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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の「Musings on Music」シリーズ:ラヴェル-歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』~2.「魅惑の笛(La flûte enchantée)」

●Musings on Music by Elly Ameling - Ravel, Shéhérazade - La Flute Enchantee

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

アーメリングによる説明
メロディー(mélodie)はフランスの作曲家による歌曲、もしくはフランス語のテキストによる歌曲を指します。
これまでの動画ではリート(Lied)、つまりドイツ歌曲を扱いました。
今回、この「Musings on Music」シリーズではじめてフランス歌曲を扱います。

私が選んだのはモリス・ラヴェルの歌曲集『シェエラザード』からの1曲です。シェエラザードは『千夜一夜物語』のヒロインかつナレーターです。もともと1000もの東洋のおとぎ話の歴史的コレクションでした。

20世紀初頭にトリスタン・クリングゾルがオリジナルの東洋の話をもとにした詩を出版しました。ラヴェルはクリングゾルの詩の中から3篇を選びました。
私は今回第2曲の「魅惑の笛 (La flûte enchantée)」を扱います。若い女性の使用人が歌う設定です。

1:55-4:49 「魅惑の笛」の音源が楽譜付きで流れる。演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏(アーメリング、サンフランシスコ交響楽団、エド・ドゥ・ヴァールト指揮)

詩と英訳の朗読

前奏はピアニッシモで、とてもゆっくり(Très lent)です。
弦は弱音器を付けてトレモロを刻む一方、フルート独奏が3小節続き、特に3小節目の9連符のフレーズは自由に流れているように聞こえなければなりません。

7:06- 前奏(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)

この後歌が柔らかく(très doux)始まります。
なぜなら歌詞がこう言っているから「影は心地よく、わが主人は眠っている」

7:43- 前奏から歌の最初の3行まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

ここで主人の鼻、帽子、ひげについて述べられます。
おそらく口髭(moustache)でしょう。

次に、ここで音符に示された通りに演奏しているか聞いてみましょう。また、いかにこのソプラノがそれぞれの小節で言葉を完璧に分けているか。

詩人のクリングゾルはこの詩をラヴェルに語って聞かせました。
彼が韻律(つまりリズム、アクセント、イントネーション)を把握できるように。
ディテールを理解して、ラヴェルはリズム、メロディー、ハーモニーを作り上げました。

10:12-10:48 前奏から(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)(シュザンヌ・ダンコ(S)、スイス・ロマンド管弦楽団、エルネスト・アンセルメ(C))

この演奏は50数年前私が「シェエラザード」を勉強した時に触発された演奏でした。

少女が「私は起きていて、愛する人のフルートを聞いている」と言ったとき、フルートがいかに生き生きと演奏するかに注目して聞いてみてください。

11:26-12:12 歌の3行目から7行目まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

そして興奮は突然止まり、音楽はゆっくりのテンポに戻ります。

少女はフルートを吹く男性と引き離されていることを悟っているようです。
彼女が窓のそばに近づき、フルートから聞こえた音はミステリアスなキスのようだと感じます。

12:45-13:59 8行目から最後まで(ダンコの歌唱)

後奏最後の3小節は前奏ですでに聞いたものです。

この詩と音楽の核心は愛の神秘だと思います。

今は自身の個性を演奏に反映しすぎてはならないのです。

神秘(Mystery)というものは私たち自身よりも大きいのではないでしょうか。

14:50- 全部の演奏(アーメリングの歌唱)(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

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コメント

フランツさん、こんばんは。

東洋的な神秘な響き。
日本のオペラを聞いているようにも思
えました。フルートが横笛にもきこえますね。でも、アラビアをイメージしているのですよね。
聞いているうち、プッチーニの「蝶々夫人」を思い出しました。
「あるはれた日に」をレッスンで歌ったことがあるのですが、そのレチタティーヴォによく似ています。
今まで聞いたことがなかった曲なので、新鮮な思いで拝見しました。

投稿: 真子   | 2024年6月 6日 (木曜日) 22時55分

真子さん、こんばんは。

おっしゃるようにまさに「東洋的な神秘な響き」がしますよね。
アラビアンナイトのエキゾチックな世界観をラヴェルが素晴らしい音楽で描いている作品だと思います。

真子さんは「ある晴れた日」も歌われたのですか!凄いですね。
この「魅惑の笛」(魔法の笛という方が正確な訳らしいです。モーツァルトの魔笛もフランス語に訳すとLa Flûte enchantéeになるそうです)は同音反復の語るような箇所があって、レチタティーヴォ的な要素も含まれていると思います。

ちなみにこの歌曲集1曲目の「アジア」という曲は8分ぐらいの長い曲なのですが、ラヴェルらしい音のマジックが感じられるエキゾチックな美しい作品です。

新鮮な思いで聞いていただけて良かったです。有難うございます!

投稿: フランツ | 2024年6月 7日 (金曜日) 23時48分

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