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エリー・アーメリング公式チャンネル更新:シューマン『リーダークライスOp. 39』、Hollandse helden 4,5

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルが立て続けに更新され、3本の動画がアップされています。

●Elly Ameling - Rudolf Jansen; Liederkreis op. 39 - Schumann

オリジナルのサイトはこちら
アーメリングとルドルフ・ヤンセンによるアイヒェンドルフの詩によるシューマンの歌曲集『リーダークライスOp. 39』全曲です。録音年月日はCD"80 jaar"に収録したものと同音源だとすると1980年5月2日ですが、概要欄に記載された1983年2月3日は別のコンサートと混同しておられるかもしれません(ブレスの位置やミスした音の感じ等からしてCDと同一音源のように思われます)。ルドルフ・ヤンセンのピアノパートも味わい深いです。
Elly Ameling
Rudolf Jansen - Piano
Avro Radio Feb. 3, 1983 (or May 2, 1980 ?)

●Hollandse helden deel 4

オリジナルのサイトはこちら
もともとはNPO Radio4のサイトで2023年にアーメリングの90歳を記念して公開された"Hollandse Helden"(オランダの英雄)という5回のシリーズでオランダ国内限定で聞くことが可能だったものの第4回分と同一と思われます。このたびYouTubeにアップされたことでオランダ国外でも聞くことが出来てファンとしては感無量です!(オランダ語ですが...)シューマン「献呈(Widmung)」の中にフロレスタン(外交的性格)とオイゼービウス(内面的性格)の両面が含まれていると話しているようです。他にムソルクスキーの歌曲集『子供部屋』から「すみっこで(Im Winkel)」(ドイツ語版:おばあさんに猫のいたずらの濡れ衣を着せられた男の子の泣き言)とショッソンの「リラの花咲くころ」について語っています。

●Hollandse helden deel 5

オリジナルのサイトはこちら
NPO Radio4のサイトの"Hollandse Helden"(オランダの英雄)の最終回(第5回)ではガーシュウィン「アイ・ガット・リズム」、デューク・エリントン「イン・ア・センティメンタル・ムード」、フーゴ・ヴォルフ「飽くことない愛」、R.シュトラウス「万霊節」についてです。ヴォルフでは若い頃と円熟期の録音が流れ、その違いの大きさが演奏家の進化・深化をあらわしていると思いました。アーメリングの口真似が聞けたり、とにかく茶目っ気全開の明るく元気なアーメリングです。

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エリー・アーメリング&ルドルフ・ヤンセン/シューマン&ブラームス・リサイタル(1983年 ニューヨーク)

動画サイトでエリー・アーメリング&ルドルフ・ヤンセンによる1983年のリサイタル音源がアップされていました。いつもながらkadoguy様に感謝です。

An Elly Ameling Recital (New York, 1983)

Channel名:kadoguy(オリジナルのサイトはこちら。音が出るので注意!)

前半がシューマンの歌曲集『女の愛と生涯』と3曲の歌曲、後半がブラームスの歌曲とドイツ民謡編曲(WoO. 33)という王道のドイツ歌曲プログラムです。彼女のブラームス歌曲のライヴ音源はあまりないと思うので貴重です!
先日逝去されたルドルフ・ヤンセンがピアノを弾いています。ヤンセンの細やかな表現とアンサンブルの妙味を堪能するのにうってつけの音源だと思います。

シューマンの独立した3曲と歌曲集『女の愛と生涯』で前半のプログラムを組むのはアーメリングがよくやる選曲で、私も初めてこの二人を実演で聞いた1987年の来日公演でも下記曲目の「ことづて」が「くるみの木」になっている以外は同じでした(3曲が『女の愛と生涯』より先に演奏されましたが。この年のサントリーホールの公演でも前半は同じシューマンプログラムでNHKで映像収録されましたのでご覧になった方もいらっしゃると思います)。そして彼女の歌手として最後の来日となった1997年5月の横浜フィリアホールでも「献呈」「悲しみOp. 39-9」「くるみの木」と『女の愛と生涯』が前半のプログラムを占めたのでした。

今回の演奏もアーメリング、ヤンセンともに素晴らしかったです。ヤンセンが歌と一緒のところでいかに歌手の歌の流れに寄り添い、また歌のない箇所でいかに美しくピアノで歌っているかをぜひ聞いていただけたらと思います。

最後の「おお、お母さん、欲しいものがあるの」では聴衆も聞きながら盛り上がっていて、アーメリングもヤンセンもそれを受けて珍しくオリジナルにちょっと手を加えて最後を締めくくっていました。演奏家と聴衆が一つになった感じがいいですね。

エリー・アーメリング・リサイタル

録音:1983年5月19日, Kaufmann Concert Hall, the 92nd Street Y in New York City

エリー・アーメリング(ソプラノ)
ルドルフ・ヤンセン(ピアノ)

シューマン/歌曲集『女の愛と生涯』op. 42(全8曲) 0:00

シューマン/献呈 op. 25, no. 1 24:53
シューマン/はすの花 op. 25, no. 7 27:20
シューマン/ことづて op. 77, no. 5 29:37

ブラームス/セレナーデ op. 106, no.1 31:59
ブラームス/あなたの青い瞳 op. 59, no. 8 33:43
ブラームス/メロディーのように op. 105, no. 1 36:13
ブラームス/あなたがほんの時折でも微笑めば op. 57, no. 2 38:29
ブラームス/私たちは歩き回った op. 96, no. 2 40:05
ブラームス/永遠の愛について op. 43, no. 1 43:41

ブラームス/すぐにおいで op. 97, no. 5 48:25
ブラームス/娘は語る op. 107, no. 3 50:56
ブラームス/あの下の谷底に WoO. 33 no. 6 52:17
ブラームス/私の娘はばら色の口をしている WoO. 33 no. 25 55:09
ブラームス/お姉ちゃん WoO. 33, no. 15 57:02
ブラームス/おお、お母さん、欲しいものがあるの WoO. 33 no. 33 1:00:27

An Elly Ameling Recital (New York, 1983)

Elly Ameling, soprano
Rudolf Jansen, piano

Rec. 19 May 1983, Kaufmann Concert Hall, the 92nd Street Y in New York City

I. Robert Schumann: Frauenliebe und -Leben, op. 42
- Seit ich ihn gesehen 0:00
- Er, der Herrlichste von allen 3:01
- Ich kann's nicht fassen 6:25
- Du Ring an meinem Finger 8:32
- Helft mir, ihr Schwestern 11:26
- Süsser Freund, du blickest 13:30
- An meinem Herzen 18:52
- Nun hast du mir der ersten Schmerz getan 20:19

II. Schumann: Three songs
- Widmung, op. 25, no. 1 24:53
- Die Lotosblume, op. 25, no. 7 27:20
- Aufträge, op. 77, no. 5 29:37

III. Johannes Brahms: Six songs
- Ständchen, op. 106, no.1 31:59
- Dein blaues Auge, op. 59, no. 8 33:43
- Wie Melodien zieht es, op. 105, no. 1 36:13
- Wenn du nur zuweilen lächelst, op. 57, no. 2 38:29
- Wir wandelten, op. 96, no. 2 40:05
- Von ewiger Liebe, op. 43, no. 1 43:41

IV. Brahms: Six songs
- Komm bald, op. 97, no. 5 48:25
- Das Mädchen spricht, op. 107, no. 3 50:56
- Da unten im Tale, WoO. 33 no. 6 52:17
- Mein Mädel hat einen Rosenmund, WoO. 33 no. 25 55:09
- Schwesterlein, WoO. 33, no. 15 57:02
- Och Mod'r, ich well en Ding han, WoO. 33 no. 33 1:00:27

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ルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)を偲んで

オランダのピアニスト、ルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen: 1940年1月19日, Arnhem -2024年2月12日, Laren (Noord-Holland))が2月12日ラーレンで亡くなりました。84歳でした。若々しい風貌だったこともあり、その時のイメージのままでいたので、彼の突然の訃報に驚きを禁じえませんが、すでに84歳だったという事実にもあらためて衝撃を受けました。
Wikipediaによると、亡くなる10日前にオランダ、ラーレンのローサ・スピーア・ハウスという高齢の芸術家が余生を過ごす施設に引っ越したそうで、これから新しい場所でゆっくり過ごそうとした矢先だったのでしょうか。
ヤンセンはもともとソロもコンチェルトも演奏するピアニストでしたが、力を入れていたのは歌曲や室内楽の演奏でした。
彼は父親スィモン(Simon C. Jansen)がオルガニストだった為、オルガンを学び、グスタフ・レオンハルトからはチェンバロを学んでいます。さらにオランダ伴奏界の巨匠フェーリクス・ドゥ・ノーベルから伴奏を学びました。
コンサートと指導を並行して行っていましたが、2017年4月2日アムステルダム、コンセルトヘバウのリサイタルホールでのコンサートをもってステージから引退しました。
メゾソプラノ歌手のクリスタ・プファイラーと結婚していて、共演した録音もあります。
キャリアの初期はナップ・ドゥ・クレインというヴァイオリニストとデュオを組んで長く演奏していたようです。その後、オーボエ奏者のハン・ドゥ・フリースと共演し、1979年にはエリー・アーメリングと初めてのスタジオ録音をします(CBSのメンデルスゾーン歌曲集)。アーメリングとは1985年11月にはじめて来日公演に同行し、各地で歌曲コンサートを開いています。私がヤンセンをはじめて生で聞いたのは1987年11月25日の神奈川県民ホール小ホールでのアーメリングのリサイタルにおいてでした。アーメリングを生で聞くのもこの時が初めてでしたので、とてもわくわくして聞きに行ったと記憶しています。その後、アーメリングの来日のたびにヤンセンの立体的かつ繊細なピアノの響きを堪能してきたのもよい思い出となっています。アーメリングはインタビューの際に共演したピアニストとしてデームス、ゲイジ、ボールドウィンと共にヤンセンの名前を挙げていて、彼は素晴らしいピアニストでしたと述懐しています。一方、アンドレアス・シュミットとのシューベルト&シューマン・リサイタルを1993年サントリーホール小ホールで聴いた時、ホールの音響に慣れていなかったのか、ヤンセンの響きが時に大き過ぎるように感じ、彼ほどのピアニストでもこういうことがあるのかと思った記憶があります(アーメリングとの共演ではそういうことは皆無だったので余計に記憶に残っています)。

FMでエアチェックをしていた時期にヤンセンの弾くドビュッシーの『映像 第2集』の第2,3曲が流れたことがあります。解説の方もアーメリングの録音で名前は知っていたが、ソロを聞くのは初めてだと言っていました。伴奏で知られるピアニストのソロ演奏ということで興味深く、テープに録音して何度も聞いたものでした(今は残念ながらどこかにいってしまいましたが)。

ヤンセンとのコンビで最も有名なのはアーメリングだと思いますが、その他にも膨大な共演者がいて、特に結びつきが強かったのはロベルト・ホル、アンドレアス・シュミットあたりでしょうか。

グリーグ、R.シュトラウス、アルフォンス・ディーペンブロックの歌曲全集の録音では全曲一人でピアノを担当するという凄さです!

私の唯一のオーストリア旅行で、シューベルティアーデを聞いた際、バンゼ、ツィーザク、ファスベンダー、プレガルディアン、マルクス・シェーファー、ベーア、トレーケルといった錚々たるメンバーによるシューベルト重唱曲の夕べでヴォルフラム・リーガーと分け合ってピアノを弾いたのがヤンセンでした。この音源、CDか配信で復活しないかなぁと思っています。

ヤンセンの音は結構かっちりとした楷書風な印象があり、それがドイツリートの演奏にぴったりマッチしているように思うのですが、フランス歌曲ではアンニュイな雰囲気も表現していて、変幻自在なピアニストだと思います。テクニック的な不安がなく、安心して身を委ねて聞けます。

最後に私のブログお決まりの共演者リスト(分かる範囲内です)をまとめておきます。オランダ人が多いのは当然として、結構幅広い国籍の演奏家たちと共演しているのが分かります。日本人では釜洞祐子さんと録音を残しています。どれほどアーティストたちから信頼があつかったかが伺えます。

ご冥福をお祈りいたします。

Roberta Alexander (Soprano)
Elly Ameling (Soprano)
Juliane Banse (Soprano)
Barbara Bonney (Soprano)
Dorothy Dorow (Soprano)
Thea Ekker-van der Pas (Soprano)
Agnes Giebel (Soprano)
Marianne Hirsti (Soprano)
Hanneke Kaasschieter (Soprano)
Yuko Kamahora (Soprano)
Evelyn Lear (Soprano)
Irene Maessen (Soprano)
Charlotte Margiono (Soprano)
Christiane Oelze (Soprano)
Ulrike Sonntag (Soprano)
Ellen van Lier (Soprano)
Edith Wiens (Soprano)
Ruth Ziesak (Soprano)

Irina Arkhipova (Mezzo-soprano)
Cora Burggraaf (Mezzo-soprano)
Elisabeth Cooymans (Contralto)
Brigitte Fassbaender (Mezzo-soprano)
Birgit Finnilä (Mezzo-soprano)
Monica Groop (Mezzo-soprano)
Myra Kroese (Alto)
Christa Pfeiler (Mezzo-soprano)
Sylvia Schlüter (Contralto)
Christianne Stotijn (Mezzo-soprano)
Jard van Nes (Mezzo-soprano)
Margriet van Reisen (Mezzo-soprano)
Carolyn Watkinson (Mezzo-soprano)

Kurt Azesberger (Tenor)
Hans Peter Blochwitz (Tenor)
Christian Elsner (Tenor)
Ernst Haefliger (Tenor)
Uwe Heilmann (Tenor)
David Johnston (Tenor)
Hein Meens (Tenor)
Lothar Odinius (Tenor)
Christoph Prégardien (Tenor)
Roberto Saccà (Tenor)
Kjell Magnus Sandve (Tenor)
Markus Schäfer (Tenor)
Peter Schreier (Tenor)
Marius van Altena (Tenor)

Olaf Bär (Baritone)
Dietrich Fischer-Dieskau (Baritone)
Robert Holl (Bass-baritone, Bass)
Maarten Koningberger (Baritone)
Meinard Kraak (Baritone)
Tom Krause (Baritone)
Marc Pantus (Baritone)
William Parker (Baritone)
Udo Reinemann (Baritone)
Andreas Schmidt (Baritone)
Knut Skram (Baritone)
Geert Smits (Baritone)
Roman Trekel (Baritone)
Ruud van der Meer (Baritone)
Stephen Varcoe (Baritone)
Lieuwe Visser (Baritone)
Oliver Widmer (Baritone)
Hansung Yoo (Baritone)

Nederlands Kamerkoor

Jean-Louis Beaumadier (Flute)
Rien de Reede (Flute)
Philippe Gautier (Flute)
Eleonore Pameijer (Flute)
Jean-Pierre Rampal (Flute)
Paul Verhey (Flute)

Han de Vries (Oboe)

Karl Leister (Clarinet)
Paul Meyer (Clarinet)
Sabine Meyer (Clarinet)
George Pieterson (Clarinet)
Roland Simoncini (Clarinet)
Willem van der Vuurst (Clarinet)
Jean-Marc Volta (Clarinet)

Ronald Brautigam (Piano)
Han Reiziger (Piano)
Wolfram Rieger (Piano)

Leo van Doeselaar (Harmonium)

Nap de Klijn (Violin)
Abbie de Quant (Violin)

Zoltan Benyacs (Viola)

Michel Dispa (Violoncello)
Daniel Esser (Violoncello)
Henk Lambooij (Violoncello)

Manja Smits (Harp)

Quatuor Viotti
Sweelinck Kwartet

Uwe Gronostay (Conductor)

Rudolf Jansen - Een portret / A portrait

インタビュー(英語の字幕が付けられます)の他にグリーグのピアノ小品と、奥様クリスタとのショッソン「蝶々」が演奏されます。

Han Reiziger & Rudolf Jansen - Schubert/ Fantasie in f

シューベルトの切なく美しい連弾曲「幻想曲ヘ短調」の冒頭部分が聞けます。ヤンセンはプリモ(高音パート)を演奏しています。全曲演奏してほしかった!

IVC 2010 - Elly Ameling Lied course

アーメリングとマスタークラスの指導をしているヤンセンです。ドビュッシーの「操り人形(Fantoche)」とデュパルクの「フィディレ(Phidylé)」を受講生と演奏しています。

●ルドルフ・ヤンセンの訃報記事、特集

NPO Radio4 - Podium

PLACE DE L'OPERA

Conservatorium van Amsterdam

diapason

The International Song Festival Zeist

The Violin Channel

Podium - Rudolf Jansen: duopianist op topniveau

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シューベルト/「湖畔で」(Schubert: Auf dem See, D746)を聞く

Am See, D746
 湖畔で

In des Sees Wogenspiele
Fallen durch den Sonnenschein
Sterne, ach, gar viele, viele,
Flammend leuchtend stets hinein.
 湖の波の戯れの中へ
 陽光を通って
 星々が落ちて行く、ああ、とても多く、多く、
 きらきら輝きながら、絶えることなく。

Wenn der Mensch zum See geworden,
In der Seele Wogenspiele
Fallen aus des Himmels Pforten
Sterne, ach, gar viele, viele.
 人が湖になったら
 魂の波の戯れの中へ
 天国の門から
 星々が落ちて行く、ああ、とても多く、多く。

詩:Franz Seraph Ritter von Bruchmann (1798-1867)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Am See", D 746 (1817?/1822?), published 1831

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シューベルトを囲む音楽やパーティーの会シューベルティアーデは数年フランツ・フォン・ブルッフマンの家で催されました。ブルッフマンは裕福な家庭に生まれ、シューベルトのパトロンでもありました。そのブルッフマンのテキストにシューベルトは5曲の独唱歌曲を作曲しましたが、そのうちの1つが「湖畔で(Am See, D746)」です(個人的に大好きな作品の一つです)。

テキストは、第1連で太陽の光を通って、空の星々が湖の中へ落ちていくと歌われ、第2連では人が湖になったならば魂の湖の中へ天空の星々が落ちていくと歌われます。水鏡に映る星を描写しただけでなく、人間の魂を湖になぞらえているのでしょう。人が亡くなってお星さまになっても湖の水鏡に映れば身近に感じられるということなのでしょうか。星々が落ちるのが月明かりによるのではなく太陽の光というところも詩の解釈を難しく感じさせます。

シューベルトは「水の上で歌う(Auf dem Wasser zu singen, D774)」や「ゴンドラの船頭(Gondelfahrer, D808)」など水を扱った多くの作品同様、6/8拍子を採用し、細やかな十六分音符の分散和音で水の流れや波の戯れを描いています。ちなみにこの分散和音は、歌声部の旋律とは基本的に独立していますが、第1連の後のピアノ間奏冒頭は、直前の歌の旋律をエコーのように右手の最高音で繰り返します。

【ピアノ前奏】
Ex1 
【第1連~ピアノ間奏】
Ex2 

第2連が始まると、ピアノパートの左手バス音が変ホ音(Es)から順に下行していきます(変ホ長調のドシラソファミレドシと下行します)。歌は1小節遅れて変ホ音(Es)つまりドからファまで下行していきます。ここで第1連の音楽とは異なる何かが生じているということが聞き手に伝わりますね(「人が湖になったら」と歌われる個所です)。

【第2連】
Ex31_20240212160001 
Ex32 

第2連の歌詞が終わっても音楽は続き、第2連第2行から詩を繰り返します。第4行(Sterne, ach, gar viele, viele)の繰り返しは1回目の歌声部を変奏しています。特に"viele, viele"は2回目では間に四分休符+八分休符が入り、1小節から2小節に伸びています。それによってリタルダンドをしているような効果があり、終結に向かっていることを予感させます。

【第2連第4行(1回目)】
Ex41 
【第2連第4行(2回目)】
Ex42 

最後にもう1度第4行を繰り返しますが、"Sterne, ach, gar"のメリスマがすべて十六分音符で、ピアノの分散和音も十六分音符なので、歌手のテクニックの聞かせどころでありながら、歌とピアノで息を合わせる必要もあり、演奏者たちにとって気を使うところなのではないかと想像されます。

【第2連第4行(3回目)】
Ex5 

ちなみにシューベルトは、ゲーテの詩による「湖上にて(Auf dem See)」という歌曲を以前に作曲していますが、拍子、調、作品冒頭に記載した標示のすべてがブルッフマンによる「湖畔にて」と同じだったという事実に驚かされます。それが無意識的なものなのかどうかは分かりませんが、シューベルトの湖を表現する時の手法を知るうえで一つのヒントになるかもしれません。

【ゲーテの詩による「湖上にて(Auf dem See, D543)」冒頭】
Auf-dem-see 

6/8拍子
変ホ長調(Es-dur)
Mäßig

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

流麗に美しく歌うディースカウとムーアの演奏に聞きほれます。

●マティアス・ゲルネ(BR), アンドレアス・ヘフリガー(P)
Matthias Goerne(BR), Andreas Haefliger(P)

聞き手を優しく慰撫するようなゲルネの歌に引き付けられました。第2連2行目の"Wogenspiele"の"-spiele"に付けられる前打音が聞き慣れた音数より少なかったのは新全集がそうなっているのか、いつか確認してみたいと思います(装飾音の解釈の違いなのかもしれませんが)。名テノール、ヘフリガーの息子アンドレアスのピアノは1連から2連に移る間奏でいったん流れを止めていたのが興味深かったです。

●藤村実穂子(MS), ヴォルフラム・リーガー(P)
Mihoko Fujimura(MS), Wolfram Rieger(P)

藤村実穂子の磨かれた声の質感が速めのテンポ設定にもかかわらずしっとりと伝わってきます。ベテラン、リーガーもぴったり合わせていました。

●アンナ・プロハスカ(S), エリック・シュナイダー(P)
Anna Prohaska(S), Eric Schneider(P)

若手から中堅にさしかかったプロハスカは世界中の歌劇場から引く手あまたのソプラノです。声質に独自の色があって華がありますね。

●アニヤ・ハルテロス(S), ヴォルフラム・リーガー(P)
Anja Harteros(S), Wolfram Rieger(P)

ハルテロスの歌唱は円熟した彫りの深い解釈でとても魅力的でした。

●イアン・ボストリッジ(T), ジュリアス・ドレイク(P)
Ian Bostridge(T), Julius Drake(P)

若かりし頃のボストリッジの甘い美声を味わえる歌唱でした。"viele(多くの)"を繰り返す時の抑えた響きが美しかったです。

●ハインリヒ・シュルスヌス(BR), フランツ・ルップ(P)
Heinrich Schlusnus(BR), Franz Rupp(P)

1931年録音。シュルスヌスは所々音価を伸ばして甘美に歌っていました。

ちなみにエリー・アーメリング&ドルトン・ボールドウィン(Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P))も1983年にEtceteraレーベルにこの曲を録音しています。こちらのリンク先の11番目の矢印マークをクリックすると少しだけですが試聴できます。彼女らしい温かみのある歌唱です。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Franz von Bruchmann (Wikipedia)

Graham JohnsonによるAm See, D746の解説 (Hyperion Records)

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ゲルハルト・ヒュッシュ&ピエール・パラ/シューマン「ケルナー歌曲集」Op.35

今年が没後40年にあたるゲルハルト・ヒュッシュ(1901-1984)は20世紀前半、ドイツ歌曲演奏が耽美的で自在な響きにあふれていた頃、作品への厳格な姿勢による演奏スタイルでドイツ本国のみならず、日本の音楽ファンから崇められていたバリトン歌手です。ヒュッシュなくして、F=ディースカウのスタイルはなかったのではと思うほど、これまでの演奏家と異なる歌唱は当時の人たちにも新鮮に感じられたことは想像がつきます。

そんなヒュッシュですが、残された歌曲録音のレパートリーは当時の情勢もおそらく関係しているのでしょうがあまり多くなく、キルピネンやプフィッツナー、パウル・グレーナーを除くと比較的王道な作品の録音のみが残されたように感じます。

そんな中、おそらく放送録音でしょうが、シューマンのケルナー歌曲集Op.35全曲の音源がアップされていました。私の記憶ではヒュッシュはこの歌曲集を録音していなかったのではないでしょうか。ピエール・パラというピアニストも私ははじめて聞く名前です。
これは貴重な音源だと思います。アップしてくださった方に感謝です!
少し聞いてみましたが、ヒュッシュらしい清潔な響きで明晰なディクションも美しく、それぞれの歌曲の魅力が素晴らしく引き出されていたように感じました。これからじっくり聞いてみます。

●Gerhard Hüsch sings Kerner Lieder, op. 35 (1958)

チャンネル名:kadoguy(オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ますので注意!)

1958年3月9日放送

ゲルハルト・ヒュッシュ(BR)
ピエール・パラ(P)

シューマン/『ケルナー歌曲集』Op.35

I. 嵐の夜の喜び 0:00
II. 死ぬのだ、愛も喜びも 1:32
III. 旅の歌 6:44
IV. 新緑 9:52
V. 森林地帯への憧れ 11:54
VI. 亡き友の盃に寄せて 13:53
VII. 旅 17:54
VIII. ひそかな愛 19:22
IX. 問い 22:06
X. ひそかな涙 23:20
XI. 誰があなたを傷つけたのか 26:11
XII. 昔の響き 28:30

Gerhard Hüsch, baritone
Pierre Palla, piano

broadcast: March 9, 1958

Schumann: Kerner Lieder, Op. 35
I. "Lust der Sturmnacht" 0:00
II. "Stirb’, Lieb’ und Freud’" 1:32
III. "Wanderlied" 6:44
IV. "Erstes Grün" 9:52
V. "Sehnsucht nach der Waldgegend" 11:54
VI. "Auf das Trinkglas eines verstorbenen Freundes" 13:53
VII. "Wanderung" 17:54
VIII. "Stille Liebe" 19:22
IX. "Frage" 22:06
X. "Stille Tränen" 23:20
XI. "Wer machte dich so krank?" 26:11
XII. "Alte Laute" 28:30

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エリー・アーメリング91歳を祝して

我らがエリー・アーメリング(Elly Ameling)様が今日(2024.2.8)で91歳になられました。おめでとうございます!

昨年は90歳を記念してオーストラリアのEloquenceレーベルが彼女のPhilips、Deccaの録音の集大成をしてくれて、ファンとしては長年の夢がようやく叶って大喜びでした。しかし、実は彼女はCBS系(CBS Masterworks, CBS/Sony等)のレーベルにも多くの録音を残していて、それらは復活の兆しが見えません。
LPで聞けばいいのですが、いつかCDで復活してほしいと期待する気持ちもありますので、CBS系の未CD化のLPをここでまとめておきたいと思います。ちなみに下記のうち、メンデルスゾーン歌曲集のLPに関しては、アーメリングの公式YouTubeチャンネルにおそらく同一音源が全曲アップされていますので、興味のある方はそちらをぜひお聞きください(こちらのリンク先)。

この他に1977年9月27日~10月2日にかけてBenson and Hedges Music Festivalで催されたライヴ録音で様々なアーティストの演奏が聴ける3枚組のLPがあり、アーメリングはピーター・ピアーズ&ドルトン・ボールドウィンとシューベルトの二重唱曲2曲("Mignon und der Harfner - Nur wer die Sehnsucht kennt", "Licht und Liebe")を歌っていますが、これは幸いCD化されていて、各種サブスクでも聞けると思います(オリジナルのLP3枚組の曲とは異なるカップリングですが)。

Souvenirs

CBS
Rec. Nov. 1977, 30th Street Studio, NYC

Elly Ameling, soprano
Dalton Baldwin, piano

Rossini: La danza
Canteloube: Brezairola
Rodrigo: De los alamos
Émile Vuillermoz: Jardin d'amour
Rachmaninoff: Spring waters
Hahn: La dernière valse
Ives: Memories
Schönberg: Gigerlette
Yoshinao Nakada: Oyasuminasai

Purcell: Music for a while
John Weldon: The wakeful nightingale
Britten: O waly, waly
Frank Martin: Unter der Linden
Liszt: O lieb
Sibelius: Våren flyktar hastigt
Dutch folk song: Moeke
Emiel Hullebroeck: Afrikaans Wiegeliedjie

エリー・アメリンク・リサイタル

CBS/SONY
録音:1977年11月, 30th Street Studio, NYC

エリー・アメリンク(ソプラノ)
ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)

ロッシーニ:踊り
カントルーブ:子守歌
ロドリーゴ:お母さん、ポプラの林へ行ってきたよ
ヴュイエルモズ:愛の庭
ラフマニノフ:雪解け
アーン:ラストワルツ
アイヴズ:追憶
シェーンベルク:ギゲールレッテ
中田喜直:おやすみなさい

パーセル:憩いの音楽
ウェルドン:眠らないよるうぐいす
ブリトゥン:おお、あわれよ
マルタン:菩提樹の下で
リスト:おお、いとしい人よ
シベリウス:春は飛ぶが如く足早に
オランダ民謡:母
フレブレーク:アフリカーンスの子守歌

(※日本語表記はLPの表記に従いました)

Ameling_baldwin_souvenirs_20240128155801

 

THINK ON ME - AMELING Sings WORLD FAVORITE SONGS

CBS MASTERWORKS
Rec. Oct. 1979, Holland

Elly Ameling, soprano
Dalton Baldwin, piano

Lady John Scott (Old Scots air): Think on me
Jean Baptiste Weckerlin: Tambourin
Dutch folk song: Des winters als het regent
Vaughn Williams: Silent noon
Dvořák: Als die alte Mutter
Liszt: Es muss ein Wunderbares sein
Brahms: Mein Mädel hat einen Rosenmund
Wagner: Träume

Granados: El majo discreto
Guastavino: La rosa y el sauce
Joaquin Nin: Paño murciano
Xavier Montsalvatge: Canción de cuna para dormir a un negrito
Turina: Las locas pór amor
Poulenc: Les chemins de l'amour
Hahn: Le rossignol des lilas
Gershwin: By Strauss

エリー・アメリング愛唱集

CBS/SONY
録音:1979年10月, オランダ

エリー・アメリング(ソプラノ)
ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)

スコットランド民謡:わたしのことを思ってね
ヴェッケルリン:タンブラン
オランダ民謡:冬に雨が降ると
ヴォーン=ウィリアムズ:しずかな真昼
ドヴォルザーク:わが母の教え給いし歌
リスト:愛はすばらしいもの
ブラームス:乙女の唇はバラのように赤い
ワーグナー:夢

グラナドス:かしこいマホ
グァスタビーノ:バラと柳
ニン:パーニョ・ムルシアーノ
モンサルバーチェ:黒人の子守歌
トゥリーナ:恋狂い
プーランク:愛の小径
アーン:リラにくる夜ウグイス
ガーシュイン:シュトラウス礼讃

(※日本語表記はLPの表記に従いました)

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Fauré: La bonne chanson / Debussy: Chansons de Bilitis, Ariettes oubliées

CBS MASTERWORKS
Rec. Nov. 1979, New York

Elly Ameling, soprano
Dalton Baldwin, piano

Debussy: "Ariettes oubliées"
1) C'est l'extase langoureuse
2) Il pleure dans mon coeur
3) L'ombre des arbres
4) Paysages belges. Chevaux de bois
5) Aquarelles. Green
6) Aquarelles. Spleen

Debussy: "Trois chansons de Bilitis"
1) Flûte de Pan
2) La chevelure
3) Le tombeau des Naïades

Fauré: "La bonne chanson, Op. 61"
1) Une Sainte en son auréole
2) Puisque l'aube grandit
3) La lune blanche
4) J'allais par des chemins perfides
5) J'ai presque peur, en vérité
6) Avant que tu ne t'en ailles
7) Donc, ce sera par un clair jour d'été
8) N'est-ce pas?
9) L'hiver a cessé

アメリング/ドビュッシー、フォーレを歌う

CBS/SONY
録音:Nov. 1979, New York

エリー・アメリング(ソプラノ)
ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)

ドビュッシー:「忘れられた小唄」
1)ものうくも
2)巷に雨の降るように
3)木々の影
4)木馬
5)グリーン
6)憂鬱

ドビュッシー:「ビリチスの歌」
1)パンの笛
2)髪
3)ナイアードの墓

フォーレ:「優しい歌」
1)後光に映える聖女
2)あけぼのはひろがり
3)白い月
4)ぼくは放浪の道を歩いていた
5)ほんとにぼくは怖いくらいだ
6)おまえが消えゆく前に
7)さて、明るい夏の日
8)ねえ、どう?
9)冬は終った

(※日本語表記はLPの表記に従いました)

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Mendelssohn: Lieder

CBS MASTERWORKS
Rec. 4 Dec. 1979, 30th Street Studio, NYC

Elly Ameling, soprano
Rudolf Jansen, piano

Felix Mendelssohn:

Auf Flügeln des Gesanges, Op. 34-2
Gruss, Op. 19-5
Neue Liebe, Op. 19-4
Romanze, Op. 8-10
Bei der Wiege, Op. 47-6
Tröstung, Op. 71-1
Im Herbst, Op. 9-5
Frühlingslied, Op. 47-3
Der Mond, Op. 86-5

Der Liebende schreibt, Op. 86-3
Suleika, Op. 34-4 ("Ach, um deine feuchten Schwingen")
Suleika, Op. 57-3 ("Was bedeutet die Bewegung?")
Lieblingsplätzchen, Op. 99-3
Das erste Veilchen, Op. 19-2
Des Mädchens Klage
Nachtlied, Op. 71-6
Hexenlied, Op. 8-8

“歌の翼に”~アメリング/メンデルスゾーン歌曲集

CBS/SONY
録音:1979年12月4日 ニューヨーク、30番街スタジオ

エリー・アメリング(ソプラノ)
ルドルフ・ヤンセン(ピアノ)

メンデルスゾーン:

歌の翼に 作品34-2
挨拶 作品19-5
新しい愛 作品19-4
ロマンス 作品8-10
ゆりかごのそばで 作品47-6
慰さめ 作品71-1
秋に 作品9-5
春の歌 作品47-3
月 作品86-5

恋する女の手紙 作品86-3
ズライカ 作品34-4
ズライカ 作品57-3
お気に入りの場所 作品99-3
最初のすみれ 作品19-2
乙女のなげき (遺作)
夜の歌 作品71-6
魔女の歌 作品8-8

(※日本語表記はLPの表記に従いました)

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Schubert: Lieder & Der Hirt auf dem Felsen

CBS MASTERWORKS
P1980

Elly Ameling, soprano
Irwin Gage, piano
Guy Deplus, clarinet*
Julia Studebaker, horn**

Schubert:

Der Hirt auf dem Felsen, D.965*

Auf dem Strom, D.943**

Four Songs On Italian Texts
Guarda, che bianca luna, D.688/2
Mio ben ricordati, D.688/4
Non t'accostar all'urna, D.688/1
Da quel sembiante appresi, D.688/3

Four Songs Of The Seasons
Gott im Frühlinge, D.448
Die Sommernacht, D.289b
Herbst, D.945
Der Winterabend, D.938

アメリング/シューベルトをうたう

CBS/SONY
P1980

エリー・アメリング(ソプラノ)
アーウィン・ゲージ(ピアノ)
ガイ・デプルス(クラリネット)*
ジュリア・ステュードベイカー(ホルン)**

シューベルト:

岩上の牧童D.965*
流れをくだる船の上でD.943**

四つのカンツォーネ
見よ、何と青白き月よD.688/2
愛しきひとよ、忘るるなD.688/4
おくつきには近寄るなかれD.688/1
かの面立ちより知れるはD.688/3

四季それぞれの歌
春の神D.448
夏の夜D.289b
秋D.945
冬の夕べD.938

(※日本語表記はLPの表記に従いました)

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Christmas With Elly Ameling

CBS MASTERWORKS
P1980

Elly Ameling, soprano
Dalton Baldwin, piano*
Alda Stuurop, violin**
Janneke van der Meer, violin**
Linda Ashworth, viola**
Richte van der Meer, violoncello**, ***
Anthony Woodrow, double bass**
Anneke Uittenbosch, harpsichord**

Alessandro Scarlatti: Cantata pastorale per la nativita di nostro signore Gesu Christo**
Richard Strauss: Weihnachtsgefühl*
Reger: Mariä Wiegenlied, Op. 76, Nr. 52*
Wolf: Epiphanias*

Cornelius: "Weihnachtslieder, Op. 8"*
1) Christbaum
2) Die Hirten
3) Die Könige
4) Simeon
5) Christus der Kinderfreund
6) Christkind

Alphons Diepenbrock: Berceuse*,***
Joaquin Nin: Villancico castellano*
Joaquin Nin: Villancico vasco*

アメリング/クリスマスをうたう
CBS/SONY
P1980

エリー・アメリング(ソプラノ)
ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)*
アルダ・ストゥーロップ(バロック・ヴァイオリン)**
ジャネッケ・ヴァン・デル・メール(バロック・ヴァイオリン)**
リンダ・アッシュワース(バロック・ヴィオラ)**
リヒテ・ヴァン・デル・メール(バロック・チェロ)**
アンソニー・ウッドロー(コントラバス)**
アネッケ・ウィッテンボッシュ(ハープシコード)**
リヒテ・ヴァン・デル・メール(チェロ)***

アレッサンドロ・スカルラッティ:イエス・キリスト御降誕のためのパストラル・カンタータ**
R.シュトラウス:クリスマスの気分*
レーガー:マリアの子守歌*
ヴォルフ:主顕節*

コルネリウス:「クリスマスの歌」作品8*
1)クリスマス・ツリー
2)羊飼いたち
3)3人の王
4)シメオン
5)子供たちの友キリスト
6)幼な児キリスト

アルフォンス・ディーペンブロック:子守歌*,***
ホアキン・ニン:カスティーリャ地方のビリャンシーコ*
ホアキン・ニン:バスク地方のビリャンシーコ*

(※日本語表記はLPの表記に従いました)

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コルネーリウス/「一つの音(Cornelius: Ein Ton, Op. 3, No. 3)」(歌曲集『悲しみと慰め(Trauer und Trost, Op. 3)』より)を聞く

Ein Ton, Op. 3, No. 3
 一つの音

Mir klingt ein Ton so wunderbar
In Herz und Sinnen immerdar.
Ist es der Hauch, der Dir entschwebt,
Als einmal noch Dein Mund gebebt?
Ist es des Glöckleins trüber Klang,
Der Dir gefolgt den Weg entlang?
Mir klingt der Ton so voll und rein,
Als schlöß er Deine Seele ein.
Als stiegest liebend nieder Du
Und sängest meinen Schmerz in Ruh.
 一つの音がとても素晴らしく
 いつも私の心と感覚に響いている、
 それはあなたから漏れて消えた息吹だろうか、
 かつてまだあなたの口が震えていたときの。
 それとも悲しみの鐘の響きだろうか、
 道沿いにあなたの後ろで奏されたあの響き。
 私にはその音はとても豊かで澄んで響く、
 あたかもあなたの魂を包んでいるかのように。
 あなたが愛をこめて降りてきて
 私の苦しみを鎮めて歌ってくれるかのように。

詩:Peter Cornelius (1824-1874), "Ein Ton", appears in Gedichte, in 2. Zu eignen Weisen, in Trauer und Trost
曲:Peter Cornelius (1824-1874), "Ein Ton", op. 3 no. 3 (1854), from Trauer und Trost, no. 3

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ペーター・コルネーリウス(Peter Cornelius)は自作の歌曲のテキストをほとんど自分で手掛ける文才の持ち主でした。ヴァイオリニスト兼俳優としてキャリアを始め、音楽評論家として雑誌に投稿もしていました。多くの詩人(アイヒェンドルフ、ハイゼ)や音楽家(リスト、ヴァーグナー等)とも交流があり、代表作の歌劇『バグダッドの理髪師』の初演はリストが指揮をしました。歌曲の作曲が多く、特に歌曲集『クリスマスの歌Op. 8』は現在まで広く親しまれています。

今回取り上げる歌曲「一つの音(Ein Ton)」はカール・ヘスターマン(Carl Hestermann: 1804-1876)という商人・政治家に捧げられた6曲からなる歌曲集『悲しみと慰め(Trauer und Trost, Op.3)』の第3曲で、1854年11月にヴァイマル(Weimar)で自身のテキストによって作曲されました。

この歌曲、まず聞いていただくとあることに気づくと思いますので、最初に演奏を聞いてみましょう。

●フェリスィティ・ロット(S), グレアム・ジョンソン(P)
Felicity Lott(S), Graham Johnson(P)

チャンネル名:SOLRACPILINO EL IMPROVISADOR CUBANO(オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ますので注意!)

歌手は最初から最後までロ音(H)のみを歌います。これがテキストのタイトル"Ein Ton(一つの音=ある音)"に由来していることは間違いないでしょう。ピアノパートが陰影に富んだ美しいハーモニーを奏でる為、曲として全く違和感なく成立していますが、こうした作品は他の作曲家の前例が何かあるのでしょうか。少なくとも古今の歌曲においては私の知る限り他に例はないと思います。

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ピアノパートの前奏と後奏でも右手のみでロ音が2回奏でられますが、主人公が「あなた(Du)」と呼ぶ相手(おそらく恋人)が亡くなった際の葬列の鐘の音と想像されます。

歌声部はロ音しか歌わないので、あとはリズムによって変化をつけますが、基本的に重要な音節に長い音価を与えて語るようなリズムが与えられています。ただ、「Glöckleins trüber (Klang)(鐘の悲しい(響き))」と歌われるところのみシンコペーションのリズムになり、弔いの鐘への主人公の動揺を表現しているように思われます。

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音楽はホ短調(e-moll)が基本で、テキスト7-8行(あの響きはとても豊かであなたを包んでいるかのようだ)で畳みかけるように盛り上がり、亡き恋人の歌ってくれる響きが主人公の苦しみを和らげてくれるという9-10行でホ長調(E-dur)に転調して、主人公の気持ちが救われたことを暗示します。後奏で再びホ短調に戻り、後奏の最後のロ音が2回鳴り、主人公の中で恋人の響きが途切れることなく続いていくことを示しているかのようです。

Ex-3_20240203180701 

3/4拍子
ホ短調(e-moll)
Etwas bewegt (Poco mosso)

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヘルマン・ロイター(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hermann Reutter(P)

F=ディースカウは同音反復でも演劇的な素晴らしさが際立っています。作曲家ロイターのピアノも魅力的でした。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

プライは落ち着いたテンポでソット・ヴォーチェを美しく貫きます。ホカンソンの繊細な響きの美しさも聞きどころです。

●マーガレット・プライス(S), グレアム・ジョンソン(P)
Margaret Price(S), Graham Johnson(P)

プライスの豊かな声も素敵でした。ジョンソンも緩急自在でいい演奏でした。

●ロッテ・レーマン(S), ポール・ウラノウスキ(P)
Lotte Lehmann(S), Paul Ulanowsky(P)

レーマンの落ち着いたテンポで語るような歌が説得力がありました。ウラノウスキも細やかな響きでした。

●2024年が生誕150年(没後70年)のチャールズ・アイヴズによる作品「一つの音」
Charles Ives (1874-1954): Ein Ton
トマス・ハンプソン(BR), アルメン・グゼリミアン(P)
Thomas Hampson(BR), Armen Guzelimian(P)

アイヴズは「一つの」音に全くこだわっておらず、美しい哀感漂う作品に仕上がっていました。ハンプソン、グゼリミアンともに素晴らしい演奏です。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ペーター・コルネリウス(Wikipedia)

Peter Cornelius (Komponist)(Wikipedia)

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