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ヴォルフ:春の挨拶(Wolf: Frühlingsgrüße)

Frühlingsgrüße
 春の挨拶

Nach langem Frost, wie weht die Luft so lind!
Da bringt Frühveilchen mir ein bettelnd Kind.
 長かった極寒が過ぎて、風は何と穏やかに吹くことか!
 すると早咲きのすみれを物乞いの子が私に持ってくる。

Es ist betrübt, daß so den ersten Gruß
Des Frühlings mir das Elend bringen muß.
 春の最初の挨拶を
 惨めな状態で私にしなければならないのは悲しいことだ。

Und doch der schönen Tage Liebespfand
Ist mir noch werter aus des Unglücks Hand.
 だが素晴らしい日々の愛のあかしは
 不幸な手から与えてもらう方が私には価値がある。

So bringt dem Nachgeschlechte unser Leid,
Die Frühlingsstimmen einer bessern Zeit.
 だから私たちの苦悩は後世に
 より良き時代の春の声をもたらすのだ。

詩:Nikolaus Lenau (1802-1850), "Frühlingsgrüße", appears in Gedichte, in 4. Viertes Buch, in Vermischte Gedichte
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Frühlingsgrüße", 1876

作曲:1876年(※ヴォルフは誤って1875年と記載している)1月3日夕方6時着手

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1875年8月以前に書かれたOp. 3の5つの歌曲は、ヴォルフ15歳の若書きではありましたが、うち4曲をゲーテの詩でまとめているのは後年に作曲した詩人ごとのアンソロジーの小さな萌芽と見ることもあるいは可能かもしれません。
その後、ヴォルフはレーナウの詩による歌曲をいくつか作曲しますが、「春の挨拶」はその最初の試みの一つとなります。

ヴォルフは1876年1月(ヴォルフは1875年と書いていますが、誤りとみなされています)にレーナウの詩による「春の挨拶(Frühlingsgrüße)」の2つの稿を作曲しました。第1稿は未完成で36小節まで書かれたト長調(G-dur)の断片で、第2稿は40小節からなる完成作品で、ホ長調(E-dur)です(1998年出版のMusikwissenschaftlicher Verlag社のヴォルフ全集第7/4巻(Nachgelassene Lieder IV)に掲載されています)。ちなみにこの2つの稿のうち、第2稿には27小節(Prestoの箇所)から6小節にわたるヴァリアンテが作曲されています。1976年出版のヴォルフ全集第7/3巻に掲載されている楽譜は編纂者のハンス・ヤンツィク(Prof. Dr. Hans Jancik)が第2稿をもとに演奏可能な形にアレンジしたもののようで、この6小節のヴァリアンテが採用されています(第2稿は完成されているとはいえ、歌いにくい箇所がある為、1オクターブ下げたり、テキストの割り振りを多少変更しています)。いつかヴォルフのオリジナルの第2稿を演奏してくれる方がいたら嬉しいですが、大変そうです。

この曲へのヴォルフ自身による作品番号は、最初にOp. 6, No. 2が付与され、続いてOp. 9, No. 1に変更されましたが、最終的には作品番号なしとなったそうです。この作品番号は出版とは無関係で、単なるヴォルフ自身による整理番号ということになります(ヴォルフは最初期のみ自作に作品番号を付与していました)。

レーナウの詩は、春の到来を最初に伝えてくれたのが物乞いの子供だったが、苦しい境遇から得られた春の到来の方が価値があるのだと歌われます。

ヴォルフの作品は同じフレーズを繰り返す際のピアノパートの変奏の仕方や、テキストに応じた明暗の使い分けなど注目に値する箇所はあります。
一方で、歌声部は装飾的なパッセージが目立ちます(例えば、第2連の「Elend bringen muß」や最終連の「Frühlingsstimmen einer bessern」)。
また、高音への大きな跳躍もあります(最終連の「einer bessern Zeit」の「ei-ner」の10度)。このあたりはイタリアオペラの要素を取り入れたかのようです。後年の洗練された技法には聞かれない試行錯誤の様子を感じることが出来て、微笑ましい作品だと思います。

ちなみにシューマンも断片ながら同じテキストによる美しい歌曲を作っていますので、聞き比べてみるのも興味深いと思います。

【第1稿】未完成
C (4/4拍子)
ト長調(G-dur)
(冒頭の標示記号なし)

【第2稿】完成
C (4/4拍子)
ホ長調(E-dur)
(冒頭の標示記号なし。最後の方でPrestoになり、再びTempo Iで元に戻る)

●[Hugo Wolf:] Frühlingsgrusse (Nach langem frost) , Op. 6
ベンジャミン・ヒューレット(T), ショルト・カイノホ(P)
Benjamin Hulett(T), Sholto Kynoch(P)

Channel名:ベンジャミン・ヒューレット - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:13 & 15 October 2012, Holywell Music Room, Oxford, U.K.
ここでは、ヴォルフ全集第7/3巻のHans Jancik編曲版で演奏されています。

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●【参考】シューマン:春の挨拶(断片)
Schumann: Frühlingsgrüsse (Fragment)
リュディア・トイシャー(S), グレアム・ジョンソン(P)
Lydia Teuscher(S), Graham Johnson(P)

Channel名:Lydia Teuscher - トピック(オリジナルのリンク先はこちら)

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(参考)

The LiederNet Archive

Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder III (1875-1878)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag

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