エディタ・グルベロヴァ・歌曲リサイタル映像2種(エリク・ヴェルバ、フリードリヒ・ハイダー)(1977年&1991年)

エディタ・グルベロヴァ(Edita Gruberová)のリサイタル映像はいろいろあがっていますが、中でも歌曲中心の2つをご紹介したいと思います。
1977年の方は歌曲演奏の巨匠エリク・ヴェルバとの共演です。
故ヴェルバの演奏映像もなかなかレアだと思います。
若かりしロングヘアのグルベロヴァはすでに歌曲の王道レパートリーを歌っていたのですね。
1991年の方は当時プライベートでもパートナーだったフリードリヒ・ハイダーとの共演で、こちらもドヴォジャーク、シュトラウスが演奏されています。この2人の作曲家は特にグルベロヴァのお気に入りだったのかもしれませんね。

●Upscaled video EDITA GRUBEROVA recital - Werba - Klosterneuburg 1977

1977年, クロスターノイブルク修道院

エディタ・グルベロヴァ(S)
エリク・ヴェルバ(P)

モーツァルト
[0:38] ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時
[2:44] すみれ

シューベルト
[5:25] ミニョンの歌「ただ憧れを知る者だけが」
[8:48] クレールヒェンの歌

マーラー
[10:26] 私はほのかな香りを吸い
[12:50] 自分の感情

エーベルト・トリオによる演奏(※ここはグルベロヴァは登場しません)
[14:44] Das Ebert Trio spielt Alfred Uhl: "Kleines Konzert"

リヒャルト・シュトラウス
[31:15] 私は花束を編みたかった
[34:10] アーモル

ドヴォジャーク
『ジプシーのメロディ』より
[37:00] 老いた母が私に歌を教えてくれた時
[39:22] 鷹の翼はタトラの峰をざわめかせるが

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Stift Klosterneuburg, 1977

Edita Gruberová, soprano
Erik Werba, piano

Wolfgang Amadeus Mozart
[0:38] Als Luise die Briefe ihres ungetreuen Liebhabers verbrannte, KV 520
[2:44] Das Veilchen, KV 476

Franz Schubert
[5:25] Lied der Mignon "Nur wer die Sehnsucht kennt", D 877-4
[8:48] Klärchens Lied, D 210

Gustav Mahler
[10:26] Ich atmet einen linden Duft
[12:50] Selbstgefühl

[14:44] Das Ebert Trio spielt Alfred Uhl: "Kleines Konzert"

Richard Strauss
[31:15] Ich wollt ein Sträußlein binden, Op.68-2
[34:10] Amor, Op. 68-5

Antonín Dvorák
Zigeunermelodien Op.55
[37:00] Kdyz mne stará (Als die alte Mutter mich noch singen lehrte)
[39:22] Dejte klec jestrábu (Darf des Falken Schwinge Tatrahöh'n umrauschen)

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●Edita Gruberova Recital Prague Opera 1991

録画:1991年9月17日、プラハ国立歌劇場

エディタ・グルベロヴァ(S)
フリードリヒ・ハイダー(P)

拍手 2:10-

メンデルスゾーン:
最初のスミレ, Op. 19/2 2:35-
新しい恋, Op. 19/4 5:34-
歌の翼に乗って, Op. 34/2 7:48-
春の歌, Op. 47/3 12:05- (14:30頃大きめの雑音あり)

ドヴォジャーク:
歌曲集『愛の歌, Op. 83』 16:06-

リヒャルト・シュトラウス:
献呈, Op. 10/1 35:13-
夜, Op. 10/3
黄金色あふれる中を, Op. 49/2
森の至福, Op. 49/1
ツェツィーリエ, Op. 27/2

アンコール:

R.シュトラウス: 響け, Op. 48/3 49:59-
R.シュトラウス: アーモル, Op. 68/5 52:04-
シャルパンティエ: 歌劇『ルイーズ』からアリア 56:11-
トマ: 歌劇『ハムレット』からオフィーリアの狂乱の場 1:02:04-

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17 September 1991, Národní divadlo v Praze (Prague Opera)

Edita Gruberová, soprano
Friedrich Haider, piano

Beifall 2:10-

Mendelssohn:
Das erste Veilchen, Op. 19/2 2:35-
Neue Liebe, Op. 19/4 5:34-
Auf Flügeln des Gesanges, Op. 34/2 7:48-
Frühlingslied, Op. 47/3 12:05- (about 14:30, large noise)

Dvorák:
"Pisne Milostne", Op. 83 16:06-
1. Ó naší lásce nekvete (Oh, for us love does not bloom)
2. V tak mnohém srdci mrtvo jest (So many hearts are as though dead)
3. Kol domu se ted’ potácím (Around the house I stagger now)
4. Já vím, že v sladké naději (I know that in my sweet hope)
5. Nad krajem vévodi lehký spánek (Over the countryside reigns a light sleep)
6. Zde v lese u potoka (In forest here by a brook)
7. V té sladké moci ocí tvých (In that sweet power of your eyes)
8. Ó duše drahá jedinká (Oh dear soul, the only one)

R. Strauss:
Zueignung, Op. 10/1 35:13-
Die Nacht, Op. 10/3
In goldener Fülle, Op. 49/2
Waldseligkeit, Op. 49/1
Cäcilie, Op. 27/2

Encores:

R. Strauss: Kling, Op. 48/3 49:59-
R. Strauss: Amor, Op. 68/5 52:04-
Charpentier: Aria from "Louise" 56:11-
Thomas: Ophelia's mad scene from "Hamlet" 1:02:04-

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エディト・マティス&ペーター・シュライアー&エリク・ヴェルバ(Mathis, Schreier & Werba)/ヴォルフ『イタリア歌曲集』ザルツブルク音楽祭ライヴ1976年

ソプラノのエディト・マティスとテノールのペーター・シュライアーがエリク・ヴェルバのピアノでザルツブルク音楽祭で歌ったヴォルフ『イタリア歌曲集』全曲の録音がアップされていました。

曲順はヴォルフの出版時のものとは異なり、入れ替えられているので、おそらくヴォルフ研究者でもあるヴェルバが順番を考えたのではないかと想像されます。
関連のあるストーリーを並べると同時に、各まとまりにおいても統一感を考慮しているようです。
例えば最初のグループは「小さなものでも私たちをうっとりとさせることは出来るの」で始まり、「私の恋人はとってもちっちゃいの」で終わるという流れによって、小さなもの(歌曲というジャンルへの意味合いも込められているのでしょう)への賛美を描こうとしているのではないかと思います。

マティスはみずみずしい美声による真摯な表現が素晴らしく、シュライアーはディクションの美しさが際立ち、セリフが生き生きとしています。
そしてヴェルバは楽譜の音価通りではなく、曲調によって自在に変化させているのはいつも通りですが、それがごく自然になされているという点で見事だと思います。
ただし、終曲「あたし、ペンナに住んでる恋人がいるの」の華麗なピアノ後奏はしっかり楽譜通りに弾いてほしかったですが...。

マティスとシュライアーはDeutsche Grammophonレーベルにエンゲルのピアノと共にこの歌曲集全曲を録音していますが、未だに全曲のCD化がされていません(最近マティスの組み物アンソロジーに一部復活しましたが)。
そういう意味で、このライヴの音源は貴重で意義深いと思います。
ぜひお時間のある時に少しずつでも聞いてみて下さい。

ライヴ録音:12 Augst 1976, Kleines Festspielhaus, Salzburg

Edith Mathis, Sopran エディト・マティス(S)
Peter Schreier, Tenor ペーター・シュライアー(T)
Erik Werba, Klavier エリク・ヴェルバ(P)

Hugo Wolf: Italienisches Liederbuch ヴォルフ:『イタリア歌曲集』

1(S)  Auch kleine Dinge können uns entzücken 小さなものでも私たちをうっとりとさせることは出来るの
18(T)  Heb' auf dein blondes Haupt und schlafe nicht ブロンドの頭をあげておくれ、眠るんじゃないよ
19(S)  Wir haben beide lange Zeit geschwiegen 私たちは二人とも、長いこと押し黙っていました
4(T)  Gesegnet sei,durch den die Welt entstund この世界の生みの親に祝福あれ
10(S)  Du denkst mit einem Fädchen mich zu fangen あなたは細い糸たった一本で私を捕まえて
3(T)  Ihr seid die Allerschönste weit und breit あなたは世界で一番美しい
2(S)  Mir ward gesagt,du reisest in die Ferne 遠いところに旅立つそうね
9(T)  Daß doch gemalt all deine Reize wären 君の魅力がすべて描かれて
15(S)  Mein Liebster ist so klein,daß ohne Bücken 私の恋人はとってもちっちゃいの

17:30-
14(T)  Geselle,woll'n wir uns in Kutten hüllen 相棒よ、おれたちゃ修道服でもまとって
11(S)  Wie lange schon war immer mein Verlangen もうどれほどずっと待ち焦がれてきたことでしょう
22(T)  Ein Ständchen Euch zu bringen kam ich her セレナードを捧げにわたくし参りました
12(S)  Nein,junger Herr,so treibt man's nicht,fürwahr 駄目、お若い方、そんな事しちゃ嫌
5(T)  Selig ihr Blinden,die ihr nicht zu schauen 目の見えない人は幸いだ
16(S)  Ihr jungen Leute,die ihr zieht ins Feld 戦場に向かわれるお若い方々
7(T)  Der Mond hat eine schwere Klag' erhoben 月がひどい不満をぶちまけ
6(S)  Wer rief dich denn? 一体誰があんたを呼んだのよ
13(T)  Hoffärtig seid Ihr,schönes Kind ふんぞり返っておいでだな、麗しき娘よ
21(S)  Man sagt mir,deine Mutter woll es nicht あなたのお母さんがお望みでないらしいわね
8(T)  Nun laß uns Frieden schließen,liebstes Leben もう仲直りしようよ、いとしい人
20(S)  Mein Liebster singt am Haus im Mondenscheine あたしの恋人が月明りの注ぐ家の前で歌っているわ
17(T)  Und willst du deinen Liebsten sterben sehen 君の彼氏が死ぬところを見たいのなら

40:27-
41(S)  Heut' Nacht erhob ich mich um Mitternacht 昨夜、真夜中に私が起き上がると
34(T)  Und steht Ihr früh am Morgen auf vom Bette それから、あなたが朝早くベッドから起き上がり
29(S)  Wohl kenn' ich Euren Stand,der nicht gering 賤しからぬあなた様の御身分は重々承知しておりますわ
35(T)  Benedeit die sel'ge Mutter 今は亡き君の母上に祝福あれ
39(S)  Gesegnet sei das Grün und wer es trägt! 緑色と、緑を身にまとう人に幸ありますように
38(T)  Wenn du mich mit den Augen streifst und lachst 君が僕をちら見して笑い出し
40(S)  O wär' dein Haus durchsichtig wie ein Glas ああ、あなたのお家がガラスみたいに透き通っていたらいいのに
23(T)  Was für ein Lied soll dir gesungen werden 君にはどんな歌を歌ってあげたらいいのかな
36(S)  Wenn du,mein Liebster,steigst zum Himmel auf あなたが、愛する方よ、天国に昇る時がきたら
33(T)  Sterb' ich,so hüllt in Blumen meine Glieder 僕が死んだら、この体を花で包みこんでおくれ

1:02:52-
26(T)  Ich ließ mir sagen und mir ward erzählt 私がしょっちゅう聞かされた噂では
24(S)  Ich esse nun mein Brot nicht trocken mehr 私はもう濡れていないパンを食べることはありません
42(T)  Nicht länger kann ich singen,denn der Wind ぼくはもう歌えないよ、だって風が
43(S)  Schweig einmal still,du garst'ger Schwätzer dort ちょっと黙ってよ、そこの不愉快なおしゃべり男
31(T)  Wie soll ich fröhlich sein und lachen gar どうして陽気でいられるもんか、まして笑うことなんて
28(S)  Du sagst mir,daß ich keine Fürstin sei 侯爵夫人様じゃないんだからって、あたしに言うけど
27(T)  Schon streckt' ich aus im Bett die müden Glieder ベッドの中でへとへとの体を大きく伸ばしているというのに
25(S)  Mein Liebster hat zu Tische mich geladen 彼氏があたしを食事に招いてくれたの
44(T)  O wüßtest du,wie viel ich deinetwegen おお、お前は分かっているのだろうか、どれほど俺がお前を思って
32(S)  Was soll der Zorn,mein Schatz,der dich erhitzt? なにを怒っているの、大切な方、そんなに熱くなって
37(T)  Wie viele Zeit verlor ich,dich zu lieben 君を愛することで、どれほどの時間を無駄使いしてきたことか
45(S)  Verschling' der Abgrund meines Liebsten Hütte 深淵が恋人の小屋を飲み込んでしまえ
30(T)  Laß sie nur gehn,die so die Stolze spielt 放っておけばいいさ、あんな高慢ちきを演じる女なんか
46(S)  Ich hab' in Penna einen Liebsten wohnen あたし、ペンナに住んでる恋人がいるの

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F=ディースカウ&ヴェルバ(Fischer-Dieskau & Werba)のヴォルフ映像!(1958年6月16日ブリュッセル)

DFD Wolf Bruxelles 1959(←1958年が正しいと思われます)

名バリトンのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)の若かりし頃の映像を見つけました!
ソプラノのイルムガルト・ゼーフリート(Irmgard Seefried)とピアニストのエリク・ヴェルバ(Erik Werba)との共演でヴォルフ(Hugo Wolf)の「イタリア歌曲集(Italienisches Liederbuch)」演奏会からの映像のようです。
F=ディースカウとヴェルバが演奏しているのは「この世界の生みの親に祝福あれ(Gesegnet sei, durch den die Welt entstund)」です。

こちらの動画をアップして下さった方のコメントでは16.06.1959と書かれてあるのですが、
F=ディースカウの演奏記録をまとめたMonika Wolf氏のサイトを見ると、1958年が正しいようです。

いずれにしても、この演奏が客席の雰囲気も含めて映像で見られるのは貴重で、リートファンにとっては宝物を見つけた気分です!

33歳の最も声が美しく、脂ののっていた頃のF=ディースカウの歌唱が楽しめます!

短いですが、ぜひご覧ください。

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マティス、ファスベンダーらによる重唱曲集発売(ORFEOレーベル: 1974年8月25日ザルツブルク音楽祭ライヴ)

Mathis_fassbaender_schreier_berry_w


超豪華なリート演奏家たちによるザルツブルク・ライヴ音源がORFEOレーベルから発売されるそうです(amazonでは発売日は2018/10/12となっています)。
録音は1974年で、マティス、ファスベンダー、シュライアー、ベリーがヴェルバ、シルハウスキーのピアノで、シューマンとブラームスの重唱曲を歌っています。
これは楽しみです。
全員集合したジャケット写真を見るだけでもわくわくしますね!
興味のある方はぜひ入手を検討されてみてはいかがでしょうか。

 こちら

シューマン(Schumann)/スペインの歌芝居 (Spanisches Liederspiel, Op. 74)

ブラームス(Brahms)/愛の歌-ワルツ(Liebeslieder-Walzer, Op. 57)

録音:1974年8月25日, Großes Festspielhaus, Salzburg (live)

エディト・マティス(Edith Mathis)(S)
ブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender)(A)
ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
ヴァルター・ベリー(Walter Berry)(BS)
エリク・ヴェルバ(Erik Werba)(P)
パウル・シルハウスキー(Paul Schilhawsky)(P) (ブラームスのみ)

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エリック・ヴェルバ没後20年

今日4月9日は、かつて歌曲の名伴奏者と謳われたオーストリアのピアニスト、エリック・ヴェルバ(Erik Werba: 1918年5月23日, Baden, Niederösterreich - 1992年4月9日, Hinterbrühl)が亡くなって丸20年の命日である。
日本人をはじめ多くの国の歌手たちを育て、伴奏をし、教育者としても知られていたうえに、ヴォルフの伝記や演奏批評など文筆活動も行っており、作曲までしていたというまさにマルチな才能をもった音楽家であったようだ。
私がクラシック音楽を聴き始めた1980年代にはまだたまに来日もしており、音楽誌のコンサートリストにヴェルバの名前が掲載されていたのも覚えているのだが、残念ながら彼の実演を一度も聴くことがなかった。
いつでも聴けると思って結局聴かないうちに亡くなってしまうというのは悔しいものである(余談だが、リヒテルも頻繁に来日していたのだから一度ぐらい生で聴いてみたかった)。

そんなヴェルバだが、彼の録音に関しては、例えばジェラルド・ムーアやジェフリー・パーソンズほどには熱心に聴いていなかったということもまた事実である。
LP時代に膨大な録音を残していた彼だが、当時私のもっていたレコードやCD、あるいはエアチェックしたカセットテープの中にヴェルバの演奏した録音が意外と少なかったということもあり、有名なわりにはあまりその演奏ぶりを味わってはいなかった。
しかし、当時LPを置いていた図書館から借りてきたレコードの中で忘れられないものがある。
ソプラノのイルムガルト・ゼーフリート、バリトンのエーバーハルト・ヴェヒターと共演したヴォルフ作曲「スペイン歌曲集」抜粋のLPである。
全曲でないのが残念なぐらいに魅力的な作品と演奏で、一気に気に入ってしまったのを覚えている。
ゼーフリートの硬質な声もヴェヒターのめりはりのある歌唱も見事ながら、歌手に完全に従うというのではなく、自分のテンポにこだわりを見せつつ、それでいて歌とずれずに共に進んでいくヴェルバのピアノ演奏がなかなか面白かったものであった。
ゼーフリートやクリスタ・ルートヴィヒ、ニコライ・ゲッダ、ヴァルター・ベリーなどはムーアとも共演したけれど、ヴェルバとの共演の機会の方が多かったのではないか。
「冬の旅」をライフワークにしているバス歌手、岡村喬生もムーアとはおそらく共演しなかったが、ヴェルバとは国内外で共演していたらしい。
岡村氏の著書の中で、ある晩眠れない岡村さんが隣の部屋の電気がまだついていることを確認してヴェルバのもとへ行ってみると、彼が机の上で「冬の旅」の移調譜を書いていたというエピソードが紹介されている。
ヴェルバほどの達人であっても、「冬の旅は難しい」と新たな移調譜を作っているというのは、伴奏者として真摯に作品に向き合っている証ではないか。

現在ヴェルバの録音はザルツブルク音楽祭のライヴ録音シリーズで沢山入手することが出来る。
それらの中の例えばシュライアーと共演したドヴォルジャークの「ジプシーの歌」に関しては、現役の一流伴奏者に「音符どおりに弾かずにグリッサンドにしてしまっている」ことを指摘されてしまっている。
確かにヴェルバのテクニックは、技巧的な作品においては危なっかしい箇所がないとはいえないだろう。
だが、歌手を導き、支え、作品の魂を知り尽くし、それを自らのものにした演奏は、単なるテクニシャンには出せない味わいを醸し出し、歌手たちの歌唱の自発性をも引き出す能力は、彼のユニークな美点であろう。
バスバリトンのハンス・ホッターと1960年代に録音した「冬の旅」は、ヴェルバの代表的な録音の一つだと思うが、そこには歌い手と共に歩む同伴者としてのヴェルバの良さがあらわれているように感じる。
彼と共演した膨大な歌手たちのリストは、このピアニストがおそらく実演でどれほど歌手たちを安心させ、助け、作品を高みに引き上げていたかを物語っているのでないだろうか。

彼の演奏がほぼ歌手との共演に限定されていて、楽器奏者との演奏があまりなかったということも、ヴェルバの演奏の特質をあらわしているのではないか。

最後に彼の演奏するヴォルフの「少年鼓手」の動画をご紹介しておきます。
歌っているのはバリトンのヴァルター・ベリーです。

 こちら

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