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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」の分析

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 1)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

ブラームスの「知らせ(Botschaft,op. 47 no. 1)」に続いて、エリー・アーメリングによる歌曲分析講座第2弾がアップされました。
アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」です。

「この曲は、ゆっくりで、典型的にロマンティックな感情に満ちています」

「歌曲集『リーダークライス』のテキストの多くはアイヒェンドルフの小説『予感と現在(Ahnung und Gegenwart)』」から採られています」

※ちなみに第1曲「異郷にて」は小説『空騒ぎ(Viel Lärmen um nichts)』(1833年)から採られているそうです。

「この曲のテンポは「速くなく(Nicht schnell)」です」

アーメリングは数行ずつ原詩と英訳を交互に朗読します。

そして別の演奏家による速いテンポの音源が流れます。
「私の意見では、このテンポでは正しい雰囲気が損なわれていると思います」

「冒頭はpで始まり、両親はすでにいないと歌われる5小節目(第3行)はppと指示されています。そして冒頭からピアノ右手最高音に付いているアクセントが5小節目以降は付いていません」

「11,12小節のピアノ右手:5度上行する箇所でクレッシェンド→デクレッシェンドが付いていて、これは「もうすぐ(wie bald = how soon)」を表現しています」

「1回目の"Da ruhe ich auch(その時に私も休むことにしよう)"では"auch(〜も)"に最高音が当てられているが突出しないように歌われるべきです(ソプラノは最高音でボリュームを上げがちなので、ここはpppで歌うぐらいでいい)。
歌う前に考えてみましょう(Think, before you sing!)」

第2連2~3行目"und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,(そして頭上では美しい森の孤独がざわめいている)"を1ブレスで歌うことについて

「2回目の録音ではschöne(美しい)とWaldeinsamkeit(森の孤独)の間にブレスを入れてしまったのが残念(後で種明かしされますが、これはアーメリング&ヤンセンのライヴ録音です)。どうしてブレスを入れてしまったのかというと、このフレーズはどんな人にとっても非常に長いのです。ただしフィッシャー=ディースカウを除いて。彼なら何でも出来るでしょう」

1:02-3:31
1回目の録音。イェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年4月15-21日, La Chaux-de-Fonds録音)→アーメリングは動画後半で1973年録音と言っているがおそらく誤り。「女の愛と生涯」のスタジオ録音(ボールドウィンのピアノ)が1973年なのでそれと混同した可能性あり

11:38-(抜粋) Wie bald ...
13:06-(抜粋) und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,
2回目の録音。ルドルフ・ヤンセンとのライヴ録音(1980年5月2日録音と思われます。全曲はこちらで聞けます)→アーメリングは1979年と言っているがおそらく誤り

15:00-
冒頭に流されたイェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年録音)を再度全部流します。

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In der Fremde, Op. 39, No. 1
 異郷にて

Aus der Heimat hinter den Blitzen rot
Da kommen die Wolken her,
Aber Vater und Mutter sind lange tot,
Es kennt mich dort keiner mehr.
 赤い稲光の向こうにある故郷から
 雲がこちらに流れてくる、
 だが父母はずっと前に亡く
 あそこで私を知る者はもういない。

Wie bald, wie bald kommt die stille Zeit,
Da ruhe ich auch, und über mir
[Rauscht]1 die schöne Waldeinsamkeit,
Und keiner [kennt mich mehr]2 hier.
 もうすぐ、もうすぐ静かな時がやってくる、
 その時に私も休むことにしよう、そして頭上では
 美しい森の孤独がざわめいている、
 そしてここでも私を知る者はもういない。

1 Eichendorff: "Rauschet"
2 Eichendorff: "mehr kennt mich auch"

詩:Joseph Karl Benedikt, Freiherr von Eichendorff (1788-1857), "In der Fremde", appears in Gedichte, in 5. Totenopfer, first appeared in the novella "Viel Lärmen um nichts" (1833)
曲:Robert Schumann (1810-1856), "In der Fremde", op. 39 no. 1 (1840), published 1842 [voice and piano], from Liederkreis von Joseph Freiherr von Eichendorff, no. 1, Wien, Haslinger

このシリーズの次回は同じく『リーダークライス』Op. 39から第8曲(曲目も第1曲と全く同じ"In der Fremde")とのことです。楽しみですね。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

アーメリング&デームスの『リーダークライスOp.39』が収録された29枚組CD

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コメント

フランツさん、こんばんは。

この曲は、本当に美しいですね。この曲を初めて聞いたのもアメリングでした。まだリートをそんなに聞いていなかったころで、こんなに美しい曲があるんだ!と思ったものです。

アメリングのピアニッシモは大変美しいですが、ここで歌われている、そしてご本人が言われている
>1回目の"Da ruhe ich auch(その時に私も休むことにしよう)"では"auch(〜も)"に最高音が当てられているが突出しないように歌われるべきです(ソプラノは最高音でボリュームを上げがちなので、ここはpppで歌うぐらいでいい)。
このauchのピアニッシモの美しさといったら!
空気の中に溶けていくようです。

高音を当てておいて音を絞らせる(ここはまだI母音でないだけましですが)、この音楽的効果は大きですね。
この曲もレッスンを受けたのですが、この箇所、なかなか美しいピアニッシモで歌えなかったです。
ソプラノにとってそれほど高い音ではないのですが(2点E音)、歌い始めから中音が続くため、私はのどの切り替えがうまくいかなかったです。(うまい人はそんなことないのでしょうが、、)
それでも、歌っていて酔うほど美しい曲で、このような曲を歌える喜びを感じながらレッスンを受けたものです。

今は、このように名歌手のレクチャーをどこにいても受けられる幸せな時代ですね。(といっても日本語以外は分かりませんので、このように記事にして訳してくださって感謝です)。
第8曲も楽しみにしています。

投稿: 真子 | 2024年4月 5日 (金曜日) 19時37分

真子さん、こんばんは。
コメント有難うございます。

この曲も真子さん歌われたのですね。しかも「歌っていて酔うほど美しい曲」とは!「リーダークライス」もアーメリングの録音で初めて聞かれたそうで、真子さんの初期体験にアーメリングが大きく関わっておられることが分かりました。

第一曲、おっしゃるようにソプラノにしては低めのメロディですよね。急に高い音が出てくると歌いにくいのですね。実際に歌った方でないと分からないこういう体験談はとても興味深いです!

アーメリングのppは絶品ですよね。共感できて嬉しいです。彼女は単語の弱い音節を強く歌うことを良しとしない印象があります。詩の音節の強弱を犠牲にするぐらいなら歌のフレーズの流麗さを捨てるのではないかと思います。

こういうレッスンを公開してくれるのは、彼女のファンだけでなく次世代の歌手の卵たちにとっても大きな意味があると思います。家にいながらにして聴講出来るわけですから本当に便利な世の中になりました。

投稿: フランツ | 2024年4月 5日 (金曜日) 21時21分

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