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クリスマスに寄せて:ヴォルフ「眠れる幼児イエス(Schlafendes Jesuskind)」他

Schlafendes Jesuskind
 眠れる幼児イエス

Sohn der Jungfrau, Himmelskind! am Boden
Auf dem Holz der Schmerzen eingeschlafen,
Das der fromme Meister, sinnvoll spielend,
Deinen leichten Träumen unterlegte;
Blume du, noch in der Knospe dämmernd
Eingehüllt die Herrlichkeit des Vaters!
O wer sehen könnte, welche Bilder
Hinter dieser Stirne, diesen schwarzen
Wimpern sich in sanftem Wechsel malen!
 処女マリアの息子、天の寵児よ!地上の
 苦悩の木の上で眠り込んでいる、
 その木は敬虔な画伯が、意味をこめて
 御身の軽やかな夢に描き加えたものだ。
 花である御身よ、まだ夢うつつの蕾の中に
 父なる栄光を包み隠しておられる!
 ああ誰が知ることが出来よう、どのような姿が
 この額、この黒き
 まつげの裏に、穏やかに移り行きながら写し出されようとは!

詩:Eduard Mörike (1804-1875)
曲:Hugo Wolf (1860-1903)

Frohe Weihnachten!
ということでクリスマスに因んでヴォルフの歌曲集『メーリケの詩』から「眠れる幼児イエス」の音楽を共有します。原曲はもちろん歌とピアノという編成なのですが、クリスマスバージョンということで、マックス・レーガー編曲のオルガンバージョンを動画サイトからひっぱってきました。オルガンは音が減衰しない強みがありますね。このメーリケの詩の副題は「gemalt von Franc. Albani(フランチェスコ・アルバーニによって描かれた)」とあります。メーリケが言及したアルバーニの絵の可能性の一つとしてこちらのリンク先の絵をご覧ください。幼児イエスは「苦悩の木」つまり後の十字架の上ですやすや眠っているのです。

Hugo Wolf (arr. Max Reger): Gedichte von Eduard Mörike: No. 25. Schlafendes Jesuskind
Susanne Bernhard(S), Harald Feller(organ)

今年はもう1曲、J.S.バッハ作曲『クリスマス・オラトリオ』BWV 248からソプラノとバスの二重唱「主よ、御身の憐み、御身の同情が」を掲載しますので、お楽しみください。

29. Arie (Duett)

Herr, dein Mitleid, dein Erbarmen
Tröstet uns und macht uns frei.
Deine holde Gunst und Liebe,
Deine wundersamen Triebe
Machen deine Vatertreu
Wieder neu.
 主よ、御身の憐み、御身の同情が
 私たちを慰め、私たちを自由にします。
 御身のいとしき好意と愛、
 御身の驚異的な衝動が
 御身の父への忠誠を
 再びあらたにするのです。

J.S.Bach: Weihnachtsoratorium, BWV 248: III, 6: "Herr, dein Mitleid, dein Erbarmen"
Elly Ameling(S), Hermann Prey(BR), Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks, Eugen Jochum(C)

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コメント

フランツさん、おはようございます。

一旦は収まったかと思えたコロナに、またオミクロンと言う株が出だしましたね。
そろそろ教会に行ってみようかと思っていた矢先、結局クリスマス礼拝もイブ礼拝もまたまたリモートで与りました。
聖歌隊の活動も今は中止したままで、冬も窓全開、座席も2メートル空けての教会礼拝ではありますが、娘が介護士をしていますので、この2年はずっとリモートです。
礼拝だけでなく、コロナですっかり生活様式も変わりましたね。
コロナによって命を落とされた方々に哀悼の祈りと、苦難の中にいらっしゃる方々に一日も早く元の生活が戻ることを祈らずにはいられません。

キリストがお生まれになった頃のユダヤも、ローマ帝国からの圧政に苦しんでいました。
キリスト降誕をまずいちばんに告げさ知らされた羊飼いは、差別を受けている人たちでした。後に、キリストそのものを羊飼いと呼ぶようになります。
キリストの誕生と生涯は、既成概念をことごとくひっくり返したと言えます。

苦難の木=十字架の上で眠るみどり児イエス。彼は生まれた瞬間から十字架への受難に向かって生きてゆくことになる。
ヴォルフの曲にはそのことが余すところなく描かれていますね。
先日の礼拝で、「父(なる神)は世に子を与えた。そして父は子を失った(十字架の死)亅と聞きましたが、ヴォルフのこの曲がリンクしました。
この歌曲、詩もとてもいいですね。

クリスマスオラトリオは、プライ&アメリングが私のベスト・アルバムです。二人の温かい美声がクリスマスの夜を温めてくれる気がします。

すてきなクリスマス曲をありがとうございました。

投稿: 真子 | 2021年12月26日 (日曜日) 10時29分

真子さん、こんばんは。

今年の礼拝もリモートになってしまったとのこと、残念でしたね。聖歌隊の活動も来年には再開されるといいですね。

娘さんが介護士をされていて、お仕事柄直接会うことがなかなか出来ないのは寂しいこととお察しします。
来年には直接会うことが出来る世の中になってほしいと願っています。

今回のパンデミックになってつくづく感じたのですが、メディアはただ一方的に脅かしたり押し付けたりするのではなく、異なる立場からも公平に報道をしてほしいと心から思います(私はテレビを自主的に見ることをやめました)。

キリストの時代の背景のご説明を有難うございます。
差別を受けていた羊飼いにキリストの誕生が伝えられたのですね。
余談ですが羊はおとなしいものの象徴のように思っていましたが、実際には結構激しく頭突きしたりするんですよね。

このヴォルフの曲はイエスが生まれた時にすでに運命を背負っているというメーリケの詩の内容を穏やかなオブラートに包んで美しく表現していると思います。
詩もいいですよね。

クリスマスオラトリオのこの録音は真子さんにとってのベスト盤なのですね。おっしゃるように温かい美声をもった二人のデュエットはいつまでも聴いていたくなります。

投稿: フランツ | 2021年12月26日 (日曜日) 21時01分

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