ヴォルフ:夜のさすらい (Wolf: Nächtliche Wanderung)
Nächtliche Wanderung
夜のさすらい
1.
Die Nacht ist finster, schwül und bang,
Der Wind im Walde tost;
Ich wandre fort die Nacht entlang
Und finde keinen Trost.
夜は暗く蒸し暑く不安だ。
森では風が荒れ狂っている。
私は夜の間歩みを進めるが、
慰めは見出せない。
2.
Und mir zur Seite, engelmild,
Und, ach! so schmerzlich traut,
Zieht mein Geleite hin, das Bild
Von meiner toten Braut.
すると私の横で、天使のように穏やかに、
そして、ああ!苦しみつつも親密に、
私の伴侶が進んでいる、
今は亡きわが花嫁の姿が。
3.
Ihr bleiches Antlitz bittet mich,
Was mich ihr süßer Mund
So zärtlich bat und feierlich
In ihrer Sterbestund':
彼女の青白い顔が私に頼むのだ、
彼女のかわいい口元が私に
とても優しく、そして厳かに
彼女の臨終に際して頼んだことを。
4.
"Bezwinge fromm die Todeslust,
Die dir im Auge starrt,
Wenn man mich bald von deiner Brust
Fortreißet und verscharrt!"
「信心深く死の欲望に打ち勝ってください、
あなたの瞳を覆っているその欲望に、
私が間もなくあなたの胸から
引き離されて埋められるときに。」
5.
Da unten braust der wilde Bach,
Führt reichen, frischen Tod,
Die Wogen rufen laut mir nach:
"Komm, komm und trinke Tod!"
あの下の方では小川の奔流が荒れ狂い
満ち満ちたひんやりとする死へ連れて行く。
波は大声で背後から叫ぶ、
「おいで、おいで、死を飲み込め!」
6.
Das klingt so lieblich wie Musik,
Wird wo ein Paar getraut:
Doch zieht vom Sprunge mich zurück
Das Wort der toten Braut.
それはとても心地よく響き、
カップルの結婚式の音楽のよう。
だが、飛び込むのをふみとどまったのは
亡き花嫁の言葉だった。
7.
Stets finstrer wird der Wolkendrang,
Der Sturm im Walde brüllt,
Und ferne hebt sich Donnerklang,
Der immer stärker schwillt.
ひしめく雲の群れは絶えず暗くなり
森では嵐が轟いている。
すると遠くで雷鳴が起こり
その音はますます大きくなる。
8.
O schlängle dich, du Wetterstrahl,
Herab, ein Faden mir,
Der aus dem Labyrinth der Qual
Hinaus mich führt zu ihr!
おお、蛇行するがいい、稲光よ、
こちらに垂らしてくれ、一本の糸を私の方に、
その糸は苦しみの迷宮から
私を彼女のもとへ連れ出してくれるのだ!
詩:Nikolaus Lenau (1802-1850), "Nächtliche Wanderung", appears in Gedichte, in 1. Erstes Buch, in Sehnsucht
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Nächtliche Wanderung", 1878 [ voice and piano ]
作曲:1878年2月19-21日, Wien
(終わりに追記:1878年3月11日)
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リュッケルトの詩による「太陽が輝くのが真実であるように(So wahr die Sonne scheinet)」に作曲してから10日ほどして、ヴォルフは再びレーナウの詩に作曲します。「夜のさすらい(Nächtliche Wanderung)」は2月19日から3月11日まで1ヶ月かけて作曲されました。
暗く蒸し暑い夜、森の木々が強風に煽られているときに、主人公は不安に駆られながらさまよい歩きます。
主人公は「慰めを見いだせない」と述べ、慰めを求めて夜中に歩き回っていることが分かります。
彼の横を一緒に進むのは、亡き花嫁の姿。結婚する前に亡くなってしまったのでしょうか。
亡き花嫁は、臨終の際に主人公にかけた言葉「私が死んで埋められても死の欲望に打ち勝ってください」を再び主人公に声掛けします。
主人公は森の中に死に場所を探していて、それが「慰め」だったのでしょう。
荒れ狂う小川が主人公に「こちらへおいで、死を飲み込め!」と叫び、その声は結婚式の音楽のように魅惑的に感じられます。
しかし、ここで花嫁の言葉を聞いて小川に飛び込むのを踏みとどまります。
すると森で嵐が轟き、雷鳴が徐々に大きくなります。
そこで主人公は稲光を垂らしてもらい、それにつかまって彼女のもとに上っていきたいと訴えます。
彼女のいない地上は主人公にとって「苦しみの迷宮(Labyrinth der Qual)」に過ぎないのです。
ヴォルフの音楽は、詩の陰鬱な内容を反映して、通作形式で畳み掛けるように展開していきます。
ピアノは右手がトレモロ中心で、左手は右手と交差して2つの同じ音を鳴らす形が多くあらわれ、シューベルトの「若い尼僧(Die junge Nonne, D 828)」を思い起こさせます(おそらくこの曲を意識していたのではないでしょうか)。
歌声部は同音反復で語るように歌われる個所が多く、一方亡き花嫁が登場する箇所では旋律的な優しい響きになり、主人公の心の揺れが反映されているように感じました。
主人公が亡き花嫁を思い出した後のピアノ間奏の右手高音部の美しいメロディーは、最初は臨時記号を付与して幸福感を感じさせますが、繰り返す際に短調の切ない感情に戻ります。これは後奏にも同様にあらわれて、主人公の彼女に対する癒えることのない心理状況を映し出しているように思えます。
Lieder aus der Jugendzeit: Herausgegeben von F. Foll: Berlin: Bote & Bock, 1900
【第2連後半~間奏】
後奏最後から2つめの小節の左手の急速な7連符の上行は、盛り上げて終わる手法として後年の作品にも見られます(例えば、「ゲーテ歌曲集」の中の「騎士クルトの嫁とり旅(Ritter Kurts Brautfahrt)」)。
この曲もF=ディースカウのヴォルフ歌曲全集の録音や、後年録音された初期歌曲集のCDから除外されていますが、なかなか良く出来た魅力的な作品と感じました。
C (4/4)
ハ短調(c-moll)
Langsam, doch nicht schleppend (ゆっくりと、ただし引きずらないで)
●レーナウの詩の朗読(朗読者:不明)
Nikolaus Lenau: Nächtliche Wanderung (1830)
Channel名:beingoo.de(オリジナルのリンク先はこちら)
●Wolf: Nächtliche Wanderung
シュテファン・ゲンツ(BR), ロジャー・ヴィニョールズ(P)
Stephan Genz(BR), Roger Vignoles(P)
Channel名:ロジェ・ヴィニョールズ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
●[Wolf:] Nachtliche Wanderung (Die Nacht ist finster)
ベンジャミン・ヒューレット(T), ショルト・カイノホ(P)
Benjamin Hulett(T), Sholto Kynoch(P)
Channel名:ベンジャミン・ヒューレット - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:13 & 15 October 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.
●[Wolf: Nächtliche Wanderung] ("Nächtliche Wanderung"は37:00まで進めてからご覧ください)
WolfZWölf Vol 7 「ハイネ・レーナウ作品集」
ヘルマン・ヴァレン(BR), 松川儒(P)
Herman Wallen(BR), Manabu Matsukawa(P)
Channel名:tan t.(オリジナルのリンク先はこちら)
ヴォルフ歌曲全曲演奏会「シリーズⅦ」2005年10月7日 浜離宮朝日ホール
●[Wolf:] Nächtliche Wanderung
ジュリアン・ヴァン・メラーツ(BR), ルースィー・コフーン(P)
Julien Van Mellaerts(BR), Lucy Colquhoun(P)
Channel名:Julien Van Mellaerts - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
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(参考)
Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder I (1877/78)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag
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