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ヘイン・メーンス&トニー・エレン/ゲーテ、ヴェルレーヌ等の同じテキストに作曲した歌曲によるリサイタル(1990年)

オランダのテノール、ヘイン・メーンス(Hein Meens: 1949-2012)と、同じくオランダのピアニスト、トニー・エレン(Tonie Ehlen: 1946)によるリサイタルがアップされていて、興味深いプログラムでしたのでご紹介します。kadoguy様に感謝です!「旅人の夜の歌」は「すべての山頂に憩いあり(Über allen Gipfeln ist Ruh)」もあるかと思ったら、すべて「汝天より来りて(Der du von dem Himmel bist)」による歌曲でした。お好きな詩から聞き比べてみるのはいかがでしょうか。

・0:00- ゲーテの詩による「釣り人」:シューベルト、クルシュマン、レーヴェ
・11:15- ゲーテの『ファウスト』の詩による「のみの歌」:ベートーヴェン、ブゾーニ、ムソルクスキー
・18:17- ピエトロ・メタスタージオの詩による「別れ」:ベートーヴェン(原詩の1節に作曲)、ロッスィーニ(原詩の1,2(5-8行)節に作曲)
・24:12- テオフィル・ゴティエの詩による「嘆き」:ベルリオーズ、デュパルク(原詩の1,3,6節に作曲)
・34:16- ヴェルレーヌの詩による「ひそやかに」:フォレ、ドビュッシー、ディーペンブロック
・45:14- ヴェルレーヌの詩による「わが心に涙降る」:ドビュッシー、スミュルダース
・51:23- ゲーテの詩による「似た者同士」:ヴォルフ、ヴェーベルン
・53:32- ゲーテの詩による「旅人の夜の歌(汝天より来りて)」:ツェルター、ライヒャルト、シューベルト、リスト(1稿と3稿)、プフィッツナー、ペッピング

A Hein Meens Recital (1990)
Hein Meens (1949-2012) with pianist Tonie Ehlen

Channel名:kadoguy(オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出るので注意!)

録音: 1990年4月22日, Maastricht Academy of Music

ヘイン・メーンス (テノール)
トニー・エレン (ピアノ)

I. フランツ・シューベルト(1797-1828): 釣り人, D. 225 0:00
II. カール・クルシュマン(1805-1841): 釣り人, op. 4, no. 3 2:53
III. カール・レーヴェ(1796-1869): 釣り人, op. 43, no. 1 6:43

IV. ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827): ゲーテの『ファウスト』から, op. 75, no. 3 11:15
V. フェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924): ゲーテの『ファウスト』からメフィストフェレスの歌 (1964) 13:26
VI. モデスト・ムソルクスキー(1839-1881): のみの歌 (1879, ドイツ語歌唱) 14:58

VII. ベートーヴェン: 別れ, WoO. 124 18:17
VIII. ジョアッキーノ・ロッスィーニ(1792-1868): 別れ 19:43

IX. エクトル・ベルリオーズ(1803-1869): 墓地で, op. 7, no. 5(『夏の夜』より) 24:12
X. アンリ・デュパルク(1848-1933): 嘆き (1883) 30:51

XI. ガブリエル・フォレ(1845-1924): ひそやかに, op. 58, no. 2 34:16
XII. クロード・ドビュッシー(1862-1918): ひそやかに (『艶なる宴 I』より) 37:38
XIII. アルフォンス・ディーペンブロック(1862-1921): ひそやかに (1909) 40:36

XIV. ドビュッシー: わが心に涙降る (『忘れられた小唄』より) 45:14
XV. カール・スミュルダース(1863-1934): わが心に涙降る (1896) 48:18

XVI. フーゴー・ヴォルフ(1860-1903): 似た者同士 (1888) 51:23
XVII. アントン・ヴェーベルン(1883-1945): 似た者同士, op. 12, no. 4 52:27

XVIII. カール・ツェルター(1758-1832): 旅人の夜の歌 (1807) "Der du von dem Himmel bist" 53:32
XIX. ヨーハン・フリードリヒ・ライヒャルト(1752-1814): 旅人の夜の歌 (1794) "Der du von dem Himmel bist" 55:06
XX. シューベルト: 旅人の夜の歌, D. 224 "Der du von dem Himmel bist" 56:23
XXI. フランツ・リスト(1811-1886): 汝天より来りて, S. 279/1 57:24
XXII. リスト: 汝天より来りて, S. 279/3 1:01:21
XXIII. ハンス・プフィッツナー(1869-1949): 旅人の夜の歌 II, op. 40, no. 5 "Der du von dem Himmel bist" 1:04:35
XXIV. エルンスト・ペッピング(1901-1981): 旅人の夜の歌 (『家庭の慰みの書』 no. 33) "Der du von dem Himmel bist" 1:07:34

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Here is a recital from 1990 by the Dutch tenor Hein Meens (1949-2012) with pianist Tonie Ehlen.

Recording: April 22, 1990, Maastricht Academy of Music

Hein Meens, tenor
Tonie Ehlen, piano

I. Franz Schubert: Der Fischer, D. 225 0:00
II. Karl Curschmann: Der Fischer, op. 4, no. 3 2:53
III. Carl Loewe: Der Fischer, op. 43, no. 1 6:43

IV. Ludwig van Beethoven: Aus Goethe's "Faust", op. 75, no. 3 11:15
V. Ferruccio Busoni: Lied des Mephistopheles aus Goethes "Faust" (1964) 13:26
VI. Modest Mussorgsky: Song of the Flea (1879, sung in German) 14:58

VII. Beethoven: La partenza, WoO. 124 18:17
VIII. Gioacchino Rossini: La partenza 19:43

IX. Hector Berlioz: Au cimetière, op. 7, no. 5 24:12
X. Henri Duparc: Lamento (1883) 30:51

XI. Gabriel Fauré: En sourdine, op. 58, no. 2 34:16
XII. Claude Debussy: En sourdine (Fêtes Galantes I) 37:38
XIII. Alphons Diepenbrock: En sourdine (1909) 40:36

XIV. Debussy: Il pleure dans mon cœur (Ariettes oubliées) 45:14
XV. Carl Smulders: Il pleure dans mon cœur (1896) 48:18

XVI. Hugo Wolf: Gleich und gleich (1888) 51:23
XVII. Anton Webern: Gleich und gleich, op. 12, no. 4 52:27

XVIII. Karl Zelter: Wandrers Nachtlied (1807) "Der du von dem Himmel bist" 53:32
XIX. Johann Friedrich Reichardt: Wandrers Nachtlied (1794) "Der du von dem Himmel bist" 55:06
XX. Franz Schubert: Wandrers Nachtlied, D. 224 "Der du von dem Himmel bist" 56:23
XXI. Franz Liszt: Der du von dem Himmel bist, S. 279/1 57:24
XXII. Liszt: Der du von dem Himmel bist, S. 279/3 1:01:21
XXIII. Hans Pfitzner: Wanderers Nachtlied II, op. 40, no. 5 "Der du von dem Himmel bist" 1:04:35
XXIV. Ernst Pepping: Wandrers Nachtlied (Haus- und Trostbuch, no. 33) "Der du von dem Himmel bist" 1:07:34

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(参考)

Hein Meens (Wikipedia: オランダ語)

Tonie Ehlen (Wikipedia: オランダ語)

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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」&第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の考察

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルで、先日アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」に関する考察がアップされましたが、続いて、第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」と第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」の動画がアップされました!今回も楽しみながらアーメリングの見解を知ることが出来ます。ぜひご覧ください。

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 8)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, Waldesgespräch (Liederkreis op. 39 no. 3)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

※以下、ネタばれ注意!!

【第8曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 8)」について】

※この動画の一番最後に、ここで流された演奏のピアニストについて触れられています。彼女らしく感傷とは無縁ですが、その口調にこのピアニストへの深い思いが伝わってきました。

「先日扱った第1曲と同じタイトルの第8曲「異郷にて」について扱いたいと思います。」

演奏が通して流される

アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳

「シューマンの曲も詩も第1曲と非常に違います。第1曲は常にゆっくりのテンポだったが、この曲は動きに満ちています」

第1曲冒頭と第8曲の冒頭の演奏を聴く

「第8曲は、小川のささやきとナイチンゲールの歌声、月光の輝きがこの速いテンポの音楽で表されています。オクターブで弾かれる両手はmfからすぐにデクレッシェンドとなり、自然界すべてが活気のある感動の中にいます」

第8曲の冒頭の演奏が流れる

「第1曲の詩では父母がずっと前に亡くなっているのに対して、この第8曲では、最愛の人が亡くなってから長く経っています」

「この詩の第2連後半では「古き麗しき時代」を思い返しています」

「興奮したテンポは2回中断されます」

該当箇所の演奏が流れる(リタルダンドされる)
"Von der alten,schönen Zeit(古き麗しき時代)"
"Und ist doch so lange tot(そして亡くなってとても長く経った)"

「"Und ist doch so lange tot"は3回繰り返され、歌手はこの悲しい詩句をそれぞれ異なる歌い方で表現しなければならないのです」

「この第8曲の音楽と詩は、ドイツロマン派の頂点とみなしうるかもしれません」

「人の愛は自然の中に飛び立つ。同じことが第1曲にも言えます。でもお互いを比較して、かなりのわくわくする効果の違いを体験してきました」

「1979年(*)に私はルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)とこの歌を録音しました。彼はこの動画を撮影する2週間前の2024年2月に旅立ちました。」

*注:アーメリングの思いのこもった言葉に水を差すようで甚だ恐縮ですが、ルドルフ・ヤンセンと録音したのはおそらく1980年5月2日の放送録音と思われます(5枚組CDボックス"80 jaar"に収録されています)。ちなみに1979年にはイェルク・デームスとPhilipsにスタジオ録音しています。

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【第3曲「森の対話(Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)」について】

「演奏者については耳と心に先入観を持たないでもらう為、動画の最後に明かします」

「前奏は森の猟師の吹く角笛の響きを表しています」

「日が落ちる頃の話で、詩は男性と美しい女性のロマンティックな出会いについてです。男性はライン川の近くを馬に乗っています。男性は一緒に来て花嫁になるように彼女を誘います。何が起こるか聞いてみましょう」

男声歌手の演奏が通して流れる

アーメリングによる詩行ごとの朗読と英訳(※アーメリングの迫真の朗読を聞いてみてください!)

「前回までに扱った第1曲、第8曲は男性の歌でしたが、今回の第3曲は男性と女性の両方が出てきます。しかしこの曲は一人の歌手(女声もしくは男声歌手)によって歌われます」

男声歌手のローレライが語る箇所の演奏が流れる

女声歌手の演奏が通して流れる

「(女声歌手の演奏を聴いて)本当にドラマですね!話者を示す引用符のないテキストを見てみてください」

「このアイヒェンドルフの詩をシューマンは小説「予感と現代(Ahnung und Gegenwart)」から採りました。」

「この女声の演奏は、さきほどの男声の演奏よりゆっくりでした。テンポは"Ziemlich rasch(かなり速く)"と書かれています。」

「美しい花嫁のあなた!私があなたを家に送ろう(Du schöne Braut! Ich führ dich heim!)」
「heimは英語のhomeで家に連れ帰ろうとしています。これは貪欲に聞こえます。」

女声歌手の演奏の冒頭が流れる

「連れ帰ろうという男の声とローレライの声はとても対照的です。彼女は男の欺瞞と狡猾(Trug und List)に傷つけられたことによって悲しんでいます。
女性が悲しんでいる時の旋律線を描くとき、声色は暗いです。
この録音の女声歌手は男性の語る箇所では暗い音色のままではありません。」

女声歌手の途中の演奏(O flieh! Du weißt nicht,wer ich bin.まで)が流れる

「"あなたは私が誰だか知らない(Du weißt nicht,wer ich bin.)"-ここでは男性に対する怒りもこれから彼にふりかかることへの警告もありません。すると男性は彼女を褒め続けます」

「"あなたが誰か今分かったぞ(Jetzt kenn ich dich)"の前でリタルダンドになります。ここで楽譜には大きな効果が出るようになっています。歌手とピアニストはF(フォルテ)で演奏します」

女声歌手の途中の演奏(Du bist die Hexe Lorelei. まで)が流れる

「この女声歌手はローレライとばれた後の最終連でも比較的ゆっくりのままでまだ友好的に思えます」

「最後の数小節にいたってようやく鋭い子音を伴って復讐の厳しい音色になります」

女声歌手の途中の演奏(ローレライと悟ってから最後まで)が流れる

「こうして角笛の信号は遠くに消えていきます」

別の女声歌手の演奏が通して流れる

「1800年頃以降クレメンス・ブレンターノは中世の物語(Saga)を用いて魔女ローレライの話を書きました。
私もこの有名な伝説の場所のそばを列車や車やボートで通りましたが、私はラッキーでした(※伝説にあるようなことは何も起こらなかったということ)。」

動画内で流された音源の種明かし(流れた順番による)

1.
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

2.
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S)&ジェフリー・パーソンズ(P)

3.
エリー・アーメリング(S)&ルドルフ・ヤンセン(P)

最後に合唱によるジルヒャーの「ローレライ」の音源が流れる

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(参考)

The LiederNet Archive (In der Fremde, Op. 39, No. 8)

The LiederNet Archive (Waldesgespräch, Op. 39, No. 3)

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

アーメリング&デームスの『リーダークライスOp.39』が収録された29枚組CD

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エリー・アーメリングの参加したヘンデルのオラトリオ『テオドーラ(Theodora)』(抜粋)ライヴ音源(1974年9月19日, デンマーク)

●Theodora 0001

Channel名:Frank Samuelsen (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ます!)

もう4年前にアップされていて、今頃気が付いたのですが、エリー・アーメリングがスタジオ録音を残していないヘンデルのオラトリオ『テオドーラ』抜粋に参加した時のライヴ録音がありました。
アップして下さった方に感謝です!
コペンハーゲン少年合唱団創立50周年記念として1974年にデンマークで催されたコンサートとのことですが、そういう事情もあってか合唱団の歌う曲は全曲演奏されていて、一方で独唱者が担当する曲のうち殆どのレチタティーヴォと少なくない数のアリアが省略されています。ちょうど休憩時間を考慮すると2時間ぐらいに収まる時間なので、実際にこの抜粋版で演奏されたのではないかと推測されます。

ヘンデルのオラトリオ『テオドーラ』はキリスト教徒のテオドーラが、同じくキリスト教に改宗した恋人のディディムスと殉教するという内容です。お互いが相手の身代わりとして訴えますが、結局二人とも処刑されてしまいます。作曲当時は不人気だったようですが、ヘンデル自身はメサイアの有名なハレルヤ・コーラスよりも第2幕最後の"He saw the lovely youth"を高く評価していたそうです。

ここでタイトルロールを歌っているアーメリングは、艶があり、声も若さゆえの豊麗さがあって、英語のディクションも明晰で本当に素晴らしいです。彼女の歌うパートは下記7曲ですが、もしお時間があれば全曲(といっても抜粋ですが)少しずつ聞いてみるのもいいかもしれません。

●アーメリングの歌っている曲(テオドーラ役)

22:26-26:40
Scene 3
13. Air (Theodora) "Fond, flatt'ring world, adieu!"

36:05-39:48
Scene 5
24. Air (Theodora)"Angels, ever bright and fair"

51:39-53:31
Scene 2
39. Air (Theodora) "Oh, that I on wings could rise"

1:01:41-1:03:38
49. Air (Theodora) "The pilgrim's home"

1:03:41-1:08:36 with Helen Watts
51. Duet (Theodora, Didymus) "To thee, thou glorious son of worth"

1:18:01-1:21:56 with chorus
Scene 2
57. Solo and Chorus (Christians, Theodora) "Blest be the hand"

1:28:17-1:32:58 with Helen Watts
Scene 6
70. Air and Duet (Didymus, Theodora) "Streams of pleasure ever flowing"

詳細は下記の通りです。

ヘンデル:オラトリオ『テオドーラ』抜粋
ライヴ録音:1974年9月19日, Radiohusets koncertsal, デンマーク

エリー・アーメリング(S: テオドーラ)
エディト・ギヨーム(MS: イレーネ)
ヘレン・ワッツ(CA: ディディムス)
ニール・ジェンキンズ(T: セプティミウス)
ウルリク・コルド(BS: ヴァレンス)
コペンハーゲン少年合唱団
デンマーク放送交響楽団
モーゲンス・ヴェルディケ(C)

Händel: Theodora (excerpts)

rec. 19 Sep. 1974, Radiohusets koncertsal, Danmark

Elly Ameling(S: Theodora)
Edith Guillaume(MS: Irene)
Helen Watts(CA: Didymus)
Neil Jenkins(T: Septimius)
Ulrik Cold(BS: Valens)
Københavns Drengekor
Radiosymfoniorkestret
Mogens Wöldike(C)

0:00-
Act 1
Scene 1
1. Overture – Trio – Courante

4:33-
2. Recitative (Valens) "'Tis Dioclesian's natal day"

5:11-
3. Air (Valens) "Go, my faithful soldier, go"

7:16-
4. Chorus of Heathens "And draw a blessing down"

9:42-
7. Chorus of Heathens "For ever thus stands fix'd the doom"

12:27-
Scene 2
9. Air (Didymus) "The raptur'd soul"

16:53-
11. Air (Septimius) "Descend, kind pity"

22:26-26:40
Scene 3
13. Air (Theodora) "Fond, flatt'ring world, adieu!"

26:40-
16. Chorus of Christians "Come, mighty Father"

30:25-
Scene 4
18. Air (Irene) "As with rosy steps the morn"

33:09-
19. Chorus of Christians "All pow'r in Heav'n above"

36:05-39:48
Scene 5
24. Air (Theodora)"Angels, ever bright and fair"

39:51-
Scene 7
28. Chorus of Christians "Go, gen'rous, pious youth"

45:00-
Act 2
Scene 1
29. Recitative (Valens) "Ye men of Antioch"

45:36-
30. Chorus of Heathens "Queen of summer, queen of love"

46:46-
31. Air (Valens) "Wide spread his name"

49:12-
32. Recitative (Valens) "Return, Septimius, to the stubborn maid"

49:52-
33. Chorus of Heathens "Venus laughing from the skies"

51:39-53:31
Scene 2
39. Air (Theodora) "Oh, that I on wings could rise"

53:42-
Scene 4
45. Air (Irene) "Defend her, Heav'n!"

58:36-
Scene 5
47. Air (Didymus) "Sweet rose and lily"

1:01:41-1:03:38
49. Air (Theodora) "The pilgrim's home"

1:03:41-1:08:36 with Helen Watts
51. Duet (Theodora, Didymus) "To thee, thou glorious son of worth"

1:08:51-
Scene 6
53. Chorus of Christians "He saw the lovely youth"

1:13:40-
Act 3
Scene 1
54. Air (Irene) "Lord, to Thee each night and day"

1:18:01-1:21:56 with chorus
Scene 2
57. Solo and Chorus (Christians, Theodora) "Blest be the hand"

1:22:08-
Scene 5
63. Air (Septimius) "From virtue springs each gen'rous deed"

1:24:54-
66. Chorus of Heathens "How strange their ends"

1:28:17-1:32:58 with Helen Watts
Scene 6
70. Air and Duet (Didymus, Theodora) "Streams of pleasure ever flowing"

1:33:04-1:36:15
Scene 7
72. Chorus of Christians "O love divine"

1:36:16-1:37:50
(applause)

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(参考)

Theodora (Handel) (Wikipedia: 英語)

Libretto (台本: 英語)

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東京春祭 歌曲シリーズ vol.39:コンスタンティン・クリンメル(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)(2024年4月12日(金) ライブ配信席)

東京春祭 歌曲シリーズ vol.39
コンスタンティン・クリンメル(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)

2024年4月12日(金) 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール(※私はライブ配信で聞きました)

バリトン:コンスタンティン・クリンメル
ピアノ:ダニエル・ハイデ

シューベルト:《美しき水車屋の娘》D795

 第1曲 さすらい
 第2曲 どこへ?
 第3曲 止まれ!
 第4曲 小川への言葉
 第5曲 仕事を終えた宵の集いで
 第6曲 知りたがる男
 第7曲 苛立ち
 第8曲 朝の挨拶
 第9曲 水車職人の花
 第10曲 涙の雨
 第11曲 僕のもの
 第12曲 休み
 第13曲 緑色のリュートのリボンを手に
 第14曲 狩人
 第15曲 嫉妬と誇り
 第16曲 好きな色
 第17曲 邪悪な色
 第18曲 凋んだ花
 第19曲 水車職人と小川
 第20曲 小川の子守歌

※休憩なし

[アンコール]

シューベルト:月に寄せてD193
畑中良輔 (杉浦伊作:作詞):花林(まるめろ)
シューベルト:歓迎と別れD767


Tokyo-HARUSAI Lieder Series vol.39
Konstantin Krimmel(Baritone)& Daniel Heide(Piano)

2024/4/12 [Fri] 19:00 Start [ Streaming start from 18:30 ]
Tokyo Bunka Kaikan, Recital Hall

Baritone:Konstantin Krimmel
Piano:Daniel Heide

Schubert(1797-1828):"Die schöne Müllerin" D795

 I. Das Wandern
 II. Wohin?
 III. Halt!
 IV. Danksagung an den Bach
 V. Am Feierabend

 VI. Der Neugierige
 VII. Ungeduld
 VIII. Morgengruß
 IX. Des Müllers Blumen
 X. Tränenregen
 XI. Mein!
 XII. Pause
 XIII. Mit dem grünen Lautenbande
 XV. Eifersucht und Stolz
 XIV. Der Jäger
 XVI. Die liebe Farbe
 XVII. Die böse Farbe
 XVIII. Trockne Blumen
 XIX. Der Müller und der Bach
 XX. Des Baches Wiegenlied

※There is no intermission.

[Encore]

Schubert: An den Mond, D.296
Ryôsuke Hatanaka (Isaku Sugiura: Lyrics): Marumero
Schubert: Willkommen und Abschied, D.767

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「東京春祭 歌曲シリーズ」のライヴ配信に味を占めた私は、今売り出し中の若いバリトンと歌曲ピアニストのコンビ、コンスタンティン・クリンメル(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)の《美しき水車屋の娘》を自宅で味わいました。

コンスタンティン・クリンメルはルーマニア系ドイツ人で、まだ31歳とのこと。リートの録音もいくつかリリースしていて、今後の活躍が楽しみなバリトンです。ダニエル・ハイデはすでに多くの歌手たちと共演しているピアニストで、歌曲だけでなく、室内楽やソロも取り組んでいるオールラウンダーです。二人とも今回が初来日というのが意外ですが、これからますます活躍することと思います。

ところで、この二人のコンビ、すでに《美しき水車屋の娘》の録音をリリースしていて、事前に聞いてみたのですが、それを踏まえたうえで、今回のライヴ配信堪能しました。

まずクリンメルの爽やかで美しいハイバリトンの声と巧みなディクションに引きつけられました。特に高声から低声までよどみなくまろやかな美声を保っているので、とても聞いていて心地よいです。特に高音が本当に美しいです。そして、時にテンポを大胆に伸縮させて詩の世界を表現しようとする意欲も感じられました。

クリンメルの描いた人物像は、これから職人になる為の修行に出て、様々な経験を積み、新しい世界に飛び込んでいこうという若者らしい希望と不安のないまぜになった感覚が表現されていたと思います。彼自身の放つキャラクターや声質なども等身大の若者像を表現するのに今がベストなタイミングだと感じました。

《美しき水車屋の娘》の録音を聞いて分かっていたことですが、クリンメルは例えばクリストフ・プレガルディアンが多くの公演や録音で聞かせていたような装飾やメロディーの変奏を加えて歌っていました。それがその場の即興的なものというよりは、すでに彼の中で練られたメロディーとして披露していたように想像します。有節歌曲で最初にオリジナルのメロディーを歌い、繰り返す時に変更を加えるということが多かったように思いますが、そうでないケースもあったように思います。シューベルト存命中の習慣に倣ったこの一種の変奏は、すでに奇抜と思われていた時代は過ぎ、今後はオリジナル通りの歌唱を歌う人と、装飾を加える人が共存していくことになるのでしょう。興味深いのが、クリンメルは《美しき水車屋の娘》では程度の差こそあれ、ほぼすべての曲で装飾を加えていたのに対して、アンコールで歌われたシューベルトの歌曲2曲では私の記憶している限りオリジナルのまま歌っていました。歌いこんでいる曲は装飾を加え、そうでない作品はまずはオリジナルの通りで始め、徐々に装飾を加えていくということなのかなと想像しました。

第1曲「さすらい」の第4節(重い石臼でさえもっと速く踊ろうとすると歌われる)などかなり大胆なメロディーの変更がされて驚かされますが、こういう変更の意外性に出会うこともリートを聞く楽しみの一つになりつつあると思います。第3曲「止まれ!」の最後の"War es also gemeint(そういう意味だったのか)?"は何度も繰り返されるので、装飾が特に新鮮に響きます。

例えばプレガルディアンの共演者ミヒャエル・ゲースなどもそうでしたが、今回のダニエル・ハイデもかなりピアノパートに変更を加えていました。ピアニストのオリジナルの変更は私の記憶ではジェラルド・ムーアがすでに行っていて、F=ディースカウやプライなどとのライヴ録音を聞くと快活な曲の終わりの和音を威勢よく弾く時に音を加えて厚くしたり、オクターブ下げたりしていました。確か来日したムーアの「詩人の恋」を聞いた畑中良輔さんが、ある和音(終曲の冒頭だったか?)がオリジナルと違うと指摘していましたが、当時はオリジナル至上主義だったので今とはとらえ方も違ったのでしょう。私のおぼろげな記憶ではヘルムート・ドイチュだったかと思うのですが、第9曲「水車職人の花」を1オクターブあげて演奏したりしていました(すべての節ではなく、特定の節だけだったと思います)。今回のダニエル・ハイデも1オクターブあげるのは何か所かでやっていましたが、意外性が強かったのは第11曲「僕のもの」でした。中間部の分散和音をハイデは連打していました。これは新しい響きで印象に残っています。シューベルトっぽいかというとちょっと違う気もしますが、その時代に合った手法で変奏しても多分シューベルトは怒らないでしょう。

ハイデは基本的には歌手の方向性に合わせ、ここぞという所ではがっちりした立体的な響きも聞かせ、彩り豊かな音色で魅了してくれました。

クリンメルもハイデも最後の3曲ぐらいはあまりメロディーの変更を加えずに、思いつめた主人公の行きついた心情を一人称の歌唱で素直に聞かせてくれました。

この歌曲集、聞き手はどんどん年を重ね、主人公を回顧する立場で聞くことになりがちですが、歌手やピアニストが主人公になりきって演奏してくれると、聞き手も若かりし日々に戻ったかのように錯覚させてくれて、こういう感覚も音楽を聴く醍醐味だなとあらためて感じました。

アンコールは3曲。最初と最後にシューベルトを歌い(最後に歌われた「歓迎と別れ」は特に好きな曲なので聞けて良かった!)、2曲目で恥ずかしながら初めて聞く日本歌曲を驚くほど美しい日本語で歌ってくれました。これほど癖のない日本語で歌えるのは凄いと思います。クリンメルが2曲目を歌う前に、シュトゥットガルトで吉原輝氏に師事したというような話をして、「リョウスケ・ハタナカ」という名前が出た時、まさかクリンメルの口から畑中氏の名前が出るとは想像すらしておらずびっくりしました。ドイツリートばかり聞いていて、畑中氏の歌曲をほとんど知らない自分が恥ずかしく感じられました。クリンメルの口から「マルメロ」というタイトルを聞いた時、これがなんのことなのか分かりませんでしたが、後で調べると樹木の名前なのですね。果実はかりんに似ているそうです。分散和音のピアノにのったとても美しい歌曲でした。評論、指揮、作曲など多岐に渡る活動をされた畑中氏が亡くなったのは吉田秀和氏が亡くなった2日後、そしてF=ディースカウが亡くなった6日後のことでした。あの悲しかった5月から12年も経つのかと時の流れの速さに驚かされます。

このコンビ、すでに完成された素晴らしい音楽家たちでした。これからのますますの活躍を楽しみにしたいと思います。

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クリンメル&ハイデの『美しい水車屋の娘D795』CD

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フィッシャー=ディースカウ&ムーア・ユネスコ・コンサートの映像(1974年1月9日, Paris)

ジェラルド・ムーア(Gerald Moore: 1899-1987)は、1967年2月20日イギリスのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで催された告別コンサートでステージから別れを告げたと一般には言われていますが、実はその1か月後にフィッシャー=ディースカウとアメリカ演奏旅行に同行し、シューマンなどを演奏しています。その後もBBCの音楽番組に出演してビクトリア・デ・ロサンヘレスと共演しており、さらに1976年8月にシューマン「スペインの愛の歌」のグレアム・ジョンソンの連弾パートナーとしてもシークレットゲストとしてステージに出演したそうです。60年代後半から70年代前半にはF=ディースカウ、プライ、ベイカー、モッフォら複数の歌手たちとスタジオ録音を続けた後に演奏活動にピリオドを打ったと思いきや、1974年1月9日のユネスココンサートにF=ディースカウと共に出演し、シューベルトの歌曲を演奏しています(ムーアの回想録『Farewell Recital (1978)』によるとイェフディ・メニューヒンの依頼だったので断れなかったそうです)。その録画がアップされていましたのでこちらで共有させていただきます。
特に「夕映えの中で」の前奏ではムーアの手がアップになり、そのしなやかな指さばきを見ることが出来ます。
こちらは以前4曲まとめた映像でご紹介したことがありましたが、今回の映像はモノクロながらより鮮明に映っていて、曲ごとに分かれているので見やすいと思い、再度記事にしました。

●シューベルト:漁師の娘D957/10
Dietrich Fischer Dieskau Schwanengesang D 957 (10. Das Fischermädchen)

Channel名:George გიორგი (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ます)

●シューベルト:夕映えの中でD799
Dietrich Fischer Dieskau Im Abendrot D.799

Channel名:George გიორგი (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ます)

●シューベルト:孤独な男D800、ひめごとD719
Dietrich Fischer Dieskau Der Einsame D.800(, Geheimes D.719)

Channel名:George გიორგი (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ます)

Piano: Gerald Moore
Recorded in Paris, France January 9, 1974 UNESCO concert

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東京春祭 歌曲シリーズ vol.37:レネケ・ルイテン(ソプラノ)&トム・ヤンセン(ピアノ)(2024年4月4日(木) ライブ配信席)

東京春祭 歌曲シリーズ vol.37
レネケ・ルイテン(ソプラノ)&トム・ヤンセン(ピアノ)

2024年4月4日(木) 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール(※私はライブ配信で聞きました)

ソプラノ:レネケ・ルイテン
ピアノ:トム・ヤンセン

シューベルト:春に D882
シューベルト:すみれ D786

シューマン:歌曲集《詩人の恋》op.48
 第1曲 いと美しき五月に
 第2曲 僕の涙から
 第3曲 ばらよ、ゆりよ、鳩よ、太陽よ
 第4曲 君の瞳を見つめると
 第5曲 僕の魂をひたそう
 第6曲 ラインの聖なる流れに
 第7曲 僕は恨まない
 第8曲 小さな花がわかってくれるなら
 第9曲 それはフルートとヴァイオリン
 第10曲 あの歌の響きを聞くと
 第11曲 若者が娘に恋をした
 第12曲 まばゆい夏の朝に
 第13曲 僕は夢の中で泣きぬれた
 第14曲 夜ごと君の夢を
 第15曲 昔話の中から
 第16曲 古い忌わしい歌

~休憩~

R.シュトラウス:歌曲集《おとめの花》op.22
 第1曲 矢車菊
 第2曲 ポピー
 第3曲 木づた
 第4曲 睡蓮

R.シュトラウス:歌曲集《4つの最後の歌》
 第1曲 春
 第2曲 九月
 第3曲 眠りにつくとき
 第4曲 夕映えの中で

[アンコール]

R.シュトラウス:明日! op.27/4
R.シュトラウス:献呈 op.10/1
R.シュトラウス:夜 op.10/3


Tokyo-HARUSAI Lieder Series vol.37
Lenneke Ruiten(Soprano)& Thom Janssen(Piano)

2024/4/4 [Thu] 19:00 Start [ Streaming start from 18:30 ]
Tokyo Bunka Kaikan, Recital Hall

Soprano:Lenneke Ruiten
Piano:Thom Janssen

Schubert: Im Frühling, D882
Schubert: Viola, D786

Schumann: Dichterliebe, Op.48

-Pause-

R.Strauss: Mädchenblumen, Op.22

R.Strauss: Vier letzte Lieder

[Zugaben]
R.Strauss: Morgen!, Op. 27/4
R.Strauss: Zueignung, Op. 10/1
R.Strauss: Die Nacht, Op. 10/3

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「東京春祭 歌曲シリーズ」は随分長いこと継続的に続いていて、歌曲ファンにとっては注目の公演なのですが、個人的に最近コンサートに出かけるのをずっと怠っていて、ここ数年もネットでチェックはするものの実際には足を運ばず仕舞でした。今回私は東京文化会館での実際の公演を同時刻にライブ配信するネット席(アーカイブ配信はなし)で聞きました。つまり家にいながらにして鑑賞できるわけです。ステージ中央の固定映像ですが、好きな場所をアップにすることが出来、さらに日本語字幕もついて料金も1200円というリーズナブルさ、しかも音質もなかなかいいと至れり尽くせりです(回し者ではございません)。

オランダのソプラノ、レネケ・ルイテン(Lenneke Ruiten)はアーメリングの弟子としてずっと昔から知ってはいたものの、コンサートで聞く機会はありませんでした。ちなみにオランダ語の"ui"という2重母音の発音は日本語にも他の欧米の言葉にもない音らしく、彼女の姓Ruitenをアーメリングは「ラウテン」に近い音で発音していました。"ui"はアウ、アイのどちらかに聞こえることが多いようですが、最初のアはドイツ語の"ö"を発音する時の要領で「ア」に近く発音するといいのかなぁと勝手に理解しています。

今回のレネケ・ラウテン(公式サイトの表記はルイテンですが、ここからはラウテンと書かせていただきますね)のコンサートは、シューベルトの春にちなんだ2曲、特に2曲目の「すみれ」は10分以上かかる作品ですが、詩の内容がかわいそうで読むたびにしんみりしてしまいます。シューベルトもすみれに共感を寄せたとても美しい音楽を付けています。その後にシューマンの歌曲集《詩人の恋》全曲というなかなかヘビーな内容で、前半だけで1時間近くかかっていました。後半はR,シュトラウスの2つの歌曲集《おとめの花》op.22、《4つの最後の歌》ですっきりまとめています。それにしても女声歌手のリーダーアーベントでのR.シュトラウス率の高さは昔から変わりません。やはり歌手にとってR.シュトラウスの伸びやかなフレーズは歌っていて気持ちいいのかもしれません。

ピアニストのトム・ヤンセンと先日亡くなったルドルフ・ヤンセンはどちらも日本語だと「ヤンセン」ですが、ルドルフ・ヤンセンはJansen、トム・ヤンセンはJanssenなので血縁関係はなさそうですね。アーメリングの公式チャンネルの編集者でもあり、あの貴重な動画はトム・ヤンセンのおかげで見ることが出来るのだと思うと、彼への感謝の念が沸き起こります。

ラウテンとヤンセンのコンビはおそらく数十年前、アーメリングがフランスの村でマスタークラスを開いた際のDVD映像に映っていて、まだ若々しい感じでした。ジャケット写真で近影を見ると結構大人になった印象ですが、今回のコンサートでは髪をまとめ、より若々しく感じられました。

シューベルトの「春に」からラウテンのリリックで芯のある声が美しく響き、会場で聞いたらさらに良かっただろうなと思わされます。ディクションも良く、強弱のめりはりもあり、シューベルトのメロディーに生き生きと寄り添った歌唱でした。

「すみれ」も10分以上があっという間に感じられる歌唱で、彼女がオペラにも積極的に出演していることが関係しているのか、物語の展開をドラマティックに迫真の表現で聞かせてくれました。"Schneeglöcklein(まつゆきそう)"と呼びかけるメロディーが優しく慈愛に満ちていて、曲中何度もあらわれるのですが、出てくるたびにシューベルトの天才を感じていました。まつゆきそうが春の到来を告げ、目を覚ましたすみれがいそいそと花嫁の準備をしたところ、まだ他に誰も目覚めておらず、早すぎたことを知ったすみれは羞恥のあまり、物陰で泣きじゃくります。その後、とうとう春がやってきて他の花々も目覚めて宴会をしようとしたところ、最愛のすみれがいないことに気づきみんなで探しに出かけたところ、憔悴してしおれているすみれを発見したという何とも切ない内容です。その後に例の「まつゆきそう」の音楽が再びあらわれ、すみれに安らかに眠るように語りかけます。誰のせいでもなくタイミングが悪かっただけなのかもしれませんが、すみれの繊細で傷つきやすい心にシューベルトが付けた音楽が共感に満ちていて、それをラウテンとヤンセンが美しく演奏してくれました。

その後で、シューマンの《詩人の恋》全曲ですが、第1曲が「いと美しき五月に」で、ラウテンはシューベルトから季節をつなげてプログラミングしたことが分かります。
はるか昔にロッテ・レーマンがこの歌曲集を歌と朗読の2バージョンで録音して以来、久しく女声歌手はこの作品に手を出しませんでした。カナダのロイズ・マーシャルがその後歌い、さらにブリギッテ・ファスベンダーやバーバラ・ボニーが歌いだしてから、女声による《詩人の恋》もこの作品の可能性の一つとして認知されるようになってきたと思います。今回ラウテンが歌った《詩人の恋》も、聞きなれた男声の響きが女声に変わっただけで、演奏の価値はいささかも変わらないと思います。実際、配信で聞いた限りでは特に違和感なく、恋の芽吹きから失恋、思い出を沈める最後まで、恋愛の過程を素晴らしく描き出していました。

前半だけで7:55ぐらいになってしまい、その後20分間の休憩をはさみ、後半のR.シュトラウスのプログラムとなりました。ラウテンとヤンセンは最近シュトラウスのCDをリリースし、今回選曲された作品はみな含まれている為、事前に聞いていました。
最初は《おとめの花》op.22全4曲です。CDで聞いた時はちょっと声が重かったように感じたのですが、コンサートで若返った?と思うほど、きれいに響きが伝わってきます。最初の「矢車菊」「ポピー」と異なる趣の曲を鮮やかに歌ったルイテンですが、ここで家でリラックスして聞いていた私はあろうことか寝落ちしてしまいました。普段もこの時間は寝落ちしてしまうことが多く、この日は気を付けていたのですが、次に気づいた時はアンコールの「明日!」が流れていました。つまり、今回のおそらくメインだった《4つの最後の歌》の時は夢の中でした。演奏者お二人に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、寝てしまったものは取り返せないので、気持ちを切り替えて残りのアンコールを楽しみました。

レネケ・ラウテンはおそらく今が声・表現ともに全盛期といっていいのではないかと感じました。どこをとっても素晴らしく彫琢された歌唱で、歌曲歌手の多い現代にあってもっと評価されてしかるべき歌手だったと思います。会場で聞いていないので、確かなことは言えないのですが、おそらく声量も豊かだったのではないかと想像します。

トム・ヤンセンのピアノはラウテンの歌をのせる流れを作る演奏だったと思います。細かい目配りや主張よりは曲全体の流れをとめずに先に進めていくといった方向を目指していたように感じました。

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