« ヘルマン・プライ&レナード・ホカンソン/シューベルト『白鳥の歌』D957 & 965A デジタル配信開始 (Deutsche Grammophon:1978年シューベルティアーデ・ライヴ) | トップページ | ヴォルフ:つばめの帰郷(Der Schwalben Heimkehr) »

ヴォルフ:旅の歌(Wanderlied)

Wanderlied
 旅の歌

Es segeln die Wolken,
Weiß niemand wohin?
Die Lüfte, sie rauschen,
[Wohin wohl, wohin?]1
 雲は流れるが、
 どこへ向かうか誰も知らないのか?
 風はざわめく、
 どこへ、どこへと?

Sie wandern zusammen,
Sie kommen und flieh'n,
Mag keiner mir künden,
Wohin wohl, wohin?
 雲と風は一緒に旅し、
 やって来ては逃げて行く。
 私に知らせるものはいないのか、
 どこへ、どこへ行くのかを?

So zieh' ich ins Leben
Mit fröhlichem Sinn,
Doch frage mich niemand,
Wohin wohl, wohin?
 こうして私は人生を
 楽しく旅している。
 だが私に尋ねるものは誰もいないのか、
 どこへ、どこへ行くのかと。

Noch duften die Blüten,
Noch [locket]2 das Grün,
Glück auf zu dem Wandern,
Weiß selbst nicht wohin!
 まだ花は香りを放ち、
 まだ緑は誘ってくる、
 道中無事でありますように、
 自分でもどこへ行くのか分からない! 

1 Brentano: Wer sagt mir wohin?
2 Brentano: lacht mir

詩:Fritz Brentano (1840-1914), no title
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Wanderlied (Aus einem alten Liederbuche)", 1877

作曲:1877年6月14-15日, Windischgraz

-----

ヴォルフは、レーナウの詩による歌曲「~に寄せて(An ***)」作曲の約1か月後、父親が書き写した古い歌の本に掲載されていた作者不詳の詩による「朝露(Morgentau)」に作曲しました(1877年6月6日~19日)。そして、この「朝露」はヴォルフが最初に出版した歌曲集『女声のための6つの歌(Sechs Lieder für eine Frauenstimme」』の第1曲に置かれることになります。

この「朝露」を作曲しているさなかの6月14~15日にかけて、同じく父親の古い歌の本から作曲したのが「旅の歌(Wanderlied)」です。「旅の歌」については、現在ではフリッツ・ブレンターノ(Fritz Brentano)の詩であることが判明しています。

風や雲は流れていくが、どこへ行くのか誰も教えてくれない。私も人生を旅しているが、どこへ行くのか聞いてくれる者はいないのか?花や緑はかぐわしく誘ってくるが、旅を続けよう。自分でもどこへ向かっているのか分からないという内容です。

ヴォルフの音楽は連続した詩の内容にかかわらず、A-B-A'-B'の形をとり軽快に進みます。ピアノ前奏・間奏が両手でユニゾンを奏でてAとA'を導き、歌は基本的に♩.♩♪のリズムで穏やかに歌われます。疑問形の語尾は忠実に音程を高くして、ピアノの余韻に引き継ぎます。
BとB'は低音で悶々として高音にあがるやいなやまた低音に降りてきます。ピアノの右手と左手のリズムのずれもあり、旅することの一瞬の迷いをあらわしているかのようです。Bの後半は再び高音主体で、詩の最後の2行を繰り返し、主音で気持ちよく締めくくります。短い作品ですが、もっと演奏される価値のある曲ではないかと思います。

Lieder aus der Jugendzeit (herausgegeben von F. Foll: Bote & Bock, Berlin, 1900)
Wanderlied 

6/8拍子
ト長調(G-dur)
Frisch (生き生きと)

●[Wolf: Wanderlied] ("Wanderlied"は20:51まで進めてからご覧ください。この動画の他の初期歌曲も貴重な映像ですので、余裕がありましたらぜひご覧ください!)
WolfZWölf vol 10「初期歌曲集」
太田直樹(BR), 松川儒(P)
Naoki Ota(BR), Manabu Matsukawa(P)

Channel名:tan t.(オリジナルのリンク先はこちら)
ヴォルフ歌曲全曲演奏会「シリーズⅩ」2006年9月26日 浜離宮朝日ホール

●[Wolf:] Wanderlied
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)

Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.

-----

(参考)

The LiederNet Archive

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder I (1877/78)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

IMSLP

|

« ヘルマン・プライ&レナード・ホカンソン/シューベルト『白鳥の歌』D957 & 965A デジタル配信開始 (Deutsche Grammophon:1978年シューベルティアーデ・ライヴ) | トップページ | ヴォルフ:つばめの帰郷(Der Schwalben Heimkehr) »

「音楽」カテゴリの記事

「詩」カテゴリの記事

「ヴォルフ Hugo Wolf」カテゴリの記事

「ショルト・カイノホ Sholto Kynoch」カテゴリの記事

コメント

フランツさん、こんにちは。

いかにもドイツらしいテーマの曲ですね。
旅、さすらい。
人生をテーマにしていますが、思いの外軽やかな曲なんだなあと思いました。が、
>疑問形の語尾は忠実に音程を高くして、ピアノの余韻に引き継ぎます。
BとB'は低音で悶々として高音にあがるやいなやまた低音に降りてきます。ピアノの右手と左手のリズムのずれもあり、旅することの一瞬の迷いをあらわしているかのようです。
という解説を読み、なるほどと聞き直しました。

雲、風と聞いて思い浮かべた曲があります。
やなせたかし詩
木下牧子曲
さびしいカシの木 です。
とても好きな曲です。

木下牧子歌いといわれるソプラノの野崎由実さんと、小原孝さんのピアノで歌われるこの曲がすばらしいので、良かった聞いてみて下さい。
YouTubeに上がっています。♪

雲や風は、同じところに留まっていない、
はかなさを詩に与えますね。

太田直樹さんを聞いていると、林田明子さんというソプラノの方が出て来ました。
好きなソプラノの声でした♪

投稿: 真子 | 2026年2月21日 (土曜日) 17時07分

真子さん、こんにちは。

> いかにもドイツらしいテーマの曲ですね。
旅、さすらい。

まさにドイツリートでお馴染みのテーマですね。
ドイツ人は歩くのが好きなイメージがありますが、人生になぞらえるところはいかにもという感じですよね。

木下牧子さんは日本の歌手や合唱団に大人気の作曲家ですね。
「さびしいカシの木」聞きました。詩も音楽も素敵で心が温まると同時に切なさも感じられました。アンパンマンのやなせさんがどういう経緯でこの詩を書いたのか、そして木下さんがこの詩をどうやって見つけ、作曲にいたったのか興味があります。木下さんはこのさびしく立っているカシの木に心から共感を寄せているように感じます。カシの木の若い頃の1〜2連と年をとった3連で時間の経過とカシの木の心境の違いがあるにもかかわらず、木下さんは完全な有節形式で作っていますね(私の聞き違いでなければ)。「さびしい」という感覚に変化が生じたとしても、同じカシの木が同じ環境で生涯を過ごしたことへの作曲者の変わらぬ優しい眼差しが感じられて目頭が熱くなります。「ほほえみながら」立つカシの木が眼前に浮かんできて、母国語の歌を聞くのも素敵だなとあらためて思わせていただきました。

太田直樹さんの動画もご覧いただいたのですね。太田さんは何度か実演も聞かせていただき、まろやかな美声をもった素晴らしいバリトン歌手でしたが、惜しくも亡くなられました。実はこの動画のコンサートは私もホールで聞いていて、これまで楽譜でのみ知っていて当時録音もなかった多くの初期歌曲を初めて実際に聞くことが出来た思い出深い演奏会でした。林田さんの歌唱も素晴らしいですよね。

投稿: フランツ | 2026年2月22日 (日曜日) 18時28分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ヘルマン・プライ&レナード・ホカンソン/シューベルト『白鳥の歌』D957 & 965A デジタル配信開始 (Deutsche Grammophon:1978年シューベルティアーデ・ライヴ) | トップページ | ヴォルフ:つばめの帰郷(Der Schwalben Heimkehr) »