エリー・アーメリング他の『マタイ受難曲 BWV 244』第2部の映像(1966年)
●バッハ:『マタイ受難曲 BWV 244』
Bach: "St Matthew Passion" Part II (Live, 1966)
Sandmanさんのサイト「Elly Ameling Discography」内のブログ「Im Abendrot」で紹介されていますが、アーメリングの参加した『マタイ受難曲 BWV 244』第2部の映像がYouTubeにアップされました(オリジナルのページはこちらのリンク先。音が出ますのでご注意ください)。
Sandmanさんが紹介くださった元音源の詳細ページによると、録音は聖金曜日に行われたとあり、1966年4月8日にGrote Kerk, Naarden(ナールデン大教会)で催されたコンサートのライヴ映像と思われます(演奏者の入場時に拍手がないのが興味深いです)。
独唱者は当時のオランダの代表的な歌手たちが揃っていて、若かりしアーメリングの他にも、素晴らしく深みのあるアーフィエ・ヘイニス、イエス役のベルナルト・クラウセン、エヴァンゲリストのトム・ブラントなどが歌っています。指揮はシャルル・ドゥ・ヴォルフで、映像で見る限り皆若いです。
残念ながら第2部のみしか映像が残されていないようです。
なお、33:05~37:36まで音声が消えていますが、映像は見られます。
アーメリングは48曲レチタティーヴォと49曲アリア(Er hat uns allen wohlgetan - Aus Liebe will mein Heiland sterben)や、他の独唱者たちと短い旋律が与えられている67曲のレチタティーヴォ(Nun ist der Herr zur Ruh gebracht)の他にも、38曲のレチタティーヴォ(Petrus aber saß draußen)の第1の下女(Erste Magd)や、45曲のレチタティーヴォ(Auf das Fest aber hatte der Landpfleger Gewohnheit)のピラトの妻(Frau des Pilatus)の短い役でも歌っていますし、他の演奏者の後ろに映り込む場面も多々あり、映像全体を見てみる価値はあると思います。声も歌も容姿も魅力的でした!
これまでほとんど音源でしか聞いたことのなかった歌手たちの若かりし映像が残されていたことに感激です。
この「マタイ受難曲」はテキストを見ながら聞くと、バッハの偉大さ、凄さが本当に伝わってきます。メンデルスゾーンがバッハを再発見した意義もとても大きかったと思います。
バッハ:『マタイ受難曲 BWV 244』第2部
録音:1966年4月8日, 大教会、ナールデン
トム・ブラント(福音史家(テノール))
ベルナルト・クラウセン(イエス(バス))
エリー・アーメリング(ソプラノ)
アーフィエ・ヘイニス(コントラルト)
ナーン・ペルト(テノール)
ペーター・ファン・デア・ビルト(バス)
オランダ・バッハ協会合唱団
ハーグ(ハーハ)少年合唱団
レスィデンツィ管弦楽団
シャルル・ドゥ・ヴォルフ(指揮)
Bach: Matthäus-Passion, BWV 244: Part II
Recorded: 8 April 1966, Grote Kerk in Naarden (live)
Tom Brand(T: Evangelist)
Bernard Kruysen(BS: Jezus)
Elly Ameling(S)
Aafje Heynis(CA)
Naan Põld(T)
Peter van der Bilt(BS)
Koor van de Nederlandse Bachvereniging
Haags Knapenkoor o.l.v. Marius Borstlap
Residentie-Orkest
Charles de Wolff(C)
※以下は、Wikipediaの日本語版とドイツ語版(deutsch)、それからガーディナー指揮のARCHIVの1988年CD録音の解説書に掲載された杉山好氏の訳を参照させていただきました。有難うございます!動画の各曲のタイミングを追記しましたので、お目当ての曲を聴く時に参考になさって下さい。
第二部
カッコ内の番号は旧全集の番号
人気なき園に花婿を探すシオンの娘とエルサレムの娘たちの同情
2:19-
30.(36) アリア「ああ、いまやわがイエスは連れさられぬ!」(アルト独唱、合唱)Arie (Alt) "Ach! nun ist mein Jesus hin!"
大祭司の審問
7:12-
31.(37) レチタティーヴォ「イエスを捕らたる者ども」(福音史家)Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Die aber Jesum gegriffen hatten"
8:25-
32.(38) コラール「世はわれに欺き仕掛けぬ」(合唱)Choral (SATB) "Mir hat die Welt trüglich gericht’"
9:26-
33.(39) レチタティーヴォ「また多くの偽証者ら立ち出でたれども」(福音史家、証人)Rezitativ (Evangelist/Tenor, 2 Zeugen/Alt und Tenor, Hohepriester/Bass) "Und wiewohl viel falsche Zeugen herzutraten"
11:07-
34.(40) レチタティーヴォ「わがイエスは嘘いつわりの証しにも黙したまう」(テノール)Accompagnato-Rezitativ (Tenor) "Mein Jesus schweigt"
12:22-
35.(41) アリア「忍べよ、偽りの舌われを刺すとき」(テノール独唱)Arie (Tenor) "Geduld! Wenn mich falsche Zungen stechen"
16:26-
36.(42-43) レチタティーヴォ「大祭司は問いただして言う」(福音史家、大祭司)と合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor, Hohepriester/Bass, Jesus/Bass) "Und der Hohepriester antwortete"; Chor I & II (SATBSATB) "Er ist des Todes schuldig!"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Da speieten sie aus"; Chor I & II (SATBSATB) "Weissage uns, Christe"
19:09-
37.(44) コラール「たれぞ汝をばかく打ちたるか」(合唱)Choral (SATB) "Wer hat dich so geschlagen"
ペテロの否みと悔い
20:26-(第1の下女:アーメリング、第2の下女:ヘイニス、ペテロ:ファン・デア・ビルト)
38.(45-46) レチタティーヴォ「さてペテロは外にて中庭に坐したるに」(福音史家、第1の下女、第2の下女、ペテロ)と合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor, Petrus/Bass, 2 Mägde/Sopran) "Petrus aber saß draußen"; Chor II (SATB) "Wahrlich, du bist auch einer"; Rezitativ (Evangelist/Tenor, Petrus/Bass) "Da hub er an, sich zu verfluchen"
23:27-
39.(47) アリア「憐れみたまえ、わが神よ」(アルト独唱)Arie (Alt) "Erbarme dich"
30:25-
40.(48) コラール「たとえわれ汝より離れ出ずるとも」(合唱)Choral (SATB) "Bin ich gleich von dir gewichen"
ユダの後悔と末路
31:46-(33:05から音声なし、映像のみ)
41.(49-50) レチタティーヴォ「夜明けになりて、すべての祭司長」(福音史家、ユダ、第1と第2の祭司長)と合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor, Judas/Bass) "Des Morgens aber hielten alle Hohepriester"; Chor I & II (SATBSATB) "Was gehet uns das an?"; Rezitativ (Evangelist/Tenor, 2 Hohepriester/Bass) "Und er warf die Silberlinge in den Tempel"
34:10頃-(37:36まで音声なし、映像のみ)
42.(51) アリア「われに返せ、わがイエスをば!」Arie (Bass) "Gebt mir meinen Jesum wieder!"
37:37-
43.(52) レチタティーヴォ「かくて相議り」(福音史家)Rezitativ (Evangelist/Tenor, Jesus/Bass, Pilatus/Bass) "Sie hielten aber einen Rat"
訊問と磔刑判決
43. のつづき(福音史家、ピラト)
40:14-
44.(53) コラール「汝の行くべき道と」(合唱)Choral (SATB) "Befiehl du deine Wege"
41:40-(ピラトの妻:アーメリング)
45.(54) レチタティーヴォ「さて祭りの時に」(福音史家、ピラト、ピラトの妻、合唱)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor, Pilatus/Bass, Frau des Pilatus/Sopran), Chor I & II (SATBSATB) "Auf das Fest aber hatte der Landpfleger Gewohnheit"; Chor I & II (SATBSATB) "Laß ihn kreuzigen!"
44:38-
46.(55) コラール「さても驚くべしこの刑罰!」(合唱)Choral (SATB) "Wie wunderbarlich ist doch diese Strafe!"
45:46-
47.(56) レチタティーヴォ「総督言う」(福音史家、ピラト)Rezitativ (Evangelist/Tenor, Pilatus/Bass) "Der Landpfleger sagte"
46:10-
48.(57) レチタティーヴォ「彼は我ら総ての者の為に善き事をなせり」(ソプラノ)Accompagnato-Rezitativ (Sopran) "Er hat uns allen wohlgetan"
47:29-
49.(58) アリア「愛よりしてわが救い主は死にたまわんとす」(ソプラノ独唱)Arie (Sopran) "Aus Liebe will mein Heiland sterben"
52:41-
50.(59) レチタティーヴォ「彼らますます声を大にして叫びて言う」(福音史家、ピラト)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Sie schrieen aber noch mehr"; Chor I & II (SATBSATB) "Laß ihn kreuzigen!"; Rezitativ (Evangelist/Tenor, Pilatus/Bass) "Da aber Pilatus sahe"; Chor I & II (SATBSATB) "Sein Blut komme über uns"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Da gab er ihnen Barrabam los"
鞭打ち
50. のつづき
55:13-
51.(60) レチタティーヴォ「神よ、憐れみたまえ!」(アルト)Accompagnato-Rezitativ (Alt) "Erbarm es Gott!"
56:22-
52.(61) アリア「わが頬の涙」(アルト独唱)Arie (Alt) "Können Tränen meiner Wangen"
1:02:56-
53.(62) レチタティーヴォ「ここに総督の兵卒どもイエスを取りて」(福音史家)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Da nahmen die Kriegsknechte"; Chor I & II (SATBSATB) "Gegrüßet seist du, Jüdenkönig!"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und speieten ihn an"
1:04:24-
54.(63) コラール「ああ、血と傷にまみれし御首」Choral (SATB) "O Haupt voll Blut und Wunden"
十字架の道
1:07:18-
55.(64) レチタティーヴォ「かく嘲弄してのち、上衣を剥ぎて」(福音史家)Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und da sie ihn verspottet hatten"
1:08:26-
56.(65) レチタティーヴォ「しかり!まことにわれらがうちなる血肉は」(バス)Accompagnato-Rezitativ (Bass) "Ja freilich will in uns"
1:09:10-
57.(66) アリア「来たれ、甘き十字架、われはかく願いて悔いず」(バス独唱)Arie (Bass) "Komm, süßes Kreuz"
十字架上のイエス
1:15:34-
58.(67-68) レチタティーヴォ「かくてゴルゴタという所」(福音史家)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und da sie an die Stätte kamen"; Chor I & II (SATBSATB) "Der du den Tempel Gottes zerbrichst"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Desgleichen auch die Hohenpriester"; Chor I & II (SATBSATB) "Andern hat er geholfen"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Desgleichen schmäheten ihn"
1:19:43-
59.(69) レチタティーヴォ「ああ、ゴルゴタよ」(アルト)Accompagnato-Rezitativ (Alt) "Ach Golgatha"
1:21:34-
60.(70) アリア「見よ、イエスはわれらを」(アルト独唱と合唱)Arie (Alt) + Chor II (SATB) "Sehet, Jesus hat die Hand"
イエスの死
1:25:10-
61.(71) レチタティーヴォ「昼の十二時より地の上あまねく暗くなりて」(福音史家、イエス)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor, Jesus/Bass) "Und von der sechsten Stunde an"; Chor I (SATB) "Der rufet dem Elias!"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und bald lief einer unter ihnen"; Chor II (SATB) "Halt! laß sehen"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Aber Jesus schriee abermal laut"
1:28:07-
62.(72) コラール「いつの日かわれ去り逝くとき」(合唱)Choral (SATB) "Wenn ich einmal soll scheiden"
1:29:59-
63.(73) レチタティーヴォ「見よ、そのとき神殿の墓、上より下まで真っ二つに裂け」(福音史家)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und siehe da, der Vorhang im Tempel zerriß"; Chor I & II (SATBSATB) (unisono) "Wahrlich, dieser ist Gottes Sohn gewesen"; Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und es waren viel Weiber da"
十字架よりの降架と埋葬
63. のつづき
1:33:26-
64.(74) レチタティーヴォ「夕べ日涼しくなりしころに」(バス)Accompagnato-Rezitativ (Bass) "Am Abend, da es kühle war"
1:35:48-
65.(75) アリア「わが心よ、おのれを潔めよ」(バス独唱)Arie (Bass) "Mache dich, mein Herze, rein"
1:41:49-
66.(76) レチタティーヴォ「ヨセフみ体を受け取りて」(福音史家、ピラト)、合唱 Rezitativ (Evangelist/Tenor) "Und Joseph nahm den Leib"; Chor I & II (SATBSATB) "Herr, wir haben gedacht"; Rezitativ (Evangelist/Tenor, Pilatus/Bass) "Pilatus sprach zu ihnen"
哀悼と告別
1:44:51-
67.(77) レチタティーヴォ「いまや主は憩いの床に安置されぬ」(バス、テノール、アルト、ソプラノ、合唱)Accompagnato-Rezitativ (Sopran, Alt, Tenor, Bass) + Chor II (SATB) "Nun ist der Herr zur Ruh gebracht"
1:47:32-
68.(78) 終結合唱「われら涙流しひざまずき」Chor I & II (SATBSATB) "Wir setzen uns mit Tränen nieder"
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コメント
フランツさん,
Sandmanです.
詳細な分析ありがとうございます. これをもとに, じっくりと聞いてみたいとおもいますが, 最近, アーメリングの録音に関する整理と, ディスコグラフィーへの反映になかなか時間がとれません.
本映像に関して, Beeld en Geluidのデータによると, 録音は, 1964年12月31日となっていますが, この日は金曜日ではなく, しかも, 年末にこのような演奏を行うものかと, 腑に落ちないでいました.
1966年4月8日の金曜日の演奏が正しいようですね.
私は, アーメリングの歌う映像を見て感激したと同時に, アーメリングといろいろなところで共演していた, アーフィエ・ヘイニスの素晴らしい歌唱と, 初めて見る映像に感銘を受けました.
なお, 私も, ソリストが入場する場面で拍手がないのに気がつきました. 以前, どこかで, マタイ受難曲の演奏の際には, 拍手をしないものだ, と書かれているのを読んだ記憶があります. しかし, 私が接した過去の演奏では, すべて, 拍手がありました. コンサートと捉えるか, 教会での儀式と捉えるかの違いかもしれません.
投稿: Sandman | 2023年4月 9日 (日曜日) 16時40分
Sandmanさん、こんばんは。
コメントを有難うございます。
Sandmanさんの記事にいつも刺激を受けています。
この動画、Sandmanさんに紹介いただいた時はBeeld en Geluidに掲載されていたのに残念ながら消されてしまいましたね。オランダは国外からのアクセスに厳しいのかもしませんね。
アーメリングの90歳記念のPodcast用インタビューもオランダ国内でしか聞けないようになっていて、オランダ国外のファンはあまり歓迎されていない気がしてしまいます。
そうはいってもいくつもの放送音源や、ドキュメンタリーはアクセス出来るわけですからあまり贅沢言ってはいけないのかもしれませんね。
このマタイ、アーメリングの愛らしい容姿と、当時からすでに完成されていた伸び伸びと響く歌声に感銘を受けましたが、おっしゃる通り、アーフィエ・ヘイニスの歌声も本当に素晴らしいですね。アーメリングもインタビューでヘイニスのことを「心から歌う」歌手と言っていました。こうして歌う姿を見ることが出来るのは有難いことです。
マタイの拍手の有無は私もどこかで読んだ記憶がありますが、あまりはっきりと覚えていません。拍手をしない慣習が当時あったのか、それとも演奏の前にあらかじめ拍手しないようにアナウンスがあったのか、気になるところではあります。
投稿: フランツ | 2023年4月 9日 (日曜日) 20時23分