エリー・アーメリング公式チャンネル動画2本更新:ショッソン『7つの歌曲』、コンサートアンコール(トゥリーナ、エリントン)

嬉しいことにエリー・アーメリング公式チャンネルに新しい動画が2本アップされていました。

●コンサートのアンコール2曲:トゥリーナ、エリントン
Elly Ameling; Two encores, Turina and Ellington

アンコール2曲、1985年10月6日フレーデンビュルフ録音
00:05 ホアキン・トゥリーナ:カンタレス(歌)
2:09 デューク・エリントン:ソフィスティケイテッド・レイディー

エリー・アーメリング(S)
ルドルフ・ヤンセン(P)

Two encores, recorded Vredenburg, October 6 1985
00:05 Joaquín Turina - Cantares
2:09 Duke Ellington - Sophisticated Lady

Elly Ameling, soprano
Rudolf Jansen, piano

コンサートのアンコールとして演奏された2曲とのことです。私の知る限り初出音源ではないでしょうか。スペイン歌曲とジャズのスタンダードナンバーをヤンセンがピアノでつないで続けて演奏しているのが興味深いです。全く異なる様式の作品をこうしてまとめて披露してしまえるアーメリングはやはり凄い人ですね。

●ショッソン(一般的な表記はショーソン)『7つの歌曲』Op. 2
Elly Ameling; Sept Mélodies op. 2 - Chausson

ショッソン『7つの歌曲』Op. 2
00:05 1.ナニー
02:43 2.魅惑
04:46 3.蝶々
06:08 4.最後の一葉
08:27 5.イタリア風のセレナード
10:22 6.ヘーベ
13:06 7.ハチドリ

Sept Mélodies op. 2 - Ernest Chausson (1855-1899)
00:05 Nanny (Charles Leconte de Lisle)
02:43 Le charme (Paul Armand Sylvestre)
04:46 Les Papillons (Théophile Gautier)
06:08 La dernière feuille (Théophile Gautier)
08:27 Sérénade Italienne (Paul Bourget)
10:22 Hébé (Louise Ackermann)
13:06 Le Colibri (Charles Leconte de Lisle)

Elly Ameling, soprano
Rudolf Jansen, piano
AVRO RK3, 1-12-1982

ショッソンの『7つの歌曲』Op. 2全曲がここで演奏されていますが、このうち1曲目の「ナニー」のみ彼女の放送録音集"80 jaar"に同一音源が収録されています。実はオランダのネットラジオ局Radio 4で以前にこの全曲が放送されたことがありますが、こうして動画サイトで繰り返し聴けるようにしてもらえるのはファンにとって嬉しいだけでなく歌を勉強している方にとっても有難いことではないかと思います。ショッソンの歌曲は和声の機微がなんとも言えない味を醸し出していて、聞くたびに惹かれます。この7曲のうち「ハチドリ」はコンサートで彼女がよく歌っていて私もアンコールで実際に聴きました。歌曲集としてまとめて聴くと、ショッソンの作風の様々な側面が感じられてとても魅力的でした。そしてアーメリングの歌唱とヤンセンのピアノはいつもながらそれぞれの異なる世界観を細やかに提示してくれています。

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(2021/11/7追記)

2021/10/30の10:15-12:45、14:00-16:30にエリー・アーメリングのマスタークラスが実施されたようです。オランダのゼイストで2021/10/22-31まで催された国際リート・フェスティヴァル(Internationaal Lied Festival Zeist)の一環のようです。
Twitterに参加された方からのリポートがありましたのでリンクを貼っておきます。日本のピアニスト木口さんも参加されたそうです。

木口雄人
https://twitter.com/kiguchi_yuto/status/1453402816266096642

Margriet Schipper
https://twitter.com/MargrietSchipp1/status/1454108546119917570

それからアーメリングといくつかの録音やコンサートで名演を残した指揮者ベルナルト・ハイティンクさん(Bernard Haitink: 4 March 1929 – 21 October 2021)のご冥福をお祈りいたします。

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江崎皓介ピアノリサイタル(2021年10月23日 カワイ川口リリアサロン)

江崎皓介ピアノリサイタル/ショパンエチュード全曲

2021年10月23日(土)
開場 14:30/開演 15:00
カワイ川口リリアサロン

江崎皓介(P)

ショパン:エチュード Op. 10-1~12

(休憩:約15分)

ショパン:エチュード Op. 25-1~12

(アンコール)

1. ショパン:夜想曲第2番 変ホ長調 Op. 9-2

2. ショパン:ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op. 64-2

3. ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 Op. 64-1「小犬のワルツ」

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昨日、川口リリアのカワイのサロンに行き、一年ぶりに江崎皓介氏の演奏を聴いてきました。
生演奏は今年はじめてです。
某騒動で凄かった去年でさえ3回もコンサートに行ったのに...。
リモートワークが続きプライベートもだんだん出不精になってしまいました。

江崎さんは今回ショパンのエチュードのみでプログラミングし、前半はOp.10の12曲、そして後半はOp.25の全12曲を披露しました。
久しく感じていなかった音のシャワーを浴びる感覚がよみがえってきました。
エチュードといえど、ハノンやバイエルではなく、やはりショパンの芸術作品なのだと実感しました。
有名な曲があちこちに散りばめられていますが、ニックネームが付いていない曲でも馴染みのある曲が多く、それらが全曲まとめて演奏されると、単独で弾かれる時とは違った色合いを放つのが興味深かったです。
やはり江崎さんの演奏は昨年同様響きが美しかったです。
今回特に感じたのは他の演奏ではあまり強調されないような声部を際立たせることで、新鮮な魅力を感じることが出来たことです。内声もそうですが、バス音を強調するだけで随分雰囲気が変わり、聴いていて惹きこまれる箇所が多数ありました(例えばOp.25-2等)。
私の右側ブロックの一番真ん中よりの席からは手はほとんど見れなかったのですが、その代わりペダリングがよく見えて、細やかなペダルの踏みかえが印象に残っています。
ショパンは繊細な印象が強いですが、ドラマティックに畳みかけるところも魅力的ですね。
特に休憩後のOp.25では江崎さんの演奏が鬼気迫るような、何かが乗り移ったかのようなものが感じられて、12曲からなる物語のページを次々にめくっていくようなわくわくする感覚がありました。
曲が終わって次の曲に進むタイミングも音楽の一部なのだなぁとあらためて感じられた演奏でした。

アンコールは3曲でしたが、ツアーが下関、大阪と続くようですので、曲名はそれが終わった頃に追記しようと思います。
1曲目の超有名なあの曲では右手に多くの装飾を施していて興味深かったです。
何かそういう装飾の代替フレーズが記載された楽譜があるのか、それとも江崎さんが創作した装飾なのか気になり、帰り際にお見送りいただいた時に伺おうかとも思ったのですが、お疲れのところ申し訳ないと思い、一言感想をお伝えしてその場を離れてしまいました。

歌曲ファンの立場から今回ショパンのエチュードを聴いていて感じたことなのですが、ヴォルフは意外とショパンの影響を受けているのではないかと思いました。ヴォルフの歌曲のピアノパートに出てくるような音楽が、ショパンの音楽の中にいくつか感じられました。ヴォルフは若い頃音楽評論家でもあったので、その評論をひもとけば何か出てくるかもしれませんね。

余談ですが、昨今ショパンコンクールの日本人お二人の入賞がメディアでも話題になり、本当におめでたいと思いますが、普段クラシックの報道をほとんどしない一般メディアもこういう時はにわかクラシックファンになるのだなぁとひねくれた見方をしてしまいます。
でも、途中で先に進めなかったピアニストの方も素晴らしい演奏をした方がおられましたし、動画でそれぞれの演奏が聴けるので、お気に入りのピアニストをじっくり探すというのも楽しいですね。

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エリー・アーメリング&ルドルフ・ヤンセン他(Elly Ameling, Rudolf Jansen, & others)フランス放送録音(1985年1月28日)

エリー・アーメリング((Elly Ameling)の1985年の初出音源がアップされていました!!
未知だった音源がどんどん発掘されていくのはファンにとってはたまらなく嬉しいです。
1985年のフランスでの放送音源とのことで、プログラムは、フォレ、ラヴェルのアンサンブル版歌曲集とシューベルトの「岩の上の羊飼い」を含む7曲です。

フォレの歌曲集『優れた歌(La bonne chanson)』は抜粋の7曲ですが、おそらくライヴでは全9曲披露されて、ラジオ番組の時間制約上第1曲、第8曲がカットされたのだろうと推測されます。

演奏形態は、フォレが歌+弦楽四重奏+ピアノ、ラヴェルが歌+フルート2+クラリネット2+弦楽四重奏+ピアノ、シューベルトは「岩の上の羊飼い」のみ歌+クラリネット+ピアノで他は歌+ピアノです。

アーメリングは1985年1月&9月にERATOレーベルにラヴェル歌曲集を録音しているのですが、その時の共演メンバーが今回の音源と同じなので、おそらくスタジオ録音と放送用録音を平行して行ったのではないかと推測されます。

そしてアーメリングの歌声、とても素晴らしかったです!相変わらずきめの細かい感触が彼女の歌から感じられます。言葉一つ一つを大切にしながら、フレーズの大きな流れも意識した至芸!
ピアノ、弦楽四重奏、管楽器とのアンサンブルも美しかったです。

それにしてもアーメリングは「岩の上の羊飼い」が好きだったようで、いろんな音源が発掘されていますね(日本では一度も披露されなかったのが意外です)。

An Elly Ameling Recital (France, 1985)

チャンネル名:kadoguy

フランス放送音源
1985年1月28日

エリー・アーメリング(S)
ルドルフ・ヤンセン(P)
ヴィオッティ四重奏団
フィリップ・ゴティエ(FL)
ジャン=ルイ・ボマディエ(FL)
ロラン・スィモンスィニ(CL)
ジャン=マルク・ヴォルタ(CL)

I. ガブリエル・フォレ:『優れた歌』Op. 61 (抜粋)
2. 曙の色がひろがり 0:00
3. 白い月 2:00
4. ぼくは不実な道を歩いていた 4:26
5. ほんとに、ぼくはこわいくらいだ 6:14
6. おまえがいなくなる前に 8:33
7. さて、それは或る明るい夏の日のことだ 10:56
9. 冬は終わった 13:24

II. モリス・ラヴェル:『3つのステファヌ・マラルメの詩』M. 64
溜息 16:27
叶わぬ望み 20:16
臀部より出でて,ひと跳びで 24:08

III. フランツ・シューベルト:
夕映えの中で, D. 799 26:58
月に寄せて, D. 193 31:12
ひそやかな恋, D. 922 34:30
乙女の嘆き, D. 191 38:30
ここにいたこと, D. 775 42:06
若い尼僧, D. 828 46:04

IV. フランツ・シューベルト: 岩の上の羊飼い, D. 965 50:49

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French radio broadcast
28 January 1985

Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)
Quatuor Viotti
(Philippe Goulut, violin; Mark Duprez, violin; Pierre Franck, viola; and Hugh Mackenzie, cello)
Philippe Gautier(FL)
Jean-Louis Beaumadier(FL)
Roland Simoncini(CL)
Jean-Marc Volta(CL)

I. Gabriel Fauré: "La bonne chanson", op. 61 (excerpts)
2. "Puisque l'aube grandit" 0:00
3. "La lune blanche luit dans les bois" 2:00
4. "J'allais par des chemins perfides" 4:26
5. "J'ai presque peur, en vérité" 6:14
6. "Avant que tu ne t'en ailles" 8:33
7. "Donc, ce sera par un clair jour d'été" 10:56
9. "L'hiver a cessé" 13:24

II. Maurice Ravel: "Trois Poèmes de Stéphane Mallarmé", M. 64
"Soupir" 16:27
"Placet futile" 20:16
"Surgi de la croupe et du bond" 24:08

III. Franz Schubert: Six Songs
"Im Abendrot", D. 799 26:58
"An den Mond", D. 193 31:12
"Heimliches Lieben", D. 922 34:30
"Des Mädchens Klage", D. 191 38:30
"Daß sie hier gewesen", D. 775 42:06
"Die junge Nonne", D. 828 46:04

IV. Franz Schubert: "Der Hirt auf dem Felsen", D. 965 50:49

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エリー・アーメリング他(Ameling, Watkinson, Meens, Holl, Jansen, Brautigam)/ブラームス:四重唱曲、二重唱曲他 初出音源(1983年1月14日, アムステルダム・コンセルトヘバウ(live)他)

●ブラームス/四重唱曲、二重唱曲
Elly Ameling; Brahms Quartets and Duets

00:00 Der Gang zum Liebchen (op 31/3)
02:59 Sehnsucht (op 112/1)
06:08 Abendlied (op 92/3)
09:39 Warum (op 92/4)
12:20 Der Abend (op 64/2)
16:56 Es rauschet das Wasser (op 28/3)(Watkinson, Holl, Jansen)
20:43 Vor der Tür (op 28/2)(Watkinson, Holl, Jansen)
22:48 Vergebliches Ständchen (op 84/4)(Ameling, Meens, Jansen)
24:37 Die Schwestern (op 61/1)(Ameling, Watkinson, Jansen)
27:12 Zigeunerlieder 5 "Brauner Bursche führt zum Tanze" (op 103/5)
30:29 Zigeunerlieder 7 "Kommt dir manchmal in den Sinn" (op 103/7)
31:09 Zigeunerlieder 6 "Röslein dreie in der Reihe blühn so rot" (op 103/6)
32:01 Wenn so lind dein Augen * (Liebesliederwalzer, op 52/8)
34:06 Ein kleiner. Hübscher Vogel * (Liebesliederwalzer, op 52/6)

Elly Ameling - Soprano
Carolyn Watkinson - Mezzo soprano
Hein Meens - Tenor
Robert Holl - Bass
Rudolf Jansen - Piano
Rudolf Jansen & Ronald Brautigam - Piano *

Live recording Concertgebouw, 14-01-1983

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のブラームス重唱曲の録音といえば、80歳を記念した放送録音集"80 jaar"に1曲だけ「夕暮れ(Der Abend, Op. 64/2)」が収録されていました。
今回アーメリングの公式チャンネルで、なんと同じ日のライヴ音源が初めて公開されました!!!
これはもうアーメリングからのサプライズプレゼントですね!
『ジプシーの歌』抜粋や『愛の歌』抜粋をアーメリングの歌で聴けるとは思ってもいなかったので狂喜乱舞しました(本当は全曲が良かったのですが贅沢は言わないことにします)。
共演者はメゾソプラノのキャロリン・ワトキンソン、テノールのヘイン・メーンス、バスのロベルト・ホル、ピアノはルドルフ・ヤンセン、『愛の歌』のピアノ連弾のみロナルト・ブラウティハムが参加しています。
ブラームスの重唱曲は『ジプシーの歌』『愛の歌』『新しい愛の歌』以外の単独の作品はこれまであまり馴染みがなかったのですが、こうして聞いてみるとどれもとても魅力的ですね。独唱曲として歌われることの多い「甲斐なきセレナーデ」をソプラノとテノールの掛け合いで聴くとより臨場感があって面白かったです。「憧れ(Sehnsucht)」という曲も趣があってとても魅力的な作品でした。
アーメリングはいつもながらの美声がなんとも心地よかったですが、コミカルな曲(「姉妹(Die Schwestern)」等)で会場をざわつかせるところは流石です!どんな表情で歌っていたのか想像しながら聴いてみるのも楽しいと思います。それからメゾのワトキンソンの歌声はとても温かみがあり惹きつけられました。

●ドビュッシー/『ステファヌ・マラルメの3つの詩』(ため息;ささやかな願い;扇)
Debussy Mallarme

Trois Poémes de Stéphane Mallarmé - Claude Debussy (1862-1918)

00:05 Soupir
03:02 Placet futile
05:06 Éventail

Elly Ameling - Soprano
Dalton Baldwin - Piano

もう1つアーメリング公式チャンネルからアップされていたのは、ドビュッシーの『ステファヌ・マラルメの3つの詩』です。これはおそらくEMIのドビュッシー歌曲全集からの音源と思われます。楽譜が表示されるので、歌を勉強されている方にもお勧めです。最初の2曲はラヴェルも作曲しているので、比較するのも興味深いと思います(こちらのリンク先でアーメリング&ヤンセン他によるラヴェルの演奏が聴けます)。

●サリエリ、モーツァルト・アリア集&R.シュトラウス:『4つの最後の歌』
ELLY AMELING: Mozart Concert Arias and Strauss Four Last Songs

Live broadcasts of Dutch soprano ELLY AMELING.

0:00- SALIERI: La fiera di Venezia: "Non temer che d'altri"
4:05- MOZART: "Voi avete un cor fedele" K.217

Elly Ameling(S)
Mostly Mozart Festival Orchestra
Gerard Schwarz(C)
(1985)

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12:18- STRAUSS: Four Last Songs
1. Frühling
2. September
3. Beim Schlafengehen
4. Im Abendrot

Rotterdam Philharmonic
Edo de Waart(C)
(1986)

上の2種類のライヴのうち、最初のサリエリとモーツァルトは以前別の方がアップした音源をご紹介したこちらの記事と同一音源ではないかと推測されます。

しかし!後半(12:18~)のエド・ドゥ・ヴァールト指揮ロッテルダム・フィルハーモニックとの『4つの最後の歌』は、ネット上で聴けるのは唯一の音源と思われます。
実はかなり昔にオランダのインターネットラジオ局Radio 4でアーメリングの特集が数回に分けて放送された際に、この音源の放送が予告されていたのですが、実際に放送されたのはサヴァリッシュ指揮コンセルトヘバウ管弦楽団との音源でした。
アップしていただいたこの音源、惜しむらくはおそらくテープの回転数が速くて、実際の音より高めなのが残念ですが、そこは想像力で補いながらこの貴重な音源を満喫したいと思います。

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クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズ(Christa Ludwig and Geoffrey Parsons)/パリ・リサイタル(1977年11月9日, Salle Pleyel, Paris)

フランスのインターネットラジオ局francemusiqueに、クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズの1977年11月9日、パリのサル・プレイエルでのライヴ音源がアップされていました!

https://www.francemusique.fr/emissions/les-tresors-de-france-musique/recital-de-christa-ludwig-a-la-salle-pleyel-une-archive-de-1977-95251

Christa Ludwig, mezzo-soprano
Geoffrey Parsons, piano
Enregistré le 9 novembre 1977, Salle Pleyel (Paris)

クリスタ・ルートヴィヒ(Christa Ludwig)(MS)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

シューベルト:
笑ったり泣いたり(Lachen und Weinen, D777)
悲しみ(Wehmut, D772)
ます(Die Forelle, D550)
死と乙女(Der Tod und das Mädchen, D531)
糸を紡ぐグレートヒェン(Gretchen am Spinnrade, D118)

ブラームス:
サッポー風頌歌(Sapphische Ode, Op. 94/4)
墓地で(Auf dem Kirchhofe, Op. 105/4)
セレナード(Ständchen, Op. 106/1)
娘の歌(Mädchenlied, Op. 106/5)
永遠の愛について(Von ewiger Liebe, Op. 43/1)

シューマン:
はすの花(Die Lotosblume, Op. 25/7)
私のばら(Meine Rose, Op. 90/2)
あなたは花のよう(Du bist wie eine Blume, Op. 25/24)
孤独な涙は何を望むのか(Was will die einsame Träne, Op. 25/21)
静かな涙(Stille Tränen, Op. 35/10)

ブラームス:歌曲集『ジプシーの歌(Zigeunerlieder, Op. 103)』

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このライヴ音源は私にとっては初めて聴くもので、とても惹き込まれました。シューベルト、シューマン、ブラームスといった王道リートプログラムですが、彼女が歌うと人生の喜びのようなものが感じられます。

ルートヴィヒの素晴らしいレガート、豊麗な深い響き、直接的な感情表現などをたっぷり味わえるライヴでした。
彼女はどの曲も比較的たっぷりとしたテンポ設定で歌い進めていくのですが、以前ムーアが著書内で言っていたように「少しおそめのテンポは、彼女の豊かな声に、まさにぴったり」でした。

そしてジェフリー・パーソンズのピアノの素晴らしさ!パーソンズはテクニシャンだと思います。テクニック面での不安が全くない為、歌をしっかり支えつつピアノパートの音色や表現の魅力を存分に響かせます。

よろしければぜひ聞いてみてください!

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ヘルマン・プライ(Hermann Prey)来日公演リンク集:生誕92周年に寄せて

ヘルマン・プライ(Hermann Prey)が1929年7月11日に誕生して今日で92年が経ちました。
プライほど歌曲、オペラ、オペレッタ、ポピュラーソングを分け隔てなく愛情をこめて歌った歌手は稀ではないかと思います。
クラシックのファンだけでなくドイツのテレビ番組にも出演して大衆的な人気も獲得していたようです。
こういうタイプのアーティストは後にも先にも彼だけなのかもしれません。
日本には14回来てくれて、歌曲やアリア、時にはオペラを披露しました。
私は1984年の五反田簡易保険ホールでのシューベルトのコンサートではじめて生のプライを体験しました。
それ以来、来日するたびに聴きに行き、今となってはとても懐かしいです。

過去にプライの来日公演プログラムを記事にしましたので、目次として下記にリンクを貼っておきます。
皆さんの思い出をよみがえらせる助けになれば幸いです。

プライ日本公演曲目1961年(初来日)

プライ日本公演曲目1971年(第2回来日)

プライ日本公演曲目1973年(第3回来日)

プライ日本公演曲目1978年(第4回来日)

プライ日本公演曲目1980年(第5回来日)

プライ日本公演曲目1984年(第6回&第7回来日)

プライ日本公演曲目1988年(第8回来日)

プライ日本公演曲目1990年(第9回来日)

プライ日本公演曲目1993年(第10回来日)

プライ日本公演曲目1994年(第11回来日)

プライ日本公演曲目1995年(第12回来日)

プライ日本公演曲目1997年(第13回&第14回来日)

おまけとして、プライの3種類の"Ich liebe dich"を貼っておきます。異なる3人の作曲家の愛の表現をプライがどう表現しているかお楽しみください。

ベートーヴェン:優しい愛(きみを愛す)
Beethoven: Zärtliche Liebe (Ich liebe dich)

グリーグ:きみを愛す:ヘルベルト・ハイネマン(P)
Grieg: Ich liebe dich: Herbert Heinemann(P)

R.シュトラウス:きみを愛す:ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Richard Strauss: Ich liebe dich, Op.37-2: Wolfgang Sawallisch(P)

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ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ1963年~1992年来日公演記録(Dietrich Fischer-Dieskau in Japan)

不世出の大バリトン、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)の誕生日(5月28日)に記事が書けなかったので、遅ればせながら彼の96回目の生誕記念日(2021年現在)を祝して、過去に書いたF=ディースカウの来日公演記録の目次(リンク集)を今日アップします。
1992年大晦日をもって歌手としての活動を終えた彼ですが、その後指揮者として来日予定だったところまでは記憶しているのですが、実際に来日したかどうか未確認です。
従って、下記の目次は歌手としてのF=ディースカウの来日公演全記録ということになります。
今思えば、彼ほどの歌手が数年おきに来日してくれたとは日本の招聘元に感謝しないといけませんね。もちろんF=ディースカウ本人にも感謝です。

1.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1963年(初来日)

2.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1966年(第2回来日)

3.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1970年(第3回来日)

4.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1974年(第4回来日)

5.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1977年(第5回来日)

6.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1979年(第6回来日)

7.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1981年(第7回来日)

8.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1983年(第8回来日)

9.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1987年(第9回来日)

10.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1989年(第10回来日)

11.フィッシャー=ディースカウ日本公演曲目1992年(第11回来日)

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2020年に聴いたコンサート(江崎皓介ピアノリサイタル、高橋健介 Kotoba to Oto Vol. 1)

2020年は某騒動のせいで軒並みイベントは中止や延期に追い込まれてしまいましたが、そんな中実施まで漕ぎつけたコンサートもありました。
アーティストやスタッフの方々は想像できないほどのご苦労があったことと思います。

歌劇『ヴォルフ イタリア歌曲集』の公演についてはすでに投稿しました。

他に2つ素晴らしいコンサートを10月に聴いてきました。

実は最近ツイッターのアカウントを作り、そちらには感想を投稿していたのですが、やはりブログの方が私には向いていることが分かり、今後はツイッターのアカウントは情報収集用に残し、発信はこちらのブログで続けていこうと思います。

●江崎皓介(えざきこうすけ)ピアノリサイタル

http://www.piano.or.jp/concert/20084290

2020.10.10(土)15:00-16:30 カワイ川口リリアサロン

江崎皓介(えざきこうすけ)(ピアノ)

シューマン:ダヴィット同盟舞曲集Op. 6

(休憩15分)

ショパン:幻想曲Op. 49

ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」Op. 53

アンコール:
ドビュッシー:アラベスク第1番

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江崎皓介ピアノリサイタルを聴いてきました。いやぁ良かったです!
今年初の生音。動画も素晴らしいけれど、目の前で奏でられる音を全身に浴びる感覚!
やはりピアニストって凄いと改めて思いました!
シューマン、ショパン、ベートーヴェンと大作ばかりで聴き応えありました。

川口リリアに行く時はいつも音楽ホールの公演ばかりで、カワイのお店の奥にこんなサロン風のスペースがあるとは知りませんでした。

江崎さんの4人の作曲家(アンコールも含めて)の弾き分けが素晴らしく、タッチの変幻自在さに聞き入りました!

「ワルトシュタイン」はグリッサンドよりもオクターブの連続下行の方が指への負担は別にして難しそうな気がしますが、江崎さんのテクニックの素晴らしさもあって安心して身を委ねて聴けました。

それにしても年々シューマンが好きになっていく私です。
「ダヴィット同盟」最高ですね!

●高橋健介/Kotoba to Oto Vol. 1

https://kensuketakahashi-blog.com/kotoba-to-oto-vol-1-3/commentary/

2020.10.11(日)13:30-15:20 紀尾井町サロンホール

高橋健介(ピアノ)
水野沙六花(ピアノ)
澤原行正(テノール)
榎本郁(ヴァイオリン)

シューマン:《詩人の恋》 作品48 (澤原、高橋)

(休憩)

バーンスタイン :《キャンディード》 序曲 (水野、高橋)

サラサーテ:序奏とタランテラ  作品43 (榎本、高橋)

ドヴォルザーク:《スラヴ舞曲集》より  作品72-2 、作品46-5 (水野、高橋)

クライスラー:ドヴォルザークの主題によるスラヴ幻想曲 (榎本、高橋)

ブラームス(ハイフェッツ編):メロディのように  作品105-1 (榎本、高橋)

バッハ(高橋編):《神の時こそいと良き時》BWV106より第1曲〈ソナティナータ〉 (水野、高橋)
バッハ(高橋編):《楽しき狩こそわが悦び》BWV208より第9曲 アリア〈羊は安らかに草を食み〉 (水野、高橋)

クライスラー:愛の悲しみ (榎本、高橋)

モンティ:チャールダーシュ (榎本、高橋)

アンコール:

ラフマニノフ:ここは素晴らしい場所Op. 21/7 (高橋独奏)

グノー(バッハ原曲):アヴェ・マリア (4人全員)

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高橋健介さんが企画されたコンサートを聴いてきました。
「演奏(歌手やヴァイオリニストとの共演、ピアニストとの連弾、ソロ)、編曲、トーク、企画、プログラムの記述」等を一人でこなされたマルチな才能をまざまざと感じた時間でした。

共演者は皆高橋さんと関わりの深い方ばかりで、特に後半はトークも加わりなごやかな空気でした。もちろん演奏は真剣そのものでした。

水野沙六花さん(ピアノ):高橋さん同様歌ものの演奏が多いとのこと。明瞭なタッチで、見ていて楽しくなるような演奏でした!高橋さんとの息もさすがにぴったり!今回の連弾ではすべて水野さんがプリモ(高音パート)でした。

澤原行正さん(テノール):高橋さんと大学の同級生とのこと。美声でした!絵に書いたような貴公子然としたオーラを放っていて『詩人の恋』の主人公の苦悩を第三者ではなくまさに一人称の歌として表現していました。”mein Sehnen und Verlangen(ぼくの憧れと望み)”に満ちた歌だったと感じました。

榎本郁さん(ヴァイオリン):高橋さんの高校の同級生で、当時から音楽の話をしていたそう。学生時代の仲間とプロとして同じステージに立つというのは感慨深いことだろうなぁと想像します。テクニックが凄かったです!でも歌の編曲等での美しいフレーズにこそ榎本さんの良さがあると感じました。

高橋健介さん(ピアノ):かつてジェラルド・ムーアは文筆活動や講演、録音等を通して伴奏者の仕事や心構え等を幅広くシェアしましたが、高橋さんは現代のツール(SNSや名をなした人の著書等)を活用して、演奏家、聴衆の両者に惜しみなくノウハウをシェアしています。
その多方面の才能が今回のコンサートに結実したと言えるのではないでしょうか。
今回のKotoba to Oto というタイトルに込められた由来等も話されましたが、様々なツールを一つのコンサートに集約するというアイディアは新しいと思います!
そして高橋さんの演奏ですが、とても丁寧で細やかでした!

今回サポートチケットを購入した人には特典映像のURLが送られてくるのですが、『詩人の恋』の某曲を澤原さんとリハーサルしているシーンで、二人が試行錯誤している場面がありました。完成途上の段階の演奏をシェアするというのは勇気のいることだと思いますが、今回の本番で見事に完成していました。

今日『詩人の恋』を聴いていて感じたのですが、高橋さんの演奏は常にコントロールが行き届いていながら、血が通った表現でした。そしてそれはかつて実演で聴いた小林道夫さん(高橋さんの師)から感じたものを思い出させるものでした。

最後にもう1点。
今回高橋さんは譜めくりを自分でしたのですが、めくり方やタイミングが素晴らしかったです!
外来の有名なピアニストでも静かな余韻の中派手な音を立てて譜めくりする場面をこれまで何度も見てきましたが、高橋さんは必要なら次の曲で歌い始めてからめくったりもしていました。

Bravi!!!

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岩田達宗(演出・構成)/歌劇『ヴォルフ イタリア歌曲集』(2020年11月28日東京文化会館小ホール)

歌劇『ヴォルフ イタリア歌曲集』

2020年11月28日(土)15:00 東京文化会館小ホール

ソプラノ:老田裕子
バリトン:小森輝彦
ピアノ:井出徳彦
ダンス:山本裕、船木こころ

演出・構成:岩田達宗

美術:松生紘子
衣裳:前田文子
照明:大島祐夫
振付:山本裕
舞台監督:大仁田雅彦

岩田達宗演出の歌劇『ヴォルフ イタリア歌曲集』を聴いた。
公式サイトはこちら

公演プログラムはこちら(公式)

大好きなヴォルフの『イタリア歌曲集』全曲がオペラ化されたと知り、楽しみにでかけてきた。
何年ぶりかで降り立った上野駅公園口は以前と出口が移動していて、信号を渡らずに東京文化会館に続いていたのが驚きだった(工事の途中?)。

小ホールに入ると、舞台に壇があり、テーブルが中央に置かれている。
その上から第1曲冒頭のドイツ語歌詞"Auch kleine Dinge können uns entzücken"がぶら下がっている。
階段で上下の場所を移動出来るうえ、両端にも階段が設置されていて、出入りの際に使われることが多かった。
ダンサーは壇の上で演じ、歌手はその下で歌うことが多いが、結局皆上下を行き交う。
ピアニストは客席と同じ高さの中央に、オーケストラピットのように位置する。
歌手とダンサーはそれぞれ男女のペアで、手に持てるサイズの「箱」が続々テーブルに積まれ、何らかの暗示をしていた。
場面によってその「箱」は異なる色を放つ。
相手に渡したり、投げ落としたりと、感情表現の象徴的な役割も与えられていたようだ。

ステージ上部に訳詞が投影されたが、オペラ字幕のようにうまく意訳してストーリーの流れを作り上げていた。

ヴォルフの『イタリア歌曲集』はイタリアの詩にパウル・ハイゼが独訳した46編に作曲された歌曲集で、男女の恋愛の機微が歌われる。
どれもほとんど1~2分の短い作品で、全曲がCD1枚分に収まってしまう。
その第1曲は「小さなものでも僕らを魅了することは出来る」という詩で、演出・構成の岩田達宗さんも今回のオペラ化に際して、この第1曲のメッセージに触発されて、全体のモットーとして掲げたようだ。

全46曲なので、休憩をはさんで23曲ずつでもよさそうなところだが、岩田さんはそうせず、前半26曲、後半20曲として、曲順もヴォルフのオリジナルとは大きく入れ替えた。
ヴォルフの曲順でやる場合も、入れ替えて演奏する場合もほぼ男女が1曲ずつ交互に演奏出来るのだが、それでも男性が続けて、もしくは女性が続けて2曲以上を歌う場面も普通は出てくる。
少なくとも市販されている音源や、私がこれまで聞いたコンサートを思い返してみても、同じ人が連続して歌うところはあった。
ところが、今回の岩田版は見事なまでに1曲ずつ男女が交互に歌えるように編み上げていた。
そして、岩田版の曲順ではある一つの物語が浮き上がるように綿密に考えられていた。
まずはモットーが歌われ、続いて女性が恋人が欲しいと望み、その望みが叶えられ、恋愛のはじまりのういういしい男女のやりとりが続く。
その後、お互いに相手をからかいながら恋愛中の駆け引きをやりあう。
くっついたり離れたりを繰り返し、最後に女性が相手に対して「誰があんたを呼んだの?」と言って前半を締めくくる。
その前に「天上のお母さまに祝福あれ」(ステージ上の字幕では確か「お母さんの冥福を祈ります」というような感じだった。老田さんが黒いベールをかぶって登場)が歌われ、その何曲か前に伏線として「みんな言っているわよ、あなたのお母さんが反対してる、って」という曲で「あなたはマザコンなんでしょ」というような字幕スーパーが付けられていた。
つまり、年上の女性に目移りしていることに苛立って、最後に「もっと好きな女のところに行きなさいよ」と突き放すという締めなのだろう。

休憩後は沸点が爆発した歌のやりとりで感情がエスカレートしていく。
女性が「地の底にあいつの家が飲み込まれればいい」と言えば男性が「お高くとまりやがって、このお嬢サマ」と応戦する。
この言い争いの場面はダンサーは登場せず、歌手二人だけで演じていたが、歌手たちの迫真の演技に舌を巻いた。
その後、言葉が止まり二人の間に沈黙が訪れる。
体感時間は結構長かったが、その後に女性が「ふたりとも ずっと黙ったままでした」と歌い始める。オペラ上演ならではの演出だろう。

その後「さあもう仲直りしよう」と男性が歌い、テーブル上に積み重ねられていた箱が完成して家が出来上がった。

男女の気持ちが通じ合った瞬間なのかもしれない。

晴れて大団円かと思いきや場面転換のようなエピソード(「しょっちゅう噂で聞いたわよ」)の後、男性が「どんな歌をきみにうたってあげればいいだろう」と、思いつめたような歌を歌う。
続いて「戦場に向かう若者のみなさん」と続き、男性が戦場に向かうことが明らかになる。
その後、登場した小森さんは兵隊のコートに身を包んでいた。
そして「きみがぼくを見て ほほえみ」と歌い終えると暗転する。
ここで戦場に向かった男性が死ぬことを暗示しているようだが、詩は、君を求める気持ちがふくらんで、ハートが脱走しないようにしたいという内容である。
ハートが肉体から脱走するということを死ととらえたということかもしれないが、正直そういう意図かどうか自信はない。
再び点灯すると、最後の曲「ペンナにわたしの恋人がいるの」で女性版ドン・ジョヴァンニの華麗な男性遍歴が歌われて華やかに締めくくる。

ダンサー2人は歌手の歌う内容に応じて、その内面を全身で表現する。
時に歌い手の感情の投影として、時に歌い手を応援する仲間として。
その振り付けはダンサーの一人、山本さんが担当したそうだ。
「ああ、あなたのお家がガラスのように透けて見えたなら」は、恋人の家が透明だったら川や雨の水滴よりも多くの視線を送るのにという内容で、水滴のような細かい同音反復がピアノパートを貫くが、その曲調を模したかのようにダンサー二人が小刻みな歩幅で前進する振り付けはコミカルで楽しかった。

ダイナミックあるいは繊細なダンスが音楽の表情をより増幅して真摯な感銘を与えてくれる一方、寝っ転がって足をばたつかせたりというコミカルな振りもまた生の肉体表現ならではの味わいを感じさせてくれたと思う。

ソプラノの老田さんはリリックでよく通る美声がなんとも耳に心地よい。
喜怒哀楽のころころ変わる演技を求められていたが、どれも自然で演技も素晴らしかった。
地団駄を踏んだり、してやられて「イーッ」ってなる箇所ですら愛らしさを感じたのは、持って生まれたキャラクターも関係しているのかもしれない。

バリトンの小森さんは何度かリサイタルを聴いたことがあったが、オペラ歌手としての側面を今回初めて知り、歌曲をオペラの表現にするということがこんなにも新たな魅力を引き出してくれるものなのかということを感じた。例えば「目の見えないひとはさいわいだ」の最後の行の言葉"Liebesqualen(恋の苦しみ)"の"qualen"の"a"のメリスマにあえて一音ずつ息を入れて"a"を分離させることで苦悩をより拡大して伝える効果が出ていた。言葉への細やかな表情の綾、歌声の響き方、そして演技の自在さ・自然さ、どこをとっても圧巻だった。

ピアノの井出さんは飄々としたいでたちから演奏が始まった時のスイッチの入り方がすごい。何か憑依しているような空気の変化が感じられた。
長い指が生き物のように鍵盤上を自在に這い回り、視覚的にも印象的だが、オペラとして間をとったり、ガンガン突き進んだりと振れ幅の大きい表現でヴォルフの核心に迫ろうという気迫がすさまじかった。

衣装が白を基調としていたのも見やすかった。
女性二人は白いワンピースで裾が緑だった。
「緑色ってステキ 緑色を着ている人も」の時に裾が緑であることに気づいたので、目立つような振り付けだったのかもしれない。

拍手の時には演出の岩田さんの他にスタッフの方2人も登場した。

これが1回だけというのはなんとももったいない気持ちだが、このご時世の中、無事に公演が行われ、新しい試みが成功した場にいられたことの喜びを感じずにはいられない。
本当にワクワクが止まらない時間だった。

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(2021/1/30追記)この日の公演の動画を収録したものが公開されました!最初5分ほど解説があり、その後に演奏です。全曲聴けます!皆さん、是非ご覧ください。

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「東京・春・音楽祭2018」の動画(2018年7月20日(金)~10月19日(金)期間限定)

毎年春に催されている「東京・春・音楽祭」の今年のコンサート動画が7月20日よりアップされたようです。
3カ月のみの期間限定ですので、ぜひ下記のリンク先を開いて、お好きなコンサート動画をご覧ください。

 こちら

配信期間:2018年7月20日(金)~10月19日(金)期間限定

歌曲ファンの私が最初に見たのはヴァーグナー等を得意とするソプラノ、ペトラ・ラング(Petra Lang)の歌曲リサイタルでした(ピアノはアドリアン・バイアヌ(Adrian Baianu))。
正直、私は彼女の歌曲演奏をこれまでおそらく聞いていなかったと思うのですが、最初のブラームスを聞いて驚きました。
ベテランリート歌手の味わい、表情、趣が、オペラ歌手の彼女にすべてしっかり備わっていて、とても素晴らしかったからです。
ブラームスの「愛のまこと(Liebestreu)」の母親と娘の対話が、声の使い分けだけでなく、顔の表情からも伝わってきて、オペラ歌手としての彼女の強みが生かされているのが感じられました。
しかし、オペラ歌手の余技では決してなく、リートをしっかり歌いこんできた熟練の味わいのようなものも感じられて、素晴らしかったです。
声の若々しさは望めないにしてもまだ十分美声を保っていて、味わいはしっかり感じられました。
共演のピアニスト、アドリアン・バイアヌもいぶし銀の趣をもって、深みのある音をデリケートに響かせていて、こちらも素晴らしいです。
珍しいヨーゼフ・マルクスの歌曲なども数曲歌われ、歌曲ファンの方にはおすすめです。

 映像(1)はこちら:ブラームス&マーラー

 映像(2)はこちら:マルクス&R.シュトラウス&アンコール

 曲目解説などはこちら

もう一つ、世界中の歌劇場から引っ張りだこのテノールのクラウス・フロリアン・フォークト(Klaus Florian Vogt)のリサイタルも意欲的なプログラミングです。
ピアノはルパート・バーレイ(Rupert Burleig)です。

 映像(1)はこちら:ハイドン&ブラームス

 映像(2)はこちら:マーラー&R.シュトラウス&アンコール

 曲目解説などはこちら

テノールの歌う「さすらう若人の歌(遍歴職人の歌)」は珍しいので興味がわきます。
どこまでも柔らかい響きをもつフォークトがどのような表現を聞かせるか、これから楽しみたいと思います。
また、初めて聞くピアニストのルパート・バーレイの演奏も期待したいです。

他にも、中村恵理(S)と藤木大地(カウンターテナー)のデュエット(ピアノ:園田隆一郎)や、金子美香(MS)の日本歌曲&ドイツ歌曲のリサイタル(ピアノ:イェンドリック・シュプリンガー)、浜田理恵(S)のフランス歌曲リサイタル(ピアノ:三ツ石潤司)、ヴィタリ・ユシュマノフ(BR)のロシア歌曲リサイタル(ピアノ:山田剛史)など、歌曲ファンにはいくつも興味深い動画がアップされています。

歌曲以外にも多くのコンサートがアップされていますので、ぜひ気になったコンサートを聴いてみてくださいね。

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