エリー・アーメリング&フェーリックス・ドゥ・ノーベル/ヴォルフ作曲3つの歌曲
エリー・アーメリング(Elly Ameling)は1960年代にオランダを代表するピアニスト、指揮者のフェーリクス・ドゥ・ノーベル(Felix de Nobel)とコンサートや放送録音などで頻繁に共演していました。ノーベルは若く才能のある彼女の演奏を記録しておこうと思ったのかもしれません。アーメリングとノーベルは26歳差があり、この年齢差はF=ディースカウとムーアの年齢差、あるいはプライとアドルフ・シュタウホ(プライは若かりし頃ベルリンでのシュタウホ教授のリート発展史の講義で演奏する歌手として採用されて、毎週数曲暗譜で新曲を歌ったそうです)の年齢差と同じです。
歌曲のピアニストは一世代若い優れた歌手と共演することで、自身のこれまでの経験を伝えていこうとしているのかもしれません。
今回、ヴォルフの宗教的なテーマによる歌曲3曲の放送録音がアップされていたので、ご紹介します。
Elly Ameling sings Wolf lieder (1964)
Channel名:kadoguy (オリジナルの動画サイトはこちらのリンク先です:音が出ますので注意!)
放送日:1964年12月17日
エリー・アーメリング(soprano)
フェーリクス・ドゥ・ノーベル(piano)
フーゴー・ヴォルフ
I. ああ、この子の瞳は(『スペイン歌曲集』より) 0:00
II. 棕櫚の周りを漂う者たち(『スペイン歌曲集』より) 1:50
III. 眠れる幼子イエス(『メーリケ歌曲集』より) 4:58
broadcast: 17 December 1964
Elly Ameling, soprano
Felix de Nobel, piano
Hugo Wolf
I. "Ach, des Knaben Augen" 0:00
II. "Die ihr schwebet" 1:50
III. "Schlafendes Jesuskind" 4:58
1964年12月に放送された音源なので、クリスマスシーズンに合わせての放送だったのでしょう。アーメリング31歳頃の録音と思われます。イエスの瞳を聖母マリアが称える1曲目、イエスが眠っているので棕櫚のざわめきを天使に止めてほしいと訴える2曲目、イエスが「苦しみの木」の上で眠っている絵を見て、この先の光景がいかに移り変わっていくことかという3曲目、いずれも若かりしアーメリングの純粋無垢な歌唱がこのうえなく美しく、その美しさゆえに未来に起こることを知らずに眠っているイエスの宿命が切なく感じられます。
アーメリングが歌手としてのキャリアの一番最後(1991年9月)にスタジオで録音したCDがHyperionレーベルへのヴォルフの『スペイン歌曲集』『メーリケ歌曲集』の抜粋による1枚で、そこでは今回の動画の最初の2曲も歌われています。キャリアの最初と最後でどう歌が変わっているかを聞き比べるのもまた興味深いと思います(HyperionのCDは今のところいくつかの例外を除いて動画サイトにはアップされないので、こちらのリンク先のトラック1と8の音符マークをクリックすると一部だけですが試聴できます)。
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