リリ・ブランジェ((Lili Boulanger):歌曲集『空の晴れ間(Clairières dans le ciel)』
ここ数年、いろいろな歌曲のリサイタル映像などでよく取り上げられる曲の中に、フランシス・ジャム(Francis Jammes: 1868-1938)のテキストにリリ・ブランジェ(Lili Boulanger: 1893-1918)が作曲した13曲からなる歌曲集『空の晴れ間(Clairières dans le ciel)』という作品が挙げられます(抜粋で演奏されることが多いようですが全曲でも演奏されます)。
ちなみに「clairière」というフランス語は森林の空き地を意味するようで、空にあてはめると「どんよりとした雲がそこのところだけ切れて抜けるような青空が広がっている」という藤井宏行氏の説も納得できますし(「詩と音楽」の藤井宏行氏の解説)、「神のうちに(En Dieu)」という詩の元のタイトルでもあることから「天の入り口が開く」という斉諧生氏の説も説得力があります(「斉諧生音盤志」中の「空のひらけたところ」訳詞)。
いずれにしても先が見通せない雲の中からすっぽりと開けたスペースのことを指しているようですね。それが神様のもとへ向かう空間なのか、雲の晴れ間なのかは読む人の解釈によるのでしょう。ブランジェは『空の晴れ間(Clairières dans le ciel)』という詩集の中の「悲しみ」という連詩から抜粋して作曲したそうで、恋する女性との思い出と別れた後の心情が描かれています。
藤井氏、斉諧生氏(手塚伸一氏の訳)それぞれのサイトに掲載された訳詞のリンクを貼っておきます。
「斉諧生音盤志」~「空のひらけたところ」訳詞(斉諧生氏解説、手塚伸一氏訳)
リリ・ブランジェは有名な教育者ナディア・ブランジェ(ドルトン・ボールドウィンもナディアに師事しました)の妹で、幼少期から病弱で24歳の若さで早世するのですが、音楽の才能は群を抜いていたようで、ローマ大賞を受賞し、ヴィエルヌやフォレに師事しています。
歌曲集『空の晴れ間』は亡くなる5年前に着手され、4年前に完成しました。この歌曲集は男性からの恋する女性への思いを描いていますが、女声によって歌われるとより官能的な趣が増すように感じられます。ドビュッシーの優れた歌曲に勝るとも劣らない魅力的な歌曲集だと思います。
●リリ・ブランジェ:歌曲集『空の晴れ間』
Lili Boulanger - Clairières dans le ciel (1914)
Heidi Grant Murphy, soprano
Kevin Murphy, piano
Channel名:Cmaj7(オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ますので要注意!)
00:00 1. Elle était descendue au bas de la prairie
02:11 2. Elle est gravement gaie
04:08 3. Parfois, je suis triste
07:57 4. Un poète disait
10:04 5. Au pied de mon lit
12:41 6. Si tout ceci n'est qu'un pauvre rêve
15:32 7. Nous nous aimerons tant
18:39 8. Vous m'avez regardé avec toute votre âme
20:13 9. Les lilas qui avaient fleuri
23:14 10. Deux Ancolies
25:05 11. Par ce que j'ai souffert
28:22 12. Je garde une médaille d'elle
30:31 13. Demain fera un an
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(参考)
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