アーメリングの歌うマーラー「交響曲第4番」第4楽章の映像!!!

動画サイトにエリー・アーメリングの歌唱シーンが収められた映像がアップされていました。
マーラーの「交響曲第4番」第4楽章の独唱者としてです。
セルジュ・コミッシオーナ指揮RTVE交響楽団で1985年スペインのテアトロ・レアル収録とのことです。

彼女の同曲の録音はスタジオ録音が2種類(ハイティンク指揮とプレヴィン指揮。詳細はSandmanさんのサイトをご覧下さい)、その他に放送局などの録音がいくつか残されていました。
しかし、映像を見るのは私は初めてです。
まさにファン待望のお宝映像です!

Sinfonía nº 4 en Sol Mayor de Gustav Mahler

49分頃から第4楽章が始まります。
アーメリング・ファンの方は49分あたりに目盛りを合わせて、お聞き下さい。
もちろんマーラー・ファンの方は最初からじっくりお聞き下さい。

収録:1985年、Teatro Real

Soprano: Elly Ameling
Orquesta de RTVE
Director: Sergiu Comissiona

若かりし頃の録音のような豊麗さはないかもしれませんが、細やかな言葉さばきは楽しめますし、何しろまだ十分美声を保っています。
歌詞を反映したと思われる微笑みも見られ、歌い方も相変わらずチャーミングです(ファン心理かもしれませんが)。
ぜひご覧下さい!

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アーメリング&クーベリック指揮コンセルトヘボウ/マーラー「交響曲第4番」1963年音源

動画サイトにアーメリングが参加したクーベリック指揮のマーラー「交響曲第4番」のライヴ録音があがっていました。
1963年ということはアーメリングはまだ30歳!
これまでに聴くことの出来た彼女の同曲のどの音源よりも若いです!!
実際聴いてみると、その若々しさと伸びやかな美声は素晴らしいです!
ライヴということもあるのか、かなりたっぷりと思い入れを込めた熱唱を聴かせてくれています。
ファン必聴です!

マーラー「交響曲第4番」

録音:1963年12月13日、Holland Festival (ライヴ)

エリー・アーメリング(Elly Ameling)(S:4楽章)
コンセルトヘボウ管弦楽団
ラファエル・クーベリック(Rafael Kubelik)(C)

ちなみにアーメリングが登場する第4楽章は、46:20~です。

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マーラー「私はこの世からいなくなった」を聴く

Ich bin der Welt abhanden gekommen
 私はこの世からいなくなった

Ich bin der Welt abhanden gekommen,
Mit der ich sonst viele Zeit verdorben,
Sie hat so lange nichts von mir vernommen,
Sie mag wohl glauben, ich sei gestorben.
 私はこの世からいなくなった、
 そこで私はかつて多くの時を堕して過ごしたものだった。
 世間が私の消息を何も聞かなくなってすでに久しく、
 私が死んでしまったのだと信じているのだろう。

Es ist mir auch gar nichts daran gelegen,
Ob sie mich für gestorben hält,
Ich kann auch gar nichts sagen dagegen,
Denn wirklich bin ich gestorben der Welt.
 私には全くどうでもよいことなのだ、
 世間が私を死んだものとみなしているかどうかなどは。
 私もそのことに対して全く何も言うことが出来ないのだ。
 なぜなら本当に私は世間というものからは死んでしまったのだから。

Ich bin gestorben dem Weltgetümmel,
Und ruh' in einem stillen Gebiet.
Ich leb' allein in meinem Himmel,
In meinem Lieben, in meinem Lied.
 私は世の喧騒から死んでしまい、
 ある静かな地域で安らいでいる。
 わが天空の中で一人生きているのだ、
 わが愛の中、わが歌の中で。

詩:Friedrich Rückert (1788 - 1866)
曲:Gustav Mahler (1860 - 1911)

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マーラーがリュッケルトの詩に作曲した歌曲「私はこの世からいなくなった」をアーメリングが歌った録音がアップされていたので(Omniumレーベルから出ている放送録音と思われます)、この機会に他の歌手たちと聴き比べてみようと思います。
ちなみにマーラーはいつも通り、リュッケルトの原詩に手を加えています。
世の中の喧騒を離れた孤高の心境が、マーラーの静かで美しい音楽で語られます。

Elly Ameling(S), Radio Kamerorkest, Ed Spanjaard(C) 1991

演奏活動の最後の時期に差し掛かり、アーメリングの歌の奥行きは増すばかりです。胸にしみ渡ります。

Hermann Prey(BR), Michael Krist(P) Oct. 1972

ここではクリストのピアノ伴奏で歌われます。プライはコントロールを効かせながら、希望の光を灯しているかのように歌っています。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Berlin Philharmonic, Karl Böhm(C) 1964

ディースカウの声がつやつやしていた頃にあえてこの深みのある作品に挑戦しています。丁寧なディクションが印象的です。

Kathleen Ferrier(A), Wiener Philharmoniker, Bruno Walter(C) 20 May 1952

この夭折した英国のアルト歌手、キャスリーン・フェリアが何故現在までこれほど評価され続けているのかよく分かります。人間味に満ち溢れた声の素晴らしさ!

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クリスティアン・ゲルハーヘル&ゲロルト・フーバー/没後100年記念マーラーを歌う(2011年12月9日 トッパンホール)

〈歌曲(リート)の森〉 ~詩と音楽 Gedichte und Musik~ 第9篇
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン) 没後100年記念マーラーを歌う
2011年12月9日(金)19:00 トッパンホール(C列6番)

クリスティアン・ゲルハーヘル(Christian Gerhaher)(Baritone)
ゲロルト・フーバー(Gerold Huber)(Piano)

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)

《さすらう若人の歌(Lieder eines fahrenden Gesellen)》
 第1曲 いとしいひとがお嫁に行く日は(Wenn mein Schatz Hochzeit macht)
 第2曲 今朝ぼくは野原を歩んだ(Ging heut morgen übers Feld)
 第3曲 ぼくは燃える剣をもっている(Ich hab'ein glühend Messer)
 第4曲 いとしいあの子のつぶらな瞳が(Die zwei blauen Augen)

《子どもの魔法の角笛》より(Lieder aus «Des Knaben Wunderhorn»)
 この歌をつくったのはだれ?(Wer hat dies Liedlein erdacht?)
 夏の歌い手交替(Ablösung im Sommer)
 みどり深い森をたのしく歩んだ(Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald)
 いたずらっ子をしつけるには(Um die schlimme Kinder artig zu machen)
 ラインの伝説(Rheinlegendchen)
 番兵の夜の歌(Der Schildwache Nachtlied)

~休憩(Intermission)~

《子どもの魔法の角笛》より(Lieder aus «Des Knaben Wunderhorn»)
 塔の囚人の歌(Lied des Verfolgten im Turm)
 浮世の暮らし(Das irdische Leben)
 シュトラースブルクの砦(Zu Straßburg auf der Schanz)
 トランペットが美しく鳴りひびくところ(Wo die schönen Trompeten blasen)

《亡き子をしのぶ歌(Kindertotenlieder)》
 第1曲 いま太陽が明るく昇るところだ(Nun will die Sonn' so hell aufgeh'n)
 第2曲 今になってわかる、あの暗い炎がなぜ(Nun seh' ich wohl, warum so dunkle Flammen)
 第3曲 おまえのお母さんが(Wenn dein Mütterlein)
 第4曲 わたしはよく思う、子供たちはちょっと外出しただけだと(Oft denk' ich, sie sind nur ausgegangen)
 第5曲 こんなひどいあらしの日には(In diesem Wetter)

~アンコール~
マーラー/原光(Urlicht)

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実に濃密で充実した演奏であった。
「さすらう若人の歌」「亡き子をしのぶ歌」といった有名歌曲集を両端に置き、その間に「子どもの魔法の角笛」に因んだ歌曲を配すという選曲は見事なものである。

ゲルハーヘルもフーバーもこれらの作品の多くにひそむ暗部を拡大して表出してみせてくれた。
それにより、たまにあらわれる楽しい曲(「この歌をつくったのはだれ?」等)や皮肉な曲(「いたずらっ子をしつけるには」等)がちょっとした気分転換となり、聴衆に一息つかせる効果があった。

「さすらう若人の歌」での繊細な感情、そして「亡き子をしのぶ歌」での悲壮感が、真実味をもった表現で描かれていて素晴らしかった。
最高のリート解釈者2人の演奏を味わえた喜びを感じた2時間だった。
今後のさらなる活動がますます楽しみである。

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クリスティアン・ゲルハーヘル&ゲロルト・フーバー/“マーラーの二夜”<第2夜>(2011年12月7日 王子ホール)

クリスティアン・ゲルハーヘル“マーラーの二夜”<第2夜>

2011年12月7日(水)19:00 王子ホール(D列1番)

クリスティアン・ゲルハーヘル(Christian Gerhaher)(Baritone)
ゲロルト・フーバー(Gerold Huber)(Piano)

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)

「大地の歌」より 第2楽章 秋に寂しきもの
(From "Das Lied von der Erde" No.2 Die Einsame im Herbst)

「7つの最新歌曲(最後の7つの歌)」
(Sieben Lieder aus letzter Zeit)
 死せる鼓手(Revelge)
 少年鼓手(Der Tamboursg'sell)

 私の歌をのぞき見しないで(Blicke mir nicht in die Lieder)
 私は快い香りを吸いこんだ(Ich atmet' einen linden Duft!)
 真夜中に(Um Mitternacht)
 美しさをあなたが愛するなら(Liebst du um Schönheit)
 私はこの世に捨てられて(Ich bin der Welt abhanden gekommen)

~休憩(Intermission)~

「大地の歌」より 第6楽章 告別
(From "Das Lied von der Erde" No.6 Der Abschied)

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王子ホールはクリスティアン・ゲルハーヘルとゲロルト・フーバーを迎えて、今年没後100年のマーラー歌曲のみの夕べを2夜企画した。
そのうちの第1夜は9日のトッパンホールでも全く同じ内容で催されるので、私は王子ホールでは第2夜のみを聴いた。

プログラムは「大地の歌」の中から低声用の2曲を両端に置き、その間に「7つの最新歌曲」を挟み込むというもの。
「7つの最新歌曲」とは一般には聞き慣れないタイトルだが、「7つの最後の歌」という従来訳は"letzt"の解釈の違いによるものである。
この作品がマーラーの最後の歌ではないので「最新」という意味でとらえるべきだというのが訳者広瀬大介氏の考えであり、それは妥当な見解だと思う。
ちなみにこの「7つの最新歌曲」、「角笛」歌曲集から「死せる鼓手」「少年鼓手」の2曲にリュッケルトの5つの歌曲をまとめたものである。

久しぶりに聴いたクリスティアン・ゲルハーヘルは進境著しい。
声と音楽性の充実はピークに達している印象を受けた。
彼の限界を知らない朗々たる声には王子ホールが小さすぎる印象すら受ける場面もあった。
この声のボリュームは大きなコンサートホールで聴いたとしても全く問題ないであろう。
しかし、リートは声の豊かさだけではなく、抑制された繊細な表現も必要とされる。
従って、ゲルハーヘルの豊かなダイナミックレンジを小ホールの親密な空間で味わえるというのはとても贅沢であると同時に理に適ったことでもあるのだ。

ゲルハーヘルの歌い方はやはり師匠F=ディースカウの影響が大きく感じられる。
声がテノラールな軽やかさをもち、バリトンにもかかわらず明るく高めの響きが聴かれ、テキストが響きに埋没せずにくっきり明瞭に聞こえてくるのも師匠と共通する点だ。
しかし、ゲルハーヘルの歌唱は師匠よりもより作品に忠実たらんとする。
勢いに任せて音が曖昧になることもない。
そこに彼の美質の一つを見ることが出来るように思える。

ゲロルト・フーバーはピアノの蓋をいっぱいに開け、かなり振幅の大きな演奏。
以前は端正で安定した美しい演奏をしていた印象があったのだが、この日は師匠ハルトムート・ヘルを思わせる大胆さが感じられた。
美しさよりも真実味のある音を徹底的に追究し、それを演奏に反映しているように感じた。
時にその振幅の大きさが大仰に感じられる場面もないではなかったが、概して作品が求める表現として受け入れることが出来た。
また、弾きながら低いうなり声をあげるのも以前には気付かなかったことだ。

マーラーのほの暗く深遠な世界をくまなく表出しようとした2人のドラマティックな演奏に感激した。

アンコールはなし(「告別」の後にふさわしい曲はないということなのだろう)。
なお、この日の前半は冒頭の「秋に寂しきもの」の後に拍手を受けつつも袖に戻らず、そのまま「死せる鼓手」「少年鼓手」を歌ってから袖に戻った。
「7つの最新歌曲」とまとめられてはいても「死せる鼓手」「少年鼓手」とリュッケルト歌曲集の間にはそれだけ大きな表現上の切り替えが必要ということなのではないか。

なお、この日はサイン会に並び、サインをいただいたが、2人とも演奏で疲れているはずだろうに、非常に愛想よく、フーバーにいたっては"Tschüss!"とまで声をかけてくれて、人間的にも魅力を感じた2人であった。

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フォレスター、レーフスの歌う「こどもの不思議な角笛」(キングレコード: VANGUARD: KICC 2051)

マーラー/歌曲集「こどもの不思議な角笛」
キングレコード: VANGUARD: KICC 2051
録音:1958年頃

モーリン・フォレスター(Maureen Forrester)(A)
ハインツ・レーフス(Heinz Rehfuss)(BSBR)
ウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker)
フェリックス・プロハスカ(Felix Prohaska)(C)

マーラー(Mahler)/歌曲集「こどもの不思議な角笛(Des Knaben Wunderhorn)」

1.死んだ鼓手(Revelge)(レーフス)
2.浮き世の生活(Das irdische Leben)(フォレスター)
3.高い知性への賛歌(Lob des hohen Verstandes)(レーフス)
4.ラインの伝説(Rheinlegendchen)(フォレスター)
5.番兵の夜の歌(Der Schildwache Nachtlied)(レーフス)
6.だれがこの歌を作ったか(Wer hat dies Liedlein erdacht?)(フォレスター)
7.むだな骨折り(Verlor'ne Müh')(フォレスター)
8.少年鼓手(Der Tamboursg'sell)(レーフス)
9.不幸な時の慰め(Trost im Unglück)(レーフス)
10.トランペットが美しく鳴り響く所(Wo die schönen Trompeten blasen)(フォレスター)
11.魚に説教するパドヴァの聖アントニウス(Des Antonius von Padua Fischpredigt)(フォレスター)
12.塔の中の囚人の歌(Lied des Verfolgten im Turm)(レーフス)
13.原光(Urlicht)(フォレスター)

※上記の演奏者、曲名などの日本語表記はCDでの表記に従った。

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最近中古屋を見ていたら、偶然にも先日亡くなったカナダのコントラルト歌手フォレスターの歌った「こどもの不思議な角笛」のCDを見つけたので、早速購入して聴いてみた。
この録音、1959年にLPで発売された後しばらくして廃盤になり、その後1990年にCD化されるまで長く日の目を見ることがなかったらしい。
その事実が信じられないほど、歌唱もオケも明晰で味わいもあり素晴らしい演奏であった。

フォレスターの声はいぶし銀の光沢をもった低音で、メロディーラインがくっきりと描かれるので、マーラーの民謡の形を借りた歌がストレートに伝わってくる。
マーラーが意図したのはこういう歌い方ではなかっただろうかと思えるほど飾り気のない実直な歌いぶりがしっくりと作品と合っていた。
とりわけ「トランペットが美しく鳴り響く所」や「原光」のような静謐な作品において彼女はしっとりとした味わいを聴き手に感じさせてくれた。

ハインツ・レーフスといえばフランク・マルタンと共演したマルタンの「イェーダンマンからのモノローグ」が思い出されるが、リート歌手として数々の名演を残しているようだ。
ここでも実にめりはりのきいた発音と耳に心地よいハイバリトンが美しく響いていた。

プロハスカ指揮のウィーン交響楽団は実に色彩感豊かに各曲を彩っていく。
マーラーが各楽器に込めた意味合いをすべて丁寧に掬い上げようとしたかのような意欲が漲っていた。

今年はヴォルフと同年生まれのマーラーの生誕150年。
歌曲のリサイタルでも例年以上に選曲されているようだが、まだ「角笛」を生のオケ版で聴いたことがない。
いつか聴いてみたいものである。

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プライの歌うマーラー「ある遍歴職人の歌(さすらう若者の歌)」

ヘルマン・プライ(Hermann Prey)は初来日(1961年)から第3回来日(1973年)まで連続してマーラー自作のテキストによる歌曲集「ある遍歴職人の歌(さすらう若者の歌)」(Lieder eines fahrenden Gesellen)を日本の聴衆に披露してきた。
第1回目は小林道夫のピアノと、第2回目以降はオーケストラと共演して。
プライはこの歌曲集を私の知る限り2回録音している。

Prey_sanderling_mahler1)1960年、Staatliches Komitee fr Radio, Berlin録音:クルト・ザンダーリング(Kurt Sanderling)(C);ベルリン放送交響楽団(Rundfunk-Sinfonie-Orchester Berlin)(BERLIN Classics: 0184152BC)

Prey_haitink_mahler 2)1970年5月27,28日、Concertgebouw, Amsterdam録音:ベルナルト・ハイティンク(Bernard Haitink)(C);ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)(PHILIPS: 454 014-2)

1回目の録音は初来日の1年前、2回目の録音は2回目の来日の1年前であり、当時のプライの声を想定するのに格好な録音である。
実際プライの声は1960年盤では感情のおもむくままという感じで若々しく甘美な声を惜しみなく聴かせ、1970年盤ではより客観性を加えて落ち着いた歌唱を聴かせる。
どちらも喉の調子はすこぶる良かったようで安心してプライの美声に身をまかせることが出来る。

各々の演奏時間を比べてみると以下のようになる(各トラック前後の空白時間は含めていない)。

1)ザンダーリング盤:3'53/4'40/3'22/5'12
2)ハイティンク盤: 3'43/4'11/2'54/5'32

ザンダーリング盤は1~3曲目までハイティンク盤より時間が長く、特に第2、3曲目は30秒近い差がある。
思いいれたっぷりの若きプライと、経験を積み締まりのある歌を聴かせる10年後の成熟したプライの違いがあらわれているのではないか。
しかし面白いのは最終曲のみハイティンク盤の方が20秒も長くかかっていることである。間の多いゆっくりしたテンポの第4曲は管弦楽の音も薄く、こういう曲でたっぷりとした表現をするのは若い歌手には難しいのかもしれない。

マーラー自作の詩は擬音や語の繰り返しを用いて、素朴な民謡調を模しているように思える。
4曲目で憩いの場として「Lindenbaum(リンデの木)」が登場するのは、シューベルトの「冬の旅」を意識しているかのようだ。
最初にピアノ伴奏版がつくられ、後に管弦楽化されたようだ。

●第1曲「僕の大切な人が結婚式をあげるとき」:Leise und traurig bis zum Schluss.(最後まで声を抑えて悲しげに)、4分の2拍子、ホ短調。
テンポはSchneller(より早く)とLangsamer(よりゆっくりと)が入れ替わり、結婚式の楽しげな響きと主人公の悲痛な訴えが交差する。
フルート2、オーボエ2、B管クラリネット2、B管バスクラリネット、ファゴット2、ホルン2、グロッケンシュピール、トライアングル、ティンパニー、ハープ、弦楽5部

●第2曲「今朝、野原を歩いていると」:In gemächlicher Bewegung.(ゆったりとした動きで)、2分の2拍子、ニ長調。
ピッコロ、フルート3、オーボエ2、B管クラリネット2、B管バスクラリネット、ファゴット2、トランペット、ホルン4、トライアングル、ティンパニー、ハープ、弦楽5部

●第3曲「僕は赤熱したナイフを持っている」:Stürmisch, wild.(嵐のように、荒々しく)、8分の9拍子、ニ短調。
フルート3、オーボエ2(第1奏者はイングリッシュホルンも兼ねる)、B管クラリネット3、B管バスクラリネット、ファゴット2、F管トランペット2、トロンボーン3(第3奏者はバストロンボーンも兼ねる)、F管ホルン4、トライアングル、シンバル、ティンパニー、ハープ、弦楽5部

●第4曲「いとしい人の二つの青い瞳」:Mit geheimnisvoll schwermüthigem Ausdruck. Ohne Sentimentalität.(秘密めいて陰鬱な表現で。感傷はなく。)、4分の4拍子、ホ短調。
フルート3、オーボエ2(第2奏者はイングリッシュホルンも兼ねる)、B管クラリネット3(第3奏者はB管バスクラリネットも兼ねる)、ホルン3、ティンパニー、ハープ、弦楽5部

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Lieder eines fahrenden Gesellen
 ある遍歴職人の歌

1. Wenn mein Schatz Hochzeit macht
 僕の大切な人が結婚式をあげるとき

Wenn mein Schatz Hochzeit macht,
Fröhliche Hochzeit macht,
Hab' ich meinen traurigen Tag!
Geh' ich in mein Kämmerlein,
Dunkles Kämmerlein,
Weine, wein' um meinen Schatz,
Um meinen lieben Schatz!
 僕の大切な人が結婚式をあげるとき、
 楽しい結婚式をあげるとき、
 僕にとっては悲しい日なのだ!
 僕は自分の小部屋に、
 暗い小部屋に入り、
 泣くのだ、僕の大切な人を思って、
 僕のいとしい大切な人を思って。

Blümlein blau! Verdorre nicht!
Vöglein süß! Du singst auf grüner Heide.
Ach, wie ist die Welt so schön!
Ziküth! Ziküth!
 青い花よ!枯れるな!
 かわいい小鳥よ!おまえは緑の野原で歌っている、
 ああ、世界はなんて美しいのだ!
 チュン!チュン!

Singet nicht! Blühet nicht!
Lenz ist ja vorbei!
Alles Singen ist nun aus.
Des Abends, wenn ich schlafen geh',
Denk' ich an mein Leide.
An mein Leide!
 歌うのをやめろ!花咲くな!
 春は過ぎ去った!
 あらゆる歌はもう終わった。
 晩に寝床につくとき、
 僕は自分の苦しみを思うのだ。
 僕の苦しみを!

  ----------

2. Ging heut morgen übers Feld
 今朝、野原を歩いていると

Ging heut morgen übers Feld,
Tau noch auf den Gräsern hing;
Sprach zu mir der lust'ge Fink:
"Ei du! Gelt? Guten Morgen! Ei gelt?
Du! Wird's nicht eine schöne Welt?
Zink! Zink! Schön und flink!
Wie mir doch die Welt gefällt!"
 今朝、野原を歩いていると
 草々にはまだ露がかかっていた。
 陽気なヒワが僕に語った、
 「おや!おや!ねえ?おはよう!ねえったら。
 きみ!美しい世界じゃないこと?
 チュッ!チュッ!美しく輝いているよ!
 ぼくはこの世界が大好きさ!」

Auch die Glockenblum' am Feld
Hat mir lustig, guter Ding',
Mit den Glöckchen, klinge, kling,
Ihren Morgengruß geschellt:
"Wird's nicht eine schöne Welt?
Kling, kling! Schönes Ding!
Wie mir doch die Welt gefällt! Heia!"
 野辺のキキョウも
 陽気に機嫌よく、
 鈴の音で、リン、リン、
 僕に朝の挨拶を鳴らしてくれた。
 「美しい世界になるんじゃないかしら?
 リン、リン!素敵なこと!
 この世界が大好きなの!わーい!」

Und da fing im Sonnenschein
Gleich die Welt zu funkeln an;
Alles Ton und Farbe gewann
Im Sonnenschein!
Blum' und Vogel, groß und klein!
"Guten Tag, ist's nicht eine schöne Welt?
Ei du, gelt? Schöne Welt?"
 すると日の光を浴びて
 すぐに世界が輝き始めた。
 あらゆるものが音や色を
 日の光を浴びて手に入れたのだ!
 花や鳥が、大きいのから小さいのまで!
 「こんにちは、素晴らしい世界じゃない?
 きみ、ねえ?素晴らしい世界だね?」
 
Nun fängt auch mein Glück wohl an?
Nein, nein, das, ich mein',
Mir nimmer blühen kann!
 今や僕も幸せになり始めたのだろうか?
 いや、いや、僕が思うに、
 もう花咲くことなんか出来ないんだ!

  ----------

3. Ich hab' ein glühend Messer
 僕は赤熱したナイフを持っている

Ich hab' ein glühend Messer,
Ein Messer in meiner Brust,
O weh! Das schneid't so tief
In jede Freud' und jede Lust.
Ach, was ist das für ein böser Gast!
Nimmer hält er Ruh', nimmer hält er Rast,
Nicht bei Tag, noch bei Nacht, wenn ich schlief.
O Weh!
 僕は赤熱したナイフを持っている、
 胸にナイフを、
 おお痛い!ナイフがこんなにも深く、
 喜びや欲求に突き刺さっている。
 ああ、なんていやな客なんだ!
 こいつは決して憩いも休みもしない、
 昼だろうが、僕が眠った夜だろうが。
 おお痛い!

Wenn ich in dem Himmel seh',
Seh' ich zwei blaue Augen stehn.
O Weh! Wenn ich im gelben Felde geh',
Seh' ich von fern das blonde Haar
Im Winde wehn.
O Weh!
 僕が空を見上げると
 二つの青い瞳が見える。
 おお痛い!僕が黄色い野原を歩くと、
 遠くからブロンドの髪が見える、
 風になびいて。
 おお痛い!

Wenn ich aus dem Traum auffahr'
Und höre klingen ihr silbern' Lachen,
O Weh!
Ich wollt', ich läg auf der schwarzen Bahr',
Könnt' nimmer die Augen aufmachen!
 僕が夢から覚めると、
 彼女の銀の笑い声が響き渡るのが聞こえる、
 おお痛い!
 僕は黒い棺に横たわって、
 二度と目を開けなくなればいいのに!

  ----------

4. Die zwei blauen Augen von meinem Schatz
 いとしい人の二つの青い瞳

Die zwei blauen Augen von meinem Schatz,
Die haben mich in die weite Welt geschickt.
Da mußt ich Abschied nehmen vom allerliebsten Platz!
O Augen blau, warum habt ihr mich angeblickt?
Nun hab' ich ewig Leid und Grämen.
 いとしい人の二つの青い瞳、
 それが僕を遠い世界に送り出したのだ。
 僕は最愛の場所から別れを告げなければならない!
 おお青い瞳よ、なぜ僕を見つめたのだ?
 今や僕は永久に苦悩と悲痛をかかえるのだ。

Ich bin ausgegangen in stiller Nacht
Wohl über die dunkle Heide.
Hat mir niemand Ade gesagt.
Ade! Mein Gesell' war Lieb' und Leide!
 僕は静かな夜に
 暗い荒野を通り、出て行った、
 僕に別れの言葉をかける者もなく。
 さらば!僕の道づれは愛と苦悩だった!

Auf der Straße steht ein Lindenbaum,
Da hab' ich zum ersten Mal im Schlaf geruht!
Unter dem Lindenbaum,
Der hat seine Blüten über mich geschneit,
Da wußt' ich nicht, wie das Leben tut,
War alles, alles wieder gut!
Alles! Alles, Lieb und Leid
Und Welt und Traum!
 通りにはリンデの木が立っていて、
 僕ははじめてそこで眠り休んだ!
 リンデの木の下では、
 その花びらが僕の上に舞い落ちて、
 どのような人生だったのか僕には分からなくなった、
 すべてが、すべてが再び良くなったのだ!
 すべて!すべて、愛も苦悩も
 世界も夢も!

詩:Gustav Mahler (1860.7.7, Kaliště - 1911.5.18, Wien)
曲:Gustav Mahler (1860.7.7, Kaliště - 1911.5.18, Wien)

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