吉田恵/J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第11回(12月5日 日本大学カザルスホール)

J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第11回

Yoshida_2009122009年12月5日(土)19:00 日本大学カザルスホール(全自由席)
吉田恵(Megumi Yoshida)(ORG)

J.S.バッハ(1685-1750)

前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532

いと尊きイエスよ,われらここに集いて BWV730
イエスよ,わが喜び BWV713
心よりわれこがれ望む BWV727
天にましますわれらの父よ BWV737
神の子は来たりたまえり BWV724
主イエス・キリストよ,われらを顧みて BWV709, 726
甘き喜びに包まれ BWV729
わが確き望みなるイエスは BWV728
いと尊きイエスよ,われらここに集いて BWV731

トリオ ハ短調 BWV585

コーラル・パルティータ《ああ,罪びとなるわれ,何をなすべきか》 BWV770

 ~休憩~

ソナタ 第3番 ニ短調 BWV527

ノイマイスター・コラール集より
 おお,イエスよ,いかに汝の姿は BWV1094
 おお,神の子羊,罪なくして BWV1095
 ただ汝にのみ,主イエス・キリストよ BWV1100
 汝,平和の君,主イエス・キリスト BWV1102
 主よ,われら汝の御言葉のもとに留めたまえ BWV1103
 イエスよ,わが喜び BWV1105
 神はわが救い,助けにして慰め BWV1106
アリア ヘ長調 BWV587
ノイマイスター・コラール集より
 イエスよ,わが命の命 BWV1107
 イエス・キリストが夜に BWV1108
 ああ神よ,憐れみたまえ BWV1109
 おお主なる神よ,汝の聖なる御言葉は BWV1110
 キリストこそわが生命 BWV1112
 わがことを神にゆだね BWV1113
 主イエス・キリスト,汝こよなき宝 BWV1114
 われ,心より汝を愛す,おお主よ BWV1115

パッサカリア ハ短調 BWV582

(アンコール曲1曲)

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冷たい雨が降りしきる土曜日の夜、吉田恵のバッハオルガン作品全曲演奏会の第11回を聴いてきた。
このシリーズも来年の第12回でいよいよ完結である。
カザルスホールのオルガンを聴けるのもあとわずか。
しっかり耳に刻み付けておきたい。

今回も彼女の達者な指使いがよく見えるように2階左側の席をとった。

プログラムは前半後半それぞれのブロックの最初と最後に規模の大きな作品を置き、その中にコラールに基づく小品をさしはさむ形をとっていた。
その結果華やかな雰囲気でスタートし、優しい癒しの響きが中盤を占め、最後にまた重量感のあるドラマティックな作品で締めくくるという変化に富んだ流れが形成されていた。

最初の「前奏曲とフーガ ニ長調」では足鍵盤の高度なテクニックを余裕をもって演奏しており、足の動きを見てみたいところだが、このホールでは足が見えないつくりになっているのが残念。
ノイマイスター・コラール集からの「ただ汝にのみ,主イエス・キリストよ」BWV1100では指の高度なテクニックがたっぷり披露された。

今回は面白い音響効果を聴くことが出来た。
「甘き喜びに包まれ」BWV729では、鈴の音のような響きを曲の間中鳴らしていて、クリスマスをイメージさせた。
「おお主なる神よ,汝の聖なる御言葉は」BWV1110では鳥のさえずりのような音を、助手の女性が特定のストップを押したり引いたりして曲に合わせて響かせていた。
このような響きのストップがあるとは知らなかったので驚いたが、使える曲が限られるだろうから、今回この場に居合わせることが出来て幸運だった。

この日一番のクライマックスはやはり最後の「パッサカリア ハ短調」である。
私もバッハのオルガン曲中、最も好きな作品なので、久しぶりに生で聴けて嬉しかった。
この曲、最初にパッサカリアの主題8小節(アンドレ・レゾンという人の作品からとられている)が提示されて、それが様々に変奏されていく形をとるが、吉田恵はこの曲の演奏前に、鍵盤上方の扉を左右に開けて、中にあったパイプの響きが直接客席に届くようにしていた。
彼女は最初の足鍵盤のみによる主題提示から、すでに大音量で威勢良く始めていたが、私の好みでは、ここは神秘的に抑えて始めて、それから徐々に盛り上げていく方が好きである。
しかし、彼女の並々ならぬ積極性は最後まで貫かれ、かなりドラマティックな演奏となっていた。
後半は同じ主題による「フーガ」となり、多くの演奏では、フーガのはじまる前に和音を弾きのばしていったん区切りをつけてからフーガに進むパターンがよくあるが、彼女は区切らずにすぐにフーガに移行したのが珍しく、新鮮に感じられた。

アンコールはジグザグの下降音形が特徴的な短い曲が1曲演奏された(コラール集の曲だろうか)。

今回彼女の2度目の実演に接して感じたのは、とてもよく回る指で軽快に弾き進めると同時に、感情表現に「ため」を使い、それが効果的に響いていたが、流れが若干停滞して感じられる時もあった。
しかし、抜群のテクニック(手と足の両方)で常に安定した演奏を聴かせてくれたのはやはり素晴らしかった。

前半50分、後半1時間の長大なプログラムだったが、30曲(+アンコール1曲)をいささかの弛緩もなく弾ききった彼女に拍手を贈りたい。
美しい響きの余韻にひたりながら会場を出ると、すでに雨は止んでいた。

Yoshida_200912_chirashi

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椎名雄一郎/J.S.バッハ オルガン全曲演奏会(10月3日 日本大学カザルスホール)

椎名雄一郎 J.S.バッハ オルガン全曲演奏会
Shiina_20091003_pamphlet第7回 名オルガニスト バッハ
2009年10月3日(土) 15:00 日本大学カザルスホール(1階H列1番)

椎名雄一郎(Yuichiro Shiina)(ORG)

J.S.バッハ作曲

前奏曲とフーガ ト長調 BWV541
天にまします我らの父よ BWV737
主なる神よ、我を憐れみたまえ BWV721
いまぞ喜べ、汝らキリスト教の徒よ BWV734
バビロンの流れのほとりに BWV653b
我らが神の堅き砦 BWV720
前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532

~休憩~

前奏曲とフーガ ハ長調 BWV531
小フーガ ト短調 BWV578
トリオ ハ短調 BWV585(Adagio / Allegro)
パルティータ<イエス・キリストよ、汝、真昼の光> BWV766
協奏曲 ニ短調 BWV596(原曲 ヴィヴァルディ《調和の霊感》作品3-11)([Allegro]-Grave / Fuga / Largo e spiccato / Allegro)

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椎名雄一郎のオルガンコンサートを御茶の水のカザルスホールで聴いてきた。
2005年3月から2014年までの全12回でバッハのオルガン曲全曲を演奏しようという壮大な企画の7回目で、私は今回はじめて彼の演奏を聴くことが出来た。
会場は満席で、この壮大な企画が多くの聴衆の支持を得ていることを実感させられた。
また、吉田恵さんのコンサートに続いて、再びカザルスホールのアーレント・オルガンに再会出来たのもうれしかった。
来年3月の使用中止の前に、都合のつく限り訪れて、記憶に残しておきたいと思っている。

椎名さんは毎回テーマを設けてプログラミングしているようで、今回はオルガニストとして高い技術をもっていたバッハに焦点をあてた回となった。
特に足鍵盤の技術は高く評価されていたとのこと。
オルガニストは両手を使うだけでなく、両足も使って足鍵盤を正確に踏まなければならない。
その足鍵盤の高度な技術を発揮できる作品(例えば「前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532」や「前奏曲とフーガ ハ長調 BWV531」)が選曲されていた。

前半、後半とも最初と最後に規模の大きな作品を置き、その中に小さな作品をはさみこむ構成をとる。
それによって、聴き手は変化に富んだバッハの多彩さを満喫することが出来た。

椎名さんは高度な技術を要求される作品でも、コラールによる穏やかな作品でも、しっかりとした安定感で、堂々たる音楽を奏でていたと思う。
カザルスホールのオルガンは足の部分が隠されていて聴衆には見えないのが残念だが、全く危なげのない演奏で、あたかも手で弾いているかのようだった。
一方、「天にまします我らの父よ BWV737」のような小品は、穏やかで敬虔な響きが聴く者を癒してくれた。

有名な「小フーガ ト短調 BWV578」が聴けたのは個人的にはうれしかったが、同じ曲でも人によって選択する音栓は様々なようで、椎名氏は随分可愛らしい音色を選択していた。

最後の「協奏曲 ニ短調 BWV596」はヴィヴァルディの「調和の霊感」のオルガン編曲作品だが、ヴィヴァルディの作品を編曲することによってその作風を研究するというバッハの意図を超えて、一つの作品として、あたかもオリジナルのような充実した音楽となっていたのはバッハの才能を示していると言えるのではないか。

吉田さんの時もそうだったが、椎名さんも拍手に応える際に、アーレントオルガンにも手をかざして、楽器とともに拍手を受けていたのが印象に残った。

アンコールは無かったが、充実した音楽をたっぷり満喫できたので充分満足して帰路につくことが出来た。

Shiina_20091003_chirashi

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吉田 恵/J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第10回(6月13日 日本大学カザルスホール)

J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第10回
Yoshida_2009062009年6月13日(土) 19:00 日本大学カザルスホール(全自由席)
吉田 恵(Megumi Yoshida)(ORG)

J.S.バッハ(1685-1750)作曲

ファンタジー ハ短調BWV562

ノイマイスター・コラール集より
 心より慕いまつるイエスよ, 汝いかなる罪をBWV1093
 キリストよ,受難せる汝に栄光あれBWV1097
 深き淵より,われ汝に呼ばわるBWV1099
 アダムの堕落によりてことごとく腐れたりBWV1101
 よし災いの襲いかかろうともBWV1104
 ああ主よ,哀れなる罪人われをBWV742
 いまぞ身を葬らんBWV1111
 人はみな死すべきさだめBWV1117

プレリュードとフーガ ハ短調BWV546

~休憩~

協奏曲ニ短調BWV596

ああ主なる神よBWV714
キリストは死の縄目につながれたりBWV695
キリストは死の縄目につながれたりBWV718
われ汝に別れを告げんBWV735
われ汝に別れを告げんBWV736

プレリュードとフーガ ロ短調BWV544

~アンコール~
装いせよ汝,おお愛する魂よBWV654

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オルガニストの吉田恵が2004年に始めたというバッハオルガン作品全曲演奏会の第10回目を聴いてきた。
5月のラ・フォル・ジュルネではバッハがテーマでありながらオルガン曲を聴けなかったのが物足りなかったので、今回のこの演奏会は早くからチェックしていた。
彼女のほかに椎名雄一郎も12回にわたるバッハ連続シリーズを継続中で、前回聴こうと思ったのだが完売だったので、次回までお預けである。

今回の吉田さんの演奏会、バッハの全曲シリーズというだけでもその志の高さに感銘するのだが、来年残念ながら閉館の予定という日大カザルスホールのアーレント・オルガンを演奏してくれるのがうれしい。
私も日大の所有になる前は何度かこのホールに足を運んだものだが、オルガン演奏はおそらく聴いていなかったと思う。
今回は自由席なので、2階に据え付けられたオルガンが見やすいように2階席左側で聴いた。

カザルスホールのオルガンはバッハの時代当時のオルガンを復元したものとのことで、パイプはすべて木の枠に上向きにきっちり収まっていて、2階の壁から出っ張った木のボックスごと一つの楽器という印象である。
華美な装飾があるわけでなく、一見こじんまりした印象すら受けるこの楽器がどのような音を出すのか興味津津で開演を待った。

吉田さんはストップ操作の女性を伴って登場した。
吉田さんが左側の音栓、助手の女性が主に右側の音栓を準備して演奏がはじまる。
最初の「ファンタジー ハ短調」が静かに鳴った瞬間、その優しい響きに魅せられた。
吉田さんの演奏はとても良く回る指で軽快に進められる。
テクニック的に全く危なげない指使いとペダリング(このオルガンは足が聴衆から全く見えないつくりになっているのがちょっと残念)で、オルガンの多彩で優しい音色を見事に引き出していたと思う。

「ノイマイスター・コラール集」は、プログラムノートの金澤正剛氏によると、アメリカ、イェール大学の図書館で1984年に発見されたばかりの作品集で、手写した人の名前をとって「ノイマイスター・コラール集」と呼ばれるようになったそうだ。
この中から8曲が演奏されたが、どれも短く親しみやすい曲である。
かつて偽作説があったという「ああ主よ,哀れなる罪人われを」はそういわれてみるとバッハっぽくない感じもするが、「ノイマイスター・コラール集」に含まれていたことでバッハの作品と確認されたそうだ。

前半最後の「プレリュードとフーガ ハ短調」はドラマティックで悲痛な雰囲気が胸に迫ってくる。
吉田さんの演奏はプレリュードとフーガの間で若干の間を置きながらも、流れが中断されないように演奏していたように感じた。

後半最初の「協奏曲ニ短調」はヴィヴァルディの「調和の霊感」第11曲を編曲したもの。
バッハはこのようにヴィヴァルディの研究に勤しんでいたが、研究のための編曲ということでオリジナルに忠実なものになっているようだ。
曲調がほかの作品と違うので、バッハだけで組まれたプログラムでちょっとした気分転換になった気がする。

その後には若いころにバッハがつくったコラール作品5曲。
こちらは「ノイマイスター・コラール集」と違って1曲1曲がしっかりした長さをもっている。
オリジナルのコラールを知っているとさらに楽しめるのだろう。

最後の「プレリュードとフーガ ロ短調」は壮大な作品である。
金澤氏も「バッハ後期の代表作」と表現しておられる。
後半のフーガの主題は「コンドルは飛んでいく」みたいで覚えやすい。
この主題が次々とフーガになって展開していき、素敵な作品であった。

アンコールで弾かれた小品も穏やかで優しく心地よい気持ちになった。
カーテンコールで何度も呼び戻された吉田氏は、アーレント・オルガンにも手をかざして、楽器とともに拍手にこたえていたのが印象的だった。
華麗すぎない、いぶし銀のような優美な音色に心癒された時間を過ごすことが出来て、満足して家路につくことが出来た。

カザルスを記念したこのホール、開演を知らせるベルの代わりにカザルスゆかりの「鳥の歌」のメロディが流れ、このホールでカザルスの盟友だったあのホルショフスキーも演奏したのだと思うと、やはり感慨深いものがある。
それにしても、このオルガンは閉館後にはどうなってしまうのだろう。
解体ということにはならないことを祈りたい。

Yoshida_200906_chirashi_2

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