江崎皓介ピアノリサイタル「ラフマニノフ生誕150周年プログラム」(2023年5月28日 大泉学園ゆめりあホール)

江崎皓介ピアノリサイタル「ラフマニノフ生誕150周年プログラム」
Koosuke Ezaki Piano Recital

2023年5月28日(日)14:30 大泉学園ゆめりあホール (自由席)

ラフマニノフ
S.Rakhmaninov

幻想的小品集 前奏曲 "鐘" Op.3-2 嬰ハ短調

東洋のスケッチ 変ロ長調

楽興の時 Op.16

~休憩~

リラの花 Op.21-5 変イ長調

ひなぎく Op.38-3 ヘ長調

断片 変イ長調

ピアノ・ソナタ第2番Op.36 変ロ短調 (1913年版)

●アンコール

ショパン:ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」Op.27-2~第2楽章Allegretto

ショパン:ワルツ第6番変ニ長調 Op.64-1「小犬のワルツ」

--------

毎年恒例の江崎皓介氏のピアノリサイタルを聞いてきました。
今回の場所は大泉学園ゆめりあホールで、調べたところ以前にこのホールに来たのは11年前でした。
これまで聞かせていただいた江崎氏のコンサートはサロン風の場所が多く、シューボックスタイプの本格的な音楽ホールで聴くのははじめてかもしれません。
とてもきれいな響きのホールで、江崎氏の演奏を堪能してきました。

今年がラフマニノフの生誕150周年にあたるということで、オールラフマニノフプログラムでした。
前半は「楽興の時」、後半はピアノ・ソナタ第2番のオリジナルバージョンをメインに置き、その前にいくつかの魅力的な小品が演奏されました。
冒頭の前奏曲「鐘」は特によく知られている作品ですが、江崎氏の演奏は最初から説得力に富んだものでした。江崎氏はおおげさな素振りやこれみよがしなパフォーマンスには決して走ることがなく、演奏そのもので聞き手の心をつかむピアニストです。音への誠実で繊細なアプローチが感じられた素敵な時間でした。

「楽興の時」というタイトルはおそらくシューベルトの同名のタイトルにあやかっているのでしょうが、曲数こそシューベルトと同じ6曲構成ながら、音楽の性格は当然全く異なります。シューベルトの前期ロマン派の素朴な美しさに比べると、ラフマニノフの方はもっと濃厚で甘美でロシアの底深い哀愁も帯びています。それらを1曲1曲江崎氏の優れた演奏で味わっていると、ラフマニノフの作品はロシアの大地で育った者ならではと実感しました。

休憩後、最初の2曲はラフマニノフ自身の歌曲のピアノ独奏用編曲です。とりわけ「リラの花」は彼の歌曲の中でも比較的よく歌われると思います。シューベルトの歌曲なども編曲している彼が、自作の歌曲も編曲しているのは、その出来ばえに自信があったのでしょうし、おそらくピアノファンにも知ってもらいたいという気持ちの表れなのではないかと思いました。江崎氏自身の解釈も配布されたプログラムノートに記載されていて興味深かったです。

詩の内容は下記サイト(「詩と音楽」)で藤井宏行さんが公開されています。
リラの花
ひなぎく

「リラの花」は劇的なパッセージも盛り込んで華やかさも加えていますが、「ひなぎく」は原曲に忠実な印象を受けました。
どちらも花に寄せて詩人の気持ちを吐露するという慎ましやかな作品です。この日演奏された「東洋のスケッチ」や「断片」なども含めた小品の簡潔な美しさは、彼のコンチェルトなどの華やかさとはまた異なる魅力があると思います。

最後に演奏されたピアノソナタ第2番は最初に発表された版によって演奏されました。ラフマニノフ自身が演奏した当時評判が芳しくなかったとのことで、14年後の1931年に改訂版を発表するのですが、ホロヴィッツは作曲家公認のもと、両者を融合させた別バージョンで演奏していたそうです。

江崎氏はドラマティックなパッセージから繊細な響きまで自由自在になんの違和感もなく見事に聞かせてくれました。きっと演奏者には相当のスタミナが求められるのではないでしょうか。1913年版のどこが当時不評だったのか私には分かりませんが、当時の聴衆と現代の我々の音楽環境の違いは作品の受容になんらかの影響を及ぼしていたのかもしれません。第2楽章の途中に極めて美しい惹きつけられる部分があり、そこはラフマニノフならではと感じました。

アンコールで弾かれたショパンの2つのワルツは以前のコンサートでも聞かせていただいたことがありますが、特に第7番のフレーズの変化に富んだ浮き立たせ方は出色でした。ある時は主旋律を、別の個所では弱拍のバスを強調し、メランコリックな著名作品にまだまだ新しい魅力がひそんでいることをまざまざと感じました。
「月光」の2楽章を単独でアンコールで聞いたのは今回が初めての体験でしたが、強調するリズムの右手と左手のずれという意味でショパンのワルツ第7番と共通するものを感じました(こちらはベートーヴェン自身の指示によるものですが)。

これだけ見事な演奏をホールの美しい響きで味わえるというのはなんとも贅沢な時間でした。
アニバーサリーの作曲家に対する深いリスペクトが感じられる江崎氏の姿勢と、作品の奥底に迫ろうという気持ちの詰まった充実した演奏は素晴らしかったです。コンサートに向けてどれだけの準備をされてきたのかを思うと頭が下がります。
さらに多くの人に聞いていただきたいピアニストです。

ちらしはこちら

| | | コメント (0)

エリー・アーメリング、パーセル&フランク・マルタンを歌う(1965年11月26日, De Kleine Zaal om de Hoek)

De Kleine Zaal om de Hoek(角の小ホール)というホールのWebサイトに、エリー・アーメリング32歳の頃のライヴ音源が掲載されていました。
ピアノはスイスの作曲家フランク・マルタン(アーメリングより43歳年長)で、マルタン自身の歌曲集『3つのクリスマスの歌』と、パーセルの歌劇『ダイドーとエネアス』から有名なアリア「ダイドーの嘆き」が聞けます。どちらもスタジオ録音が残されているいるレパートリーですが、パーセルの方はPHILIPS盤の録音がクルト・マズア指揮ゲヴァントハウス管弦楽団の伴奏だったので、ここでのピアノとの共演は貴重です。
アーメリングの若くみずみずしい歌声は、パーセルの苦悩の表現よりは一途に思いを吐露している感じで魅力的でした。そして、スタジオ録音でも同じ組み合わせで聞ける『3つのクリスマスの歌』はフルートの助奏の響きも相まって聖書のキリスト生誕の様子が美しく描かれていました。

上記のサイトでも"BELUISTER FRAGMENT"というボタンをクリックするとYouTubeが立ち上がり聴くことが出来ますが、こちらにも掲載させていただきます。

録音:1965年11月26日, De Kleine Zaal om de Hoek

エリー・アーメリング(S)
フランク・マルタン(P)
ピテル・オデ(FL:『3つのクリスマスの歌』)

ヘンリー・パーセル:歌劇『ダイドーとエネアス』より~「あなたの手を貸しておくれ、ベリンダよ~私が地中に寝かされるとき」

フランク・マルタン:歌曲集『3つのクリスマスの歌』(藤井宏行氏の対訳はこちら)
1. 贈り物
2. クリスマスの絵姿
3. 羊飼いたち

----------

Recorded: 26 november 1965, De Kleine Zaal om de Hoek

Elly Ameling, sopraan
Frank Martin, piano
Pieter Odé, fluit (Martin: "Trois chants de Noël")

Henry Purcell (1659 – 1695)
From "Dido and Aeneas":
Thy hand, Belinda, darkness shades me - When I am laid in earth

Frank Martin (1890–1974)
"Trois chants de Noël":
1. Les Cadeaux
2. Image de Noël
3. Les Bergers
(tekst: A.Ruthardt, 1947)

----------

Dido's Lament, Z. 626, from the opera Dido and Aeneas, no. 37
 ダイドーの嘆き(歌劇「ダイドーとエネアス(ディドとアエネアース)」より)

Thy hand, Belinda, darkness shades me;
On thy bosom let me rest.
More I would, but death invades me:
Death is now a welcome guest.
 あなたの手を貸しておくれ、ベリンダよ、暗闇が私を隠しています。
 あなたの胸の上で私を休ませておくれ。
 もっと生きていたかった、だが死が私を侵蝕しています。
 死は今や歓迎すべき客なのです。

When I am laid in earth,
May my wrongs create
No trouble in thy breast.
Remember me, but ah! forget my fate.
 私が地中に寝かされるとき、
 私の過ちが
 あなたの胸に苦しみをうみ出さないことを願います。
 私のことを覚えていておくれ、だが、ああ!わが運命は忘れておくれ。

詩:Nahum Tate (1652-1715)
曲:Henry Purcell (1658/9-1695)

| | | コメント (0)

江崎皓介ピアノリサイタル(2022年12月10日 ミューザ川崎シンフォニーホール 音楽工房 市民交流室)

江崎皓介ピアノリサイタル
フランク生誕200周年&スクリャービン生誕150周年プログラム
~ピアノで織りなす神秘劇~

2022年12月10日(土)19:00開演(18:30開場)
ミューザ川崎シンフォニーホール 音楽工房 市民交流室

江崎皓介(ピアノ)

フランク(バウアー編):前奏曲、フーガと変奏曲 Op.18

フランク:前奏曲、コラールとフーガ M.21

フランク:前奏曲、アリアと終曲 M.23

~休憩(15分)~

スクリャービン:10のマズルカ Op.3

スクリャービン:ピアノソナタ第4番 Op.30

アンコール
シューマン:「子供の情景」~トロイメライ

江崎皓介氏のTwitter告知

-----

毎年恒例の江崎皓介氏のピアノリサイタルを聞いてきました。今回は川口ではなくミューザ川崎で、神奈川出身でありながら一度も行ったことがなかったので楽しみでした。

JR川崎駅中央改札を出て、地上に降りずにそのまま一本道で会場まで行けるのが便利でした(徒歩3分ぐらい)。会場前にはおそらく音符を模したと思われるモニュメントがいくつか設置されていました。
ミューザ川崎の建物に入り、長いエスカレーターを上ると、シンフォニーホールがありましたが、今回はそちらではなく音楽工房 市民交流室という小さなホールで、ピアノを聞くにはちょうどいいスペースでした。

ちょうどこの日はセザール・フランク(César Franck: 1822年12月10日 - 1890年11月8日)の生誕200回目の誕生日にあたり、その当日に彼の代表的な鍵盤作品3作が聴けるという贅沢な時間でした。

この日は前半がフランク、後半は今年が生誕150周年にあたるスクリャービン(Alexandre Scriàbine: 1872年1月6日 - 1915年4月27日)の作品で、アニバーサリー・イヤーの作曲家の作品を堪能できる素晴らしいプログラミングでした。

最初のフランク「前奏曲、フーガと変奏曲 Op.18」はもともとオルガン独奏用に作曲され、その後フランク自身によってハルモニウムとピアノの為に編曲されましたが、今回はかなり広く弾かれているハロルド・バウアー編曲によるピアノ独奏版です。前奏曲とフーガの間のつなぎのLargoの部分にピアノ版では急速なパッセージが追加されていますが、概して原曲に忠実な編曲なのではないでしょうか。冒頭のフレーズはあまりにも印象的で、一度聞けば耳から離れない魔力のようなものがあります。個人的にはいにしえの響きのようでもあり、フィリップ・グラスの作品を予感させるようにも感じられます。

続く「前奏曲、コラールとフーガ M.21」はフランクのピアノ曲の中でも特に有名なもので、アルペッジョの美しいフレーズはとりわけ印象的です。

前半最後の「前奏曲、アリアと終曲 M.23」は親しみやすいフレーズで始まる前奏曲、息の長いメロディのアリア、それと対照的に激しく蠢く終曲からなり、規模は大きめではないでしょうか。

江崎さんはこのかなりエネルギーを要すると思われるこの3作から実に細やかなポリフォニーを描き分け、それぞれの声部が浮かんでは背後に沈み、音が生き物のように胸に迫ってきました。かなりダイナミクスの幅は大きくとられ、渾身の演奏でした。

前半だけで55分というボリュームで、休憩15分をはさんで後半はスクリャービンです。

最初に「10のマズルカ Op.3」が演奏されましたが、私は寡聞にしてスクリャービンがマズルカを作曲していることを知りませんでした。なんでもスクリャービンはショパンの影響を受けていたそうで、このOp.3は10代後半に散発的に作曲されたのだとか。確かにショパンの香り漂う作品群でした。
江崎さんは昨年ショパンのエチュード全曲を聞かせていただき、素晴らしかったのを記憶していますが、プロフィールによると第14回スクリャービン国際コンクールで第一位を取られているとのこと。スラブ系の音楽は特に十八番なのでしょう。
スクリャービンのマズルカ、ショパンに近いものがありながらも曲調はそれぞれ異なり、それぞれの曲の中でも異なる曲調が併存しており、楽しめました。江崎さんは第4曲の後で一回拍手にこたえておられました。
最終曲は後半で執拗に繰り返される変ハ音(Ces)(ロ音と同じ音)が強迫観念のように聴き手の不安を煽ります。
私の記憶では江崎さんはこの最後の変ハ音を鳴らしたまま、次のピアノソナタ第4番Op.30の冒頭の異名同音のロ音(H)につなげて演奏していました。このソナタ冒頭の模糊とした雰囲気にすんなり溶け込んでいて、とても興味深い試みだと思いました。このソナタ、まだスクリャービンが単一楽章でソナタを作る前の作品で、2楽章からなりますが、短くあっという間に終わってしまいます。両楽章の性格は全く異なり、模糊とした1楽章から霧が晴れたような2楽章へと切れ目なく続き、単一楽章ソナタへの予兆と見ることも出来るかもしれません。江崎さんは深く踏み込んだ表現で素晴らしかったです。

スクリャービン:マズルカOp.3-10の最後
Scriabin-op-310

スクリャービン:ピアノソナタ第4番Op.30の冒頭
Scriabin-sonata-op-30

この日のアンコールはシューマンの「トロイメライ」。快適なテンポで美しく歌われていました。終演は21時。かなりのボリュームでしたが、集中力がとだえることなく、二人の偉大な作曲家の魅力を存分に堪能させていただきました。

| | | コメント (0)

マーク・パドモア&内田光子 デュオリサイタル(2022年11月24日 東京オペラシティ コンサートホール)

マーク・パドモア&内田光子 デュオリサイタル

2022年11月24日(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

マーク・パドモア(T)
内田光子(P)

ベートーヴェン:
「希望に寄せて」(第2作)op. 94
「あきらめ」WoO 149
「星空の下の夕べの歌」WoO 150
歌曲集『遥かなる恋人に』op. 98
第1曲:丘の上に腰をおろし
第2曲:灰色の霧の中から
第3曲:天空を行く軽い帆船よ
第4曲:天空を行くあの雲も
第5曲:五月は戻り、野に花咲き
第6曲:愛する人よ、あなたのために

~休憩(20分)~

シューベルト:歌曲集『白鳥の歌』D 957/D 965a
第1曲:愛の使い
第2曲:戦士の予感
第3曲:春の憧れ
第4曲:セレナーデ
第5曲:すみか
第6曲:遠い地で
第7曲:別れ
第8曲:アトラス
第9曲:彼女の肖像
第10曲:漁師の娘
第11曲:都会
第12曲:海辺で
第13曲:影法師
第14曲:鳩の便り

(※日本語表記はプログラム冊子に従いました)

---

Mark Padmore & Mitsuko Uchida Duo Recital 2022

November 24, 2022, 7:00 pm
Tokyo Opera City, Concert Hall

Mark Padmore, tenor
Mitsuko Uchida, piano

Ludwig van Beethoven: An die Hoffnung, Op. 94
Ludwig van Beethoven: Resignation, WoO 149
Ludwig van Beethoven: Abendlied unterm gestirnten Himmel, WoO 150

Ludwig van Beethoven: "An die ferne Geliebte", Op. 98
1. Auf dem Hügel sitz ich spähend
2. Wo die Berge so blau
3. Leichte Segler in den Höhen
4. Diese Wolken in den Höhen
5. Es kehret der Maien, es blühet die Au
6. Nimm sie hin denn, diese Lieder

- Intermission (20 min.) -

Franz Schubert: "Schwanengesang", D 957/D 965a
1. Liebesbotschaft
2. Kriegers Ahnung
3. Frühlingssehnsucht
4. Ständchen
5. Aufenthalt
6. In der Ferne
7. Abschied
8. Der Atlas
9. Ihr Bild
10. Das Fischermädchen
11. Die Stadt
12. Am Meer
13. Der Doppelgänger
14. Die Taubenpost

-----------

テノールのマーク・パドモアがベートーヴェンとシューベルトの歌曲を歌うというので初台の東京オペラシティに行ってきました。
すでに先週の土曜日には「冬の旅」を歌ったそうです。

過去にパドモアの実演を聴いたのはトッパンホール(2008,2011)と王子ホール(2014)で、2008年10月のイモジェン・クーパーとの「冬の旅」、2011年12月のティル・フェルナーとの「美しい水車屋の娘」と「白鳥の歌」他の2夜、2014年12月のポール・ルイスとの「美しい水車屋の娘」と「白鳥の歌」他の2夜と、5回も聴いていました。我ながらよく聞いたものだと思います(笑)クーパーとルイスは独奏者としても大好きなピアニストなので、彼らのピアノも目当てのうちだったのです。

トッパンホールは408席、王子ホールは315席と歌曲を聴くのにうってつけの広さで、演奏家と客席の一体感が魅力でした。今回の東京オペラシティ コンサートホールは1632席とトッパンホールの4倍、王子ホールの5倍以上です。こんな広いホールでパドモアを聴いたことがなかったので期待と不安の入り混じった気持ちで聴きに来ました。

今回の共演者はあの内田光子です!彼女のソロリサイタル(モーツァルト、シューマン、シューベルトの曲)も過去に聴いたことがあり、歌うようなとても美しい響きを奏でるピアニストなので、歌曲ではどんな感じなのか楽しみでもありました。

私の席は3階左側の後方でした。前に落下防止の手すりがあるので舞台はあまり見えません。パドモアは前方のお客さんが身を乗り出さない時に顔がかろうじて見えましたが、内田さんは位置的に演奏中は全く見えず、拍手にこたえて中央寄りに来た時にちらっと見えるぐらいでした。でもずっと顔を左に向けて聴くのもきついので、1階のお客さんのあたりに視線を落としながら耳を澄まして演奏を楽しむという感じでほとんどの時間を過ごしました。

これまで幸いなことに全盛期の実演を何度も聴くことが出来たパドモアがすでに60代だったことに驚きましたが、年齢による声の変化は生身の人間である限り避けられないのは当然でしょう。
強声の時は美しくふくよかな響きが私の席まで充分に届いてきましたが、ソットヴォーチェの時は響きがやせ気味になることがありちょっと年齢を感じました。ただ、それでも声が全く聞こえないということはなかったので、鍛錬を積んだ歌手は凄いですね。
パドモアは大きめのホールだからといって表現を大振りにするということはなく、フォルテからピアニッシモまで多様な響きでリートの繊細な世界をそのまま提示してくれていたのが心地よかったです。

冒頭のベートーヴェンの単独の3曲はいずれも内省的な趣で共通している選曲で、訴えかけるように歌うパドモアの表現が生きていました。驚くほど澄み切った響きの内田のピアノがパドモアの語るような歌唱を優しく包み、導いていました。ソリストにありがちな歌とピアノの衝突はなく、内田が磨きぬいたタッチでパドモアの声を包み込んでいました。

連作歌曲集『遥かな恋人に』は真摯なパドモアの描く人物がこの詩の主人公に重なります。内田は第6曲の前奏などこのうえなく美しく歌って奏でていました。それにしても第5曲「五月は戻り、野に花咲き」の冒頭から歌手は高いト音(G)を出さなければならず、歌手泣かせだなと思いました(パドモアはもちろん出していましたが、やはり楽ではなさそうです)。

休憩は20分とのことで、席に座っていると、15分ぐらい経った頃にステージ向い側の2階席に向けて拍手が起こり、なんと上皇后美智子様がおいでになりました。後半のプログラムを最後の拍手が終わるまでご覧になられ、楽しまれておられたようです。

後半はシューベルトの『白鳥の歌』で、通常のハスリンガー出版譜の曲順のまま14曲演奏されました。10月に聴いたプレガルティアンは曲順を入れ替えたりしていましたが、個人的にはこの通常の曲順が好きです。
これらの晩年の歌曲の底知れぬ深さと凄みをこの二人の名手の演奏からあらためて感じさせてもらえた時間でした。

パドモアは、例えば第1曲「愛の使い」の第3連"Wenn sie am Ufer,"の"Wenn"を"Wann"と歌っていたので、新シューベルト全集(Neue Gesamtausgabe)の楽譜を使用したものと思われます。
「戦士の予感」「すみか」での強靭な声の威力は健在でした。
内田は「セレナーデ」の右手のギターを模した音型を徹底してスタッカート気味に演奏して、見事な聞きものとなっていましたが、次の「すみか」でちょっと疲れが出た感もありました。もちろん概して作品の世界を見事に描いていたと思います。
後半のハイネ歌曲は切り詰めた音を用いた傑作群で、この名手たちの演奏の素晴らしさもあって、シューベルトが新しい境地に足を踏み入れた凄みが一層切実に感じられた時間でした。
「影法師」など内田は決して急激なアッチェレランドをかけたりせず、その和音の重みで徐々に緊迫感を出していて凄かったです。パドモアはほとんど語り部のような趣でこの曲の凄みを表現し尽くしていました。
このハイネ歌曲の厳しく緊迫した時間があったからこそ、最後の「鳩の便り」が生来のシューベルトらしい純粋な響きで聴き手の気持ちを解放してくれるのだと思います。この曲では両者は比較的ゆっくりめのテンポで丁寧に演奏していました。新しい境地と従来の抒情の間を自在に行き来するシューベルトの天才と、それを素晴らしく再現した二人の巨匠演奏家たちに拍手を送りたいと思います。

盛大な拍手に何度も呼び出された二人でしたがアンコールはありませんでした。でもこれだけボリュームたっぷりの充実したプログラムを聞かせてもらえれば聴き手ももうおなかいっぱいです。終演はちょうど9時頃でした。

オペラシティに来たのは随分久しぶりだなと思い、ブログの管理画面で検索してみたところ、2015年9月のオッター&ティリング&ドレイクのコンサート以来7年ぶりでした。だんだん実演から録音音源にシフトしつつあった私ですが、こうしてたまに生の音を浴びるとやはりいいものですね。

2022

| | | コメント (2)

クリストフ・プレガルディエン&ミヒャエル・ゲース/シューベルト「白鳥の歌」他(2022年10月1日(土)トッパンホール)

トッパンホール22周年 バースデーコンサート
〈歌曲(リート)の森〉~詩と音楽 Gedichte und Musik~ 第25篇
〈シューベルト三大歌曲 1〉
クリストフ・プレガルディエン&ミヒャエル・ゲース

2022年10月1日(土)18:00 トッパンホール

クリストフ・プレガルディエン(テノール)
ミヒャエル・ゲース(ピアノ)

ベートーヴェン:連作歌曲《遥かなる恋人に寄す》Op.98
 第1曲 僕は丘の上に腰を下ろして
 第2曲 青い山なみが
 第3曲 空高く軽やかに飛ぶ雨ツバメよ
 第4曲 高みにある雲の群れも
 第5曲 五月はめぐり
 第6曲 受け取ってください、これらの歌を

シューベルト:白鳥の歌 D957より
 第1曲 愛の言づて
 第2曲 兵士の予感
 第3曲 春のあこがれ
 第4曲 セレナーデ
 第5曲 居場所
 第6曲 遠い地で
 第7曲 別れ

~休憩~

ブラームス:〈君の青い瞳〉Op.59-8~《リートと歌》より
ブラームス:〈永遠の愛〉Op.43-1~《4つの歌》より
ブラームス:〈野の中の孤独〉Op.86-2~《低音のための6つのリート》より
ブラームス:〈飛び起きて夜の中に〉Op.32-1~《プラーテンとダウマーによるリートと歌》より
ブラームス:〈教会の墓地で〉Op.105-4~《低音のための5つのリート》より

シューベルト:白鳥の歌 D957より
 第10曲 魚とりの娘
 第12曲 海辺で
 第11曲 町
 第13曲 もう一人の俺
 第9曲 あの娘の絵姿
 第8曲 アトラス

[アンコール]

シューベルト:鳩の使い D965A
シューベルト:我が心に D860
シューベルト:夜と夢 D827

(※上記の演奏者や曲目の日本語表記はプログラム冊子に従いました。アンコールもトッパンホールの公式Twitterの日本語表記に従いました。)

Toppan Hall The 22th Birthday Concert
[Song Series 25 -Gedichte und Musik-]
Christoph Prégardien(Ten) & Michael Gees(pf)

Saturday, 1 October 2022 18:00, Toppan Hall

Christoph Prégardien, Tenor
Michael Gees, piano

Beethoven: Liederzyklus "An die ferne Geliebte" Op.98
 No. 1. Auf dem Hügel sitz ich spähend
 No. 2. Wo die Berge so blau
 No. 3. Leichte Segler in den Höhen
 No. 4. Diese Wolken in den Höhen
 No. 5. Es kehret der Maien, es blühet die Au
 No. 6. Nimm sie hin denn, diese Lieder

Schubert: 7 Lieder nach Gedichten von L. Rellstab aus "Schwanengesang" D957
 No. 1. Liebesbotschaft
 No. 2. Kriegers Ahnung
 No. 3. Frühlingssehnsucht
 No. 4. Ständchen
 No. 5. Aufenthalt
 No. 6. In der Ferne
 No. 7. Abschied

-Intermission-

Brahms: 'Dein blaues Auge' Op.59-8 aus "Lieder und Gesänge"
Brahms: 'Von ewiger Liebe' Op.43-1 aus "4 Gesänge"
Brahms: 'Feldeinsamkeit' Op.86-2 aus "6 Lieder für eine tiefere Stimme"
Brahms: 'Wie rafft' ich mich auf in der Nacht' Op.32-1 aus "Lieder und Gesänge von A. v. Platen und G. F. Daumer"
Brahms: 'Auf dem Kirchhofe' Op.105-4 aus "5 Lieder für eine tiefere Stimme"

Schubert: 6 Lieder nach Gedichten von Heinrich Heine aus "Schwanengesang" D957
 No. 10. Das Fischermädchen
 No. 12. Am Meer
 No. 11. Die Stadt
 No. 13. Der Doppelgänger
 No. 9. Ihr Bild
 No. 8. Der Atlas

[Zugaben]

Schubert: Die Taubenpost D965A
Schubert: An mein Herz D860
Schubert: Nacht und Träume D827

-----

久しぶりに生のコンサートに出かけてきました。テノールのクリストフ・プレガルディエン(プレガルディアン)がシューベルトの三大歌曲集をトッパンホールで披露するというので、その初回(10月1日)の『白鳥の歌』他のリサイタルを聴きました。
最近はあまりコンサートの広告などを熱心に見ることもなく、たまたまフリーペーパーの「ぶらあぼ」をぱらぱらめくっていてこのコンサートに気付いたので、数日前に電話してチケットをとり、飯田橋に降り立ちました。

個人的なことですが、飯田橋は社会人になって最初に勤めた会社があった場所で(大昔の話です)、久しぶりにそのビルに行ってみましたが、とうの昔に居酒屋のビルに変わっているばかりか、周辺の書店やよく通った飲食店などかなり変わってしまっていて妙にノスタルジックな気分に襲われました。

そんな感傷を引きずりながら15分ほどの坂道をのぼっていくと、以前はなかったスーパーいなげやが途中にありました。コンサートに向かう道は期待に胸ふくらませていて独特の高揚感があるんですよね。

ホールに着き、チケットをもぎってもらうと同時に受け取るプログラム冊子は以前と全く同じ表紙・デザインのものでした。変わるものがあれば変わらないものもあり、いろいろな思いが交錯する日となりました。

トッパンホールに来たのは一体何年ぶりだろうというぐらい久しぶりだったのですが、席についてしまえば過去に過ごした多くの素敵な時間がよみがえってきます。

今回は後方左側の席だったのですが、段になっているので、舞台がよく見渡せるいい席でした。

プログラムは前半がベートーヴェンの歌曲集《遥かなる恋人に寄す》と、シューベルトの『白鳥の歌』からレルシュタープの詩による7曲、休憩をはさみ後半はブラームスの歌曲5曲と、『白鳥の歌』からハイネの詩による6曲でした。
『白鳥の歌』の順序を出版順から入れ替えるのが最近の流行りで、プレガルディエンのちらしではレルシュタープ、ハイネそれぞれ曲順を入れ替えた形で発表されていましたが、結局レルシュタープ歌曲集はお馴染みの出版順で演奏され、ハイネ歌曲集のみがプレガルディエン独自の曲順に入れ替えられていました。

プレガルディエンはすでに66歳になっていたということにまず驚きました。F=ディースカウが歌手活動から引退したのが67歳の時で、その頃にはすでに声がかなり重くなっていたことを考えると、プレガルディエンの声のコンディションの見事さはちょっと信じがたいほどでした。高音域が若干きつそうな場面がある以外は殆ど年齢による衰えを感じることがなく、細やかな表現から劇的な表現まで変幻自在でした。ホール後方の席にいた私にも細やかな表現の綾がしっかり伝わってきます。基礎がしっかりしている人は長く歌い続けられるということなのでしょうか。

プレガルディエンは楽譜立てに紙を置いて、歌っていましたが、それが楽譜なのか歌詞なのか席からは確認できませんでした。ただ、ほとんどそれを見ることなく、正面の客席に顔を向けて歌っていたので、あくまで万が一の為の備忘録のような感じに思えます。

プレガルディエンはプログラム最初の《遥かなる恋人に寄す》の冒頭の曲からすでに声が朗々と前に出ていて年齢的な心配は杞憂に過ぎませんでした。
彼はバッハ歌いでもあり、彼の歌の基本は聴き手に伝えるという姿勢だと思います。
言葉が明瞭に聞こえてきます。
プレガルディエンは実演でも録音でも、歌の旋律に装飾を加えたり、多少変更を加えたりします。
当時の作品が演奏される際にすでにそうしたことは行われていて、シューベルト歌曲の紹介者フォーグルがどのように変更したかは楽譜の形で残っています。シューベルトはフォーグルの歌の伴奏をしたわけですから、そうした変更はシューベルトの公認と言ってもいいのでしょう。
プレガルディエンはすべての曲に装飾を加えるわけではなく、特定の曲に絞って装飾・変更を加えていきます。
私の記憶では《遥かなる恋人に寄す》では装飾は付けていませんでした。
この日最初に装飾を加えたのは『白鳥の歌』第3曲「春のあこがれ」でした。
特定の曲で装飾を加える時は、数か所変更を加えます。そして、歌手に呼応してゲースも思いっきりピアノパートに変更を加えます。
どこまで事前に準備していて、どこから即興的なやりとりなのかは知るよしもないですが、耳馴染みの音楽にちょっと装飾を加えて歌とピアノの新しい響きが生まれる瞬間に居合わせられるのはスリリングです。

プレガルディエンは万能歌手で、若者の心の痛みでも、抒情的な風景でも、疎外された者の心情でも、愛の告白でも、見事に説得力をもった表現で聴かせてくれるので、聴き手は身を委ねて、それぞれの小世界に浸ることが出来ます。
例えば《遥かなる恋人に寄す》第1曲では"Bote(使い)"の前に少しだけ間をとって「愛の使者はいないのか」という気持ちを強調していました。
年齢を重ねて低音は充実していて、特にテノール歌手には必ずしも歌いやすくはないであろう「遠い地で」の低音がしっかりと響いていたのは聴きごたえありました。

ピアノのミヒャエル・ゲースは、これまで数多くのピアニストたちと共演してきたプレガルディエンのパートナーの中でも極めて異彩を放っていることは間違いないです。
ゲースはリズムや拍を楽譜通りに明瞭に伝えようとはしません。
むしろ音楽的な響きの中でそれを(おそらく)あえてぼやかします。
ペダルの海の中で響きは時に濁り、普段聞こえる音が響きに埋没するかと思うと、普段埋もれがちな内声が浮き立ってきたりもします。
それは手垢にまみれたリート演奏に独自の視点をもたらそうとしているのかもしれませんし、もともとのゲースの資質なのかもしれません。
プレガルディエンが同じ作品を現代作曲家の様々な演奏形態による編曲版で歌ったりするのが新しい視点の可能性を試みているということならば、ゲースというピアニストと共演するということもその一環としてとらえてもいいのかもしれません。
ゲースは基本的に右手を中心に響かせ、左手はここぞという時だけ強調します。過去の様々な演奏に馴染んだ耳には、なぜ左手のバス音をこんなに弱く演奏するのだろうかという疑問をつきつけられます。それこそが先入観に疑問を持つようにというゲースから聴き手へのメッセージのようにも思えます。
それからリートを弾くピアニストたちがここぞという時にやる右手と左手のタイミングをわずかにずらすことによる味付けをゲースはこれでもかというぐらいに多用します。これはゲースの好みなのかもしれませんね。
また、ジャズも演奏するというゲースはプレガルディエンの装飾に呼応してかなり大胆な変更を施します。このあたりもプレガルディエンが志す方向と共通しているのだと思います。ただ、ブラームスの「永遠の愛」の後奏はゲースの創作作品になってしまっていて、これはさすがにやり過ぎかなと個人的には思いました。

大体『白鳥の歌』のプログラムだと、45分ぐらいで終わってしまうので、他に何が追加されるのかが愛好家にとっては気になるのですが、今回はよく一緒に演奏される『遥かなる恋人に寄す』の他にブラームスの歌曲5曲という珍しいカップリングが興味深かったです。私はブラームス歌曲が大好きなので、この日のコンサートは大好きな作品のオンパレードでとても楽しめました。プログラムビルディングも大事ですよね。

『白鳥の歌』出版時に含まれた「鳩の便り」は一つだけザイドルのテキストということもあって、今回のように正規のプログラムからは外されることが多くなってきましたが、アンコールで歌ってくれたのでこの曲が好きな私としては良かったです!そしてアンコール2曲目は珍しいシュルツェの詩による「我が心に」が演奏され、最後の「夜と夢」は魔術的な美しさでした。プレガルディエンのレガート健在でした!

やはりホールの美しい響きの中で聴く一流の演奏は格別でした。行って良かったです!あと2夜行ける方はぜひ楽しんできてください!

トッパンホールのHPでの公演詳細

| | | コメント (0)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ (ピアノ:デームス、ヘル、ブレンデル)/シューベルト&R.シュトラウス・ライヴ(1980年,1982年,1984年アムステルダム)

オランダの放送局NPO Radio4が、本日(5月28日)誕生日のディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)のアムステルダム・コンセルトヘバウでのライヴを3種類、期間限定でアップしています。
おそらく数週間で消されてしまうと思いますので、もし興味のある方は早めに聴いてみて下さい。1曲ずつでも再生できるようになっているので、聞きたい曲だけ聞くことも出来ます。
シューベルトの方は1980年のライヴで、2014年にアップされた時にブログの記事にしていますので、その後アップされていなかったとしたら8年ぶりということになります。ピアノはイェルク・デームスです。

●Schubert-recital door Dietrich Fischer-Dieskau

ライヴ録音:1980年12月9日, Concertgebouw Grote Zaal Amsterdam(アムステルダム・コンセルトヘバウ大ホール)

Dietrich Fischer-Dieskau(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ) (bariton)
Jörg Demus(イェルク・デームス) (piano)

Schubert(シューベルト)作曲

1.Prometheus(プロメテウス) D.674
2.Meeresstille(海の静けさ) D.216
3.An die Leier(竪琴に寄せて) D.737
4.Memnon(メムノン) D.541
5.Freiwilliges Versinken(自ら沈み行く) D.700
6.Der Tod und das Mädchen(死と乙女) D.531
7.Gruppe aus dem Tartarus(タルタロスの群れ) D.583
8.Nachtstück(夜曲) D.672
9.Totengräbers Heimweh(墓掘人の郷愁) D.842

10.Der Wanderer an den Mond(さすらい人が月に寄せて) D.870
11.Abendstern(夕星) D.806
12.Selige Welt(幸福の世界) D.743
13.Auf der Donau(ドナウ川の上で) D.553
14.Über Wildemann(ヴィルデマンの丘を越えて) D.884
15.Wanderers Nachtlied(さすらい人の夜の歌Ⅱ) D.768
16.Des Fischers Liebesglück(漁師の恋の幸福) D.933
17.An die Laute(リュートに寄せて) D.905
18.Der Musensohn(ムーサの息子) D.764

19.Nachtviolen(はなだいこん) D.752
20.Geheimes(秘めごと) D.719
21.An Sylvia(シルヴィアに) D.891
22.Abschied(別れ) D.957 nr.7

次にR.シュトラウスのリサイタルで、こちらも2014年にアップされた時に記事にしていました。ピアノはハルトムート・ヘルです。

●Richard Strauss recital door Dietrich Fischer-Dieskau

ライヴ録音:1982年2月18日, Concertgebouw, Amsterdam(アムステルダム・コンセルトヘバウ)

Dietrich Fischer-Dieskau(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ) (bariton)
Hartmut Höll(ハルトムート・ヘル) (piano)

Richard Strauss(リヒャルト・シュトラウス)作曲

1 Schlechtes Wetter(悪天候), op.69 nr.5
2 Im Spätboot(夜更けの小舟で), op.56 nr.3
3 Stiller Gang(静かな散歩), op.31 nr.4
4 O wärst du mein(おお君が僕のものならば), op.26 nr.2
5 Ruhe, meine Seele(憩え、わが魂よ), op.27 nr.1 (04:00)
6 Herr Lenz(春さん), op.37 nr.5
7 Wozu noch, Mädchen(少女よ、それが何の役に立つのか), op.19 nr.1
8 Frühlingsgedränge(春の雑踏), op.26 nr.1
9 Heimkehr(帰郷), op.15 nr.5
10 Ach, weh mir unglückhaftem Mann(ああ辛い、不幸な俺), op.21 nr.4

11 Winternacht(冬の夜), op.15 nr.2
12 Gefunden(見つけた), op.56 nr.1
13 Einerlei(同じもの), op.69 nr.3
14 Waldesfahrt(森の走行), op.69 nr.4
15 Himmelsboten(天の使者), op.32 nr.5
16 Junggesellenschwur(若者の誓い), op.49 nr.6
17 "Krämerspiegel(「商人の鑑」)": O lieber Künstler(おお親愛なる芸術家よ), op.66 nr.6
18 "Krämerspiegel": Die Händler und die Macher(商人どもと職人どもは), op.66 nr.11
19 "Krämerspiegel": Hast du ein Tongedicht vollbracht(あなたが交響詩を書き上げたら), op.66 nr.5
20 "Krämerspiegel": Einst kam der Bock als Bote(かつて牝山羊が使者にやって来た), op.66 nr.2

21 Traum durch die Dämmerung(黄昏を通る夢), op.29 nr.1
22 Ständchen(セレナーデ), op.17 nr.2
23 Morgen(明日), op.27 nr.4
24 Zugemessene Rhythmen(整いすぎたリズム), WoO.122

1984年のアルフレート・ブレンデルとの『冬の旅』のライヴは、スタジオ録音やDVDの映像と比較してみるのも興味深いかと思います。

●Legendarisch archief: Winterreise door Dietrich Fischer-Dieskau

ライヴ録音:1984年6月29日, Concertgebouw, Amsterdam(アムステルダム・コンセルトヘバウ)

Dietrich Fischer-Dieskau(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ) (bariton)
Alfred Brendel(アルフレート・ブレンデル) (piano)

Schubert(シューベルト)作曲

Winterreise(『冬の旅』) D.911 - compleet

| | | コメント (0)

エリー・アーメリング公式チャンネル動画2本更新:ショッソン『7つの歌曲』、コンサートアンコール(トゥリーナ、エリントン)

嬉しいことにエリー・アーメリング公式チャンネルに新しい動画が2本アップされていました。

●コンサートのアンコール2曲:トゥリーナ、エリントン
Elly Ameling; Two encores, Turina and Ellington

アンコール2曲、1985年10月6日フレーデンビュルフ録音
00:05 ホアキン・トゥリーナ:カンタレス(歌)
2:09 デューク・エリントン:ソフィスティケイテッド・レイディー

エリー・アーメリング(S)
ルドルフ・ヤンセン(P)

Two encores, recorded Vredenburg, October 6 1985
00:05 Joaquín Turina - Cantares
2:09 Duke Ellington - Sophisticated Lady

Elly Ameling, soprano
Rudolf Jansen, piano

コンサートのアンコールとして演奏された2曲とのことです。私の知る限り初出音源ではないでしょうか。スペイン歌曲とジャズのスタンダードナンバーをヤンセンがピアノでつないで続けて演奏しているのが興味深いです。全く異なる様式の作品をこうしてまとめて披露してしまえるアーメリングはやはり凄い人ですね。

●ショッソン(一般的な表記はショーソン)『7つの歌曲』Op. 2
Elly Ameling; Sept Mélodies op. 2 - Chausson

ショッソン『7つの歌曲』Op. 2
00:05 1.ナニー
02:43 2.魅惑
04:46 3.蝶々
06:08 4.最後の一葉
08:27 5.イタリア風のセレナード
10:22 6.ヘーベ
13:06 7.ハチドリ

Sept Mélodies op. 2 - Ernest Chausson (1855-1899)
00:05 Nanny (Charles Leconte de Lisle)
02:43 Le charme (Paul Armand Sylvestre)
04:46 Les Papillons (Théophile Gautier)
06:08 La dernière feuille (Théophile Gautier)
08:27 Sérénade Italienne (Paul Bourget)
10:22 Hébé (Louise Ackermann)
13:06 Le Colibri (Charles Leconte de Lisle)

Elly Ameling, soprano
Rudolf Jansen, piano
AVRO RK3, 1-12-1982

ショッソンの『7つの歌曲』Op. 2全曲がここで演奏されていますが、このうち1曲目の「ナニー」のみ彼女の放送録音集"80 jaar"に同一音源が収録されています。実はオランダのネットラジオ局Radio 4で以前にこの全曲が放送されたことがありますが、こうして動画サイトで繰り返し聴けるようにしてもらえるのはファンにとって嬉しいだけでなく歌を勉強している方にとっても有難いことではないかと思います。ショッソンの歌曲は和声の機微がなんとも言えない味を醸し出していて、聞くたびに惹かれます。この7曲のうち「ハチドリ」はコンサートで彼女がよく歌っていて私もアンコールで実際に聴きました。歌曲集としてまとめて聴くと、ショッソンの作風の様々な側面が感じられてとても魅力的でした。そしてアーメリングの歌唱とヤンセンのピアノはいつもながらそれぞれの異なる世界観を細やかに提示してくれています。

------------

(2021/11/7追記)

2021/10/30の10:15-12:45、14:00-16:30にエリー・アーメリングのマスタークラスが実施されたようです。オランダのゼイストで2021/10/22-31まで催された国際リート・フェスティヴァル(Internationaal Lied Festival Zeist)の一環のようです。
Twitterに参加された方からのリポートがありましたのでリンクを貼っておきます。日本のピアニスト木口さんも参加されたそうです。

木口雄人
https://twitter.com/kiguchi_yuto/status/1453402816266096642

Margriet Schipper
https://twitter.com/MargrietSchipp1/status/1454108546119917570

それからアーメリングといくつかの録音やコンサートで名演を残した指揮者ベルナルト・ハイティンクさん(Bernard Haitink: 4 March 1929 – 21 October 2021)のご冥福をお祈りいたします。

| | | コメント (2)

江崎皓介ピアノリサイタル(2021年10月23日 カワイ川口リリアサロン)

江崎皓介ピアノリサイタル/ショパンエチュード全曲

2021年10月23日(土)
開場 14:30/開演 15:00
カワイ川口リリアサロン

江崎皓介(P)

ショパン:エチュード Op. 10-1~12

(休憩:約15分)

ショパン:エチュード Op. 25-1~12

(アンコール)

1. ショパン:夜想曲第2番 変ホ長調 Op. 9-2

2. ショパン:ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op. 64-2

3. ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 Op. 64-1「小犬のワルツ」

---------

昨日、川口リリアのカワイのサロンに行き、一年ぶりに江崎皓介氏の演奏を聴いてきました。
生演奏は今年はじめてです。
某騒動で凄かった去年でさえ3回もコンサートに行ったのに...。
リモートワークが続きプライベートもだんだん出不精になってしまいました。

江崎さんは今回ショパンのエチュードのみでプログラミングし、前半はOp.10の12曲、そして後半はOp.25の全12曲を披露しました。
久しく感じていなかった音のシャワーを浴びる感覚がよみがえってきました。
エチュードといえど、ハノンやバイエルではなく、やはりショパンの芸術作品なのだと実感しました。
有名な曲があちこちに散りばめられていますが、ニックネームが付いていない曲でも馴染みのある曲が多く、それらが全曲まとめて演奏されると、単独で弾かれる時とは違った色合いを放つのが興味深かったです。
やはり江崎さんの演奏は昨年同様響きが美しかったです。
今回特に感じたのは他の演奏ではあまり強調されないような声部を際立たせることで、新鮮な魅力を感じることが出来たことです。内声もそうですが、バス音を強調するだけで随分雰囲気が変わり、聴いていて惹きこまれる箇所が多数ありました(例えばOp.25-2等)。
私の右側ブロックの一番真ん中よりの席からは手はほとんど見れなかったのですが、その代わりペダリングがよく見えて、細やかなペダルの踏みかえが印象に残っています。
ショパンは繊細な印象が強いですが、ドラマティックに畳みかけるところも魅力的ですね。
特に休憩後のOp.25では江崎さんの演奏が鬼気迫るような、何かが乗り移ったかのようなものが感じられて、12曲からなる物語のページを次々にめくっていくようなわくわくする感覚がありました。
曲が終わって次の曲に進むタイミングも音楽の一部なのだなぁとあらためて感じられた演奏でした。

アンコールは3曲でしたが、ツアーが下関、大阪と続くようですので、曲名はそれが終わった頃に追記しようと思います。
1曲目の超有名なあの曲では右手に多くの装飾を施していて興味深かったです。
何かそういう装飾の代替フレーズが記載された楽譜があるのか、それとも江崎さんが創作した装飾なのか気になり、帰り際にお見送りいただいた時に伺おうかとも思ったのですが、お疲れのところ申し訳ないと思い、一言感想をお伝えしてその場を離れてしまいました。

歌曲ファンの立場から今回ショパンのエチュードを聴いていて感じたことなのですが、ヴォルフは意外とショパンの影響を受けているのではないかと思いました。ヴォルフの歌曲のピアノパートに出てくるような音楽が、ショパンの音楽の中にいくつか感じられました。ヴォルフは若い頃音楽評論家でもあったので、その評論をひもとけば何か出てくるかもしれませんね。

余談ですが、昨今ショパンコンクールの日本人お二人の入賞がメディアでも話題になり、本当におめでたいと思いますが、普段クラシックの報道をほとんどしない一般メディアもこういう時はにわかクラシックファンになるのだなぁとひねくれた見方をしてしまいます。
でも、途中で先に進めなかったピアニストの方も素晴らしい演奏をした方がおられましたし、動画でそれぞれの演奏が聴けるので、お気に入りのピアニストをじっくり探すというのも楽しいですね。

| | | コメント (2)

エリー・アーメリング&ルドルフ・ヤンセン他(Elly Ameling, Rudolf Jansen, & others)フランス放送録音(1985年1月28日)

エリー・アーメリング((Elly Ameling)の1985年の初出音源がアップされていました!!
未知だった音源がどんどん発掘されていくのはファンにとってはたまらなく嬉しいです。
1985年のフランスでの放送音源とのことで、プログラムは、フォレ、ラヴェルのアンサンブル版歌曲集とシューベルトの「岩の上の羊飼い」を含む7曲です。

フォレの歌曲集『優れた歌(La bonne chanson)』は抜粋の7曲ですが、おそらくライヴでは全9曲披露されて、ラジオ番組の時間制約上第1曲、第8曲がカットされたのだろうと推測されます。

演奏形態は、フォレが歌+弦楽四重奏+ピアノ、ラヴェルが歌+フルート2+クラリネット2+弦楽四重奏+ピアノ、シューベルトは「岩の上の羊飼い」のみ歌+クラリネット+ピアノで他は歌+ピアノです。

アーメリングは1985年1月&9月にERATOレーベルにラヴェル歌曲集を録音しているのですが、その時の共演メンバーが今回の音源と同じなので、おそらくスタジオ録音と放送用録音を平行して行ったのではないかと推測されます。

そしてアーメリングの歌声、とても素晴らしかったです!相変わらずきめの細かい感触が彼女の歌から感じられます。言葉一つ一つを大切にしながら、フレーズの大きな流れも意識した至芸!
ピアノ、弦楽四重奏、管楽器とのアンサンブルも美しかったです。

それにしてもアーメリングは「岩の上の羊飼い」が好きだったようで、いろんな音源が発掘されていますね(日本では一度も披露されなかったのが意外です)。

An Elly Ameling Recital (France, 1985)

チャンネル名:kadoguy

フランス放送音源
1985年1月28日

エリー・アーメリング(S)
ルドルフ・ヤンセン(P)
ヴィオッティ四重奏団
フィリップ・ゴティエ(FL)
ジャン=ルイ・ボマディエ(FL)
ロラン・スィモンスィニ(CL)
ジャン=マルク・ヴォルタ(CL)

I. ガブリエル・フォレ:『優れた歌』Op. 61 (抜粋)
2. 曙の色がひろがり 0:00
3. 白い月 2:00
4. ぼくは不実な道を歩いていた 4:26
5. ほんとに、ぼくはこわいくらいだ 6:14
6. おまえがいなくなる前に 8:33
7. さて、それは或る明るい夏の日のことだ 10:56
9. 冬は終わった 13:24

II. モリス・ラヴェル:『3つのステファヌ・マラルメの詩』M. 64
溜息 16:27
叶わぬ望み 20:16
臀部より出でて,ひと跳びで 24:08

III. フランツ・シューベルト:
夕映えの中で, D. 799 26:58
月に寄せて, D. 193 31:12
ひそやかな恋, D. 922 34:30
乙女の嘆き, D. 191 38:30
ここにいたこと, D. 775 42:06
若い尼僧, D. 828 46:04

IV. フランツ・シューベルト: 岩の上の羊飼い, D. 965 50:49

---------

French radio broadcast
28 January 1985

Elly Ameling(S)
Rudolf Jansen(P)
Quatuor Viotti
(Philippe Goulut, violin; Mark Duprez, violin; Pierre Franck, viola; and Hugh Mackenzie, cello)
Philippe Gautier(FL)
Jean-Louis Beaumadier(FL)
Roland Simoncini(CL)
Jean-Marc Volta(CL)

I. Gabriel Fauré: "La bonne chanson", op. 61 (excerpts)
2. "Puisque l'aube grandit" 0:00
3. "La lune blanche luit dans les bois" 2:00
4. "J'allais par des chemins perfides" 4:26
5. "J'ai presque peur, en vérité" 6:14
6. "Avant que tu ne t'en ailles" 8:33
7. "Donc, ce sera par un clair jour d'été" 10:56
9. "L'hiver a cessé" 13:24

II. Maurice Ravel: "Trois Poèmes de Stéphane Mallarmé", M. 64
"Soupir" 16:27
"Placet futile" 20:16
"Surgi de la croupe et du bond" 24:08

III. Franz Schubert: Six Songs
"Im Abendrot", D. 799 26:58
"An den Mond", D. 193 31:12
"Heimliches Lieben", D. 922 34:30
"Des Mädchens Klage", D. 191 38:30
"Daß sie hier gewesen", D. 775 42:06
"Die junge Nonne", D. 828 46:04

IV. Franz Schubert: "Der Hirt auf dem Felsen", D. 965 50:49

| | | コメント (4)

エリー・アーメリング他(Ameling, Watkinson, Meens, Holl, Jansen, Brautigam)/ブラームス:四重唱曲、二重唱曲他 初出音源(1983年1月14日, アムステルダム・コンセルトヘバウ(live)他)

●ブラームス/四重唱曲、二重唱曲
Elly Ameling; Brahms Quartets and Duets

00:00 Der Gang zum Liebchen (op 31/3)
02:59 Sehnsucht (op 112/1)
06:08 Abendlied (op 92/3)
09:39 Warum (op 92/4)
12:20 Der Abend (op 64/2)
16:56 Es rauschet das Wasser (op 28/3)(Watkinson, Holl, Jansen)
20:43 Vor der Tür (op 28/2)(Watkinson, Holl, Jansen)
22:48 Vergebliches Ständchen (op 84/4)(Ameling, Meens, Jansen)
24:37 Die Schwestern (op 61/1)(Ameling, Watkinson, Jansen)
27:12 Zigeunerlieder 5 "Brauner Bursche führt zum Tanze" (op 103/5)
30:29 Zigeunerlieder 7 "Kommt dir manchmal in den Sinn" (op 103/7)
31:09 Zigeunerlieder 6 "Röslein dreie in der Reihe blühn so rot" (op 103/6)
32:01 Wenn so lind dein Augen * (Liebesliederwalzer, op 52/8)
34:06 Ein kleiner. Hübscher Vogel * (Liebesliederwalzer, op 52/6)

Elly Ameling - Soprano
Carolyn Watkinson - Mezzo soprano
Hein Meens - Tenor
Robert Holl - Bass
Rudolf Jansen - Piano
Rudolf Jansen & Ronald Brautigam - Piano *

Live recording Concertgebouw, 14-01-1983

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のブラームス重唱曲の録音といえば、80歳を記念した放送録音集"80 jaar"に1曲だけ「夕暮れ(Der Abend, Op. 64/2)」が収録されていました。
今回アーメリングの公式チャンネルで、なんと同じ日のライヴ音源が初めて公開されました!!!
これはもうアーメリングからのサプライズプレゼントですね!
『ジプシーの歌』抜粋や『愛の歌』抜粋をアーメリングの歌で聴けるとは思ってもいなかったので狂喜乱舞しました(本当は全曲が良かったのですが贅沢は言わないことにします)。
共演者はメゾソプラノのキャロリン・ワトキンソン、テノールのヘイン・メーンス、バスのロベルト・ホル、ピアノはルドルフ・ヤンセン、『愛の歌』のピアノ連弾のみロナルト・ブラウティハムが参加しています。
ブラームスの重唱曲は『ジプシーの歌』『愛の歌』『新しい愛の歌』以外の単独の作品はこれまであまり馴染みがなかったのですが、こうして聞いてみるとどれもとても魅力的ですね。独唱曲として歌われることの多い「甲斐なきセレナーデ」をソプラノとテノールの掛け合いで聴くとより臨場感があって面白かったです。「憧れ(Sehnsucht)」という曲も趣があってとても魅力的な作品でした。
アーメリングはいつもながらの美声がなんとも心地よかったですが、コミカルな曲(「姉妹(Die Schwestern)」等)で会場をざわつかせるところは流石です!どんな表情で歌っていたのか想像しながら聴いてみるのも楽しいと思います。それからメゾのワトキンソンの歌声はとても温かみがあり惹きつけられました。

●ドビュッシー/『ステファヌ・マラルメの3つの詩』(ため息;ささやかな願い;扇)
Debussy Mallarme

Trois Poémes de Stéphane Mallarmé - Claude Debussy (1862-1918)

00:05 Soupir
03:02 Placet futile
05:06 Éventail

Elly Ameling - Soprano
Dalton Baldwin - Piano

もう1つアーメリング公式チャンネルからアップされていたのは、ドビュッシーの『ステファヌ・マラルメの3つの詩』です。これはおそらくEMIのドビュッシー歌曲全集からの音源と思われます。楽譜が表示されるので、歌を勉強されている方にもお勧めです。最初の2曲はラヴェルも作曲しているので、比較するのも興味深いと思います(こちらのリンク先でアーメリング&ヤンセン他によるラヴェルの演奏が聴けます)。

●サリエリ、モーツァルト・アリア集&R.シュトラウス:『4つの最後の歌』
ELLY AMELING: Mozart Concert Arias and Strauss Four Last Songs

Live broadcasts of Dutch soprano ELLY AMELING.

0:00- SALIERI: La fiera di Venezia: "Non temer che d'altri"
4:05- MOZART: "Voi avete un cor fedele" K.217

Elly Ameling(S)
Mostly Mozart Festival Orchestra
Gerard Schwarz(C)
(1985)

------

12:18- STRAUSS: Four Last Songs
1. Frühling
2. September
3. Beim Schlafengehen
4. Im Abendrot

Rotterdam Philharmonic
Edo de Waart(C)
(1986)

上の2種類のライヴのうち、最初のサリエリとモーツァルトは以前別の方がアップした音源をご紹介したこちらの記事と同一音源ではないかと推測されます。

しかし!後半(12:18~)のエド・ドゥ・ヴァールト指揮ロッテルダム・フィルハーモニックとの『4つの最後の歌』は、ネット上で聴けるのは唯一の音源と思われます。
実はかなり昔にオランダのインターネットラジオ局Radio 4でアーメリングの特集が数回に分けて放送された際に、この音源の放送が予告されていたのですが、実際に放送されたのはサヴァリッシュ指揮コンセルトヘバウ管弦楽団との音源でした。
アップしていただいたこの音源、惜しむらくはおそらくテープの回転数が速くて、実際の音より高めなのが残念ですが、そこは想像力で補いながらこの貴重な音源を満喫したいと思います。

| | | コメント (10)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

CD DVD J-Pop LP 【ライラックさんの部屋】 おすすめサイト アイヒェンドルフ アンゲーリカ・キルヒシュラーガー アンティ・シーララ アーウィン・ゲイジ アーリーン・オジェー イアン・ボストリッジ イェルク・デームス イタリア歌曲 イモジェン・クーパー イングリート・ヘブラー ウェブログ・ココログ関連 エディタ・グルベロヴァ エディト・マティス エリック・ヴェルバ エリーザベト・シュヴァルツコプフ エリー・アーメリング エルンスト・ヘフリガー オペラ オルガン オーラフ・ベーア カウンターテナー カール・エンゲル ギュンター・ヴァイセンボルン クラーラ・シューマン クリスタ・ルートヴィヒ クリスティアン・ゲアハーアー クリスティーネ・シェーファー クリストフ・プレガルディアン クリスマス グリンカ グリーグ グレアム・ジョンソン ゲアハルト・オピッツ ゲアハルト・ヒュッシュ ゲロルト・フーバー ゲーテ コルネーリウス コンサート コントラルト歌手 シェック シベリウス シュテファン・ゲンツ シューベルト シューマン ショスタコーヴィチ ショパン ジェシー・ノーマン ジェフリー・パーソンズ ジェラルド・ムーア ジェラール・スゼー ジュリアス・ドレイク ジョン・ワストマン ソプラノ歌手 テノール歌手 テレサ・ベルガンサ ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ ディートリヒ・ヘンシェル トマス・ハンプソン トーマス・E.バウアー ドビュッシー ドルトン・ボールドウィン ナタリー・シュトゥッツマン ノーマン・シェトラー ハイドン ハイネ ハルトムート・ヘル ハンス・ホッター バス歌手 バッハ バリトン歌手 バレエ・ダンス バーバラ・ヘンドリックス バーバラ・ボニー パーセル ピアニスト ピーター・ピアーズ ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル フェリシティ・ロット フランク フランス歌曲 フリッツ・ヴンダーリヒ ブラームス ブリテン ブログ プフィッツナー ヘルマン・プライ ヘルムート・ドイチュ ベルク ベートーヴェン ペーター・シュライアー ペーター・レーゼル ボドレール マティアス・ゲルネ マルコム・マーティノー マーク・パドモア マーティン・カッツ マーラー メシアン メゾソプラノ歌手 メンデルスゾーン メーリケ モーツァルト ヤナーチェク ヨーハン・ゼン ルチア・ポップ ルドルフ・ヤンセン ルードルフ・ドゥンケル レナード・ホカンソン レルシュタープ レーナウ レーヴェ ロシア歌曲 ロジャー・ヴィニョールズ ロッテ・レーマン ロバート・ホル ローベルト・フランツ ヴァルター・オルベルツ ヴァーグナー ヴェルディ ヴォルフ ヴォルフガング・ホルツマイア ヴォーン・ウィリアムズ 作曲家 作詞家 内藤明美 北欧歌曲 合唱曲 小林道夫 岡原慎也 岡田博美 平島誠也 指揮者 日記・コラム・つぶやき 映画・テレビ 書籍・雑誌 歌曲投稿サイト「詩と音楽」 演奏家 白井光子 目次 研究者・評論家 藤村実穂子 音楽 R.シュトラウス