エリーの要点「美」(Elly's Essentials; “Beauty”)

●Elly's Essentials; “Beauty”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます。)

(エリー・アーメリングの言葉の大意)

「Beauty(美)」という言葉は今では多くのものに使われすぎてありふれた言葉になってしまいました。
「美」に感動していますか。
ハーモニーの使者として「美」を経験していますか。
人生に必要なものとしてハーモニーを経験していますか。
時間があればハーモニーや美に洗浄してもらうのですが、携帯電話やAIなど責務が肩にのしかかってきます。
6時になったら電化製品から離れて、シューベルトを聞きませんか?

6:29- シューベルト「夕映えの中で(Im Abendrot)」の演奏(エリー・アーメリング&ドルトン・ボールドウィン)

Im Abendrot, D 799
 夕映えの中で

O wie schön ist deine Welt
Vater, wenn sie golden strahlet!
Wenn dein Glanz herniederfällt,
Und den Staub mit Schimmer malet,
Wenn das Rot, das in der Wolke blinkt,
In mein stilles Fenster sinkt!
 おお、なんと美しいのだ、御身の世界は、
 父よ、世界が金の光を放つ時!
 また、御身の輝きが降り注ぎ、
 ほこりを微光で色づける時、
 雲の中でちらついている紅が
 私の静かな窓辺に沈み込んでくる時!

Könnt ich klagen, könnt ich zagen?
Irre sein an dir und mir?
Nein, ich will im Busen tragen
Deinen Himmel schon allhier.
Und dies Herz, eh es zusammenbricht,
Trinkt noch Glut und schürft noch Licht.
 私は嘆き、ためらっているのだろうか?
 御身も自分も信じられないのだろうか?
 いや、私は胸にしかと抱こう、
 もうここにある御身の天空を。
 そして、この心は、もろく崩れ落ちる前に
 さらに赤熱を飲み込み、光をすすり入れるのだ

詩:Karl Gottlieb Lappe (1773-1843), "Im Abendroth", first published 1818
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Im Abendrot", D 799 (1824?5)

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(参考)

Elly's Essentials; Elly's Essentials; “Beauty” (YouTube)

The LiederNet Archive (O wie schön ist deine Welt)

詩と音楽 梅丘歌曲会館(夕映えの中で)(※私がかつて投稿した対訳)

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エリーの要点「25年前から乗っているトヨタ車」(Elly's Essentials; “25 year old Toyota”)

●Elly's Essentials; “25 year old Toyota”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます。)

(エリー・アーメリングの言葉の大意)

91歳の現在、私は25年前のトヨタ車に壊れることなく乗っています。
時々、駐車場でとなりの車に甘く軽いキスのように触れることがあります。先週かすってしまった時は損傷が全くなかったことが分かり幸運でした。私の災難は小さなものでしたが、世界中でもっと大きな災難が襲っています。それらは先の世界大戦の終焉以降、未来を予見しなかった政治への罰なのでしょうか。私が6歳の時、父が「先見の明は政府の本質だ」とよく言っていました。現在、世界中のプロパガンダと選挙制度は、民主主義が消えそうなほど腐敗しているように思えます。1990年代に賢明な私の友人が「民主主義よりも優れた制度を知っていますか」と言っていましたが、それは次の問いにつながります。「混沌(chaos)は未来の私たちの運命でしょうか」。
ところで「chaos(混沌)」という言葉は古代ギリシャ語から借用したもので、「深淵(abyss)」を意味します。
ギリシャ文明が発展したらしい空っぽの深淵は、我々の言うところの混沌、つまり廃墟となりました。古代ギリシャ人はそれを見ていました。私たちは彼らから何かを学んだのでしょうか。

(3:55- Schubert: Die Götter Griechenlands, D677)
Elly Ameling, Rudolf Jansen
Concertgebouw Amsterdam
03-02-1990

Die Götter Griechenlands, D 677
 ギリシャの神々

Schöne Welt, wo bist du? Kehre wieder
Holdes Blüthenalter der Natur!
Ach, nur in dem Feenland der Lieder
Lebt noch deine fabelhafte Spur.
Ausgestorben trauert das Gefilde,
Keine Gottheit zeigt sich meinem Blick,
Ach, von jenem lebenwarmen Bilde
Blieb der Schatten nur zurück.
 美しい世界よ、どこにいるのか?戻ってきておくれ
 自然が優しく花開いた時代よ!
 ああ、歌の中のおとぎの国にのみ
 あなたの寓話の足跡が生きている。
 死に絶えた広野は悲しみ、
 神は私の目の前に姿を現さず、
 ああ、あの生きて温かい姿の
 幻影だけが残ったのだ。

詩:Friedrich von Schiller (1759-1805), title 1: "Die Götter Griechenlandes", title 2: "Die Götter Griechenlands", written 1788, first published 1788
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Strophe aus 'Die Götter Griechenlands'", D 677 (1819), published 1848, stanza 12 [ voice, piano ], A. Diabelli & Co., VN 8819, Wien (Nachlaß-Lieferung 42)

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(参考)

Elly's Essentials; “25 year old Toyota” (YouTube)

The LiederNet Archive

etymonline (chaos の語源)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の「Musings on Music」シリーズ:ラヴェル-歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』~3.「つれない人(L'Indifférent)」

●Musings on Music by Elly Ameling - Ravel, Shéhérazade - L'Indifférent

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

エリー・アーメリングによる説明(大意)

親愛なる視聴者様
前回の熟考(musing)シリーズではトリスタン・クリングゾル(Tristan Klingsor)の詩、モリス・ラヴェル(Maurice Ravel)の音楽による歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』の2曲目「魅惑の笛(La flûte enchantée)」を聞きました。
この歌曲集は1904年に初演されました。
私は今回この歌曲集の終曲「つれない人(L'Indifférent)」について話したいと思います。
ある若い女性が男性に向けて言います。あなたの瞳は娘のように優しく、顔は魅力的だと。彼女はこの男性に家に入ってワインを飲むように誘います。しかし彼は断り、女性のような足取りで去ってしまいます。

(1:30-5:16 エリー・アーメリング、サンフランシスコ交響楽団、エド・ドゥ・ヴァールト指揮による演奏)

(5:21-7:21 アーメリングによる原詩と対訳の朗読)

※以下、原詩は著作権の都合上掲載せず、英訳詩とその重訳による私の日本語訳のみ掲載します。

Your eyes are gentle like those of a girl, young stranger,
あなたの瞳は少女のように優しい、若い異国の方、

And delicate curve of your handsome face shaded with down.
産毛で影になったハンサムな顔の繊細な曲線は

Is still more attractive in its contour.
その輪郭においてなおさら魅力的です。

Your lips chant on my doorstep.
あなたの唇は私の戸口で歌います

An unknown and charming tongue
未知の魅力的な言葉で

Like false music.
調子はずれの音楽のように。

Enter!
お入りなさい!

And let my wine refresh you.
私のワインで元気にしてさしあげましょう。

But no, you passed by
でもだめだった、あなたは通り過ぎて行きます。

And from my threshold I see you departing
私の敷居からあなたが遠ざかるのが見えます。

Gracefully waving farewell to me
優雅に別れの合図をしながら

Your hips lightly swaying
腰を軽く揺らして

With your feminine languid gait.
女性のようなけだるい足取りで。

この歌曲にp(ピアノ)の指示のない小節はありません。オーケストラも歌声もソフトに演奏します。
ピアニッシモ(pp)とピアニッシシモ(ppp)。
娘がワインで男性を誘う時の切望する気持ちと終結に向けて味わう失望-これはすべて弱音器付きです。
わずかな変化を伴ったゆっくりしたテンポとレガートが官能的な雰囲気を喚起します。
絵も見てみましょう。当時の人々や国々では、このような気分で生活するのに時間をかけました。

これからラヴェル自身による声とピアノの版を流そうと思います。
これまで述べたことで、ゆっくりしたテンポに関してはピアノでは非常に困難であることが明らかになるでしょう。
弦楽器、管楽器は長いフレーズを音を保ったまま演奏することは可能ですが、ピアノは音を発するとすぐに減衰してしまいます。
悲しいけれど事実です。
しかし、ルドルフ・ヤンセンがどれほど素晴らしく、指のレガートやペダルを繊細に用いて、ゆっくりのテンポで音を保持することに成功しているかを聞いてみましょう。
ヤンセンはこの歌に必要不可欠な官能的で規則的なレガートを作り出しています。

(9:39-13:48 エリー・アーメリング、ルドルフ・ヤンセンによるピアノ版の演奏)

お聞きの通り、テンポはオーケストラ版と全く同じでした。
そして、ほとんどの音楽では下行のみで用いられるポルタメントですが、ここで歌手は上行と下行のポルタメントを用いていました。
歌声がピアニストの演奏する和音の規則性を妨げないように、"sé-dui-sante" の "-sante" 音節の最初の拍でポルタメントを正確に終えています。

(14:27-14:56 上述箇所の演奏)

この厳密だが決して堅苦しくないテンポ、つまり拍(beat)こそが必須です。私たち演奏者は、これらの音符を伴奏付きのレチタティーヴォのように表現することは出来ません。
特徴は、古いアラビアの物語のくつろいだ雰囲気であり、音符以外にもラヴェルはスコアできわめて詳細な指示を与えています。
その後は次のように続きます-「あなたの唇は私の戸口で歌います/未知の魅力的な言葉で/調子はずれの音楽のように」
-あなたの唇は"調子はずれの音楽を"歌います。
"False (fausse)(調子はずれの)"-これは重要な言葉で声に特定の色合いを要求します。調子はずれの音楽は成功しなかった出会いそれ自体であるかのようです。和声の中の不協和音に注目してください。

(16:16-16:45 "Ta lèvre chante sur le pas de ma porte / Une langue inconnue et charmante / Comme une musique fausse"の部分のピアノ版の演奏)

その後、"Entre!(お入りなさい!)"と娘は言います。この"Entre!"という言葉には重要なグリッサンドがあるのですが、残念ながらこの録音の歌声にはグリッサンドがないのです。

(17:07-17:37 "Comme une musique fausse / Entre! / Et que mon vin te réconforte"の部分のピアノ版の演奏)

その後、3小節で彼女は彼が自分に興味を示さず優雅な女性的な足取りで歩き去るのを見ます。この男性は同性愛者だったのです。

(17:55-19:21 "Comme une musique fausse"以降歌の終わりまでのピアノ版の演奏)

よろしければ最後にもう一度曲全体を聴いて終わりにしましょう。私にとってはどちらの版にするか難しい選択ですが。オーケストラ版にします。

(19:36- オーケストラ版の全曲演奏)

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エリーの要点「イーアー」(マーラー:高き知性への賛美)(Elly's Essentials; “ I - A ”)

●Elly's Essentials; “ I - A ”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます)

●エリー・アーメリングの言葉の大意

「人類は自然の上位にあるわけではなく自然の一部です。
私たちは種として滅亡の危機にあるのではないでしょうか。
私たちは自然の頂点に立たせてくれた脳を放棄し、人工知能(AI)に置き換えようとしています。
その止め方を誰か知っていますか?」

●演奏

エリー・アーメリング(S)
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ズデニェク・マーカル(C)
1972年、オランダ音楽祭
(※2008年1月7日にオランダのNPO Radio4で放送されたものと同一音源ならば、1972年7月8日、De Doelen, Rotterdamのライヴ録音)

Elly Ameling, soprano
Rotterdam Philharmonic
Zdeněk Mácal, conductor
Holland Festival 1972

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Gustav Mahler: Lob des hohen Verstandes
 グスタフ・マーラー:高き知性への賛美

Einstmals in einem tiefen Tal
Kukuk und Nachtigall
Täten ein Wett' anschlagen:
Zu singen um das Meisterstück,
Gewinn' es Kunst, gewinn' es Glück:
Dank soll er davon tragen.
 昔、ある深い谷で
 カッコウとサヨナキドリが
 賭けをすることになった、
 どちらが立派な歌を歌うか、
 芸を手に入れようが、運を手に入れようが
 勝者は謝礼をもらうことになる。

Der Kukuk sprach: "So dir's gefällt,
Hab' ich den Richter wählt",
Und tät gleich den Esel ernennen.
"Denn weil er hat zwei Ohren groß,
So kann er hören desto bos
Und, was recht ist, kennen!"
 カッコウは言った「君さえ良ければ
 審査員を選んでおいたよ」
 そしてすぐにロバを任命した。
 「だってロバは2つの大きな耳があるから
 その分欠点も聞こえて
 何が正しいか分かるだろう。」

Sie flogen vor den Richter bald.
Wie dem die Sache ward erzählt,
Schuf er, sie sollten singen.
Die Nachtigall sang lieblich aus!
Der Esel sprach: "Du machst mir's kraus!
Du machst mir's kraus! I-ja! I-ja!
Ich kann's in Kopf nicht bringen!"
 彼らはすぐにこの審査員の前まで飛んで行った。
 事の次第を話すと
 ロバは仕事を始め、彼らに歌うように言った。
 サヨナキドリは愛らしく歌った!
 ロバは言った「君の歌はよく分からない!
 君の歌はよく分からんよ!イーヤー!イーヤー!
 私の頭に入ってこない!」

Der Kukuk drauf fing an geschwind
Sein Sang durch Terz und Quart und Quint.
Dem Esel g'fiels, er sprach nur
"Wart! Wart! Wart! Dein Urteil will ich sprechen,
Wohl sungen hast du, Nachtigall!
Aber Kukuk, singst gut Choral!
 続いてカッコウが急いで歌い始めた、
 3度、4度、5度音程の歌を。
 ロバは気に入り、ただこう言った、
 「待て!待て!待て!判定を言い渡そう。
 君もよく歌ったよ、サヨナキドリさん!
 でもカッコウさん、君は上手にコラールを歌ったな。

Und hältst den Takt fein innen!
Das sprech' ich nach mein' hoh'n Verstand!
Und kost' es gleich ein ganzes Land,
So laß ich's dich gewinnen!"
 それから拍子もうまく守っていた!
 これは私の高き知性にかけて述べるものだ!
 この歌はまるまる一国に値する、
 それゆえ君の勝ちとする!」

詩:from Volkslieder (Folksongs) , appears in Des Knaben Wunderhorn

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP

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エリーの要点「なぜ歌の特徴にほとんど言及しないのか」(Elly's Essentials; “Why so few particular features”)

●Elly's Essentials; “Why so few particular features”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます。)

なぜ私がいつも歌の特徴にあまり言及しないのだろうと不思議に思った方もいるでしょう。

残念ながらどんな歌曲でも20分以上費やすのは困難です。

でももっと重要なことは、私のこの短いビデオから触発されて、学生、教師や他のすべての視聴者がより多くの特徴を自ら探して見つけることを望んでいるのです。

芸術歌曲と詩は無限の広さをもっていると同時にとても細やかなものです。

ヨハネス・ブラームスの歌曲「Wie Melodien zieht es mir leise durch den Sinn(メロディーのようにそれはわが心にそっと触れます)」

Brahms: Wie Melodien zieht es, Op. 105/1
 ブラームス:メロディーのように 作品105/1

Wie Melodien zieht es
Mir leise durch den Sinn,
Wie Frühlingsblumen blüht es,
Und schwebt wie Duft dahin.
 メロディーのようにそれは
 私の感覚をそっと通り抜けます、
 春の花々のようにそれは花咲き
 香りのように漂うのです。

Doch kommt das Wort und faßt es
Und führt es vor das Aug',
Wie Nebelgrau erblaßt es
Und schwindet wie ein Hauch.
 しかし言葉が来て、それをつかみ、 
 目の前にもってくるやいなや、
 かすんだ霧のようにそれは青ざめ
 吐息のように消えてしまうのです。

Und dennoch ruht im Reime
Verborgen wohl ein Duft,
Den mild aus stillem Keime
Ein feuchtes Auge ruft.
 それでも韻律の中に
 ひそかに香りは残り、
 それを静かな芽から穏やかに
 濡れた瞳が呼び起こすのです。

詩:クラウス・グロート(Klaus Groth: 1819-1899)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の「Musings on Music」シリーズ:ラヴェル-歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』~2.「魅惑の笛(La flûte enchantée)」

●Musings on Music by Elly Ameling - Ravel, Shéhérazade - La Flute Enchantee

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

アーメリングによる説明
メロディー(mélodie)はフランスの作曲家による歌曲、もしくはフランス語のテキストによる歌曲を指します。
これまでの動画ではリート(Lied)、つまりドイツ歌曲を扱いました。
今回、この「Musings on Music」シリーズではじめてフランス歌曲を扱います。

私が選んだのはモリス・ラヴェルの歌曲集『シェエラザード』からの1曲です。シェエラザードは『千夜一夜物語』のヒロインかつナレーターです。もともと1000もの東洋のおとぎ話の歴史的コレクションでした。

20世紀初頭にトリスタン・クリングゾルがオリジナルの東洋の話をもとにした詩を出版しました。ラヴェルはクリングゾルの詩の中から3篇を選びました。
私は今回第2曲の「魅惑の笛 (La flûte enchantée)」を扱います。若い女性の使用人が歌う設定です。

1:55-4:49 「魅惑の笛」の音源が楽譜付きで流れる。演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏(アーメリング、サンフランシスコ交響楽団、エド・ドゥ・ヴァールト指揮)

詩と英訳の朗読

前奏はピアニッシモで、とてもゆっくり(Très lent)です。
弦は弱音器を付けてトレモロを刻む一方、フルート独奏が3小節続き、特に3小節目の9連符のフレーズは自由に流れているように聞こえなければなりません。

7:06- 前奏(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)

この後歌が柔らかく(très doux)始まります。
なぜなら歌詞がこう言っているから「影は心地よく、わが主人は眠っている」

7:43- 前奏から歌の最初の3行まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

ここで主人の鼻、帽子、ひげについて述べられます。
おそらく口髭(moustache)でしょう。

次に、ここで音符に示された通りに演奏しているか聞いてみましょう。また、いかにこのソプラノがそれぞれの小節で言葉を完璧に分けているか。

詩人のクリングゾルはこの詩をラヴェルに語って聞かせました。
彼が韻律(つまりリズム、アクセント、イントネーション)を把握できるように。
ディテールを理解して、ラヴェルはリズム、メロディー、ハーモニーを作り上げました。

10:12-10:48 前奏から(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)(シュザンヌ・ダンコ(S)、スイス・ロマンド管弦楽団、エルネスト・アンセルメ(C))

この演奏は50数年前私が「シェエラザード」を勉強した時に触発された演奏でした。

少女が「私は起きていて、愛する人のフルートを聞いている」と言ったとき、フルートがいかに生き生きと演奏するかに注目して聞いてみてください。

11:26-12:12 歌の3行目から7行目まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

そして興奮は突然止まり、音楽はゆっくりのテンポに戻ります。

少女はフルートを吹く男性と引き離されていることを悟っているようです。
彼女が窓のそばに近づき、フルートから聞こえた音はミステリアスなキスのようだと感じます。

12:45-13:59 8行目から最後まで(ダンコの歌唱)

後奏最後の3小節は前奏ですでに聞いたものです。

この詩と音楽の核心は愛の神秘だと思います。

今は自身の個性を演奏に反映しすぎてはならないのです。

神秘(Mystery)というものは私たち自身よりも大きいのではないでしょうか。

14:50- 全部の演奏(アーメリングの歌唱)(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」&第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の考察

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルで、先日アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」に関する考察がアップされましたが、続いて、第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」と第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の動画がアップされました!今回も楽しみながらアーメリングの見解を知ることが出来ます。ぜひご覧ください。

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 8)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, Waldesgespräch (Liederkreis op. 39 no. 3)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

※以下、ネタばれ注意!!

【第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」について】

※この動画の一番最後に、ここで流された演奏のピアニストについて触れられています。彼女らしく感傷とは無縁ですが、その口調にこのピアニストへの深い思いが伝わってきました。

「先日扱った第1曲と同じタイトルの第8曲「異郷にて」について扱いたいと思います。」

演奏が通して流される

アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳

「シューマンの曲も詩も第1曲と非常に違います。第1曲は常にゆっくりのテンポだったが、この曲は動きに満ちています」

第1曲冒頭と第8曲の冒頭の演奏を聴く

「第8曲は、小川のささやきとナイチンゲールの歌声、月光の輝きがこの速いテンポの音楽で表されています。オクターブで弾かれる両手はmfからすぐにデクレッシェンドとなり、自然界すべてが活気のある感動の中にいます」

第8曲の冒頭の演奏が流れる

「第1曲の詩では父母がずっと前に亡くなっているのに対して、この第8曲では、最愛の人が亡くなってから長く経っています」

「この詩の第2連後半では「古き麗しき時代」を思い返しています」

「興奮したテンポは2回中断されます」

該当箇所の演奏が流れる(リタルダンドされる)
"Von der alten,schönen Zeit(古き麗しき時代)"
"Und ist doch so lange tot(そして亡くなってとても長く経った)"

「"Und ist doch so lange tot"は3回繰り返され、歌手はこの悲しい詩句をそれぞれ異なる歌い方で表現しなければならないのです」

「この第8曲の音楽と詩は、ドイツロマン派の頂点とみなしうるかもしれません」

「人の愛は自然の中に飛び立つ。同じことが第1曲にも言えます。でもお互いを比較して、かなりのわくわくする効果の違いを体験してきました」

「1979年(*)に私はルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)とこの歌を録音しました。彼はこの動画を撮影する2週間前の2024年2月に旅立ちました。」

*注:アーメリングの思いのこもった言葉に水を差すようで甚だ恐縮ですが、ルドルフ・ヤンセンと録音したのはおそらく1980年5月2日の放送録音と思われます(5枚組CDボックス"80 jaar"に収録されています)。ちなみに1979年にはイェルク・デームスとPhilipsにスタジオ録音しています。

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【第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」について】

「演奏者については耳と心に先入観を持たないでもらう為、動画の最後に明かします」

「前奏は森の猟師の吹く角笛の響きを表しています」

「日が落ちる頃の話で、詩は男性と美しい女性のロマンティックな出会いについてです。男性はライン川の近くを馬に乗っています。男性は一緒に来て花嫁になるように彼女を誘います。何が起こるか聞いてみましょう」

男声歌手の演奏が通して流れる

アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳(※アーメリングの迫真の朗読を聞いてみてください!)

「前回までに扱った第1曲、第8曲は男性の歌でしたが、今回の第3曲は男性と女性の両方が出てきます。しかしこの曲は一人の歌手(女声もしくは男声歌手)によって歌われます」

男声歌手のローレライが語る箇所の演奏が流れる

女声歌手の演奏が通して流れる

「(女声歌手の演奏を聴いて)本当にドラマですね!話者を示す引用符のないテキストを見てみてください」

「このアイヒェンドルフの詩をシューマンは小説「予感と現代(Ahnung und Gegenwart)」から採りました。」

「この女声の演奏は、さきほどの男声の演奏よりゆっくりでした。テンポは"Ziemlich rasch(かなり速く)"と書かれています。」

「美しい花嫁のあなた!私があなたを家に送ろう(Du schöne Braut! Ich führ dich heim!)」
「heimは英語のhomeで家に連れ帰ろうとしています。これは貪欲に聞こえます。」

女声歌手の演奏の冒頭が流れる

「連れ帰ろうという男の声とローレライの声はとても対照的です。彼女は男の欺瞞と狡猾(Trug und List)に傷つけられたことによって悲しんでいます。
女性が悲しんでいる時の旋律線を描くとき、声色は暗いです。
この録音の女声歌手は男性の語る箇所では暗い音色のままではありません。」

女声歌手の途中の演奏(O flieh! Du weißt nicht,wer ich bin.まで)が流れる

「"あなたは私が誰だか知らない(Du weißt nicht,wer ich bin.)"-ここでは男性に対する怒りもこれから彼にふりかかることへの警告もありません。すると男性は彼女を褒め続けます」

「"あなたが誰か今分かったぞ(Jetzt kenn ich dich)"の前でリタルダンドになります。ここで楽譜には大きな効果が出るようになっています。歌手とピアニストはF(フォルテ)で演奏します」

女声歌手の途中の演奏(Du bist die Hexe Lorelei. まで)が流れる

「この女声歌手はローレライとばれた後の最終連でも比較的ゆっくりのままでまだ友好的に思えます」

「最後の数小節にいたってようやく鋭い子音を伴って復讐の厳しい音色になります」

女声歌手の途中の演奏(ローレライと悟ってから最後まで)が流れる

「こうして角笛の信号は遠くに消えていきます」

別の女声歌手の演奏が通して流れる

「1800年頃以降クレメンス・ブレンターノは中世の物語(Saga)を用いて魔女ローレライの話を書きました。
私もこの有名な伝説の場所のそばを列車や車やボートで通りましたが、私はラッキーでした(※伝説にあるようなことは何も起こらなかったということ)。」

動画内で流された音源の種明かし(流れた順番による)

1.
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

2.
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S)&ジェフリー・パーソンズ(P)

3.
エリー・アーメリング(S)&ルドルフ・ヤンセン(P)

最後に合唱によるジルヒャーの「ローレライ」の音源が流れる

---------

(参考)

The LiederNet Archive (In der Fremde, Op. 39, No. 8)

The LiederNet Archive (Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

アーメリング&デームスの『リーダークライスOp.39』が収録された29枚組CD

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エリー・アーメリングの参加したヘンデルのオラトリオ『テオドーラ(Theodora)』(抜粋)ライヴ音源(1974年9月19日, デンマーク)

●Theodora 0001

Channel名:Frank Samuelsen (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ます!)

もう4年前にアップされていて、今頃気が付いたのですが、エリー・アーメリングがスタジオ録音を残していないヘンデルのオラトリオ『テオドーラ』抜粋に参加した時のライヴ録音がありました。
アップして下さった方に感謝です!
コペンハーゲン少年合唱団創立50周年記念として1974年にデンマークで催されたコンサートとのことですが、そういう事情もあってか合唱団の歌う曲は全曲演奏されていて、一方で独唱者が担当する曲のうち殆どのレチタティーヴォと少なくない数のアリアが省略されています。ちょうど休憩時間を考慮すると2時間ぐらいに収まる時間なので、実際にこの抜粋版で演奏されたのではないかと推測されます。

ヘンデルのオラトリオ『テオドーラ』はキリスト教徒のテオドーラが、同じくキリスト教に改宗した恋人のディディムスと殉教するという内容です。お互いが相手の身代わりとして訴えますが、結局二人とも処刑されてしまいます。作曲当時は不人気だったようですが、ヘンデル自身はメサイアの有名なハレルヤ・コーラスよりも第2幕最後の"He saw the lovely youth"を高く評価していたそうです。

ここでタイトルロールを歌っているアーメリングは、艶があり、声も若さゆえの豊麗さがあって、英語のディクションも明晰で本当に素晴らしいです。彼女の歌うパートは下記7曲ですが、もしお時間があれば全曲(といっても抜粋ですが)少しずつ聞いてみるのもいいかもしれません。

●アーメリングの歌っている曲(テオドーラ役)

22:26-26:40
Scene 3
13. Air (Theodora) "Fond, flatt'ring world, adieu!"

36:05-39:48
Scene 5
24. Air (Theodora)"Angels, ever bright and fair"

51:39-53:31
Scene 2
39. Air (Theodora) "Oh, that I on wings could rise"

1:01:41-1:03:38
49. Air (Theodora) "The pilgrim's home"

1:03:41-1:08:36 with Helen Watts
51. Duet (Theodora, Didymus) "To thee, thou glorious son of worth"

1:18:01-1:21:56 with chorus
Scene 2
57. Solo and Chorus (Christians, Theodora) "Blest be the hand"

1:28:17-1:32:58 with Helen Watts
Scene 6
70. Air and Duet (Didymus, Theodora) "Streams of pleasure ever flowing"

詳細は下記の通りです。

ヘンデル:オラトリオ『テオドーラ』抜粋
ライヴ録音:1974年9月19日, Radiohusets koncertsal, デンマーク

エリー・アーメリング(S: テオドーラ)
エディト・ギヨーム(MS: イレーネ)
ヘレン・ワッツ(CA: ディディムス)
ニール・ジェンキンズ(T: セプティミウス)
ウルリク・コルド(BS: ヴァレンス)
コペンハーゲン少年合唱団
デンマーク放送交響楽団
モーゲンス・ヴェルディケ(C)

Händel: Theodora (excerpts)

rec. 19 Sep. 1974, Radiohusets koncertsal, Danmark

Elly Ameling(S: Theodora)
Edith Guillaume(MS: Irene)
Helen Watts(CA: Didymus)
Neil Jenkins(T: Septimius)
Ulrik Cold(BS: Valens)
Københavns Drengekor
Radiosymfoniorkestret
Mogens Wöldike(C)

0:00-
Act 1
Scene 1
1. Overture – Trio – Courante

4:33-
2. Recitative (Valens) "'Tis Dioclesian's natal day"

5:11-
3. Air (Valens) "Go, my faithful soldier, go"

7:16-
4. Chorus of Heathens "And draw a blessing down"

9:42-
7. Chorus of Heathens "For ever thus stands fix'd the doom"

12:27-
Scene 2
9. Air (Didymus) "The raptur'd soul"

16:53-
11. Air (Septimius) "Descend, kind pity"

22:26-26:40
Scene 3
13. Air (Theodora) "Fond, flatt'ring world, adieu!"

26:40-
16. Chorus of Christians "Come, mighty Father"

30:25-
Scene 4
18. Air (Irene) "As with rosy steps the morn"

33:09-
19. Chorus of Christians "All pow'r in Heav'n above"

36:05-39:48
Scene 5
24. Air (Theodora)"Angels, ever bright and fair"

39:51-
Scene 7
28. Chorus of Christians "Go, gen'rous, pious youth"

45:00-
Act 2
Scene 1
29. Recitative (Valens) "Ye men of Antioch"

45:36-
30. Chorus of Heathens "Queen of summer, queen of love"

46:46-
31. Air (Valens) "Wide spread his name"

49:12-
32. Recitative (Valens) "Return, Septimius, to the stubborn maid"

49:52-
33. Chorus of Heathens "Venus laughing from the skies"

51:39-53:31
Scene 2
39. Air (Theodora) "Oh, that I on wings could rise"

53:42-
Scene 4
45. Air (Irene) "Defend her, Heav'n!"

58:36-
Scene 5
47. Air (Didymus) "Sweet rose and lily"

1:01:41-1:03:38
49. Air (Theodora) "The pilgrim's home"

1:03:41-1:08:36 with Helen Watts
51. Duet (Theodora, Didymus) "To thee, thou glorious son of worth"

1:08:51-
Scene 6
53. Chorus of Christians "He saw the lovely youth"

1:13:40-
Act 3
Scene 1
54. Air (Irene) "Lord, to Thee each night and day"

1:18:01-1:21:56 with chorus
Scene 2
57. Solo and Chorus (Christians, Theodora) "Blest be the hand"

1:22:08-
Scene 5
63. Air (Septimius) "From virtue springs each gen'rous deed"

1:24:54-
66. Chorus of Heathens "How strange their ends"

1:28:17-1:32:58 with Helen Watts
Scene 6
70. Air and Duet (Didymus, Theodora) "Streams of pleasure ever flowing"

1:33:04-1:36:15
Scene 7
72. Chorus of Christians "O love divine"

1:36:16-1:37:50
(applause)

---------

(参考)

Theodora (Handel) (Wikipedia: 英語)

Libretto (台本: 英語)

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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」の分析

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 1)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

ブラームスの「知らせ(Botschaft,op. 47 no. 1)」に続いて、エリー・アーメリングによる歌曲分析講座第2弾がアップされました。
アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」です。

「この曲は、ゆっくりで、典型的にロマンティックな感情に満ちています」

「歌曲集『リーダークライス』のテキストの多くはアイヒェンドルフの小説『予感と現在(Ahnung und Gegenwart)』」から採られています」

※ちなみに第1曲「異郷にて」は小説『空騒ぎ(Viel Lärmen um nichts)』(1833年)から採られているそうです。

「この曲のテンポは「速くなく(Nicht schnell)」です」

アーメリングは数行ずつ原詩と英訳を交互に朗読します。

そして別の演奏家による速いテンポの音源が流れます。
「私の意見では、このテンポでは正しい雰囲気が損なわれていると思います」

「冒頭はpで始まり、両親はすでにいないと歌われる5小節目(第3行)はppと指示されています。そして冒頭からピアノ右手最高音に付いているアクセントが5小節目以降は付いていません」

「11,12小節のピアノ右手:5度上行する箇所でクレッシェンド→デクレッシェンドが付いていて、これは「もうすぐ(wie bald = how soon)」を表現しています」

「1回目の"Da ruhe ich auch(その時に私も休むことにしよう)"では"auch(〜も)"に最高音が当てられているが突出しないように歌われるべきです(ソプラノは最高音でボリュームを上げがちなので、ここはpppで歌うぐらいでいい)。
歌う前に考えてみましょう(Think, before you sing!)」

第2連2~3行目"und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,(そして頭上では美しい森の孤独がざわめいている)"を1ブレスで歌うことについて

「2回目の録音ではschöne(美しい)とWaldeinsamkeit(森の孤独)の間にブレスを入れてしまったのが残念(後で種明かしされますが、これはアーメリング&ヤンセンのライヴ録音です)。どうしてブレスを入れてしまったのかというと、このフレーズはどんな人にとっても非常に長いのです。ただしフィッシャー=ディースカウを除いて。彼なら何でも出来るでしょう」

1:02-3:31
1回目の録音。イェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年4月15-21日, La Chaux-de-Fonds録音)→アーメリングは動画後半で1973年録音と言っているがおそらく誤り。「女の愛と生涯」のスタジオ録音(ボールドウィンのピアノ)が1973年なのでそれと混同した可能性あり

11:38-(抜粋) Wie bald ...
13:06-(抜粋) und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,
2回目の録音。ルドルフ・ヤンセンとのライヴ録音(1980年5月2日録音と思われます。全曲はこちらで聞けます)→アーメリングは1979年と言っているがおそらく誤り

15:00-
冒頭に流されたイェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年録音)を再度全部流します。

-----

In der Fremde, Op. 39, No. 1
 異郷にて

Aus der Heimat hinter den Blitzen rot
Da kommen die Wolken her,
Aber Vater und Mutter sind lange tot,
Es kennt mich dort keiner mehr.
 赤い稲光の向こうにある故郷から
 雲がこちらに流れてくる、
 だが父母はずっと前に亡く
 あそこで私を知る者はもういない。

Wie bald, wie bald kommt die stille Zeit,
Da ruhe ich auch, und über mir
[Rauscht]1 die schöne Waldeinsamkeit,
Und keiner [kennt mich mehr]2 hier.
 もうすぐ、もうすぐ静かな時がやってくる、
 その時に私も休むことにしよう、そして頭上では
 美しい森の孤独がざわめいている、
 そしてここでも私を知る者はもういない。

1 Eichendorff: "Rauschet"
2 Eichendorff: "mehr kennt mich auch"

詩:Joseph Karl Benedikt, Freiherr von Eichendorff (1788-1857), "In der Fremde", appears in Gedichte, in 5. Totenopfer, first appeared in the novella "Viel Lärmen um nichts" (1833)
曲:Robert Schumann (1810-1856), "In der Fremde", op. 39 no. 1 (1840), published 1842 [voice and piano], from Liederkreis von Joseph Freiherr von Eichendorff, no. 1, Wien, Haslinger

このシリーズの次回は同じく『リーダークライス』Op. 39から第8曲(曲目も第1曲と全く同じ"In der Fremde")とのことです。楽しみですね。

---------

(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

アーメリング&デームスの『リーダークライスOp.39』が収録された29枚組CD

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エリー・アーメリング公式チャンネル更新:シューマン『リーダークライスOp. 39』、Hollandse helden 4,5

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルが立て続けに更新され、3本の動画がアップされています。

●Elly Ameling - Rudolf Jansen; Liederkreis op. 39 - Schumann

オリジナルのサイトはこちら
アーメリングとルドルフ・ヤンセンによるアイヒェンドルフの詩によるシューマンの歌曲集『リーダークライスOp. 39』全曲です。録音年月日はCD"80 jaar"に収録したものと同音源だとすると1980年5月2日ですが、概要欄に記載された1983年2月3日は別のコンサートと混同しておられるかもしれません(ブレスの位置やミスした音の感じ等からしてCDと同一音源のように思われます)。ルドルフ・ヤンセンのピアノパートも味わい深いです。
Elly Ameling
Rudolf Jansen - Piano
Avro Radio Feb. 3, 1983 (or May 2, 1980 ?)

●Hollandse helden deel 4

オリジナルのサイトはこちら
もともとはNPO Radio4のサイトで2023年にアーメリングの90歳を記念して公開された"Hollandse Helden"(オランダの英雄)という5回のシリーズでオランダ国内限定で聞くことが可能だったものの第4回分と同一と思われます。このたびYouTubeにアップされたことでオランダ国外でも聞くことが出来てファンとしては感無量です!(オランダ語ですが...)シューマン「献呈(Widmung)」の中にフロレスタン(外交的性格)とオイゼービウス(内面的性格)の両面が含まれていると話しているようです。他にムソルクスキーの歌曲集『子供部屋』から「すみっこで(Im Winkel)」(ドイツ語版:おばあさんに猫のいたずらの濡れ衣を着せられた男の子の泣き言)とショッソンの「リラの花咲くころ」について語っています。

●Hollandse helden deel 5

オリジナルのサイトはこちら
NPO Radio4のサイトの"Hollandse Helden"(オランダの英雄)の最終回(第5回)ではガーシュウィン「アイ・ガット・リズム」、デューク・エリントン「イン・ア・センティメンタル・ムード」、フーゴ・ヴォルフ「飽くことない愛」、R.シュトラウス「万霊節」についてです。ヴォルフでは若い頃と円熟期の録音が流れ、その違いの大きさが演奏家の進化・深化をあらわしていると思いました。アーメリングの口真似が聞けたり、とにかく茶目っ気全開の明るく元気なアーメリングです。

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