椎名雄一郎/J.S.バッハ オルガン全曲演奏会第11回(2014年5月18日 東京芸術劇場コンサートホール)

《椎名雄一郎 J.S.バッハ オルガン全曲演奏会》
第11回「ライプツィヒ・コラール集」
~様々な手法による18のライプツィヒ・コラール集

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2014年5月18日(日)14:30 東京芸術劇場コンサートホール
椎名雄一郎(Yuichiro Shiina)(ORG)
石川洋人(Hiroto Ishikawa)(テノール:コラール唱)
淡野太郎(Taro Tanno)(バリトン:コラール唱)

ファンタジア「来たれ、聖霊、主なる神よ」BWV651
「来たれ、聖霊、主なる神よ」BWV652
「バビロンの流れのほとりにて」BWV653
「身を飾れ、おお愛する魂よ」BWV654
トリオ「主イエス・キリストよ、われらに目を向けたまえ」BWV655
「おお、罪のない神の子羊」BWV656
「いざ、もろびと、神に感謝せよ」BWV657
「わたしは神から離れまい」BWV658

〜休憩〜

「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659
「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV660
「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV661
「いと高きところの神にのみ栄光あれ」BWV662
「いと高きところの神にのみ栄光あれ」BWV663
「いと高きところの神にのみ栄光あれ」BWV664
「イエス・キリスト、われらの救い主は」BWV665
「イエス・キリスト、われらの救い主は」BWV666
「来たれ、創り主にして聖霊なる神よ」BWV667
「われら苦しみの極みにあるとき」BWV668a

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椎名雄一郎のJ.S.バッハ オルガン全曲演奏会の第11回に出かけた。
来年の第12回が最終回とのことで、長く地道な計画を継続されてきたことに敬意を表したい。

以前彼の演奏を聴いたのは今は一般使用されていない御茶ノ水のカザルスホールだった。
あの後、カザルスホールの一般使用を求める活動が有志でされていたと記憶するが、どうなったのだろうか。

まあそれはともかく、椎名氏のバッハ全曲シリーズは池袋の東京芸術劇場に場所を移して継続されている。
普段オーケストラの定期公演に行く習慣のない私は、この東京芸術劇場に来るのもおそらく20年ぶりぐらいである。
前回何のコンサートで来たのかも全く思い出せないほどの無沙汰である。
今住んでいる場所から決して遠いわけではないのだが、来る機会がなく(池袋へはしばしば来るのだが)、今回が本当に久しぶりの訪問となった。

以前は東京芸術劇場のコンサートホールのフロアまで長~いエスカレーターが続いていたと記憶するのだが、現在は改装されて途中に一度踊り場が出来ていた(いまさらだが)。
そういえばこのホールでオルガンを聴いたのもはじめてかもしれない。
確かバロック用と現代用の2種類のオルガンが設置されていたと思うが、今回はもちろんバロックオルガンによる。

今回演奏された「ライプツィヒ・コラール集」は、この為にバッハが新たに作ったのではなく、以前に作ったものからの選集で、椎名氏曰く「バッハの自信作」となっているようだ。
今回はテノールの石川洋人とバリトンの淡野太郎によるユニゾンで、それぞれのオルガン曲に使用された元のコラールが歌われてからオルガンが演奏された。
2人の歌手はオルガン演奏中はオルガンのホール奥の暗い場所に待機して、歌唱の時のみ登場して歌うという形をとっていた。
東京芸術劇場のオルガンはホール2階に設置されていて、椅子は演奏者の足が見えるようになっている為、椎名氏の忙しそうに動くペダルさばきも見ることが出来た。

歌手たちによってア・カペラで素朴で美しいコラールが歌われる時はあたかも時が止まったかのような荘厳な雰囲気がホールを満たし、教会の中にさまよいこんだような錯覚を覚える。
そしてオルガン演奏になると、コンサートホールの適度な残響を伴いながら、バッハの音がクリアに伝わってくるのである。

私は残念ながら各コラールをよく知らない為、バッハが曲の中にどう織り込んだのか判別するのは難しかった。
そのままコラールがむきだしで出てくる曲はあまりなかったように感じたのだが、どうなのだろう。
同じコラールで複数の曲が全く異なる趣で演奏されたりもするので、コラールをテーマにしたバッハの様々な創意工夫といったところなのだろうか。

椎名氏の演奏は安定したテクニックと適切なテンポ感で心地よく聴くことが出来て、心が癒された時間だった。
オリジナルのコラールが歌えるぐらいになれば、バッハがどういうことをしたのかが分かって楽しいかもしれない。

来年の最終回もぜひともうかがって、椎名氏の偉業のひとつの完結を見届けたいと思う。

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小林道夫/チェンバロ演奏会(2011年12月25日 東京文化会館 小ホール)

小林道夫チェンバロ演奏会
~クリスマスをバッハの名曲で静かに過ごす~
2011年12月25日(日)14:00 東京文化会館 小ホール(O列56番)

小林道夫(Michio KOBAYASHI)(harpsichord)

J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲(Goldberg-Variationen)BWV988
 主題~第15変奏

~休憩~

 第15変奏~主題復帰

~アンコール~
J.S.バッハ/クラヴィーア練習曲第3巻~4つのデュエットより第3曲BWV804

※使用チェンバロ:French double-manual harpsichord after P.Taskin 1769 MOMOSE HARPSICHORD 2009

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1972年から毎年12月に続けているという小林道夫の「ゴルトベルク変奏曲」演奏会。
遅ればせながら今回はじめて聴くことが出来た。
計算すると今回がちょうど40回目という記念すべき回になるはずだが、配布プログラムにそのことが全く触れられていないのがいかにも氏らしい。
文化会館小ホールはほぼ満席で、期待の大きさがうかがえた。
途中で休憩をはさむというのも私にとっては有難く感じた(全部まとめて聴きたいという方もいるだろうが)。

小林さんの演奏は含蓄に富んだ温かみのあるタッチが魅力的である。
長年追究されてきた演奏上の様々な成果が反映されていることはおそらく間違いないが、学究的な堅苦しさが全くなく、聴く者を癒す響きが実に心地よい。
不眠症解消の音楽という伝説は伝説に過ぎないとしても、小林氏の素朴な演奏を聴くとアルファ波が脳内にあふれ出ているだろうなと感じてしまう。
奇をてらわずにまっすぐに作品に向き合った演奏、人によってはもっと刺激を求めるのかもしれないが、私にとってはまさに理想の「ゴルトベルク」演奏であった。

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椎名雄一郎/J.S.バッハ オルガン全曲演奏会 第8回(2010年3月22日 日本大学カザルスホール)

椎名雄一郎

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J.S.バッハ オルガン全曲演奏会
第8回 コラールの世界
2010年3月22日(月・祝) 15:00 日本大学カザルスホール(1階A列7番)

椎名雄一郎(Yuichiro Shiina)(オルガン)
石川洋人(Hiroto Ishikawa)(テノール)

ヨハン・セバスティアン・バッハ(J.S.Bach)作曲

幻想曲と模倣曲 ロ短調 BWV563
コラールパルティータ<ああ、罪人なるわれ、何をすべきか>BWV770
<キリストを、われらさやけく頒め讃えうべし>BWV696
<讃美を受けたまえ、汝イエス・キリスト>BWV697
<主キリスト、神の独り子>BWV698
<いざ来ませ、異邦人の救い主よ>BWV699
<高き天よりわれは来たれり>BWV700、701
前奏曲とフーガ ハ長調 BWV545

~休憩~

幻想曲 ハ長調 BWV570
<神の子は来たりたまえり>BWV703
<全能の神に讃美あれ>BWV704
<いと尊きイエスよ、われらはここに集いて>BWV706
<主イエス・キリストよ、われらを顧みて>BWV709
<われは汝に依り頼む、主よ>BWV712
<イエスよ、我が喜び>BWV713
<マニフィカト>(わが魂は主をあがめ)BWV733
前奏曲とフーガ ヘ短調 BWV534

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椎名雄一郎による「バッハ オルガン全曲演奏会」の第8回を日本大学カザルスホールで聴いてきた。
先日の吉田恵が全曲シリーズ最終回をこのカザルスホールで締めくくったのに対して、椎名雄一郎のシリーズは2014年までかけてじっくり進めていくようだ。
しかし、今月いっぱいで閉館するカザルスホールのオルガンを演奏するのは今回が最後になり、それゆえに「さよならカザルスホール オルガン・コンサート第2弾」という副題が付けられている。

今回は1階最前列という席。
席は大方埋まっていたように思う。
まず、2階のオルガン席に椎名雄一郎とストップ操作の助手(奥様?)があらわれ、第1曲を演奏する。
2階で聴く時と比べ、オルガンの音が上方から直に降ってくるような印象があり、オルガンのシャワーを浴びているような迫力を感じた。
椎名が第1曲を弾き終えると、テノールの石川洋人が登場し、1階ステージの向かって右側に位置した。
石川洋人はコラールに基づく各オルガン作品が演奏される前にオリジナルのコラールを無伴奏で歌った。
つまり前半はBWV770からBWV701まで、後半はBWV703からBWV733まで石川の歌が聞けた。
ただし、後半の2曲<いと尊きイエスよ、われらはここに集いて>BWV706と、<イエスよ、我が喜び>BWV713のみは、無伴奏コラールだけではなく、オルガン演奏の途中からも加わり、オルガン伴奏でコラールを歌う形をとっていた。

石川洋人は古楽の歌唱法によるもので、薄いヴィブラートをかけ、清澄に声を伸ばしていく。
最前列で聞いていると、曲が進むにつれて、彼の声のボリュームが明らかに豊かになっていく様をはっきりと実感できた。
こうしてアカペラで響く歌声を聴くと、まさにホール全体が楽器なのだと実感させられる。
コラールをじっくり聴いていると、その独特の節回しによって遠い時代にタイムスリップしたかのようだった。

椎名雄一郎による今回のプログラミングは、コラールに基づく作品を前半と後半の中心に据えてはいるが、それぞれを挟み込む形で最初と最後にオルガンのためのオリジナル作品が演奏された。
コラール作品は小規模なものが多く、愛らしい小品という感じだが、石川氏のオリジナルのコラール唱の後で演奏されると、バッハがコラールをそのまま、あるいは部分的に取り込みながら、いかに巧みな味付けを加味しているかが分かる。
私にとってはプロテスタントの会衆が歌うコラールは馴染みがあるわけではないので、今回、歌とオルガンを一緒に聴くことが出来たのは分かりやすかった。
この夜のコンサートもいずれCD化されるだろうが、ぜひコラール唱も収録してほしいものだ。

椎名の演奏は一貫して弛緩することなく、見事に構築されていて素晴らしかったと思う。
また、コラールによる作品群では、温かい音色が聴いていて気持ち良かった。
効果的なストップ選択も演奏の成功に寄与していることだろう(バッハ自身によって音色が指定されている曲もあるが、殆どは演奏者の決定に任されているのだろう)。

椎名氏の言葉によれば「カザルスホールで一番演奏したかったバッハの作品、それが今回のコラール作品です」とのこと。
このホールのアーレントオルガンにふさわしい作品だということなのだろう。
それが、椎名氏にとって最後のカザルスホールの演奏で実現したのは良かったと思う。

演奏終了後、椎名氏も1階に下りてきて、石川氏と並んで拍手に応じていたが、最後にオルガンの方に手をかざして感謝の念を示していたのが印象的だった。

素晴らしい響きを聞かせてくれたカザルスホールに感謝!

椎名氏のこのシリーズ、次回の演奏は池袋の東京芸術劇場で行われるそうだ。

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吉田 恵/J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第12回<最終回>(2010年3月13日 日本大学カザルスホール)

J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第12回<最終回>

Yoshida_2010032010年3月13日(土) 19:00 日本大学カザルスホール (全自由席)

吉田 恵(Megumi Yoshida)(オルガン)

J.S.バッハ/《クラヴィーア練習曲集 第3部》

前奏曲 変ホ長調 BWV552/1

キリエ,とこしえの父なる神よ BWV669
キリストよ,世の人すべての慰め BWV670
キリエ,聖霊なる神よ BWV671
キリエ,とこしえの父なる神よ BWV672
キリストよ,世の人すべての慰め BWV673
キリエ,聖霊なる神よ BWV674
いと高きところでは神にのみ栄光あれ BWV675
いと高きところでは神にのみ栄光あれ BWV676
いと高きところでは神にのみ栄光あれ BWV677
これぞ聖なる十戒 BWV678
これぞ聖なる十戒 BWV679
われらみな唯一なる神を信ず BWV680

 ~休憩~

われらみな唯一なる神を信ず BWV681
天にましますわれらの父よ BWV682
天にましますわれらの父よ BWV683
われらの主キリスト,ヨルダンの川に来れり BWV684
われらの主キリスト,ヨルダンの川に来れり BWV685
深き淵より,われ汝に呼ばわる BWV686
深き淵より,われ汝に呼ばわる BWV687
われらの救い主なるイエス・キリストは BWV688
われらの救い主なるイエス・キリストは BWV689

4つのデュエット
 第1曲 ホ短調 BWV802
 第2曲 ヘ長調 BWV803
 第3曲 ト長調 BWV804
 第4曲 イ短調 BWV805

フーガ 変ホ長調 BWV552/2

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2004年12月に開始された吉田恵によるJ.S.バッハ・オルガン作品全曲演奏会も今回でとうとう最終回である。
私は、この大偉業のシリーズ最後の数回分しか聴くことが出来なかったが、こうして最終回に立ち会えたのは聴衆としても感無量である。
今月いっぱいで閉館されるカザルスホールのオルガンがシリーズ最終回に間に合ったことは演奏者にとっても良かったのではないだろうか
(ちなみにこのアーレントオルガンは閉館後も学内利用のために保管されるようでとりあえず一安心である)。

ところで、今回開場時間の18時半ごろに会場に着いたらすでに長蛇の列で、これまでにこのようなことが無かっただけに驚いた。
ホールに別れを惜しむ人たちが大挙して押し寄せたというところだろうか。
ホール内もほぼ満席で、常にこのぐらいの集客が望めれば閉館ということにもならなかったのかもしれないが、そういうことを言ってみたところでもはや事態が変わるわけでもない。

今回は音楽友達のCさんと2階左側の席で聴いたが、アーレントオルガンの多彩な響きを存分に堪能できたのが良かった。
私はこのオルガンの音色から荘厳さ以上に愛らしさ、温かみを感じる。
謹厳なバッハ先生というよりは教会で信者たちに慈しみをもってオルガンを演奏している印象である。

最終回の演目は大規模な《クラヴィーア練習曲集 第3部》全曲である。
最初と最後に規模の大きめな前奏曲とフーガを配し、それらにコラール編曲と4曲のデュエットが挟まれる形をとる。
私の手元にあるヘルムート・ヴァルヒャの往年の録音では大オルガン用と小オルガン用でコラールを分けて配置してあったが、今回の吉田恵の演奏では同じコラールによる複数の編曲は連続して演奏された(BWV番号の順)。
プログラムノートの金澤正剛氏の解説によれば「本来はそのうちの1曲を選んで弾けば良いことになっている」そうだが、今回は全曲演奏という企画でもあり、すべて演奏された。

前半最初の「前奏曲」は、この長大な曲集の冒頭を飾るにふさわしい華やかさがあり、その後に続くコラール群は時にドラマティックに、時に親密にという多面的な表情が楽しめた。
同じコラールによる編曲が並置されると、編曲次第でまるで別の曲のような表情をもつのが興味深く、それらをちょっとした表情を付けながらもあくまで作品の揺ぎ無い構築性を保ちながら快適なテンポで表現し尽くした吉田さんの演奏はとても魅力的だった。
「4つのデュエット」はヴァルヒャの録音ではチェンバロで演奏されていたが、これらがオルガンで弾かれると全然違った印象を受けたのが面白かった。
ヴァルヒャの時はチェンバロの4曲だけが曲集の別格扱いのような印象を受けたが、吉田さんによるオルガン演奏では曲集内でも違和感なくオルガン曲としての魅力を放っていたと思った。
プログラム締め近くに演奏された「われらの救い主なるイエス・キリストは BWV688」は目まぐるしい音の動きが印象的で、吉田さんの演奏も冴えていた。
最後のドラマティックな「フーガ」ではやはり吉田さんのカザルスホール最後の演奏曲ということもあってか、聴いている私にもその表情豊かな意気込みが伝わってきたように感じ、感慨深いものがあった。

また、今回は前半と後半それぞれ途中の数曲で、鍵盤上方のふたを左右に開けて、内部のパイプをより響かせていたが、曲の特質によって開閉を決めていたのだろうか(前回は壮大な「パッサカリアとフーガ」でふたを開けていたのを覚えている)。

演奏が終わり何度かのカーテンコールを経て、吉田さんとストップ操作の女性が1階のホールに下りてきて、オルガンと共に盛大な拍手を受けていた。
この前人未到の企画をやり遂げた吉田恵さんと関係者の方々には心から拍手を贈りたい。
そして、カザルスホールの魅力的なアーレントオルガンにも・・・。

なお、カザルスホールのオルガンに関して読売新聞に記事があったのでリンクしておきます。
 こちら
 
ちなみにこの日はフーゴ・ヴォルフの150回目の誕生日。
それを記念して韓国のバリトン歌手ロッキー・チョンとピアニストの松川儒による「メーリケ歌曲集」のコンサートが津田ホールで企画されたが、17時開演では両方聴くのは無理そうなので今回は涙を飲んだ。

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吉田恵/J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第11回(2009年12月5日 日本大学カザルスホール)

J.S.バッハ オルガン作品全曲演奏会 第11回

Yoshida_2009122009年12月5日(土)19:00 日本大学カザルスホール(全自由席)
吉田恵(Megumi Yoshida)(ORG)

J.S.バッハ(1685-1750)

前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532

いと尊きイエスよ,われらここに集いて BWV730
イエスよ,わが喜び BWV713
心よりわれこがれ望む BWV727
天にましますわれらの父よ BWV737
神の子は来たりたまえり BWV724
主イエス・キリストよ,われらを顧みて BWV709, 726
甘き喜びに包まれ BWV729
わが確き望みなるイエスは BWV728
いと尊きイエスよ,われらここに集いて BWV731

トリオ ハ短調 BWV585

コーラル・パルティータ《ああ,罪びとなるわれ,何をなすべきか》 BWV770

 ~休憩~

ソナタ 第3番 ニ短調 BWV527

ノイマイスター・コラール集より
 おお,イエスよ,いかに汝の姿は BWV1094
 おお,神の子羊,罪なくして BWV1095
 ただ汝にのみ,主イエス・キリストよ BWV1100
 汝,平和の君,主イエス・キリスト BWV1102
 主よ,われら汝の御言葉のもとに留めたまえ BWV1103
 イエスよ,わが喜び BWV1105
 神はわが救い,助けにして慰め BWV1106
アリア ヘ長調 BWV587
ノイマイスター・コラール集より
 イエスよ,わが命の命 BWV1107
 イエス・キリストが夜に BWV1108
 ああ神よ,憐れみたまえ BWV1109
 おお主なる神よ,汝の聖なる御言葉は BWV1110
 キリストこそわが生命 BWV1112
 わがことを神にゆだね BWV1113
 主イエス・キリスト,汝こよなき宝 BWV1114
 われ,心より汝を愛す,おお主よ BWV1115

パッサカリア ハ短調 BWV582

(アンコール曲1曲)

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冷たい雨が降りしきる土曜日の夜、吉田恵のバッハオルガン作品全曲演奏会の第11回を聴いてきた。
このシリーズも来年の第12回でいよいよ完結である。
カザルスホールのオルガンを聴けるのもあとわずか。
しっかり耳に刻み付けておきたい。

今回も彼女の達者な指使いがよく見えるように2階左側の席をとった。

プログラムは前半後半それぞれのブロックの最初と最後に規模の大きな作品を置き、その中にコラールに基づく小品をさしはさむ形をとっていた。
その結果華やかな雰囲気でスタートし、優しい癒しの響きが中盤を占め、最後にまた重量感のあるドラマティックな作品で締めくくるという変化に富んだ流れが形成されていた。

最初の「前奏曲とフーガ ニ長調」では足鍵盤の高度なテクニックを余裕をもって演奏しており、足の動きを見てみたいところだが、このホールでは足が見えないつくりになっているのが残念。
ノイマイスター・コラール集からの「ただ汝にのみ,主イエス・キリストよ」BWV1100では指の高度なテクニックがたっぷり披露された。

今回は面白い音響効果を聴くことが出来た。
「甘き喜びに包まれ」BWV729では、鈴の音のような響きを曲の間中鳴らしていて、クリスマスをイメージさせた。
「おお主なる神よ,汝の聖なる御言葉は」BWV1110では鳥のさえずりのような音を、助手の女性が特定のストップを押したり引いたりして曲に合わせて響かせていた。
このような響きのストップがあるとは知らなかったので驚いたが、使える曲が限られるだろうから、今回この場に居合わせることが出来て幸運だった。

この日一番のクライマックスはやはり最後の「パッサカリア ハ短調」である。
私もバッハのオルガン曲中、最も好きな作品なので、久しぶりに生で聴けて嬉しかった。
この曲、最初にパッサカリアの主題8小節(アンドレ・レゾンという人の作品からとられている)が提示されて、それが様々に変奏されていく形をとるが、吉田恵はこの曲の演奏前に、鍵盤上方の扉を左右に開けて、中にあったパイプの響きが直接客席に届くようにしていた。
彼女は最初の足鍵盤のみによる主題提示から、すでに大音量で威勢良く始めていたが、私の好みでは、ここは神秘的に抑えて始めて、それから徐々に盛り上げていく方が好きである。
しかし、彼女の並々ならぬ積極性は最後まで貫かれ、かなりドラマティックな演奏となっていた。
後半は同じ主題による「フーガ」となり、多くの演奏では、フーガのはじまる前に和音を弾きのばしていったん区切りをつけてからフーガに進むパターンがよくあるが、彼女は区切らずにすぐにフーガに移行したのが珍しく、新鮮に感じられた。

アンコールはジグザグの下降音形が特徴的な短い曲が1曲演奏された(コラール集の曲だろうか)。

今回彼女の2度目の実演に接して感じたのは、とてもよく回る指で軽快に弾き進めると同時に、感情表現に「ため」を使い、それが効果的に響いていたが、流れが若干停滞して感じられる時もあった。
しかし、抜群のテクニック(手と足の両方)で常に安定した演奏を聴かせてくれたのはやはり素晴らしかった。

前半50分、後半1時間の長大なプログラムだったが、30曲(+アンコール1曲)をいささかの弛緩もなく弾ききった彼女に拍手を贈りたい。
美しい響きの余韻にひたりながら会場を出ると、すでに雨は止んでいた。

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バッハ/カンタータ「イエスよ、あなたはわが魂を」BWV78より第2曲アリア・デュエット

バッハ・コレギウム・ジャパンのコンサートで、このソプラノとアルトの二重唱を聴いて以来、頭から離れない。
躍動感のあるオケのリズムと音楽がなんとも印象的で、二重唱も快活に、時に哀愁も漂わせてハモリ、一度で好きになってしまった。

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Jesu, der du meine Seele, BWV78: 2) Wir eilen ...
 カンタータ「イエスよ、あなたはわが魂を」BWV78より第2曲「我らは急ぎます」

Wir eilen mit schwachen, doch emsigen Schritten,
O Jesu, o Meister, zu helfen zu dir.
Du suchest die Kranken und Irrenden treulich.
Ach höre, wie wir
Die Stimmen erheben, um Hülfe zu bitten!
Es sei uns dein gnädiges Antlitz erfreulich!
 我らは急ぎます、弱い足取りながらもせっせと歩を進めて、
 おおイエスよ、おお師よ、助けてもらおうと、あなたの許へ急ぐのです。
 あなたは病める者や迷える者を真摯に求めておられます。
 ああお聞きください、我らが
 助けを求めて、声を張り上げているのを!
 我らにはあなたの憐れみ深きお顔が喜びなのです!

曲:ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach: 1685-1750)

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以下のリンク先で聴くことが出来る。

初音ミク(コンピュータソフトのすごい性能に驚嘆。曲と歌声とのギャップがたまらなくいい。ちゃんとドイツ語で歌わせている)
http://www.youtube.com/watch?v=OsQA08YQGN8

野々下由香里&ダニエル・テイラー&バッハ・コレギウム・ジャパン(安心して聴けます)
http://www.youtube.com/watch?v=75pLbKR3M-U

グルベローヴァ&米良美一のデュエット(意外性のある組み合わせ!)
http://www.youtube.com/watch?v=DkSmf-_lids

*私は初音ミク版にはまってしまい、何度もリピートして聴いています。

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ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン2009「バッハとヨーロッパ」第2日目(2009年5月4日 東京国際フォーラム)

5月4日(月)に聴いたのはバッハばかり5公演。

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2009/5/4(月・祝)
11:15~12:15(実際の終演は12:30頃) 262 ホールG402 3列7番
小林道夫(チェンバロ)

J.S.バッハ/イギリス組曲 第4番 ヘ長調 BWV809
J.S.バッハ/フランス組曲 第4番 変ホ長調 BWV815
J.S.バッハ/イギリス組曲 第5番 ホ短調 BWV810 

アンコール
J.S.バッハ/パストラーレ~第2曲(原曲はオルガン曲)

今回LFJのチケットをとる際に最優先したのが小林道夫のコンサートだった。
私は小林さんの生の演奏は、ヤノヴィッツとのリートや、レーヴェの記念コンサートなど、リートピアニストとしての演奏しか聴いておらず、チェンバロ奏者としての演奏は今回はじめて接することになった。
ヤノヴィッツの共演者として接した小林さんの演奏があまりに素晴らしかったので、今回は小林さんのもう1つの得意分野であるバロック音楽の演奏をぜひ聴いてみたかったのである。
しかし、ただでさえ小ホールで席数が少ないうえ、発売日のパソコンの画面が「混み合っています」となってなかなかチケット注文の画面に到達しなかったが、あきらめずに格闘してようやく4日の2公演を入手できたのは幸運だった。
すでに70代になられた小林さんは穏やかな話しぶりやしっかりした足取りは全く年齢を感じさせないが、演奏に関しては若干指回りが不安定な箇所もあった(3日連続の6回公演で準備も大変だったとは思うが)。
しかし、奇をてらうことのないオーソドックスで芯のしっかりした温かい音色は聴き手の心をほぐしてくれるかのようだった。
演奏前に配布資料の補足として簡単な説明をしてくれたのは、聴き手にとっても望外の喜びであった。

小林さんは大体次のようなことを話された。

イギリス組曲第4番はプレリュードやジグを聴けば、決して「おだやか」な曲ではないと分かる。
イギリス組曲第4番のジグとモーツァルトのソナタとの相似(聴いてみると確かにそっくりだった!)。
フランス組曲第4番とリュートの曲との関連(この件は記憶が曖昧ですみません)。実際に「プレリュード」では、リュートのような音色を交えて演奏してくれた。
イギリス組曲第5番のホ短調がシリアスな調という説は人によって感じ方が違うだろうが、「マタイ受難曲」の主な調がホ短調であることは確かにシリアスな印象を与えている。

また、各曲の間で立ち上がるのもなんなので、拍手は曲間でしなくていいですよというような話があったため、3つの組曲を続けて演奏し、聴くことになった。
人柄が滲み出たような穏やかなバッハであった。

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2009/5/4(月・祝)
13:00~14:00 243 ホールC 3階4列1番(L6扉)
レイチェル・ニコルズ(ソプラノ)
青木洋也(カウンターテナー)
ユリウス・プファイファー(テノール)
ステファン・マクラウド(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン
鈴木雅明(指揮)

J.S.バッハ/カンタータ「イエスよ、わが魂を」 BWV78
J.S.バッハ/カンタータ「喜べ、救われし群れよ」BWV30 

あまりにも有名な古楽集団だが、私ははじめて実演に接することが出来て、楽しみだった。
まず感じたのはオケ(楽器集団といった方がいいかも)がめちゃくちゃ上手い。
どの楽器をとっても豊かな音色と見事な技術があいまって強く主張して響いてくる。
また、今回4人の独唱者もソロを歌ってない時は合唱団の一員として歌っていたのが興味深かった。
BCJはいつもこういうやりかたなのだろうか。
最初のうちは楽器群の豊かな音に比べて合唱の音量が弱い印象を受けたが、徐々に対等な響きになったように感じた。
ドロテー・ミールズの代役のソプラノ、レイチェル・ニコルズの美声と豊かな響きは私にとって大きな収穫だった。
この名前は覚えておこう(プログラムの表記がミールズのままなのは、ニコルズに対してあんまりではと思うが、差し替える時間がなかったのだろうか)。
カウンターテナーの青木洋也は一見外国人かと思ったほど長身だが、昨日聴いたカルロス・メナに比べると、ボーイソプラノのような響きで清澄な印象。
同じカウンターテナーでも個性がいろいろで聴き比べると面白い。
スキンヘッドのテノール、プファイファーは堅実な歌唱。
昨日も聴いたバスのマクラウドはいかにも古楽の歌手という感じで丁寧な歌を歌う。
鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンは今後も古楽界の牽引的存在であり続けるのではないか。

BWV78の第2曲のソプラノとアルトの二重唱はとても愛らしく印象的な音楽で、一度で気に入った。
宗教的な題材でもこのような愛らしい曲を織り込むバッハは案外お茶目な人なのかもしれない。
多忙だったせいか、作品の使いまわしが多いようだが、ちゃんと作品として成立しているのはさすがというべきか。
BWV30も含めて魅力的なカンタータ2曲であった。

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2009/5/4(月・祝)
15:00~15:45 213 ホールA 1階46列76番(R6扉)
東京都交響楽団
小泉和裕(指揮)

J.S.バッハ;ストコフスキー(編曲)/前奏曲 変ホ短調 BWV853(オーケストラ版)
J.S.バッハ;ストコフスキー(編曲)/パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582(オーケストラ版)
J.S.バッハ;ストコフスキー(編曲)/トッカータとフーガ ニ短調 BWV565(オーケストラ版)
J.S.バッハ;斎藤秀雄(編曲)/「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004」よりシャコンヌ(オーケストラ版) 

私はバッハで何が一番聴きたいかといえばオルガン曲を挙げると思う。
しかし、残念ながら国際フォーラムには備え付けのオルガンはなさそうだ。
そんなわけでオルガン曲のプログラムが企画されなかったのだろうが、その渇望を多少癒してくれそうな都響のコンサートを聴いた。
ホールAなので、やはりスクリーンが左右に映り、演奏者の表情が遠くの席でも見ることが出来る。
指揮の小泉和裕は、エネルギッシュな指揮ぶり。
そして矢部達哉率いる東京都交響楽団はこれらの編曲ものをオリジナル作品のように足並みそろえて素晴らしく演奏した。
ストコフスキーの編曲はどれも原曲の持ち味を生かしていて好感がもてる。
トッカータとフーガなどは、曲の次のセクションに移る際に前のセクションの音をしばらく引き伸ばしてオルガンの残響のような効果を出しているのはストコフスキーの原曲を尊重した姿勢のあらわれだろう。
それから、私の大好きなパッサカリアとフーガをストコフスキー編曲で聴くのはおそらくはじめてだが、低弦や金管楽器を効果的に使って、オルガンの重厚さをうまく引き出していたと思う。
特にテューバの響きがこれほどオルガンの足鍵盤にぴったりだとはこれまで気付かなかった。
平均率からとった前奏曲の編曲も美しく物憂げな作品になっていて素敵だった。
これらの編曲を聴いて果たして私は満足したのか自問してみる。
ストコフスキーの編曲の見事さや、オケのかゆいところに手が届いたような見事な演奏は確かに素晴らしく、その点では充分満足した。
だが、この素敵な編曲を聴いた後にまず思ったのは、すぐにでもオルガンによる原曲が聴きたいということだった。
実際に家に帰ってからヴァルヒャの古い録音を聴いてすっかり満足したのだった。

それから特筆すべきは往年の指揮者、斎藤秀雄編曲による「シャコンヌ」。
胸を打つ繊細な弦のハーモニーと、管楽器の使い方の見事さ。
ブゾーニやブラームスだけでない、もう1つの編曲版「シャコンヌ」を知ることが出来たのは大きな収穫だった。

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2009/5/4(月・祝)
17:30~18:30(実際の終演は18:45頃) 266 ホールG402 3列35番
小林道夫(チェンバロ)

J.S.バッハ/フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816
J.S.バッハ/イギリス組曲 第6番 ニ短調 BWV811
J.S.バッハ/フランス組曲 第6番 ホ長調 BWV817

再び小林道夫のバッハ。
薄暗い照明の中、金屏風の前にろうそくを模したような照明が立ち、まさにサロンコンサートといった趣。
午前に聞いた時は小林氏の右後ろあたりの席で指がよく見えたが、今回は反対側の一番端。
演奏する小林氏の顔の正面にあたる位置である(楽譜が置かれたため、実際に顔は見えなかったが)。

今回も最初に小林氏の解説付き。
イギリス組曲第6番の「ガヴォット1・2」のうち、ミュゼット(同じ低音が継続して響く)に相当するのは2の方だけという説明、
フランス組曲第6番の「メヌエット」は事情が複雑で、曲集の最後に置かれることもあるが、今回は「ポロネーズ」の後に「メヌエット」を演奏するという話などであった。
「楽理科出身なので、つい気にしてしまう」と言って聴衆を笑わせて、なごやかな雰囲気のまま、演奏がスタート。
今回も途中で拍手中断がなく、最初と最後だけであった。
演奏については午前中同様、温かい音色で、作品に誠実な姿勢を貫く。
イギリス組曲など、かなりの大作で若干疲れもあったように思うが、最後まで真正面から対峙した演奏を聞かせてくれた。

終演後、「随分時間が過ぎてしまいましたので、これで」と申し訳なさそうなコメントがあって、アンコールをせずにお開きとなった。

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2009/5/4(月・祝)
19:15~20:00(実際の終演は20:15頃) 215 ホールA 2階23列73番(R11扉)
ボリス・ベレゾフスキー(ピアノ: BWV1056,BWV1062)
ブリジット・エンゲラー(ピアノ: BWV1052,BWV1062)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ジャン=ジャック・カントロフ(指揮)

J.S.バッハ/ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052
J.S.バッハ/ピアノ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056
J.S.バッハ/2台のピアノのための協奏曲 第3番 ハ短調 BWV1062

今回私が聴いたLFJの一連のコンサートで最初で最後の現代ピアノによる演奏。
チェンバロも味があるが、やはり現代ピアノの響きは魅力的だ。
エンゲラーははじめて聴いたが、まろやかな音色が魅力的で私の好きなタイプの演奏だ。
ベレゾフスキーは以前実演を聴いた時はばりばり弾く印象だったが、今回はより内省的な演奏を聴かせていて、以前よりも良い印象を受けた。
ベレゾフスキーの弾いた第5番は随分短い曲だったが、緩徐楽章の馴染み深いメロディといい、聴きやすい作品だった。
2台のピアノのための協奏曲は、エンゲラーとベレゾフスキーが阿吽の呼吸で生き生きと演奏し、カントロフ指揮のポーランドのオケもソリストと一体となっていた。

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イベント広場での無料コンサートでは、ストコフスキー編曲の「トッカータとフーガ」を聴くことが出来た(3日)。
また、たまたま休憩していた新東京ビル内のカフェ(休憩室?)ではすぐ隣で無料イベントをやっていて、「マタイ」のアリアなどと共に、ベートーヴェンの「君を愛す」やブラームスの「あなたの青い目」なども聞こえてきて、思いがけず聞き入ってしまった。
よく晴れた気持ちよい気候だったが、一応インフルを警戒してマスクをしていったら、同じようにマスクをしていた人も結構見かけた。
今回も親切なことに声楽作品にはテキストの対訳が付いていたが、ミサ曲での鈴木雅明氏の訳は、ラテン語と日本語対訳にこまかく番号が振られ、どの単語がどの日本語に対応するのか分かるように書かれていて大変有難かった。
こういう心遣いはうれしい!

空き時間に「相田みつを美術館」の第2ホールで催されていた「バッハの素顔展」をのぞいてみた。
バッハの頭骨から復元した顔や、これまでに残された肖像画の数々が展示されていて、さらにイタリア、フランドル、ドイツの、時代の異なるチェンバロの解説も行われていて(若干営業色が強かったが)面白かった。
バッハの肖像画はハルトマンという画家にバッハ自身が依頼して書かせたものが最も信憑性の高いものとのこと。
復元されたバッハも確かにそんな趣があった。

スタッフの方々は今年も声を張って頑張っておられた。
チケットをもぎる時に「行ってらっしゃいませ」と声をかけられるのも決まりとはいえうれしいものだ。
だが、若干がんじがらめの警戒のように感じられることもあったのは、これだけの人数を相手にするためには仕方ないのだろうか。
「お帰りはエレベーターが混雑しているので、階段をお使いください」というのは、見た目では分からない足や腰の悪い人にとってはあまりうれしくない言葉だろう。
せめて「階段を」と強制するのではなく「よろしければ階段もお使いください」と言うだけでも違うと思うのだが。
また、昨年も思ったのだが、「プログラムはこちらにあります」という案内がほとんど無かったのは若干不親切だと思う。
私も初参戦だった昨年はプログラムがテープルにおいてあることに途中でやっと気付いたものだった。

とはいえ、全体としては楽しみながらいい音楽をたっぷり味わえたよいイベントであり、これだけ盛況になるのもよく分かる気がした。

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ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン2009「バッハとヨーロッパ」第1日目(2009年5月3日 東京国際フォーラム)

今年も昨年に引き続き、ラ・フォル・ジュルネ・ジャポンに出かけてきた。
テーマは「バッハとヨーロッパ」。
不況の影響か、今年は会期も短縮され東京国際フォーラムでは5月3日~5日の3日間。
私はそのうち、3日(日)と4日(月)の2日間聴いてきた。
普段歌曲ばかり聴いているので、著名なバロック時代の作品や演奏家をこれだけまとめて聴けるのはやはり貴重な機会である。
チケットは相変わらず入手が大変だったが、なんとか5公演づつ、計10公演を確保することが出来たのは幸運だった。
3日も4日も好天に恵まれ、親子連れやカップルなどですし詰め状態だった。

5月3日(日)に聴いたのはヴィヴァルディとヘンデルの器楽曲、それにバッハの声楽曲の計5公演だった。

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2009/5/3(日)
11:30~12:15 142 ホールC 3階4列2番(L6扉)
エウローパ・ガランテ
ファビオ・ビオンディ(バロック・ヴァイオリン、指揮)

ヴィヴァルディ/シンフォニア ト長調 RV149(カンタータ「ミューズたちの合唱」序曲)
ヴィヴァルディ/ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 変ロ長調 RV547
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集作品4「ラ・ストラヴァガンツァ」より第4番イ短調RV357
ヴィヴァルディ/オペラ「テルモドンテのヘラクレス」RV710よりシンフォニア
ヴィヴァルディ/セレナータ「セーヌ川の祝典」ハ長調 RV693よりシンフォニア

アンコール
コレッリ/コンチェルト・グロッソOp.4~第3楽章

ヴィヴァルディの音楽にどっぷりひたった45分だった。
古楽演奏に疎い私でも知っていたビオンディ率いるエウローパ・ガランテをはじめて聴けたのは幸運だった。
こういう魅力的な演奏で聴くと古楽器の響きがとても身近に聴こえてくる。
古楽ファンがモダン楽器の演奏を聴かなくなる気持ちが少しだけ分かったような気がした。

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2009/5/3(日)
13:45~14:30 113 ホールA 2階26列95番(R11扉)
ネマニャ・ラドゥロヴィチ(ヴァイオリン)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ジャン=ジャック・カントロフ(指揮)

ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲「四季」作品8

あまりにも耳に馴染んだヴィヴァルディの「四季」だが、実演を聴くのははじめてで楽しみだった。
はじめて聴くセルビアのヴァイオリニスト、ラドゥロヴィチはかなり大きな起伏の感情表現を盛り込んでいた。
その濃厚な情念の表出はあたかも演歌の世界。
「春」の第3楽章があれほど静かに始まったのには驚いたが、次第にこのような表現が序の口であることが分かり、強弱、テンポ、間合いと、いい意味で次々と予測が裏切られ、楽しかった。
聴きなれた「四季」の各曲が新鮮な表情を見せていて、ラドゥロヴィチの超絶技巧も充分堪能できた。
指揮のカントロフも同じヴァイオリニストだけあって、ラドゥロヴィチの伸縮自在な演奏に臨機応変についていったのはさすがだと思った。
私の席は、ホールAの一番天井に近い列の最も右端だった。
つまり、舞台から最も遠い席だったわけだが、ステージの両脇に大型スクリーンが映し出され、演奏者の顔の表情などもよく見れたのは有難かった。
それにしても、開演前に1階前方左端でスタッフの女性が「会場内での飲食、・・・はご遠慮ください」というアナウンスをマイクなしで言っていたのが一番遠い3階の私の席まではっきり聞こえたのには驚いた。
余談だが、「飲食」という言葉、「いんしょく」の「い」が一番高く発音されていたが、それが正しい発音なのだろうか。
私は普段平坦に発音しているのだが・・・。

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2009/5/3(日)
15:30~16:15(実際は16:30に終演) 124 ホールB7 14列44番
吉野直子(ハープ)
香港シンフォニエッタ
イプ・ウィンシー(指揮)

“オール・ヘンデル・プログラム”
ヘンデル/オラトリオ「ソロモン」HWV67 より「シバの女王の入城」
ヘンデル/ハープ協奏曲 変ロ長調 作品4-6 HWV294
ヘンデル/管弦楽組曲「水上の音楽」より抜粋
第1組曲 ヘ長調 HWV348 より
「序曲:ラルゴ―アレグロ」
「アダージョ・エ・スタッカート」
「アレグロ―アンダンテ―アレグロ」
「エア(アリア)」
「ブーレ」
「ホーンパイプ」
第3組曲 ト長調 HWV350 より
「メヌエット」
「カントリー・ダンス」
第2組曲 ニ長調 HWV349 より
「アラ・ホーンパイプ」

ヘンデルの可愛らしい側面が出たハープ協奏曲では鮮やかな緑のドレスを着た吉野直子の見事に安定感のある美しい響きが堪能できて良かった。
「水上の音楽」も耳に心地よい作品ばかりだが、この日3つ目のコンサートでそろそろ疲れが出たのかまぶたが重くて仕方なく、無駄な抵抗はやめて目を閉じて聴いていた。
ハープの出し入れ時に奏者が全員引っ込んで時間をとられたせいか、本来の予定より15分もオーバーしたため、最後の曲が終わり、指揮者が袖に引っ込んで余韻を味わう間もなく、すぐに席を立って次の会場に向かわなければならなかったのは残念だった(アンコールはあったのだろうか?)。

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2009/5/3(日)
16:45~17:45 145 ホールC 3階1列40番(R6扉)
マリア・ケオハネ(ソプラノ)
サロメ・アレール(ソプラノ: BWV243)
カルロス・メナ(カウンターテナー)
ハンス=イェルク・マンメル(テノール)
ステファン・マクラウド(バス)
リチェルカール・コンソート
フィリップ・ピエルロ(指揮)

J.S.バッハ/ミサ曲 ト短調 BWV235
J.S.バッハ/マニフィカト ニ長調 BWV243

3日の演目の中でとりわけ感銘を受けたコンサートだった。
歌手は粒揃いでみな素晴らしかった。
ケオハネはコケティッシュな愛らしさがあり、アレールは真摯に歌う。
メナはアルトのパートを見事に歌いこなし、マンメルも美声で堅実にこなす。
マクラウドはどっしりした安定感がありながら重すぎずに聴きやすい。
ピエルロ指揮リチェルカール・コンソートはバッハの2つの作品を深い共感をもって表現していたと感じた。

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2009/5/3(日)
18:45~21:00(第1部の後に15分の休憩あり) 146 ホールC 3階8列15番(L6扉)
シャルロット・ミュラー=ペリエ(ソプラノ)
ヴァレリー・ボナール(アルト)
ダニエル・ヨハンセン(テノール)
クリスティアン・イムラー(バリトン)
ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル
ミシェル・コルボ(指揮)

J.S.バッハ/ミサ曲 ロ短調 BWV232

ソプラノのミュラー=ペリエが深みのある表現で素晴らしかった。
アルトのボナールは、第2ソプラノとアルトの両方を担当しており、アルトにしては高音がよく響いていたが、一方低音は弱さが感じられた。
バリトンのイムラーはしっかりとした歌唱だった。
もう70代半ばのコルボだが、指揮台の椅子にはほとんど座らず8割方は立ったままよく動きながら元気に指揮していた(すごいエネルギー!)。
アンサンブルをしっかりまとめ、きびきびしたテンポで進めていた。
演奏後の聴衆の拍手喝采もものすごかった。

だが、ピエルロ指揮で聴いた短いミサ曲ト短調に比べると、このロ短調ミサ曲の規模の大きさは演奏者にも聴き手にも集中力が要求されるだろう。
私も今後何度か繰り返し聴くうちにこの大作の良さが分かる時がくるかもしれない。
だが、今の段階ではとっつきにくさを感じたのが正直な感想である。
プロテスタントのバッハがカトリック式のミサを書いた唯一の作品らしいが、実際のミサで演奏することを意図していたかははっきりしていないようだ。
晩年のバッハが新たな境地に踏み出そうとして書いたのだろうか。

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4日の公演の感想は次の記事で。

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