ヴォルフ:セレナード(Wolf: Ständchen "Alles wiegt die stille Nacht") (詩:Theodor Körner)
Ständchen
セレナード
Alles wiegt die stille Nacht
Tief in süßen Schlummer;
Nur der Liebe Sehnsucht wacht
Und der Liebe Kummer.
Mich umschleichen bandenfrei
Nächtliche Gespenster;
Doch ich harre still und treu
Unter deinem Fenster.
あらゆるものを静かな夜は揺り動かす、
深く、甘美な眠りへと。
目覚めているのはただ愛の憧れと
愛の苦しみだけ。
束縛を解かれて私の周りを取り囲むのは
夜の幽霊たち。
だが僕は静かに忠実に
きみの窓の下で待ちわびている。
Holdes Mädchen, hörst du mich?
Willst du länger säumen?
Oder wiegt der Schlummer dich
Schon in süßen Träumen?
Nein, du bist gewiß noch wach;
Hinter Fensters Gittern
Seh ich ja im Schlafgemach
Noch das Lämpchen zittern.
いとしい娘よ、聞こえるかい?
もっと長いことぐずぐずしていたいのかい?
あるいは眠りが
甘い夢の中へともうきみを揺すっているのかい?
いや、きみはきっとまだ起きている。
窓格子の後ろの
寝室で
まだランプがちらちらしているのが見える。
Ach, so blicke, süßes Kind,
Aus dem Fenster nieder,
Leise wie der Abendwind
Flüstern meine Lieder;
Doch verständlich sollen sie
Meine Sehnsucht klagen
Und mit sanfter Harmonie
Dir: »Ich liebe« sagen.
ああ、かわいい子、
窓から下を見ておくれ。
夕暮れの風のようにかすかな声で
僕の歌がささやいているんだ。
でも、聞き取れるように、歌に
僕の憧れを嘆かせ
そして穏やかなハーモニーで
きみに「愛しているよ」と言わせるんだ。
Was die treue Liebe spricht,
Wird die Liebe hören.
Aber länger darf ich nicht
Deine Ruhe stören.
Schlummre, bis der Tag erwacht,
In dem warmen Stübchen;
Drum, feins Liebchen, gute Nacht,
Gute Nacht, feins Liebchen!
忠実な愛が語ることを
恋人は聞くだろう。
だが、これ以上
きみの憩いを邪魔するわけにはいかない。
夜が明けるまでおやすみ、
暖かい部屋で。
では素敵な恋人よ、おやすみ、
おやすみ、素敵な恋人!
詩:(Karl) Theodor Körner (1791-1813)
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Ständchen", 1877
作曲:1877年3月5日(4月12日), Windischgraz
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レーナウの3つの詩による「夕べの情景(Abendbilder)」の作曲後、一週間余り経ち、ヴォルフは次にテオドア・ケルナーの詩による「セレナード(Ständchen)」を作曲します。ケルナーは21年の短い生涯の間に多くの作品を残し、同時代を生きたシューベルトやヴェーバーは多数の歌曲・合唱曲を作りましたが、ヴォルフによるケルナー歌曲はこの1曲のみです。
周りが寝静まった頃、恋人の窓の下にやってきた主人公は、恋人がまだ起きているのかどうかを探ります。寝室にまだランプがちらちらと灯っているのを見て、「まだ起きている」と確信します。
そこで主人公は「窓から下を見て」もらえるように、恋人に「僕の憧れ」を「嘆」くセレナードを歌います。「恋人は聞」いているだろうと思う主人公ですが、「これ以上きみの憩いを邪魔するわけにはいかない」ので、「夜が明けるまでおやすみ」と伝えます。
周りが寝静まっている中、主人公の「愛の憧れ」と「愛の苦しみ」だけが目覚めています。やむにやまれぬ思いで恋人の家の窓の下で待っている主人公の期待と不安のないまぜになった心境を17歳のヴォルフが生き生きとした描写で表現しています。
2小節の穏やかな前奏に導かれて歌が始まりますが、"Tief in süßen Schlummer"の"Schlum-"まで半音階進行で歌われ、後のヴォルフのトレードマークともいえる半音階進行がこのころに作られたいくつかの作品で徐々に使用されるようになったのが分かります。
夜の幽霊たちに回りを取り囲まれると歌われた後に、急き立てるようなシンコペーションの間奏が続き(Schnell:速く)、すぐに我に返ったかのように元のテンポに戻ります(1tes Zeitmaß:最初のテンポで)。
「僕は静かに忠実に/きみの窓の下で待ちわびている」と歌われた後は子守歌のような優しいピアノ間奏が続きます(Mit Gefühl vorzutragen, ruhig bewegt:感情をこめて演奏する、落ち着いた動きをもって)。
その穏やかな間奏の音楽のまま、第2連「いとしい娘よ、聞こえるかい?」が歌われます。
「眠りが/甘い夢の中へともうきみを揺すっているのかい?」と歌われた後、ピアノの間奏の右手が高いフレーズと低いフレーズを交互に響かせ、あたかも2人の恋人同士の会話を主人公が妄想しているような印象を受けます。
その後、「いや、きみはきっとまだ起きている」と歌われる「いや(Nein)」の直前にフォルテの和音となり、歌声部はレチタティーヴォ風に語られます。
「寝室で/まだランプがちらちらしているのが見える」と歌われた後、情熱的なピアノ間奏が続き(immer leidenschaftlicher:ますます情熱的に)、恋人が起きていることを確信して高揚している主人公の気持ちが描かれます。
「ああ、かわいい子、/窓から下を見ておくれ」と恋人に語りかけた主人公は「夕暮れの風のようにかすかな声で/僕の歌がささやいているんだ」と歌い、高音域の十六分音符の分散和音の連続で「夕暮れの風」を模しているように思われます。
さらに「そして穏やかなハーモニーで」の箇所で再び十六分音符の分散和音があらわれ、美しい「ハーモニー」が聞かれます。
ヴォルフは「きみに「愛しているよ」と言わせるんだ」の「愛している(lie-be)」の音価を伸ばして強調し、その後のピアノ間奏もアクセントの連続で高揚感を出しています。
最終節のはじめ「忠実な愛が語ることを/恋人は聞くだろう」まで力強い響きが続きますが、その後恋人の眠りを妨げないようにおやすみと言う箇所は優しく甘美な響きに戻り、おやすみ(Gute Nacht)を何度か繰り返して名残惜しそうに曲は終わります。
3/4拍子
ヘ長調(F-dur)
Sehr gehalten (非常に音を保って)
●Wolf: Ständchen "Alles wiegt die stille Nacht"
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)
Channel名:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
●[Hugo Wolf:] Standchen
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)
Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.
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(参考)
Theodor Körner (Schriftsteller) (Wikipedia: 独語)
Theodor Körners sämmtliche Werke / Erster Band / Siebente Auflage / Berlin / G. Grote'sche Verlagsbuchhandlung / 1872 ("Ständchen"はP. 111)
Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder II (1876-1890)
stretta music
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