シューベルト/「森の夜の歌」D913を聴く

Nachtgesang im Walde, D913
 森の夜の歌

Sei uns stets gegrüßt, o Nacht,
aber doppelt hier im Wald,
wo dein Aug' verstohlner lacht,
wo dein Fußtritt leiser hallt!
 常に我々の挨拶を送ろう、おお夜よ、
 だがここ森の中では二倍もの挨拶を送ろう、
 そこはあなたの目がそっと笑う場所、
 そこはあなたの足音がより静かに響く場所!

Auf der Zweige Laubpokale
gießest du dein Silber aus;
hängst den Mond mit seinem Strahle
uns als Lamp' ins Blätterhaus.
 枝の葉で出来た杯の上で
 あなたはあなたの銀の輝きを注ぐ。
 月をその光で
 葉の家の我々へランプのように注ぎ入れる。

Säuselnde Lüftchen sind deine Reden,
spinnende Strahlen sind deine Fäden,
was nur dein Mund beschwichtigend traf,
senket das Aug' und sinket in Schlaf!
 そよいで音をたてるそよ風はあなたが語っているのだ。
 紡ぐ光はあなたの糸なのだ。
 ただあなたの口がなだめながら当たったものは
 目を閉じ、眠りに沈む。

Und doch, es ist zum Schlafen zu schön,
drum auf, und weckt mit Hörnergetön,
mit hellerer Klänge Wellenschlag,
was früh betäubt im Schlummer lag!
 しかし、眠るには美しすぎる。
 だから起きよ、目覚めるのだ、角笛の響きで、
 より明るい響きの打ち寄せる波の音で。
 朝にぼうっとして横たわって寝ていたものよ。

Es regt in den Lauben des Waldes sich schon,
die Vöglein, sie glauben, die Nacht sei entflohn,
die wandernden Rehe verlieren sich zag;
sie wähnen, es gehe schon bald an den Tag,
die Wipfel des Waldes erbrausen mit Macht,
vom Quell her erschallt es, als wär' er erwacht!
 森のあずまやでもう動いているのは
 小鳥たち、それらは夜が逃げてしまうと思っている。
 歩くノロジカはおずおずと姿を消す。
 それらはもうすぐ日がのぼると信じこんでいる。
 森の梢は勢いよく鳴り響く。
 泉から響いてくる、あたかも一日が目覚めたかのように!

Und rufen wir im Sange:
"Die Nacht ist im Walde daheim!",
so ruft auch Echo lange:
"Sie ist im Wald daheim!"
 我々は大声で歌おう、
 「夜は森の中が我が家なのだ!」と。
 するとこだまが長く返すだろう、
 「それは森の中が我が家なのだ!」と。

Drum sei uns doppelt hier im Wald gegrüßt,
o holde, holde Nacht,
wo Alles, was dich schön uns malt,
uns noch weit schöner lacht.
 だから森のこの場所では我々からの二倍もの挨拶を送ろう。
 おおいとしい、いとしい夜よ、
 あなたを美しく描くものはすべて
 さらに遠くでより美しく笑っている。

詩:Johann Gabriel Seidl (1804-1875)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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Zu-Simolinさん、大変お待たせしました!!
Zu-Simolinさんのリクエストにより、シューベルトの「森の夜の歌」を取り上げます。
男声合唱と4つのホルンという珍しい編成の合唱曲です。
いかにもドイツの森の情景が目に浮かぶような楽しい作品ですね。
テキストに沿って、音楽も快活な箇所や静かな箇所など、異なる雰囲気の音楽が連続して進行していきます。
それだけに合唱にもホルニストたちにも高い技術と表現力が求められているように感じられます。

Vienna Vocalists, Ensemble of the Vienna State Opera Chorus他

勢いがあって表情豊かでいい合唱だと思います。ホルン合奏はやはり難しそうですね。

九大男声&荒谷俊治(C)他

日本の演奏家が繊細に美しく歌っています。ホルン奏者たちも見事ですね。

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シューベルト/「夜の明るさ」D892(テノール独唱&男声合唱&ピアノ)

Nachthelle, D 892, für Tenor, Männerchor und Klavier
 夜の明るさ

Die Nacht ist heiter und ist rein,
Im allerhellsten Glanz,
Die Häuser schau'n verwundert drein,
Steh'n übersilbert ganz.
 夜は晴れ渡り、澄みきっている、
 この上ない明るい輝きの中で。
 家々はいぶかしげな様子で
 すべてを銀色に染めて立っている。

In mir ist's hell so wunderbar,
So voll und übervoll,
Und waltet drinnen frei und klar,
Ganz ohne Leid und Groll.
 私の中は明るさで、これほど素晴らしく、
 これほど満ちあふれている。
 そしてその中は自由で澄んでいる、
 悩みも憤りも全くなく。

Ich fass' in meinem Herzenshaus
Nicht all' das reiche Licht,
Es will hinaus, es muss hinaus,
Die letzte Schranke bricht.
 私はわが心の家の中に
 豊かな光をすべて捕えているのではない。
 それは外へ行きたがり、外へ行かねばと
 最後の障壁を突き破るのだ。

詩:Johann Gabriel Seidl (1804-1875)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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Zu-simolinさんのリクエストにお答えしてシューベルトの合唱曲「夜の明るさ」を聴いてみましょう。
テノール独唱と男性合唱が同じテキストを繰り返しながら交互に歌い進めていきます。
ピアノはちかちか点滅する光を表現しているようです。
第3節3~4行の月や星の光が心の外に出ようとしていると歌われる箇所でメロディーに動きが見られるのが聴きどころの一つと言えるでしょう。

ペーター・シュライアー(T)&Capella Bavariae&ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)

早めのテンポで歌われるシュライアーの清澄な声の表現力に引き込まれます。合唱の素朴さも好ましいです。サヴァリシュのスマートなピアノの響きも印象的です。

マルクス・シェーファー(T)他&ウルリヒ・アイゼンローア(P)

M.シェーファーは美声でしっとりと歌い上げます。合唱は丁寧な歌いぶりです。アイゼンローアも光の点滅を美しく演奏しています。

ダニエレ・ベーレ(T)&RIASベルリン室内合唱団&Sveinung Bjelland(P)

まろやかな美声で歌われるベーレの歌声に惹きつけられます。合唱とピアノもよい演奏です。

ヤン・ペトリカ(T)&アルノルト・シェーンベルク合唱団&ピエール=ロラン・エマール(P)

ペトリカは合唱とよく溶け込んだ自然な歌唱を聴かせます。合唱も美しいです。エマールが細やかな表情を聴かせてくれます。

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木琴

http://www.youtube.com/watch?v=cOJN0zto_vs

私が小学生のころに聴いた合唱曲で今でも記憶に残っている作品は残念ながらそれほど多くない。
しかし、この「木琴」という作品は、何年生のどういう状況で聴いたのか(あるいは歌ったのか)思い出せないのだが、リフレインの箇所と途中の悲劇的な描写の詩と音楽はかなり鮮明に覚えていた。

動画サイトにアップされていたこの作品をさきほど聴いた。
ほとんど30年ぶりぐらいである。

月並みな言い方だが、詩や音楽のもつ強烈な力を思い知らされた。
毎年訪れるこの季節に、実体験のない者でも何かしら思いを馳せることによって未来の平和につながればと祈りたい。

詩:金井直(1926年-1997年)
曲:岩河三郎(1923年生まれ)

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