岡田博美/ピアノリサイタル2014~悪魔のささやき-ショパンとスクリャービン~(2014年12月13日 東京文化会館 小ホール)
岡田博美 ピアノリサイタル2014
~悪魔のささやき-ショパンとスクリャービン~
2014年12月13日(土)14:00 東京文化会館 小ホール
岡田博美(Hiromi Okada)(ピアノ)
ショパン(Chopin)/バラード 第2番 ヘ長調, Op.38
ショパン/即興曲 嬰ハ短調(幻想即興曲)
ショパン/マズルカ ヘ短調(遺作)
ショパン/ソナタ 第2番 変ロ短調, Op.35「葬送」
~休憩~
スクリャービン(Scriabin)/左手のためのプレリュードとノクターン, Op.9
スクリャービン/悪魔的詩曲, Op.36
スクリャービン/ソナタ 第5番, Op.53
スクリャービン/3つのエチュード, Op.65
スクリャービン/ソナタ 第9番, Op.68「黒ミサ」
~アンコール~
スクリャービン/アルバム・リーフ, Op.45-1
ショパン/エチュード, Op.10-4
スクリャービン/エチュード, Op.2-1
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毎年恒例のイギリス在住ピアニスト、岡田博美のリサイタルに今年も出かけた。
今年は会場の東京文化会館の改修工事の為、例年よりも遅い12月の開催であった。
「悪魔のささやき」と題して、ショパンとスクリャービンの作品の中からデモーニッシュな要素のある作品が選ばれた。
前半のショパンはほぼ私にも馴染みのある作品が並び、普段あまり悪魔的と意識しなかった作品も見方によってはそうともとれるということを教えてもらった。
あまりにも有名な「幻想即興曲」は一般的に弾かれる出版譜ではなく、ショパン自身の最終稿による演奏とのことだったが、以前ルービンシュタインの録音を聴いた時も確かこのショパン最終稿だったのではないか。
珍しいものを聴かせてもらった。
岡田氏のショパンは、いわゆるショパン弾きたちの繊細でセンチメンタルな演奏とは全く異なるもので、いつもながらの岡田さんのストレートなアプローチが逆に新鮮に感じられた。
過度な思い入れを排除した、高度で安定したテクニックを駆使した演奏は、手垢のついたショパンの演奏に新鮮な響きを与えていた。
岡田さんのたこのような長い指が縦横無尽に鍵盤を駆け回る様は視覚的にも引き寄せられる。
後半のスクリャービンは寡聞にして私にははじめて聴く作品ばかりだった。
事前にも予習をしなかったので、この場ではじめて耳にしたのだが、初期から作曲順に並べられた作品群は一人の作曲家の軌跡・変化が感じられて興味深い時間だった。
初期の「左手のためのプレリュードとノクターン」は耳になじみやすいロマンティックな作品だが、左手だけでこれだけ豊かな響きを再現する岡田さんの妙技に酔いしれた。
その後の「悪魔的詩曲」はたびたびあらわれるスタッカートが印象的で「偽善の神格化としての小悪魔」(寺西基之氏の解説)を描いているという本人のコメントがあるそうだ。
「ソナタ 第5番」「ソナタ 第9番」は共に単一楽章で、スクリャービンを特徴づける神秘主義的な響きがあらわれているのだろう。
岡田さんの演奏は超絶技巧をあたかもなんでもないかのように平然と弾きのける。
そして1曲ごとに客席のボルテージも上がり、拍手とブラボーの声がかかる。
アンコールもショパンとスクリャービンの作品。
最後のスクリャービンのエチュードはかつて中村紘子さんがテレビの番組で演奏していたのを思い出した。
美しい曲である。
来年のプログラムはまだ決まっていないようだが、楽しみにしたい。
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