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ルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)を偲んで

オランダのピアニスト、ルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen: 1940年1月19日, Arnhem -2024年2月12日, Laren (Noord-Holland))が2月12日ラーレンで亡くなりました。84歳でした。若々しい風貌だったこともあり、その時のイメージのままでいたので、彼の突然の訃報に驚きを禁じえませんが、すでに84歳だったという事実にもあらためて衝撃を受けました。
Wikipediaによると、亡くなる10日前にオランダ、ラーレンのローサ・スピーア・ハウスという高齢の芸術家が余生を過ごす施設に引っ越したそうで、これから新しい場所でゆっくり過ごそうとした矢先だったのでしょうか。
ヤンセンはもともとソロもコンチェルトも演奏するピアニストでしたが、力を入れていたのは歌曲や室内楽の演奏でした。
彼は父親スィモン(Simon C. Jansen)がオルガニストだった為、オルガンを学び、グスタフ・レオンハルトからはチェンバロを学んでいます。さらにオランダ伴奏界の巨匠フェーリクス・ドゥ・ノーベルから伴奏を学びました。
コンサートと指導を並行して行っていましたが、2017年4月2日アムステルダム、コンセルトヘバウのリサイタルホールでのコンサートをもってステージから引退しました。
メゾソプラノ歌手のクリスタ・プファイラーと結婚していて、共演した録音もあります。
キャリアの初期はナップ・ドゥ・クレインというヴァイオリニストとデュオを組んで長く演奏していたようです。その後、オーボエ奏者のハン・ドゥ・フリースと共演し、1979年にはエリー・アーメリングと初めてのスタジオ録音をします(CBSのメンデルスゾーン歌曲集)。アーメリングとは1985年11月にはじめて来日公演に同行し、各地で歌曲コンサートを開いています。私がヤンセンをはじめて生で聞いたのは1987年11月25日の神奈川県民ホール小ホールでのアーメリングのリサイタルにおいてでした。アーメリングを生で聞くのもこの時が初めてでしたので、とてもわくわくして聞きに行ったと記憶しています。その後、アーメリングの来日のたびにヤンセンの立体的かつ繊細なピアノの響きを堪能してきたのもよい思い出となっています。アーメリングはインタビューの際に共演したピアニストとしてデームス、ゲイジ、ボールドウィンと共にヤンセンの名前を挙げていて、彼は素晴らしいピアニストでしたと述懐しています。一方、アンドレアス・シュミットとのシューベルト&シューマン・リサイタルを1993年サントリーホール小ホールで聴いた時、ホールの音響に慣れていなかったのか、ヤンセンの響きが時に大き過ぎるように感じ、彼ほどのピアニストでもこういうことがあるのかと思った記憶があります(アーメリングとの共演ではそういうことは皆無だったので余計に記憶に残っています)。

FMでエアチェックをしていた時期にヤンセンの弾くドビュッシーの『映像 第2集』の第2,3曲が流れたことがあります。解説の方もアーメリングの録音で名前は知っていたが、ソロを聞くのは初めてだと言っていました。伴奏で知られるピアニストのソロ演奏ということで興味深く、テープに録音して何度も聞いたものでした(今は残念ながらどこかにいってしまいましたが)。

ヤンセンとのコンビで最も有名なのはアーメリングだと思いますが、その他にも膨大な共演者がいて、特に結びつきが強かったのはロベルト・ホル、アンドレアス・シュミットあたりでしょうか。

グリーグ、R.シュトラウス、アルフォンス・ディーペンブロックの歌曲全集の録音では全曲一人でピアノを担当するという凄さです!

私の唯一のオーストリア旅行で、シューベルティアーデを聞いた際、バンゼ、ツィーザク、ファスベンダー、プレガルディアン、マルクス・シェーファー、ベーア、トレーケルといった錚々たるメンバーによるシューベルト重唱曲の夕べでヴォルフラム・リーガーと分け合ってピアノを弾いたのがヤンセンでした。この音源、CDか配信で復活しないかなぁと思っています。

ヤンセンの音は結構かっちりとした楷書風な印象があり、それがドイツリートの演奏にぴったりマッチしているように思うのですが、フランス歌曲ではアンニュイな雰囲気も表現していて、変幻自在なピアニストだと思います。テクニック的な不安がなく、安心して身を委ねて聞けます。

最後に私のブログお決まりの共演者リスト(分かる範囲内です)をまとめておきます。オランダ人が多いのは当然として、結構幅広い国籍の演奏家たちと共演しているのが分かります。日本人では釜洞祐子さんと録音を残しています。どれほどアーティストたちから信頼があつかったかが伺えます。

ご冥福をお祈りいたします。

Roberta Alexander (Soprano)
Elly Ameling (Soprano)
Juliane Banse (Soprano)
Barbara Bonney (Soprano)
Dorothy Dorow (Soprano)
Thea Ekker-van der Pas (Soprano)
Agnes Giebel (Soprano)
Marianne Hirsti (Soprano)
Margreet Honig (Soprano)
Hanneke Kaasschieter (Soprano)
Yuko Kamahora (Soprano)
Evelyn Lear (Soprano)
Irene Maessen (Soprano)
Charlotte Margiono (Soprano)
Christiane Oelze (Soprano)
Ulrike Sonntag (Soprano)
Ellen van Lier (Soprano)
Edith Wiens (Soprano)
Ruth Ziesak (Soprano)

Irina Arkhipova (Mezzo-soprano)
Cora Burggraaf (Mezzo-soprano)
Elisabeth Cooymans (Contralto)
Brigitte Fassbaender (Mezzo-soprano)
Birgit Finnilä (Mezzo-soprano)
Monica Groop (Mezzo-soprano)
Myra Kroese (Alto)
Christa Pfeiler (Mezzo-soprano)
Sylvia Schlüter (Contralto)
Christianne Stotijn (Mezzo-soprano)
Jard van Nes (Mezzo-soprano)
Margriet van Reisen (Mezzo-soprano)
Carolyn Watkinson (Mezzo-soprano)

Kurt Azesberger (Tenor)
Hans Peter Blochwitz (Tenor)
Christian Elsner (Tenor)
Ernst Haefliger (Tenor)
Uwe Heilmann (Tenor)
David Johnston (Tenor)
Hein Meens (Tenor)
Lothar Odinius (Tenor)
Christoph Prégardien (Tenor)
Roberto Saccà (Tenor)
Kjell Magnus Sandve (Tenor)
Markus Schäfer (Tenor)
Peter Schreier (Tenor)
Marius van Altena (Tenor)

Olaf Bär (Baritone)
Dietrich Fischer-Dieskau (Baritone)
Robert Holl (Bass-baritone, Bass)
Maarten Koningberger (Baritone)
Meinard Kraak (Baritone)
Tom Krause (Baritone)
Marc Pantus (Baritone)
William Parker (Baritone)
Udo Reinemann (Baritone)
Andreas Schmidt (Baritone)
Knut Skram (Baritone)
Geert Smits (Baritone)
Roman Trekel (Baritone)
Ruud van der Meer (Baritone)
Stephen Varcoe (Baritone)
Lieuwe Visser (Baritone)
Oliver Widmer (Baritone)
Hansung Yoo (Baritone)

Nederlands Kamerkoor

Jean-Louis Beaumadier (Flute)
Rien de Reede (Flute)
Philippe Gautier (Flute)
Eleonore Pameijer (Flute)
Jean-Pierre Rampal (Flute)
Paul Verhey (Flute)

Han de Vries (Oboe)

Karl Leister (Clarinet)
Paul Meyer (Clarinet)
Sabine Meyer (Clarinet)
George Pieterson (Clarinet)
Roland Simoncini (Clarinet)
Willem van der Vuurst (Clarinet)
Jean-Marc Volta (Clarinet)

Ronald Brautigam (Piano)
Han Reiziger (Piano)
Wolfram Rieger (Piano)

Leo van Doeselaar (Harmonium)

Nap de Klijn (Violin)
Abbie de Quant (Violin)

Zoltan Benyacs (Viola)

Michel Dispa (Violoncello)
Daniel Esser (Violoncello)
Henk Lambooij (Violoncello)

Manja Smits (Harp)

Quatuor Viotti
Sweelinck Kwartet

Uwe Gronostay (Conductor)

Rudolf Jansen - Een portret / A portrait

インタビュー(英語の字幕が付けられます)の他にグリーグのピアノ小品と、奥様クリスタとのショッソン「蝶々」が演奏されます。

Han Reiziger & Rudolf Jansen - Schubert/ Fantasie in f

シューベルトの切なく美しい連弾曲「幻想曲ヘ短調」の冒頭部分が聞けます。ヤンセンはプリモ(高音パート)を演奏しています。全曲演奏してほしかった!

IVC 2010 - Elly Ameling Lied course

アーメリングとマスタークラスの指導をしているヤンセンです。ドビュッシーの「操り人形(Fantoche)」とデュパルクの「フィディレ(Phidylé)」を受講生と演奏しています。

●ルドルフ・ヤンセンの訃報記事、特集

NPO Radio4 - Podium

PLACE DE L'OPERA

Conservatorium van Amsterdam

diapason

The International Song Festival Zeist

The Violin Channel

Podium - Rudolf Jansen: duopianist op topniveau

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