ペーター・シュライアー&ルドルフ・ドゥンケル/モーツァルト歌曲ライヴ動画(1979年モスクワ)

往年の名テノール、ペーター・シュライアーの歌曲コンサートの動画がアップされていたので、ご紹介したい。
ファンにとってはシュライアーのライヴ映像が続々アップされるのは有難いことである。
1979年モスクワでのライヴとのことで、以前のリヒテルとの「冬の旅」といい、ロシアでのライヴが続々発掘されているのは偶然だろうか。
今回のピアニストはルドルフ・ドゥンケル。
かつて、テーオ・アーダムの共演者として、何度も来日した歌曲ピアニストである。
シュライアーともドヴォルジャークの「ジプシーの歌」などの録音で魅力的な演奏を聴かせていた。
ドゥンケルはすでに亡くなってしまったが、生で一度だけ聴くことが出来たのはよい思い出である(アーダムとの来日公演で)。
ここでの動画は、まず女性がロシア語で何か挨拶をしてから、二人の演奏者を呼び、演奏が始まる。
その演奏についてはぜひ動画をご覧いただきたい。
端正で明晰なシュライアーの歌唱がモーツァルトの歌曲にぴたっとはまった名演である。
ドゥンケルも堅実ながらシュライアーにどこまでも溶け込んだ演奏をしている。

それではお楽しみ下さい。全部で50分ぐらいするので、お気に入りの曲だけ下の開始時間を参考に聴いてもいいでしょうし、時間のある時に全曲まとめて聴くのもコンサートに参加しているような臨場感が味わえるのではないでしょうか。

録音:1979年、モスクワ(Moscow)

ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
ルドルフ・ドゥンケル(Rudolf Dunckel)(P)

Peter Schreier singing Mozart lieder, live in Moscow in 1979. The pianist is Rudolf Dunckel. Timing below:

01:46 - Ich würd' auf meinem Pfad(私は私の小道で), K.390(340b) (An die Hoffnung(希望に寄せて))
04:55 - Die Zufriedenheit(満足), K.349(367a)
07:29 - Die betrogene Welt(偽りの世), K.474
11:10 - Komm, liebe Zither, komm(おいで、いとしいツィターよ), K.351(367b)
13:23 - Das Veilchen(すみれ), K.476
16:35 - Das Lied der Trennung(別れの歌), K.519
23:15 - Abendempfindung(夕べの想い), K.523
29:13 - An Chloe(クローエに), K.524
32:50 - Das Traumbild(夢の姿), K.530
38:04 - Dans un bois solitaire(寂しい森の中で), K.308(K6.295b) (Einsam ging ich jüngst im Haine)
41:35 - Die ihr des unermesslichen Weltalls Schöpfer ehrt(小カンタータ『無限なる宇宙の創造者を崇敬する君達よ』), K.619, Little German Cantata

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ペーター・シュライアー&ノーマン・シェトラー/ベートーヴェン歌曲ライヴ映像(バート・ウーラハ)

ドイツの名テノール、ペーター・シュライアー(1935生まれ)と、アメリカ出身のピアニスト、ノーマン・シェトラー(1931生まれ)によるベートーヴェン歌曲集のコンサート映像がアップされていましたので、ご紹介します。
収録年代は不明ですが、先日のプライ同様、バート・ウーラハの秋の音楽祭で催されたコンサートのようです。
シュライアーはベートーヴェン歌曲に非常に力を入れていて、録音も全集をはじめ、ライヴ録音も出ていましたが、映像はまた新鮮な気持ちで楽しむことが出来ると思います。
この映像でのシュライアーは彼の美質がよく分かる歌唱で、リリカルで清潔で、ディクションは明瞭、ベートーヴェンの器楽的ともいえる歌曲の旋律を魅力的に歌っています。
そして、シュライアーが自著で絶賛していたピアニスト、シェトラーは、ソロや人形劇などの活動もしていますが、シュライアーとの共演歴も長く、歌曲を知り尽くした人ならではの聴きごたえのある演奏を聞かせてくれます。
ぜひお楽しみ下さい。

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バート・ウーラハ秋の音楽祭(Herbstliche Musiktage Bad Urach)
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン歌曲集(Lieder von Ludwig van Beethoven)

From the festival hall in Bad Urach (Germany)

ペーター・シュライアー(Peter Schreier) (Tenor)
ノーマン・シェトラー(Norman Shetler) (Piano)

ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)作曲

1.アデライーデ(Adelaide, Op.46) (7:31)

2.五月の歌(Mailied, Op.52 No.4) (2:59)

3.悲しみの喜び(Wonne der Wehmut, Op.83 No.1) (3:02)

4.憧れ(Sehnsucht, Op.83 No.2) (2:10)

5.彩られたリボンで(Mit einem gemalten Band, Op.83 No.3) (2:22)

6.新しい愛 新しい生命(Neue Liebe neues Leben, Op.75 No.2) (3:58)

7.希望に寄せて(An die Hoffnung, Op.94) (7:52)

8.愛されぬ男のため息と愛の答え(Seufzer eines Ungeliebten und Gegenliebe, WoO.118) (7:02)

9.遠方からの歌(Lied aus der Ferne, WoO.137) (4:17)

10.うずらの鳴き声(Der Wachtelschlag, WoO.129) (3:57)

11.諦め(Resignation, WoO.149) (3:34)

12.恋する男(Der Liebende, WoO.139) (2:42)

13.満ち足りた男(Der Zufriedene, Op.75 No.6) (1:42)

14.思い(Andenken, WoO.136) (3:15)

15.あなたを愛す(Ich liebe Dich, WoO.123) (3:16)

16.歌曲集「遥かな恋人に寄せて」("An die ferne Geliebte", Op.98) (17:21)

 0:10 Auf dem Hügel sitz ich spähend
 3:03 Wo die Berge so blau
 4:55 Leichte Segler in den Höhen
 6:41 Diese Wolken in den Höhen
 7:40 Es kehret der Maien, es blühet die Au
 10:35 Nimm sie hin denn, diese Lieder

17.祈り(Bitten, Op.48 No.1) (2:27)

18.キス(Der Kuss, Op.128) (3:56)

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ペーター・シュライアー&スヴャトスラフ・リヒテルによるシューベルト「冬の旅」の映像

ドイツのテノール、ペーター・シュライアーは引退して久しいですが、彼が長いリート歌手としてのキャリアの中でシューベルトの「冬の旅」全曲を披露するようになったのは比較的遅く、彼が50歳前後の頃でした。
日本でもヴァルター・オルベルツと披露して話題になりましたが、その公演は私は聴けず、後年になってようやく聴くことが出来ました。
録音ではフィリップス(現デッカ)レーベルにスヴャトスラフ・リヒテルのピアノで演奏したものが話題となったものでした。
ちなみに私はとうとうリヒテルの実演を聴くことは出来ませんでしたが、リヒテルの公演はプログラムがいつも当日発表だったことが懐かしく思い出されます。

そんなシュライアーの「冬の旅」全曲の映像がYouTubeにあったのを見つけて狂喜しました。
リヒテルのピアノ演奏を映像で見ることが出来るという点でも貴重です。

私も最初の数曲は見ましたが、これからじっくり他の曲も見てみようと思います。
端正さにドラマティックな趣も加わった当時のシュライアーの語るような歌唱と、リヒテルの美しい音色との共演が楽しめそうです。
興味のある方はぜひ楽しんで下さい。

シューベルト/歌曲集「冬の旅」(全24曲)
録音:1985年, Puschkin-Museum, Moskau
ペーター・シュライアー(テノール)
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)

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ペーター・シュライアーとピアニスト

歌曲の歌手にとってどのようなピアニストと組むかは非常に重要だ。
テンポや息継ぎの場所、バランスや強弱など、ピアニストと良い関係が築けるかどうかにかかってくるとさえ言えるのではないか。
また、ピアニストの演奏の特質によって、歌手の歌い方や解釈も変わってくる。
そういう意味で、歌手の共演者リストを見るのはとても興味をそそられる。

先日"Peter Schreier: Melodien eines Lebens" (Jürgen Helfricht著: Verlag der Kunst)という書籍が出版されていることをたまたま知り、入手した。
彼の幼少時代から引退後まで記された文章は貴重な資料だが、豊富な写真を眺めるだけでもこの稀代のテノール歌手の軌跡をたどることが出来て楽しい。
だが、私がこの本を購入した一番の理由は、巻末にシュライアーがこれまでに共演したピアニストのリスト(全員ではないが)が掲載されていることを知ったからだった。

シュライアーの共演ピアニストとしてまず思い浮かぶのは例えば以下のような人たちだろう。

ヴァルター・オルベルツ
ノーマン・シェトラー
エリック・ヴェルバ
カール・エンゲル
アンドラーシュ・シフ

ヴェルバ以外はみなソリストとしても活動していた人たちである(シフ以外は、歌曲での活躍が独奏以上に目立っていたと思われるが)。

引退前の数年はカミロ・ラディケやアレクサンダー・シュマルツといった若手ピアニストとも組んでいた。

だが、前述の書籍のリストを見ると、彼の共演者は実に多彩だったことが分かる。
例えば、歌曲の専門家たちの名前を拾い上げると以下のような人たちがいる。

ジェラルド・ムーア
ギュンター・ヴァイセンボルン
ルードルフ・ドゥンケル
ジェフリー・パーソンズ
コンラート・リヒター
アーウィン・ゲイジ
ヘルムート・ドイチュ
アントニー・スピリ
チャールズ・スペンサー
グレアム・ジョンソン

この中で、ムーアとG.ジョンソン以外はスタジオ録音での共演が残されていないので、殆どこのリストで初めてその共演を知ることになった(ドイチュとは来日公演で共演していたが)。

また、ソロピアニストの名前を抜き出すと次のようになる。

ダニエル・バレンボイム
アルフレート・ブレンデル
イェルク・デームス
クリストフ・エッシェンバッハ
イングリット・ヘブラー
ヴァルター・クリーン
デジェー・ラーンキ
スヴャトスラフ・リヒテル
ペーター・レーゼル
ディーター・ツェヒリン

半分はフィッシャー=ディースカウの共演者とだぶっているのが面白い。

私が一番驚いたのが、このリストにイングリット・ヘブラーの名前があったことである。
彼女は言うまでも無く著名なモーツァルト弾きであり、私の最も好きなピアニストの一人である。
ヘブラーは独奏者としてだけでなく、他の楽器奏者とも室内楽演奏を盛んに行い、多数の録音も残しているが、歌曲の録音は皆無で、コンサートで歌曲を演奏したことがあったかどうかさえこれまで分からなかった。
一体シュライアーは彼女とどんなレパートリーで共演したのだろうか。
また、ヘブラーは歌曲演奏にどんなアプローチをしたのだろうか。
いつか何かの機会にひょっこり共演時のライヴ音源が出てきたりすると嬉しいのだが。

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シューベルトの誕生日に寄せて(シュライアー&シェトラーの「美しい水車屋の娘」)

今日1月31日はシューベルトの213回目の誕生日。
私の最も敬愛するこの作曲家の誕生日には毎年その音楽を聴くことにしているが、今年は「美しい水車屋の娘(Die schöne Müllerin) D795」のちょっと珍しいヴァージョンのCDを聴いた。

すでに歌手活動から引退したテノールのペーター・シュライアー(Peter Schreier: 1935年生まれ)はシューベルトの歌曲集「美しい水車屋の娘」を十八番にしていて、私もかつて実演で聴く幸運に恵まれたが、彼は1980年になんと3種類もの「水車屋」を録音している。
ただ、その3種とも録音当時としては一味ひねった趣向が凝らされている。

●ギター版(BERLIN Classics)
 録音:1980年1月5-7日, Lukaskirche, Dresden
 コンラート・ラゴスニク(Konrad Ragossnig: 1932年生まれ)(ギター)

●ハンマークラヴィーア版(Intercord)
 録音:1980年2月28-29日, Schubert-Saal des Wiener Konzerthauses
 シュテフェン・ツェーア(Steven Zehr: 1944年生まれ)(ハンマークラヴィーア)

●フォーグルによる改変版(musicaphon)
 録音:1980年8月22-23日, Grosse Aula der Universität Salzburg
 ノーマン・シェトラー(Norman Shetler: 1931年生まれ)(ピアノ)

最初の2種は、現代ピアノではない楽器の共演によるもの。
ラゴスニクのギターとの共演は日本でも披露され、テレビでも放映されたようだ。
音量の小さめなギターに合わせて、シュライアーは劇性を抑えて、語り聞かせるようにゆったりめのテンポで歌っていた。
ひなびたギターの響きは、サロンで聞くような親密さを増していた。

また、今でこそ当時の楽器を使って歌曲を演奏することが珍しくなくなったものの、この当時にはまだ稀だったと思われる。
ツェーアのよるハンマークラヴィーア共演盤は、その響きの古雅な趣に新鮮さを感じた。

 ツェーアとの録音(第5曲「仕事を終えて」、第8曲「朝の挨拶」、第14曲「狩人」)

Schreier_shetler_muellerinところで、今日聴いたのはノーマン・シェトラーの現代ピアノ共演による3番目の盤。
musicaphonレーベルのCDのケース表裏どちらにも普通の「水車屋」と違う旨明記されておらず、ケースを開き解説書を取り出してはじめて通常と違うことが分かる。
これは明らかに販売上の戦略であろう。
ヨーハン・ミヒャエル・フォーグル(Johann Michael Vogl: 1768-1840)は、シューベルトの友人として彼の数々の歌曲の普及に貢献したテノール歌手である。
フォーグルが実際にシューベルトの歌曲を歌う時にオリジナルにはない装飾を加えたり、旋律線を変更したりすることは珍しいことではなかったようだ。
そのフォーグルが「水車屋」に加えた変更版を、国際シューベルト協会が楽譜の形で出版した(新シューベルト全集の一環として)。
それに基づいて演奏したのが、このシュライアーとシェトラーによる録音である。

第1曲「さすらい」では5節の有節形式だが、例えば第1節の"Das Wandern ist des Müllers Lust, Das Wandern!"が繰り返される時の"Wandern!"に装飾音が加えられている。
だが、各節の同じ箇所に必ずしも同じ装飾が加えられているわけではないのが興味深い。
また、各節最後に繰り返されるリフレイン(第1節ならば"Das Wandern")の締めの直前をピアノのみに演奏させて、最後の一言の効果を挙げようとしているかのようである。

第2曲「どこへ」の歌声部でもメリスマの上下を逆にしたり、歌の出を遅らせたり、リズムを若干変化させたりと、ある種即興的に感じさせるような変更を加えている。

第6曲「知りたがり屋」の最後「言っておくれ、小川よ、彼女は僕を愛しているだろうか(Sag', Bächlein, liebt sie mich?)」の歌の出を遅らせているのは、主人公のためらいを印象づけて効果的だと思った。

第11曲「僕のもの」では途中"mein"を繰り返す箇所で"Ja, ist mein"と歌詞を加えてさえいる。

第13曲「リュートの緑色のリボンで」の最初のピアノの和音が省略されているのは、フォーグルの意図なのか、それとも演奏家の判断なのか(この和音を省略する演奏家もいるので)はっきりしないが、それはいつか全集楽譜を見て確かめてみたい。

第14曲「狩人」のピアノ前奏、間奏、後奏はそれぞれ同じパッセージだが、その中の右手の1音がすべて変更されているので、フォーグルの変更はピアノパートにも及んでいたということなのだろう。

シューベルト公認の変更ということになるのだろうが、私としては繰り返し聴く録音では原則としてシューベルトのオリジナルで聴きたい(このシュライアーのCDは史料としての価値もあり、素晴らしいと思うが)。ただ、1度きりのコンサートではこのような自由な装飾の加えられた演奏も今後の潮流になっていくのかもしれないし、こういう演奏に聴き手も徐々に慣れていくべきなのかもしれない。

なお、シュライアーの歌唱は年輪を感じさせる余裕の語り口で美声を響かせ、聴き手の心をぐっとつかむ。シェトラーのピアノもドラマに沿った安定感のある表現の中に音色の効果的な変化を織り込んで素晴らしかった。

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シュライアーの2種のメンデルスゾーン歌曲集(オルベルツ/エンゲル)

今年が生誕200年のフェーリクス・メンデルスゾーン=バルトルディ(Felix Mendelssohn-Bartholdy: 1809-1847)は、ヴァイオリン協奏曲や「フィンガルの洞窟」序曲、「夏の夜の夢」などでよく知られている作曲家である。
短命だが裕福な家系に生まれ、その明朗、優美な作風は幅広く愛されている。
大規模な作品だけでなく、ピアノ・ソロのための小品集「無言歌」も有名で、特に「春の歌」や「ヴェネツィアの舟歌」などは実際に弾いたことのある方も多いのではないか。
それとは別にチェロとピアノのための「無言歌」という作品もあり、ジャクリーン・デュ・プレがジェラルド・ムーアと録音しており、包み込むような美しい作品で印象に残っている。

メンデルスゾーンは独唱歌曲も多く作曲しているが、その中で飛び抜けて有名な「歌の翼に」を除くと残念ながらそれほど知られているとは言えない。
しかし、歌曲においても優美で耳あたりのよい作風は貫かれ、一度聴くとその魅力にとりつかれてしまう。

ドイツ、マイセン出身のテノール、ペーター・シュライアー(1935年生まれ)はオペラ、宗教曲だけでなく、歌曲の歌い手としてもコンサートや録音で活躍してきたが、1971年と1993年という20年もの間隔をあけてメンデルスゾーン歌曲集の録音を2回行っている。
1971年の録音(BERLIN Classics / DG)はドイツ、アーヘン出身のヴァルター・オルベルツ(1931年生まれ)と共演して22曲、そして1993年の録音(BERLIN Classics)はスイス、バーゼル出身のカール・エンゲル(1923-2006)と共演して24曲歌っている。

●1度目の録音

Schreier_olbertz_mendelssohnユニバーサルミュージック: DG: UCCG-4337
BERLIN Classics: 0092182BC
録音:1971年9月27~30日、Lukaskirche, Dresden

ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
ヴァルター・オルベルツ(Walter Olbertz)(P)

メンデルスゾーン作曲
1.春の歌Op. 47-3(2'17)*
2.挨拶Op. 19-5(1'47)*
3.春の歌Op. 34-3(2'50)
4.春の歌Op. 19-1(1'45)*
5.旅の歌Op. 57-6(1'50)
6.問いOp. 9-1(1'12)
7.新しい愛Op. 19-4(1'52)*
8.月Op. 86-5(2'00)*
9.もうひとつの五月の歌(魔女の歌)Op. 8-8(2'05)*
10.恋の歌Op. 34-1(1'42)*
11.狩の歌Op. 84-3(2'27)
12.ゆりかごのそばでOp. 47-6(3'25)
13.歌の翼にOp. 34-2(3'22)*
14.古いドイツの春の歌Op. 86-6(2'10)
15.葦(あし)の歌Op. 71-4(3'25)*
16.ヴェネツィアのゴンドラの唄Op. 57-5(2'05)*
17.旅の歌Op. 34-6(2'30)*
18.はじめての失恋Op. 99-1(3'15)
19.秋にOp. 9-5(2'00)
20.羊飼の歌Op. 57-2(2'55)*
21.冬の歌Op. 19-3(2'30)*
22.小姓の歌(1'45)*

(上記の日本語表記は原則として国内盤CD(UCCG-4337)に従いましたが、Op. 8-8はCDの記載「魔女の春の歌」から、Op. 71-4は「あしの歌」から上記に変えました)
HMVのサイトで上記の録音全曲が試聴できます)

●2度目の録音

Schreier_engel_mendelssohnBERLIN Classics: BC 1107-2
録音:1993年10月、Westdeutscher Rundfunk, Köln. Funkhaus Wallrafplatz, Großer Sendesaal

ペーター・シュライアー(Peter Schreier)(T)
カール・エンゲル(Karl Engel)(P)

メンデルスゾーン作曲
1.歌の翼にOp. 34-2(2'54)*
2.葦(あし)の歌Op. 71-4(3'00)*
3.月Op. 86-5(1'47)*
4.小姓の歌(1'49)*
5.春の歌Op. 9-4(2'53)
6.旅の歌Op. 34-6(2'47)*
7.夜ごとの夢にOp. 86-4(1'42)
8.ヴェネツィアのゴンドラの唄Op. 57-5(1'42)*
9.はるかな女性にOp. 71-3(1'26)
10.春の歌Op. 19-1(1'30)*
11.恋の歌Op. 34-1(1'46)*
12.お気に入りの場所Op. 99-3(2'35)
13.冬の歌Op. 19-3(2'35)*
14.挨拶Op. 19-5(1'40)*
15.初すみれOp. 19-2(2'11)
16.そのとき僕は木陰で横になっているOp. 84-1(3'45)
17.恋の歌Op. 47-1(1'56)
18.朝の挨拶Op. 47-2(1'53)
19.旅路でOp. 71-5(2'01)
20.夜の歌Op. 71-6(2'42)
21.羊飼の歌Op. 57-2(4'05)*
22.春の歌Op. 47-3(2'36)*
23.新しい愛Op. 19-4(1'56)*
24.もうひとつの五月の歌(魔女の歌)Op. 8-8(2'06)*

1度目の録音は最近ユニバーサルミュージックからDGレーベルの音源としてCD復活(UCCG-4337)を遂げたが、「世界初CD化」という触れ込みは誤りで、すでにBERLIN ClassicsがCD化していたので、「国内初CD化」と言うべきだろう。
2度目の録音もBERLIN Classicsから発売された後、国内盤としても発売されていた。

上記の曲目の後に*印を付けたものは1度目と2度目で重複して歌っている曲を示している。
つまり、2度目の再録音では全24曲中、半数以上の14曲も重複して歌っているのである。
1度目でのみ歌っている曲は8曲、2度目でのみ歌っている作品は10曲であり、シュライアーの録音におけるメンデルスゾーン歌曲のレパートリーは計32曲ということになる。
名歌手たちが「冬の旅」を何度も再録音するように、シュライアーが十八番のメンデルスゾーン歌曲を再び録音したくなったとしても不思議はない。
2度目の録音では8曲もの新レパートリーを聴くことが出来ること、さらに14曲の共通するレパートリーの聴き比べ(ピアニストも含めて)が出来ることを喜びたい。

ペーター・シュライアーは70歳を機に歌手活動から引退してしまったが、最後まで清冽で爽快な声を維持していたのは高音歌手としてはすごいことではないか。
この2種の録音でも36歳と58歳という20年以上の歳月の流れがあるにもかかわらず、それを感じさせない声と表現には驚かされる。
彼は旧東ドイツの聖歌隊出身ということで小さい頃から歌唱の基本を叩き込まれてきたのだろう、どのタイプの曲を歌っても安定した音楽と美しい言葉さばきを聞かせてくれる。
ドイツ語のほれぼれするほどの美しい発音は彼の魅力の一つだが、それ以上に過剰さのない表現の節度が素晴らしかった。
1980年代に入り、多少濃淡を大きくとる傾向が見られたが、それでも作品を逸脱しない範囲内であったと思う。
このメンデルスゾーンの録音でも、1971年の録音が清流のような清清しさで貫かれていたのに対し、1993年盤では若干高音が苦しい箇所もあるものの殆ど問題なく、危なげのない安定した歌唱はそのままで、さらに言葉の一言一言への重みが加わって味わい深くなっている。
このような変化を聞くのも特定のリート歌手を追い続けていく楽しみの一つである。

1971年盤の共演者ヴァルター・オルベルツは、ハンス・アイスラーのピアノ曲の初演や、ハイドンのピアノソナタ全集の録音、さらにシュライアー、オージェー、ヴァイオリニストのズスケなどとの共演者としても知られている。
この録音でも一貫して作品に同化した歌心を感じさせて、ただただ素晴らしい。
こういうピアノで歌えるシュライアーは恵まれているといえるだろう。
もともと美しくしっかりとした音色を聞かせるピアニストではあるが、その長所がこの録音では際立っていてすべてがプラスに働いている。
「歌の翼に」の分散和音がこれほど美しく響くのも珍しく、一方「もうひとつの五月の歌(魔女の歌)」でのあらん限りのテクニックでリズミカルに盛り立てるその手腕には驚き、この作品演奏でのベストのピアニストの一人と感じた。

1993年盤の共演者カール・エンゲルはオールマイティのピアニストであるが、もともと歌曲の演奏には定評があり、F=ディースカウやプライなどとの名演はよく知られている。
シュライアーとも何度も共演して気心の知れた間柄であるだけにここでも堅実、かつテクニシャンぶりを存分に発揮している。

メンデルスゾーンの歌曲は上述の曲目を見ても分かるとおり季節をテーマにした曲が多いが、とりわけ「春の歌」が多い。
このテーマで以前に記事を書いているので興味のある方はご覧ください。
http://franzpeter.cocolog-nifty.com/taubenpost/2007/04/post_5dcd.html

個人的に好きなメンデルスゾーンの歌曲は沢山あるが、特に「もうひとつの五月の歌(魔女の歌)」「ヴェネツィアのゴンドラの唄」「葦(あし)の歌」「夜の歌」「新しい愛」などは奇跡のような素晴らしい作品である。
複雑さはなく、素直に聴き手の心に入ってくるのがメンデルスゾーンの音楽の魅力である。

曲のタイプを大雑把に分類すると次のような感じだろうか。

・憂いを帯びた曲:「葦(あし)の歌」「ヴェネツィアのゴンドラの唄」
・ピアノが技巧的な曲:「もうひとつの五月の歌(魔女の歌)」
・静謐さで訴えてくる曲:「夜の歌」
・穏やかな曲:「挨拶」
・リズミカルな曲:「新しい愛」「小姓の歌」
・歌声部に半音進行を取り入れた曲:「月」
・ドラマティックな展開のある曲:「旅の歌」Op. 34-6

最後にシュライアーの歌ったメンデルスゾーンの映像が動画サイトにあったのでご紹介したい。
珍しく管弦楽に編曲されたもので3曲歌っている(「歌の翼に」「新しい愛」「挨拶」)。
多少映像と音がずれているのでその点はご了承ください。
1989年ベルリン録音、クラウス・ペーター・フロール(C)

http://www.youtube.com/watch?v=Z-M16Ao3NmU

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