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エリー・アーメリング&フェーリックス・ドゥ・ノーベル/ヴォルフ作曲3つの歌曲

エリー・アーメリング(Elly Ameling)は1960年代にオランダを代表するピアニスト、指揮者のフェーリクス・ドゥ・ノーベル(Felix de Nobel)とコンサートや放送録音などで頻繁に共演していました。ノーベルは若く才能のある彼女の演奏を記録しておこうと思ったのかもしれません。アーメリングとノーベルは26歳差があり、この年齢差はF=ディースカウとムーアの年齢差、あるいはプライとアドルフ・シュタウホ(プライは若かりし頃ベルリンでのシュタウホ教授のリート発展史の講義で演奏する歌手として採用されて、毎週数曲暗譜で新曲を歌ったそうです)の年齢差と同じです。
歌曲のピアニストは一世代若い優れた歌手と共演することで、自身のこれまでの経験を伝えていこうとしているのかもしれません。

今回、ヴォルフの宗教的なテーマによる歌曲3曲の放送録音がアップされていたので、ご紹介します。

Elly Ameling sings Wolf lieder (1964)

Channel名:kadoguy (オリジナルの動画サイトはこちらのリンク先です:音が出ますので注意!)

放送日:1964年12月17日

エリー・アーメリング(soprano)
フェーリクス・ドゥ・ノーベル(piano)

フーゴー・ヴォルフ
I. ああ、この子の瞳は(『スペイン歌曲集』より) 0:00
II. 棕櫚の周りを漂う者たち(『スペイン歌曲集』より) 1:50
III. 眠れる幼子イエス(『メーリケ歌曲集』より) 4:58

broadcast: 17 December 1964

Elly Ameling, soprano
Felix de Nobel, piano

Hugo Wolf
I. "Ach, des Knaben Augen" 0:00
II. "Die ihr schwebet" 1:50
III. "Schlafendes Jesuskind" 4:58

1964年12月に放送された音源なので、クリスマスシーズンに合わせての放送だったのでしょう。アーメリング31歳頃の録音と思われます。イエスの瞳を聖母マリアが称える1曲目、イエスが眠っているので棕櫚のざわめきを天使に止めてほしいと訴える2曲目、イエスが「苦しみの木」の上で眠っている絵を見て、この先の光景がいかに移り変わっていくことかという3曲目、いずれも若かりしアーメリングの純粋無垢な歌唱がこのうえなく美しく、その美しさゆえに未来に起こることを知らずに眠っているイエスの宿命が切なく感じられます。
アーメリングが歌手としてのキャリアの一番最後(1991年9月)にスタジオで録音したCDがHyperionレーベルへのヴォルフの『スペイン歌曲集』『メーリケ歌曲集』の抜粋による1枚で、そこでは今回の動画の最初の2曲も歌われています。キャリアの最初と最後でどう歌が変わっているかを聞き比べるのもまた興味深いと思います(HyperionのCDは今のところいくつかの例外を除いて動画サイトにはアップされないので、こちらのリンク先のトラック1と8の音符マークをクリックすると一部だけですが試聴できます)。

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コルネーリウス/東方の三王 (Cornelius: Die Könige, Op. 8/3)

Die Könige, Op. 8/3
 東方の三王

Drei Kön'ge wandern aus Morgenland;
Ein Sternlein führt sie zum Jordanstrand.
In Juda fragen und forschen die drei,
Wo der neugeborene König sei?
Sie wollen Weihrauch, Myrrhen und Gold
Dem Kinde spenden zum Opfersold.
 三王が東方から歩いてくる。
 ある小さな星が彼らをヨルダン川の川辺へと導く。
 ユダ王国で三王は尋ねて探す、
 産まれたての王は何処かと。
 彼らは乳香、没薬と黄金を
 供物としてこの子に与えたいと思っている。

Und hell erglänzet des Sternes Schein:
Zum Stalle gehen die Kön'ge ein;
Das Knäblein schauen sie wonniglich,
Anbetend neigen die Kön'ge sich;
Sie bringen Weihrauch, Myrrhen und Gold
Zum Opfer dar dem Knäblein hold.
 そしてその星が明るく輝くと
 厩舎へ三王は入っていく。
 彼らは喜んで幼な児を見つめ
 賛美して身をかがめる。
 彼らは供物としていとしい幼な児に
 乳香、没薬と黄金を捧げる。

O Menschenkind! halte treulich Schritt!
Die Kön'ge wandern, o wandre mit!
Der Stern der Liebe, der Gnade Stern
Erhelle dein Ziel, so du suchst den Herrn,
Und fehlen Weihrauch, Myrrhen und Gold,
Schenke dein Herz dem Knäblein hold!
 おお、人の子よ!誠実に歩み続けよ!
 三王は歩く、おお、一緒に行こう!
 愛の星、慈悲の星よ、
 あなたの目的地を明るく照らせ、あなたは主を探し、
 乳香、没薬と黄金がなくなったら
 あなたの心をいとしい幼な児に贈りたまえ。

詩:Peter Cornelius (1824-1874), "Die Könige", appears in Gedichte, in 2. Zu eignen Weisen, in Weihnachtslieder
曲:Peter Cornelius (1824-1874), "Die Könige", op. 8 no. 3 (1856), published 1871 [voice and piano], from Weihnachtslieder, no. 3, Leipzig, Fritzsch

●ペーター・シュライアー(Boy alto), カール=ディートフリート・アーダム(P)
Peter Schreier(Boy alto), Karl-Dietfried Adam(P)

●ペーター・シュライアー(T), ノーマン・シェトラー(P)
Peter Schreier(T), Norman Shetler(P)

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

●東方の三王(第1作)
Die Könige (1st Version)
クリスティーナ・ランツハマー(S), マティアス・ファイト(P)
Christina Landshamer(S), Matthias Veit(P)

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

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ブラームス/「打ち勝ちがたい(Unüberwindlich, Op. 72/5)」を聞く

Unüberwindlich, Op. 72/5
 打ち勝ちがたい

Hab' ich tausendmal geschworen
Dieser Flasche nicht zu trauen,
Bin ich doch wie neugeboren,
Läßt mein Schenke fern sie schauen.
 私は千回も誓った、
 この酒瓶を信用しないと、
 だが私は生まれたばかりのようになってしまう、
 私の酌人が遠くから瓶を見せてくると。

Alles ist an ihr zu loben,
Glaskristall und Purpurwein;
Wird der Propf herausgehoben,
Sie ist leer und ich nicht mein.
 すべては酒瓶をほめたたえるためのもの、
 クリスタルガラスに深紅のワイン、
 栓が抜かれると、
 瓶は空になり、私は自分を見失ってしまう。

Hab' ich tausendmal geschworen,
Dieser Falschen nicht zu trauen,
Und doch bin ich neugeboren,
Läßt sie sich ins Auge schauen.
 私は千回も誓った、
 この不実な女を信用しないと、
 だが私は生まれたての赤子になってしまう、
 この不実な女が目に入ると。

Mag sie doch mit mir verfahren,
Wie's dem stärksten Mann geschah.
Deine Scher' in meinen Haaren,
Allerliebste Delila!
 私に振る舞うというのならそうすればいい、
 最強の男の身にふりかかったように。
 おまえのはさみを私の髪に入れればいいさ、
 最愛のデリラよ!

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), "Unüberwindlich", first published 1860
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Unüberwindlich", op. 72 (Fünf Gesänge) no. 5 (1875), published 1877 [voice and piano], Berlin, Simrock

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ブラームスの歌曲はともすると晦渋でとっつきにくいと思われがちですが、この曲を聴けば考えが変わるかもしれません。
ゲーテのテキストによる「打ち勝ちがたい(Unüberwindlich, Op. 72/5)」は、酒と女を断とうと誓ったのに結局その誘惑に打ち勝てなかった男の告白がユーモラスに描かれています。

ゲーテは、旧約聖書の士師記13章〜16章に登場するサムソンの話に関心を持っていて、ヘンデルのオラトリオ『サムソン』も知っていたということです(HyperionレーベルのGraham Johnsonによる解説による:リンクをクリックすると解説書のPDFがダウンロードされます。この曲の解説は22~23ページです)。この詩の最後にデリラ(Delila)という女性の名前が出てきますが、彼女はサムソンの妻で、第4連2行目の最強の男(dem stärksten Mann)であるサムソンの弱点が髪にあることを本人から聞き、寝ている間に髪を剃り、ペリシテ人に売り渡すという聖書の記述に基づいています(サン=サーンスのオペラ『サムソンとデリラ(Samson et Dalila)』ではその話が描かれています)。この詩の第4連3行目「私の髪におまえのはさみを入れればいいさ(Deine Scher' in meinen Haaren)」というのは、弱点をさらして彼女の誘惑に逆らう心を自ら差し出してしまうわけですね。酒と女に打ち勝つと千回(tausendmal)も誓ったのに結局その沼から抜け出す気持ちは毛頭ないということが分かります。

ブラームスはこの歌曲を1875/6にヴィーンで作曲し、作品72の5曲目として1877年7/8月に出版されました。

ピアノの前奏の冒頭左手パートに「D.Scarlatti」と記載されていますが、ブラームスはこの箇所にドメニコ・スカルラッティのソナタ ニ長調, K. 223, L. 214(Sonata in D major, K. 223, L. 214)の冒頭を移調して引用しています。

ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ ニ長調, K. 223, L. 214(冒頭)

Scarlatti-sonata-k-223 

歌の冒頭も、スカルラッティの冒頭9音分の上下を再現しています(隣り合った音の音程は完全に同じではないですが、上下関係は一緒です)。
Unuberwindlich 

スカルラッティのソナタでは、この部分は冒頭にしかあらわれないのに対して、ブラームスはピアノ前奏、歌の冒頭と、さらに第2連、第4連の3行目でも引用し、しかも歌の冒頭箇所と違い、第2連、第4連の歌声部は隣り合った音の音程関係もスカルラッティの引用元と一致しています。何故この曲を引用したかについては分かりませんでした。ブラームスのお気に入りだったのでしょうか。
Photo_20231217151101 

曲の形式はA-B-A'-Bで、A'は前半がAの前半と異なり(後半2行はほぼ一緒です)、後半はAと一緒です。A'の直前のピアノパートに突然現れる左手バス音2つは、私の印象では裁判官が「静粛に」と言いながら打つ木槌のように感じました。

アッラ・ブレーヴェ (2/2拍子)
イ長調(A-dur)
Vivace

●ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ ニ長調, K. 223, L. 214
Domenico Scarlatti: Sonata in D major, K. 223, L. 214
スコット・ロス(Harpsichord)
Scott Ross(Harpsichord)

引用元のD.スカルラッティのソナタを聞いてみましょう。早世したスコット・ロスはD.スカルラッティの膨大な鍵盤楽器作品の全集を残しています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

歌、ピアノともにただただ脱帽の超名演!3連2行目の"Falschen(不実な女)"のディースカウの歌いぶりに注目してほしいです。

●テオ・アーダム(BR), ルドルフ・ドゥンケル(P)
Theo Adam(BR), Rudolf Dunckel(P)

アーダムのきっちりした持ち味と詩・曲のコミカルな要素が混ざり合い、ユニークな味わいを醸し出しています。

●トーマス・クヴァストホフ(BR), ユストゥス・ツァイエン(P)
Thomas Quasthoff(BR), Justus Zeyen(P)

クヴァストホフは豊かな響きで曲のコミカルさを自然に表現していたと思います。

●アンドレアス・シュミット(BR), ヘルムート・ドイチュ(P)
Andreas Schmidt(BR), Helmut Deutsch(P)

シュミットは真面目なキャラクターでまっすぐ表現しています。ドイチュの雄弁なピアノが素晴らしいです。

●マック・ハレル(BR), ブルックス・スミス(P)
Mack Harrell(BR), Brooks Smith(P)

マック・ハレル(1909-1960)は米国の往年のバリトン歌手で、私は初めて聞きましたがなかなかいいですね。J.ハイフェッツやR.リッチなど楽器奏者との共演のイメージが強いブルックス・スミスが歌手と共演した貴重な録音です。

●ジュリア・ブライアン(CA), ノエル・リー(P)
Julia Brian(CA), Noël Lee(P)

2004年録音。この曲の女声による歌唱は珍しいと思います。故ノエル・リーはソロも器楽アンサンブルも歌曲も満遍なく演奏するオールラウンダーでした。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

IMSLP:Keyboard Sonata in D major, K.223 (Scarlatti, Domenico)

Hyoerion Records: The Complete Songs, Vol. 6 - Ian Bostridge

Hyoerion Records: グレアム・ジョンソン(Graham Johnson)の解説書(PDFファイル)

サムソン(Wikipedia)

デリラ(Wikipedia)

サムソン (ヘンデル)(Wikipedia)

サムソンとデリラ (オペラ)(Wikipedia):サン=サーンスのオペラ

士師記(Wikipedia)

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ブラームス/鼓手の歌(Tambourliedchen, Op. 69/5)を聞く

Tambourliedchen, Op. 69/5
 鼓手の歌

Den Wirbel schlag' ich gar so stark,
Daß euch erzittert Bein und Mark,
Drum denk' ich ans schön Schätzelein,
Blaugrau,
Blau,
Blaugrau,
Blau
Ist seiner Augen Schein.
 俺はこんなにも強くドラムロールする、
 あなたたちの身も心も震わせるほどに、
 だから美しい恋人のことを思い出してしまうんだ、
 ブルーグレー
 ブルー
 ブルーグレー
 ブルー
 はあの子の瞳の輝き。

Und denk' ich an den Schein so hell,
Von selber dämpft das Trommelfell,
Den wilden Ton, klingt hell und rein:
Blaugrau,
Blau,
Blaugrau,
Blau
Sind Liebchens Äugelein.
 そして明るいあの輝きのことを思うと
 太鼓の皮がおのずと
 荒々しい音を和らげ、明るく澄んだ響きになる。
 ブルーグレー
 ブルー
 ブルーグレー
 ブルー
 は恋人のかわいい瞳の色。
 
詩:Karl August Candidus (1817 - 1872), "Tambourliedchen"
曲:Johannes Brahms (1833 - 1897), "Tambourliedchen", op. 69 (Neun Gesänge) no. 5, published 1877

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私がクラシック音楽を聞き始めた頃はまだ学生で小遣いも少なかった為、FMラジオから流れてくるコンサートのライヴ放送がとても有難かったものです。ザルツブルク音楽祭のシーズンが終わると歌曲のコンサートがいくつか放送され、それをカセットテープに録音して繰り返し聞いたりしていました。F=ディースカウがヘルとブラームスのコンサートを催した時の放送もラジカセの前に鎮座してタイミングよく録音ボタンを押すべく奮闘したものでした。ディースカウは一般的によく歌われるブラームス歌曲だけでなく当時はかなり珍しかった曲を散りばめたプログラミングだったのが印象的でしたが、そんな中「夜に飛び起きて(Wie rafft ich mich auf in der Nacht)」や「エオリアンハープに寄せて(An eine Äolsharfe)」のようなとびきり素晴らしい作品に出合えて夢中になって聴いていました。「鼓手の歌」もこのディースカウ&ヘルのザルツブルク・ライヴ放送で初めて聞き、軽快で楽しい曲だなぁと印象に残っていました。

カール・アウグスト・カンディドゥスのテキストによるこの歌曲は1877年3月にヴィーンで作曲され、同年8月に出版されました。恋人と遠く離れてドラムロールを奏でる主人公はその荒々しい振動につい恋人のことを思い出してしまいます。その恋人の目の色が青灰色であることをリズミカルに歌います。青灰色(Blaugrau)というのはリンク先のような色のことだそうです。そして第2連では彼女の目の輝きを思い出しているうちに荒々しい太鼓の響きが明るい澄んだ響きに変わっていくと歌います。演奏が恋人の目に影響されるということですね。なんとも微笑ましい情景にも思えますが、太鼓を叩いているということは戦場にいる可能性もあります。マーラーのいくつかの歌曲を想起するまでもなく、死と隣り合わせの地でつかの間の夢想に浸っているという情景なのかもしれません。そうだとするとこの詩がただの明るい歌ではなく、空元気を出して自らを奮い立たせている若い兵士の悲哀がこめられているのかもしれないとすら思えてきます。

このテキストに付けたブラームスの音楽には悲劇的な要素はありません。ドラムロールを模したピアノパートに乗って、威勢よく元気に歌われる2節の有節歌曲として作曲されました。勝利の凱旋の太鼓なのかもしれませんね。Blaugrau blauと繰り返される"(b)lau"と"(g)rau"が韻を踏んで心地よい響きを作っています。外国人の歌手にとっては"l"と"r"の訓練にもなりますね。

アッラ・ブレーヴェ (2/2拍子)
イ長調(A-Dur)
Sehr lebhaft (非常に生き生きと)

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

ディースカウは威勢のいいところと恋人を思い起こすところの表情の違いが印象的でした。バレンボイムの切れ味鋭いピアノは、この太鼓叩きが物凄い名手に聞こえてきます。

●エルンスト・ヘフリガー(T), ヘルタ・クルスト(P)
Ernst Haefliger(T), Hertha Klust(P)

ヘフリガーの折り目正しい歌が主人公の性格を想起させて楽しいです。

●テオ・アーダム(BR), ルドルフ・ドゥンケル(P)
Theo Adam(BR), Rudolf Dunckel(P)

アーダムの「武士のよう」と形容される佇まいがこの歌曲に気品を与えていました。ドゥンケルの雄弁なピアノも魅力的でした。

●シュテファニー・イラーニ(MS), ヘルムート・ドイチュ(P)
Stefanie Irányi(MS), Helmut Deutsch(P)

イラーニの表情の細やかさとドイチュの完璧な表現力で素敵な演奏でした。

●マリ=ニコル・ルミュー(CA), マイクル・マクマホン(P)
Marie-Nicole Lemieux(CA), Michael McMahon(P)

茶目っ気のある語り口がなんとも魅力的なルミューの歌でした。

●アンドレアス・シュミット(BR), ヘルムート・ドイチュ(P)
Andreas Schmidt(BR), Helmut Deutsch(P)

シュミットは丁寧な歌いぶりで、ここでもドイチュが見事なまでにドラムの響きを表現しています。

●ウィリアム・パーカー(BR), ウィリアム・ハッカビー(P)
William Parker(BR), William Huckaby(P)

ウィリアム・パーカーはEMIのプーランク歌曲全集に参加していた人ですが、ドイツリートも見事にこなしています。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Deutsche Biographie (Candidus, Carl August)

Münchener Digitalisierung Zentrum - Candidus, Karl August: Gedichte eines Elsässers (テキスト)

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エリー・アーメリングの京都観光映像

エリー・アーメリング(Elly Ameling)の公式YouTubeチャンネルでは、これまで彼女の歌音源や歌手としての心構えなどがアップされてきましたが、なんと今回は彼女自身の撮影による京都などの観光映像です。アーメリングさんが京都がお好きなのは知っていましたが、これほどの映像を撮っていたとは知らず、興味深い映像になっています。彼女自身は映っていませんが、アナウンスが入っていますので、彼女の声を聞きながら京都旅行をしている気分が味わえます。

●Elly Ameling films Byōdō-in (平等院)

Channel名:Elly Ameling(オリジナルのサイトはこちら:音が出ますので注意!)

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ブラームス:リートとゲザングOp.32(Brahms: Lieder und Gesänge, Op. 32)全曲

これまでブラームスの『リートとゲザングOp.32(Lieder und Gesänge, Op. 32)』を1曲ずつ聞いてきました。ちなみにリートとゲサングという言葉はどちらも「歌」を意味し、それほど厳密な区別がされているわけではないのですが、おおまかに言って前者が有節歌曲、後者が通作歌曲を指すことが多いようです。日本語でも同じような意味の言葉をつなげたりすることがありますが、それに近いのかなぁと思っています(あくまで個人的な所感です。違っていたらすみません)。

1. Wie rafft' ich mich auf in der Nacht
なんと私は夜中に飛び起きた
テキスト:August von Platen (1796-1835)
作曲:September 1864, Baden-Baden

2. Nicht mehr zu dir zu gehen
もう君のもとに行くまいと
テキスト:Georg Friedrich Daumer (1800-1875) "Hafis: Eine Sammlung persischer Gedichte"
作曲:September 1864, Baden-Baden

3. Ich schleich umher
私はあたりを忍び歩く
テキスト:August von Platen (1796-1835)
作曲:September 1864, Baden-Baden

4. Der Strom, der neben mir verrauschte
僕のそばを流れ去った大河
テキスト:August von Platen (1796-1835)
作曲:September 1864, Baden-Baden

5. Wehe, so willst du mich wieder
つらいことに、こうしてあなたは私を再び
テキスト:August von Platen (1796-1835)
作曲:September 1864, Baden-Baden

6. Du sprichst, dass ich mich täuschte
きみは言う、僕が思い違いをしていたと
テキスト:August von Platen (1796-1835)
作曲:September 1864, Baden-Baden

7. Bitteres zu sagen, denkst du
辛辣なことを言ってやろうときみは思っている
テキスト:Georg Friedrich Daumer (1800-1875) "Hafis: Eine Sammlung persischer Gedichte"
作曲:September 1864, Baden-Baden

8. So steh'n wir, ich und meine Weide
こうして僕らは立っている、僕と僕の喜びである彼女は
テキスト:Georg Friedrich Daumer (1800-1875) "Hafis: Eine Sammlung persischer Gedichte"
作曲:September 1864, Baden-Baden

9. Wie bist du, meine Königin
なんとあなたは、僕の女王よ
テキスト:Georg Friedrich Daumer (1800-1875) "Hafis: Eine Sammlung persischer Gedichte"
作曲:September 1864, Baden-Baden

9曲まとめてLPやCDに録音している音源をリスト化してみました。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)
レーベル:His Master's Voice; Angel Records; EMI Electrola
録音:21-22 March 1964, Studio Zehlendorf
Discogs

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)
レーベル:Deutsche Grammophon
録音:March 1978, Studio Lankwitz, Berlin
Deutsche Grammophon - Complete Lieder Recordings on DG - CD 7
Discogs

●オラフ・ベーア(BR), ジェフリー・パーソンズ(P)
Olaf Bär(BR), Geoffrey Parsons(P)
レーベル:EMI; ETERNA
録音:April 1987, Studio Lukaskirche, Dresden
Discogs

●ジョゼ・ヴァン・ダム(BR), マチェイ・ピクルスキー(P)
José van Dam(BR), Maciej Pikulski(P)
レーベル:Forlane
録音:décembre 1994, Théâtre Jean Lurçat d'Aubusson
Discogs
Amazon

●アンドレアス・シュミット(BR), ヘルムート・ドイチュ(P)
Andreas Schmidt(BR), Helmut Deutsch(P)
レーベル:cpo (Brahms - Complete Edition, Vol. 2)
録音:August, December 1996
Discogs

●トーマス・クヴァストホフ(BR), ユストゥス・ツァイエン(P)
Thomas Quasthoff(BR), Justus Zeyen(P)
レーベル:Deutsche Grammophon
録音:Oct. 1999, Teldec Studio, Berlin
Deutsche Grammophon

●イアン・ボストリッジ(T), グレアム・ジョンソン(P)
Ian Bostridge(T), Graham Johnson(P)
レーベル:Hyperion Records (Brahms - The Complete Songs, Vol. 6)
録音:3-5 June 2013, All Saints' Church, East Finchley, London
Hyperion Records

●マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)
Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P)
レーベル:harmonia mundi
録音:April 2013 & December 2015, Teldex Studio Berlin
Discogs

●サイモン・ウォルフィッシュ(BR), エドワード・ラッシュトン(P)
Simon Wallfisch(BR), Edward Rushton(P)
レーベル:Resonus Classics (Songs of Loss and Betrayal)
録音:25-27 November 2019, St John the Evangelist, Oxford
Resonus Classics

●ヤニナ・ベヒレ(MS), マルクス・ハドゥラ(P)
Janina Baechle(MS), Markus Hadulla(P)
レーベル:Capriccio
Capriccio
Discogs

●クリストフ・プレガルディアン(T), ウルリヒ・アイゼンローア(P)
Christoph Prégardien(T), Ulrich Eisenlohr(P)
レーベル:NAXOS (Brahms: Complete Songs, 1)
録音:21-24 September 2020, Hans-Rosbaud-Studio, SWR, Baden-Baden
NAXOS

●コンスタンティン・クリンメル(BR), エレーヌ・グリモー(P)
Konstantin Krimmel(BR), Hélène Grimaud(P)
レーベル:Deutsche Grammophon (For Clara)
録音:28-30 August 2022, Turbine Hall at Lake Stienitz
Universal Music Japan

★抜粋だが曲数が多い録音

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヘルタ・クルスト(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hertha Klust(P)
レーベル:His Master's Voice; Angel Records
録音:25 May 1955, Berlin-Zehlendorf
Op.32/1,2,3,4,6,5,9
Discogs

●リュート・ファン・デル・メール(BR), ルドルフ・ヤンセン(P)
Ruud van der Meer(BR), Rudolf Jansen(P)
レーベル:ottavo
録音:21,22 & 27 Dec. 1986, 'de Doelen', Rotterdam
Op.32/1,2,3,4,5,6,9
Muziekweb

★YouTubeで聴けるOp.32全曲

●ヴォルフガング・シュヴァイガー(BR), バルバラ・モーザー(P)
Wolfgang Schwaiger, Bariton - Brahms op 32
Wolfgang Schwaiger, baritone
Barbara Moser, piano

Channel名:Wolfgang Stefan Schwaiger(オリジナルの動画サイトはこちら:音が出ますので注意!)

●Hélène Grimaud, Konstantin Krimmel – Brahms: Lieder & Gesänge Op. 32: 7. Bitteres zu sagen denkst du

Channel名:Deutsche Grammophon - DG (オリジナルのサイトはこちら:音が出ますので注意!)

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(参考)

Hyperion Records (Lieder und Gesänge, Op 32)

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クリスマスファンタジー(Kerstfantasie):エリー・アーメリング&ベルナルト・クラウセン

動画サイトでこんなクリスマスソング集を見つけました。1960年頃の録音で、オランダ語のクリスマスソングをメドレーで歌っています。
数曲をアーメリング、クラウセン、そしてほぼ全曲を合唱団(名前は不明)が歌っています。各曲を鈴の音でつないでいるのもクリスマスらしくていいですね。アーメリングはまだまだファンの私でも知らないような録音が出てきて、驚かされます。

Elly Ameling & Bernard Kruysen sing "A Christmas Fantasy"

Channel名:kadoguy(オリジナルのサイトはこちら:音が出ますので注意!)

クリスマス・ファンタジー

エリー・アーメリング(ソプラノ)
ベルナルト・クラウセン(バリトン)
合唱団
管弦楽団
ユーホー・ドゥ・フロート(指揮)

Kerstfantasie (Christmas Fantasy)

Elly Ameling(S)
Bernard Kruysen(BR)
Koor
Orkest
Hugo de Groot(C)

Decca recording (circa 1960)

0:00- "Komt allen tzamen" (Chor)
1:24- "Er is een kindeke geboren op d'aard" (Kruysen & Chor)
2:38- "Nu syt wellecome" (Ameling & Chor)
3:57- "Hoe leit dit Kindeke" (Kruysen, Ameling & Chor)
5:44- "O verblijdende" (Chor)
6:56- "Een roze, fris ontloken" (Chor)
8:14- "De herderkens lagen bij nachte" (Ameling)
9:48- "Stille Nacht, heilige Nacht" (Chor)
11:21- "Gloria in Excelsis Deo" (Kruysen, Ameling & Chor)
12:20- "Ere zij God" (Ameling, Kruysen & Chor)

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ブラームス/「なんとあなたは、僕の女王よ(Wie bist du, meine Königin, Op. 32, No. 9)」を聞く

Wie bist du, meine Königin, Op. 32, No. 9
 なんとあなたは、僕の女王よ

Wie bist du, meine Königin,
Durch sanfte Güte wonnevoll!
Du lächle nur, Lenzdüfte wehn
Durch mein Gemüte, wonnevoll!
 なんとあなたは、僕の女王よ、
 穏やかで親切な気質によって喜びに満ちていることか!
 あなたが微笑むだけで、春の香りが
 僕の心を吹き抜けて、喜びに溢れるのだ!

Frisch aufgeblühter Rosen Glanz,
Vergleich ich ihn dem deinigen?
Ach, über alles, was da blüht,
Ist deine Blüte wonnevoll!
 咲いたばかりのバラの輝き、
 それを私はあなたの輝きと比べようか。
 ああ、ここに咲いているすべてにまさって
 あなたという花は喜びにあふれている!

Durch tote Wüsten wandle hin,
Und grüne Schatten breiten sich,
Ob fürchterliche Schwüle dort
Ohn Ende brüte, wonnevoll!
 荒涼とした砂漠を歩いて行くと、
 緑の陰が広がっている、
 そこではひどい蒸し暑さに
 果てしなく襲われているのに、喜びに満ちている!

Laß mich vergehn in deinem Arm!
Es ist in ihm ja selbst der Tod,
Ob auch die herbste Todesqual
Die Brust durchwüte, wonnevoll!
 僕をあなたの腕の中で死なせてください!
 その腕の中では、死さえも、
 最もつらい死の苦痛が
 胸を荒れ狂っていたとしても、喜びいっぱいなのだ!

詩:Georg Friedrich Daumer (1800-1875), no title, appears in Hafis - Eine Sammlung persischer Gedichte, in Hafis, first published 1846
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Wie bist du, meine Königin", op. 32 (Neun Lieder und Gesänge) no. 9, published 1865 [ voice and piano ], Winterthur, Rieter-Biedermann

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ダウマーとプラーテンの詩によるブラームスの『リートとゲザング(Lieder und Gesänge)』Op. 32の9曲目(最終曲)はハーフィズの詩のダウマー独訳による「なんとあなたは、僕の女王よ(Wie bist du, meine Königin, Op. 32, No. 9)」です。ブラームスの全歌曲の中で最もよく歌われる人気の高い作品です。

テキストは、主人公の愛する「わが女王様」(恋人をたてた呼び方とも実際に高貴な身分の女性とも解釈できると思います)がいかに喜びに満ちているかを描いています。まず穏やかな気質を褒め、次に微笑みを称え、さらに彼女の輝きはどんなバラにもまさっていて、猛烈に蒸し暑く生き物もいないような荒地でも喜びにあふれていて、あなたの腕の中では死ぬ時でさえ喜びいっぱいだと言います。Op.32の直前の2曲と異なり、分かりやすいラブソングですね。

ブラームスは、歌冒頭の3音を展開した美しい5小節のピアノ前奏で曲を始め、同じ音楽を間奏でも用います。
歌はA-A'-B-A''の変形有節形式で、死んだような荒地を歩く時の様子を描いた第3連のみ暗い影がさしますが、全体的に甘い(dolceが2回指示されます)雰囲気で進んでいきます。ピアノは歌と同音(厳密には1オクターブ上)をなぞったり、デュエットを奏でたり、歌を先取りしたりして、付いたり離れたりの塩梅がなかなか素敵です。

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この曲のピアノパートの中に、1つの音の上にクレッシェンドとデクレッシェンドが付いている箇所がいくつかあります。デクレッシェンドは何もしなくても打鍵した後は減衰していくので問題ないとして、クレッシェンドはどう解釈したらよいのでしょう。一つの可能性としてはアルペッジョにしたり、左手を右手より少し先に弾くことで音数が増えることによるクレッシェンドの効果が多少出るのではないかと思われます。

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ブラームスは言葉に対する音楽のつけ方が無頓着と言われがちで、実際そういう面もあるのですが、この曲の1,2,4連の各2行目冒頭を見てみましょう。

1連
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2連
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3連
5a 
5b 

1,2連は冒頭の言葉(durch, vergleich)の前に十六分休符があり、3連(es)は休符なしでいきなり八分音符で歌うようになっています。
1連のdurchは前置詞、2連のvergleichのver-は弱音節であるのに対して、3連のesは主語(意味のない形式的な主語ですが)なので、3連は後続の音節と同じ音価(長さ)を与えているのだと思われます。ちょっとしたところにブラームスのこだわりが見えて興味深いです。

第3節のピアノパートにも興味深いところがあります。
詩行「Durch tote Wüsten wandle hin(荒涼とした砂漠を歩いて行くと)」のピアノパートは右手と左手がユニゾン(同じ音。厳密には1オクターブの関係)で進み、和音の飾りのない丸裸な音を用いることで、死んだように何もない砂漠をとぼとぼ歩く様子が浮かんでくるのではないでしょうか。
さらに「Ob fürchterliche Schwüle dort(そこではひどい蒸し暑さに)」という箇所の各小節冒頭の左手の2音が9度音程という不協和音で、そのうえsf(スフォルツァンド)で強調され、右手はシンコペーションを刻み、否が応でも蒸し暑さの不快感が増幅される仕組みになっています。
こういうブラームスの仕掛けを知るとさらに曲を聴くのが楽しくなるのではないでしょうか。

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この曲は古今東西の名歌手、名伴奏者たちが多く録音していますので、下に挙げたものはあくまで一例に過ぎません。他にも優れた録音があると思いますので、動画サイトや音楽アプリ、CDなどで聞いてみるのもいいかもしれません。

3/8拍子
変ホ長調(Es-Dur)
Adagio

●ズィークフリート・ローレンツ(BR), ヘルベルト・カリガ(P)
Siegfried Lorenz(BR), Herbert Kaliga(P)

なんと柔らかい声!!ローレンツが1970年にブダペストのコンクールに出場した時の録音らしいです。彼は後にシェトラーと素晴らしいブラームス歌曲集の録音をリリースし、そこでの演奏も素晴らしいですが、初期のこの若々しい声はこの作品の"wonnevoll(喜びに満ちた)"を見事に表現していると思います。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

プライのこの温かい美声で聞いてしまうと、彼のために書かれた曲のように思えてきます。最終節の"wonnevoll"のソットヴォーチェをお聞き逃しなく!ホカンソンが実に美しく歌っているのも聞きものです。

●ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

ホッターの歌は本当に「喜び」があふれ出している名唱です!!ムーアは滴がしたたり落ちるような美しい音で、聞きほれます。このコンビのブラームス歌曲集(EMI)は以前から高く評価されてきましたので、おすすめです。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ヘルタ・クルスト(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Hertha Klust(P)

ディースカウ初期の甘美な歌が聞けます。

●コンスタンティン・クリンメル(BR), エレーヌ・グリモー(P)
Konstantin Krimmel(BR), Hélène Grimaud(P)

グリモーが思い入れ強めにテンポを揺らし、両手のタイミングの意図的なずらし(歌曲ピアニストがよく用いる手法)で彩る中、クリンメルは若いつやのある声で爽やかに歌っていて、両者の持ち味の違いがいい方向にいっていたと思います。

●ミヒャエル・フォレ(BR), カール=ペーター・カンマーランダー(P)
Michael Volle(BR), Karl-Peter Kammerlander(P)

フォレは深みと爽快さの両方を併せ持った声をしていて、惹きつけられました。

●テオ・アーダム(BS), ルドルフ・ドゥンケル(P)
Theo Adam(BR), Rudolf Dunckel(P)

アーダムは気品ある実直な歌いぶりが真に感動的で、リート歌手として再評価されてほしい歌手の一人です。ドゥンケルとも長年の共演で見事なアンサンブルを聞かせてくれます。

●トーマス・クヴァストホフ(BR), ユストゥス・ツァイエン(P)
Thomas Quasthoff(BR), Justus Zeyen(P)

クヴァストホフの律儀な歌いぶりがツァイエンの丁寧なサポートと共にこの主人公によく合っているように感じました。

●マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)
Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P)

抑制した表現を聞かせるゲルネは静かな情熱を秘めた歌唱と感じました。エッシェンバハも響きが美しかったです。

●ラファエル・フィンガーロス(BR), サーシャ・エル・ムイスィ(P)
Rafael Fingerlos(BR), Sascha El Mouissi(P)

2023年5月21日Gmundenでのライヴ映像とのことです。演奏する姿を見ながら聞くと、この詩と音楽が訴えかけてくる力の強さをさらにまざまざと感じます。両者ともいい演奏でした。

●ゲルハルト・ヒュッシュ(BR), ハンス・ウード・ミュラー(P)
Gerhard Hüsch(BR), Hanns Udo Müller(P)

ヒュッシュは真摯な歌ですね。ドイツ語のディクションの格調の高さも素晴らしいです。

●ハインリヒ・シュルスヌス(BR), ゼバスティアン・ペシュコ(P)
Heinrich Schlusnus(BR), Sebastian Peschko(P)

シュルスヌスの流麗な歌は、魔術的です。

●ロッテ・レーマン(S), ポール・ウラノウスキー(P)
Lotte Lehmann(S), Paul Ulanowsky(P)

感情豊かなレーマンの歌は"wonnevoll"のポルタメントに彼女らしさがよくあらわれていました。

●フランツ・シュタイナー(BR), ピアニスト名不詳
Franz Steiner(BR), unidentified pianist

1911年録音。ピアニストの名前が記載されない時代の録音。この時代の演奏様式を知る意味でも貴重な録音だと思います。伸縮自在でのめり込むような歌ですね。

●ピアノパートのみ(piano: Mariya Broytman)
Johannes Brahms, Wie bist du, meine Königin, E flat major, Piano Accompaniment, no voice (piano: Mariya Broytman)

Channel名:accompaniment piano(元のサイトはこちら:リンク先は音が出ますので注意!)
ピアノパートにテキストの内容をいかに反映させているかが分かります。

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(参考)

The LiederNet Archive (テキスト)

IMSLP (楽譜)

Wikipedia (Georg Friedrich Daumer) (英語)

Wikipedia (Georg Friedrich Daumer) (独語)

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