フランスィスコ・アライサ&アーウィン・ゲイジの歌曲ライヴ(ゲスト:アーリーン・オージェ)(1982年3月15日, Zürich Opera House)
メキシコのテノール、フランスィスコ・アライサ(Francisco Araiza)とアメリカ人ピアニスト、アーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)は、1980~90年代に日本を含む世界各地で歌曲のコンサートを開き、そのいくつかはFMラジオで放送され、来日公演はそのたびにNHKで録画され、TV放送されました(NHKにアライサのファンがいたのだろうかと思うほど来日のたびに放送されていました)。Deutsche Grammophonレーベルにはシューベルトの歌曲集『美しい水車屋の娘』を録音(1984年7月, Hohenems, Austria)して評判になりましたが、オペラの録音がその後も継続されたのに対して、歌曲の録音はゲイジとはマイナーレーベル(ATLANTIS)にシューベルトの歌曲集を1枚録音(1983年6月23-24日, Baumgartner Casino, Wien録音)したものが海外で発売されたぐらいでした。
ライヴ録音は多数残されたようですから、そうしたお宝音源が発掘されるといいのですが、今回、動画サイトでkadoguy様がチューリヒでのライヴ音源をシェアしておられたので、ご紹介します。
まずは、ジェイムズ・マクファーソン(James McPherson)による『オシアン(Ossian)』のドイツ語訳に因んだシューベルトの2曲を美声ソプラノ歌手のアーリーン・オージェ(Arleen Augér)を迎えて歌った録音です。シルリック役をアライサ、ヴィンヴェラ役をオージェが歌っています。いずれも10分ほどの大作で、「シルリックとヴィンヴェラ」D293では戦争に向かう恋人のシルリックと、彼を丘で待つヴィンヴェラのそれぞれの心情が歌われ、「クロナン」D282ではシルリックが戦争から唯一人戻ると、悲しみのあまり亡くなってしまったヴィンヴェラが幽霊となってシルリックの前にあらわれるという内容です。ちなみにシューベルトの二重唱曲集をジャネット・ベイカー&ムーアと録音したF=ディースカウはこの2曲中「クロナン」のみを採りあげています。
●Arleen Auger & Francisco Araiza sing Schubert duets! (1982)
Arleen Auger(S: Vinvela), Francisco Araiza(T: Shilric), Irwin Gage(P)
Recording: 15 March 1982, Zürich Opera House
I. "Shilric und Vinvela"(シルリックとヴィンヴェラ), D 293 0:00
II. "Cronnan"(クロナン), D 282 10:57
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このコンサートでアライサとゲイジはしばしばコンサートで採りあげていたシューベルトの「歌びと」と「わすれなぐさ」を演奏しています。後者はショーバーの詩による15分弱もある長大な作品で、去り際に口づけした春を求めてわすれなぐさが探しに行くという内容です。シューベルトらしい美しい旋律が散りばめられた作品です。
●Francisco Araiza sings Schubert lieder (Zurich, 1982)
Francisco Araiza(T), Irwin Gage(P)
Recording: 15 March 1982, Zürich Opera House
- Der Sänger(歌びと), D 149 0:00
- Vergissmeinnicht(わすれなぐさ), D 792 7:40
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「春の思い」といえば言わずと知れたシューベルトの名曲ですね。アライサの十八番だと思います。
●Francisco Araiza sings "Frühlingsglaube", D 686 (Zurich, 1982)
Francisco Araiza(T), Irwin Gage(P)
Recording: 15 March 1982, Zürich Opera House
- Frühlingsglaube(春の思い), D 686
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アライサは来日公演で数曲フォレの歌曲を歌ったことがありましたが、この音源で歌われている曲のいくつかは含まれていなかったと思います。「マンドリン」や「月の光」などの有名曲を含む5曲が聞けます。
●Francisco Araiza sings Faure mélodies (Zurich, 1982)
Francisco Araiza(T), Irwin Gage(P)
Recording: 15 March 1982, Zürich Opera House
- En sourdine(ひそやかに), op. 58, no. 2 0:00
- Mandoline(マンドリン), op. 58, no. 1 3:42
- Clair de lune(月の光), op. 46, no. 2 5:40
- Au cimetière(墓地で), op. 51, no. 2 8:18
- Spleen(憂鬱), op. 51, no. 3 12:58
- La Rose(ばら), op. 51, no. 4 15:33
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アライサがここで採りあげられたヴォルフの曲を歌っていたとは知りませんでした。珍しい音源で、アライサによって情熱的に歌われるヴォルフも魅力的でした。シューベルトと全く異なるヴォルフの「ガニュメデス」の官能的な響きと、ブラームスと全く異なるヴォルフの「エオリアンハープに寄せて」のこちらも官能的な響きの2曲を連続して演奏したところに演奏者のプログラミングの意図があったのかもしれないと想像します。ゲイジのピアノも雄弁で美しいです。
●Francisco Araiza sings Wolf lieder (Zurich, 1982)
Francisco Araiza(T), Irwin Gage(P)
Recording: 15 March 1982, Zürich Opera House
- Frühling übers Jahr(一年中 春) (1891) 0:00
- Ganymed(ガニュメデス) (1891) 2:19
- An eine Äolsharfe(エオリアンハープに寄せて) (1888) 6:56
- Er ist’s!(春だ) (1888) 12:55
- Zum neuen Jahr(新年に) (1888) 14:32
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