)
トニー・エレン (ピアノ)

I. フランツ・シューベルト(1797-1828): 釣り人, D. 225 0:00
II. カール・クルシュマン(1805-1841): 釣り人, op. 4, no. 3 2:53
III. カール・レーヴェ(1796-1869): 釣り人, op. 43, no. 1 6:43

IV. ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827): ゲーテの『ファウスト』から, op. 75, no. 3 11:15
V. フェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924): ゲーテの『ファウスト』からメフィストフェレスの歌 (1964) 13:26
VI. モデスト・ムソルクスキー(1839-1881): のみの歌 (1879, ドイツ語歌唱) 14:58

VII. ベートーヴェン: 別れ, WoO. 124 18:17
VIII. ジョアッキーノ・ロッスィーニ(1792-1868): 別れ 19:43

IX. エクトル・ベルリオーズ(1803-1869): 墓地で, op. 7, no. 5(『夏の夜』より) 24:12
X. アンリ・デュパルク(1848-1933): 嘆き (1883) 30:51

XI. ガブリエル・フォレ(1845-1924): ひそやかに, op. 58, no. 2 34:16
XII. クロード・ドビュッシー(1862-1918): ひそやかに (『艶なる宴 I』より) 37:38
XIII. アルフォンス・ディーペンブロック(1862-1921): ひそやかに (1909) 40:36

XIV. ドビュッシー: わが心に涙降る (『忘れられた小唄』より) 45:14
XV. カール・スミュルダース(1863-1934): わが心に涙降る (1896) 48:18

XVI. フーゴー・ヴォルフ(1860-1903): 似た者同士 (1888) 51:23
XVII. アントン・ヴェーベルン(1883-1945): 似た者同士, op. 12, no. 4 52:27

XVIII. カール・ツェルター(1758-1832): 旅人の夜の歌 (1807) "Der du von dem Himmel bist" 53:32
XIX. ヨーハン・フリードリヒ・ライヒャルト(1752-1814): 旅人の夜の歌 (1794) "Der du von dem Himmel bist" 55:06
XX. シューベルト: 旅人の夜の歌, D. 224 "Der du von dem Himmel bist" 56:23
XXI. フランツ・リスト(1811-1886): 汝天より来りて, S. 279/1 57:24
XXII. リスト: 汝天より来りて, S. 279/3 1:01:21
XXIII. ハンス・プフィッツナー(1869-1949): 旅人の夜の歌 II, op. 40, no. 5 "Der du von dem Himmel bist" 1:04:35
XXIV. エルンスト・ペッピング(1901-1981): 旅人の夜の歌 (『家庭の慰みの書』 no. 33) "Der du von dem Himmel bist" 1:07:34

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Here is a recital from 1990 by the Dutch tenor Hein Meens (1949-2012) with pianist Tonie Ehlen.

Recording: April 22, 1990, Maastricht Academy of Music

Hein Meens, tenor
Tonie Ehlen, piano

I. Franz Schubert: Der Fischer, D. 225 0:00
II. Karl Curschmann: Der Fischer, op. 4, no. 3 2:53
III. Carl Loewe: Der Fischer, op. 43, no. 1 6:43

IV. Ludwig van Beethoven: Aus Goethe's "Faust", op. 75, no. 3 11:15
V. Ferruccio Busoni: Lied des Mephistopheles aus Goethes "Faust" (1964) 13:26
VI. Modest Mussorgsky: Song of the Flea (1879, sung in German) 14:58

VII. Beethoven: La partenza, WoO. 124 18:17
VIII. Gioacchino Rossini: La partenza 19:43

IX. Hector Berlioz: Au cimetière, op. 7, no. 5 24:12
X. Henri Duparc: Lamento (1883) 30:51

XI. Gabriel Fauré: En sourdine, op. 58, no. 2 34:16
XII. Claude Debussy: En sourdine (Fêtes Galantes I) 37:38
XIII. Alphons Diepenbrock: En sourdine (1909) 40:36

XIV. Debussy: Il pleure dans mon cœur (Ariettes oubliées) 45:14
XV. Carl Smulders: Il pleure dans mon cœur (1896) 48:18

XVI. Hugo Wolf: Gleich und gleich (1888) 51:23
XVII. Anton Webern: Gleich und gleich, op. 12, no. 4 52:27

XVIII. Karl Zelter: Wandrers Nachtlied (1807) "Der du von dem Himmel bist" 53:32
XIX. Johann Friedrich Reichardt: Wandrers Nachtlied (1794) "Der du von dem Himmel bist" 55:06
XX. Franz Schubert: Wandrers Nachtlied, D. 224 "Der du von dem Himmel bist" 56:23
XXI. Franz Liszt: Der du von dem Himmel bist, S. 279/1 57:24
XXII. Liszt: Der du von dem Himmel bist, S. 279/3 1:01:21
XXIII. Hans Pfitzner: Wanderers Nachtlied II, op. 40, no. 5 "Der du von dem Himmel bist" 1:04:35
XXIV. Ernst Pepping: Wandrers Nachtlied (Haus- und Trostbuch, no. 33) "Der du von dem Himmel bist" 1:07:34

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(参考)

Hein Meens (Wikipedia: オランダ語)

Tonie Ehlen (Wikipedia: オランダ語)

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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」&第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の考察

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルで、先日アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」に関する考察がアップされましたが、続いて、第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」と第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の動画がアップされました!今回も楽しみながらアーメリングの見解を知ることが出来ます。ぜひご覧ください。

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 8)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, Waldesgespräch (Liederkreis op. 39 no. 3)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

※以下、ネタばれ注意!!

【第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」について】

※この動画の一番最後に、ここで流された演奏のピアニストについて触れられています。彼女らしく感傷とは無縁ですが、その口調にこのピアニストへの深い思いが伝わってきました。

「先日扱った第1曲と同じタイトルの第8曲「異郷にて」について扱いたいと思います。」

演奏が通して流される

アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳

「シューマンの曲も詩も第1曲と非常に違います。第1曲は常にゆっくりのテンポだったが、この曲は動きに満ちています」

第1曲冒頭と第8曲の冒頭の演奏を聴く

「第8曲は、小川のささやきとナイチンゲールの歌声、月光の輝きがこの速いテンポの音楽で表されています。オクターブで弾かれる両手はmfからすぐにデクレッシェンドとなり、自然界すべてが活気のある感動の中にいます」

第8曲の冒頭の演奏が流れる

「第1曲の詩では父母がずっと前に亡くなっているのに対して、この第8曲では、最愛の人が亡くなってから長く経っています」

「この詩の第2連後半では「古き麗しき時代」を思い返しています」

「興奮したテンポは2回中断されます」

該当箇所の演奏が流れる(リタルダンドされる)
"Von der alten,schönen Zeit(古き麗しき時代)"
"Und ist doch so lange tot(そして亡くなってとても長く経った)"

「"Und ist doch so lange tot"は3回繰り返され、歌手はこの悲しい詩句をそれぞれ異なる歌い方で表現しなければならないのです」

「この第8曲の音楽と詩は、ドイツロマン派の頂点とみなしうるかもしれません」

「人の愛は自然の中に飛び立つ。同じことが第1曲にも言えます。でもお互いを比較して、かなりのわくわくする効果の違いを体験してきました」

「1979年(*)に私はルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)とこの歌を録音しました。彼はこの動画を撮影する2週間前の2024年2月に旅立ちました。」

*注:アーメリングの思いのこもった言葉に水を差すようで甚だ恐縮ですが、ルドルフ・ヤンセンと録音したのはおそらく1980年5月2日の放送録音と思われます(5枚組CDボックス"80 jaar"に収録されています)。ちなみに1979年にはイェルク・デームスとPhilipsにスタジオ録音しています。

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【第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」について】

「演奏者については耳と心に先入観を持たないでもらう為、動画の最後に明かします」

「前奏は森の猟師の吹く角笛の響きを表しています」

「日が落ちる頃の話で、詩は男性と美しい女性のロマンティックな出会いについてです。男性はライン川の近くを馬に乗っています。男性は一緒に来て花嫁になるように彼女を誘います。何が起こるか聞いてみましょう」

男声歌手の演奏が通して流れる

アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳(※アーメリングの迫真の朗読を聞いてみてください!)

「前回までに扱った第1曲、第8曲は男性の歌でしたが、今回の第3曲は男性と女性の両方が出てきます。しかしこの曲は一人の歌手(女声もしくは男声歌手)によって歌われます」

男声歌手のローレライが語る箇所の演奏が流れる

女声歌手の演奏が通して流れる

「(女声歌手の演奏を聴いて)本当にドラマですね!話者を示す引用符のないテキストを見てみてください」

「このアイヒェンドルフの詩をシューマンは小説「予感と現代(Ahnung und Gegenwart)」から採りました。」

「この女声の演奏は、さきほどの男声の演奏よりゆっくりでした。テンポは"Ziemlich rasch(かなり速く)"と書かれています。」

「美しい花嫁のあなた!私があなたを家に送ろう(Du schöne Braut! Ich führ dich heim!)」
「heimは英語のhomeで家に連れ帰ろうとしています。これは貪欲に聞こえます。」

女声歌手の演奏の冒頭が流れる

「連れ帰ろうという男の声とローレライの声はとても対照的です。彼女は男の欺瞞と狡猾(Trug und List)に傷つけられたことによって悲しんでいます。
女性が悲しんでいる時の旋律線を描くとき、声色は暗いです。
この録音の女声歌手は男性の語る箇所では暗い音色のままではありません。」

女声歌手の途中の演奏(O flieh! Du weißt nicht,wer ich bin.まで)が流れる

「"あなたは私が誰だか知らない(Du weißt nicht,wer ich bin.)"-ここでは男性に対する怒りもこれから彼にふりかかることへの警告もありません。すると男性は彼女を褒め続けます」

「"あなたが誰か今分かったぞ(Jetzt kenn ich dich)"の前でリタルダンドになります。ここで楽譜には大きな効果が出るようになっています。歌手とピアニストはF(フォルテ)で演奏します」

女声歌手の途中の演奏(Du bist die Hexe Lorelei. まで)が流れる

「この女声歌手はローレライとばれた後の最終連でも比較的ゆっくりのままでまだ友好的に思えます」

「最後の数小節にいたってようやく鋭い子音を伴って復讐の厳しい音色になります」

女声歌手の途中の演奏(ローレライと悟ってから最後まで)が流れる

「こうして角笛の信号は遠くに消えていきます」

別の女声歌手の演奏が通して流れる

「1800年頃以降クレメンス・ブレンターノは中世の物語(Saga)を用いて魔女ローレライの話を書きました。
私もこの有名な伝説の場所のそばを列車や車やボートで通りましたが、私はラッキーでした(※伝説にあるようなことは何も起こらなかったということ)。」

動画内で流された音源の種明かし(流れた順番による)

1.
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

2.
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S)&ジェフリー・パーソンズ(P)

3.
エリー・アーメリング(S)&ルドルフ・ヤンセン(P)

最後に合唱によるジルヒャーの「ローレライ」の音源が流れる

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(参考)

The LiederNet Archive (In der Fremde, Op. 39, No. 8)

The LiederNet Archive (Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

アーメリング&デームスの『リーダークライスOp.39』が収録された29枚組CD

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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」の分析

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 1)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

ブラームスの「知らせ(Botschaft,op. 47 no. 1)」に続いて、エリー・アーメリングによる歌曲分析講座第2弾がアップされました。
アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」です。

「この曲は、ゆっくりで、典型的にロマンティックな感情に満ちています」

「歌曲集『リーダークライス』のテキストの多くはアイヒェンドルフの小説『予感と現在(Ahnung und Gegenwart)』」から採られています」

※ちなみに第1曲「異郷にて」は小説『空騒ぎ(Viel Lärmen um nichts)』(1833年)から採られているそうです。

「この曲のテンポは「速くなく(Nicht schnell)」です」

アーメリングは数行ずつ原詩と英訳を交互に朗読します。

そして別の演奏家による速いテンポの音源が流れます。
「私の意見では、このテンポでは正しい雰囲気が損なわれていると思います」

「冒頭はpで始まり、両親はすでにいないと歌われる5小節目(第3行)はppと指示されています。そして冒頭からピアノ右手最高音に付いているアクセントが5小節目以降は付いていません」

「11,12小節のピアノ右手:5度上行する箇所でクレッシェンド→デクレッシェンドが付いていて、これは「もうすぐ(wie bald = how soon)」を表現しています」

「1回目の"Da ruhe ich auch(その時に私も休むことにしよう)"では"auch(〜も)"に最高音が当てられているが突出しないように歌われるべきです(ソプラノは最高音でボリュームを上げがちなので、ここはpppで歌うぐらいでいい)。
歌う前に考えてみましょう(Think, before you sing!)」

第2連2~3行目"und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,(そして頭上では美しい森の孤独がざわめいている)"を1ブレスで歌うことについて

「2回目の録音ではschöne(美しい)とWaldeinsamkeit(森の孤独)の間にブレスを入れてしまったのが残念(後で種明かしされますが、これはアーメリング&ヤンセンのライヴ録音です)。どうしてブレスを入れてしまったのかというと、このフレーズはどんな人にとっても非常に長いのです。ただしフィッシャー=ディースカウを除いて。彼なら何でも出来るでしょう」

1:02-3:31
1回目の録音。イェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年4月15-21日, La Chaux-de-Fonds録音)→アーメリングは動画後半で1973年録音と言っているがおそらく誤り。「女の愛と生涯」のスタジオ録音(ボールドウィンのピアノ)が1973年なのでそれと混同した可能性あり

11:38-(抜粋) Wie bald ...
13:06-(抜粋) und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,
2回目の録音。ルドルフ・ヤンセンとのライヴ録音(1980年5月2日録音と思われます。全曲はこちらで聞けます)→アーメリングは1979年と言っているがおそらく誤り

15:00-
冒頭に流されたイェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年録音)を再度全部流します。

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In der Fremde, Op. 39, No. 1
 異郷にて

Aus der Heimat hinter den Blitzen rot
Da kommen die Wolken her,
Aber Vater und Mutter sind lange tot,
Es kennt mich dort keiner mehr.
 赤い稲光の向こうにある故郷から
 雲がこちらに流れてくる、
 だが父母はずっと前に亡く
 あそこで私を知る者はもういない。

Wie bald, wie bald kommt die stille Zeit,
Da ruhe ich auch, und über mir
[Rauscht]1 die schöne Waldeinsamkeit,
Und keiner [kennt mich mehr]2 hier.
 もうすぐ、もうすぐ静かな時がやってくる、
 その時に私も休むことにしよう、そして頭上では
 美しい森の孤独がざわめいている、
 そしてここでも私を知る者はもういない。

1 Eichendorff: "Rauschet"
2 Eichendorff: "mehr kennt mich auch"

詩:Joseph Karl Benedikt, Freiherr von Eichendorff (1788-1857), "In der Fremde", appears in Gedichte, in 5. Totenopfer, first appeared in the novella "Viel Lärmen um nichts" (1833)
曲:Robert Schumann (1810-1856), "In der Fremde", op. 39 no. 1 (1840), published 1842 [voice and piano], from Liederkreis von Joseph Freiherr von Eichendorff, no. 1, Wien, Haslinger

このシリーズの次回は同じく『リーダークライス』Op. 39から第8曲(曲目も第1曲と全く同じ"In der Fremde")とのことです。楽しみですね。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

アーメリング&デームスの『リーダークライスOp.39』が収録された29枚組CD

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シューベルト/「ウルフルが釣りをするさま」(Schubert: Wie Ulfru fischt, D 525)を聞く

Wie Ulfru fischt, D 525
 ウルフルが釣りをするさま

[Der]1 Angel zuckt, die Ruthe bebt,
Doch leicht fährt sie heraus.
Ihr eigensinn'gen Nixen gebt
Dem Fischer keinen Schmaus!
Was frommet ihm sein kluger Sinn,
Die [Fische]2 baumeln spottend hin -
Er steht am Ufer fest gebannt,
Kann nicht in's Wasser, ihn hält das Land.
 [Er steht am Ufer fest gebannt,
 Kann nicht in's Wasser, ihn hält das Land.]
 釣り針がぴくっと動き、釣り竿が震えるが、
 容易に逃げられてしまう。
 おまえたち頑固な水の精は
 釣り人にご馳走をくれてやろうとはしない!
 釣り人の賢さなど何の役に立つものか、
 魚たちはばたばたと音を立てて嘲る。
 彼は岸辺で呪縛されたようにじっと立ちすくみ、
 水に入れず陸にとどまるのみ。

Die glatte Fläche kräuselt sich,
Vom Schuppenvolk bewegt,
Das seine Glieder wonniglich
In sichern Fluthen regt.
Forellen zappeln hin und her,
Doch bleibt des Fischers Angel leer,
Sie fühlen, was die Freiheit ist,
Fruchtlos ist Fischers alte List.
 [Sie fühlen, was die Freiheit ist,
 Fruchtlos ist Fischers alte List.]
 滑らかな水面は波立つ、
 鱗の群れに揺らされて、
 男の身体はうきうきと
 安全な水の中へと移動する。
 ますはあちらこちらと跳ね動くが
 釣り人の竿は何もかからないまま、
 あいつらは自由というものを実感していて
 釣り人の古い悪だくみなど実ることがない。

Die Erde ist gewaltig schön,
Doch sicher ist sie nicht!
 [Die Erde ist gewaltig schön,
 Doch sicher ist sie nicht!]
Es senden Stürme Eiseshöh'n;
Der Hagel und der Frost zerbricht
Mit einem Schlage, einem Druck,
Das gold'ne Korn, der Rosen Schmuck -
Den Fischlein [unterm weichen]3 Dach,
Kein Sturm folgt ihnen vom Lande nach.
 地上は非常に美しいが
 安全ではない!
 凍った丘は嵐を送りつけ、
 ひょうや寒気は
 一撃で、一握りで
 黄金色の穀物や薔薇の飾りを壊してしまう。
 柔らかい屋根の下にいる魚たちの後を
 嵐が陸から追うことはないのだ。

1 Schubert (Peters Edition only): "Die"
2 Mayrhofer: "Fischlein"
3 Mayrhofer: "unter's weiche"

詩:Johann Baptist Mayrhofer (1787-1836), "Wie Ulfru fischt"
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Wie Ulfru fischt", op. 21 (Drei Lieder) no. 3, D 525 (1817), published 1823 [voice, piano], Sauer & Leidesdorf, VN 276, Wien

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シューベルトの友人で同居したこともあるヨーハン・マイアーホーファーの詩による1817年1月作曲の「ウルフルが釣りをするさま(Wie Ulfru fischt, D 525)」を聞きたいと思います。
シューベルトは、3連からなる詩をリピート記号で繰り返す完全な有節歌曲として作曲しました。

内容は釣りをする男ウルフルの様子が描かれ、一見有名な「ます(Die Forelle, D 550)」のテキストが思い浮かびますが、「ます」が男には気をつけなさいという女性への警告詩(警告した連をシューベルトはばっさり省略したわけですが...)であるのに対して、こちらの詩では陸は危険が多く、水中は安全というのがテーマのようです。嵐が起きようが水の中は安全だからますは釣り人の悪だくみにおびやかされることなく自由を謳歌しています。それぞれの住処にいれば安全なのだから、生活圏でないところに進出しても無駄だという意味合いもこめているのかもしれませんね。
シューベルトは歌声部をヘ音譜表で記しました。彼はこのテキストから低声歌手をイメージしたのでしょう。実際録音された音源はいずれも男声歌手のものばかりでしたが、テノール歌手も移調して歌っています。途中で長調になりますが、基本はニ短調です。ピアノパートは左手の各拍後半に八分休符を挿入して跳ねるような雰囲気を演出する一方、右手はせわしなく畳みかけるようにジグザグに動き続け、弱拍につけられたアクセントも相まってどことなくコミカルな味わいがあります。何かに常にせかされているような主人公の焦燥感を描いているかのようです(私はモーツァルトの歌曲「自由の歌(Lied der Freiheit, KV 506)」と共通する雰囲気を感じました)。

この曲には2つの稿がありますが、第1稿は私の調べた範囲では録音されていないようです(基本的にはほぼ同じです)。

【冒頭部分】
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【歌声部】
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2_20240302163301 
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アッラ・ブレーヴェ記号(2/2拍子)
ニ短調(d-moll)
Etwas bewegt (1st version)
Mässig (2nd version)

●テキストの朗読(Susanna Proskura)
Schubert, Wie Ulfru fischt, pronunciation

Channel名:Susanna Proskura (オリジナルのサイトはこちら。音が出るので注意!)
ソプラノ歌手プロスクラさんが詩を朗読しています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

かつて喜多尾道冬氏がディースカウのシューベルト歌曲全集での歌いぶりを「一筆書きのよう」と評しましたが、この歌唱を聞いてその言葉を思い出しました。ムーアのめりはりのついたピアノも素晴らしかったです。

●マティアス・ゲルネ(BR), エリック・シュナイダー(P)
Matthias Goerne(BR), Eric Schneider(P)

ゲルネは重量感のある声ですが、軽快に歌っています。

●ズィークフリート・ローレンツ(BR), ノーマン・シェトラー(P)
Siegfried Lorenz(BR), Norman Shetler(P)

ローレンツはハイバリトンの爽やかな美声で歌い、ディクションも美しいです。シェトラーが生き生きと演奏していて良かったです。

●クルト・モル(BS), コート・ガルベン(P)
Kurt Moll(BS), Cord Garben(P)

シューベルトが低声を想定した歌にふさわしい深みのある声でモルが歌っています。速めのテンポ設定はモルの解釈なのでしょうか。付点八分音符と十六分音符の組み合わせをどちらも八分音符で歌うなど若干リズムにこだわっていない感じですが(速すぎて小回りがきかないのかも)、魅力的な歌で個人的には好きな演奏です。ガルベンはパリパリ弾いて効果的でした。

●コルネーリウス・ハウプトマン(BS), シュテファン・ラウクス(P)
Cornelius Hauptmann(BS), Stefan Laux(P)

同じバス歌手でもモルと比べるともっとバリトンのような穏やかさが感じられる歌でした。

●ヤスパー・シュヴェッペ(BR), フクダ・リコ(Fortepiano)
Jasper Schweppe(BR), Riko Fukuda(Fortepiano)

シュヴェッペは節が進むたびに旋律に装飾を加えていたのが興味深かったです。フクダさんのフォルテピアノも味わい深いです。

●クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)
Christoh Prégardien(T), Andreas Staier(Fortepiano)

低声用の曲といってもそれほど極端に低い音が出てくるわけではないので、移調すればテノールでも問題ないですね。プレガルディアンは珍しく装飾を全く入れずに楽譜通りに生き生きと歌っていました。冒頭のAngel(釣り針)をマイアホーファーのオリジナルの男性名詞として歌っていました(冠詞をdieではなくderで歌っています)。他の歌手たちは女性名詞として扱ってdie Angelと歌っていることが多いようです。

●イアン・ボストリッジ(T), ジュリアス・ドレイク(P)
Ian Bostridge(T), Julius Drake(P)

やはりボストリッジのようなテノールによって歌われると清涼感が増しますね。ドレイクが基本的にスタッカート気味に弾むように演奏して、曲の面白みが増した感じがしました。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de (Wie Ulfru fischt, D 525)→※サーバーの不具合なのか、たまに接続できないことがあります。

Graham JohnsonによるWie Ulfru fischt, D 525の解説 (Hyperion Records)

Johann Mayrhofer: Gedichte: 1824 (p. 42)

Wikipedia - Johann Mayrhofer (Dichter) (ドイツ語)

Wikipedia - Johann Mayrhofer (英語)

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シューベルト/「湖畔で」(Schubert: Auf dem See, D746)を聞く

Am See, D746
 湖畔で

In des Sees Wogenspiele
Fallen durch den Sonnenschein
Sterne, ach, gar viele, viele,
Flammend leuchtend stets hinein.
 湖の波の戯れの中へ
 陽光を通って
 星々が落ちて行く、ああ、とても多く、多く、
 きらきら輝きながら、絶えることなく。

Wenn der Mensch zum See geworden,
In der Seele Wogenspiele
Fallen aus des Himmels Pforten
Sterne, ach, gar viele, viele.
 人が湖になったら
 魂の波の戯れの中へ
 天国の門から
 星々が落ちて行く、ああ、とても多く、多く。

詩:Franz Seraph Ritter von Bruchmann (1798-1867)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Am See", D 746 (1817?/1822?), published 1831

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シューベルトを囲む音楽やパーティーの会シューベルティアーデは数年フランツ・フォン・ブルッフマンの家で催されました。ブルッフマンは裕福な家庭に生まれ、シューベルトのパトロンでもありました。そのブルッフマンのテキストにシューベルトは5曲の独唱歌曲を作曲しましたが、そのうちの1つが「湖畔で(Am See, D746)」です(個人的に大好きな作品の一つです)。

テキストは、第1連で太陽の光を通って、空の星々が湖の中へ落ちていくと歌われ、第2連では人が湖になったならば魂の湖の中へ天空の星々が落ちていくと歌われます。水鏡に映る星を描写しただけでなく、人間の魂を湖になぞらえているのでしょう。人が亡くなってお星さまになっても湖の水鏡に映れば身近に感じられるということなのでしょうか。星々が落ちるのが月明かりによるのではなく太陽の光というところも詩の解釈を難しく感じさせます。

シューベルトは「水の上で歌う(Auf dem Wasser zu singen, D774)」や「ゴンドラの船頭(Gondelfahrer, D808)」など水を扱った多くの作品同様、6/8拍子を採用し、細やかな十六分音符の分散和音で水の流れや波の戯れを描いています。ちなみにこの分散和音は、歌声部の旋律とは基本的に独立していますが、第1連の後のピアノ間奏冒頭は、直前の歌の旋律をエコーのように右手の最高音で繰り返します。

【ピアノ前奏】
Ex1 
【第1連~ピアノ間奏】
Ex2 

第2連が始まると、ピアノパートの左手バス音が変ホ音(Es)から順に下行していきます(変ホ長調のドシラソファミレドシと下行します)。歌は1小節遅れて変ホ音(Es)つまりドからファまで下行していきます。ここで第1連の音楽とは異なる何かが生じているということが聞き手に伝わりますね(「人が湖になったら」と歌われる個所です)。

【第2連】
Ex31_20240212160001 
Ex32 

第2連の歌詞が終わっても音楽は続き、第2連第2行から詩を繰り返します。第4行(Sterne, ach, gar viele, viele)の繰り返しは1回目の歌声部を変奏しています。特に"viele, viele"は2回目では間に四分休符+八分休符が入り、1小節から2小節に伸びています。それによってリタルダンドをしているような効果があり、終結に向かっていることを予感させます。

【第2連第4行(1回目)】
Ex41 
【第2連第4行(2回目)】
Ex42 

最後にもう1度第4行を繰り返しますが、"Sterne, ach, gar"のメリスマがすべて十六分音符で、ピアノの分散和音も十六分音符なので、歌手のテクニックの聞かせどころでありながら、歌とピアノで息を合わせる必要もあり、演奏者たちにとって気を使うところなのではないかと想像されます。

【第2連第4行(3回目)】
Ex5 

ちなみにシューベルトは、ゲーテの詩による「湖上にて(Auf dem See)」という歌曲を以前に作曲していますが、拍子、調、作品冒頭に記載した標示のすべてがブルッフマンによる「湖畔にて」と同じだったという事実に驚かされます。それが無意識的なものなのかどうかは分かりませんが、シューベルトの湖を表現する時の手法を知るうえで一つのヒントになるかもしれません。

【ゲーテの詩による「湖上にて(Auf dem See, D543)」冒頭】
Auf-dem-see 

6/8拍子
変ホ長調(Es-dur)
Mäßig

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

流麗に美しく歌うディースカウとムーアの演奏に聞きほれます。

●マティアス・ゲルネ(BR), アンドレアス・ヘフリガー(P)
Matthias Goerne(BR), Andreas Haefliger(P)

聞き手を優しく慰撫するようなゲルネの歌に引き付けられました。第2連2行目の"Wogenspiele"の"-spiele"に付けられる前打音が聞き慣れた音数より少なかったのは新全集がそうなっているのか、いつか確認してみたいと思います(装飾音の解釈の違いなのかもしれませんが)。名テノール、ヘフリガーの息子アンドレアスのピアノは1連から2連に移る間奏でいったん流れを止めていたのが興味深かったです。

●藤村実穂子(MS), ヴォルフラム・リーガー(P)
Mihoko Fujimura(MS), Wolfram Rieger(P)

藤村実穂子の磨かれた声の質感が速めのテンポ設定にもかかわらずしっとりと伝わってきます。ベテラン、リーガーもぴったり合わせていました。

●アンナ・プロハスカ(S), エリック・シュナイダー(P)
Anna Prohaska(S), Eric Schneider(P)

若手から中堅にさしかかったプロハスカは世界中の歌劇場から引く手あまたのソプラノです。声質に独自の色があって華がありますね。

●アニヤ・ハルテロス(S), ヴォルフラム・リーガー(P)
Anja Harteros(S), Wolfram Rieger(P)

ハルテロスの歌唱は円熟した彫りの深い解釈でとても魅力的でした。

●イアン・ボストリッジ(T), ジュリアス・ドレイク(P)
Ian Bostridge(T), Julius Drake(P)

若かりし頃のボストリッジの甘い美声を味わえる歌唱でした。"viele(多くの)"を繰り返す時の抑えた響きが美しかったです。

●ハインリヒ・シュルスヌス(BR), フランツ・ルップ(P)
Heinrich Schlusnus(BR), Franz Rupp(P)

1931年録音。シュルスヌスは所々音価を伸ばして甘美に歌っていました。

ちなみにエリー・アーメリング&ドルトン・ボールドウィン(Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P))も1983年にEtceteraレーベルにこの曲を録音しています。こちらのリンク先の11番目の矢印マークをクリックすると少しだけですが試聴できます。彼女らしい温かみのある歌唱です。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Franz von Bruchmann (Wikipedia)

Graham JohnsonによるAm See, D746の解説 (Hyperion Records)

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コルネーリウス/「一つの音(Cornelius: Ein Ton, Op. 3, No. 3)」(歌曲集『悲しみと慰め(Trauer und Trost, Op. 3)』より)を聞く

Ein Ton, Op. 3, No. 3
 一つの音

Mir klingt ein Ton so wunderbar
In Herz und Sinnen immerdar.
Ist es der Hauch, der Dir entschwebt,
Als einmal noch Dein Mund gebebt?
Ist es des Glöckleins trüber Klang,
Der Dir gefolgt den Weg entlang?
Mir klingt der Ton so voll und rein,
Als schlöß er Deine Seele ein.
Als stiegest liebend nieder Du
Und sängest meinen Schmerz in Ruh.
 一つの音がとても素晴らしく
 いつも私の心と感覚に響いている、
 それはあなたから漏れて消えた息吹だろうか、
 かつてまだあなたの口が震えていたときの。
 それとも悲しみの鐘の響きだろうか、
 道沿いにあなたの後ろで奏されたあの響き。
 私にはその音はとても豊かで澄んで響く、
 あたかもあなたの魂を包んでいるかのように。
 あなたが愛をこめて降りてきて
 私の苦しみを鎮めて歌ってくれるかのように。

詩:Peter Cornelius (1824-1874), "Ein Ton", appears in Gedichte, in 2. Zu eignen Weisen, in Trauer und Trost
曲:Peter Cornelius (1824-1874), "Ein Ton", op. 3 no. 3 (1854), from Trauer und Trost, no. 3

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ペーター・コルネーリウス(Peter Cornelius)は自作の歌曲のテキストをほとんど自分で手掛ける文才の持ち主でした。ヴァイオリニスト兼俳優としてキャリアを始め、音楽評論家として雑誌に投稿もしていました。多くの詩人(アイヒェンドルフ、ハイゼ)や音楽家(リスト、ヴァーグナー等)とも交流があり、代表作の歌劇『バグダッドの理髪師』の初演はリストが指揮をしました。歌曲の作曲が多く、特に歌曲集『クリスマスの歌Op. 8』は現在まで広く親しまれています。

今回取り上げる歌曲「一つの音(Ein Ton)」はカール・ヘスターマン(Carl Hestermann: 1804-1876)という商人・政治家に捧げられた6曲からなる歌曲集『悲しみと慰め(Trauer und Trost, Op.3)』の第3曲で、1854年11月にヴァイマル(Weimar)で自身のテキストによって作曲されました。

この歌曲、まず聞いていただくとあることに気づくと思いますので、最初に演奏を聞いてみましょう。

●フェリスィティ・ロット(S), グレアム・ジョンソン(P)
Felicity Lott(S), Graham Johnson(P)

チャンネル名:SOLRACPILINO EL IMPROVISADOR CUBANO(オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ますので注意!)

歌手は最初から最後までロ音(H)のみを歌います。これがテキストのタイトル"Ein Ton(一つの音=ある音)"に由来していることは間違いないでしょう。ピアノパートが陰影に富んだ美しいハーモニーを奏でる為、曲として全く違和感なく成立していますが、こうした作品は他の作曲家の前例が何かあるのでしょうか。少なくとも古今の歌曲においては私の知る限り他に例はないと思います。

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ピアノパートの前奏と後奏でも右手のみでロ音が2回奏でられますが、主人公が「あなた(Du)」と呼ぶ相手(おそらく恋人)が亡くなった際の葬列の鐘の音と想像されます。

歌声部はロ音しか歌わないので、あとはリズムによって変化をつけますが、基本的に重要な音節に長い音価を与えて語るようなリズムが与えられています。ただ、「Glöckleins trüber (Klang)(鐘の悲しい(響き))」と歌われるところのみシンコペーションのリズムになり、弔いの鐘への主人公の動揺を表現しているように思われます。

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音楽はホ短調(e-moll)が基本で、テキスト7-8行(あの響きはとても豊かであなたを包んでいるかのようだ)で畳みかけるように盛り上がり、亡き恋人の歌ってくれる響きが主人公の苦しみを和らげてくれるという9-10行でホ長調(E-dur)に転調して、主人公の気持ちが救われたことを暗示します。後奏で再びホ短調に戻り、後奏の最後のロ音が2回鳴り、主人公の中で恋人の響きが途切れることなく続いていくことを示しているかのようです。

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3/4拍子
ホ短調(e-moll)
Etwas bewegt (Poco mosso)

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヘルマン・ロイター(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hermann Reutter(P)

F=ディースカウは同音反復でも演劇的な素晴らしさが際立っています。作曲家ロイターのピアノも魅力的でした。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

プライは落ち着いたテンポでソット・ヴォーチェを美しく貫きます。ホカンソンの繊細な響きの美しさも聞きどころです。

●マーガレット・プライス(S), グレアム・ジョンソン(P)
Margaret Price(S), Graham Johnson(P)

プライスの豊かな声も素敵でした。ジョンソンも緩急自在でいい演奏でした。

●ロッテ・レーマン(S), ポール・ウラノウスキ(P)
Lotte Lehmann(S), Paul Ulanowsky(P)

レーマンの落ち着いたテンポで語るような歌が説得力がありました。ウラノウスキも細やかな響きでした。

●2024年が生誕150年(没後70年)のチャールズ・アイヴズによる作品「一つの音」
Charles Ives (1874-1954): Ein Ton
トマス・ハンプソン(BR), アルメン・グゼリミアン(P)
Thomas Hampson(BR), Armen Guzelimian(P)

アイヴズは「一つの」音に全くこだわっておらず、美しい哀感漂う作品に仕上がっていました。ハンプソン、グゼリミアンともに素晴らしい演奏です。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ペーター・コルネリウス(Wikipedia)

Peter Cornelius (Komponist)(Wikipedia)

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メンデルスゾーン/ヴェネツィアのゴンドラ歌(Mendelssohn: Venetianisches Gondellied, Op. 57 no. 5)を聞く

Venetianisches Gondellied, Op. 57 no. 5
 ヴェネツィアのゴンドラ歌

Wenn durch die Piazetta
Die Abendluft weht,
[Dann]1 weißt du, Ninetta,
Wer wartend [hier]2 steht.
Du weißt, wer trotz Schleier
Und Maske dich kennt,
[Du weisst, wie die Sehnsucht
Im Herzen mir brennt.]3
 広場を
 夕風が吹きわたる時、
 きみは知っている、ニネッタよ、
 誰がここに立って待っているのかを。
 きみは知っている、ベールと
 仮面を付けていてもきみだと分かるのは誰なのかを。
 きみは知っている、憧れが
 ぼくの心で燃え上がっていることを。

Ein Schifferkleid trag' ich
Zur selbigen Zeit,
Und zitternd dir sag' ich:
„Das Boot [ist]4 bereit!
[O, komm'! jetzt, wo Lunen]5
Noch Wolken umziehn,
Laß durch die Lagunen,
[Geliebte]6 uns fliehn!“
 船頭の服を、
 同じころ僕は着て、
 震えながらきみに言うんだ、
 「ボートの準備は出来た!
 おお おいで!さあ、月を
 雲が覆うところに、
 潟を抜けて
 恋人よ、逃げよう!」

1 Sommer: "So"
2 Sommer: "dort"
3 Fischhof, Mendelssohn: "Du weisst, wie die Sehnsucht / Im Herzen mir brennt." ; Sommer: "Du weisst, wie die Sehnsucht / Im Herzen hier brennt." ; Original: "Wie Amor die Venus / Am Nachtfirmament."
4 Fischhof, Mendelssohn, Sommer: "ist" ; Original: "liegt"
5 Schumann: "O komm, wo den Mond"
6 Fischhof, Mendelssohn, Sommer: "Geliebte" ; Original: "Mein Leben,"

原詩:Thomas Moore (1779-1852), "When through the Piazzetta"
独訳:Ferdinand Freiligrath (1810-1876), "When through the Piazetta"
曲:Felix Mendelssohn (1809-1847), "Venetianisches Gondellied", op. 57 no. 5 (1842)

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メンデルスゾーンの「ヴェネツィアの舟歌」と言って多くの人が最初に思い浮かべるのは、ピアノ独奏のための『無言歌集(Lieder ohne Worte)』の中の数曲でしょう。私もはるか昔の記憶ですが、Op.30-6の「ヴェネツィアの舟歌」に非常に惹かれて、家の電子ピアノを弾いて物哀しい雰囲気に浸っていたものでした。

ダニエル・バレンボイムの演奏で聞いてみましょう。

Barenboim plays Mendelssohn Songs Without Words Op.30 no.6 in F sharp Minor - Venetian Gondellied

今でも全く色あせない魅力に聞き入ってしまいます。『無言歌集』の中の多くの表題はほとんどがメンデルスゾーン自身によるものではないそうですが、「ヴェネツィアの舟歌」と題された3曲(作品19-6, 30-6, 62-5)はメンデルスゾーン自身による表題なのだそうです(Wikipedia)。

メンデルスゾーンは裕福な家に生まれ、20歳で当時ほとんど忘れられていたというバッハの『マタイ受難曲』を蘇演して大成功をおさめますが、この年から数年間ヨーロッパ各地に旅行に出かけます。その時にヴェネツィアにも行き、お目当ての絵画を見たりして研鑽を深めていたのですが、ヴェネツィアの舟歌の原体験はこの時だったのではないでしょうか。『無言歌集』の3曲の「ヴェネツィアの舟歌」のいずれもが短調の哀愁こもった曲調であるというのも興味深いです(途中で長調になる場合もありますが)。

アイルランドの詩人トマス・ムーアの詩にフライリヒラートが独訳したテキストは、ゴンドラ漕ぎの男が恋人ニネッタと駆け落ちする為にゴンドラの準備を整え、ニネッタに向けて顔を隠して早く来ておくれと(心の中で)語りかけます。

メンデルスゾーンの歌曲「ヴェネツィアのゴンドラ歌(舟歌)」もピアノ曲同様短調のメランコリックな曲調が聞き手の心を一瞬でとらえます。

第1連はゴンドラを漕ぐさま(もしくは寄せては返す波の動き)を思わせるピアノ右手と付点四分音符のバス音が、聞き手をゴンドラ内の心地よい揺れ(とは言っても私は乗ったことはないですが)に誘います。2行目(Abendluft weht)と6行目(Maske dich kennt)だけ歌声部とピアノ右手が同じ音を奏でますが、それ以外の箇所は歌とピアノは別の動きをします(ゴンドラ漕ぎの歌声はゴンドラの進行にほぼ影響を与えないと示唆しているのでしょうか)。

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第2連でこれまでのロ短調から平行調のニ長調に転調して、4行目までは明るい響きで曲調に変化をもたらします。テキストでは「ボートの準備が出来た」というところまでですね。

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5行目"O, komm'! jetzt, wo Lunen / noch Wolken umziehn"から元の短調の響きに戻りますが、その後で"O, komm'! jetzt"を数回繰り返す際にピアノ左手のバス音が半音ずつ上がり、歌声部のsfやクレッシェンドも相まって、主人公の気持ちの高揚感が否応なく伝わってきます。

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第2連が終わると、再び第1連の最初の4行分をほぼ同じメロディーで繰り返して、最後の"wartend(待ちながら)"をフェルマータで強調して、メランコリックな曲調のまま締めくくります。

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6/8拍子
ロ短調(h-moll)→ニ長調(D-dur)→ロ短調(h-moll)
Allegretto non troppo

●パトリック・グラール(T), ダニエル・ハイデ(P)
Patrick Grahl(T), Daniel Heide(P)

繊細で柔らかい声のグラール、最初に聞いただけでその個性に引き込まれました。テキストの主人公はここでは決して強引ではなく、今で言う優男の印象です。ハイデは今後のリート界を背負って立つピアニストになるのではと思います。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

心理描写を見事に表現するF=ディースカウに脱帽です。いつもはクールなサヴァリシュが間奏でテンポをかなり落とすのが珍しく感じました。暗から明への転換を表現しているのでしょうか。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

人生が集約されているかのようなプライの味わい深い歌唱に胸を打たれます。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

ディクションの美しいシュライアーで聞くと、情景がまざまざと浮かんできます。オルベルツも美しい響きです。

●ナタリ・ステュッツマン(CA), ドルトン・ボールドウィン(P)
Nathalie Stutzmann(CA), Dalton Baldwin(P)

ステュッツマンの温かみのある声が、舟歌の揺れるリズムも相まって心地よく感じられました。

●リセット・オロペサ(S), ヴラッド・イフティンカ(P)
Lisette Oropesa(S), Vlad Iftinca(P)

楽譜を見ながら聞くことが出来ます。オロペサは初めて聞きましたが、ヘンドリックスと系統が似ているように感じました。細身だけれど芯があるように感じました。

●ハンス=イェルク・マンメル(T), アルテュール・スホーンデルヴルト(Hammerklavier)
Hans-Jörg Mammel(T), Arthur Schoonderwoerd(Hammerklavier)

他の演奏よりもかなりゆっくりめのテンポでメランコリックなヴェネツィアの情景に浸っているかのようです。

●アントニー・ロルフ・ジョンソン(T), グレアム・ジョンソン(P)
Anthony Rolfe Johnson(T), Graham Johnson(P)

ロルフ・ジョンソンの爽やかな声が切ない音楽と美しく溶け合っていました。

●シューマンによる作品:ヴェネツィアの歌II, Op. 25, No. 18
Schumann: Venetianisches Lied II, Op. 25, No. 18
ブリン・ターフェル(BR), マルコム・マーティノー(P)
Bryn Terfel(BR), Malcolm Martineau(P)

シューマンはこのテキストによる歌曲を歌曲集『ミルテ(Myrthen, Op. 25)』の中に置き、メンデルスゾーンとは全く対照的な軽快で明るい曲にしています。野太い印象のターフェルの歌は船頭のイメージに合っていると思います。

●アドルフ・イェンゼンによる作品:広場を通って, Op. 50 No. 3
Adolf Jensen: Wenn durch die Piazzetta, Op. 50 No. 3
アントニー・ロルフ・ジョンソン(T), グレアム・ジョンソン(P)
Anthony Rolfe Johnson(T), Graham Johnson(P)

かなり凝った作品ですね。フランス音楽のような色彩感と茶目っ気が感じられました。歌の最後が高くあがるのは意外性があって興味深かったです。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Thomas Moore (Wikipedia)

フェルディナント・フライリヒラート(Wikipedia)

Ferdinand Freiligrath (Wikipedia)

大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その66
バルカローレ:ヴェネツィアのゴンドラで口ずさまれた歌をショパンらが芸術作品に!

ゴンドラ (船)(Wikipedia)

※ゴンドラについて大変参考になるサイトがいくつかありましたのでご紹介します。

「記録庫 ・ イタリア・絵に描ける珠玉の町・村、 そしてもろもろ!」
ゴンドラ についてのあれこれを

「新・ イタリア・絵に描ける珠玉の町・村、 そしてもろもろ!」
ゴンドリエーリ・デ・ヴェネツィア ・ ゴンドラ漕ぎ  その歴史と現在の姿

「イタリアの歴史解説 | 吉田・マリネッロ・マキ / Maki Yoshida Marinello」
ヴェネツィアのゴンドラとは何か

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ブラームス/二重唱曲「海」(Brahms: Die Meere, Op. 20/3)を聞く

Die Meere (Nach dem Italienischen), Op. 20/3
 海(イタリアの詩による)

Alle Winde schlafen
Auf dem Spiegel der Flut;
Kühle Schatten des Abends
Decken die Müden zu.
 すべての風は眠りにつく、
 水鏡の上で。
 夕暮れの涼しい影が
 疲れた者たちを包み込む。

Luna hängt sich Schleier
Über ihr Gesicht,
Schwebt in dämmernden Träumen
Über die Wasser hin.
 月はベールを
 彼らの顔の上にかぶせ
 黄昏の夢の中で
 水の上に浮かぶ。

Alles, alles stille
Auf dem weiten Meer!
Nur mein Herz will nimmer
Mit zur Ruhe gehn;
 みな、なにもかも静かだ、
 広大な海の上は!
 ただ私の心だけは決して
 眠ろうとしない。

In der Liebe Fluten
Treibt es her und hin,
Wo die Stürme nicht ruhen,
Bis der Nachen sinkt.
 愛の洪水に
 わが心はあちらこちらへと流される、
 そこでは嵐はやむことがない、
 小舟が沈むまで。

詩:Wilhelm Müller (1794-1827), "Die Meere", appears in Lyrische Reisen und epigrammatische Spaziergänge, in Lieder aus dem Meerbusen von Salerno 
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Die Meere", op. 20 (Drei Duette) no. 3 (1860), published 1862 [vocal duet for soprano and alto with piano], Bonn, N. Simrock

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今回はブラームスの非常に美しい二重唱曲を聞きたいと思います。

1858–60年に作曲され、1861年に「ソプラノ、アルトとピアノ伴奏のための3つの二重唱曲(Drei Duette für Soran und Alt mit Begleitung des Pianoforte, Op. 20)」として出版された中の3曲目が「海(Die Meere)」です。ちなみに"Die Meere"というのは"Das Meer"の複数形になります。

テキストはシューベルトの『美しい水車屋の娘』『冬の旅』でもお馴染みのヴィルヘルム・ミュラーで、『サレルノ湾の歌(Lieder aus dem Meerbusen von Salerno)』という11篇からなる詩集の2番目に置かれています。

詩の内容は海上にいる主人公の夕方から夜にかけての描写と心情が描かれています。なにもかもが眠りについた海の上の静かな光景と、一方であふれんばかりの愛のために決して落ち着かないままの主人公の心の内が対比されています。

ブラームスは6/8拍子の舟歌のスタイルで作曲しています。物悲しく流麗なメロディーはメンデルスゾーンの「ヴェネツィアの舟歌」を思い起こさせます。詩の2連、4連の各2行目最後の音節(Ge-sicht / hin)の息の長いメリスマは聞きどころの一つと言えるでしょう。

ピアノパートは舟が揺れながらゆっくり進むような左手の音形と、装飾音(プラルトリラー)のついた物憂い右手が極上の美しさで魅了されます。右手は常に2声で進み、時に歌声2声と重なり、時に歌声と離れ、ハーモニーの綾を聞かせてくれます。
詩の2連ずつを1まとまりにした有節形式ととらえることが出来ますが、詩の最後の2行(Wo die Stürme nicht ruhen,/Bis der Nachen sinkt.)だけが繰り返され、同主調のホ長調に転調し、明るい響きで歌は終わります。その後、ピアノ後奏で再びホ短調に戻り、メランコリックな雰囲気のまま曲が締めくくられます。この明暗の入れ替わりは海の上でたゆたう主人公の心の内を反映しているかのようで素晴らしいです。

ソプラノとアルトのための歌と指定されていますが、テキストの内容から男声2人によって歌われても全く問題ないと思います。

【冒頭】
Die-meere-beginning 

【最後の2行の繰り返し(ホ短調→ホ長調)とピアノ後奏(ホ長調→ホ短調)】
Die-meere-ende_20240113184101  

6/8拍子
ホ短調(e-moll)
Andante

●エディト・マティス(S), ブリギッテ・ファスベンダー(MS), カール・エンゲル(P)
Edith Mathis(S), Brigitte Fassbaender(MS), Karl Engel(P)

マティス、ファスベンダー、エンゲルの黄金トリオによる名演です!

●ユリアーネ・バンゼ(S), ブリギッテ・ファスベンダー(MS), コート・ガルベン(P)
Juliane Banse(S), Brigitte Fassbaender(MS), Cord Garben(P)

師弟によるデュエットです。バンゼの柔らかい声とそっと寄り添うファスベンダーの響きが美しいです。

●ジュリー・カウフマン(S), マリリン・シュミーゲ(MS), ドナルド・サルゼン(P)
Julie Kaufmann(S), Marilyn Schmiege(MS), Donald Sulzen(P)

女声2人の声がとても溶け合っていて美しかったです。

●チャーリー・ドラモンド(S), ジェイド・モファット(MS), ジェイムズ・ベイリュー(P)
Charlie Drummond(S), Jade Moffat(MS), James Baillieu(P)

Channel名:Independent Opera(オリジナルのサイトはこちらのリンク先:音が出ますので注意!)
2017年Wigmore Hallでのライヴ映像。実際に歌っている表情を見ながら聞くのもいいですね。ベイリューは今引く手あまたの歌曲ピアニストです。

●ピアノパートのみ(マイヤ・メリニチェンコ(P))
Brahms - Die Meere - Sopran and Alt - accompaniment
Майя Мельниченко(P)
※この動画は共有が出来ない為、こちらのリンク先からご覧ください。(音が出ますので注意!)
Channel名:Майя Мельниченко
ピアノの右手がほぼ二重唱のメロディーと一致しているので、ピアノパートだけで聞いても美しいです。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Vermischte Schriften von Wilhelm Müller. Zweites Bändchen. Leipzig: F. A. Brockhaus, 1830 (p.104)
Lieder aus dem Meerbusen von Salerno (11篇からなる詩集。Die Meereは2番目に置かれている)
※「110ページ」のリンクをクリックして104ページまで上にスクロールすると"Die Meere"の詩が見られます。

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シューベルト/「あなたと二人きりでいると」(Schubert: Bei dir allein!, D 866/2)を聞く

Bei dir allein!, D 866/2
あなたと二人きりでいると!

Bei dir allein empfind' ich, daß ich lebe,
Daß Jugendmut mich schwellt
Daß eine heit're Welt
Der Liebe mich durchbebe;
Mich freut mein Sein
Bei dir allein!
 あなたと二人きりでいると、私は感じる、生きていることを、
 若い気力が膨らむことを、
 愛の明るい世界が
 私の全身を震わせることを。
 私はここにいることが嬉しい、
 あなたと二人きりでいると!

Bei dir allein weht mir die Luft so labend,
Dünkt mich die Flur so grün,
So mild des Lenzes Blüh'n,
So balsamreich der Abend,
So kühl der Hain,
Bei dir allein!
 あなたと二人きりでいると、風が爽快に吹いてきて
 野原はこんなに緑に見える、
 春にはとても穏やかに花咲き、
 夕暮れはよい香りで満ち溢れ、
 林はこんなにも涼しい、
 あなたと二人きりでいると!

Bei dir allein verliert der Schmerz sein Herbes,
Gewinnt die Freud an Lust!
Du sicherst meine Brust
Des angestammten Erbes;
Ich fühl' mich mein
Bei dir allein!
 あなたと二人きりでいると、苦痛はつらくなくなり、
 喜びや愉悦を得る!
 あなたは私の胸を守ってくれる、
 古来の財産である私の胸を。
 私を自分自身のものだと感じる、
 あなたと二人きりでいると!

詩:Johann Gabriel Seidl (1804-1875)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Bei dir allein!", op. 95 (Vier Refrainlieder) no. 2, D 866 no. 2 (1828?), published 1828 [ voice and piano ], Thaddäus Weigl, VN 2794, Wien

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シューベルトはザイドルの4つの詩に作曲し、『4つのリフレイン歌(Vier Refrainlieder, Op. 95)』として1828年8月13日に出版されました。作曲年については、ドイチュの目録(Franz Schubert. Thematisches Verzeichnis seiner Werke in chronologischer Folge)では1828年夏(?)と記載されていて、確定していないようです。自筆譜も4曲中第1曲のスケッチが残っているだけで、第2曲を含む他の曲は紛失してしまったそうです。その出版譜の2曲目に置かれたのが、「あなたのそばにいるだけで!(Bei dir allein!, D 866/2)」です。
ちなみに「リフレイン」というのは音楽や詩の繰り返しのことで、この4つの曲集では各連の最終行が同じ詩句になっていることを指していると思われます。この第2曲では各連最初の行も同じ詩句で始まります。

このザイドルのテキストは、手書き原稿の形でシューベルトに渡されたらしく、シューベルトの生前(1826年)に出版されたザイドルの詩集には掲載されていないそうです(ソースはこちら)。

詩の内容は、主人公があなたと一緒にいると生きていると感じ、愛の世界に身を震わせることを感じ、自然の素晴らしさを感じ、苦痛が喜びに変わると高らかに述べます。あなたというのはおそらく恋人のことなのでしょう。もちろん恋人に限らず人生において大切な家族・友人に置き換えて読んでもいいと思います。

シューベルトの曲は、冒頭の「速すぎず、だが燃えるように」という指示が示しているように、熱くたぎる急流のように情熱的に進んでいきます。全体はA-B-A'の形で、B(第2連)でホ長調(E-dur)に転調して自然に心癒される落ち着いた雰囲気に変わり、最後のA'で元の躍動感を取り戻します。聴く人をわくわくさせてくれる作品だと思います。

2/4拍子
変イ長調(As-dur)
Nicht zu geschwind, doch feurig (速すぎず、だが燃えるように)

●ヴェルナー・ギューラ(T), クリストフ・ベルナー(Fortepiano)
Werner Güra(T), Christoph Berner(Fortepiano)

喜びが爆発しているかのようなギューラとベルナーの急速なテンポ設定が聴き手をわくわくさせてくれます。

●クリスティアン・ゲアハーアー(BR), ゲロルト・フーバー(P)
Christian Gerhaher(BR), Gerold Huber(P)

ゲアハーアーのハイバリトンの声が軽快なリズムに乗っていてとても良かったです。フーバーもいいアンサンブルでした。

●クリストフ・ゲンツ(T), ヴォルフラム・リーガー(P)
Christoph Genz(T), Wolfram Rieger(P)

爽やかな声のテノール、Ch.ゲンツと、ベテランピアニストのリーガーの雄弁なピアノの緊密なアンサンブルに惹かれました。

●イアン・パートリッジ(T), ジェニファー・パートリッジ(P)
Ian Partridge(T), Jennifer Partridge(P)

イアン・パートリッジの素直で美しい歌唱に引き付けられました。また、妹のジェニファーの沸き立つようなピアノの素晴らしさは特筆すべきでしょう。

●アン・ソフィー・フォン・オッター(MS), ベンクト・フォーシュバリ(P)
Anne Sofie von Otter(MS), Bengt Forsberg(P)

オッターの安定した美声でこういう躍動的な歌を聴くのもいいなぁと思って聞いていました。フォーシュバリはテンポの揺れがなかなか激しいですが、最終的にはうまくまとめていました。

●グンドゥラ・ヤノヴィツ(S), チャールズ・スペンサー(P)
Gundula Janowitz(S), Charles Spencer(P)

ヤノヴィツのキャリア後期の録音で、肩の力の抜けた自然体の歌唱がなんとも心地よく感じられます。装飾音を除いて歌っているのもなんらかの考えがあってのことなのでしょう。

●カミラ・ティリング(S), パウル・リヴィニウス(P)
Camilla Tilling(S), Paul Rivinius(P)

ティリングのリリックな声による細やかな表情付けが素敵で、歯切れのよいリヴィニウスのピアノも良かったです。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヘルムート・ドイチュ(P)
Matthias Goerne(BR), Helmut Deutsch(P)

ゲルネはこういう曲では重くならず、絶妙な語り口で聞かせてくれます。ドイチュも素晴らしかったです。

ちなみにエリー・アーメリング&ドルトン・ボールドウィン(Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P))もEtceteraレーベルにこの曲を録音していて、国内盤として発売されたこともあります。こちらのリンク先の13番目の矢印マークをクリックすると少しですが試聴できます。アーメリングの歌は成熟した女性が若い恋人を相手にしているような余裕が感じられて個人的にとても好きな演奏です。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de: Bei dir allein, D 866 Opus 95 -2

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