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ドルトムント国際シューベルトコンクール、リート ドゥオ2023(Internationaler Schubert-Wettbewerb Dortmund: LiedDuo 2023)

いつだか覚えていないのですが、なんらかの機会にYouTubeでドルトムント国際シューベルトコンクールの公式チャンネルを登録していたら、秋の夜長に次々とリートドゥオ部門のコンクール予選の動画がアップされ、リート大好き人間としては睡眠不足になりながらもつまみ食いならぬつまみ聞きをしていました。
プログラムは公式サイトには掲載されているのですが、動画サイトの概要欄にも動画にも表示されていないので、次にどの曲を演奏するのか分からない状態で聞くという珍しい体験をしました。そしてそれがまたとても面白かったです。プログラムがシューベルトとシューマンの歌曲に限定されていたので、馴染みのある曲が多く、最近のコンクールのお披露目曲の傾向も分かって楽しいひとときでした(ひと昔前にはポピュラーではなかった歌曲がこういうコンクールで選ばれるようになっていたのは、動画や配信の普及なども影響しているのでしょうが、良い傾向だと思いました)。
この記事を書いている9月30日の日本時間17:30に本選が始まるので楽しみです。とはいえ、アーカイブとして残してくれるようなので、リアルタイムで視聴しなくても大丈夫です。

今回ながら聞きして、演奏者の情報(名前も経歴も)や演奏する曲の情報を知らないままコンクールの動画を次々見ることの面白さに目覚めてしまいました。
カメラワークは若干注文したくなるところもないわけではないのですが(ステージ上にまっすぐ設置された黒い線(マイク?)が時々歌手の顔にかかってしまい、もったいない気がします)、こうして動画で中継してくれて、さらにアーカイブで残してくれるだけでも有難いです。
誰が優勝するかという興味よりも、今時の演奏者たちが、どんな曲をどんなふうに聞かせてくれるのかが楽しいです。料理屋さんのお任せ料理気分を味あわせてくれているかのようです。

日本人の方も出場されていて、Duo Drole & UtsumiのピアニストHiroko Utsumiさん、Duo Keegan & AokiのピアニストYuri Aokiさん、Duo Matthews & YamauchiのピアニストMayu Yamauchiさん、Duo Sakamoto & DeguchiのバリトンTatsuki Sakamotoさんと、ピアニストAozora Deguchi さんの5名の方の名前が挙がっています。
Duo Sakamoto & Deguchiのお二人は2次予選まで行き、大健闘されたと思います。
審査員は大変だろうなと私などは思ってしまいます。専門的な見地から聞けば差はあるのでしょうが、こうしてシューベルトやシューマンの歌曲を次々聞かせてくれると、それだけで幸せになってしまい、順位付けなど私にはとても無理だろうなと思いながら聞いていました。でも好きな声・歌い方、好きなピアノの響き・弾き方というのはありますけれどね。

興味のある方はちらっとでも覗いてみてはいかがでしょう。

コンクールの日程
コンクールの始める4日前には若手のホープのメゾソプラノ、アナ・ルツィア・リヒター(Anna Lucia Richter)と、弦楽器も演奏するピアニスト、アミエル・ブッシャケヴィツ(Ammiel Bushakevitz)(今回もドレーライアーを演奏したそうです)の開幕コンサートが催されたようで、これも聞いてみたかったです。
コンクールは1次予選が9月27日~28日、2次予選が29日~30日で、30日の最後の演奏の後に結果発表となり、翌日10月1日に受賞者の記念コンサートが開かれるようです。

出場者全員の出身地、生年と演奏曲

1次予選(36組)
Dienstag, 26.09.2023
Mittwoch, 27.09.2023

●1次予選1日目 午前

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

(下記の時間は現地時間ですので、お目当てのドゥオを聞く場合は11:00が動画の最初で1組15分と計算して目盛りを進めてください)
11:00 Duo Ryu & Park
11:15 Duo Theis & Wiesensee
11:30 Duo Theil & van Sas
11:45 Duo Liu & Ma
12:00 – 12:15 Pause(休憩)
12:15 Duo Wohlgemuth & Park
12:30 Duo Bienert & Lee
12:45 Duo Conrad & Prinz
13:00 – 13:15 Pause
13:15 Duo Clement & Fuß
13:30 Duo Keegan & Aoki
13:45 Duo Tappert & Männi

●1次予選1日目 午後

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

16:00 Duo Vogler & Issler
16:15 Duo Sandberg & Ritzmann
16:30 Duo Drole & Utsumi
16:45 – 17:00 Pause
17:00 Duo Gray & Gagliano
17:15 Duo Wei & Bae
17:30 Duo Sakamoto & Deguchi
17:45 – 18:00 Pause
18:00 Duo Oportus & Li
18:15 Duo Undritz & Shin
18:30 Duo Fußeder & Itgenshorst

●1次予選2日目 午前

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

11:00 Duo Lee & Lee
11:15 Duo Schmidt & Woo
11:30 Duo Baikoff & Park
11:45 Duo Matthews & Yamauchi
12:00 – 12:15 Pause
12:15 Duo Palmer Nordfors & Noh
12:30 Duo Paganetti & Staubach
12:45 Duo Hewat-Craw & Guo
13:00 – 13:15 Pause
13:15 Duo Chen & Cui
13:30 Duo Barbier Serrano & Fittipaldi
13:45 Duo Wiszniewski & Vaterl

●1次予選2日目 午後

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

15:45 Duo Turkheimer & Ochoa Gaxiola
16:00 Duo Schöler & Focarelli
16:15 Duo Jost & Ochsendorf
16:30 Duo Müller & Gebhardt
16:45 – 17:00 Pause
17:00 Duo Fheodoroff & Salas Chia
17:15 Duo Abel & Klein
17:30 Duo Duscher & Stojkoska
17:45 Juryabstimmung, im Anschluss Verkündung

2次予選(21組)
Donnerstag, 28.09.2023
Freitag, 29.09.2023

●2次予選1日目 午前

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

11:00 Duo Duscher & Stojkoska
11:30 Duo Wohlgemuth & Park
12:00 Duo Bienert & Lee
12:30 – 12:45 Pause
12:45 Duo Conrad & Prinz
13:15 Duo Vogler & Issler

●2次予選1日目 午後

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

15:00 Duo Sandberg & Ritzmann
15:30 Duo Sakamoto & Deguchi
16:00 – 16:15 Pause
16:15 Duo Undritz & Shin
16:45 Duo Fusseder & Itgenshorst
17:15 – 17:30 Pause
17:30 Duo Schmidt & Woo
18:00 Duo Baikoff & Park

●2次予選2日目 午前

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

11:00 Duo Palmer Nordfors & Noh
11:30 Duo Paganetti & Staubach
12:00 Duo Hewat-Craw & Guo
12:30 – 12:45 Pause
12:45 Duo Barbier Serrano & Fittipaldi
13:15 Duo Wiszniewski & Vaterl

●2次予選2日目 午後

動画サイト上のリンク先(音が出ます)

15:00 Duo Jost & Ochsendorf
15:30 Duo Müller & Gebhardt
16:00 – 16:15 Pause
16:15 Duo Fheodoroff & Salas Chia
16:45 Duo Abel & Klein
17:15 Duo Theil & van Sas
17:45 Juryabstimmung und im Anschluss Verkündung

本選出場者(9組)
Samstag, 30.09.2023
Duo Baikoff & Park
Duo Conrad & Prinz
Duo Duscher & Stojkoska
Duo Jost & Ochsendorf
Duo Paganetti & Staubach
Duo Schmidt & Woo
Duo Theil & van Sas
Duo Vogler & Issler
Duo Wohlgemuth & Park

●本選 午前

(※日本時間9月30日17:30に始まります)
動画サイト上のリンク先(音が出ます)

11:00 Duscher & Stojkoska
11:45 Wohlgemuth & Park
12:30 – 12:45 Pause
12:45 Jost & Ochsendorf
13:30 Conrad & Prinz

●本選 午後

(※日本時間9月30日22:30に始まります)
動画サイト上のリンク先(音が出ます)

15:45 Baikoff & Park
16:30 Schmidt & Woo
17:15 – 17:30 Pause
17:30 Paganetti & Staubach
18:15 Vogler & Issler
19:00 – 19:15 Pause
19:15 Theil & van Sas (急病の為、棄権)
Im Anschluss Juryabstimmung und Verkündung der Preisträger(続いて、審査員の投票と受賞者の発表)

結果発表

第1位:Duo Wohlgemuth & Park
Meredith Wohlgemuth ソプラノ | アメリカ
Jinhee Park ピアノ | 韓国

第2位:Duo Schmidt & Woo
Giacomo Schmidt バリトン | ドイツ
Jong Sun Woo ピアノ | 韓国

第3位:Duo Paganetti & Staubach
Konstantin Paganetti バリトン | ドイツ
Franziska Staubach ピアノ | ドイツ

最優秀リートピアニスト賞:Jinhee Park
Jinhee Park ピアノ | 韓国

審査員

Ingeborg Danz (Deutschland | Juryvorsitzende)
インゲボルク・ダンツ(審査委員長):メゾソプラノ歌手。バロック音楽から現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、特にバッハの演奏は彼女の経歴の中心となっている。

Elisabeth Ehlers (Deutschland)
エリーザベト・エーレルス:アーティストのマネージメントとツアー計画の仕事を経て、1984年にガスタイク演奏家事務局を設立。アーウィン・ゲイジやアーリーン・オージェとの協力関係を築いた。

Ian Fountain (Großbritannien)
イアン・ファウンテン:ピアニスト。独奏者として世界中でリサイタルやコンチェルト、室内楽を演奏。ドルトムント国際シューベルト・コンクールのピアノ部門の芸術監督を務めている。

Michael Gees (Deutschland)
ミヒャエル・ゲース:作曲家、ピアニスト、即興演奏の名手として知られる。特にピアニストとしてテノールのクリストフ・プレガルディアンとの共演で知られ、来日頻度も多い。

Daniel Heide (Deutschland)
ダニエル・ハイデ:今や飛ぶ鳥を落とす勢いで若手有望なリート歌手たちと次々に共演しているピアニスト。クリスタ・ルートヴィヒやD.フィッシャー=ディースカウからも指導を受けた。ベートーヴェンのピアノソナタも録音している。

Christine Schäfer (Deutschland)
クリスティーネ・シェーファー:オペラに歌曲に大活躍したドイツのソプラノ歌手。現代音楽の演奏も精力的だった。何度か来日している。2015 年の秋以降、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学の正教授に任命された。

Sonja Stenhammar (Schweden)
ソーニャ・ステンハンマル:歌手としてスペイン音楽を中心にキャリアを積み、彼女のために作られた現代曲もレパートリーにしている。教育者としてもイタリアやジュネーヴで活動している。ハーグのエリー・アーメリングコンクールなどにも審査員として招聘されている。2006 年、ヴィルヘルム ステンハンマル国際音楽コンクール (WSIMC) を創設し、芸術監督を務めている。

James Taylor (USA)
ジェイムス・テイラー:テノール歌手として世界中でオラトリオやコンサートに出演し、特にバッハ歌手として広く知られた。歌曲歌手としてはヘルムート・ドイチュ、アーウィン・ゲイジ、ミヒャエル・ゲースなどと共演している。

(参考)

公式サイト:Internationaler Schubert-Wettbewerb Dortmund
https://schubert-wettbewerb.de/

Facebook: Internationaler Schubert-Wettbewerb Dortmund
https://www.facebook.com/schubertwettbewerb/
(審査員の写真が掲載されていますが、ミヒャエル・ゲースだけサスペンダー付きジーンズといういでたちで、彼らしい風来坊感が出ていて微笑ましいです)

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エリー・アーメリングの参加したブリテン「春の交響曲」Promsライヴ音源

エリー・アーメリング(Elly Ameling)は、イギリスのプロムスに1968年から1974年まで何度も参加して、歌手とオーケストラのための作品を歌っています。アーカイヴを見るとラモーやモンテヴェルディのオペラなど彼女が商業録音を残していないレパートリーも多く、興味をそそられます。
そんな中、1974年に演奏されたブリテン作曲「春の交響曲」の音源がアップされていましたのでご紹介します。

Britten Spring Symphony - London Philharmonic Orchestra - Bernard Haitink (Royal Albert Hall 1974)

オリジナルのサイト(リンク先をクリックすると音が出ますのでご注意ください)

Recorded: 17 August 1974, Royal Albert Hall, London

Elly Ameling (soprano)
Helen Watts (contralto)
Gerald English (tenor)
Finchley Children's Music Group
London Boy Singers
London Philharmonic Choir
London Philharmonic Orchestra
Bernard Haitink (conductor)

エリー・アーメリング(S)
ヘレン・ワッツCA)
ジェラルド・イングリッシュ(T)
フィンチリー少年音楽グループ
ロンドン・ボーイ・シンガーズ
ロンドン・フィルハーモニック合唱団
ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
ベルナルト・ハイティンク(C)

奇遇にもアーメリングがプロムスに参加した最初の年(1968年)と最後の年(1974年)にこの作品の演奏に参加していて(どちらもハイティンクの指揮)、この録音は最後の年の演奏です。
彼女の美声と巧みなディクションに惹きつけられますが、コントラルトのワッツも、テノールのイングリッシュも、合唱団も素晴らしく、ブリテンの音楽を堪能出来ます。第4曲の最後に起きた聴衆の笑いや、終曲の後、間髪を入れず拍手が起こるのもライヴならではの臨場感が伝わってきます。

Part 1
0:27- 1. Introduction: Shine Out (詩人不詳) (混声合唱)
10:17- 2. The Merry Cuckoo (Edmund Spenser) (テノール独唱)
12:15- 3. Spring, the Sweet Spring (Thomas Nashe) (ソプラノ、アルト、テノール独唱、混声合唱)
14:19- 4. The Driving Boy (George Peele, John Clare) (ソプラノ独唱、少年合唱)
16:42- 5. The Morning Star (John Milton) (混声合唱)

Part 2
20:07- 6. Welcome, Maids of Honour (Robert Herrick) (アルト独唱)
22:52- 7. Waters Above! (Henry Vaughan) (テノール独唱)
25:31- 8. Out on the lawn I Lie in bed (W. H. Auden) (アルト独唱、混声合唱)

Part 3
32:18- 9. When will my May Come? (Richard Barnfield) (テノール独唱)
34:50- 10. Fair and Fair (George Peele) (ソプラノ、テノール独唱)
37:05- 11. Sound the Flute! (William Blake) (男声合唱、女声合唱、少年合唱)

Part 4
38:30- 12. Finale: London, to Thee I do Present (Anon, closing words from The Knight of the Burning Pestle by Francis Beaumont) (ソプラノ、アルト、テノール独唱、混声合唱、少年合唱)

サイト「詩と音楽」に藤井宏行氏の素晴らしい対訳が掲載されています。

Wikipedia(春の交響曲)

Wikipedia(Spring Symphony):上記の各曲のタイトル、詩人、編成を参考にさせていただきました。

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シューベルト/子守歌(Schubert: Wiegenlied, D 498)を聞く

Wiegenlied, D 498
 子守歌

Schlafe, schlafe, holder, süßer Knabe,
Leise wiegt dich deiner Mutter Hand;
Sanfte Ruhe, milde Labe
Bringt dir schwebend dieses Wiegenband.
 お眠り、お眠り、いとしい可愛い坊や、
 お母さんが手でそっと揺らしてあげるよ。
 あなたは安らかに休んで、穏やかに元気を回復するのよ、
 この揺り籠のベルトに揺らされてね。

Schlafe, schlafe in dem süßen Grabe,
Noch beschützt dich deiner Mutter Arm.
Alle Wünsche, alle Habe
Faßt sie liebend, alle liebewarm.
 お眠り、お眠り、甘きお墓の中で、
 お母さんの腕であなたを守ってあげる。
 望むもの全部、持ち物全部を
 お母さんが愛情こめてみんな捕まえておいてあげるわ。

Schlafe, schlafe in der Flaumen Schoße,
Noch umtönt dich lauter Liebeston;
Eine Lilie, eine Rose,
Nach dem Schlafe werd' sie dir zum Lohn.
 お眠り、お眠り、綿毛にくるまれて、
 まだあなたのまわりで大きな愛の音が鳴っているよ、
 一輪の百合と薔薇が
 眠りから覚めたらあなたのご褒美となるのよ。

詩:Anonymous, sometimes misattributed to Matthias Claudius (1740-1815)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Wiegenlied", op. 98 (Drei Lieder) no. 2, D 498 (1816), published 1829

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世界中にあまたの「子守歌」がありますが、とりわけモーツァルト(実際には別人の作曲)、ブラームスと並んで知られているのがシューベルトの子守歌でしょう。
とはいえシューベルトだけでも「子守歌」を複数作曲していますので、ここではD 498の「子守歌」を扱いたいと思います。

3節からなるテキストの作者として、初版楽譜にはクラウディウスの名前が挙げられていますが、クラウディウスの作品中には見当たらず、現在にいたるまで特定されていないようです。

グレアム・ジョンソン(Graham Johnson)はこのテキストの第2節に「墓(Grabe)」という単語が使われていることに注目し、「当時幼児の死は日常茶飯事でした」と記しています。成人しないまま亡くなる乳幼児の多かった中、生きているその瞬間に母親としての愛情を注ごうという気持ちがあらわれているのかもしれません。

シューベルトはこの曲を1816年11月に作曲しました(19歳)。トニックとドミナントが交互にあらわれる平明な音楽で、子供をゆったりと眠りに誘うのにうってつけと言えるのではないでしょうか。

当時の雑誌に楽譜の出版情報が掲載されています(Österreichische Nationalbibliothek)。

【初版】(Op. 98, No. 2: Ant. Diabelli und Comp., Wien [1829])
Langsam (ゆっくりと)
C (4/4拍子)
変イ長調(As-dur)

●エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P)

1982年録音。まさに理想の歌声!

●アンゲリカ・キルヒシュラーガー(MS), ヘルムート・ドイチュ(P)
Angelika Kirchschlager(MS), Helmut Deutsch(P)

キルヒシュラーガーの素直なメゾの響きは子供を慈しむ母親感がよく出ていると思います。

●グンドゥラ・ヤノヴィツ(S), アーウィン・ゲイジ(P)
Gundula Janowitz(S), Irwin Gage(P)

ヤノヴィツの芯のある響きはどこか高貴な家柄の母親のようなイメージが浮かんできます。ゲイジが第2節でバス音を強調しているのはテキストに現れる「墓(Grabe)」という言葉を反映しているのでしょうか。

●アナ・ルツィア・リヒター(MS), アミール・ブシャケヴィツ(P)
Anna Lucia Richter(MS), Ammiel Bushakevitz(P)

現役で活躍中の演奏家による映像です。ソプラノからメゾに転向したというリヒターは確かに声に深みがあり、母性を感じさせます。それと同時に眠りと死の近親性も暗示するような歌いぶりに感じられました。ピアニストのブシャケヴィツが面白い試みをしています。徐々にオクターブ上げていき、トイピアノのような響きで締めくくっています。おそらく作曲当時もこのような類のアレンジはされていたのでしょう。

●リタ・シュトライヒ(S), エリク・ヴェルバ(P)
Rita Streich(S), Erik Werba(P)

オペラでは華やかなコロラトゥーラを聞かせるシュトライヒも、一方でこんな可憐な歌を聞かせてくれます。

●三浦 環(S), アルド・フランケッティ(P)
Tamaki Miura(S), Aldo Franchetti(P)

1922年録音。往年の日本のプリマドンナ三浦 環もこの曲を録音していました。ここで歌っている有名な日本語歌詞は内藤濯(ないとう あろう)という人の訳だそうです(こちらのサイト(「世界の民謡・童謡」様)に詳しい解説があります)。

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(参照)

The LiederNet Archive: Wiegenlied

IMSLP (International Music Score Library Project): Wiegenlied, D.498 (Schubert, Franz)

Schubertlied.de: Wiegenlied

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