ロベルト・ホルのシューベルト・マイアホーファー歌曲解説動画シリーズ(Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis")
オランダのバスバリトン歌手ロベルト・ホル(Robert Holl)が、ご自身のYouTube公式チャンネルで、シューベルトのマイアホーファー(Johann Mayrhofer: 1787-1836)歌曲に関する考察動画シリーズを開始しました。
最初に短いティーザー(予告)動画、続いて「ドーナウ河の上で D 553」「エルラフ湖 D 586」「川のほとりで D 539」(4/5追記:「夜曲 D 672」)の動画まで現在のところアップされています。英語字幕も表示できますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。動画の最後にホル自身の演奏(録音に合わせて楽譜が表示されます)を聞くことが出来ます。アーメリングの動画と似ている構成だと思ったら、編集にトム・ヤンセン(Thom Janssen)の名前があったので、納得です(もう一人Luuk Janssenという人の名前も加わっていたのでトムさんのご家族でしょうか)。アーメリングの動画が詩・音楽の内容と演奏上の注意点を指摘することに比重を置いているのに対し、ホルの動画は作品の背景の解説を文献を参照しながら読み解いていくという形をとっています。
●Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis" | Teaser zur neuen Videoreihe
Channel名:Robert Holl (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
●Schubert: Auf der Donau | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis"
Channel名:Robert Holl (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
Auf der Donau, D 553
ドーナウ河の上で
Auf der Wellen Spiegel
Schwimmt der Kahn.
Alte Burgen ragen
Himmelan;
Tannenwälder rauschen
Geistergleich -
Und das Herz im Busen
Wird uns weich.
波の水鏡の上を
小舟が進む。
古城が
天をあおいでそびえ立つ。
モミの森は
幽霊のようにざわめく。
そして心は胸の中で
我らを心細くする。
Denn der Menschen Werke
Sinken all';
Wo ist Thurm, wo Pforte,
Wo der Wall,
Wo sie selbst, die Starken?
Erzgeschirmt,
Die in Krieg und Jagden
Hingestürmt.
なぜなら人の作ったものは
みな滅びるからだ。
塔はどこにある、門はどこ、
塁壁はどこだ、
どこにいった、強者たちは?
最も庇護された者たちは、
戦や狩りの時に
突撃した者たちは?
Trauriges Gestrüppe
Wuchert fort,
Während frommer Sage
Kraft verdorrt.
Und im kleinen Kahne
Wird uns bang -
Wellen droh'n, wie Zeiten,
Untergang.
悲しげな茂みが
生い茂っている。
敬虔な伝説の力は
干からびてしまう。
そして小さな舟の中で
我らは震えあがる、
波は脅かす、時と同じく、
破滅を予感させて。
●Schubert: Erlafsee | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis"
Channel名:Robert Holl (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
Erlafsee, D 586
エルラフ湖
Mir ist so wohl, so weh
Am stillen Erlafsee.
Heilig Schweigen
In Fichtenzweigen.
Regungslos
Der blaue Schooß;
Nur der Wolken Schatten flieh'n
Überm dunklen Spiegel hin.
私は楽しんだり悲しんだりする、
静かなエルラフ湖のほとりで。
神聖に沈黙する、
トウヒの枝々の中で。
動き一つない、
青い若枝。
ただ雲の影は
暗い水鏡の上を逃げ去る。
Frische Winde
Kräuseln linde
Das Gewässer;
Und der Sonne
Güldne Krone
Flimmert blässer.
新鮮な風は
優しく
水にさざ波を立てる。
そして太陽の
金の王冠は
おぼろげにきらめくのだ。
●Schubert: Am Strome | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt – "Mein Vermächtnis"
Channel名:Robert Holl (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
Am Strome, D 539
川のほとりで
Ist mir's doch, als sei mein Leben
An den schönen Strom gebunden.
Hab' ich Frohes nicht an seinem Ufer,
Und Betrübtes hier empfunden?
あたかも私の人生は
この美しい川と結びついているように思える。
私は川の岸辺で楽しいことを、
そしてここで悲しいことを感じてこなかっただろうか?
Ja du gleichest meiner Seele;
Manchmahl grün, und glatt gestaltet,
Und zu Zeiten - herrschen Stürme -
Schäumend, unruhvoll, gefaltet.
そうだ、おまえは私の心に似ている。
時には緑色でなめらかな形となり、
嵐が吹き荒れる時には
泡立ち、騒々しくなり、折れ曲がる。
Fließest zu dem fernen Meere,
Darfst allda nicht heimisch werden.
Mich drängt's auch in mildre Lande -
Finde nicht das Glück auf Erden.
遠い海へ流れてきても
そこを我が家のように感じることは許されない。
私をより温和な陸地に追いやるが
地上に幸せを見出すことはない。
[2025/4/5追記]
●Schubert: Nachtstück | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis"
Channel名:Robert Holl (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
Nachtstück, D 672
夜曲
Wenn über Berge sich der Nebel breitet,
Und Luna mit Gewölken kämpft,
So nimmt der Alte seine Harfe, und schreitet,
Und singt waldeinwärts und gedämpft:
"Du heil'ge Nacht!
Bald ist's vollbracht.
Bald schlaf' ich ihn
Den langen Schlummer,
Der mich erlöst
Von allem Kummer."
"Die grünen Bäume rauschen dann,
Schlaf süß du guter alter Mann;
Die Gräser lispeln wankend fort,
Wir decken seinen Ruheort;
Und mancher liebe Vogel ruft,
O [laßt]* ihn ruh'n in Rasengruft!" -
Der Alte horcht, der Alte schweigt -
Der Tod hat sich zu ihm geneigt.
山々の上方に霧が広がり
月がたなびく雲と争うとき、
老いた男が竪琴を手にとり、歩み出て
森に向かって小声で歌う。
「聖なる夜よ!
じきに終わるだろう。
私はすぐに
長い眠りにつく、
その眠りは私を
あらゆる苦悩から解放してくれるのだ。」
「すると緑の木々はざわめく、
善良な老人よ、安らかに眠れ。
さらに草は揺れながらそよぐ、
私たちが彼の休息の地を覆ってあげよう。
そして多くの鳥は鳴く、
おお、芝生の墓穴に彼を休ませてあげよう!」
老人は耳を澄まし、そして老人は沈黙する。
死が彼に近寄っていった。
*: Schubert (Alte Gesamtausgabe): laß
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(参考)
Schubert: Auf der Donau | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis" (YouTube)
Schubert: Erlafsee | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis" (YouTube)
Schubert: Am Strome | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt – "Mein Vermächtnis" (YouTube)
Schubert: Nachtstück | Robert Holl in Schubert's poetischer Welt - "Mein Vermächtnis" (YouTube)
The LiederNet Archive (Auf der Donau, D 553)
The LiederNet Archive (Erlafsee, D 586)
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コメント
フランツさん、こんばんは。
ロベルト・ホルさんお年を召されましたね。
昔、ホルのことをレコード芸術の評に「ヘルマン・プライのような歌い口と、F=ディースカウのような表現をする」(そのままの表現ではありませんが)というように書かれていました。
「プライのような、、」と書かれていたものでCDも買いよく聞いたものです。
ホルの甘みもある深い声もいいですね。
シューベルトがマイヤーホーファーの詩につけた曲は好きなものが多く、「夜曲」は特に好きです。
"Du heil'ge Nacht!からのメロディは、シューベルトならでは甘美さがありますね。
それは、シューマンの甘さとはまた違った悲しみを含んだ甘美さで、とても惹かれます。
私は残念ながら、ドイツ語も英語も分からないので、解説部分は聞くことができないのですが、このように歌手自身の解説を聞きながら演奏を鑑賞できるのは、リートファン、歌手の
投稿: 真子 | 2025年4月18日 (金曜日) 20時59分
真子さん、こんにちは。
ロベルト・ホルも現在78歳になられたそうで、悠々自適の生活を送っておられるのかなと思い、ホームページを見たところ、今年の1月30日にヴィーンでシューベルトの生誕記念コンサートを開催したとの記載があり、まだまだ歌手として現役でした!
https://www.robertholl.at/nachrichten
シューベルトのマイアホーファー歌曲、いいですよね!真子さんもお好きなのですね。「夜曲」の"Du heil'ge Nacht!からのメロディは本当にシューベルトならではの甘美さですね。
レコード芸術にディースカウやプライとホルの近似性が指摘されていたのですね。知りませんでした!ホルはハンス・ホッターに師事していた為、以前FMラジオのある解説者(どなただったか失念してしまいました)が若い頃のホルを「ホッターの影響がやや出過ぎている」というようなことをおっしゃっていました。個人的には低声ながらもリズミカルに快適に進むホッターと、レガート主体で時に止まりそうなぐらいテンポを落とすホルとはあまり似ていない気がするのですが、おそらく専門家の観点からは発声など共通点があったのかもしれません。
本当に、ホルやアーメリングのような一流の演奏家が動画を通じて惜しみなく情報発信してくれるのは有難いことです。最近は解説部分を記事に出来ずすみません。解説を日本語に訳すのはかなり時間がかかるので、現在は詩の訳だけしか載せていませんが、余裕が出来たらまた簡単なコメントぐらいは付けられたらいいなと思います。
ちなみに、昨年10月からレコード芸術がオンライン版で復活したのはご存じでしょうか?
1,100円/月(税込)(自動更新)でWeb上から様々な記事が閲覧できます(新譜月評などの他に過去の記事の特集などもあります)。無料で読める記事もありますので、よろしければちらっと覗いてみてください。
https://recogei.ontomo-mag.com/
私の知る限り、プライの記事はまだ出ていないようですが、「クラシック・データ資料館」のページでは「ヘルマン・プライ」と検索すると、過去の国内発売の録音データ(LPも含めて)が表示されますので、こちらは真子さんにとっても貴重な資料になるのではないかと思います(あくまでご参考までにということでご無理のないようにしてくださいね)。
投稿: フランツ | 2025年4月19日 (土曜日) 09時37分
フランツさん、こんにちは。
ホルは、ホッターのお弟子さんだったのですね。
私がホルを聞いた頃は、既にご自身の演奏スタイルを気づいておられたのかもしれません。たしかに、ホッターの面影は感じなかったです。おっしゃるとおり、プロが聞けば違うのかもしれませんね。
ディースカウさんのお弟子さんだった、アンドレアス·シュミットは師に似ていましたが。
今も歌手てして活動されているのは、嬉しいですね。リート歌手は、皆シューベルトに特別の目を向けているように感じます。
ドイツリートには、他にも素晴らしい作曲家がいて素晴らしい曲もたくさんあるのに。
シューベルトは、単に歌を一つのジャンルにした先駆者としてだけでなく、彼自身の音楽の中に、人を引き付けて止まないものがあるんですね。
それを、うまく言葉にできないのですが、シューベルトの歌曲には、本当に引き付けられます。
>余裕が出来たらまた簡単なコメントぐらいは付けられたらいいなと思います。
付けて下されば大変ありがたいですが、ご無理なさらないでくださいね。
このような動画をご紹介いただけるだけで感謝です
(*^^*)
レコード芸術、オンラインで復活したのですね!
廃刊になった時には、遂に来たか、、と思いました。どんな形でも、また記事が読めるなら嬉しいです。お知らせありがとうございます。
プライさん、また見てみます!
投稿: 真子 | 2025年4月19日 (土曜日) 12時28分
真子さん、こんにちは。
ご返信有難うございます。
真子さんもホルにホッターの面影を感じなかったとのこと、専門家の方が聞くと何か共通点があるのかもしれませんね。
アンドレアス・シュミット、懐かしいですね。ディースカウの愛弟子で、ディースカウもインタビューで名前を挙げるぐらい期待していたようですね。興味深いのが、シュミットについて好意的だったディースカウが、ベーアについては辛口のコメントだったことです。ベーアは一時発声上の何らかの問題があったらしいのですが、ディースカウはそういうところもおそらく見抜いていたのかもしれません。でも録音で聞くベーアの声質と様式感は新鮮で素晴らしかったです(詩人の恋や水車屋の録音はパーソンズの名人芸と共に今でも色あせていないと思います)。
リート歌手がみなシューベルトに特別の目を向けているという真子さんのご指摘、確かにそうだと思います。
例えばゲアハーアー(ゲルハーヘル)などはシューマン愛を公言していますが、それでもシューベルト歌曲集を複数枚録音しているのは、歌手にとって好き嫌いを超えた存在なのでしょうね。
私は今でもシューベルトの音楽が一番好きです。昔から聞き続けているのに全く飽きることがないシューベルトの音楽には何か特別なものが宿っているのではないかと思っています。
レコ芸のような専門誌は活字だとやはり売れないのでしょうね。廃刊が決まった時は寂しかったですが、もう批評雑誌の役目は終わったのだと自分に言い聞かせました。その後レコ芸がオンラインで復刊すると決まった時、購読しようかどうか迷ったのですが、やはり情報が欲しいですし、個人でネットの膨大な波の中から情報を得るのは限界があり、専門誌に勝るものはないと思い、結局購読することにしました。従来のCD批評だけでなく、過去の録音資料がデータの形で検索できるのが特に有難いです。また、生誕100周年記念でF=ディースカウの録音に関する連載なども始まっていて、スマホでさくっと読めるのも有難いです。
無料で読める記事もありますので、真子さんもよろしければまずはざっと目を通してみるのもいいかもしれませんね。
投稿: フランツ | 2025年4月19日 (土曜日) 18時08分