岩波ホールセレクション Vol.1 [抵抗と人間]
「抵抗 死刑囚の手記より」
(Un Condamné à mort s'est échappé ou le Vent souffle où il veut)
2010年4月7日(水) 14:30の回 神保町・岩波ホール
1956年/フランス/1時間37分
モノクロ/デジタル上映
監督:ロベール・ブレッソン(Robert Bresson: 1901.9.25-1999.12.18)
原作:アンドレ・ドゥヴィニー(André Devigny: 1916.5.25-1999.2.12)
撮影:レオンス=アンリ・ビュレル(Léonce-Henri Burel: 1892.11.23-1977.3.21)
音楽:モーツァルト「ミサ曲 ハ短調」K427より
主人公の中尉・フォンテーヌ(Fontaine):フランソワ・ルテリエ(François Leterrier: 1929.5.26-)
フォンテーヌに通信手段を用立てる捕虜・テリー(Terry):ロジェ・トレルヌ(Roger Treherne)
フォンテーヌと共に脱獄する少年・ジョスト(Jost):シャルル・ル・クランシュ(Charles Le Clainche)
隣室の男・ブランシェ(Blanchet):モーリス・ベールブロック(Maurice Beerblock)
牧師・Priest of Leiris:ロラン・モノー(Roland Monod)
※キャストはIMDBとallcinemaのサイトを参照しました。
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4月7日(水)、休暇をとっていたのだが、夕方から出かける予定だったコンサートは歌手の声の病気の為中止となり、急遽以前から見たいと思っていたブレッソン監督の「抵抗」を見に岩波ホールに行ってきた。
小雨混じりの寒い日だったが、平日ということもあってかホール内はお客さんもそれほど多くなく、好きな席(左ブロックの通路側)を選ぶことが出来た。
実際にドイツ軍の捕虜になった経験をもつブレッソン監督の作品。
ドイツ軍占領下のドイツが舞台で、フランス人中尉のフォンテーヌが橋の爆破を企ててドイツ軍に捕らえられる。
場面は捕虜となったフォンテーヌが車の後部座席に乗せられて連れて行かれるところから始まる。
一度車が止まった時を見計らってドアを開けて逃げようとするのだが、すぐに連れ戻されてしまう。
その際暴行を受けて血まみれになった服を着たまま、監獄に到着して、獄中生活が始まる。
汚物を捨てて顔を洗う為にだけ外に出ることになるのだが、その際に仲間たちと情報交換をしたりするうちに、フォンテーヌは脱獄を企てていることを仲間に伝える(密告者があらわれるかもしれず、監視人もいるのになんと大胆な!)。
その脱獄の準備の描写がこの映画の大半を占めるが、こんなにうまく事が運ぶのかどうかという点は脇に置いても、はらはらさせられながら画面に引き込まれることは確かだった。
その後、ゲシュタポ本部に連行されたフォンテーヌは、テロを引き起こそうとしたことで死刑が言い渡される。
もはやぐずぐずしている時間がなくなり、周囲の仲間も早く実行に移すようにうながす。
その後、フォンテーヌと同室にジョストという16歳の少年が入ってきた。
ドイツ軍の罠かもしれないと警戒するフォンテーヌだったが、ついにジョストに計画を打ち明け、二人で脱獄を実行に移す。
その脱獄が成功したかどうか、また少年ジョストがスパイなのかどうかは、今後この映画を見る人のために触れないでおこう。
フォンテーヌの語りは映画の間中途切れることなく続き、あらゆる場面の様子を事細かに伝える。
しかし、それがうるさくならないのは、この映画の演出の上手さなのだろうか。
モノクロの画面の光と影の対比がそれだけで何か訴えかけてくるかのようだ。
ロベール・ブレッソン監督はプロの俳優を使わない主義らしく、この映画の登場人物もみな素人とのこと。
主役を演じる細身の青年は当時ソルボンヌで哲学を専攻中の学生だったとのこと(パンフレットの解説による)。
この映画出演後は監督業に転進したらしい。
私などは言われなければ素人かどうかなど全く気付かないほど鈍感なのだが、心理的な表情よりも行動の描写とその説明が多かったことは、素人俳優を使うことで生きてきたのかもしれない。
全編を通して、ところどころで断片的に流れるのが、モーツァルト「ミサ曲 ハ短調」K427の「キリエ」の冒頭。
この厳かな響きが映画によく溶け込んでいた。
フランス側から描いた映画なので当然なのだろうが、ドイツ語で語られる箇所が常に威圧的でおそろしく響くのが印象的だった。
なお、岩波ホールでのこの映画の上映はすでに終了してしまったが、国内DVDが発売されているようなので、興味のある方はDVD店かレンタルビデオ店で探してみてください。
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