河原忠之/リサイタル・シリーズ 2013 “歌霊”「レスピーギⅡ」(2013年03月30日 王子ホール)

河原忠之リサイタル・シリーズ 2013 “歌霊”「レスピーギⅡ」

2013年03月30日(土)14:00 王子ホール

河原 忠之(Tadayuki Kawahara)(Piano)
佐藤 美枝子(Mieko Sato)(Soprano)
岩森 美里(Misato Iwamori)(Mezzo-soprano)
森田 学(Manabu Morita)(プレトークと解説/Expositor)

岩森 美里(MS)
「4つの歌(Quattro liriche)」
 夢
 水の精(ナーイアデ)
 夕べ
 ある昔の歌にのせて

岩森 美里(MS)
「アルメニア詩人の詩句をもとにした4つの歌(Quattro liriche armeni)」
 ちがう、あなたの息子は死んでいません
 母さんとは温かいパンのようで
 私は聖母です
 光に包まれた朝

佐藤 美枝子(S)
「6つの歌 第1集(Sei liriche prima serie)」
 下弦の三日月よ
 バラの香りが漂い
 庭の中で
 古のクリスマス讃歌
 インドのセレナータ
 雨

~休憩~

岩森 美里(MS)
「6つの歌 第2集(Sei liriche seconda serie)」
 夜
 枯れたすみれの上に
 エジプトのやすらぎ
 古のクリスマス讃歌
 小さな白い手
 庭

岩森 美里(MS)
もし、いつの日かあの方が戻られたなら…(E se un giorno tornasse...)

佐藤 美枝子(S)
「トスカーナ地方の4つのリスペット(Quattro rispetti toscani)」
 あなたが生まれたとき…
 わたしの坊やを見に来てください
 ずっと遠く、かなたからやって来る…
 雌鳥たちが麦打ち場で地面をつっつく…

~アンコール~

佐藤 美枝子(S) & 岩森 美里(MS)
マロッテ/主の祈り

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オペラのコレペティトールや伴奏ピアニストとして、さらに指揮者としても活動している河原忠之氏の「歌霊」シリーズをはじめて聴いた。
過去の回はレスピーギ、プーランク、シュトラウス、シューベルトとテーマごとに共演者を変えて行われたようだが、残念ながら聴く機会に恵まれなかった。
今回ようやくこのシリーズを聴けて、河原忠之というピアニストの音楽性の深さと歌への愛情を強く印象づけられることになった。

森田 学氏と河原氏のトークを合間にはさみながら、レスピーギの歌曲が演奏されていく。
私の印象だと、イタリアはオペラが盛んであるゆえか、芸術歌曲は他国に比べると重視されてこなかったように感じていた。
ピアノパートがいわゆる「伴奏」にとどまり、和音づけの役割に終始しているという感じ。
しかし、レスピーギの歌曲を聴くと、そのような先入観が誤っていることを思い知らされる。

今回聴いたどの作品からも、ドイツやフランスの歌曲に見劣りするものはなかった。
レスピーギは、若い頃、ロシアでヴィオラ奏者をしたり、ベルリンで伴奏ピアニストをしていた時期があったそうだ。
そのような外国の芸術に直接触れる機会が、彼の歌曲創作にもよい影響を与えていたのだろう。

河原忠之のピアノは、どの1曲からも作品への愛情が伝わってくるものだった。
細やかだが包容力のあるタッチは、作品ごとに見事なまでに色合いを変化させて、聴き手をその作品の世界に引きずり込む。
その吸引力は、彼の人格が滲み出たものに違いないだろう。
「トスカーナ地方の4つのリスペット」の最終曲をトークで紹介する時には、鶏が歩く仕草をユーモラスにまねて会場を盛り上げていたが、その演奏は一切の妥協がない見事なものだった。

岩森 美里のベテランらしい味わいのある歌唱、それに佐藤 美枝子の細身の体に似合わぬ強靭で柔軟な歌唱が、河原の芸術を素晴らしく彩っていた。

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