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シューベルト/「あなたと二人きりでいると」(Schubert: Bei dir allein!, D 866/2)を聞く

Bei dir allein!, D 866/2
あなたと二人きりでいると!

Bei dir allein empfind' ich, daß ich lebe,
Daß Jugendmut mich schwellt
Daß eine heit're Welt
Der Liebe mich durchbebe;
Mich freut mein Sein
Bei dir allein!
 あなたと二人きりでいると、私は感じる、生きていることを、
 若い気力が膨らむことを、
 愛の明るい世界が
 私の全身を震わせることを。
 私はここにいることが嬉しい、
 あなたと二人きりでいると!

Bei dir allein weht mir die Luft so labend,
Dünkt mich die Flur so grün,
So mild des Lenzes Blüh'n,
So balsamreich der Abend,
So kühl der Hain,
Bei dir allein!
 あなたと二人きりでいると、風が爽快に吹いてきて
 野原はこんなに緑に見える、
 春にはとても穏やかに花咲き、
 夕暮れはよい香りで満ち溢れ、
 林はこんなにも涼しい、
 あなたと二人きりでいると!

Bei dir allein verliert der Schmerz sein Herbes,
Gewinnt die Freud an Lust!
Du sicherst meine Brust
Des angestammten Erbes;
Ich fühl' mich mein
Bei dir allein!
 あなたと二人きりでいると、苦痛はつらくなくなり、
 喜びや愉悦を得る!
 あなたは私の胸を守ってくれる、
 古来の財産である私の胸を。
 私を自分自身のものだと感じる、
 あなたと二人きりでいると!

詩:Johann Gabriel Seidl (1804-1875)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Bei dir allein!", op. 95 (Vier Refrainlieder) no. 2, D 866 no. 2 (1828?), published 1828 [ voice and piano ], Thaddäus Weigl, VN 2794, Wien

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シューベルトはザイドルの4つの詩に作曲し、『4つのリフレイン歌(Vier Refrainlieder, Op. 95)』として1828年8月13日に出版されました。作曲年については、ドイチュの目録(Franz Schubert. Thematisches Verzeichnis seiner Werke in chronologischer Folge)では1828年夏(?)と記載されていて、確定していないようです。自筆譜も4曲中第1曲のスケッチが残っているだけで、第2曲を含む他の曲は紛失してしまったそうです。その出版譜の2曲目に置かれたのが、「あなたのそばにいるだけで!(Bei dir allein!, D 866/2)」です。
ちなみに「リフレイン」というのは音楽や詩の繰り返しのことで、この4つの曲集では各連の最終行が同じ詩句になっていることを指していると思われます。この第2曲では各連最初の行も同じ詩句で始まります。

このザイドルのテキストは、手書き原稿の形でシューベルトに渡されたらしく、シューベルトの生前(1826年)に出版されたザイドルの詩集には掲載されていないそうです(ソースはこちら)。

詩の内容は、主人公があなたと一緒にいると生きていると感じ、愛の世界に身を震わせることを感じ、自然の素晴らしさを感じ、苦痛が喜びに変わると高らかに述べます。あなたというのはおそらく恋人のことなのでしょう。もちろん恋人に限らず人生において大切な家族・友人に置き換えて読んでもいいと思います。

シューベルトの曲は、冒頭の「速すぎず、だが燃えるように」という指示が示しているように、熱くたぎる急流のように情熱的に進んでいきます。全体はA-B-A'の形で、B(第2連)でホ長調(E-dur)に転調して自然に心癒される落ち着いた雰囲気に変わり、最後のA'で元の躍動感を取り戻します。聴く人をわくわくさせてくれる作品だと思います。

2/4拍子
変イ長調(As-dur)
Nicht zu geschwind, doch feurig (速すぎず、だが燃えるように)

●ヴェルナー・ギューラ(T), クリストフ・ベルナー(Fortepiano)
Werner Güra(T), Christoph Berner(Fortepiano)

喜びが爆発しているかのようなギューラとベルナーの急速なテンポ設定が聴き手をわくわくさせてくれます。

●クリスティアン・ゲアハーアー(BR), ゲロルト・フーバー(P)
Christian Gerhaher(BR), Gerold Huber(P)

ゲアハーアーのハイバリトンの声が軽快なリズムに乗っていてとても良かったです。フーバーもいいアンサンブルでした。

●クリストフ・ゲンツ(T), ヴォルフラム・リーガー(P)
Christoph Genz(T), Wolfram Rieger(P)

爽やかな声のテノール、Ch.ゲンツと、ベテランピアニストのリーガーの雄弁なピアノの緊密なアンサンブルに惹かれました。

●イアン・パートリッジ(T), ジェニファー・パートリッジ(P)
Ian Partridge(T), Jennifer Partridge(P)

イアン・パートリッジの素直で美しい歌唱に引き付けられました。また、妹のジェニファーの沸き立つようなピアノの素晴らしさは特筆すべきでしょう。

●アン・ソフィー・フォン・オッター(MS), ベンクト・フォーシュバリ(P)
Anne Sofie von Otter(MS), Bengt Forsberg(P)

オッターの安定した美声でこういう躍動的な歌を聴くのもいいなぁと思って聞いていました。フォーシュバリはテンポの揺れがなかなか激しいですが、最終的にはうまくまとめていました。

●グンドゥラ・ヤノヴィツ(S), チャールズ・スペンサー(P)
Gundula Janowitz(S), Charles Spencer(P)

ヤノヴィツのキャリア後期の録音で、肩の力の抜けた自然体の歌唱がなんとも心地よく感じられます。装飾音を除いて歌っているのもなんらかの考えがあってのことなのでしょう。

●カミラ・ティリング(S), パウル・リヴィニウス(P)
Camilla Tilling(S), Paul Rivinius(P)

ティリングのリリックな声による細やかな表情付けが素敵で、歯切れのよいリヴィニウスのピアノも良かったです。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヘルムート・ドイチュ(P)
Matthias Goerne(BR), Helmut Deutsch(P)

ゲルネはこういう曲では重くならず、絶妙な語り口で聞かせてくれます。ドイチュも素晴らしかったです。

ちなみにエリー・アーメリング&ドルトン・ボールドウィン(Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P))もEtceteraレーベルにこの曲を録音していて、国内盤として発売されたこともあります。こちらのリンク先の13番目の矢印マークをクリックすると少しですが試聴できます。アーメリングの歌は成熟した女性が若い恋人を相手にしているような余裕が感じられて個人的にとても好きな演奏です。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de: Bei dir allein, D 866 Opus 95 -2

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