ブラームス「嘆き」(Brahms: Klage, Op. 105, No. 3)を聴く

Klage, Op. 105, No. 3
 嘆き

Feins Liebchen, trau du nicht,
Daß er dein Herz nicht bricht!
Schön Worte will er geben,
Es kostet dein jung Leben,
Glaub's sicherlich!
 素敵な恋するお嬢さん、信じては駄目よ、
 あの男があなたの心をズタズタにするわけがないなんて!
 彼は美辞麗句を並べ立てるでしょうが、
 それは若いあなたの命取りになるわ
 このことを絶対に信じていてね!

Ich werde nimmer froh,
Denn mir ging es also:
Die Blätter vom Baum gefallen
Mit den schönen Worten allen,
Ist Winterzeit!
 私は二度と楽しくなることはないでしょう、
 なぜなら私の身に起こったのは、
 木から葉っぱが
 あの美辞麗句すべてと共に落ちてしまったの、
 それは冬のこと!

Es ist jetzt Winterzeit,
Die Vögelein sind weit,
Die mir im Lenz gesungen,
Mein Herz ist mir gesprungen
Vor Liebesleid.
 今は冬、
 小鳥たちは遠くに行ってしまった、
 春には私に歌ってくれたの。
 私の心は張り裂けてしまった
 愛に苦しむあまり。

詩:Volkslieder (Folksongs) , collected by Kretzschmer and Zuccalmaglio, Berlin, first published 1838-40
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Klage", op. 105 (Fünf Lieder) no. 3 (1887/8), published 1888 [ voice and piano ], Berlin, Simrock

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アンドレアス・クレッチュマー(Andreas Kretzschmer: 1775-1839)とアントン・ヴィルヘルム・フォン・ツッカルマーリョ(Anton Wilhelm von Zuccalmaglio: 1803-1869)収集の『オリジナルの歌付きドイツ民謡集(Deutsche Volkslieder mit ihren Original-Weisen)』という全2巻の民謡集が1838年、1840年にベルリンから出版されているのですが、その第2巻(ツッカルッマーリョ収集)に収められているのが、この「嘆き」という民謡です。「ニーダーライン地方の民謡から(Vom Niederrhein)」と記載されています。
ツッカルッマーリョ収集の「嘆き」の楽譜が下記のものです。

Klage_1 
Klage_2 

ブラームスはこの民謡のテキストのみを用いて、おそらく1888年にオリジナルの民謡とは全く異なる曲を付けました(ただ、有節形式で作曲されているのは、オリジナルの民謡を意識しているのでしょう)。同年10月に『ピアノ伴奏付きの低声独唱のための5つの歌(5 Lieder für eine tiefere Stimme mit Begleitung des Pianoforte)』作品105の3曲目として出版されました。

ブラームスの曲は、前奏なしでいきなり歌が始まります。
1行目はヘ長調のトニックで終わりますが、2行目の最後(bricht:brechen(壊す、破る)の3人称単数)はVIの和音の疑終止で不穏な空気を醸し出し、歌声部の最後はニ短調で締めくくります。ただ、ピアノ後奏の最後はヘ長調の主和音に戻ります。

男に裏切られた女性が、その男を好きになった友人(もしくは姉妹)に警告しているのでしょう。うまい言葉に騙された女性の嘆きが短い音楽の中に凝縮されて、聞き手の心を揺さぶります。3節の一見簡素な有節歌曲で、これほどまでに深いドラマを描いてしまうブラームスの手法にただただ脱帽するのみです。

ピアノ後奏は、歌の最後の4つの音の進行を引き継ぎ、最後は音価(音の長さ)を拡張して終結します。ブラームスが民謡調の作品の中に込める密度の濃さを強く感じる作品の一つです。

Klage-ending 

・ベルリンのN. Simrock社から1888年に出版された初版楽譜(第3節は下の楽譜の次のページにあるのですが、音楽は同一です)

Brahms-klage 

3/4拍子
ヘ長調(F-dur)-ニ短調(d-moll)
Einfach und ausdrucksvoll(単純に、表情豊かに)

●ジェスィー・ノーマン(S), ダニエル・バレンボイム(P)
Jessye Norman(S), Daniel Barenboim(P)

ノーマンの繊細な語り口に魅了されます。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

F=ディースカウは民謡の言葉からも深い心理描写を描き出していて、凄みを感じました。

●クリストフ・プレガルディアン(T), ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Christoph Prégardien(T), Ulrich Eisenlohr(P)

プレガルディアンが真摯に歌っていて、心に沁みました。シューベルトの有節歌曲では装飾を加えていたプレガルディアンですが、ブラームスのこの曲では装飾を加えていませんでした。

●レベッカ・シュテーア(MS), トビアス・ハルトリープ(P)
Rebekka Stöhr(MS), Tobias Hartlieb(P)

ゆっくり目のテンポでしっとりとした雰囲気を醸し出すシュテーアの表現力が素晴らしかったです。ハルトリープも歌の雰囲気としっかり合致した演奏でした。

●ソフィー・レンネルト(MS), グレアム・ジョンソン(P)
Sophie Rennert(MS), Graham Johnson(P)

Hyperionのブラームス歌曲全集の10巻。オーストリアのメゾ、レンネルトが素直に歌っています。

●エンミ・ライスナー(A), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Emmi Leisner(A), Michael Raucheisen(P)

ラウハイゼンによるドイツ歌曲プロジェクトの一環として録音されたものです。ライスナーの表情豊かで深々とした歌は古さを全く感じさせません。

●ピアノパートのみ(Mariya Broytman(P))
Johannes Brahms, Klage, Op.105, No. 3, Piano Accompaniment, F major, no voice

Channel名:accompaniment piano(オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ますので要注意)
ピアノパートだけで聴いてもブラームスの素晴らしさが伝わってきます!ゆっくり目の演奏ですので、一緒に歌ってみるのもいいですね。

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The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Deutsche Volkslieder mit ihren Original-Weisen / Zweiter Theil. (A. Wilh. v. Zuccalmaglio / Berlin, 1840 / Vereins-Buchhandlung) (リンク先はGoogleブックスに掲載されているこの書籍の表紙に飛ぶので、画面下の「この書籍内を検索」欄に例えば「Feins Liebchen, trau du nicht」と入力してリターンを押して下さい。すると2つ検索結果の画面が出るので、460ページと書いてある方をクリックすると表示されます)

Andreas Kretzschmer (Wikipedia (独語))

Anton Wilhelm von Zuccalmaglio (Wikipedia (独語))

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エリーの要点「25年前から乗っているトヨタ車」(Elly's Essentials; “25 year old Toyota”)

●Elly's Essentials; “25 year old Toyota”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます。)

(エリー・アーメリングの言葉の大意)

91歳の現在、私は25年前のトヨタ車に壊れることなく乗っています。
時々、駐車場でとなりの車に甘く軽いキスのように触れることがあります。先週かすってしまった時は損傷が全くなかったことが分かり幸運でした。私の災難は小さなものでしたが、世界中でもっと大きな災難が襲っています。それらは先の世界大戦の終焉以降、未来を予見しなかった政治への罰なのでしょうか。私が6歳の時、父が「先見の明は政府の本質だ」とよく言っていました。現在、世界中のプロパガンダと選挙制度は、民主主義が消えそうなほど腐敗しているように思えます。1990年代に賢明な私の友人が「民主主義よりも優れた制度を知っていますか」と言っていましたが、それは次の問いにつながります。「混沌(chaos)は未来の私たちの運命でしょうか」。
ところで「chaos(混沌)」という言葉は古代ギリシャ語から借用したもので、「深淵(abyss)」を意味します。
ギリシャ文明が発展したらしい空っぽの深淵は、我々の言うところの混沌、つまり廃墟となりました。古代ギリシャ人はそれを見ていました。私たちは彼らから何かを学んだのでしょうか。

(3:55- Schubert: Die Götter Griechenlands, D677)
Elly Ameling, Rudolf Jansen
Concertgebouw Amsterdam
03-02-1990

Die Götter Griechenlands, D 677
 ギリシャの神々

Schöne Welt, wo bist du? Kehre wieder
Holdes Blüthenalter der Natur!
Ach, nur in dem Feenland der Lieder
Lebt noch deine fabelhafte Spur.
Ausgestorben trauert das Gefilde,
Keine Gottheit zeigt sich meinem Blick,
Ach, von jenem lebenwarmen Bilde
Blieb der Schatten nur zurück.
 美しい世界よ、どこにいるのか?戻ってきておくれ
 自然が優しく花開いた時代よ!
 ああ、歌の中のおとぎの国にのみ
 あなたの寓話の足跡が生きている。
 死に絶えた広野は悲しみ、
 神は私の目の前に姿を現さず、
 ああ、あの生きて温かい姿の
 幻影だけが残ったのだ。

詩:Friedrich von Schiller (1759-1805), title 1: "Die Götter Griechenlandes", title 2: "Die Götter Griechenlands", written 1788, first published 1788
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Strophe aus 'Die Götter Griechenlands'", D 677 (1819), published 1848, stanza 12 [ voice, piano ], A. Diabelli & Co., VN 8819, Wien (Nachlaß-Lieferung 42)

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(参考)

Elly's Essentials; “25 year old Toyota” (YouTube)

The LiederNet Archive

etymonline (chaos の語源)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の「Musings on Music」シリーズ:ラヴェル-歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』~3.「つれない人(L'Indifférent)」

●Musings on Music by Elly Ameling - Ravel, Shéhérazade - L'Indifférent

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

エリー・アーメリングによる説明(大意)

親愛なる視聴者様
前回の熟考(musing)シリーズではトリスタン・クリングゾル(Tristan Klingsor)の詩、モリス・ラヴェル(Maurice Ravel)の音楽による歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』の2曲目「魅惑の笛(La flûte enchantée)」を聞きました。
この歌曲集は1904年に初演されました。
私は今回この歌曲集の終曲「つれない人(L'Indifférent)」について話したいと思います。
ある若い女性が男性に向けて言います。あなたの瞳は娘のように優しく、顔は魅力的だと。彼女はこの男性に家に入ってワインを飲むように誘います。しかし彼は断り、女性のような足取りで去ってしまいます。

(1:30-5:16 エリー・アーメリング、サンフランシスコ交響楽団、エド・ドゥ・ヴァールト指揮による演奏)

(5:21-7:21 アーメリングによる原詩と対訳の朗読)

※以下、原詩は著作権の都合上掲載せず、英訳詩とその重訳による私の日本語訳のみ掲載します。

Your eyes are gentle like those of a girl, young stranger,
あなたの瞳は少女のように優しい、若い異国の方、

And delicate curve of your handsome face shaded with down.
産毛で影になったハンサムな顔の繊細な曲線は

Is still more attractive in its contour.
その輪郭においてなおさら魅力的です。

Your lips chant on my doorstep.
あなたの唇は私の戸口で歌います

An unknown and charming tongue
未知の魅力的な言葉で

Like false music.
調子はずれの音楽のように。

Enter!
お入りなさい!

And let my wine refresh you.
私のワインで元気にしてさしあげましょう。

But no, you passed by
でもだめだった、あなたは通り過ぎて行きます。

And from my threshold I see you departing
私の敷居からあなたが遠ざかるのが見えます。

Gracefully waving farewell to me
優雅に別れの合図をしながら

Your hips lightly swaying
腰を軽く揺らして

With your feminine languid gait.
女性のようなけだるい足取りで。

この歌曲にp(ピアノ)の指示のない小節はありません。オーケストラも歌声もソフトに演奏します。
ピアニッシモ(pp)とピアニッシシモ(ppp)。
娘がワインで男性を誘う時の切望する気持ちと終結に向けて味わう失望-これはすべて弱音器付きです。
わずかな変化を伴ったゆっくりしたテンポとレガートが官能的な雰囲気を喚起します。
絵も見てみましょう。当時の人々や国々では、このような気分で生活するのに時間をかけました。

これからラヴェル自身による声とピアノの版を流そうと思います。
これまで述べたことで、ゆっくりしたテンポに関してはピアノでは非常に困難であることが明らかになるでしょう。
弦楽器、管楽器は長いフレーズを音を保ったまま演奏することは可能ですが、ピアノは音を発するとすぐに減衰してしまいます。
悲しいけれど事実です。
しかし、ルドルフ・ヤンセンがどれほど素晴らしく、指のレガートやペダルを繊細に用いて、ゆっくりのテンポで音を保持することに成功しているかを聞いてみましょう。
ヤンセンはこの歌に必要不可欠な官能的で規則的なレガートを作り出しています。

(9:39-13:48 エリー・アーメリング、ルドルフ・ヤンセンによるピアノ版の演奏)

お聞きの通り、テンポはオーケストラ版と全く同じでした。
そして、ほとんどの音楽では下行のみで用いられるポルタメントですが、ここで歌手は上行と下行のポルタメントを用いていました。
歌声がピアニストの演奏する和音の規則性を妨げないように、"sé-dui-sante" の "-sante" 音節の最初の拍でポルタメントを正確に終えています。

(14:27-14:56 上述箇所の演奏)

この厳密だが決して堅苦しくないテンポ、つまり拍(beat)こそが必須です。私たち演奏者は、これらの音符を伴奏付きのレチタティーヴォのように表現することは出来ません。
特徴は、古いアラビアの物語のくつろいだ雰囲気であり、音符以外にもラヴェルはスコアできわめて詳細な指示を与えています。
その後は次のように続きます-「あなたの唇は私の戸口で歌います/未知の魅力的な言葉で/調子はずれの音楽のように」
-あなたの唇は"調子はずれの音楽を"歌います。
"False (fausse)(調子はずれの)"-これは重要な言葉で声に特定の色合いを要求します。調子はずれの音楽は成功しなかった出会いそれ自体であるかのようです。和声の中の不協和音に注目してください。

(16:16-16:45 "Ta lèvre chante sur le pas de ma porte / Une langue inconnue et charmante / Comme une musique fausse"の部分のピアノ版の演奏)

その後、"Entre!(お入りなさい!)"と娘は言います。この"Entre!"という言葉には重要なグリッサンドがあるのですが、残念ながらこの録音の歌声にはグリッサンドがないのです。

(17:07-17:37 "Comme une musique fausse / Entre! / Et que mon vin te réconforte"の部分のピアノ版の演奏)

その後、3小節で彼女は彼が自分に興味を示さず優雅な女性的な足取りで歩き去るのを見ます。この男性は同性愛者だったのです。

(17:55-19:21 "Comme une musique fausse"以降歌の終わりまでのピアノ版の演奏)

よろしければ最後にもう一度曲全体を聴いて終わりにしましょう。私にとってはどちらの版にするか難しい選択ですが。オーケストラ版にします。

(19:36- オーケストラ版の全曲演奏)

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レーヴェ「海の燐光」(Loewe: Meeresleuchten, Op. 145, No. 1)を聴く

Meeresleuchten, Op. 145, No. 1
 海の燐光(りんこう)

Wie viel Sonnenstrahlen
Fielen golden schwer,
Fielen feurig glühend
In das ew'ge Meer;
Und die Woge sog sie
Tief in sich hinab,
Und die Woge ward ihr
Wildlebendig Grab.
 どれほどの太陽の光が
 濃い金色に降り注ぎ
 真っ赤に燃えて
 永遠なる海へと落ちたことか。
 そして大波は陽光を
 自らの深くへと吸い込み、
 大波は陽光にとって
 生きる墓となった。

Nun in stiller Nächte
Heil'ger Feierstund'
Sprühen diese Strahlen
Aus des Meeres Grund.
Leuchtend roll'n die Wogen
Durch die dunkle Nacht;
Wunderbar durchglüht sie
Funkensprüh'nde Pracht.
 今や神聖な祝典の
 静かな夜に
 この光線が
 海底から煌めく。
 輝く大波は
 暗い夜の間押し寄せる。
 見事なまでに光は、
 煌めく壮麗さを輝きで満たす。

詩:Carl Siebel (1836-1868)
曲:Carl Loewe (1796-1869), "Meeresleuchten", op. 145 no. 1 (1859?), from Liederkranz für die Bassstimme, no. 1

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レーヴェは、カール・ズィーベル(Carl Siebel: 1836-1868)の"Erinnerung(思い出)"という詩に、タイトルを"Meeresleuchten(海の燐光), Op. 145, No. 1"に変更して作曲しました。楽譜には「宮廷歌手アウグスト・フリッケ(August Fricke)の為に作曲され、彼に捧げられた」と記載されています。1959年に作曲され、5曲からなる"Liederkranz für die Bassstimme(バスの為の歌の冠)"の第1曲目として1869年に出版されました。

曲はリピート記号で繰り返される、2節の完全な有節歌曲です。レーヴェがバス歌手と指定しているだけあって、歌声部の最低音は最後に出てくるほ音(E)で、最高音はロ音(H)です。ソプラノの概念を超越したジェスィー・ノーマンがもし歌ったとしたら移調する必要はないかもしれませんが、基本的にこの曲を歌えるのは低声歌手に限られるでしょう。悠然とした伸びやかな旋律にしばしばあらわれるメリスマをいかに見事に歌うかがポイントの作品のように思えます。穏やかで美しいメロディーをもち、短いですが印象に残る作品です。

ピアノパートは基本的に右手で八分音符の和音を刻み、左手はオクターブのバス音をゆったり響かせています。

Meeresleuchten 

9/8拍子
ホ長調(E-dur)
Andante

●クルト・モル(BS), コルト・ガルベン(P)
Kurt Moll(BS), Cord Garben(P)

クルト・モルの重厚で包み込むような深いバスの美声が、この作品の魅力を余すところなく描いています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

ハイバリトンの印象の強いF=ディースカウですが、この曲の深く沈む低音を見事に表現していて素晴らしいです。

●カール・リッダーブッシュ(BS), リヒャルト・トリムボルン(P)
Karl Ridderbusch(BS), Richard Trimborn(P)

リッダーブッシュの声は深さと同時に優しさも感じられ、聞いていて癒される感じがしました。

●ヨーゼフ・グラインドル(BS), ヘルタ・クルスト(P)
Josef Greindl(BS), Hertha Klust(P)

息の長いメロディーを悠然と歌うグラインドルのバス歌手ならではの響きに魅了されました。

●フランツ・ハヴラタ(BS), ヘルムート・ドイチュ(P)
Franz Hawlata(BS), Helmut Deutsch(P)

現役世代にもここで聞けるような優れたリートを歌うバス歌手がいることが嬉しいです。ちなみにハヴラタは東日本大震災の直後にキャンセルせずに来日してオペラ出演したそうです。当時の観客は大いに励まされたことと思います。

●ピアノパートのみ(Taisiya Pushkar(P))
Meeresleuchten (Carl Loewe) - Piano Accompaniment in E Major

Channel名:All Things Piano(オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ますので要注意)
楽譜表示付き。オリジナルのホ長調で演奏されています。ピアノだけで聞いてもとても美しいです。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP ("Meeresleuchten"はP.158)

Carl Siebel (Wikipedia: 独語)

Carl Siebel (Wikipedia: 英語)

Carl Siebel's Dichtungen (原詩の"Erinnerung"はp.106)

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レーヴェ「牧師の娘(Carl Loewe: Das Pfarrjüngferchen, Op. 62, Heft 2, No. 4)」を聴く

Das Pfarrjüngferchen, Op. 62, Heft 2, No. 4
 牧師の娘

1.
Herr Pfarrer hat zwei Fräulchen,
Die gar zu niedlich sind,
Sie haben kleine Mäulchen
Und Schühlein wie ein Kind
Und kleine flinke Händchen,
Zu knöppeln (klöppeln?) Spitz' und Käntchen,
Zu wickeln runde Knäulchen,
Zu drehen Rädchen wie der Wind.
 牧師様には2人の娘がいて、
 2人はとてもかわいらしく
 お口は小さく
 靴は子供のようで
 お手々は小さく器用で
 縁(ふち)をレース編みしたり
 糸をまるめて玉にしたり
 風のように糸車を回したりする。

2.
Im selbstgemachten Schöpfchen,
Im Lätzchen selbstgestickt,
Im selbstgeflochtnen Zöpfchen,
Im Strümpfchen selbstgestrickt,
Im selbstgebleichten Schürzchen,
Sie heben rußge Stürzchen,
Und rühren um im Töpfchen
Den Kohl, vom Gärtchen selbstbeschickt.
 自分で髪を整え
 自分で前掛けに刺繍をし
 自分でお下げ髪に編み
 自分で靴下に刺繍をし
 自分で前掛けを漂白して、
 二人は煤けた蓋を取り
 鍋の中の、
 自分でお庭から取ってきたキャベツをかき混ぜる。

3.
Am Sonntag, wenn zu lange
Der Vater läßt den Sand
Der Predigt rinnen, bange
Wird ihrer fleißgen Hand,
Verborgen unterm Stühlchen,
Sie halten da ein Spülchen,
Ein Künkelchen im Gange,
Man sieht es nicht im Gitterstand.
 日曜日に、あまりにも長いこと
 父が砂のように説教を
 垂れると
 不安になった二人の勤勉な手は
 椅子の下でこっそり
 糸巻をつかみ
 糸巻ざおを動かす。
 格子の囲いで見られることはない。

4.(1行目はレーヴェの付加。他の行は第1連の繰り返し)
Das sind des Pfarrers Fräulchen,
Die gar zu niedlich sind,
Sie haben kleine Mäulchen
Und Schühlein wie ein Kind
Und kleine flinke Händchen,
Zu knöppeln Spitz' und Käntchen,
Zu wickeln runde Knäulchen,
Zu drehen Rädchen wie der Wind.
 それが牧師の娘さんたち、
 2人はとてもかわいらしく
 お口は小さく
 靴は子供のようで
 お手々は小さく器用で
 縁(ふち)をレース編みしたり
 糸をまるめて玉にしたり
 風のように糸車を回したりする。

詩:Friedrich Rückert (1788-1866), "Die Pfarrjüngferchen", appears in Haus- und Jahrslieder, in 3. Des Dorfamtmannsohnes Kinderjahre [formerly, "Erinnerungen aus den Kinderjahren eines Dorfamtmannsohns"] 
曲:Carl Loewe (1796-1869), "Die Pfarrjüngferchen", op. 62, Heft 2 no. 4 (1837), stanzas 1-3 [ voice and piano ]

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フリードリヒ・リュッケルトの詩による「牧師の娘(Das Pfarrjüngferchen, Op. 62, Heft 2, No. 4)」はカール・レーヴェによって愛らしいリートとして1837年10月に作曲されました。私がこの曲をはじめて知ったのはファスベンダーとガルベンによるDeutsche Grammophonのレーヴェ歌曲集のCDでした。一回聞いただけで気に入り、一体何度聞いただろうというぐらい繰り返し聞いたものでした。

リュッケルトの原詩にはもともとレーヴェが作曲しなかった第4連があり、娘たちが何年も料理をしているうちにしわくちゃになってしまったので男たちの意欲が失せて独身のままだったという、今ならアウトな内容になっています。レーヴェがこの第4連を省略して、第1連を繰り返す形(1行目だけレーヴェによる改変がありますが)にしたのは妥当な判断だったように思います。

レーヴェは、第3連のみ若干の変化を加えた有節形式で作曲しました(A-A-A'-A)。第3連は説教する父親の目を盗んで編み物をするところで、途中からこれまでのニ長調の同主調にあたるニ短調に変わります。

レーヴェの歌曲の特徴の一つは歌声部にメリスマが多用されることだと思います。この曲でもそれほど多くはありませんが、メリスマがあります。弾き語りをするレーヴェにとって、装飾的な歌の技術に自信があったのでしょうか。

また、ピアノの間奏や後奏が糸車をくるくる回している様を思わせ、とても魅力的です。楽譜には特に指示はありませんが、コルト・ガルベンのようにアッチェレランドして速めていくとお茶目な感じが出て魅力的でした。

1_20240727183101 

2_20240727183101

C (4/4拍子)
ニ長調(D-dur)
Allegro grazioso

●ブリギッテ・ファスベンダー(MS), コルト・ガルベン(P)
Brigitte Fassbaender(MS), Cord Garben(P)

ファスベンダーとガルベンがDGに録音したレーヴェ歌曲集のCD(1987年10月ベルリン録音)によって、バラーデだけではないレーヴェのリートの魅力に開眼しました。このCDで解説を担当されている喜多尾道冬氏は日頃から歌曲を歌うファスベンダーを非常に高く評価していて、「F=ディースカウとならぶ大リート歌手」と言い切っておられるのが清々しいです。ピアノのガルベンは間奏や後奏をアッチェレランド気味に速めていく箇所など表現力が素晴らしいです。

●ガブリエレ・ロスマニト(S), コルト・ガルベン(P)
Gabriele Rossmanith(S), Cord Garben(P)

コルト・ガルベンによるcpoレーベルへのレーヴェ歌曲全集第4巻に収録されています。ロスマニトの清楚な美声で聞くと、テキストで歌われている娘さんたちのイメージが浮かびます。

●ルドルフ・ボッケルマン(BR), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Rudolf Bockelmann(BR), Michael Raucheisen(P)

1943年2月5日録音。ピアニストのラウハイゼンがドイツリートの集大成を録音するというプロジェクトを進める中、戦争で中断を余儀なくされますが、レーヴェの作品についてはかなり多くの録音が残されました。この録音はその中の一つと思われますが、ボッケルマンのとぼけたユーモラスな歌唱が楽しいです。後奏の最後にボッケルマンがテクスト最後の"wie der Wind(風のように)"を追加して歌っています。

●エンゲルベルト・クッチェラ(BS), グレアム・ジョンソン(P)
Engelbert Kutschera(BS), Graham Johnson(P)

この曲は女声歌手しか歌わないというイメージをこれまで勝手に持っていたのですが、男声の低声歌手が歌うことでユーモラスな雰囲気が強まってなかなかいいですね。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP ("Das Pfarrjüngferchen"はp.84)

フリードリヒ・リュッケルト(Wikipedia:日本語)

Friedrich Rückert (Wikipedia:独語)

F. Rückert's gesammelte poetische Werke. [Edited by H. Rückert.], 第 1 巻(P.219)

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レーヴェ「オーディンの海の騎行」(Carl Loewe: Odins Meeresritt, Op. 118)を聴く

Odins Meeresritt (oder Der Schmied auf Helgoland), Op. 118
 オーディンの海の騎行(あるいはヘルゴラントの鍛冶屋)

Meister Oluf, der Schmied auf Helgoland,
Verläßt den Amboß um Mitternacht.
Es heulet der Wind am Meeresstrand,
Da pocht es an seiner Türe mit Macht:
 オールフ親方はヘルゴラントの鍛冶屋で
 真夜中に金敷(かなしき)を離れる。
 岸辺では風が咆哮している。
 その時、勢いよくドアをたたく音がする。

"Heraus, heraus, beschlag' mir mein Roß,
Ich muß noch weit, und der Tag ist nah!"
Meister Oluf öffnet der Türe Schloß,
Und ein stattlicher Reiter steht vor ihm da.
 「出て来い、出て来い、わしの馬に蹄鉄を打ってくれ。
 わしはまだ遠くまで行けねばならぬ。夜明けも近い!」
 オールフ親方が扉の錠を開けると
 一人の堂々たる騎士が目の前に立っている。

Schwarz ist sein Panzer, sein Helm und Schild;
An der Hüfte hängt ihm ein breites Schwert.
Sein Rappe schüttelt die Mähne gar wild
Und stampft mit Ungeduld die Erd'!
 鎧、兜、盾は黒く、
 腰には幅の広い剣を差している。
 彼の黒馬は荒々しくたてがみを振り
 苛立って地面をけっている!

"Woher so spät? Wohin so schnell?"
"In Norderney kehrt' ich gestern ein.
Mein Pferd ist rasch, die Nacht is hell,
Vor der Sonne muß ich in Norwegen sein!"
 「こんな遅くにどちらから?そんなに速くどちらへ?」
 「わしはノルダーナイ島に昨日立ち寄った。
 わしの馬は足が速く、夜は光が照らしてくれる。
 日が出る前にノルウェーに行かねばならぬ!」

"Hättet Ihr Flügel, so glaubt' ich's gern!"
"Mein Rappe, der läuft wohl mit dem Wind.
Doch bleichet schon da und dort ein Stern,
Drum her mit dem Eisen und mach' geschwind!"
 「翼があるというのでしたら、喜んで信じるのですが!」
 「わしの馬は風に乗って駆けるのだ。
 だがもうあちこちで星の光が薄くなっている、
 だから鉄を持ってきて早く打ってくれ!」

Meister Oluf nimmt das Eisen zur Hand,
Es ist zu klein, da dehnt es sich aus.
Und wie es wächst um des Hufes Rand,
Da ergreifen den Meister Bang' und Graus.
 オールフ親方は鉄を手に取る、
 鉄はとても小さかったが、その時伸びたのだ。
 なんと蹄(ひづめ)のふちまで広がり、
 親方は不安と恐怖に襲われた。

Der Reiter sitzt auf, es klirrt sein Schwert:
"Nun, Meister Oluf, gute Nacht!
Wohl hast du beschlagen Odin's Pferd';
Ich eile hinüber zur blutigen Schlacht."
 この騎手は馬にまたがり、剣が音を立てる。
 「では、オールフ親方、おやすみ!
 あなたはオーディンの馬にうまく蹄鉄を打ってくれた。
 わしは血なまぐさい戦に急ぐとしよう。」

Der Rappe schießt fort über Land und Meer,
Um Odin's Haupt erglänzet ein Licht.
Zwölf Adler fliegen hinter ihm her;
Sie fliegen schnell, und erreichen ihn nicht.
 黒馬は陸へ海へと突進して行き、
 オーディンの頭のまわりは光り輝く。
 12羽の鷲がその後を飛ぶ。
 鷲は速く飛ぶが、オーディンに追いつかなかった。

*4連2行:Norderney: Ost-Friesische Insel(ノルダーナイ島:東フリースラントの島)

詩:Aloys Wilhelm Schreiber (1761-1841)
曲:Carl Loewe (1796-1869), "Odins Meeres-Ritt", subtitle: "Der Schmied auf Helgoland", op. 118 (1851)

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カール・レーヴェ(Carl Loewe: 1796-1869)のバラーデは史実や神話などが元になっているものが多い為、文化の全く異なる日本人にとってはとっつきにくい感がなくもないのですが、テキストは別として音楽だけ聞くと、描写表現がとても分かりやすく、メロディーラインも美しいので、次から次へと情景が変わる紙芝居に通じるようなわくわく感が感じられます。

往年の歌手(スレツァークやシュルスヌスなど)から現代の歌手にいたるまで歌い継がれているのは、ヨーロッパ圏の人たちにとっては馴染みのある内容であり、かつレーヴェの作品の親しみやすさも関係しているのではないかと思います。ただ、レーヴェの膨大な量の作品の中で何曲知っているかと問われるといささか心もとなくなります。コルト・ガルベンがcpoレーベルに歌曲全集を録音してくれたこともあり、テキストの難解さはとりあえず脇に置いて、少しずつ未知の作品に触れていくというのもいいかなと思ったりもしています。

そんな中、レーヴェのバラーデの王道であり、名歌手たちがこぞって歌い、録音してきた作品の1つが「オーディンの海の騎行(Odins Meeresritt, Op. 118)」で、「海を行くオーディン」という日本語タイトルでも親しまれています。北ゲルマン人の神話をもとにして書かれたテキストに作曲されたこの作品、とにかく良く出来ていて、格好いい曲なので、人気が高いのもうなずけます。

このテキストの登場人物は第三者の語り手を除くと2人で、鍛冶屋の親方オールフと、駿馬(8本脚のスレイプニル)にまたがる神オーディン(ヴァーグナーの『ニーベルングの指輪』に登場するヴォータンと同一人物)です。ヘルゴラントの鍛冶屋オールフは真夜中まで働き、ようやく仕事場を離れました。風が強く、海が荒れている中、オールフの家の扉を強く叩く者があり、出てみると全身黒ずくめの立派な騎士オーディンが立っていました。オーディンはノルダーナイ島から来て、夜明け前にはノルウェーに到着しなければならないので、馬の蹄鉄を打ってくれと頼みます。そんな速く移動できるわけないといぶかりながらも、オールフは小さな鉄を手にすると、蹄のふちまで鉄が伸びて恐怖におののきます。それでも無事鉄を打つと、オーディンが感謝の言葉を述べて、ノルウェーの戦へと去っていきます。十二羽の鷲が後を追うものの、速すぎてはぐれてしまったという内容です。

テキストの作者アロイス・ヴィルヘルム・シュライバー(Aloys Wilhelm Schreiber: 1761-1841)による原タイトルは「Meister Oluf(親方オールフ)」で、鍛冶屋に焦点を当てていますが、レーヴェのバラーデのタイトルは「オーディンの海の騎行」、つまりオーディンが主役で、「ヘルゴラントの鍛冶屋」、つまりオールフのことを副題として扱っています。

1851年、レーヴェ55歳の作曲で、Richard Wigmoreによると、1951年に娘アデーレ(Adele Loewe: 1827-1851)を亡くし、失意から立ち直る最中のノルウェーで作曲されたそうです。レーヴェがどのような描写をしているのか実際に楽譜を見てみましょう。

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前奏もなくいきなり歌のみで始まり、オールフの紹介が歌われる箇所は、行進曲のようなリズム進行で、最初の1行でホ短調の主音に戻るところなど、鉄を鍛える様を暗示しつつ、オールフが職人肌の律儀な人であるさまを印象づけます。次に海が荒れる箇所ではsfで左手に細かい音型が出てきます。その後、オーディンがドアを叩くところではスタッカート付きの二つの和音が表現しています。そしてクレッシェンドで盛り上がったすえに「出てこい(Heraus!)」でffに到達します。その後、馬に蹄鉄を打ってくれと頼む箇所では、左手の細かい装飾音が馬のいななきをあらわしているかのようです。

「オールフが扉を開けると立派な騎士が立っていた」という第2連3-4行目は、1-2行目の音楽をほぼ同様に繰り返し、リタルダンドとフェルマータの付いた八分休符でいったん区切りを付けます。

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その後、moderato(中庸の速度で)で騎士の外見(鎧、兜、盾は黒く...)が、語るように落ち着いて表現されます。次に荒馬が落ち着きなく地面を蹴る様をfと強拍のsfの連続で示し、八分休符のフェルマータで再び場面転換をはかります。続いて、オールフが「こんな遅くにどちらから?」と聞く箇所のおずおずとしたさまをpとスタッカートで絶妙に描写します。その後も騎士の語るような旋律とオールフのおずおずとした言葉が対照的に描かれ、「わしの馬は風に乗って駆けるのだ」の箇所でピアノパートの細かい上行形が馬の疾風のような速さを描きます。

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オーディンに蹄鉄を早く鍛えるように急かされたオールフは、手に鉄をとるとそれはあまりにも小さかったが、「その時、伸びたのだ(da dehnt es sich aus)」という箇所をLentoで見事に表現していて、こういう物語の急展開を巧みに描く手腕はレーヴェの優れた点の一つだと思います。

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その後、馬の蹄の大きさまで鉄が伸びていく様をピアノパートが細かい音型で表現し、それを見て恐れおののくオールフのぶるぶる震えるさまをピアノパートのトレモロやトリルで描いています。

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最後の第7連・第8連で、オーディンは鍛冶屋のオールフに礼を言い、ノルウェーの戦場に向かうさまが語られますが、ここからは歌が1行歌うと、それに呼応してピアノソロが応じる形をとり、歌の内容をピアノの技巧的なパッセージが念押しするかのようです。歌とピアノソロが交互に応じあう曲というと、シューベルトの「愛の使い(Liebesbotschaft)」が思い出されますが、シューベルトは詩人と川の流れの対話を意図しているのに対して、シンガーソングライターのレーヴェは、歌とピアノそれぞれの名人芸をここで聴衆にアピールしようとしたのかもしれません。実際、この最後の2連は聞いていて徐々に高揚していく感じがたまらなく恰好よくて、最後へ向けて盛り上がる曲の代表格と言ってもよいかと思います。

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終盤の縦横無尽に駆け巡るピアノパートは、馬を駆るオーディンが鷲も追いつけないほどの猛スピードで戦場へ赴くさまがこれ以上ないぐらいドラマティックに表現されていて、ここはピアニストの腕の見せ所だと思います。レーヴェはピアノの腕前も優れていたそうなので、ここで聴衆に存分にアピールしたことでしょう。

C (4/4拍子) - 6/8拍子 - C - 6/8拍子
ホ短調(e-moll)
Andante maestoso - ...(テンポ表示が次々に変わる)

●トーマス・クヴァストホフ(BR), ノーマン・シェトラー(P)
Thomas Quasthoff(BR), Norman Shetler(P)

このCDを初めて聞いた時に驚嘆したのはピアノのシェトラー(先日惜しくも亡くなりました)。いつもはもっと落ち着いたクールな演奏をする印象があったシェトラーがこの曲では激しく雄弁に勢いよく前進していきます。走り出したら止まらない勢いです!今でもこの曲のピアノパートで一番のお気に入りです!若かりしクヴァストフのディクションの美しさも素晴らしいです。

●ヘルマン・プライ(BR), カール・エンゲル(P)
Hermann Prey(BR), Karl Engel(P)

1970年代Philipsのシリーズの一環として録音された音源ですが、クリーンとの「白鳥の歌」を彷彿とさせる情熱的なプライの歌唱です。語るところと突進するところのテンポのめりはりがはっきりしていて、特に後半の手に汗握る緊迫感のある歌はエンゲルの鋭利で輝かしい超絶技巧も相まって痺れます。

●ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

ホッターの深々とした歌声はバラーデの語り部としても素晴らしいです。

●ヨーゼフ・グラインドル(BS), ヘルタ・クルスト(P)
Josef Greindl(BS), Hertha Klust(P)

グラインドルはバス歌手としては重くなく、ディクションも良かったです。クルストのピアノも良かったです。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

ディースカウはいつもながら巧みな表現力で隅々まで描き尽くしていました。デームスもいい演奏でした。

●コンスタンティン・クリンメル(BR), ドリアナ・チャカロヴァ(P)
Konstantin Krimmel(BR), Doriana Tchakarova(P)

かなりゆっくり目のテンポ設定で、それぞれの箇所の表現を丁寧に表現している感じがしました。途中で笑い声を入れたのは新鮮でした。ライヴだとこういう試みもしやすいでしょうね。

●カール・リッダーブッシュ(BS), リヒャルト・トリムボルン(P)
Karl Ridderbusch(BS), Richard Trimborn(P)

深みのあるリッダーブッシュの声がオーディンの威厳を感じさせてくれました。

●ピアノパートのみ
Carl Loewe: Odins Meeresritt op. 118 - Sing Along Lied

Channel名:Raul Neuman (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音声が出ます)
ここではニ短調に移調して演奏しています。レーヴェがこの曲のピアノパートにいかにドラマティックな要素をふんだんに盛り込んだかが分かります。そしてこのピアニストの演奏の素晴らしいこと!Bravo!

他に動画サイトにはアップされていませんでしたが、Hyperion RecordsのFlorian Boesch(BR), Roger Vignoles(P)によるレーヴェ・アルバム中の演奏も素晴らしかったです。こちらのアルバム、他の曲も含めてベッシュの語り口が非の打ちどころのないほど素晴らしく、ヴィニョールズも細やかに描写していて、とてもいいアルバムでしたので、興味のある方は聞いてみてはいかがでしょうか。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Hyperion RecordsのRichard Wigmoreによる解説

Liederabend - SV22 | Odins Meeresritt

Alois Wilhelm Schreiber: Gedichte. Erster Theil (1817, Bauer, Wien) ("Meister Oluf"は21~22ページ)

Aloys Schreiber (Wikipedia:独語)

ノルダーナイ島(Wikipedia:日本語)

フリースラント(Wikipedia:日本語)

オーディン(Wikipedia:日本語)

スレイプニル(Wikipedia:日本語)

カール・レーヴェ(Wikipedia:日本語)

Carl Loewe (Wikipedia:独語)

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エリーの要点「イーアー」(マーラー:高き知性への賛美)(Elly's Essentials; “ I - A ”)

●Elly's Essentials; “ I - A ”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます)

●エリー・アーメリングの言葉の大意

「人類は自然の上位にあるわけではなく自然の一部です。
私たちは種として滅亡の危機にあるのではないでしょうか。
私たちは自然の頂点に立たせてくれた脳を放棄し、人工知能(AI)に置き換えようとしています。
その止め方を誰か知っていますか?」

●演奏

エリー・アーメリング(S)
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ズデニェク・マーカル(C)
1972年、オランダ音楽祭
(※2008年1月7日にオランダのNPO Radio4で放送されたものと同一音源ならば、1972年7月8日、De Doelen, Rotterdamのライヴ録音)

Elly Ameling, soprano
Rotterdam Philharmonic
Zdeněk Mácal, conductor
Holland Festival 1972

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Gustav Mahler: Lob des hohen Verstandes
 グスタフ・マーラー:高き知性への賛美

Einstmals in einem tiefen Tal
Kukuk und Nachtigall
Täten ein Wett' anschlagen:
Zu singen um das Meisterstück,
Gewinn' es Kunst, gewinn' es Glück:
Dank soll er davon tragen.
 昔、ある深い谷で
 カッコウとサヨナキドリが
 賭けをすることになった、
 どちらが立派な歌を歌うか、
 芸を手に入れようが、運を手に入れようが
 勝者は謝礼をもらうことになる。

Der Kukuk sprach: "So dir's gefällt,
Hab' ich den Richter wählt",
Und tät gleich den Esel ernennen.
"Denn weil er hat zwei Ohren groß,
So kann er hören desto bos
Und, was recht ist, kennen!"
 カッコウは言った「君さえ良ければ
 審査員を選んでおいたよ」
 そしてすぐにロバを任命した。
 「だってロバは2つの大きな耳があるから
 その分欠点も聞こえて
 何が正しいか分かるだろう。」

Sie flogen vor den Richter bald.
Wie dem die Sache ward erzählt,
Schuf er, sie sollten singen.
Die Nachtigall sang lieblich aus!
Der Esel sprach: "Du machst mir's kraus!
Du machst mir's kraus! I-ja! I-ja!
Ich kann's in Kopf nicht bringen!"
 彼らはすぐにこの審査員の前まで飛んで行った。
 事の次第を話すと
 ロバは仕事を始め、彼らに歌うように言った。
 サヨナキドリは愛らしく歌った!
 ロバは言った「君の歌はよく分からない!
 君の歌はよく分からんよ!イーヤー!イーヤー!
 私の頭に入ってこない!」

Der Kukuk drauf fing an geschwind
Sein Sang durch Terz und Quart und Quint.
Dem Esel g'fiels, er sprach nur
"Wart! Wart! Wart! Dein Urteil will ich sprechen,
Wohl sungen hast du, Nachtigall!
Aber Kukuk, singst gut Choral!
 続いてカッコウが急いで歌い始めた、
 3度、4度、5度音程の歌を。
 ロバは気に入り、ただこう言った、
 「待て!待て!待て!判定を言い渡そう。
 君もよく歌ったよ、サヨナキドリさん!
 でもカッコウさん、君は上手にコラールを歌ったな。

Und hältst den Takt fein innen!
Das sprech' ich nach mein' hoh'n Verstand!
Und kost' es gleich ein ganzes Land,
So laß ich's dich gewinnen!"
 それから拍子もうまく守っていた!
 これは私の高き知性にかけて述べるものだ!
 この歌はまるまる一国に値する、
 それゆえ君の勝ちとする!」

詩:from Volkslieder (Folksongs) , appears in Des Knaben Wunderhorn

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP

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ブラームス「夕闇が上方から垂れ込め(Dämmrung senkte sich von oben, Op. 59, No. 1)」を聴く

Dämmrung senkte sich von oben, Op. 59, No. 1
 夕闇が上方から垂れ込め

Dämmrung senkte sich von oben,
Schon ist alle Nähe fern;
Doch zuerst emporgehoben
Holden Lichts der Abendstern!
Alles schwankt in's Ungewisse,
Nebel schleichen in die Höh';
Schwarzvertiefte Finsternisse
Widerspiegelnd ruht der See.
 夕闇が上方から垂れ込め
 近くにあったあらゆるものがすでに遠い。
 だが最初に空に上がるのは
 夕星の優しい光!
 すべてが定かならぬ中にゆらめき
 霧は丘へとそっとのぼる、
 濃い暗闇を映して
 湖は静止している。

[Nun]1 [am]2 östlichen Bereiche
Ahn' ich Mondenglanz und Gluth,
Schlanker Weiden Haargezweige
Scherzen auf der nächsten Fluth.
Durch bewegter Schatten Spiele
Zittert Luna's Zauberschein,
Und durch's Auge [schleicht]3 die Kühle
Sänftigend in's Herz hinein.
 今や東方に
 月の赤い輝きをほのかに感じる。
 ほっそりとした柳の、毛のごとき細枝は
 近くの大河の上でじゃれている。
 動く影の戯れによって
 月の魅惑的な明かりが震え、
 目を通って冷気が
 慰撫しながら心に忍び込む。

1 Diepenbrock: "Dort,"
2 some recent editions of Goethe's work have "im"
3 Grimm: "zieht"

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), no title, appears in Chinesisch-deutsche Jahres- und Tageszeiten, no. 8

曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Dämmrung senkte sich von oben", op. 59 (Acht Lieder und Gesänge) no. 1 (1871), published 1880 [ low voice and piano ], Leipzig, Rieter-Biedermann

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ゲーテは1827年にヴァイマル近郊の別荘で1ヵ月近く過ごし、その際に「中国風ドイツ歴(Chinesisch-deutsche Jahres- und Tageszeiten)」という14編からなる連詩の多くを書きます。その8番目に置かれたのが、この「夕闇が上方から垂れ込め(Dämmrung senkte sich von oben)」です。

主人公は木々の茂る湖のほとりにいて、日が落ちるにつれ、これまではっきり見えていたものが徐々にぼんやりとし始めます。夜霧も立ち込め、湖に目をやると星の光がゆらゆらと揺れます。月が姿をあらわし、柳の枝が湖面に触れて戯れている間からその月の光が差し込み、夜の冷たい空気が主人公の目に心地よい慰めをもたらし、心にしみわたるという内容です。

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ブラームスは3/8拍子で作曲しました。ゲーテの詩が各行、強弱強弱...と規則的に繰り返していく為、ブラームスも詩のリズムに合わせて、基本的には強音節を4分音符、もしくは8分音符2つ分にあてて、弱音節を8分音符にしています。テキストの区切り(例えば第1節の第4行、第8行)の最後の3音節は音価を2倍にしてフレーズがいったん終わることを印象付けます。

ピアノ前奏は右手の8分音符2つ+8分休符と左手のバス音で、静かに夕闇が帳を下すさまを描いているかのようです。歌が始まってもしばらくはこの音型が続きますが、第3行で星の光が出てくるくだりで右手がシンコペーションのリズムになり、左手のリズムと交互に刻むことで静謐な中に動きが感じられます。

第1節の前半4行が終わるとピアノの右手が十六分音符の旋律的な音型を奏で、左手と交代しながら歌の対旋律のような響きとなります。ここは霧の中を手探りで歩いているようなイメージでしょうか。
その後、再び、右手と左手のリズムのずれる音型で第1節を締めます。

第2連への橋渡しとなる間奏は前奏の音楽が再び使われますが、間奏の締めくくりで短2度(ト(g)と変イ(as))の不協和な響きがあらわれ、聞き手を驚かせます。

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第1節では歌声部は不安定な逡巡を感じさせる進行が多かったのですが、第2節の最初の2行、月が出るくだりでは上行していきます。
その後再び第1節のような逡巡するような上下の動きに戻りますが、5行目で調号がこれまでのフラット2つからシャープ1つになり、ト長調の響きに代わります。ここから最後まで、夜の冷気が主人公を癒すというテキストを反映するかのように穏やかさを保ったまま曲を締めくくります。

最後の"Herz hinein"は2種類の旋律があり、1回目の"Herz hinein"の進行から考慮すると、低く下がっていく方の旋律がブラームスの本来の意図に近いのかもしれません。低いト音(g)は高声歌手にはきついというブラームスの思いやりでおそらく上行して1オクターブ上のト音に向かうヴァリアントが追加されたものと想像されます。ただ、個人的な意見ですが、ここは上行していく旋律の方が聞いていて魅力的に感じられました。シューマンの楽譜などではヴァリアントは小さい音符で書かれていたりしますが、このブラームスの旧全集では音符の大きさの違いがなく、ブラームスはどちらでもいいよと言っているのかもしれません。

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3/8拍子
ト短調(g-moll)
Langsam(ゆっくりと)

●詩の朗読(ユルゲン・ゴスラー)
JOHANN WOLFGANG VON GOETHE - DÄMMRUNG SENKTE SICH VON OBEN (Rezitation: Jürgen Goslar)

速めの朗読で若干追いにくいかもしれませんが、朗読者の息遣いや表現を味わうのも興味深いと思います。

●エリー・アーメリング(S), ルドルフ・ヤンセン(P)
Elly Ameling(S), Rudolf Jansen(P)

私はこの曲をアーメリング&ヤンセンの津田ホールでのリサイタルで初めて聞き、その後Hyperionに録音されたCDで繰り返し聞いて、渋さの中の魅力を教えてもらった思い出の演奏です。どの言葉も音もなおざりにすることない細やかなアーメリングの歌唱とヤンセンのどこまでも彼女の意図とぴったり一致したピアノに感銘を受けます。

●マルリス・ペーターゼン(S), シュテファン・マティアス・ラーデマン(P)
Marlis Petersen(S), Stephan Matthias Lademann(P)

ペーターゼンのアンニュイな響きが魅力的です。ラーデマンのピアノも歌と一体になって情景を描いていました。

●ロベルト・ホル(BSBR), ルドルフ・ヤンセン(P)
Robert Holl(BSBR), Rudolf Jansen(P)

ホッターの弟子でもあったホルは深々とした響きで、黄昏時の雰囲気を見事に表現していました。

●スィルヴィア・シュリューター(CA), ルドルフ・ヤンセン(P)
Sylvia Schlüter(CA), Rudolf Jansen(P)

シュリューターのコントラルトの響きが日の沈む時間帯の様子を落ち着いて表現していました。上記のアーメリングとホルの音源でもピアノを弾いているルドルフ・ヤンセンの、それぞれのオランダ人歌手に応じた優れた表現を聞き比べてみるのも一興かと思います。

●ハンス・ホッター(BSBR), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Hans Hotter(BSBR), Michael Raucheisen(P)

30代のホッターはすでに深みもありますが、声の艶が美しいですね。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

渋みを増した時期のF=ディースカウの歌唱と、バレンボイムの二重奏のようによく歌うアンサンブルは、この作品の魅力を見事に引き出していたと思います。

●ファニー・ヘンゼル・メンデルスゾーン作曲による「夕闇が上方から垂れ込め」
[Fanny Mendelssohn-Hensel]: Dammrung senkte sich von oben (Dusk Sinks from Above)
Christina Hogman(S), Roland Pöntinen(P)

メンデルスゾーンの姉ファニーは優れた歌曲を書いています。この作品も静謐な響きが美しいです。

●オットマー・シェック作曲による「夕闇が上方から垂れ込め」
Schoeck: 8 Lieder nach Gedichten von Goethe, Op. 19a - No. 2, Dämmrung senkte sich von oben
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Margrit Weber(P)

スイスの作曲家シェックによる作品です。ピアノの細かい音型は星や月がちらちら輝いているさまをあらわしているのでしょうか。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ゲーテ全集 2 詩集 新装普及版(1980年初版、2003年新装普及版発行 潮出版社)松本道介他9名訳(※「Dämmrung senkte sich von oben(夕やみがおりてきた)」の訳は内藤道雄)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の「Musings on Music」シリーズ:ラヴェル-歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』~2.「魅惑の笛(La flûte enchantée)」

●Musings on Music by Elly Ameling - Ravel, Shéhérazade - La Flute Enchantee

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

アーメリングによる説明
メロディー(mélodie)はフランスの作曲家による歌曲、もしくはフランス語のテキストによる歌曲を指します。
これまでの動画ではリート(Lied)、つまりドイツ歌曲を扱いました。
今回、この「Musings on Music」シリーズではじめてフランス歌曲を扱います。

私が選んだのはモリス・ラヴェルの歌曲集『シェエラザード』からの1曲です。シェエラザードは『千夜一夜物語』のヒロインかつナレーターです。もともと1000もの東洋のおとぎ話の歴史的コレクションでした。

20世紀初頭にトリスタン・クリングゾルがオリジナルの東洋の話をもとにした詩を出版しました。ラヴェルはクリングゾルの詩の中から3篇を選びました。
私は今回第2曲の「魅惑の笛 (La flûte enchantée)」を扱います。若い女性の使用人が歌う設定です。

1:55-4:49 「魅惑の笛」の音源が楽譜付きで流れる。演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏(アーメリング、サンフランシスコ交響楽団、エド・ドゥ・ヴァールト指揮)

詩と英訳の朗読

前奏はピアニッシモで、とてもゆっくり(Très lent)です。
弦は弱音器を付けてトレモロを刻む一方、フルート独奏が3小節続き、特に3小節目の9連符のフレーズは自由に流れているように聞こえなければなりません。

7:06- 前奏(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)

この後歌が柔らかく(très doux)始まります。
なぜなら歌詞がこう言っているから「影は心地よく、わが主人は眠っている」

7:43- 前奏から歌の最初の3行まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

ここで主人の鼻、帽子、ひげについて述べられます。
おそらく口髭(moustache)でしょう。

次に、ここで音符に示された通りに演奏しているか聞いてみましょう。また、いかにこのソプラノがそれぞれの小節で言葉を完璧に分けているか。

詩人のクリングゾルはこの詩をラヴェルに語って聞かせました。
彼が韻律(つまりリズム、アクセント、イントネーション)を把握できるように。
ディテールを理解して、ラヴェルはリズム、メロディー、ハーモニーを作り上げました。

10:12-10:48 前奏から(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)(シュザンヌ・ダンコ(S)、スイス・ロマンド管弦楽団、エルネスト・アンセルメ(C))

この演奏は50数年前私が「シェエラザード」を勉強した時に触発された演奏でした。

少女が「私は起きていて、愛する人のフルートを聞いている」と言ったとき、フルートがいかに生き生きと演奏するかに注目して聞いてみてください。

11:26-12:12 歌の3行目から7行目まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

そして興奮は突然止まり、音楽はゆっくりのテンポに戻ります。

少女はフルートを吹く男性と引き離されていることを悟っているようです。
彼女が窓のそばに近づき、フルートから聞こえた音はミステリアスなキスのようだと感じます。

12:45-13:59 8行目から最後まで(ダンコの歌唱)

後奏最後の3小節は前奏ですでに聞いたものです。

この詩と音楽の核心は愛の神秘だと思います。

今は自身の個性を演奏に反映しすぎてはならないのです。

神秘(Mystery)というものは私たち自身よりも大きいのではないでしょうか。

14:50- 全部の演奏(アーメリングの歌唱)(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

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シューベルト/「春の憧れ」(Schubert: Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3)を聞く

Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3
 春の憧れ

1.
Säuselnde Lüfte
Wehend so mild,
Blumiger Düfte
Athmend erfüllt!
Wie haucht Ihr mich wonnig begrüßend an!
Wie habt Ihr dem pochenden Herzen gethan?
Es möchte Euch folgen auf luftiger Bahn!
Wohin?
 ざわめく風が
 穏やかに吹き
 花の香りが
 放たれ いっぱいになる!
 きみは僕に喜んで挨拶をし、息を吐きかける!
 きみはこのどきどきする心に何をしたんだい?
 風の道を通ってきみに付いて行きたい!
 でもどこへ?

2.
Bächlein, so munter
Rauschend zumal,
[Wollen]1 hinunter
Silbern in's Thal.
Die schwebende Welle, dort eilt sie dahin!
Tief spiegeln sich Fluren und Himmel darin.
Was ziehst Du mich, sehnend verlangender Sinn,
Hinab?
 小川は、こんなに元気に
 いっせいに音を立てながら
 谷へと
 銀色に輝き下ろうとする。
 漂う波、それはあちらへと急いで行きたいのだ!
 野原や空が水底深くに映っている。
 どうやってきみは僕を引っ張っていくのか、切望して、欲しがる気持ちよ、
 向こうへ下りながら?

3.
Grüßender Sonne
Spielendes Gold,
Hoffende Wonne
Bringest Du hold.
Wie labt mich Dein selig begrüßendes Bild!
Es lächelt am tiefblauen Himmel so mild,
Und hat mir das Auge mit Thränen gefüllt! -
Warum?
 挨拶する太陽が
 金色にゆらめく、
 望みをもつことの喜びを
 きみは優しくもたらしてくれる。
 きみが幸せに満ちて迎えてくれる姿がどれほど僕を元気づけることか!
 藍色の空はとても穏やかに微笑み、
 僕の目は涙でいっぱいになった!
 でもどうして?

4.
Grünend umkränzet
Wälder und Höh'!
Schimmernd erglänzet
Blüthenschnee!
So dränget sich Alles zum bräutlichen Licht;
Es schwellen die Keime, die Knospe bricht;
Sie haben gefunden was ihnen gebricht:
Und Du?
 周囲を緑に飾るのは
 森や丘!
 きらきら輝くのは
 雪のように舞う花々!
 あらゆるものが花嫁の放つ光へと突き進む、
 芽はふくらみ、蕾は開き、
 彼らに足りなかったものを見つけたのだ、
 ではきみはどうなんだ?

5.
Rastloses Sehnen!
Wünschendes Herz,
Immer nur Thränen,
Klage und Schmerz?
Auch ich bin mir schwellender Triebe bewußt!
Wer stillet mir endlich die drängende Lust?
Nur Du [befreist]2 den Lenz in der Brust,
Nur Du!
 絶え間ない憧れ!
 欲する心、
 常に涙、
 嘆き、苦しみばかりなのか?
 僕だって衝動が膨らんでくるのを自覚している!
 僕の急き立てられた欲望をようやく鎮めてくれるのは誰なのか?
 きみだけが胸の中に春を解き放ってくれる、
 きみだけなのだ!

1 Rellstab: "Wallen"
2 Rellstab: "befreiest"

詩:Ludwig Rellstab (1799-1860), "Frühlings-Sehnsucht"
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Frühlingssehnsucht", D 957 no. 3 (1828), published 1829 [voice and piano], from Schwanengesang, no. 3, Tobias Haslinger, VN 5370, Wien

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シューベルトの死後『白鳥の歌 D957』として出版された歌曲集の第3曲に置かれた「春の憧れ」は、その名の通り、春がやってくる期待感、いてもたってもいられない焦燥感をこれ以上ないぐらい見事に描いた作品です。
シューベルトは亡くなる直前にルートヴィヒ・レルシュタープの詩にまとめて作曲しています。それらは兵士の孤独感、甘美な恋の歌、疎外感でいっぱいの心情、慣れ親しんだものからの別れ等多岐にわたり、それぞれが晩年(というにはあまりにも若すぎますが)のシューベルトの熟した技法で作曲されています。

この第3曲の詩を見ると春の到来と同時に、第4連にあるように「足りなかったもの(was ihnen gebricht)」つまり伴侶を見つけるということが主人公にとっての春であることが分かります。風や花や小川や太陽が主人公の心の中の衝動を引き起こそうとします。最終連で主人公は僕にも衝動が膨らんできて、それを鎮めてくれるのは「きみだけ(nur du)」なんだと気づきます。春が恋する気持ちを呼び覚ます、なんともロマンティックな詩ですね。

シューベルトはこの春に「突き動かされる」心情に焦点を当てて速いスピードで表現しています。歌声部は、詩のリズムに合わせた「♩♪♪」のリズムが印象的です。ちなみに第1連から第4連は有節形式で、詩句の音節の数に応じた多少の音価の違いがあるのみです(ちなみに旧全集の楽譜ではリピート記号で第1~4連を繰り返していますが、初版ではすべての節を記載していました)。最終連(第5連)でこれまでの変ロ長調(B-dur)から変ロ短調(b-moll)に転調して、主人公が憧れて満たされないあまりに、泣いたり嘆いたり苦しんだりするだけなのかとこぼす箇所の辛さを表現します。その後、もう一度同じ個所を繰り返す時には変ニ長調(Des-dur)に転調して、主人公の一瞬の気持ちの陰りも衝動の力によってポジティブに変わっていくことを示しているように思います。その後、もとの変ロ長調に戻りますが、歌の最後"Nur Du!"の"Du"をソの音で終わらせて、「きみ」に呼びかけているような効果を感じさせます。ピアノ後奏も変ロ長調のまま進みますが、最後の主和音の一つ前のIVの和音の第3音をフラットで半音下げてちょっとした陰りを加えるところなど「きみ」への一抹の不安が表現されていて、心憎い締めくくりとなっています。

●冒頭部分:初版(Vienna: Tobias Haslinger, n.d.[1829])
Fruhlingssehnsucht-first-edition 

2/4拍子
変ロ長調 (B-dur)
Geschwind (速く)

●ヘルマン・プライ(BR), ヴァルター・クリーン(P)
Hermann Prey(BR), Walter Klein(P)

「春の憧れ」は7:26からです。プライは数回『白鳥の歌』を録音していますが、第1回目のこの録音は忘れられない名盤です。若かりしプライは勢いをつけて威勢よく歌っています。他の時期にはない全霊を込めた熱唱でただただその熱気に引き込まれます。クリーンもプライの熱気を生かした雄弁な演奏です。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), アルフレート・ブレンデル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Alfred Brendel(P)

年を重ねた人にももちろん平等に春はやってきます。円熟期のディースカウが若い頃に劣らず春への期待感をめりはりつけて歌っているところに感銘を受けます。ブレンデルの雄弁なリズム感も素晴らしいです。

●ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

温かみのある歌とピアノのコンビです。最後の「きみだけなのだ!(Nur du!)」に込められた寂寥感が印象的です。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーの爽やかな美声と、涼風が吹き渡るような軽快なオルベルツのピアノが素晴らしいです!

●マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)
Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P)

ゲルネはこういう軽快な曲にも違和感なく対応できるのが凄いです。

●ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)
Gérard Souzay(BR), Dalton Baldwin(P)

スゼーの歌は気品のある優しい響きがこの曲のもつ爽やかさとぴったり合致していて魅力的でした。ボールドウィンのピアノが押し寄せる焦燥感を素晴らしく表現していました。3,4節を省略していたのがもったいないぐらい、もっと聞いていたい演奏でした。

●クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)
Christoh Prégardien(T), Andreas Staier(Fortepiano)

さすがプレガルディアン!第2節以降、かなり装飾・変更をしています。もちろんシュタイアーも第3節以降、同様に変更を加えています。ぼーっと聞いていても、急に聞きなれない音が聞こえるので、一瞬で目が覚めます。最初の4節は完全な有節形式なので、こういう変更は他のアーティストもやりやすいのでは。

●アンドレ・シュエン(BR), ダニエル・ハイデ(P)
Andrè Schuen(BR), Daniel Heide(P)

新世代のリート歌手シュエンが力強さと丁寧さを両立させた歌を聞かせています。ハイデも丁寧な演奏でした。

●エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P)

アーメリングは各節最終行の2音節(Wohin?など)の陰りを帯びた表情が絶妙です。

●ヤン・コボウ(T), クリスティアン・ベザイデンホウト(Fortepiano)
Jan Kobow(T), Kristian Bezuidenhout(Fortepiano)

古楽を得意とするコボウらしく新鮮な歌唱でした。ベザイデンホウトのフォルテピアノはいろいろ仕掛けていて新しい側面を引き出していたように感じました。

※有名な「白鳥の歌」の中の1曲なので、他にも沢山の録音があります。皆さんのお気に入りを探してみるのもいいかもしれません。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de (Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3)

Wikipedia - ルートヴィヒ・レルシュタープ

Wikipedia - Ludwig Rellstab (Dichter) (ドイツ語)

Wikipedia - Ludwig Rellstab (英語)

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(CD)

ヘルマン・プライ(BR), ヴァルター・クリーン(P)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), アルフレート・ブレンデル(P)

ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)

ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)

マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)

クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)

アンドレ・シュエン(BR), ダニエル・ハイデ(P)

エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)

ヤン・コボウ(T), クリスティアン・ベザイデンホウト(Fortepiano)

ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)

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