新国立劇場/ワーグナー作曲「パルジファル」(2014年10月11日 新国立劇場 オペラパレス)
新国立劇場
2014/2015シーズン オペラ
パルジファル/ワーグナー作 全3幕〈ドイツ語上演/字幕付〉
2014年10月11日(土)14:00 新国立劇場 オペラパレス
(第1幕:115分-休憩:45分-第2幕:70分-休憩:35分-第3幕:75分)
【アムフォルタス】エギルス・シリンス
【ティトゥレル】長谷川 顯
【グルネマンツ】ジョン・トムリンソン
【パルジファル】クリスティアン・フランツ
【クリングゾル】ロバート・ボーク
【クンドリー】エヴェリン・ヘルリツィウス
【第1・第2の聖杯騎士】村上 公太、北川 辰彦
【4人の小姓】九嶋 香奈枝、國光 ともこ、鈴木 准、小原啓楼
【花の乙女たち(声のみの出演)】三宅 理恵、鵜木 絵里、小野 美咲、針生 美智子、小林 沙羅、増田 弥生
【アルトソロ】池田 香織
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指 揮】飯守 泰次郎
【演 出】ハリー・クプファー
【演出補】デレク・ギンペル
【装 置】ハンス・シャヴェルノッホ
【衣 裳】ヤン・タックス
【照 明】ユルゲン・ホフマン
【舞台監督】大仁田 雅彦
【合唱指揮】三澤 洋史
【芸術監督】飯守 泰次郎
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新国立劇場のヴァーグナー作曲「パルジファル」を見た。
飯守 泰次郎の指揮ということも注目だった。
ハリー・クプファーが新国立劇場のためにつくった新演出は、あちこちで情報を目にしていたので、ある程度は予想できるものだったが、それにしても舞台装置が凄かった。
ステージの手前から奥までジグザグの道があり、その道が様々な映像に変化する仕掛けになっている。
さらに道は途中で上げ下げが出来るようになり、断絶させて意味をもたせることも出来るし、上がってきた時に新しい人物が登場したりもする。
さらに槍の先のような細長い棒が動き回り、そこにクンドリが乗っていたり、アンフォルタスが乗っていたりする。
その棒は様々な色に光輝くようになっていて、物語の進行に合わせて、変化する。
さらに聖杯の置き場所にもなっていた。
そんな大がかりなセットの中、登場人物の衣装は基本的に斬新さはなかったように思うが、合唱団演じる聖杯騎士たちは白地の宇宙服っぽい感じに見えた(4階席から見たので違っているかもしれません)。
第2幕の花の乙女たちは歌手は登場せずに奥で歌い、女性ダンサー8人ぐらいがエロティックなダンスでパルジファルを誘惑していた。
そして最初から最後まで頻繁に舞台後方に現れて、パルジファルたちの行く手を見守っていたのが、クプファー・オリジナルの仏教僧3人である。
彼らがこの演出の最後の鍵を握ることになるのだが、クプファーによると、ヴァーグナーは仏教にも関心をもっていて、この「パルジファル」においてキリスト教と仏教を「倫理的なレベルで結び合わせた」のだそう。
両者の信者がこの演出を見たらどう思うのかは分からないが、一つの解釈として成立するものではあるだろう。
歌手陣は総じて声のよく通る見事な出来栄えを示したが、私が断トツに感銘を受けたのがグルネマンツを演じたジョン・トムリンソンである。
すでに70近いそうだが、その渋みあふれる語り口と、登場人物を包み込むような大きな包容力が、どれほどこのオペラの奥行きを深めていたことか。
主役を食ってしまうほどの素晴らしさだった。
カーテンコールの時の拍手の大きさもそれを物語っているだろう。
そしてタイトルロールのクリスティアン・フランツは以前「ジークフリート」でスーパーマンTシャツを着て出演していたのを思い出すが、彼の凛々しいテノールもまた素晴らしいものだった。
惜しむらくは見栄えが中年のおじさん(失礼)なので、タイトルロールとしての華には若干欠けるものの、パルジファルの純真無垢な性格には合っていると言えるかもしれない。
クンドリのエヴェリン・ヘルリツィウスは声質はバーバラ・ヘンドリックスを思い出させたが、ヴァーグナー歌手の声の迫力をしっかり有していた。
それに加え、見た目も美しく、第2幕では官能的な演技でクリングゾルと渡り合っていた。
それにしても聖俗併せ持つクンドリという女性は本当に不思議な存在だなといつも思う。
ヘルリツィウスはその点、真逆のキャラクターをうまく演じ分けていたと思う。
それからアンフォルタスのエギルス・シリンスと、クリングゾルのロバート・ボークも声量の豊かさと語りのうまさ、さらに演技力で惹きつけられた。
二期会の応援も得た新国立劇場合唱団の歌はいつもながら力強く深みもあった。
飯守泰次郎の指揮はどうやら遅めだったようだが、私はあまり聴き込んでいないのでそのへんはよく分からない。
ただ第3幕でグルネマンツやパルジファルがオケに合わせてゆっくり歌っているようには聞こえた。
だが、飯守氏の指揮による東京フィルは健闘したのではないか。
弦のトレモロなど実に美しかった。
最後のシーンに感動したのは舞台上の視覚的な要素だけではないと私には思えた。
長丁場だが、作り込んだプロダクションによって、充実した感銘を受けることが出来た。
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