キルヒシュラーガー&ドイチュ/ヴォルフ歌曲集

ヴォルフ歌曲集(HUGO WOLF / SONGS)
Kirchschlager_deutsch_wolfSONY CLASSICAL: 88697391892
録音:2003年8月26-29日, Casino Baumgartner, Vienna

アンゲーリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Kirchschlager)(MS)
ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)(P)

ヴォルフ(1860-1903)作曲
1.アナクレオンの墓(ゲーテ歌曲集)
2.娘の初恋の歌(メーリケ歌曲集)
3.少年とみつばち(メーリケ歌曲集)
4.夜明け前のひととき(メーリケ歌曲集)
5.飽くことのない愛(メーリケ歌曲集)
6.捨てられた娘(メーリケ歌曲集)
7.出会い(メーリケ歌曲集)
8.ミニョンⅠ(ゲーテ歌曲集)
9.ミニョンⅡ(ゲーテ歌曲集)
10.ミニョンⅢ(ゲーテ歌曲集)
11.ミニョンの歌(ゲーテ歌曲集)
12.ジプシー娘(アイヒェンドルフ歌曲集)
13.災難(アイヒェンドルフ歌曲集)
14.夜の魔力(アイヒェンドルフ歌曲集)
15.眠られぬ者の太陽(「ハイネ、シェイクスピア、バイロン歌曲集」よりバイロン歌曲)
16.あらゆる美女もかなわない(「ハイネ、シェイクスピア、バイロン歌曲集」よりバイロン歌曲)
17.隠遁(メーリケ歌曲集)
18.春に(メーリケ歌曲集)
19.さようなら(メーリケ歌曲集)
20.考えてもみよ、おお心よ(メーリケ歌曲集)
21.旅路で(メーリケ歌曲集)
22.お入り、立派な兵隊さん(ケラーによる「昔の調べ」No.1)
23.愛する人がアトリのように歌うというのなら(ケラーによる「昔の調べ」No.2)
24.ねえ、青っぽい坊や(ケラーによる「昔の調べ」No.3)
25.朝露の中、歩いていると(ケラーによる「昔の調べ」No.4)
26.炭焼き女が酔っ払って(ケラーによる「昔の調べ」No.5)
27.明るい月が、なんと冷たく遠くに輝いていることか(ケラーによる「昔の調べ」No.6)

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以前に書籍にCDが付いた形でフランスで出版されたものと同一音源が最近純粋なCDパッケージで再発売された。
書籍の時は若干値段が高めだったこともあり、購入を見合わせていたのだが、今回通常の価格で再発されたことを喜びたい。
録音も今から6年も前に録音されたものだが、その分歌手の若々しい美声を堪能でき、今や重鎮のドイチュの名人芸も味わえる。

オーストリアのサルツブルク出身のメゾソプラノ歌手、キルヒシュラーガーの声は明るくて美しい。
ソプラノと間違えそうな透き通った清澄な美声で、作為もなく素直に明晰に歌を紡いでいく。
低声よりもむしろ高声が魅力的だ。
ヴォルフの歌曲に難解さを感じる向きには格好の入門となるのでないか。
ドイツ語は舞台発音と日常発音の折衷のように聞こえる。
"r"もあまり巻き舌を強調することはなく、母音化することが多い印象だ。
一方、声が軽めで、あまり声色に深さを加えようともしないため、「ミニョン」歌曲群や「捨てられた娘」などの深刻な表情が求められる作品では、聴き手の心を動かすまでには至らない感も残る。
とはいえ、訓練され、コントロールの行き届いた声と音楽はやはり素晴らしく、ヴォルフの曲を楽しく聴くには問題ない。
「ジプシー娘」や「眠られぬ者の太陽」など、往年のシュヴァルツコプフのような濃密な表情を期待してしまうと肩すかしをくらうほどあっさりしているが、これはこれで現代風の解釈として新鮮であり、そろそろシュヴァルツコプフの呪縛から聴き手も解き放たれるべきなのかもしれない。
「隠遁」のような旋律美がまさった素直な作品ではキルヒシュラーガーの美質が発揮されて素晴らしい。
今ならおそらくもっと成熟を求められるかもしれないが、6年前の30代後半の美声と若々しい表現は確かに貴重な記録である。

ドイチュは持てる音色、テクニック、音楽性、テンポ感覚、バランス感覚、詩の読解力の限りを尽くして、個々の全く異なる作品から見事なまでに魅力を惹き出す。
このピアノの多彩さと豊かでデリケートな響きは時に歌声以上に耳をそばだたせる。
ただただ素晴らしいの一言に尽きる。

選曲もさまざまな歌曲集から満遍なく名曲が集められており、珍しいケラーの詩による「昔の調べ」が全曲聴けるのも貴重である。
昨日3月13日はヴォルフの149回目の誕生日であった。
キルヒシュラーガーのストレートな美声と、ドイチュの練達の至芸で、ヴォルフの多彩な作品を聴くのも楽しいのではないか。

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