ヴォルフ:太陽が輝くのが真実であるように(Wolf: So wahr die Sonne scheinet)

So wahr die Sonne scheinet
 太陽が輝くのが真実であるように

So wahr die Sonne scheinet,
So wahr die Wolke weinet,
So wahr [das Feuer]1 sprüht,
So wahr der Frühling blüht;
So wahr hab' ich empfunden,
Wie ich dich halt' umwunden:
Du liebst mich, wie ich dich,
Dich lieb' ich, wie du mich.
 太陽が輝くのが真実であるように
 雲が泣くのが真実であるように
 火が飛び散るのが真実であるように
 春が花盛りなのが真実であるように
 僕が巻き付けられて君を離さないように感じたのも
 真実なのだ。
 僕が君を愛するように、君も僕を愛する。
 君が僕を愛するように、君のことを僕も愛する。

Die Sonne mag verscheinen,
Die Wolke nicht mehr weinen,
[Das Feuer]1 mag versprüh'n,
Der Frühling [mag verblüh'n;]2
Wir wollen uns umwinden
Und immer so empfinden:
Du liebst mich, wie ich dich,
Dich lieb' ich, wie du mich.
 太陽は輝かないかもしれず
 雲はもう泣かないかもしれず
 火は飛び散らないかもしれず
 春は花が散ってしまうかもしれない。
 僕らは巻き付いて
 いつもこう感じていたい。
 僕が君を愛するように、君も僕を愛する。
 君が僕を愛するように、君のことを僕も愛する。

1 Rückert: die Flamme
2 Rückert: nicht mehr blühn!

詩:Friedrich Rückert (1788-1866), no title, appears in Lyrische Gedichte, in 3. Liebesfrühling, in 1. Erster Strauß. Erwacht, no. 13
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "So wahr die Sonne scheinet", 1878

作曲:1878年2月8日(金), Wien

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ヴォルフは1878年2月8日にリュッケルトのテキストにはじめて作曲します。その詩「太陽が輝くのが真実であるように(So wahr die Sonne scheinet)」には、シューマンがすでに二重唱曲、四重唱曲として2回作曲していました。2年前にはヴォルフはハイネの詩によるシューマンの歌曲と同じテキストに作曲しており、シューマンの歌曲に挑戦しようという野心があったのかもしれません。ヴォルフはリュッケルトの詩による歌曲を同じ1878年に2曲作曲します(うち1曲は断片)が、その後、リュッケルトの詩に作曲することはありませんでした。また、シューベルトの5つのリュッケルト歌曲とテキストの選択が全く重ならないのは興味深いところです。

このヴォルフの歌曲は、2節の有節形式で作曲されています。十六分音符のピアノにのって軽快に進み、あっという間に終わってしまいます。歌声部は最初のうち下行するフレーズと上行するフレーズが交互にあらわれ、途中から上下する旋律になり、歌い終わりは主音にならないまま、ピアノ後奏が引き継いで主和音で締めくくります。アンコールピースにうってつけの魅力的な作品だと思いますが、今のところ正規のスタジオ録音は1種類(ドゥ・ラン&カイノホによるStone Records盤)しかないようです。

2/4拍子
変イ長調(As-dur)
Etwas lebhaft (いくぶん生き生きと)

●[Wolf: So wahr die Sonne scheinet] ("So wahr die Sonne scheinet"は55:55まで進めてからご覧ください)
WolfZWölf vol 10「初期歌曲集」
林田明子(S), 松川儒(P)
Akiko Hayashida(S), Manabu Matsukawa(P)

Channel名:tan t.(オリジナルのリンク先はこちら)
ヴォルフ歌曲全曲演奏会「シリーズⅩ」2006年9月26日 浜離宮朝日ホール

●[Hugo Wolf:]So wahr die Sonne scheinet
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●【参考】ローベルト・シューマン:太陽が輝くのが真実であるように Op. 37/12(『愛の春からの詩』より)(二重唱曲)
[Robert Schumann:] Duette: So wahr die Sonne scheinet op. 37/12
ユリア・ヴァラディ(S), ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), コルト・ガーベン(P)
Julia Varady(S), Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Cord Garben(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
録音:8 December 1977, Haus des Rundfunks, Berlin

●【参考】ローベルト・シューマン:太陽が輝くのが真実であるように Op. 101/8(『ミンネシュピール(愛の戯れ)』より)(四重唱曲)
[Robert Schumann:] Minnespiel, Op. 101: No. 8, Quartett. "So wahr die Sonne scheinet"
エッダ・モーザー(S), ハンナ・シュヴァルツ(CA), ニコライ・ゲッダ(T), ヴァルター・ベリー(BS), エリク・ヴェルバ(P)
Edda Moser(S), Hanna Schwarz(CA), Nicolai Gedda(T), Walter Berry(BS), Erik Werba(P)

Channel名:ヴァルター・ベリー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder III (1875-1878)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

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ヴォルフ:旅の歌(Wanderlied)

Wanderlied
 旅の歌

Es segeln die Wolken,
Weiß niemand wohin?
Die Lüfte, sie rauschen,
[Wohin wohl, wohin?]1
 雲は流れるが、
 どこへ向かうか誰も知らないのか?
 風はざわめく、
 どこへ、どこへと?

Sie wandern zusammen,
Sie kommen und flieh'n,
Mag keiner mir künden,
Wohin wohl, wohin?
 雲と風は一緒に旅し、
 やって来ては逃げて行く。
 私に知らせるものはいないのか、
 どこへ、どこへ行くのかを?

So zieh' ich ins Leben
Mit fröhlichem Sinn,
Doch frage mich niemand,
Wohin wohl, wohin?
 こうして私は人生を
 楽しく旅している。
 だが私に尋ねるものは誰もいないのか、
 どこへ、どこへ行くのかと。

Noch duften die Blüten,
Noch [locket]2 das Grün,
Glück auf zu dem Wandern,
Weiß selbst nicht wohin!
 まだ花は香りを放ち、
 まだ緑は誘ってくる、
 道中無事でありますように、
 自分でもどこへ行くのか分からない! 

1 Brentano: Wer sagt mir wohin?
2 Brentano: lacht mir

詩:Fritz Brentano (1840-1914), no title
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Wanderlied (Aus einem alten Liederbuche)", 1877

作曲:1877年6月14-15日, Windischgraz

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ヴォルフは、レーナウの詩による歌曲「~に寄せて(An ***)」作曲の約1か月後、父親が書き写した古い歌の本に掲載されていた作者不詳の詩による「朝露(Morgentau)」に作曲しました(1877年6月6日~19日)。そして、この「朝露」はヴォルフが最初に出版した歌曲集『女声のための6つの歌(Sechs Lieder für eine Frauenstimme」』の第1曲に置かれることになります。

この「朝露」を作曲しているさなかの6月14~15日にかけて、同じく父親の古い歌の本から作曲したのが「旅の歌(Wanderlied)」です。「旅の歌」については、現在ではフリッツ・ブレンターノ(Fritz Brentano)の詩であることが判明しています。

風や雲は流れていくが、どこへ行くのか誰も教えてくれない。私も人生を旅しているが、どこへ行くのか聞いてくれる者はいないのか?花や緑はかぐわしく誘ってくるが、旅を続けよう。自分でもどこへ向かっているのか分からないという内容です。

ヴォルフの音楽は連続した詩の内容にかかわらず、A-B-A'-B'の形をとり軽快に進みます。ピアノ前奏・間奏が両手でユニゾンを奏でてAとA'を導き、歌は基本的に♩.♩♪のリズムで穏やかに歌われます。疑問形の語尾は忠実に音程を高くして、ピアノの余韻に引き継ぎます。
BとB'は低音で悶々として高音にあがるやいなやまた低音に降りてきます。ピアノの右手と左手のリズムのずれもあり、旅することの一瞬の迷いをあらわしているかのようです。Bの後半は再び高音主体で、詩の最後の2行を繰り返し、主音で気持ちよく締めくくります。短い作品ですが、もっと演奏される価値のある曲ではないかと思います。

Lieder aus der Jugendzeit (herausgegeben von F. Foll: Bote & Bock, Berlin, 1900)
Wanderlied 

6/8拍子
ト長調(G-dur)
Frisch (生き生きと)

●[Wolf: Wanderlied] ("Wanderlied"は20:51まで進めてからご覧ください。この動画の他の初期歌曲も貴重な映像ですので、余裕がありましたらぜひご覧ください!)
WolfZWölf vol 10「初期歌曲集」
太田直樹(BR), 松川儒(P)
Naoki Ota(BR), Manabu Matsukawa(P)

Channel名:tan t.(オリジナルのリンク先はこちら)
ヴォルフ歌曲全曲演奏会「シリーズⅩ」2006年9月26日 浜離宮朝日ホール

●[Wolf:] Wanderlied
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

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(参考)

The LiederNet Archive

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder I (1877/78)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

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ヴォルフ:~に寄せて(An ***)

An ***
 ***に寄せて

O wag' es nicht, mit mir zu scherzen,
Zum Scherze schloß ich keinen Bund;
O spiele nicht mit meinem Herzen;
Weißt du noch nicht, wie sehr es wund?
 おお、私をからかわないでくれ、
 ひやかしで契りを結んだのではない。
 おお、私の心をもてあそばないでおくれ、
 どれほど傷ついたことか君にはまだ分からないのか?

Weil ich so tief für dich entbrannte,
Weil ich mich dir gezeigt so weich,
Dein Herz die süße Heimat nannte,
Und deinen Blick mein Himmelreich:
 私はこれほど深く君に燃え上がったので、
 君にこれほど自分の弱さを見せたので、
 君の心を「かわいい故郷」と呼び、
 君のまなざしを「私の天国」と呼んだのだ。

O rüttle nicht den Stolz vom Schlummer,
Der süßer Heimat sich entreißt,
Dem Himmel, mit verschwiegnem Kummer,
Auf immerdar den Rücken weist.
 おお、眠っている誇りを揺り起こさないでくれ、
 それは「かわいい故郷」から身を振りほどき
 苦しみを秘めたまま
 永遠に「天国」に背を向けているのだ。

詩:Nikolaus Lenau (1802-1850), "An *", appears in Gedichte, in 4. Viertes Buch, in Liebesklänge
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "An ...", 1877 [ voice and piano ]

作曲:1877年4月27日-5月8日, Windischgraz

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マティソンの詩による歌曲「追憶(Andenken)」の作曲から2週間ほど後、ヴォルフは再びレーナウの詩に戻り、「***に寄せて(An ***)」という歌曲を作曲します。

タイトルに伏字(*)が使われていることが気になりますが、レーナウが誰を想定していたのか何か分かったら追記したいと思います(AIに聞くとレーナウの当時の恋人の名前を答えてくれるのですが、エビデンスが見つからないのでここに書くのは今は控えますね)。

このテキストの男女、愛情の温度差が相当大きいように思えます。男女を特定する言葉は詩の中にありませんが、おそらく男性がこのテキストの主人公でしょう。
主人公は女性が彼の心を「もてあそぶ(spiele)」といって非難します。
どのようにもてあそんだのか具体的な記述はありませんが、「どれほど傷ついたことか(wie sehr es wund)」と言っていることから、主人公のプライドはずたずたにされたのでしょう。

第2連で主人公の彼女に対する愛情の深さを示すエピソードが歌われます。君にこれほど燃え上がり、自分の弱いところもさらけだしたからこそ、君の心を「かわいい故郷(die süße Heimat)」と呼んだし、君のまなざしを「私の天国(mein Himmelreich)」と呼んだんだ。それなのに...という恨み節なのでしょう。愛する二人だけの世界に入り込んでしまっていますね。

第3連で再び現実に戻って、心の奥底に眠らせておいた「誇り=プライド」を起こさないでほしいと彼女に頼みます。
プライドが目を覚ますと、「かわいい故郷=君の心」から「身を振りほどき」、「天国=君のまなざし」から「永遠に背を向ける」ことになるからです。

第1連と第3連が恋人のした仕打ちに対する主人公からの非難、まんなかの第2連は愛したからこそプライドを捨てて君のことを「故郷」だの「天国」だのとのろけたのだよと訴えます。

ヴォルフがA-B-A'の三部形式で作曲したのは、テキストの内容に寄り添っていることが分かります。第1連と第3連での各フレーズの歌い始めが休符で始まるのは主人公のためらいを表しているかのようです。
一方第2連は強起(拍のはじめ)から歌い始めていて、こんなに愛していたんだという思いを強くぶつけて、それが情熱的な第2連後のピアノ間奏にも受け継がれます。ただ、この第2連もピアノはシンコペーションを貫き、心臓がバクバク打っているような印象を受けます。
ヴォルフがこのレーナウのテキストに深く感情移入して作曲したことがうかがえると思います。
フィッシャー=ディースカウは2度にわたるヴォルフ全集だけでなく、演奏活動晩年にヴォルフの初期作品をまとめて録音した時にもこの曲を一度も歌いませんでした。曲としてはよく出来ていると思うのですが、センチメンタルに過ぎると思ったのでしょうか。

Lieder aus der Jugendzeit: Herausgegeben von F. Foll: Berlin: Bote & Bock, 1900

第1連(A)
An-1 

第2連(B)
An-2 

第2連の後の情熱的なピアノ間奏
An-2_20260125155801 

第3連(A')
An-3 

2/4拍子
ニ短調(d-moll)
Langsam und ausdrucksvoll (ゆっくりと表情豊かに)

●[Hugo Wolf:] An* * *
ニコ・ファン・デル・メール(T), ディド・クーニン(P)
Nico van der Meel(T), Dido Keuning(P)

Channel名:ダーモン…ニコ・ヴァン・デア・メール(テノール) - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
録音:January 1996, Utrecht

●Wolf: Lieder aus der Jugendzeit: No. 1, An ***
シュテファン・ゲンツ(BR), ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Stephan Genz(BR), Roger Vignoles(P)

Channel名:ロジェ・ヴィニョールズ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
録音:18-22 February 2002, Tonstudio Teije van Geest, Sandhausen, Germany

●[Hugo Wolf:] An* (O wag es nicht)
ベンジャミン・ヒューレット(T), ショルト・カイノホ(P)
Benjamin Hulett(T), Sholto Kynoch(P)

Channel名:ベンジャミン・ヒューレット - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:13 & 15 October 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●[Hugo Wolf:] An (O wag' es nicht)
エネアス・フム(BR), ユディト・ポルガル(P)
Äneas Humm(BR), Judit Polgar(P)

Channel名:Äneas Humm - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考:アルベルト・ネポムセーノ(Alberto Nepomuceno: 1864-1920)作曲】O wag' es nicht
Erika Machado(MS), Regina Barros(P)

Channel名:Alberto Nepomuceno além da língua portuguesa(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Gedichte / von Nicolaus Lenau / Stuttgart / Verlag der J. G. Cotta'schen Buchhandlung / 1879
("An *"はP.189)

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder I (1877/78)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

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ヴォルフ:追憶(Andenken)

Andenken
 追憶

1:
Ich denke dein,
[Wenn]1 durch den Hain
Der Nachtigallen
Akkorde schallen!
[Wann]2 denkst du mein?
 ぼくは君のことを考える、
 林中を
 さよなきどりの
 和音が響きわたるときに!
 君はいつぼくのことを考えるのだろう?

2:
Ich denke dein
Im Dämmerschein
Der Abendhelle
Am Schattenquelle!
Wo denkst du mein?
 ぼくは君のことを考える、
 夕映えの光で
 薄暗くなった
 日陰の泉のほとりで!
 君はどこでぼくのことを考えるのだろう?

3:
Ich denke dein
Mit süßer Pein,
Mit bangem Sehnen
Und heißen Tränen!
Wie denkst du mein?
 ぼくは君のことを考える、
 甘い痛みを伴って、
 不安なまま憧れを抱いて、
 熱い涙を流しつつ!
 君はどんなふうにぼくのことを考えるのだろう?

4:
[O denke mein,]3
Bis zum Verein
Auf besserm Sterne
In jeder Ferne
Denk ich nur dein!
 おお、ぼくのことを考えておくれ、
 もっと素敵な星で
 一緒になるときまで!
 遠くのどこにいても
 ぼくはただ君のことだけを考えるよ!

1 Matthisson (editions until 1803): "Wann"
2 Matthisson (editions after 1803): "Wenn"
3 Matthisson (Flora 1802): "Ich denke dein"

詩:Friedrich von Matthisson (1761-1831), "Andenken", written 1792-93, first published 1802
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Andenken", 1876

作曲:1877年4月23/25日, Windischgraz

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テオドア・ケルナー(Theodor Körner)の詩による「セレナード(Ständchen)」の後、17歳のヴォルフはフリードリヒ・フォン・マティソン(Friedrich von Matthisson)の詩「追憶(Andenken)」に作曲します。

この詩にはベートーヴェン(Andenken, WoO. 136)やシューベルト(Andenken, D 99)、ヴェーバー(Ich denke dein!, Op. 66-3)も作曲しています。以前同じテキストによるベートーヴェンの歌曲の記事を書いていますので、興味のある方はこちらのリンク先からご覧ください(リンク先でベートーヴェン、シューベルトなどの音源も共有しています)。

ヴォルフによる歌曲は、変形有節形式と考えられます。ピアノの右手は基本的に8分音符の和音を刻み、左手はバス音の中に単音の旋律を歌わせるところもあり、右手と共に歌声部とポリフォニックな関係で進んでいく箇所が印象的です。1連と2連の歌声部は同じメロディで始まりますが、2連は少しずつ変化させていき、"Wo denkst du mein?"の前に休符を入れて、主人公のとまどいを暗示します。2連の締めくくりの"Wo denkst du mein?"のメロディーを第3連の歌声部の冒頭にほぼそのまま持ってきて気持ちの連続性を保持したうえで、徐々に高揚し、"hei-ßen(熱い)"の音価を引き延ばして盛り上がります。最終連の歌声部("O denke mein(おお、ぼくのことを考えておくれ)")は長い音価と動きの少ないメロディーで始まり、主人公が真剣に恋人に心情を吐露しようとしているかのようです。徐々に高揚し、最終行の"nur dein(ただ君のことだけを)"を繰り返して高揚したままピアノ後奏に引き継ぎます。後奏は「情熱的に動いて(leidenschaftlich bewegt)」、「非常に表情豊かに(sehr ausdrucksvoll)」と指示があり、ひとしきり盛り上がった後、最終連最初の歌声部のメロディーを左手に歌わせて(「表情をもって(mit Ausdruck)」)徐々に静まって終わります。

個人的にとても良く出来た作品だと思います。初期の作品にもかかわらず、20世紀初頭から現在にいたるまでいくつかの録音が残されているのもその出来栄えの良さと魅力ゆえではないかと思います。

Helmut Schultz: Nachgelassene Werke, Erste Folge (Lieder mit Klavierbegleitung): Heft 1: Leipzig: Musikwissenschaftlicher Verlag, 1936

1連
1_20260111194101 

2連
21_20260111194101 
22_20260111194201 

3連
31_20260111194201 

4連
41_20260111194201 
42_20260111194201 

9/8拍子
ホ長調(E-dur)
Etwas bewegt (いくぶん活発に)

●Wolf: Andenken
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Andenken
ソールヴェイ・ファリンゲル(S), トマス・シュバック(P)
Solveig Faringer(S), Thomas Schuback(P)

Channel名:Solveig Faringer - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Andenken
メアリー・ベヴァン(S), ショルト・カイノホ(P)
Mary Bevan(S), Sholto Kynoch(P)

Channel名:メアリー・ビーヴァン - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●[Hugo Wolf:] Andenken
ベンヤミン・アップル(BR), ジェイムズ・ベイリュー(P)
Benjamin Appl(BR), James Baillieu(P)

Channel名:Benjamin Appl - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Andenken
カール・エルプ(T), ブルーノ・ザイドラー=ヴィンクラー(P)
Karl Erb(T), Bruno Seidler-Winkler(P)

Channel名:ブルー・ザイトラー・ヴィンクラー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

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ヴォルフ:セレナード(Wolf: Ständchen "Alles wiegt die stille Nacht") (詩:Theodor Körner)

Ständchen
 セレナード

Alles wiegt die stille Nacht
Tief in süßen Schlummer;
Nur der Liebe Sehnsucht wacht
Und der Liebe Kummer.
Mich umschleichen bandenfrei
Nächtliche Gespenster;
Doch ich harre still und treu
Unter deinem Fenster.
 あらゆるものを静かな夜は揺り動かす、
 深く、甘美な眠りへと。
 目覚めているのはただ愛の憧れと
 愛の苦しみだけ。
 束縛を解かれて私の周りを取り囲むのは
 夜の幽霊たち。
 だが僕は静かに忠実に
 きみの窓の下で待ちわびている。

Holdes Mädchen, hörst du mich?
Willst du länger säumen?
Oder wiegt der Schlummer dich
Schon in süßen Träumen?
Nein, du bist gewiß noch wach;
Hinter Fensters Gittern
Seh ich ja im Schlafgemach
Noch das Lämpchen zittern.
 いとしい娘よ、聞こえるかい?
 もっと長いことぐずぐずしていたいのかい?
 あるいは眠りが
 甘い夢の中へともうきみを揺すっているのかい?
 いや、きみはきっとまだ起きている。
 窓格子の後ろの
 寝室で
 まだランプがちらちらしているのが見える。

Ach, so blicke, süßes Kind,
Aus dem Fenster nieder,
Leise wie der Abendwind
Flüstern meine Lieder;
Doch verständlich sollen sie
Meine Sehnsucht klagen
Und mit sanfter Harmonie
Dir: »Ich liebe« sagen.
 ああ、かわいい子、
 窓から下を見ておくれ。
 夕暮れの風のようにかすかな声で
 僕の歌がささやいているんだ。
 でも、聞き取れるように、歌に
 僕の憧れを嘆かせ
 そして穏やかなハーモニーで
 きみに「愛しているよ」と言わせるんだ。

Was die treue Liebe spricht,
Wird die Liebe hören.
Aber länger darf ich nicht
Deine Ruhe stören.
Schlummre, bis der Tag erwacht,
In dem warmen Stübchen;
Drum, feins Liebchen, gute Nacht,
Gute Nacht, feins Liebchen!
 忠実な愛が語ることを
 恋人は聞くだろう。
 だが、これ以上
 きみの憩いを邪魔するわけにはいかない。
 夜が明けるまでおやすみ、
 暖かい部屋で。
 では素敵な恋人よ、おやすみ、
 おやすみ、素敵な恋人!

詩:(Karl) Theodor Körner (1791-1813)
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Ständchen", 1877

作曲:1877年3月5日(4月12日), Windischgraz

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レーナウの3つの詩による「夕べの情景(Abendbilder)」の作曲後、一週間余り経ち、ヴォルフは次にテオドア・ケルナーの詩による「セレナード(Ständchen)」を作曲します。ケルナーは21年の短い生涯の間に多くの作品を残し、同時代を生きたシューベルトやヴェーバーは多数の歌曲・合唱曲を作りましたが、ヴォルフによるケルナー歌曲はこの1曲のみです。

周りが寝静まった頃、恋人の窓の下にやってきた主人公は、恋人がまだ起きているのかどうかを探ります。寝室にまだランプがちらちらと灯っているのを見て、「まだ起きている」と確信します。
そこで主人公は「窓から下を見て」もらえるように、恋人に「僕の憧れ」を「嘆」くセレナードを歌います。「恋人は聞」いているだろうと思う主人公ですが、「これ以上きみの憩いを邪魔するわけにはいかない」ので、「夜が明けるまでおやすみ」と伝えます。

周りが寝静まっている中、主人公の「愛の憧れ」と「愛の苦しみ」だけが目覚めています。やむにやまれぬ思いで恋人の家の窓の下で待っている主人公の期待と不安のないまぜになった心境を17歳のヴォルフが生き生きとした描写で表現しています。

2小節の穏やかな前奏に導かれて歌が始まりますが、"Tief in süßen Schlummer"の"Schlum-"まで半音階進行で歌われ、後のヴォルフのトレードマークともいえる半音階進行がこのころに作られたいくつかの作品で徐々に使用されるようになったのが分かります。
Wolf_standchen_1 

夜の幽霊たちに回りを取り囲まれると歌われた後に、急き立てるようなシンコペーションの間奏が続き(Schnell:速く)、すぐに我に返ったかのように元のテンポに戻ります(1tes Zeitmaß:最初のテンポで)。
Wolf_standchen_2 

「僕は静かに忠実に/きみの窓の下で待ちわびている」と歌われた後は子守歌のような優しいピアノ間奏が続きます(Mit Gefühl vorzutragen, ruhig bewegt:感情をこめて演奏する、落ち着いた動きをもって)。
Wolf_standchen_3 

その穏やかな間奏の音楽のまま、第2連「いとしい娘よ、聞こえるかい?」が歌われます。
「眠りが/甘い夢の中へともうきみを揺すっているのかい?」と歌われた後、ピアノの間奏の右手が高いフレーズと低いフレーズを交互に響かせ、あたかも2人の恋人同士の会話を主人公が妄想しているような印象を受けます。
Wolf_standchen_4 

その後、「いや、きみはきっとまだ起きている」と歌われる「いや(Nein)」の直前にフォルテの和音となり、歌声部はレチタティーヴォ風に語られます。
Wolf_standchen_5 

「寝室で/まだランプがちらちらしているのが見える」と歌われた後、情熱的なピアノ間奏が続き(immer leidenschaftlicher:ますます情熱的に)、恋人が起きていることを確信して高揚している主人公の気持ちが描かれます。
Wolf_standchen_6 

「ああ、かわいい子、/窓から下を見ておくれ」と恋人に語りかけた主人公は「夕暮れの風のようにかすかな声で/僕の歌がささやいているんだ」と歌い、高音域の十六分音符の分散和音の連続で「夕暮れの風」を模しているように思われます。
さらに「そして穏やかなハーモニーで」の箇所で再び十六分音符の分散和音があらわれ、美しい「ハーモニー」が聞かれます。
Wolf_standchen_7 

ヴォルフは「きみに「愛しているよ」と言わせるんだ」の「愛している(lie-be)」の音価を伸ばして強調し、その後のピアノ間奏もアクセントの連続で高揚感を出しています。
Wolf_standchen_8 

最終節のはじめ「忠実な愛が語ることを/恋人は聞くだろう」まで力強い響きが続きますが、その後恋人の眠りを妨げないようにおやすみと言う箇所は優しく甘美な響きに戻り、おやすみ(Gute Nacht)を何度か繰り返して名残惜しそうに曲は終わります。
Wolf_standchen_9 

3/4拍子
ヘ長調(F-dur)
Sehr gehalten (非常に音を保って)

●Wolf: Ständchen "Alles wiegt die stille Nacht"
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Standchen
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

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(参考)

The LiederNet Archive

Theodor Körner (Schriftsteller) (Wikipedia: 独語)

Theodor Körners sämmtliche Werke / Erster Band / Siebente Auflage / Berlin / G. Grote'sche Verlagsbuchhandlung / 1872 ("Ständchen"はP. 111)

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

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ヴォルフ:夕暮れの情景-N.レーナウによる3つの頌詩(Wolf: Abendbilder - 3 Oden von N. Lenau)

Abendbilder - 3 Oden von N. Lenau
 夕暮れの情景-N.レーナウによる3つの頌詩

1. Friedlicher Abend senkt sich aufs Gefilde
 平穏な夕暮れが広野に垂れ込め

Friedlicher Abend senkt sich aufs Gefilde;
Sanft entschlummert Natur, um ihre Züge
Schwebt der Dämmrung zarte Verhüllung, und sie
      Lächelt, die holde;
 平穏な夕暮れが広野に垂れ込め
 穏やかに自然は眠り込む。自然の連なりのまわりで
 たそがれの柔らかいベールが漂い流れ
 愛らしい女(ひと)は微笑みかける。

Lächelt, ein schlummernd Kind in Vaters Armen,
Der voll Liebe zu ihr sich neigt; sein göttlich
Auge weilt auf ihr, und es weht sein Odem
      Über ihr Antlitz.
 父親の腕の中でまどろむ子供のように微笑みかけ、
 父は、彼女への愛にあふれて身をかがめ、その神々しい
 瞳は彼女を見つめたまま、
 その顔に息を吹きかける。

詩:Nikolaus Lenau (1802-1850), no title, appears in Gedichte, in 1. Erstes Buch, in Oden, in Abendbilder, no. 1
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Friedlicher Abend", from Abendbilder, no. 1

2. Schon zerfließt das ferne Gebirg
 雲のかかった遠くの山脈はもう

Schon zerfließt das ferne Gebirg mit Wolken
In ein Meer; den Wogen entsteigt der Mond, er
Grüßt die Flur, entgegen ihm grüßt das schönste
      Lied Philomelens
 雲のかかった遠くの山脈はもう
 海へと溶けていく。波間から月がのぼり、月は
 野原に挨拶する。その月に向かって、美しい
 さよなきどりの歌が挨拶を送る、

Aus dem Blütenstrauche, der um das Plätzchen
Zarter Liebe heimlichend sich verschlinget:
Mirzi horcht am Busen des Jünglings ihrem
      Zaubergeflöte.
 優しい愛を営む場所のまわりで
 ひそかに絡み合う花咲く茂みから。
 ミルツィは、若者の胸に抱かれながらさよなきどりの
 魔法の笛に聞き耳を立てる。

Dort am Hügel weiden die Schafe beider
Traulichen Gemenges in einer Herde,
Ihre Glöcklein stimmen so lieblich ein zu
      Frohen Akkorden.
 あちらの丘では
 ねんごろに一体となった二人が連れてきた羊たちが、一つの群れをなして草を食む。
 羊たちの首のベルは
 朗らかな和音となり、心地よく調和する。

詩:Nikolaus Lenau (1802-1850), "Abendbild", appears in Gedichte, in 6. Sechstes Buch, in Erste Gedichte
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Schon zerfließt das ferne Gebirg", from Abendbilder, no. 2

3. Stille wird's im Walde
 森の中は静まりかえる

Stille wird's im Walde; die lieben kleinen
Sänger prüfen schaukelnd den Ast, der durch die
Nacht dem neuen Fluge sie trägt, den neuen
      Liedern entgegen.
 森の中は静まりかえる。かわいい小さな
 歌い手たちが枝を揺すって吟味している、
 この枝が夜の間、新たに飛び立ったり
 歌ったりするのに耐えられるかどうかを。

Bald versinkt die Sonne; des Waldes Riesen
Heben höher sich in die Lüfte, um noch
Mit des Abends flüchtigen Rosen sich ihr
      Haupt zu bekränzen.
 まもなく日が沈む。森の巨人たちは
 空へさらに高く聳え立つ、
 わずかな間の夕焼けの薔薇色で、
 まだ頭に冠を飾ろうとして。

Schon verstummt die Matte; den satten Rindern
Selten nur enthallt das Geglock am Halse,
Und es pflückt der wählende Zahn nur lässig
      Dunklere Gräser.
 すでに草地は沈黙し、満腹な牛たちは
 めったに首のベルを鳴らさない。
 そしてえり好みする歯は無造作に
 暗くなった草を摘む。

Und dort blickt der schuldlose Hirt der Sonne
Sinnend nach; dem Sinnenden jetzt entfallen
Flöt und Stab, es falten die Hände sich zum
      Stillen Gebete.
 そして無垢な羊飼いは
 物思いに耽りながら、太陽が沈むのを目で追う。物思う者の手から今
 笛と杖がすべり落ち、両手を組み合わせる、
 静かに祈りを捧げるために。

詩:Nikolaus Lenau (1802-1850), no title, appears in Gedichte, in 1. Erstes Buch, in Oden, in Abendbilder, no. 2
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Stille wird's im Walde", from Abendbilder, no. 3

作曲:1877年1月4日(木)夜10時着手、
   1877年2月24日午前10時完了

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ベートーヴェンはかつて歌曲集『遥かな恋人に寄せて(An die ferne Geliebte, Op. 98)』を作曲した際、ヤイテレスの6編の詩を1編ずつ独立した曲にせず、それぞれの曲をピアノ間奏でつないで途切れることのない1つの作品としました。その後、シューベルト『美しい水車屋の娘』『冬の旅』、シューマン『リーダークライス』『詩人の恋』などの多くの歌曲集が誕生しましたが、それらは『遥かな恋人に寄せて』とは異なり、1曲ずつが独立した作品としての歌曲集でした。
フーゴー・ヴォルフも、後に『アイヒェンドルフ詩集』『メーリケ詩集』『ゲーテ詩集』『ケラー詩集』『ミケランジェロ詩集』などの詩人ごとにまとめた歌曲集(連作歌曲集ではありませんが)を作曲し、出版しましたが、どれも1曲ずつ独立した曲の集合体でした。
しかし、ヴォルフが17歳の時(1877年)に作曲した『夕暮れの情景(Abendbilder)』は、ニコラウス・レーナウが「夕暮れの情景」のタイトルのもとに3つ(I, II, III)に分けた詩をピアノ間奏でつないで1つの作品にしたもので、ベートーヴェンの『遥かな恋人に寄せて』と同じ手法をとった珍しい試みといえると思います。『N.レーナウによる3つの頌詩(3 Oden von N. Lenau)』という副題も付けられていて、いわば3曲からなる歌曲集ととらえることも可能だと思います。

ピアノ前奏の「ソーミーファーラソードー」が曲全体を統一するモティーフとしてあちこちに現れ、最終的にピアノ後奏でも繰り返されます。3つの詩がこのモティーフによって1つの作品として結びつきます。ただ、歌声部にはこのモティーフはそのままの形では使われず、もっぱらピアノパートにのみ現れます。

Abendbilder-motiv-1 

Abendbilder-motiv-2 

Abendbilder-motiv-3new 

Abendbilder-motiv-4 

Abendbilder-motiv-5 

Abendbilder-motiv-6 

歌声部は概してピアノパートの対旋律のようなフレーズで、美しい旋律というよりは語りの要素が強まっているように感じられます。

歌、ピアノ共にテキストの展開に沿って通作的に進んでいきます。
第2曲の最後に羊たちが草を食みながらカウベルの音が朗らかに調和すると歌った後、第3曲との間のつなぎのピアノ間奏は細かい音価でかなりドラマティックに進行します。カウベルの響きというよりは第3曲の静かな情景との対比を際立たせる為にあえて派手な間奏にしたのではないかと想像します。

私はこの小さな歌曲集で描かれている夕暮れ時の敬虔な祈りの光景を聞くと、ミレーの「晩鐘」を思い出します(レーナウやヴォルフが意識していたかどうかは別として)。最終節の羊飼いは、日が沈もうとする時間帯に、一日の活動を無事終えることの出来た感謝の気持ちを祈っているのでしょうか。

【第1曲冒頭】
Abendbilder-1 

【第2曲冒頭】
Abendbilder-2 

【第3曲冒頭】
Abendbilder-3 

【第1曲:Friedlicher Abend senkt sich aufs Gefilde】
3/4拍子
変ニ長調(Des-dur)
Sehr langsam (非常にゆっくりと)

【第2曲:Schon zerfließt das ferne Gebirg】
3/4拍子
イ短調(a-moll)
langsam, mit freiem Vortrag (ゆっくりと、自由に演奏して)

【第3曲:Stille wird's im Walde】
3/4拍子 - C (4/4拍子) - 2/4拍子 - 3/4拍子
変ホ長調(Es-dur)→変ニ長調(Des-dur)
Langsam (ゆっくりと)

●Wolf: Abendbilder
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
0:00- 第1曲
2:32- 第2曲
5:11- 第3曲

●Wolf: Abendbilder
シュテファン・ゲンツ(BR), ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Stephan Genz(BR), Roger Vignoles(P)

Channel名:ロジェ・ヴィニョールズ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Abendbilder (Friedlicher abend)
マーカス・ファーンズワース(BR), ショルト・カイノホ(P)
Marcus Farnsworth(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:マルクス・ファーンズワース - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:13 & 15 October 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●Hugo Wolf: Abendbilder. Drei Oden - Matthias Winckhler (Bariton) & Ammiel Bushakevitz (Klavier)
マティアス・ヴィンクラー(BR), アミエル・ブッシャケヴィツ(P)
Matthias Winckhler(BR), Ammiel Bushakevitz(P)

Channel名:Internationale Hugo-Wolf-Akademie(オリジナルのリンク先はこちら)

●ピアノパートのみの演奏
Hugo Wolf: Abendbilder, Piano Accompaniment

Channel名:Mario L. S. Barbosa(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考:夕暮れの情景1のテキストによる】ファニー・ヘンゼル=メンデルスゾーン作曲:夕暮れの情景 Op. 10, No. 3
[Fanny Hensel-Mendelssohn:] 5 Lieder, Op. 10: No. 3. Abendbild
ドロテア・クラクストン(S), バベッテ・ドルン(P)
Dorothea Craxton(S), Babette Dorn(P)

Channel名:Dorothea Craxton - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Gedichte / von / Nicolaus Lenau. / Stuttgart und Tübingen, / Verlag der J. G. Cotta'schen Buchhandlung. / 1832.
Abendbilder: 1
Abendbilder: 2
Abendbilder: 3

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

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ヴォルフ:ぼくがきみの瞳を見つめると(Wolf: Wenn ich in deine Augen seh)

Wenn ich in deine Augen seh
 ぼくがきみの瞳を見つめると

Wenn ich in deine Augen seh,
So schwindet all mein Leid und Weh;
Doch wenn ich küsse deinen Mund,
So werd ich ganz und gar gesund.
 ぼくがきみの瞳を見つめると、
 ぼくの悲しみや痛みはみんな消えてしまう。
 でもぼくがきみの口にキスすると、
 ぼくはすっかり健康になってしまう。

Wenn ich mich lehn an deine Brust,
Kommt's über mich wie Himmelslust;
Doch wenn du sprichst: ich liebe dich!
[Dann]1 muß ich weinen bitterlich.
 ぼくはきみの胸に寄りかかっていると、
 天上の至福を味わっているような気分になる。
 でもきみが「好きです!」と言おうものなら、
 ぼくは激しく泣かずにはいられない。

1 Heine: So

詩:Heinrich Heine (1797-1856), no title, appears in Buch der Lieder, in Lyrisches Intermezzo, no. 4
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Wenn ich in deine Augen seh'"

作曲:1876年12月21日(木)

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前回の「あなたは花のよう(Du bist wie eine Blume)」の3日後に、ヴォルフはハイネの詩集「歌の本(Buch der Lieder)」の中の「抒情的間奏曲(Lyrisches Intermezzo)」から、4篇目に置かれた「ぼくがきみの瞳を見つめると(Wenn ich in deine Augen seh)」の詩に作曲しました。

この詩もシューマンの作曲によって有名で、シューマンの歌曲集『詩人の恋(Dichterliebe, Op. 48)』の4曲目に置かれています。

ヴォルフは当然シューマンの『詩人の恋』を知っていたでしょう。第1連第4行の"So werd ich ganz und gar gesund."の歌声部の上下の音程の動きは同じです(多少音価を伸縮していますが)。

●シューマン6小節目~"So werd ich ganz und gar gesund"
Schumann-so-werd-ich-ganz 

●ヴォルフ10小節目~"So werd ich ganz und gar gesund"
Wolf-so-werd-ich-ganz-1 
Wolf-so-werd-ich-ganz-2_20251108173201  

4小節からなる前奏の最高音は歌声部の冒頭部分に由来しています。
Wolf-wenn-ich-in-deine-augen-seh 

また、この曲では歌声部の数箇所に半音進行が見られます。後年のヴォルフのきざしが見えてきたようです。
Wolf-so-muss-ich-weinen-bitterlich 

3/4拍子
変ロ長調(B-dur)
Mäßig (中庸で)

●Wolf: Wenn ich in deine Augen seh'
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●Wolf: Lieder nach Heine - Wenn ich in deine Augen seh'
ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

Channel名:ヘルマン・プライ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●Wolf: Wenn ich in deine Augen seh'
シュテファン・ゲンツ(BR), ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Stephan Genz(BR), Roger Vignoles(P)

Channel名:ロジェ・ヴィニョールズ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Wenn ich in deine Augen seh
ウィリアム・デイズリー(BR), ショルト・カイノホ(P)
William Dazeley(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:ウィリアム・デイズリー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:14 April 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●[Hugo Wolf:] Wenn ich in deine Augen seh
エネアス・フム(BR), ユディット・ポルガル(P)
Äneas Humm(BR), Judit Polgár(P)

Channel名:Äneas Humm - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●H. Wolf - Wenn ich in deine Augen seh'
モイツァ・ヴェデルニャーク(MS), ネイツ・ラヴレンチチ(P)
Mojca Vedernjak(MS), Nejc Lavrenčič(P)

Channel名:PerArtem Zavod - Institut(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】ローベルト・シューマン(1810-1856):ぼくがきみの瞳を見つめると Op. 48, No. 4
Schumann: Dichterliebe, Op. 48: No. 4, Wenn ich in deine Augen seh'
フリッツ・ヴンダーリヒ(T), フーベルト・ギーゼン(P)
Fritz Wunderlich(T), Hubert Giesen(P)

Channel名:フリッツ・ヴンダーリヒ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】ローベルト・フランツ(1815-1892):ぼくがきみの瞳を見つめると Op. 44, No. 5
Franz: 6 Gesänge, Op. 44: V. Wenn ich in deine Augen seh'
ロビン・トリッチュラー(T), グレアム・ジョンソン(P)
Robin Tritschler(T), Graham Johnson(P)

Channel名:Robin Tritschler - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考:二重唱曲】ファニー・ヘンゼル=メンデルスゾーン(1805-1847):ぼくがきみの瞳を見つめると
[Fanny Hensel-Mendelssohn:] 3 Duette auf Texte von Heinrich Heine: I. Wenn ich in deine Augen sehe
バーバラ・ボニー(S), アンゲリカ・キルヒシュラーガー(MS), マルコム・マーティノー(P)
Barbara Bonney(S), Angelika Kirchschlager(MS), Malcolm Martineau(P)

Channel名:バーバラ・ボニー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Wenn ich in deine Augen seh’ (Wikisource)

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP - Wenn ich in deine Augen seh (Wolf, Hugo)

IMSLP - Dichterliebe, Op.48 (Schumann, Robert)

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ヴォルフ:あなたは花のよう(Wolf: Du bist wie eine Blume)

Du bist wie eine Blume
 あなたは花のよう

Du bist wie eine Blume
So hold und schön und rein;
Ich schau dich an, und Wehmut
Schleicht mir ins Herz hinein;
 あなたは花のように
 こんなにも愛らしく、美しく、清らかだ。
 ぼくはあなたを見つめる。すると悲しみが
 ぼくの心にしのびこむ。

Mir ist, als ob ich die Hände
Aufs Haupt dir legen sollt,
Betend, daß Gott dich erhalte
So rein, [so]1 schön und hold.
 まるでぼくの両手を
 きみの頭にのせているような気持ちで
 祈るのだ、神があなたを
 こんなにも清らかで、美しく、愛らしいままにしておかれますようにと。

1 Heine: "und"

詩:Heinrich Heine (1797-1856), no title, appears in Buch der Lieder, in Die Heimkehr, no. 47, first published 1825
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Du bist wie eine Blume", 1876 [ high voice and piano ]

作曲:1876年12月18日(月)

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前回の「赤い口もとの女の子(Mädchen mit dem roten Mündchen)」の翌日に、ヴォルフは同じくハイネの詩集「歌の本(Buch der Lieder)」の中の「帰郷(Heimkehr)」から、今度は47篇目に置かれた「あなたは花のよう(Du bist wie eine Blume)」の詩に作曲しました。

ヴォルフの作品は明らかにシューマンの同じ詩による有名な曲(Op. 25, No. 24)の影響のもとに作られたのでしょう。ゆったりとした和音連打のピアノパート、歌声部のリズム、休符の入れ方など、シューマンの解釈に基本的に則って作られた作品のように感じます。ただ、シューマンが第2節の冒頭2行を第1節と同じ旋律にしているのに対して、ヴォルフは異なる旋律を付け、しかも第2節冒頭はフォルテで強調しているところに彼なりの主張が見えて興味深いです。

●ヴォルフ:あなたは花のよう
Nachgelassene Werke, Erste Folge (Lieder mit Klavierbegleitung): Heft 2
Leipzig: Musikwissenschaftlicher Verlag, 1936. Plate 38. (Helmut Schultz)
Wolf-du-bist-wie-eine-blume 

●シューマン:あなたは花のよう
Robert Schumanns Werke, Serie XIII:
Für eine Singstimme, mit Begleitung des Pianoforte
Leipzig: Breitkopf & Härtel, 1879-1912. Plate R.S. 120 (Clara Schumann)
Schumann-du-bist-wie-eine-blume 

3/4拍子
変ホ長調(Es-dur)
Ruhig (穏やかに)

●[Wolf:] Du bist wie eine Blume
ウィリアム・デイズリー(BR), ショルト・カイノホ(P)
William Dazeley(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:ウィリアム・デイズリー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:14 April 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●Wolf: Du bist wie eine Blume
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●Wolf: Lieder nach Heine - Du bist wie eine Blume
ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

Channel名:ヘルマン・プライ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●Wolf: Du bist wie eine Blume
シュテファン・ゲンツ(BR), ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Stephan Genz(BR), Roger Vignoles(P)

Channel名:ロジェ・ヴィニョールズ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●Äneas Humm: Du bist wie eine Blume (Hugo Wolf)
エネアス・フム(BR), ユディット・ポルガー(P)
Äneas Humm(BR), Judit Polgar,(P)

Channel名:Rondeau Production(オリジナルのリンク先はこちら)

●Hugo Wolf: Du bist wie eine Blume–Carine Tinney (Sopran) & Markus Hadulla (Klavier), 14.04.2018
カリン・ティニー(S), マルクス・ハドゥラ(P)
Carine Tinney(S), Markus Hadulla(P)

Channel名:Internationale Hugo-Wolf-Akademie(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】ベネディクト・ラントハルティンガー(1802-1893):あなたは花のよう
[Benedict Randhartinger:] Du bist wie eine Blume
ゲオルク・ポップルツ(T), タティアナ・ドラフェナウ(P)
Georg Poplutz(T), Tatjana Dravenau(P)

Channel名:Georg Poplutz - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】ローベルト・シューマン(1810-1856):あなたは花のよう, Op. 25, No. 24
Robert Schumann - Du bist wie eine Blume; Samuel Hasselhorn and Renate Rohlfing
ザムエル・ハッセルホルン(BR), レナーテ・ロールフィング(P)
Samuel Hasselhorn(BR), Renate Rohlfing(P)

Channel名:Tina Marie Herbert(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】フランツ・リスト(1811-1886):あなたは花のよう, S. 287
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】アントン・ルビンシテイン(1829-1894):あなたは花のよう, Op. 32, No. 5
[Anton Rubinstein:] 6 Lieder Von Heine, Op. 32: No. 5 Du bist wie eine Blume
ベンヤミン・アップル(BR), ジェイムズ・ベイリュー(P)
Benjamin Appl(BR), James Baillieu(P)

Channel名:Benjamin Appl - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】チャールズ・アイヴズ(1874-1954):あなたは花のよう
Ives : "Du bist wie eine Blume"
トマス・ハンプソン(BR), アーメン・グゼリミアン(P)
Thomas Hampson(BR), Armen Guzelimian(P)

Channel名:トーマス・ハンプソン - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考:無伴奏四重唱曲】アントン・ブルックナー(1824-1896):あなたは花のよう
Anton Bruckner: Du bist wie eine Blume, WAB 64
カルムス・アンサンブル
Calmus Ensemble

Channel名:Calmus Ensemble(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Du bist wie eine Blume (Wikisource)

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP - Du bist wie eine Blume (Wolf, Hugo)

IMSLP - Myrthen, Op.25 (Schumann, Robert)

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ヴォルフ:赤いお口の女の子(Wolf: Mädchen mit dem roten Mündchen)

Mädchen mit dem roten Mündchen
 赤いお口の女の子

  Mädchen mit dem roten Mündchen,
Mit den Äuglein süß und klar,
Du mein [süßes]1, kleines Mädchen,
Deiner denk' ich immerdar.
 赤いお口の女の子、
 瞳はかわいらしく澄みきっている。
 僕のかわいい小さな女の子、
 君のことをいつも思わずにはいられないんだ。

  Lang ist heut der Winterabend,
Und ich möchte bei dir sein,
Bei dir sitzen, [bei]2 dir schwatzen,
Im vertrauten Kämmerlein.
 冬の暮れは今宵も長くて
 僕は君のとなりにいたい、
 君のとなりに座って、君のとなりでおしゃべりしたい、
 馴染みの部屋で。

  An die Lippen wollt ich pressen
Deine kleine, weiße Hand,
Und mit Tränen sie benetzen,
Deine kleine, weiße Hand.
 僕は唇に
 君の小さな白い手を押し当てて、
 涙で濡らしたい、
 君の小さな白い手を。

1: Heine: liebes
2: Heine: mit

詩:Heinrich Heine (1797-1856), no title, appears in Buch der Lieder, in Die Heimkehr, no. 50
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Mädchen mit dem roten Mündchen"

作曲:1876年12月17日(日)

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これまでゲーテ、レーナウ等のテキストに作曲してきた若かりしヴォルフは、次にハインリヒ・ハイネのテキストに集中して作曲します。
ハイネの詩集「歌の本(Buch der Lieder)」の中の「帰郷(Heimkehr)」と題された中のちょうど50篇目に置かれた「赤いお口の女の子(Mädchen mit dem roten Mündchen)」が、ヴォルフがはじめてハイネの詩に作曲した歌曲になります。

赤い唇の女性に夢中な男性の思いのたけがストレートに歌われます。ヴォルフはハイネの詩から軽快さを感じ取ったのでしょう、「生き生きと」という指示のもと、スタッカートとレガートをうまく併用しながらスピーディーに駆け抜ける曲を作りました。唯一の例外は、第2連最初の「冬の暮れは今宵も長くて(Lang ist heut der Winterabend)」の箇所でこれまでより低い音程で逡巡するような気分を垣間見せますが、これもすぐに元の調子に戻ります。ピアノパートが歌と自立した動きをしながら、ぴったり寄り添っている点など、技法的にもかなり優れた作品に仕上がっているのではないでしょうか。アンコールピースにぴったりな気がします。

2/4拍子
ヘ長調(F-dur)
Lebhaft (生き生きと)

●Wolf: Mädchen mit dem roten Mündchen
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Mädchen mit dem roten Mündchen
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ハルトムート・ヘル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hartmut Höll(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●Wolf: Mädchen mit dem roten Mündchen
シュテファン・ゲンツ(BR), ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Stephan Genz(BR), Roger Vignoles(P)

Channel名:ロジェ・ヴィニョールズ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Madchen mit dem roten Mundchen
ウィリアム・デイズリー(BR), ショルト・カイノホ(P)
William Dazeley(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:ウィリアム・デイズリー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:14 April 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

●【参考】ベネディクト・ラントハルティンガー(1802-1893):赤いお口の女の子
[Benedikt Randhartinger:] Mädchen mit dem roten Mündchen
ヴォルフガング・ホルツマイア(BR), ベルナデッテ・バルトス(P)
Wolfgang Holzmair(BR), Bernadette Bartos(P)

Channel名:ヴォルフガング・ホルツマイア - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】ヨハン・ヴェスク・フォン・ピュットリンゲン(筆名:ヨハン・ホーフェン)(1803-1883):『帰郷』~ 50. 赤いお口の女の子
[Johann Vesque von Püttlingen (Johann Hoven):] Die Heimkehr: No. 50, Mädchen mit dem roten Mündchen
マルクス・シェーファー(T), クリスティアン・ドゥ・ブラウン(P)
Markus Schäfer(T), Christian de Bruyn(P)

Channel名:マーカス・シェーファー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●【参考】ローベルト・フランツ(1815-1892):赤いお口の女の子 Op. 5, No. 5
[Robert Franz:] 12 Gesänge, Op. 5: No. 5, Mädchen mit dem roten Mündchen
クリスティアン・イムラー(BR), ジョルジュ・スタロバンスキー(P)
Christian Immler(BR), Georges Starobinski(P)

Channel名:クリスティアン・イムラー - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Buch der Lieder (Wikisource)

Mädchen mit dem rothen Mündchen (Wikisource)

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

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ヴォルフ:ある墓(Wolf: Ein Grab)

Ein Grab
 ある墓

Wenn des Mondes bleiches Licht
Auf das dunkle Grab hier fällt,
Dann aus meinem Auge bricht
Die Trän', die keine Macht mehr hält.
 月の青白い光が
 この暗い墓に落ちるとき
 私の眼から
 堪えきれずに涙があふれる。

Keine Blum am Grabe blüht,
Keine Seele denkt daran;
Kalter Wind vorüberzieht -
Was deckt das kühle Grab, sag an?
 墓に花は咲いておらず
 誰もそれを気にとめる者はいない。
 冷たい風が吹き渡る。
 涼しい墓は何を覆っているのか、言っておくれ。

Was des Grabes Hülle deckt,
Kannst du dann nur ahnen,
Wenn dich gleicher Schmerz bewegt,
Der mag dich daran mahnen.
 墓の覆いが包んでいるものを
 君が気づくことが出来るのは
 同じ苦しみが君の心を揺り動かすときのみ、
 その苦しみによって君はそれを思い出すかもしれない。

詩:Paul Peitl (1853-1902?(1922?)), as Paul Günther
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Ein Grab", 1876

作曲:1876年12月8/10日, Wien

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ヴォルフの友人でパウル・ギュンター(Paul Günther)、パウル・マンスベルク(Paul Mannsberg)という筆名で文筆活動をしていたパウル・パイトル(Paul Peitl: 1853.8.2, Wien生まれ。没年不詳)の詩による「ある墓」にヴォルフは1876年12月8~10日にかけて作曲しました。
ヴォルフの現存する最も初期の作品は「夜と墓(Nacht und Grab)」(ハインリヒ・チョッケの詩)であることを思うと、夜・墓といった暗く重いテーマは若かりしヴォルフにとって魅力的であったに違いありません(シューベルトの初期歌曲も同様でした)。

ピアノパートはトレモロや分散和音、オクターブのバス音などを使いながら、全体的に統一感のある作り方をしていると思います。歌声部については、3つの連で共通する素材も用いながら、通作的に展開させていき、最後にクライマックスを置いています。

「mit Dämpfer(弱音ペダルを使って)」「ausdrucksvoll(表情豊かに)」といった指示もあり、強弱記号もppからfffまで用いて、曲の表情を細かく描き出そうという意思も感じられます。

この頃になるとかなり手慣れた感じもして、ロマンティックな趣の作品として優れた出来栄えではないかと思います。

C (4/4拍子)
ト短調(g-moll)
Ziemlich langsam (かなりゆっくりと)

●曲の冒頭部分
Nachgelassene Werke, Erste Folge (Lieder mit Klavierbegleitung): Heft 1: Leipzig: Musikwissenschaftlicher Verlag, 1936.
Wolf-ein-grab 

●Wolf: Ein Grab
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

●[Hugo Wolf:] Ein Grab
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

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(参考)

The LiederNet Archive

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

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