ヴォルフ:夜と墓(Wolf: Nacht und Grab, Op. 3, No. 1)
Nacht und Grab, Op. 3, No. 1
夜と墓
Sei mir gegrüßt,o schöne Nacht,
In deiner hehren Sternen Pracht!
Mit weichen Händen bietest du
Des Staubes Kindern deine Ruh.
Oh Brüder,schlummert sanft den süßen Schlummer;
Der neue Tag weckt euch zu neuem Kummer.
我が挨拶を受け給え、おお美しい夜よ、
汝の崇高なる星々の輝きの中で!
柔和な手で、汝は
塵埃の子らに憩いを差し延べる。
おお同胞よ、安らかに甘き眠りに就くがいい、
新しい日がお前達を新たなる悲しみに目覚めさせるのだ。
Auch in den stummen Gräbern ihr,
Ruht sanft von eurer Arbeit hier.
Vergessenheit ist euer Los
Und euer Obdach dieses Moos.
Oh Brüder,schlummert sanft des Todes Schlummer,
Kein neuer Tag weckt euch zu neuem Kummer.
押し黙った墓の中のお前達も、
労苦から解き放たれて、ここで安らかに憩いなさい。
忘却は、お前達の担った宿命であり、
この湿地が、お前達の住処なのだ。
おお同胞よ、安らかに死の眠りに就くがいい、
新しい日がお前達を新たなる悲しみに目覚めさせることはないのだから。
詩:Heinrich Zschokke (1771-1848), "Nacht und Grab", written 1803, appears in Feldblumen
曲:Hugo Wolf (1860-1903), "Nacht und Grab", op. 3 no. 1 (1875)
作曲:1875年8月以前, MarburgあるいはWindischgrazにて
(※1976年に出版されたヴォルフ全集第7/3巻(Hans Jancik編)では「1875年9月中旬以前」とされていましたが、1998年に出版されたヴォルフ全集第7/4巻(Leopold Spitzer編)において、アレクサンダー・ペッヒ(Alexander Pöch)宛てのヴォルフの手紙ですでに8月には作曲されていたことが判明し、「8月以前」の作曲に訂正されました。Op. 3の5曲すべてについて同様)
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フーゴー・ヴォルフ(Hugo Wolf: 1860-1903)が最初(1875年頃)に作曲した数曲の歌曲はいずれも未完成で、ほぼ紛失してしまいました(「兵士の歌(Soldatenlied)」「星(Die Sterne)(歌声部のみ)」「祈り(Gebet)(歌声部のみ)」「きみは青白くなり(Du wirst ja blaß)(二重唱曲)」)。
現存する最初の歌曲は、ヴォルフ自身によってOp. 3と作品番号の付けられた5つの歌曲です。このうち、4曲目のゲーテの詩による「旅の歌(Wanderlied)」はピアノパート左手の最後の8小節が未完成の為、ヴォルフ作品全集の未完成作品の巻(7/4巻)で出版されて、現在のところ録音はされていないようです。
それ以外の4曲はStone Recordsからショルト・カイノホ(Sholto Kynoch)のピアノによるヴォルフ歌曲全集がリリースされてようやく聞くことが出来るようになりました。
これらの作品は正直なところ若書きなのですが、彼の出発点がどういう状態なのかを知る意味で興味深いですし、若書きといえども魅力的な部分もあるので、これからご紹介していきたいと思います。
Op. 3の第1曲はハインリヒ・チョッケの詩による「夜と墓」という歌曲です。私が2005年に歌曲投稿サイトの「詩と音楽」にこの曲について投稿した内容が、こちらのリンク先からご覧いただけますのでよろしければご覧ください。
C (4/4拍子)
ハ短調(c-moll)
Langsam und ausdrucksvoll (ゆっくりと表情豊かに)
●Nacht und Grab, Op. 3, No. 1
クイレイン・ドゥ・ラン(BR), ショルト・カイノホ(P)
Quirijn de Lang(BR), Sholto Kynoch(P)
Channel名:Release - Topic(オリジナルのリンク先はこちら)
ライヴ録音:11 October 2011, Holywell Music Room, Oxford, U.K.
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(参考)
Hugo Wolf: Hugo Wolf Kritische Gesamtausgabe - Nachgelassene Lieder III (1875-1878)
stretta music
Musikwissenschaftlicher Verlag
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コメント
フランツさん、こんにちは。
ご無沙汰してしまいました。今年は阪神が早くからマジックを出し優勝するまでの間、すっかり舞い上がっておりました。
さて、ヴォルフシリーズが始まるのですね。
なんとなくヴォルフは指南書がないと難しいように感じていますから、こうして解説つきで聴けるのは有り難いです。
この曲をヴォルフは15歳で書いたのですね。
2005年に歌曲投稿サイトの「詩と音楽」にお書きになった「若い頃は陰鬱な内容の詩に惹かれるものなのだろうか。」
そうなのかも知れませんね。芸術家の繊細な神経は、どこかで死に憧れるというのもあるのかもしれません。
陰鬱な詩、沈んだ曲ではありますが、聴いてみますと、ピアノの前奏から引き込まれる魅力がありました。
クイレイン・ドゥ・ランの癖のない歌いぶりも心地よく、カイノホのピアノの音の響きの美しさも耳に残りました。
投稿: 真子 | 2025年9月11日 (木曜日) 15時52分
真子さん、こんにちは!
ご無沙汰しております。
お元気でしたか。
阪神優勝おめでとうございます。今は余韻にひたっておられるころでしょうか。真子さんにとって熱い夏だったことと思います。
コメントを有難うございます。嬉しく拝読しました。
ヴォルフの歌曲をいつかシリーズで記事にしたいとずっと思っていて、そろそろその時期かなと思い、とりあえず初期歌曲から始めてみました。ただ膨大な数があるので息切れしないようにマイペースで進めていきたいと思います。
ヴォルフの現存する最初の歌曲「夜と墓」についてご感想を有難うございます!
> 芸術家の繊細な神経は、どこかで死に憧れるというのもあるのかもしれません。
シューベルトもヴォルフも若い頃に重いテーマの詩に曲を付けているのが興味深いですよね。芸術に携わる方々は早くから生と死というテーマに惹かれるものなのかもしれませんね。
> 陰鬱な詩、沈んだ曲ではありますが、聴いてみますと、ピアノの前奏から引き込まれる魅力がありました。
未熟な点はありながらも曲として聞ける形になっていますよね。そしてこれだけ魅力的に演奏する歌手、ピアニストも凄いですね。カイノホはおそらく完成されたヴォルフの歌曲を全曲録音した今のところ唯一のピアニストだと思います。
投稿: フランツ | 2025年9月12日 (金曜日) 07時42分