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ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ初出音源6曲 "DISCOVERIES"

今年没後10年を迎えたディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau: 1925-2012)がDeutsche Grammophonに残した歌曲全録音が107枚組のCDで発売されたことが歌曲ファン界隈で注目されていますが、もう1種類、おまけのように彼の新発見の録音(これまで倉庫深くに眠っていた音源)が6曲含まれたデジタルアルバムがリリースされたのは望外の喜びでした。

曲目はシューベルトの『白鳥の歌』から2曲、ジャネット・ベイカーとのシューベルト二重唱曲のLPに含まれていなかった1曲、ヴァラディ、シュライアーと録音したシューマン二重唱曲集のLPに含まれていなかった1曲、それにジェスィー・ノーマンと分担したブラームス歌曲全集でノーマンが歌っていた2曲のF=ディースカウによる録音です。

シューベルト、シューマンの二重唱曲集は、いずれもお蔵入りになる理由が思い当たらないので、おそらく膨大な録音テープの中に埋もれてレコード製作時に気付かれなかったのではないでしょうか。

ブラームスの方はディースカウの録音した後にノーマンがこの2曲を録音して、全集という性格上、どちらかの録音を採用するという段階でディースカウの録音はお蔵入りとなったのでしょう。

『白鳥の歌』の2曲は、著名な共演ピアニストのフーベルト・ギーゼン(Hubert Giesen)と、その夫人エリノア・ユンカー=ギーゼン(Ellinor Junker-Giesen)によるシューベルトの歌曲の録音が同じテープに入っていたそうですが、だからといってフーベルト・ギーゼンがディースカウのパートナーだったという確証はないようです。このアルバムの解説を書いているMarkus Kettner氏によると、初期のディースカウが放送録音でよく組んでいたクラウス・ビリング(Klaus Billing)の可能性もあると言っていますが、それならばヘルタ・クルストの可能性もあることになり、結局ピアニストの特定は出来ないということになるでしょう。

演奏はそれぞれの時期の良さが感じられる素晴らしいもので、豪華な共演者たち(歌手、ピアニスト)との息もぴったりでした。
特筆すべきなのが最初の「彼女の姿」です。解説のMarkus Kettner氏も触れていますが、かなりたっぷりとしたテンポで歌っています。

シューベルト:彼女の姿(Ihr Bild) D957/9 (ピアニスト不明)(1949年3月録音)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
「発見」 シューベルト・シューマン・ブラームス

シューベルト
彼女の姿 D957/9(『白鳥の歌』D957より)
漁師の娘 D957/10(『白鳥の歌』D957より)
ピアニスト名不明
録音:1949年3月, ベルリン

シューベルト
パンチ酒の歌 D253
ジャネット・ベイカー(MS), ジェラルド・ムーア(P)
録音:1972年3月, UFA-Tonstudio, ベルリン

シューマン
悲劇Ⅲ Op. 64/3c "彼女の墓の上に一本のリンデが立っている"
ペーター・シュライアー(T), クリストフ・エッシェンバハ(P)
録音:1977年12月, Studio Lankwitz, ベルリン

ブラームス
サッポー風の頌歌 Op. 94/4
メロディーのように Op. 105/1
ダニエル・バレンボイム(P)
録音:1978年3月, Studio Lankwitz, ベルリン

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Dietrich Fischer-Dieskau
DISCOVERIES Schubert · Schumann · Brahms

FRANZ SCHUBERT
Schwanengesang, D. 957: No 9, Ihr Bild
Schwanengesang, D. 957: No. 10, Das Fischermädchen
Unknown pianist
Recording: March 1949, Berlin

FRANZ SCHUBERT
Punschlied, D. 253
Janet Baker, Gerald Moore
Recording: March 1972, UFA-Tonstudio, Berlin

ROBERT SCHUMANN
Romanzen und Balladen, Vol. IV: Tragödie, Op. 64 No. 3c, "Auf ihrem Grab, da steht eine Linde"
Peter Schreier, Christoph Eschenbach
Recording: Dec. 1977, Studio Lankwitz, Berlin

JOHANNES BRAHMS
5 Lieder, Op. 94: No. 4, Sapphische Ode
5 Lieder, Op. 105: No. 1, Wie Melodien zieht es mir
Daniel Barenboim
Recording: March 1978, Studio Lankwitz, Berlin

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(参考)

Deutsche Grammophonのサイト

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コメント

フランツさん、こんばんは。

これは貴重な音源が見つかったものですね!
考古学の発見に近いものがありますよね。
「彼女の姿」大好きな曲です。
若き日の豊かな声で、情感たっぷりに歌われていて素晴らしかったです。

貴重な演奏を聞かせてくださって、ありがとうございました。

投稿: 真子 | 2022年10月30日 (日曜日) 22時02分

真子さん、こんばんは。

そうなんです。本当にこんなお宝が眠っていたとは想像すらしていませんでした!
レコード会社の倉庫にはこういう発見されるのを待っている音源がきっと沢山あるんだろうなと思います。
こうしてリリースに漕ぎつけられただけでもファンとしては有難いことです。
「彼女の姿」は晩年(といってもまだまだ若かったですが)のシューベルトの新境地が伺える凄い曲ですよね。30ちょっとの青年がこんな深い境地に達してしまったのですから、きっと彼は生き急いでしまったのでしょう。
ディースカウも初期の録音では思いいれたっぷりのロマンティックな表現が印象的ですね。

>若き日の豊かな声で、情感たっぷりに歌われていて素晴らしかったです。

有難うございます!若かりしディースカウの良さを共有できてうれしいです!

投稿: フランツ | 2022年10月31日 (月曜日) 21時02分

いつも楽しく拝読させていただいております。
知らないうちにディースカウ、サヴァリッシュのLIVEがでてました。今後もサプライズな初出があると楽しいですねー。

https://youtu.be/bqj9SAVv-vY

投稿: 菅原征信 | 2023年4月26日 (水曜日) 14時48分

菅原征信さん、こんばんは、
いつもご覧いただき、有難うございます。
とても嬉しいです!

ご紹介いただいたディースカウとサヴァリッシュの「冬の旅」は本当にレアですね。こんな珍しい音源があったなんて、気付きませんでした。有難うございます!このコンビ、いろんな名演を残していますが「冬の旅」の録音はこれまでなかったのでじっくり聞いてみますね。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: フランツ | 2023年4月27日 (木曜日) 00時22分

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