ネット席で聞いた2026年の東京・春・音楽祭 歌曲シリーズ

東京春祭 歌曲シリーズ vol.48
クリストフ・プレガルディエン(テノール)&渡邊順生(フォルテピアノ)

2026年4月7日 [火] 19:00開演
東京文化会館 小ホール

テノール:クリストフ・プレガルディエン(Christoph Prégardien)
フォルテピアノ:渡邊順生(Yoshio Watanabe)

シューベルト:
 憂い D772
 《白鳥の歌》D957 より
  別れ
  セレナード
  愛の便り
 秋 D945
 《白鳥の歌》D957 より
  遠い国で
  わが宿
  戦士の予感
 それらがここにいたことは D775
 《白鳥の歌》D957 より 春のあこがれ

-休憩-

 春に D882
 わが心に D860
 深い悩み D876
 ヴィルデマンの丘をこえて D884
 《白鳥の歌》D957 より
  漁夫の娘
  海辺で
  都会
  影法師
  彼女の絵姿
  アトラス

[ アンコール曲 ]
シューベルト:
 《白鳥の歌》 より 鳩の便り D965a
 夜と夢 D827

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東京春祭 歌曲シリーズ vol.49
デイヴィッド・バット・フィリップ(テノール)&ジェイムズ・ベイリュー(ピアノ)

2026年4月10日 [金] 19:00開演
東京文化会館 小ホール

テノール:デイヴィッド・バット・フィリップ(David Butt Philip)
ピアノ:ジェイムズ・ベイリュー(James Baillieu)

ヴォーン・ウィリアムズ:《命の家》
A.マーラー:《5つの歌》より
 賛歌
 恍惚
 識る人

-休憩-

ワーグナー:《ヴェーゼンドンク歌曲集》
ブリテン:《ジョン・ダンの神聖なソネット》 op.35

[ アンコール曲 ]
伝統曲(ブリテン編):広い河の岸辺(O waly, waly)
クルティス : 忘れな草

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東京春祭 歌曲シリーズ vol.50
アンドレ・シュエン(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)

2026年4月14日 [火] 19:00開演
東京文化会館 小ホール

バリトン:アンドレ・シュエン(Andrè Schuen)
ピアノ:ダニエル・ハイデ(Daniel Heide)

シューベルト:
 マイアホーファーの詩による5つの歌
  冥府への旅 D526
  夕べの星 D806
  ドナウの川の上で D553
  双子座に寄せる船乗りの歌 D360
  舟人 D536
 ハイネの詩による6つの歌(《白鳥の歌》D957より)
  漁師の娘
  海辺で
  都会
  影法師
  彼女の絵姿
  アトラス

-休憩-

 様々な詩人による歌
  鳩の便り D965a(ザイドル)
  窓辺で D878(ザイドル)
  君こそわが憩い D776(リュッケルト)
  それらがここにいたことは D775(リュッケルト)
  ミューズの息子 D764(ゲーテ)
  春に D882(シュルツェ)
  ブルックの丘にて D853(シュルツェ)
  星 D939(ライトナー)
  さすらい人 D649(シュレーゲル)
  夕映えの中で D799(ラッペ)

[ アンコール曲 ]
シューベルト:
 《白鳥の歌》D957 より セレナーデ
 月に寄す D259
 《冬の旅》D911 より 菩提樹

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今年は上記の3公演をネット席で聞きました(つまり自宅でスマホの配信を視聴しました)。
聞いたとはいっても、最近年齢のせいか途中で寝落ちすることが多く、プレガルディエン(テノール)&渡邊順生(フォルテピアノ)とアンドレ・シュエン(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)は後半途中から夢の中で、とてももったいないことをしました(前者は前半の「遠い国で」から「戦士の予感」あたりも悲しいかな寝落ちしたようです...)。
デイヴィッド・バット・フィリップ(テノール)&ジェイムズ・ベイリュー(ピアノ)は休憩時間中に電話があり、後回しにする話の内容ではなかった為そのまま電話を続け、配信に戻った時は「ヴェーゼンドンク歌曲集」の「夢」の途中でした。ただ、この日は寝落ちせず、アンコールまでしっかり堪能できました。

プレガルディエン(ドイツ人がこの姓を言うのを聞くと、最後の音節を鼻母音で発音していて、プレガルディアンのように聞こえます)は御年70歳とのこと、私がはじめて聞いたのが1993年のフェルトキルヒのシューベルティアーデだったので彼は当時37歳で、若かりし頃から全盛期を経て、円熟期にいたるまで聞くことの出来たのは本当に感慨深いです。
今回、声の安定感という点においては多少年齢を感じるところはあったものの、それは生身の楽器をもつ声楽家ならば当たり前のことで気にするほどではなかったと思います。それよりも美しいディクションと作品へのスタイリッシュな姿勢、詩の語り部たる表情の豊かさはシューベルトの極上の作品群(「白鳥の歌」に他の歌曲を織り交ぜて構成されていた)を味わうのに最高の歌唱を聞かせてくれたと思います。
フォルテピアノの渡邊順生さんとはプレガルディエンの初期の来日時にも共演していたらしく(私は聞いていないのですが)、味のある響きがプレガルディエンの真摯な歌声にやさしく寄り添って、至福の時間でした。かえすがえすも寝落ちしてしまったのが悔しい!
以前に比べるとプレガルディエンはシューベルトの旋律への装飾が控えめだった印象を受けましたが、それでも時折はっとする装飾を加えてシューベルト歌曲の可能性を再発見させてくれました。ちなみに渡邊氏は私の記憶する限りではオリジナルのまま弾いていたと思います。

デイヴィッド・バット・フィリップ(テノール)&ジェイムズ・ベイリュー(ピアノ)については、今や引く手あまたの歌曲ピアニストのベイリューを聞きたくてチケットを購入したのですが、寡聞にして存じ上げなかったテノールのフィリップは今回の来日でシェーンベルク「グレの歌」に出演し、さらに演奏会形式のヴァーグナー「さまよえるオランダ人」に2回出演した後、この歌曲の夕べに出演したらしく、その声帯の強靭さに驚かされました。
イギリスのテノール歌手に抱いていた印象とは若干異なり、強靭でパワーのある声がヴァーグナー向きなのだろうと感じました。
最初のヴォーン・ウィリアムズの歌曲集《命の家》では有名な「静かな真昼(Silent Noon)」の締めのフレーズの弱声が若干不安定に感じられたのですが、徐々に声があたたまってきたのか、そのよく通る声(実際に会場で聞いたらどんな感じだったのか気になります)を巧みにコントロールして魅力的に聞かせてくれました。
アルマ・マーラー歌曲の濃密な響きも素敵で、休憩後のヴァーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」はきっと本領発揮だったのではないかと想像します(先に書いたとおり、この歌曲集の間電話に出ていたのでほとんど聞けませんでした)。
ブリテンの《ジョン・ダンの神聖なソネット》はその難解なテキストとは相反する魅力的なブリテンの音楽に引き込まれました。フィリップもそれぞれの曲のキャラクターを見事に描き分けていたのではないかと思います。
アンコールのブリテン「広い河の岸辺(おお、哀れよO waly, walyというタイトルでお馴染みの曲)」でその美しい音楽を堪能させてくれた後は、デ・クルティスの「忘れな草」で全く異なるラテンの開放的な響きも素敵に聞かせてくれて、コンサートは終了しました。
もともとのお目当てだったジェイムズ・ベイリューは、期待にたがわぬ素晴らしさで、その紡ぎだす音の磨き抜かれた美しさに感銘を受けました。どの曲も過度な自己主張はせず、作品をありのままに描きながらそれでいて存在感を感じさせる至芸でした。歌曲ピアニストの名手が昔から現在にいたるまでイギリスから脈々と輩出されるのはきっと何らかの要因があるのでしょう。

そして、アンドレ・シュエン(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)はDGレーベルでシューベルトの三大歌曲集をリリース済みという期待のバリトン歌手&ピアニストのコンビです。
世界中の歌劇場からも引っ張りだこのシュエンが、こうして歌曲にも精力的に取り組んでいるのは嬉しい限りです。
その響きはバリトンの深みと軽やかな響きとが共存して、さまざまなタイプの歌曲に対応が可能な声と感じました。
なによりもドイツ語の響きが美しく、重厚な曲から軽快な曲までなんの違和感もなく描き出していて、すでに完成されたアーティストの貫禄が感じられました(1984年生まれということは41歳で、声も表現も旬の時期だと思います)。今回、オールシューベルトで、前半にマイアホーファー歌曲集と「白鳥の歌」からハイネ歌曲集、後半にザイドル、リュッケルトなど様々な詩人から選ばれた珠玉の歌曲集を披露してくれました。
やはりシューベルトの歌曲を聞くと本当にいいなぁと思います。歌曲に惹かれた中学生の頃から現在にいたるまでいろいろな作曲家の素晴らしい歌曲に出会ってきましたが、やはりシューベルトを聞くと安心して身を委ねて聞けます(安心しすぎて寝落ちしてしまうのは困ったものですが...)。今回、後半に「ミューズの息子」「ブルックにて」などの軽快な楽しい曲はあるものの、比較的穏やかで心に染みる曲が多く選ばれているのはシュエンの好みを反映しているのかなぁと興味深く感じるところです。
以前クリンメルの歌曲の夕べでも演奏を披露してくれたダニエル・ハイデは、シュエンのほとんど唯一の共演ピアニストのように思えます(録音ではカルラ・ハルテンヴァンガーというピアニストとも組んでいるようですが)。さまざまなピアニストと共演するゲルネやプレガルディエンとは異なり、ゲアハーアー(ゲルハーヘル)&フーバー、白井光子&ヘルのような歌手とピアニストの固定的な関係をめざしているのかもしれません。歌手とピアニストが長く組むことによって、今後さらに解釈が変化・深化していくのかもしれません。ハイデは安定したテクニックと優れた音楽性をもつピアニストだと思うので、今後シュエンとさらにリートの世界を探求していくことを楽しみにしたいと思います。

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リーズ・ソング(旧:リーズ・リーダー) Leeds Song (formerly:Leeds Lieder) 2025

現役世代で最も多忙を極める歌曲ピアニストのジョーゼフ・ミドルトン(Joseph Middleton)が芸術監督をつとめる「Leeds Song(旧:Leeds Lieder)」が今年も歌曲のコンサート、マスタークラス、プレトークを行い、現地時間4/12(土)に最終日を迎えます。
今回はPresidentのエリー・アーメリング(Elly Ameling)のマスタークラス2回をはじめとして、多くの歌手、ピアニストによるコンサート、マスタークラスなどがYouTubeで配信され、そのままアーカイヴで見ることが出来ます。
92歳のアーメリング女史の以前と変わらないお元気さは全く驚異的です。コンサートではイギリスで最も優れたリート歌手の一人と個人的に思っているロデリック・ウィリアムズのプログラミングが興味深く「エキゾチックな雰囲気(A touch of exotic)」と題された異国情緒あふれる作品を集めた中でシューベルトの「ミニョン」のような女声用歌曲も披露しています。また、私が現役世代で最も注目しているうちの一人であるソプラノのカタリナ・コンラーディ(Katharina Konradi)のリサイタルなど、見きれないほどの動画があります。
グレアム・ジョンソンやジュリアス・ドレイクのような歌曲の名手たちや、ソプラノのフェリシティ・ロット、バリトンのトマス・アレンなどのマスタークラスもあります。
皆さんも興味のある動画をご覧になってみてはいかがでしょうか。公式サイトではプログラムもPDFでダウンロードできます(「プログラム等詳細」のリンク先にあります)。

これまで"Leeds Lieder"と冠してきた名称を今年から"Leeds Song"に変更した理由についてミドルトンが動画で話していますし、プログラム冊子にも記載されています。「リート」という言葉は美しいけれど、一般には馴染みの薄い言葉なので、もっと「輪を広げたい」ということのようです。詳しくは下記動画やPDFのプログラム冊子をご覧ください。

●Why Leeds Lieder became Leeds Song

Channel名:Leeds Song (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

●2025.4.5(土)

・1-2pm(現地時間。以下同):ランチタイム・オープニング・リサイタル:Carolyn Sampson and Joseph Middleton
(Patricia Nolz and Joseph Middletonの予定だったが、Patricia Nolz怪我の為、Carolyn Sampsonに変更)
プログラム等詳細
動画

・7.30pm:イヴニング・オープニング・リサイタル:Florian Boesch and Joseph Middleton
Franz Schubert Winterreise
プログラム等詳細
動画

●2025.4.6(日)

・10am-12.30pm:フェスティヴァル・マスタークラスI:Elly Ameling
プログラム等詳細
動画

・1-2pm:ランチタイム・リサイタル:Erika Baikoff and Camille Lemonnier
プログラム等詳細
動画

・3-4.30pm:ヤング・アーティスツ・スタディ・イヴェント・ウィズ・Richard Stokes
Young Artists Study Event with Richard Stokes
プログラム等詳細
動画

・7.30pm:イヴニング・リサイタル:Roderick Williams OBE and Andrew West
プログラム等詳細
動画

●2025.4.7(月)

・10am-1pm:フレンズ・フェスティヴァル・マスタークラスII:Anna Tilbrook
プログラム等詳細
動画

・2-4pm:フレンズ・フェスティヴァル・マスタークラスIII:Elly Ameling
プログラム等詳細
動画

・7pm:イヴニング・リサイタル:The Erda Ensemble
Marta Fontanals-Simmons mezzo-soprano
Chloë Vincent flute
Olivia Jageurs harp
プログラム等詳細
動画

●2025.4.8(火)

・7.30pm:イヴニング・リサイタル:Katharina Konradi and Joseph Middleton
プログラム等詳細
動画

●2025.4.9(水)

・10am-1pm:フェスティヴァル・マスタークラスIV:Amanda Roocroft
プログラム等詳細
動画

・5-6.30pm:コンポーザーズ&ポエッツ・フォーラム・ショーケース:“A Leeds Songbook”
プログラム等詳細
動画

・7pm:イヴニング・リサイタル:Freddie Ballentine and Kunal Lahiry
プログラム等詳細
動画

●2025.4.10(木)

・11.30am-1pm:ヤング・アーティスツ・ショーケース
プログラム等詳細
動画

・2-5pm:フェスティヴァル・マスタークラスV:Julius Drake
プログラム等詳細
動画

・7.30pm:イヴニング・リサイタル:Louise Alder and Joseph Middleton
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動画

●2025.4.11(金)

・10am-12.30pm:フェスティヴァル・マスタークラスVI:Sir Thomas Allen
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動画

・1-2pm:リラックスト・ランチタイム・リサイタル:Kitty Whately and Natalie Burch
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動画

・3-6pm:フェスティヴァル・マスタークラスVII:Dame Felicity Lott
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動画

・7.30pm:イヴニング・リサイタル:Beth Taylor and Julius Drake
(Alice Coote and Julius Drakeの予定だったが、Alice Coote体調不良の為、Beth Taylorに変更)
プログラム等詳細
動画

●2025.4.12(土)

・12-1.30pm:レクチャー・リサイタル:Graham Johnson OBE
with Manon Ogwen Parry (soprano), Hugo Brady (tenor) and Leeds Lieder Young Artist singers
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・3.30-5pm:ヤング・アーティスツ・フィナーレ・コンサート
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・6pm:イヴニング・クロージング・リサイタル:Christoph Prégardien and Joseph Middleton
Franz Schubert
Die schöne Müllerin
プログラム等詳細
動画

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クリストフ・プレガルディエン&ミヒャエル・ゲース/シューベルト「白鳥の歌」他(2022年10月1日(土)トッパンホール)

トッパンホール22周年 バースデーコンサート
〈歌曲(リート)の森〉~詩と音楽 Gedichte und Musik~ 第25篇
〈シューベルト三大歌曲 1〉
クリストフ・プレガルディエン&ミヒャエル・ゲース

2022年10月1日(土)18:00 トッパンホール

クリストフ・プレガルディエン(テノール)
ミヒャエル・ゲース(ピアノ)

ベートーヴェン:連作歌曲《遥かなる恋人に寄す》Op.98
 第1曲 僕は丘の上に腰を下ろして
 第2曲 青い山なみが
 第3曲 空高く軽やかに飛ぶ雨ツバメよ
 第4曲 高みにある雲の群れも
 第5曲 五月はめぐり
 第6曲 受け取ってください、これらの歌を

シューベルト:白鳥の歌 D957より
 第1曲 愛の言づて
 第2曲 兵士の予感
 第3曲 春のあこがれ
 第4曲 セレナーデ
 第5曲 居場所
 第6曲 遠い地で
 第7曲 別れ

~休憩~

ブラームス:〈君の青い瞳〉Op.59-8~《リートと歌》より
ブラームス:〈永遠の愛〉Op.43-1~《4つの歌》より
ブラームス:〈野の中の孤独〉Op.86-2~《低音のための6つのリート》より
ブラームス:〈飛び起きて夜の中に〉Op.32-1~《プラーテンとダウマーによるリートと歌》より
ブラームス:〈教会の墓地で〉Op.105-4~《低音のための5つのリート》より

シューベルト:白鳥の歌 D957より
 第10曲 魚とりの娘
 第12曲 海辺で
 第11曲 町
 第13曲 もう一人の俺
 第9曲 あの娘の絵姿
 第8曲 アトラス

[アンコール]

シューベルト:鳩の使い D965A
シューベルト:我が心に D860
シューベルト:夜と夢 D827

(※上記の演奏者や曲目の日本語表記はプログラム冊子に従いました。アンコールもトッパンホールの公式Twitterの日本語表記に従いました。)

Toppan Hall The 22th Birthday Concert
[Song Series 25 -Gedichte und Musik-]
Christoph Prégardien(Ten) & Michael Gees(pf)

Saturday, 1 October 2022 18:00, Toppan Hall

Christoph Prégardien, Tenor
Michael Gees, piano

Beethoven: Liederzyklus "An die ferne Geliebte" Op.98
 No. 1. Auf dem Hügel sitz ich spähend
 No. 2. Wo die Berge so blau
 No. 3. Leichte Segler in den Höhen
 No. 4. Diese Wolken in den Höhen
 No. 5. Es kehret der Maien, es blühet die Au
 No. 6. Nimm sie hin denn, diese Lieder

Schubert: 7 Lieder nach Gedichten von L. Rellstab aus "Schwanengesang" D957
 No. 1. Liebesbotschaft
 No. 2. Kriegers Ahnung
 No. 3. Frühlingssehnsucht
 No. 4. Ständchen
 No. 5. Aufenthalt
 No. 6. In der Ferne
 No. 7. Abschied

-Intermission-

Brahms: 'Dein blaues Auge' Op.59-8 aus "Lieder und Gesänge"
Brahms: 'Von ewiger Liebe' Op.43-1 aus "4 Gesänge"
Brahms: 'Feldeinsamkeit' Op.86-2 aus "6 Lieder für eine tiefere Stimme"
Brahms: 'Wie rafft' ich mich auf in der Nacht' Op.32-1 aus "Lieder und Gesänge von A. v. Platen und G. F. Daumer"
Brahms: 'Auf dem Kirchhofe' Op.105-4 aus "5 Lieder für eine tiefere Stimme"

Schubert: 6 Lieder nach Gedichten von Heinrich Heine aus "Schwanengesang" D957
 No. 10. Das Fischermädchen
 No. 12. Am Meer
 No. 11. Die Stadt
 No. 13. Der Doppelgänger
 No. 9. Ihr Bild
 No. 8. Der Atlas

[Zugaben]

Schubert: Die Taubenpost D965A
Schubert: An mein Herz D860
Schubert: Nacht und Träume D827

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久しぶりに生のコンサートに出かけてきました。テノールのクリストフ・プレガルディエン(プレガルディアン)がシューベルトの三大歌曲集をトッパンホールで披露するというので、その初回(10月1日)の『白鳥の歌』他のリサイタルを聴きました。
最近はあまりコンサートの広告などを熱心に見ることもなく、たまたまフリーペーパーの「ぶらあぼ」をぱらぱらめくっていてこのコンサートに気付いたので、数日前に電話してチケットをとり、飯田橋に降り立ちました。

個人的なことですが、飯田橋は社会人になって最初に勤めた会社があった場所で(大昔の話です)、久しぶりにそのビルに行ってみましたが、とうの昔に居酒屋のビルに変わっているばかりか、周辺の書店やよく通った飲食店などかなり変わってしまっていて妙にノスタルジックな気分に襲われました。

そんな感傷を引きずりながら15分ほどの坂道をのぼっていくと、以前はなかったスーパーいなげやが途中にありました。コンサートに向かう道は期待に胸ふくらませていて独特の高揚感があるんですよね。

ホールに着き、チケットをもぎってもらうと同時に受け取るプログラム冊子は以前と全く同じ表紙・デザインのものでした。変わるものがあれば変わらないものもあり、いろいろな思いが交錯する日となりました。

トッパンホールに来たのは一体何年ぶりだろうというぐらい久しぶりだったのですが、席についてしまえば過去に過ごした多くの素敵な時間がよみがえってきます。

今回は後方左側の席だったのですが、段になっているので、舞台がよく見渡せるいい席でした。

プログラムは前半がベートーヴェンの歌曲集《遥かなる恋人に寄す》と、シューベルトの『白鳥の歌』からレルシュタープの詩による7曲、休憩をはさみ後半はブラームスの歌曲5曲と、『白鳥の歌』からハイネの詩による6曲でした。
『白鳥の歌』の順序を出版順から入れ替えるのが最近の流行りで、プレガルディエンのちらしではレルシュタープ、ハイネそれぞれ曲順を入れ替えた形で発表されていましたが、結局レルシュタープ歌曲集はお馴染みの出版順で演奏され、ハイネ歌曲集のみがプレガルディエン独自の曲順に入れ替えられていました。

プレガルディエンはすでに66歳になっていたということにまず驚きました。F=ディースカウが歌手活動から引退したのが67歳の時で、その頃にはすでに声がかなり重くなっていたことを考えると、プレガルディエンの声のコンディションの見事さはちょっと信じがたいほどでした。高音域が若干きつそうな場面がある以外は殆ど年齢による衰えを感じることがなく、細やかな表現から劇的な表現まで変幻自在でした。ホール後方の席にいた私にも細やかな表現の綾がしっかり伝わってきます。基礎がしっかりしている人は長く歌い続けられるということなのでしょうか。

プレガルディエンは楽譜立てに紙を置いて、歌っていましたが、それが楽譜なのか歌詞なのか席からは確認できませんでした。ただ、ほとんどそれを見ることなく、正面の客席に顔を向けて歌っていたので、あくまで万が一の為の備忘録のような感じに思えます。

プレガルディエンはプログラム最初の《遥かなる恋人に寄す》の冒頭の曲からすでに声が朗々と前に出ていて年齢的な心配は杞憂に過ぎませんでした。
彼はバッハ歌いでもあり、彼の歌の基本は聴き手に伝えるという姿勢だと思います。
言葉が明瞭に聞こえてきます。
プレガルディエンは実演でも録音でも、歌の旋律に装飾を加えたり、多少変更を加えたりします。
当時の作品が演奏される際にすでにそうしたことは行われていて、シューベルト歌曲の紹介者フォーグルがどのように変更したかは楽譜の形で残っています。シューベルトはフォーグルの歌の伴奏をしたわけですから、そうした変更はシューベルトの公認と言ってもいいのでしょう。
プレガルディエンはすべての曲に装飾を加えるわけではなく、特定の曲に絞って装飾・変更を加えていきます。
私の記憶では《遥かなる恋人に寄す》では装飾は付けていませんでした。
この日最初に装飾を加えたのは『白鳥の歌』第3曲「春のあこがれ」でした。
特定の曲で装飾を加える時は、数か所変更を加えます。そして、歌手に呼応してゲースも思いっきりピアノパートに変更を加えます。
どこまで事前に準備していて、どこから即興的なやりとりなのかは知るよしもないですが、耳馴染みの音楽にちょっと装飾を加えて歌とピアノの新しい響きが生まれる瞬間に居合わせられるのはスリリングです。

プレガルディエンは万能歌手で、若者の心の痛みでも、抒情的な風景でも、疎外された者の心情でも、愛の告白でも、見事に説得力をもった表現で聴かせてくれるので、聴き手は身を委ねて、それぞれの小世界に浸ることが出来ます。
例えば《遥かなる恋人に寄す》第1曲では"Bote(使い)"の前に少しだけ間をとって「愛の使者はいないのか」という気持ちを強調していました。
年齢を重ねて低音は充実していて、特にテノール歌手には必ずしも歌いやすくはないであろう「遠い地で」の低音がしっかりと響いていたのは聴きごたえありました。

ピアノのミヒャエル・ゲースは、これまで数多くのピアニストたちと共演してきたプレガルディエンのパートナーの中でも極めて異彩を放っていることは間違いないです。
ゲースはリズムや拍を楽譜通りに明瞭に伝えようとはしません。
むしろ音楽的な響きの中でそれを(おそらく)あえてぼやかします。
ペダルの海の中で響きは時に濁り、普段聞こえる音が響きに埋没するかと思うと、普段埋もれがちな内声が浮き立ってきたりもします。
それは手垢にまみれたリート演奏に独自の視点をもたらそうとしているのかもしれませんし、もともとのゲースの資質なのかもしれません。
プレガルディエンが同じ作品を現代作曲家の様々な演奏形態による編曲版で歌ったりするのが新しい視点の可能性を試みているということならば、ゲースというピアニストと共演するということもその一環としてとらえてもいいのかもしれません。
ゲースは基本的に右手を中心に響かせ、左手はここぞという時だけ強調します。過去の様々な演奏に馴染んだ耳には、なぜ左手のバス音をこんなに弱く演奏するのだろうかという疑問をつきつけられます。それこそが先入観に疑問を持つようにというゲースから聴き手へのメッセージのようにも思えます。
それからリートを弾くピアニストたちがここぞという時にやる右手と左手のタイミングをわずかにずらすことによる味付けをゲースはこれでもかというぐらいに多用します。これはゲースの好みなのかもしれませんね。
また、ジャズも演奏するというゲースはプレガルディエンの装飾に呼応してかなり大胆な変更を施します。このあたりもプレガルディエンが志す方向と共通しているのだと思います。ただ、ブラームスの「永遠の愛」の後奏はゲースの創作作品になってしまっていて、これはさすがにやり過ぎかなと個人的には思いました。

大体『白鳥の歌』のプログラムだと、45分ぐらいで終わってしまうので、他に何が追加されるのかが愛好家にとっては気になるのですが、今回はよく一緒に演奏される『遥かなる恋人に寄す』の他にブラームスの歌曲5曲という珍しいカップリングが興味深かったです。私はブラームス歌曲が大好きなので、この日のコンサートは大好きな作品のオンパレードでとても楽しめました。プログラムビルディングも大事ですよね。

『白鳥の歌』出版時に含まれた「鳩の便り」は一つだけザイドルのテキストということもあって、今回のように正規のプログラムからは外されることが多くなってきましたが、アンコールで歌ってくれたのでこの曲が好きな私としては良かったです!そしてアンコール2曲目は珍しいシュルツェの詩による「我が心に」が演奏され、最後の「夜と夢」は魔術的な美しさでした。プレガルディエンのレガート健在でした!

やはりホールの美しい響きの中で聴く一流の演奏は格別でした。行って良かったです!あと2夜行ける方はぜひ楽しんできてください!

トッパンホールのHPでの公演詳細

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